説明

描画装置および描画方法

【課題】選択されたパターンにおける特徴領域を示す画像を迅速に、かつ、容易に表示する。
【解決手段】データ変換部811では、各パターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して描画ラスタデータが生成されるとともに、描画ラスタデータの生成時に当該パターンにおけるパターン識別用の特徴領域を示すラスタデータである部分ラスタデータが生成される。描画ラスタデータおよび部分ラスタデータを含む集合を描画データセット51として、複数のパターンにそれぞれ対応する複数の描画データセット51が記憶部821にて記憶される。表示制御部601は、複数のパターンのうち、選択されたパターンを示す描画ラスタデータと同じ描画データセット51に含まれる部分ラスタデータに基づいて、当該パターンにおける特徴領域を示す画像を迅速に、かつ、容易にディスプレイ602に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンを描画する描画装置および描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CAD(computer aided design)により作成したパターンのベクトルデータをラスタ変換して描画ラスタデータを生成し、描画部において描画ラスタデータに従って基板上の感光材料に当該パターンを描画することが従来より行われている。また、パターンの描画および現像にはある程度の時間を要するため、パターン描画の前に、選択した描画ラスタデータが、所望のパターンを示すものであるか否かを確認する作業も必要に応じて行われる。
【0003】
なお、特許文献1では、描画用ラスタデータに対する目視チェックの省力化を実現する手法が開示されている。本手法では、基板に直接描画する配線パターンを表すベクトル形式のガーバーデータがRIP処理によって描画用ラスタデータへ展開される前に、任意の詳細表示範囲が指定されると、ガーバーデータのうち指定された詳細表示範囲に相当するデータのみが高解像度のラスタデータへ展開され、詳細表示範囲内の配線パターンを示す詳細表示画像がラスタ表示画面内に表示される。また、特許文献2では、被検査物の表面上に形成されたアライメントマークの画像データを採取し、当該画像データから抽出される特徴点、および、予め登録されたアライメントマークの特徴点より相関値を算出し、相関値の閾値に基いて、アライメントに使用するアライメントマークの画像データを登録する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−330184号公報
【特許文献2】特開2008−153572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パターン描画の前に、選択した描画ラスタデータが示すパターンを確認するために、パターンの全体を示すサムネイル(全体を示す縮小画像)を準備してディスプレイに表示することが考えられるが、この場合、微細なパターン要素の相違を判別することができず、パターンの確認が不十分となる。また、描画ラスタデータ、あるいは、描画ラスタデータの解像度をある程度低下させた画像(例えば、画素を間引いた画像)をディスプレイに表示することも考えられるが、確認すべき特徴的な領域(以下、「特徴領域」という。)を見つけるために、表示画像の拡大や縮小、あるいは、表示する領域の移動を何度も繰り返す必要があり、確認作業に長時間を要してしまう。さらに、パターンが複雑な場合には、パターンの設計者自身でなければ、特徴領域を見つけることが困難である。同様に登録したマークより描画ラスタデータ中にある近似マークを抽出する場合も長時間を要してしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、選択されたパターンにおける特徴領域を示す画像を迅速に、かつ、容易に表示することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、パターンを描画する描画装置であって、各パターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して描画ラスタデータを生成するとともに、前記描画ラスタデータの生成時に前記各パターンにおけるパターン識別用の特徴領域の位置データ、または、前記特徴領域を示すデータである部分データを生成するデータ変換部と、前記描画ラスタデータと、前記位置データまたは前記部分データとを含む集合を描画データセットとして、複数のパターンにそれぞれ対応する複数の描画データセットを記憶する記憶部と、前記複数のパターンのうち、選択されたパターンを示す描画ラスタデータと同じ描画データセットに含まれる位置データまたは部分データに基づいて、前記選択されたパターンにおける特徴領域を示す画像を表示部に表示する表示制御部と、描画ラスタデータに従って対象物上にパターンを描画する描画部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、一の描画データセットにおける部分データが、特徴領域を示す画像に参照情報を付加したものを示すラスタデータである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の描画装置であって、一の描画データセットが、描画ラスタデータと部分ラスタデータとを含み、前記描画データセットに対応するパターンを更新する際に、前記データ変換部が、更新済みのパターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して更新済み描画ラスタデータを生成するとともに、前記更新済み描画ラスタデータの生成時に、前記更新済みのパターンにおける、前記部分ラスタデータと同じ特徴領域を示す更新済み部分ラスタデータを生成し、前記描画データセットにおいて、前記描画ラスタデータが前記更新済み描画ラスタデータに更新され、前記描画データセットが前記部分ラスタデータおよび前記更新済み部分ラスタデータの双方を含み、前記更新済みのパターンが選択された際に、前記部分ラスタデータが示す画像および前記更新済み部分ラスタデータが示す画像が、前記表示制御部により前記表示部に表示可能である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の描画装置であって、各描画データセットが、複数の特徴領域の位置データ、または、前記複数の特徴領域のそれぞれを示す部分ラスタデータを含み、前記各描画データセットに対応するパターンが選択された際に、前記パターンにおける複数の特徴領域を示す複数の画像が、前記表示制御部により前記表示部に個別に表示可能である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、パターンを描画する描画方法であって、a)各パターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して描画ラスタデータを生成するとともに、前記描画ラスタデータの生成時に前記各パターンにおけるパターン識別用の特徴領域の位置データ、または、前記特徴領域を示すデータである部分データを生成する工程と、b)前記描画ラスタデータと、前記位置データまたは前記部分データとを含む集合を描画データセットとして、複数のパターンにそれぞれ対応する複数の描画データセットを記憶部にて記憶する工程と、c)前記複数のパターンのうち、選択されたパターンを示す描画ラスタデータと同じ描画データセットに含まれる位置データまたは部分データに基づいて、前記選択されたパターンにおける特徴領域を示す画像を表示部に表示する工程と、d)描画ラスタデータに従って対象物上にパターンを描画する工程とを備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の描画方法であって、一の描画データセットにおける部分データが、特徴領域を示す画像に参照情報を付加したものを示すラスタデータである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の描画方法であって、一の描画データセットが、描画ラスタデータと部分ラスタデータとを含み、前記描画データセットに対応するパターンを更新する際に、更新済みのパターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して更新済み描画ラスタデータが生成されるとともに、前記更新済み描画ラスタデータの生成時に、前記更新済みのパターンにおける、前記部分ラスタデータと同じ特徴領域を示す更新済み部分ラスタデータが生成され、前記描画データセットにおいて、前記描画ラスタデータが前記更新済み描画ラスタデータに更新され、前記描画データセットが前記部分ラスタデータおよび前記更新済み部分ラスタデータの双方を含み、前記更新済みのパターンが選択された際に、前記部分ラスタデータが示す画像および前記更新済み部分ラスタデータが示す画像が、前記表示部に表示可能である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項5ないし7のいずれかに記載の描画方法であって、各描画データセットが、複数の特徴領域の位置データ、または、前記複数の特徴領域のそれぞれを示す部分ラスタデータを含み、前記各描画データセットに対応するパターンが選択された際に、前記パターンにおける複数の特徴領域を示す複数の画像が、前記表示部に個別に表示可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、選択されたパターンにおける特徴領域を示す画像を迅速に、かつ、容易に表示することができる。
【0016】
また、請求項2および6の発明では、特徴領域を示すとともに参照情報が付加された画像を迅速に表示することができ、請求項3および7の発明では、パターンの更新前後における特徴領域を示す画像を容易に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】描画装置の構成を示すブロック図である。
【図2】描画部の正面図である。
【図3】描画部の平面図である。
【図4】描画に用いるデータの生成および選択に係る機能構成を示すブロック図である。
【図5】基板上にパターンを描画する処理の流れを示す図である。
【図6】描画データセットを準備する処理の流れを示す図である。
【図7】ジョブデータを作成する処理の流れを示す図である。
【図8】ジョブ作成ウィンドウを示す図である。
【図9】描画データ選択ウィンドウを示す図である。
【図10】全体画像ウィンドウを示す図である。
【図11】特徴領域ウィンドウを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る描画装置1の構成を示すブロック図である。描画装置1は、描画に用いるデータを生成および記憶する第1および第2コンピュータ81,82、並びに、対象物である基板上にパターンを描画する描画部100を備える。第1および第2コンピュータ81,82、並びに、描画部100のメインコンピュータ60のそれぞれは、各種演算処理を行うCPUや各種情報を記憶するRAM等を有する。第1および第2コンピュータ81,82、並びに、メインコンピュータ60が実現する機能については後述する。
【0019】
図2は、描画部100の正面図であり、図3は描画部100の平面図である。描画部100は、レジスト等の感光材料の層が形成された半導体の基板9の上面である描画面に光を照射して、パターンを描画する。なお、基板9は、プリント基板、カラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置に具備されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板等の他の様々な基板であってもよい。図2および図3の例では円形の半導体基板の表面に形成された下地パターンに重ねてパターンが描画される。描画パターンは、例えば、集積回路を外部と接続するために集積回路から延びる配線パターンである。
【0020】
描画部100では、本体フレーム101の骨格の天井面および周囲面にカバーパネル(図示省略)が取り付けられることによって本体内部が形成され、本体内部および本体外部に、各種の構成要素が配置される。図2の描画部100の本体内部は、処理領域102と受け渡し領域103とに区分される。これらの領域のうち処理領域102には、ステージ10、ステージ移動機構20、ステージ位置計測部30、光学ユニット40、アライメントユニット361、および、制御部であるメインコンピュータ60が配置される。なお、図2および図3ではメインコンピュータ60を外に描いている。図2の受け渡し領域103には、処理領域102に対する基板9の搬出入を行う搬送ロボット等の搬送装置110が配置される。メインコンピュータ60は、描画部100が備える装置各部(描画エンジン)と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する。
【0021】
描画部100の本体外部には、照明ユニット362が配置される。照明ユニット362は、アライメントユニット361に照明光を供給する。
【0022】
描画部100の本体外部で、受け渡し領域103に隣接する位置には、カセット載置部104が配置される。カセット載置部104には、カセット90が載置される。搬送装置110は、カセット載置部104に対応する位置に設けられ、カセット載置部104に載置されたカセット90に収容された未処理の基板9を取り出して処理領域102に搬入(ローディング)するとともに、処理領域102から処理済みの基板9を搬出(アンローディング)してカセット90に収容する。カセット載置部104に対するカセット90の受け渡しは、図示しない外部搬送装置によって行われる。未処理の基板9のローディングおよび処理済みの基板9のアンローディングはメインコンピュータ60からの指示に応じて搬送装置110が動作することで行われる。
【0023】
ステージ10は、平板状の外形を有し、その上面に載置された基板9を水平姿勢にて支持する支持部である。ステージ10の上面には、複数の吸引孔が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を付与することによって、ステージ10上に載置された基板9をステージ10の上面に固定保持する。基板9を支持する機構としては他の様々なものが採用されてもよい。ステージ10はステージ移動機構20により水平方向に移動する。
【0024】
ステージ移動機構20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)および回転方向(Z軸周りの回転方向(θ軸方向))に移動する。これにより、ステージ10に支持される基板9が、光学ユニット40に対して移動する。図2および図3に示すように、ステージ移動機構20は、ステージ10を回転させる回転機構21と、回転機構21を支持する支持プレート22と、支持部プレートを副走査方向に移動する副走査機構23と、副走査機構23を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25とを備える。回転機構21は、支持プレート22上で、基板9の上面に垂直な回転軸を中心としてステージ10を回転させる。回転機構21、副走査機構23および主走査機構25は、メインコンピュータ60に電気的に接続され、メインコンピュータ60からの指示に応じてステージ10を移動する。
【0025】
図3に示すように、副走査機構23は、リニアモータ23aを有する。リニアモータ23aは、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子とベースプレート24の上面に敷設された固定子とを備える。支持プレート22とベースプレート24との間には、副走査方向Xに延びる一対のガイド部23bが設けられる。リニアモータ23aが動作すると、ガイド部23bに沿って支持プレート22が副走査方向Xに移動する。
【0026】
主走査機構25は、リニアモータ25aを有する。リニアモータ25aは、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子と描画部100の基台106(図2参照)上に敷設された固定子とを備える。ベースプレート24と基台106との間には、主走査方向に延びる一対のガイド部25bが設けられる。リニアモータ25aが動作すると、基台106上のガイド部25bに沿ってベースプレート24が主走査方向Yに移動する。
【0027】
ステージ位置計測部30は、ステージ10の位置を計測する。ステージ位置計測部30は、メインコンピュータ60と電気的に接続され、メインコンピュータ60からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。ステージ位置計測部30は、例えば、ステージ10に向けてレーザ光を照射し、その反射光と出射光との干渉を利用して、ステージ10の位置を計測する。ステージ位置計測部30の構成および動作はこれに限定されるものではない。本実施の形態では、ステージ位置計測部30は、レーザ光を出射する出射部31と、ビームスプリッタ32と、ビームベンダ33と、第1干渉計34と、第2干渉計35とを備える。出射部31および各干渉計34、35は、メインコンピュータ60と電気的に接続されており、メインコンピュータ60からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。
【0028】
出射部31から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ32に入射し、ビームベンダ33に向かう第1分岐光と、第2干渉計35に向かう第2分岐光とに分岐される。第1分岐光は、第1干渉計34によるステージ10の第1の部位に対応した位置パラメータを求めるために利用される。第2分岐光は、第2干渉計35によるステージ10の第2の部位(ただし、第2の部位は、第1の部位とは異なる位置である。)に対応した位置パラメータを求めるために利用される。メインコンピュータ60は、第1干渉計34および第2干渉計35から、ステージ10の第1および第2の部位の位置に対応した位置パラメータを取得する。そして、各位置パラメータに基づいて、ステージ10の位置を算出する。
【0029】
図2のアライメントユニット361は、基板9の上面に形成された基準マークを撮像する。アライメントユニット361は、照明ユニット362のほか、鏡筒、対物レンズ、および、CCDイメージセンサを備える。CCDイメージセンサは、例えば、エリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)である。
【0030】
照明ユニット362は、ファイバ363を介してアライメントユニット361に接続され、アライメントユニット361に照明用の光を供給する。ファイバ363によって導かれる光は、鏡筒を介して基板9の上面に導かれ、その反射光は、対物レンズを介してCCDイメージセンサで受光される。これにより、基板9の上面が撮像される。CCDイメージセンサは、メインコンピュータ60と電気的に接続され、メインコンピュータ60からの指示に応じて撮像データを取得し、撮像データをメインコンピュータ60に送信する。アライメントユニット361はオートフォーカス可能なオートフォーカスユニットをさらに備えてもよい。
【0031】
光学ユニット40は、光源部41と、2つの光学ヘッド42(図3参照)とを備え、空間変調された光を基板9に照射する光照射部である。光学ヘッド42は光源部41から与えられるレーザ光を空間変調する。光源部41は、レーザ駆動部411と、光源であるレーザ発振器412と、照明光学系413とを備える。これらの構成要素は、各光学ヘッド42に対応して設けられる。レーザ駆動部411の作動によりレーザ発振器412からレーザ光が出射され、照明光学系413を介して光学ヘッド42に導入される。
【0032】
光学ヘッド42は、空間光変調器、光学系、照射位置シフト機構、および、投影光学系を備える。光学系は、光源部41からの光を空間光変調器へと導き、空間光変調器は、導入された光を空間変調する。照射位置シフト機構は、一対のウェッジプリズムを備え、一対のウェッジプリズムの間の距離を変更することにより光軸をシフトさせ、基板9の上面において描画位置を副走査方向に相対的にシフトさせる。投影光学系は、照射位置シフト機構からの光を基板9の上面に導く。
【0033】
空間光変調器は、例えば回折格子型かつ反射型であり、格子の深さを変更することができる回折格子である。空間光変調器は、半導体装置製造技術を利用して製造される。本実施の形態に用いられる回折格子型の光変調器は、例えば、GLV(グレーティング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サニーベール、カリフォルニア)の登録商標)である。GLVを使用することにより、メインコンピュータ60から与えられる照射制御データに応じて、画素単位で光の照射量を多段階に変更することができる。空間光変調器は複数の格子要素を有し、各格子要素は1次回折光が出射される状態と、0次回折光が出射される状態との間で遷移する。光学ユニット40では、1次回折光は遮光板にて遮光され、基板9へは導かれない。一方、0次回折光は、照射位置シフト機構および投影光学系を介して基板9へと導かれる。
【0034】
図4は、描画に用いるデータの生成および選択に係る描画装置1の機能構成を示すブロック図である。図4のデータ変換部811は、第1コンピュータ81のCPU等により実現され、ジョブ作成部600は、メインコンピュータ60のCPU等により実現される。また、記憶部821は、第2コンピュータ82の固定ディスク等により実現され、表示部であるディスプレイ602はメインコンピュータ60に設けられる。
【0035】
図5は、基板9上にパターンを描画する処理の流れを示す図である。描画装置1において基板9上にパターンを描画する際には、事前準備として、互いに異なる複数のパターンにそれぞれ対応する複数の描画データセットが準備される(ステップS1)。以下、描画装置1において描画データセットを準備する処理について図6を参照して説明する。
【0036】
描画データセットの準備では、外部のコンピュータ(CAD/CAM用コンピュータ)において所定のパターン(以下、「対象パターン」という。)の全体を示すベクトルデータ(CADデータ)が作成され、当該ベクトルデータが描画装置1の第1コンピュータ81に入力される。例えば、パターンの設計者である作業者が、第1コンピュータ81において所定のプログラムを実行すると、図4のデータ変換部811により、ベクトルデータに基づいて対象パターンが第1コンピュータ81のディスプレイに表示される。作業者がディスプレイ上の対象パターンを参照しつつ、入力部を介して特徴的な部分を示す複数の領域(すなわち、特徴領域)を特定することにより、データ変換部811において、各特徴領域の位置および大きさを示す情報が受け付けられる。
【0037】
そして、データ変換を指示する入力が行われることにより、当該ベクトルデータがラスタ変換されてラスタデータ(対象パターンの全体を示すラスタデータであり、以下、「描画ラスタデータ」という。)が生成されるとともに、対象パターンにおける各特徴領域のみを示すラスタデータである部分ラスタデータが生成される(ステップS11)。データ変換部811では、対象パターンの全体を示すサムネイルのデータ(ラスタデータ)、および、描画ラスタデータが示す画像の解像度を低下させた全体画像である補助全体画像(ただし、サムネイルよりも十分に高解像度である。)のデータも生成される。なお、部分ラスタデータの解像度は、描画ラスタデータの解像度と同じであることが好ましい。
【0038】
本実施の形態では、描画ラスタデータ、部分ラスタデータ、サムネイルのデータ、および、補助全体画像のデータのそれぞれが1つのデータファイルとして生成され、以下の説明では、それぞれ描画ラスタデータファイル、部分ラスタデータファイル、サムネイルデータファイル、補助全体画像データファイルとも呼ぶ。また、各部分ラスタデータファイルが示す特徴領域の対象パターンにおける座標が、当該部分ラスタデータファイルのファイル名に含められる。すなわち、部分ラスタデータファイルは特徴領域の位置も含む情報である。
【0039】
続いて、部分ラスタデータファイルが示す画像が第1コンピュータ81のディスプレイに表示される。そして、特徴領域における注目すべき部位を指示するマークや、当該部位への着色、あるいは、特徴領域についてのコメント等の参照情報の付加を、作業者が入力部を介して指示することにより、部分ラスタデータファイルが、特徴領域を示す画像に参照情報を付加したものを示すデータファイルに更新される(ステップS12)。部分ラスタデータファイルは一般的な画像ファイル形式にて生成されることが好ましく、この場合、部分ラスタデータを生成する機能と、部分ラスタデータが示す画像に参照情報を付加する機能とを異なるプログラムや異なるコンピュータを用いて実現することが容易に可能である。なお、ステップS11における部分ラスタデータの生成前に参照情報の内容を入力することにより、ステップS11において、特徴領域を示す画像に参照情報を付加したものを示す部分ラスタデータが生成されてもよい。
【0040】
データ変換部811では、描画ラスタデータファイル511、複数の部分ラスタデータファイル512、サムネイルデータファイル513および補助全体画像データファイル514を含む集合が、描画データセット51として互いに関連付けられ(図4参照)、第1コンピュータ81の固定ディスク等に記憶される。実際には、一の描画データセット51に含まれる描画ラスタデータファイル511、複数の部分ラスタデータファイル512、サムネイルデータファイル513および補助全体画像データファイル514は、1つのデータフォルダ内に保存される。描画データセット51は第1コンピュータ81から第2コンピュータ82に出力され、第2コンピュータ82の記憶部821にも記憶される(ステップS13)。
【0041】
描画装置1では、パターンの全体を示すベクトルデータが第1コンピュータ81に入力される毎に、上記ステップS11〜S13の処理が繰り返され、複数の描画データセット51が記憶部821にて記憶されて準備される。図5では、ステップS11〜S13を繰り返す処理の図示を省略している。なお、第1コンピュータ81にて生成される全ての描画データセット51が必ずしも記憶部821に記憶される必要はなく、例えば、第1コンピュータ81、第2コンピュータ82またはメインコンピュータ60からの指示に基づいて、第1コンピュータ81に保存された複数の描画データセット51のうち必要な描画データセット51のみが第2コンピュータ82に出力されて記憶部821に記憶されてもよい。
【0042】
複数の描画データセット51が準備されると、カセット90内に保持される複数の基板9に描画すべきパターンや各種描画条件を指示するジョブデータが作成される(図5:ステップS2)。以下、描画装置1においてジョブデータを作成する処理について図7を参照して説明する。
【0043】
本実施の形態におけるジョブデータの作成では、パターンの設計者とは異なる者が作業者である(もちろん、パターンの設計者が作業者であってもよい。)。作業者がメインコンピュータ60において所定のプログラムを実行すると、図4のジョブ作成部600の表示制御部601により、図8に示すジョブ作成ウィンドウ71がメインコンピュータ60のディスプレイ602に表示される。ジョブ作成ウィンドウ71内には基板選択部711が設けられる。本実施の形態では、カセット90内に25個の基板の収容位置が設定されており、基板選択部711では1ないし25の番号によりカセット90内の収容位置が特定可能である。
【0044】
続いて、基板選択部711における所望の番号が、作業者により入力部を介して選択される(ステップS21)。本実施の形態では、所望の番号がマウスのクリックにより選択される。以下の説明では、マウスのクリックによる選択を、単に「クリック」という。もちろん、キーボード等による入力により選択が行われてもよい。基板選択部711における番号の選択により、以下の処理にて、当該番号の収容位置(以下、「対象収容位置」という。)に配置される基板9に描画すべきパターンの登録、および、当該基板9への描画時における各種描画条件(例えば、描画時の光量やアライメントマークの指定等)を示すレシピの登録が可能となる。なお、ステップS21の処理において複数の番号が選択されてもよく、この場合、当該複数の番号の収容位置の集合を対象収容位置として、以下の処理が行われる。
【0045】
対象収容位置が選択されると、ジョブ作成ウィンドウ71内の描画データ選択ボタン712をクリックすることにより、図9に示すように、描画データ選択ウィンドウ72がディスプレイ602に表示される。描画データ選択ウィンドウ72のファイル名表示領域721では、第2コンピュータ82の記憶部821に記憶される全ての描画データセット51における描画ラスタデータファイル511のファイル名(図9中にて符号726を付す矢印にて示す。)が表示される。このとき、これらの描画データセット51に含まれる部分ラスタデータファイル512、サムネイルデータファイル513および補助全体画像データファイル514が、メインコンピュータ60に転送されてメインコンピュータ60のメモリにて記憶される。また、描画データ選択ウィンドウ72において、描画ラスタデータファイル511の各ファイル名726の右側には、当該描画ラスタデータファイル511と同じ描画データセット51に含まれるサムネイルデータファイル513が示すサムネイル727が表示される。なお、ファイル名表示領域721において各描画ラスタデータファイル511の作成日等の他の情報が表示されてよい。
【0046】
描画データ選択ウィンドウ72において、一の描画ラスタデータファイル511のファイル名726を選択した後、画像表示ボタン724をクリックすることにより、図10に示すように、全体画像ウィンドウ73がディスプレイ602に表示される(ステップS22,S23)。全体画像ウィンドウ73の画像表示領域731には、当該描画ラスタデータファイル511と同じ描画データセット51に含まれる補助全体画像データファイル514が示す画像(すなわち、補助全体画像)が表示され、当該画像はパターンの全体を示す。全体画像ウィンドウ73では、拡大ボタン732および縮小ボタン733が設けられており、画像表示領域731に表示される画像の拡大および縮小が可能である。また、横方向移動ボタン群734および縦方向移動ボタン群735も設けられており、画像表示領域731に表示されるパターン上の領域の位置を変更することが可能である。なお、「閉じる」と記載された終了ボタン736をクリックすると、全体画像ウィンドウ73が閉じられる。
【0047】
一方、図9の描画データ選択ウィンドウ72において、一の描画ラスタデータファイル511のファイル名726を選択した後、展開ボタン722をクリックすることにより、当該ファイル名726の下方に、複数の部分ラスタデータファイル512のファイル名728(1つのファイル名に符号728aを付している。)が表示される。描画ラスタデータファイル511のファイル名726の前には黒塗りの三角または白塗りの三角が表示されており、黒塗りの三角は、当該描画ラスタデータファイル511と同じ描画データセット51に含まれる部分ラスタデータファイル512のファイル名728がファイル名表示領域721に表示されていない状態(すなわち、折りたたまれた状態)を示す。また、白塗りの三角は、当該描画ラスタデータファイル511と同じ描画データセット51に含まれる部分ラスタデータファイル512のファイル名728がファイル名表示領域721に表示されている状態(すなわち、展開されている状態)を示す。
【0048】
また、部分ラスタデータファイル512のファイル名728が表示されている状態において、折りたたみボタン723をクリックすることにより、部分ラスタデータファイル512のファイル名728が表示されていない状態に変更することが可能である。なお、図9では、一部の部分ラスタデータファイル512のファイル名728の前に、描画ラスタデータファイル511のファイル名726と同様に、黒塗りの三角または白塗りの三角が表示されている。また、白塗りの三角が表示された部分ラスタデータファイル512のファイル名728aの下には、他の部分ラスタデータファイル512のファイル名729が表示されているが、当該他の部分ラスタデータファイル512の内容については後述する。
【0049】
描画データ選択ウィンドウ72において、一の部分ラスタデータファイル512のファイル名728を選択した後、画像表示ボタン724をクリックすることにより、図11に示すように、特徴領域ウィンドウ74がディスプレイ602に表示される(ステップS24,S25)。特徴領域ウィンドウ74の画像表示領域741には、当該部分ラスタデータファイル512が示す画像が表示され、当該画像は特徴領域を示す。既述のように、部分ラスタデータファイル512が示す画像では、参照情報が付加されており、図11では、特徴領域における注目すべき部位を指示するマークである円A1が表示される。
【0050】
描画装置1では、画像表示領域741の画像が作業者により視認される。具体的には、対象収容位置に配置される基板9に描画すべきパターンの特徴領域を示す画像がプリント紙にプリントされて予め準備されており、プリント紙上の当該画像と画像表示領域741の画像とが比較される。これにより、当該部分ラスタデータファイル512と同じ描画データセット51に含まれる描画ラスタデータファイル511が、対象収容位置に配置される基板9に描画すべきパターンを示すものであるか否かの確認が行われる。ここでは、図9中のファイル名「画像1-4-A-1.0.2」の部分ラスタデータファイル512の画像がディスプレイ602に表示され、ファイル名「Layer_1_AAA」の描画ラスタデータファイル511が、所望のパターンを示すものであるか否かが確認される。
【0051】
実際には、図9の描画データ選択ウィンドウ72において、複数の部分ラスタデータファイル512のファイル名728を選択した後、画像表示ボタン724をクリックすることにより、複数の特徴領域を示す複数の特徴領域ウィンドウ74をディスプレイ602に同時に表示することが可能である。したがって、同一の描画ラスタデータファイル511に対応する複数の特徴領域を表示することにより、当該描画ラスタデータファイル511が示すパターンの確認を確実に行うことが可能となる。
【0052】
特徴領域ウィンドウ74では、全体画像ウィンドウ73と同様に、拡大ボタン742および縮小ボタン743が設けられており、画像表示領域741に表示される画像の拡大および縮小が可能である。また、横方向移動ボタン群744および縦方向移動ボタン群745も設けられており、画像表示領域741に表示されるパターン上の領域の位置を変更することが可能である。なお、「閉じる」と記載された終了ボタン746をクリックすると、特徴領域ウィンドウ74が閉じられる。
【0053】
以上の作業により、または、必要に応じて他の描画ラスタデータファイル511に対応する補助全体画像の表示(ステップS22,S23)、もしくは、特徴領域の表示(ステップS24,S25)を繰り返すことにより(ステップS26)、対象収容位置に配置される基板9に描画すべきパターンを示す描画ラスタデータファイル511が特定される。続いて、図9の描画データ選択ウィンドウ72において、当該描画ラスタデータファイル511のファイル名726が選択される。そして、決定ボタン725をクリックすることにより、図8のジョブ作成ウィンドウ71において、描画データ登録部713に、当該描画ラスタデータファイル511のファイル名が表示されて当該描画ラスタデータファイル511が登録される(ステップS26,S27)。
【0054】
また、ジョブ作成ウィンドウ71内のレシピ選択ボタン714をクリックすることにより、予め登録されている複数のレシピデータファイルのファイル名を示すウィンドウが表示され、作業者により複数のレシピデータファイルから1つのレシピデータファイルが選択される。これにより、図8のジョブ作成ウィンドウ71において、レシピ登録部715に、当該レシピデータファイルのファイル名が表示されて当該レシピデータファイルが登録される(ステップS28)。既述のように、レシピデータファイルは、描画部100における各種描画条件を示すものであり、以上の処理により、対象収容位置に配置される基板9に描画すべきパターンの登録、および、当該基板9への描画時における描画条件を示すレシピの登録が完了する。なお、レシピデータファイルの登録が、描画ラスタデータファイル511の登録よりも先に行われてもよい。
【0055】
描画装置1では、カセット90における全ての収容位置に対する描画ラスタデータファイル511の登録、および、レシピデータファイルの登録が完了するまで、上記ステップS21〜S28の処理が繰り返される(ステップS29)。これにより、ジョブデータが作成される。なお、上記ジョブデータの作成において、基板9が配置されない収容位置が存在する場合等には、当該収容位置を無視することを指示する入力が行われる。
【0056】
以上の処理によりジョブデータが作成されると、ジョブデータに従ってパターンが描画される(図5:ステップS3)。図2および図3の描画部100におけるパターンの描画では、カセット90内の最初の処理対象の基板9が搬送装置110によりカセット90から搬出され、ステージ10に載置される。続いて、アライメントユニット361の出力に基づいて、回転機構21が制御され、基板9へのパターン描画に適した向きに基板9がアライメント(位置合わせ)される。
【0057】
また、ジョブデータに従ってメインコンピュータ60が第2コンピュータ82にデータ要求信号を出力することにより、第2コンピュータ82において、最初の基板9に対して登録された描画ラスタデータファイル511から、基板9上の1ストライプ(1スワス)分の描画データであるストライプデータが生成される。ストライプデータは、光学ユニット40の空間光変調器およびステージ移動機構20を制御するためのデータであり、第2コンピュータ82からメインコンピュータ60に入力される。描画部100では、ストライプデータおよび基板9に対して登録されたレシピデータファイルに従って、光学ユニット40の光学ヘッド42およびステージ移動機構20が制御され、パターン描画が行われる。
【0058】
具体的には、主走査機構25により基板9が、その主面に平行な主走査方向への移動を開始し、基板9の光学ユニット40に対する相対移動に並行して、2つの光学ヘッド42からの空間変調された光の基板9への照射が、2つのストライプに対応する領域(以下、「ストライプ領域」という。)の先頭から開始される。これにより、パターンの描画が開始される。ストライプ領域の最後まで描画が行われると、光学ヘッド42からの光の出射が一時的に停止され、基板9の主走査方向への移動も停止され、副走査機構23により基板9が主走査方向に垂直かつ基板9の主面に平行な副走査方向にストライプ領域の幅だけ移動する。そして、基板9が前回の主走査とは逆方向に移動しつつ2つの光学ヘッド42により2つのストライプ領域への描画が行われる。基板9の副走査方向への移動および主走査方向への移動が繰り返されて全ストライプの描画が完了すると、搬送装置110により基板9が搬出され、カセット90に収納される。各光学ヘッド42は、基板9の半分の描画を担う。
【0059】
以上のようにして最初の基板9へのパターン描画が完了すると、上記と同様にして、次の処理対象の基板9に対してパターンが描画される。描画装置1では、上記処理が繰り返され、カセット90内の処理対象の全ての基板9に対してパターンの描画が行われる。
【0060】
ところで、例えば、基板9上に形成されたパターン要素が所望の線幅とならない場合や、パターン要素の角部が所望の形状とならない場合等には、パターンを更新(修正)して描画に用いられるデータ(描画ラスタデータ)を再度生成する必要がある。このように、一の描画データセット51(以下、「対象描画データセット51」という。)に対応するパターンを更新する必要がある場合には、外部のコンピュータにおいて当該パターンを更新したパターンを示すベクトルデータが作成され、第1コンピュータ81に入力される。データ変換部811では、更新済みのパターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して新たな描画ラスタデータ(以下、更新前のパターンの全体を示す描画ラスタデータと区別する場合に、「更新済み描画ラスタデータ」という。)が生成される。
【0061】
また、データ変換部811では、対象描画データセット51に含まれる各部分ラスタデータファイル512(すなわち、更新前のパターンにおける部分ラスタデータファイル512であり、以下、「更新前の部分ラスタデータファイル512」ともいう。)のファイル名を参照することにより、当該部分ラスタデータファイル512が示す特徴領域の座標が取得可能である。これにより、更新済み描画ラスタデータの生成時に、更新済みのパターンにおける、当該部分ラスタデータと同じ特徴領域を示す部分ラスタデータ(以下、更新前の部分ラスタデータと区別する場合に、「更新済み部分ラスタデータ」という。)も生成される(図6:ステップS11)。このとき、パターンの改訂番号(版数)が、更新済み部分ラスタデータファイルのファイル名に含められる。なお、各部分ラスタデータファイル512が示す特徴領域の位置情報が第1コンピュータ81において別途記憶され、当該位置情報を用いて更新済み部分ラスタデータが生成されてもよい。また、新規の特徴領域を示す部分ラスタデータが生成されてよい。
【0062】
続いて、必要に応じて、更新済み部分ラスタデータが示す画像に参照情報が付加される(ステップS12)。そして、第2コンピュータ82の記憶部821では、対象描画データセット51において、元の描画ラスタデータが更新済み描画ラスタデータに置き換えられて更新される。また、更新前の部分ラスタデータおよび更新済み部分ラスタデータの双方が、対象描画データセット51に含められる(ステップS13)。
【0063】
図7のステップS24,S25において、図9の描画データ選択ウィンドウ72では、更新済み部分ラスタデータファイルのファイル名728aが表示されており、当該更新済み部分ラスタデータファイルのファイル名728aを選択した後、展開ボタン722をクリックすることにより、当該ファイル名728aの下方に、更新前の部分ラスタデータファイルのファイル名729が表示される(図9では既に表示されている。)。更新前の部分ラスタデータファイルのファイル名729を選択した後、画像表示ボタン724をクリックすると、図11と同様の特徴領域ウィンドウ74がディスプレイ602に表示される。特徴領域ウィンドウ74の画像表示領域741には、当該更新前の部分ラスタデータファイルが示す画像が表示され、当該画像は更新前のパターンにおける特徴領域を示す。したがって、更新前の部分ラスタデータファイルに対応する特徴領域ウィンドウ74、および、更新済み部分ラスタデータファイルに対応する特徴領域ウィンドウ74を表示することにより、更新前後のパターン(例えば、線幅の変更前後)における特徴領域を比較することが可能となる。
【0064】
ここで、比較例の描画装置について述べる。比較例の描画装置では、部分ラスタデータファイルが生成されず、図5のステップS2のジョブデータの作成では、図11に示す特徴領域ウィンドウ74のディスプレイへの表示が不能である。したがって、選択した描画ラスタデータファイル511が示すパターンを作業者が確認する際には、図10に示す全体画像ウィンドウ73をディスプレイに表示し、画像表示領域731に表示される画像の拡大や縮小、あるいは、移動を何度も繰り返して確認すべき特徴領域を見つけ出す必要がある。したがって、確認作業に長時間を要してしまう。
【0065】
これに対し、描画装置1では、各パターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して描画ラスタデータを生成する際に、当該パターンにおけるパターン識別用の特徴領域を示すデータである部分ラスタデータが生成される。そして、描画すべきパターンの選択(すなわち、描画ラスタデータの選択)を行う際に、複数のパターンのうち、選択されたパターンを示す描画ラスタデータと同じ描画データセット51に含まれる部分ラスタデータに基づいて、当該選択されたパターンにおける特徴領域を示す画像がディスプレイ602に表示される。これにより、選択されたパターンにおける特徴領域を示す画像を迅速に、かつ、容易に表示することができ、作業者において当該パターンの正誤の確認(描画すべきパターンであるか否かの確認)を効率よく行うことができる。また、パターンの設計者等が、実際のパターン描画において選択すべき描画ラスタデータのファイル名と、当該描画ラスタデータと同じ描画データセット51に含まれる部分ラスタデータが示す画像とをプリントした指示書を準備することにより、描画すべきパターンについての情報を有しない作業者であっても、特徴領域を示す画像を表示しつつ当該指示書を参照してパターンの正誤の確認を確実に行うことができる。その結果、誤ったファイル名を選択して誤ったパターンが基板9に描画されることを防止することができる。
【0066】
また、描画データセット51における部分ラスタデータとして、特徴領域を示す画像に参照情報を付加したものを示すラスタデータが生成されることにより、特徴領域を示すとともに参照情報が付加された画像を迅速に表示することができ、誤ったパターンが描画されることをさらに防止することができる。
【0067】
さらに、一の描画データセット51に対応するパターンを更新する際に、更新済みのパターンにおける特徴領域を示す更新済み部分ラスタデータが生成され、ジョブデータの作成において更新済みのパターンが選択された際に、更新前の部分ラスタデータが示す画像および更新済み部分ラスタデータが示す画像がディスプレイ602に表示可能である。これにより、パターンの更新前後における特徴領域を示す画像を容易に表示することができ、描画すべきパターンの確認をより確実に行うことができる。
【0068】
描画装置1では、各描画データセット51が、複数の特徴領域のそれぞれを示す部分ラスタデータを含み、各描画データセット51に対応するパターンが選択された際に、当該パターンにおける複数の特徴領域を示す複数の画像がディスプレイ602に個別に表示可能である。その結果、作業者において各パターンにおける複数の特徴領域を容易に視認することができ、描画すべきパターンであるか否かの確認をより確実に行うことができる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0070】
上記実施の形態では、データ変換部811において特徴領域を示すラスタデータである部分ラスタデータが生成されるが、パターンの全体を示すベクトルデータから、特徴領域を示すベクトルデータである部分ベクトルデータが生成されてもよい。この場合、ジョブ作成部600の表示制御部601により、選択されたパターンを示す描画ラスタデータと同じ描画データセット51に含まれる部分ベクトルデータに基づいて、当該パターンにおける特徴領域を示す画像がディスプレイ602に表示される。部分ベクトルデータのデータサイズは十分に小さいため、選択されたパターンにおける特徴領域を示す画像を迅速に表示することができる。
【0071】
また、データ変換部811において、部分ラスタデータに代えて特徴領域の位置データが生成されてもよい。この場合、表示制御部601では、選択されたパターンを示す描画ラスタデータと同じ描画データセット51に含まれる位置データに基づいて、当該描画ラスタデータから特徴領域を示す部分が抽出され、当該パターンにおける特徴領域を示す画像がディスプレイ602に迅速に表示される。以上のように、描画装置1では、各パターンを示す描画ラスタデータの生成時に、当該パターンにおけるパターン識別用の特徴領域の位置データ、または、当該特徴領域を示すデータである部分データ(すなわち、部分ラスタデータまたは部分ベクトルデータ)が生成される。そして、記憶部821において、描画ラスタデータと、当該位置データまたは当該部分データとを含む集合を描画データセット51として記憶することにより、選択されたパターン(すなわち、選択された描画ラスタデータ)における特徴領域を示す画像を、位置データまたは部分データに基づいて迅速に、かつ、容易に表示することができる。もちろん、描画データセット51において複数の特徴領域の位置データが含まれてよい。
【0072】
特徴領域を示す画像は、ジョブデータの作成時以外において表示されてよく、例えば、基板9上へのパターン描画の直前において、作成済みのジョブデータの内容を確認する際に、描画データセット51に含まれる位置データまたは部分データに基づいて、特徴領域を示す画像がディスプレイに表示されてよい。
【0073】
また、描画データセット51が、第2コンピュータ82またはメインコンピュータ60にて生成されてよく、複数の描画データセット51が、第1コンピュータ81またはメインコンピュータ60の記憶部にて記憶されてよい。また、特徴領域の位置データまたは特徴領域を示す部分データに基づく特徴領域の表示は、第1コンピュータ81または第2コンピュータ82の表示部にて行われてもよい。さらに、描画データセット51の生成および記憶、並びに、特徴領域の表示は、1つまたは2つのコンピュータ、あるいは、4個以上のコンピュータにより実現されてもよく、これらの処理の一部または全部が、専用の電気的回路を用いて実現されてもよい。
【0074】
描画部100により描画ラスタデータに従ってパターンが描画される対象物は、基板9以外に、感光材料の層が形成されたフィルム等であってもよい。また、描画部100における光学ヘッドは変調された光を出射するものであるならば、いかなる構成であってもよい。また、描画部は電子線等によりパターンを描画するものであってもよい。
【0075】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0076】
1 描画装置
9 基板
51 描画データセット
100 描画部
511 描画ラスタデータファイル
512 部分ラスタデータファイル
601 表示制御部
602 ディスプレイ
741 画像表示領域
811 データ変換部
821 記憶部
A1 円
S3,S11,S13,S25 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを描画する描画装置であって、
各パターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して描画ラスタデータを生成するとともに、前記描画ラスタデータの生成時に前記各パターンにおけるパターン識別用の特徴領域の位置データ、または、前記特徴領域を示すデータである部分データを生成するデータ変換部と、
前記描画ラスタデータと、前記位置データまたは前記部分データとを含む集合を描画データセットとして、複数のパターンにそれぞれ対応する複数の描画データセットを記憶する記憶部と、
前記複数のパターンのうち、選択されたパターンを示す描画ラスタデータと同じ描画データセットに含まれる位置データまたは部分データに基づいて、前記選択されたパターンにおける特徴領域を示す画像を表示部に表示する表示制御部と、
描画ラスタデータに従って対象物上にパターンを描画する描画部と、
を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置であって、
一の描画データセットにおける部分データが、特徴領域を示す画像に参照情報を付加したものを示すラスタデータであることを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
一の描画データセットが、描画ラスタデータと部分ラスタデータとを含み、
前記描画データセットに対応するパターンを更新する際に、前記データ変換部が、更新済みのパターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して更新済み描画ラスタデータを生成するとともに、前記更新済み描画ラスタデータの生成時に、前記更新済みのパターンにおける、前記部分ラスタデータと同じ特徴領域を示す更新済み部分ラスタデータを生成し、
前記描画データセットにおいて、前記描画ラスタデータが前記更新済み描画ラスタデータに更新され、前記描画データセットが前記部分ラスタデータおよび前記更新済み部分ラスタデータの双方を含み、
前記更新済みのパターンが選択された際に、前記部分ラスタデータが示す画像および前記更新済み部分ラスタデータが示す画像が、前記表示制御部により前記表示部に表示可能であることを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の描画装置であって、
各描画データセットが、複数の特徴領域の位置データ、または、前記複数の特徴領域のそれぞれを示す部分ラスタデータを含み、
前記各描画データセットに対応するパターンが選択された際に、前記パターンにおける複数の特徴領域を示す複数の画像が、前記表示制御部により前記表示部に個別に表示可能であることを特徴とする描画装置。
【請求項5】
パターンを描画する描画方法であって、
a)各パターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して描画ラスタデータを生成するとともに、前記描画ラスタデータの生成時に前記各パターンにおけるパターン識別用の特徴領域の位置データ、または、前記特徴領域を示すデータである部分データを生成する工程と、
b)前記描画ラスタデータと、前記位置データまたは前記部分データとを含む集合を描画データセットとして、複数のパターンにそれぞれ対応する複数の描画データセットを記憶部にて記憶する工程と、
c)前記複数のパターンのうち、選択されたパターンを示す描画ラスタデータと同じ描画データセットに含まれる位置データまたは部分データに基づいて、前記選択されたパターンにおける特徴領域を示す画像を表示部に表示する工程と、
d)描画ラスタデータに従って対象物上にパターンを描画する工程と、
を備えることを特徴とする描画方法。
【請求項6】
請求項5に記載の描画方法であって、
一の描画データセットにおける部分データが、特徴領域を示す画像に参照情報を付加したものを示すラスタデータであることを特徴とする描画方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の描画方法であって、
一の描画データセットが、描画ラスタデータと部分ラスタデータとを含み、
前記描画データセットに対応するパターンを更新する際に、更新済みのパターンの全体を示すベクトルデータをラスタ変換して更新済み描画ラスタデータが生成されるとともに、前記更新済み描画ラスタデータの生成時に、前記更新済みのパターンにおける、前記部分ラスタデータと同じ特徴領域を示す更新済み部分ラスタデータが生成され、
前記描画データセットにおいて、前記描画ラスタデータが前記更新済み描画ラスタデータに更新され、前記描画データセットが前記部分ラスタデータおよび前記更新済み部分ラスタデータの双方を含み、
前記更新済みのパターンが選択された際に、前記部分ラスタデータが示す画像および前記更新済み部分ラスタデータが示す画像が、前記表示部に表示可能であることを特徴とする描画方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかに記載の描画方法であって、
各描画データセットが、複数の特徴領域の位置データ、または、前記複数の特徴領域のそれぞれを示す部分ラスタデータを含み、
前記各描画データセットに対応するパターンが選択された際に、前記パターンにおける複数の特徴領域を示す複数の画像が、前記表示部に個別に表示可能であることを特徴とする描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−57731(P2013−57731A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194848(P2011−194848)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】