説明

揮発性有機化合物の処理装置および処理方法

【課題】比較的高濃度の揮発性有機化合物(VOC)と空気との混合ガス(VOCガス)を効率よく処理する。
【解決手段】VOCガスを供給する給気手段11と、該給気手段11から供給されたVOCガスを圧縮する圧縮機21と、該圧縮機21にて圧縮されたVOCガスに燃料を補給して燃焼させる燃焼器23と、燃焼器23にて生成した燃焼ガスにより駆動され前記圧縮機21に接続されたタービン24とを備えるVOC処理装置10において、給気手段11におけるVOCガス中のVOCの濃度、燃焼器23における前記燃焼ガスの温度および給気手段11におけるVOCガスの圧力から選ばれる一または複数の情報に基づいて、VOCガスに代えて空気またはVOCガスと空気とを圧縮機21に供給するように制御される切替弁12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)と空気との混合ガス(以下、「VOCガス」という場合がある。)を効率よく処理するための処理装置および処理方法に関する。特に、乾燥オーブンを有する溶剤型塗工機から排出される比較的濃度の高いVOCガスを効率よく処理するための処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染防止法の改定に基づき、大気中への揮発性有機化合物(VOC)の排出が規制され、工場等の施設から排出される排気中のVOCを処理する必要がある。従来、VOCを処理する方法としては、排気ガス中のVOCを燃焼する方法が知られている。燃焼に際しては、単純に燃焼する方法と、VOCを活性炭やゼオライト等の吸着剤で吸着し濃縮して燃焼する方法、蓄熱材を用いて熱を再生しながら燃焼する方法、白金触媒等を用いて酸化させる方法等が知られている。
しかし、燃焼熱の利用だけでは効率化に限界があり、併せて他のエネルギー形態で利用することで相乗効果を計る提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、臭気ガスを含む空気を集めるための吸込みダクトと、該吸込みダクトからの吸込み空気を圧縮するコンプレッサと、該コンプレッサによる圧縮空気に燃料を投入して燃焼させる燃焼器と、該燃焼器で生成した燃焼ガスによって駆動されるタービンとを具備し、タービンとコンプレッサが回転軸で直結されてガスタービン構造をなした脱臭装置において、脱臭動作中、タービン入口部分における燃焼ガス温度を臭気ガスが分解される温度以上に制御される機能を有し、さらに前記回転軸により駆動されて臭気ガスを含まない空気を圧縮する第2のコンプレッサを具備した脱臭・圧縮装置が記載されている。
また、特許文献2には、過給機と、該過給機のコンプレッサーの空気出口とタービンの排気ガス入口とを連絡する通路に設けた燃焼器と、過給機のコンプレッサーの空気入口に連絡され該コンプレッサーに有機廃棄物排出源から有機成分含有空気を供給するダクトと、前記燃焼器に有機廃棄物排出源から有機成分含有廃液を供給する廃液供給管とを備える有機成分含有空気および廃液の処理装置が記載されている。また、過給機の回転軸の回転速度が許容値を超えたときに、有機成分含有空気の供給量と有機成分含有廃液の供給量とを制限し、前記過給機の過速度を防止する保護装置を設けることが記載されている。
【特許文献1】特開2002−004890号公報
【特許文献2】特開2004−037038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの文献に記載されるVOCガスは、塗装工場や印刷工場から排出されるものであり、濃度が低い。通常、装置や施設内の安全性の観点より爆発下限界の1/4程度の濃度まで安全に取り扱うことが可能であり、これらのVOCガスの濃度は、爆発下限界の1/4まで達しないので、VOCガスをそのまま燃焼させてもバックファイアー(爆発)のおそれはほとんどない。
一方、溶剤型塗工機においては、塗工物質を溶剤に溶かして塗工対象物に塗工した後、乾燥オーブンで温度をかけて溶剤だけを効率よく揮発させて乾燥させるので、溶剤型塗工機から排出されるVOCガスは、比較的濃度の高いものとなる。
また、溶剤型塗工機に用いられる溶剤は、常温における爆発下限界は明確に把握されているが、VOCを分解するのに必要な650℃以上の温度における爆発下限界は、必ずしも明確にはなっていない。
さらに、これらの溶剤は、必ずしも一種単独で用いられるとは限らず、塗工物質によっては混合溶剤を用いることもある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、比較的高濃度の揮発性有機化合物(VOC)と空気との混合ガスを効率よく処理するための処理装置および処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、揮発性有機化合物と空気との混合ガスを供給する給気手段と、該給気手段から供給された前記混合ガスを圧縮する圧縮機と、該圧縮機にて圧縮された前記混合ガスに燃料を補給して燃焼させる燃焼器と、該燃焼器にて生成した燃焼ガスにより駆動され前記圧縮機に接続されたタービンとを備える揮発性有機化合物と空気との混合ガスの処理装置であって、該処理装置は、前記給気手段における前記混合ガス中の揮発性有機化合物の濃度、燃焼器における前記燃焼ガスの温度および前記給気手段における前記混合ガスの圧力から選ばれる一または複数の情報に基づいて前記混合ガスに代えて空気または前記混合ガスと空気とを前記圧縮機に供給するように制御される切替弁を有することを特徴とする揮発性有機化合物の処理装置を提供する。
【0007】
前記揮発性有機化合物の処理装置は、さらに、前記給気手段における揮発性有機化合物の濃度を測定するガス濃度計と、該濃度計による揮発性有機化合物の濃度を予め設定された上限濃度と比較して、揮発性有機化合物の濃度が前記上限濃度より高いときに、前記混合ガスに代えて空気または前記混合ガスと空気とを前記圧縮機に供給するように前記切替弁を制御する切替弁制御手段とを備えることが好ましい。
前記揮発性有機化合物の処理装置は、さらに、前記給気手段における前記混合ガスの圧力を測定する圧力計を備えると共に、前記切替弁制御手段は、前記圧力計による前記混合ガスの圧力が予め設定された上限圧力を越えたときに、前記ガス濃度計の濃度に基づいて前記上限濃度を設定するものであることが好ましい。
前記揮発性有機化合物の処理装置は、さらに、前記燃焼器の燃焼温度を測定する燃焼温度計と、該燃焼温度計による前記燃焼温度を予め設定された上限温度と比較して、前記燃焼温度が前記燃焼上限温度より高いときに、前記混合ガスに代えて空気または前記混合ガスと空気とを前記圧縮機に送るように前記切替弁を制御する制御手段とを備えることが好ましい。
前記揮発性有機化合物の処理装置は、さらに、タービンから排出される燃焼ガスの温度を測定する排気温度計と、該排気温度計による前記燃焼ガスの温度を予め設定された上限温度と比較して、前記燃焼ガスの温度が前記燃焼ガス上限温度より高いときに、前記燃焼器への燃料の供給量を抑制する方向に制御する制御手段とを備えることが好ましい。
前記揮発性有機化合物の処理装置は、さらに、前記切替弁の作動によって前記混合ガスが余剰となった場合に、前記混合ガスを酸化して分解処理する酸化装置を備えることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、揮発性有機化合物と空気との混合ガスをタービンに連結された圧縮機によって圧縮し、圧縮後に燃料と混合して燃焼させると共に、この燃焼により生成した燃焼ガスによってタービンを駆動する揮発性有機化合物と空気との混合ガスの処理方法であって、該処理方法は、供給される前記混合ガス中の揮発性有機化合物の濃度、燃焼時の前記燃焼ガスの温度または供給される前記混合ガスの圧力を測定して予め設定された上限値と比較し、前記測定値が前記上限値より高いときに、前記混合ガスに代えて空気または空気で希釈された前記混合ガスを前記圧縮機に供給することを特徴とする揮発性有機化合物の処理方法を提供する。
供給される前記混合ガスの圧力を測定して前記圧力が予め設定された上限値を越えたときに、前記圧縮機内において前記混合ガスが圧縮されて爆発下限界を超えたと判断すると共に、その時に供給された前記混合ガスの濃度に基づいて濃度の前記上限値を設定するが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃焼ガスを動力源とするガスタービンにおいて、空気の代わりにVOCと空気との混合ガスを導入し、圧縮機で圧縮した後に燃料と混合して燃焼させることによって、VOCを効率よく処理すると同時に、タービンを駆動することが可能となる。VOCのもつ燃焼エネルギーを利用することで、ガスタービンの燃料消費を減少させ、コストを削減することができる。また、排気中のVOCを処理する装置及びそれに掛かる運転費用を抑制でき、大気汚染防止法のVOC排出規制に対応することができる。
【0010】
乾燥オーブンを有する溶剤型塗工機から排出される場合のように、VOCが比較的高濃度であると、圧縮機での爆発及び燃焼器の燃焼室内の高温異常が発生するおそれがある。このような問題に対処するため、本発明では、給気手段におけるVOCの濃度、燃焼器における燃焼ガスの温度、および給気手段における前記混合ガスの圧力から選ばれる一または複数の情報に基づいて、前記混合ガスに代えて空気または前記混合ガスと空気とを前記圧縮機に供給するように制御される切替弁を設けている。これにより、高濃度のVOCの燃焼に伴う上記の問題を解決することができる。
【0011】
圧縮機に供給される前記混合ガスの圧力を測定して前記圧力が予め設定された上限値を越えたときに、圧縮機内において前記混合ガスが圧縮されて爆発下限界を超えたと判断すると共に、その時に供給された前記混合ガスの濃度に基づき、切替弁の制御の基準となる上限濃度を設定することにより、爆発下限界を超える前記混合ガスが供給されたことを監視することができ、一度、爆発下限界を超える圧力が発生したとき以後は、爆発下限界を超える前記混合ガス濃度が圧縮機に供給されることを防止することができる。
VOCの燃焼により燃焼器内の燃焼エネルギーが増えたときには、タービン内を適正温度に保つように燃料の供給量を抑制することにより、燃焼室内の高温異常を防止するとともに、燃料の使用量を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の揮発性有機化合物の処理装置(以下、単に「VOC処理装置」という場合がある。)の一例を示す概略構成図である。図2は、図1に示すVOC処理装置の動作を説明する流れ図である。本発明において、ガス(空気、VOCガス、排気等)の経路としては、具体的には配管やダクトなどが用いられる。
【0013】
図1に示す揮発性有機化合物の処理装置10は、生産設備や工場等の施設からVOCと空気との混合ガスを供給する給気手段11と、給気手段11から供給されたVOCガスを圧縮する圧縮機21と、圧縮機21にて圧縮されたVOCガスに燃料を補給して燃焼させる燃焼器23と、燃焼器23にて生成した燃焼ガスにより駆動されるタービン24とを備えて構成されている。タービン24は圧縮機21に接続されており、圧縮機21はタービン24で得られた駆動力を利用してVOCガスを圧縮するようになっている。
【0014】
圧縮機21、燃焼器23及びタービン24は、燃焼器23に燃料を供給する燃料供給装置22、並びにタービン24の動力によって発電する発電機25とともに、ガスタービン20を構成するものである。タービン24は、一つの回転軸26を介して発電機25及び圧縮機21に連結されており、タービン24の動力によって圧縮機21と発電機25とが共に回転駆動されるように構成されている。
燃料供給装置22から燃焼器23に供給される燃料としては特に限定されないが、天然ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、重油などが挙げられる。燃焼器23内でVOCガスに燃料を補給して燃焼させることで、VOCは水や二酸化炭素に分解され、大気放出が許容される形態にまで確実に処理することができる。
【0015】
給気手段11の経路の途中には、VOCガスの代わりに空気(施設外から取り入れた大気中の空気)が圧縮機21に送られるように切り替える切替弁12が設置されている。給気手段11は、この切替弁12の切替によって、VOCガスを圧縮機21へと供給する第1の状態と、VOCガスを経路13を介して触媒酸化装置31へと供給するとともに圧縮機21へは空気が送られるようにする第2の状態とをとることができる。本発明の処理装置では、場合により、VOCガスと空気との両方を圧縮機21へと供給する第3の状態をとる構成とすることもできる。
【0016】
ここで触媒酸化装置31とは、VOCの酸化反応を触媒する白金やパラジウム等の酸化作用の強い活性金属を担持させたハニカム、ぺレット、メタルフォーム、繊維状等の酸化触媒を備える装置であり、VOCを酸化して分解処理することが可能である。なお、酸化装置として他には、ガス、灯油、重油等により、VOCを750℃から950℃の高温下で直接酸化分解(燃焼)する装置、砂やセラミック等の耐熱性、蓄熱性のある固定床(蓄熱床)を媒体として800℃から1000℃の高温下にてVOCを接触させて酸化分解する装置がある。触媒酸化装置31に代えて、これらの装置を用いても良い。
触媒酸化装置31に使用される酸化触媒の予備加熱のため、タービン24から排出された排気の経路27を2つに分岐させ、経路の一方を触媒酸化装置31に通じることにより、排気が保有する廃熱を利用して酸化触媒を加熱できるように構成することが好ましい。切替弁12の作動によってVOCガスが余剰となった場合に、触媒酸化装置31を利用することで、VOCを効率的に処理することができる。
【0017】
図1に示すVOC処理装置10は、給気手段11におけるVOCの濃度を測定するガス濃度計11aと、該濃度計11aによるVOCの濃度を予め設定された上限濃度と比較して、VOCの濃度が前記上限濃度より高いときに、前記切替弁12を制御する切替弁制御手段12aが設けられている。
ガス濃度計11aによって測定されたVOC濃度が所定の上限濃度以下であるときの切替弁12は、VOCガスが圧縮機21へ送られる第1の状態をとり、VOCは燃焼器23による燃焼によって処理される。これに対して、給気手段11から圧縮機21に送られるVOCガス中のVOCが高濃度であると、圧縮機21での爆発及び燃焼器23の燃焼室内の高温異常が発生するおそれがある。よって、給気手段11におけるVOCの濃度を測定して、このVOC濃度の測定値が所定の上限濃度より高いときには、切替弁12を前記第2の状態へと切り替え、圧縮機21へはVOCガスの代わりに空気を送り、VOCガスは触媒酸化装置31で処理させるのである。このような切替弁12の制御を行うことにより、高濃度のVOCの燃焼に伴う上記の問題を解決することができる。
また、VOC濃度の測定値が所定の上限濃度より高いときに、VOCガスの一部と空気とが圧縮機21に送られ、VOCガスの残部が触媒酸化装置31に送られるように切替弁12を制御することもできる。この場合は、燃焼器23に対するVOCガスの供給量を低減して燃焼室内の高温化を軽減できるとともに、触媒酸化装置31の負荷(VOCの処理量)も軽減できる。
【0018】
VOC濃度が高濃度であるときの圧縮機21での爆発を抑制するため、給気手段11におけるVOCガスの圧力を測定する圧力計11bを備えると共に、前記切替弁制御手段12aは、前記圧力計11bによるVOCガスの圧力が予め設定された上限圧力を越えたとき、ガス濃度計11aの濃度に基づいて前記上限濃度を設定することが好ましい。すなわち、VOCガスの圧力が予め設定された上限圧力を越えたとき、圧縮機21内においてVOCガスが圧縮されて爆発下限界を超えたと判断して、そのときのVOCガス濃度未満となるように当該濃度に装置の設置環境やVOCガスの供給状況などの各種の状況に応じて設定された所定の安全率をかけた濃度を上限濃度に設定する。これにより、以後は、爆発下限界を超えるVOCガス濃度が圧縮機21に供給されることを防止することができる。
【0019】
さらに図1に示すVOC処理装置10は、タービン24から排出される燃焼ガスの温度(以下、「排気温度」ともいう。)を測定するための温度計である排気温度計24aと、燃料供給装置22から燃焼器23への燃料の供給量を調整するための燃料バルブ28と、排気温度計24aによって測定される前記排気温度を予め設定された上限温度と比較して、前記排気温度が前記上限温度より高いときには、燃料バルブ28の流量を絞ることにより燃料供給装置22から燃焼器23への燃料の供給量を抑制するための燃料供給量制御手段22aとを備えている。本形態例のVOC処理装置10では、VOCの燃焼により燃焼エネルギーが得られるので、圧縮機21に空気を送気する従来のガスタービンとしての燃焼状態に比べて、燃料の供給量を少なくする必要がある。すなわち、燃焼器23内の燃焼エネルギーが増えたときには、タービン24内を適正温度に保つように燃料の供給量を抑制する。これにより、燃焼室内の高温異常を防止するとともに、ガスタービンとしての燃料の使用量(消費量)を抑制し、省エネルギーとなる。
【0020】
本形態例のVOC処理装置10の動作を図2に示す図面を参照して説明すると、以下のとおりである。なお、図2において各処理を表す符号としては、説明を簡略にするため、図1に示す装置において当該処理を行う構成要素と同じ符号を付した。
施設内で、例えば溶剤型塗工機から排出されるVOCは、空気との混合ガス(VOCガス)となる。
切替弁12が上記の第1の状態を取っているとき、VOCガスは、タービン24で駆動される圧縮機21の回転により給気手段11を通じて圧縮機21内に吸引され、該圧縮機21で圧縮された後、燃焼器23に送られ、燃焼器23内で燃料とともに燃焼される。
また、切替弁12が上記の第2の状態を取っているときには、VOCガスは、経路13を通じて触媒酸化装置31に送られ、触媒酸化装置31内で酸化触媒により酸化処理される。
この切替弁12の制御は、ガス濃度計11aによって測定される前記VOCガス濃度に基づいて行わせることができる。
【0021】
燃焼器23内でVOCガスと燃料とを混合して燃焼させたとき生成する燃焼ガスは、タービン24の回転駆動に利用される。タービン24が回転すると、回転軸26に連結された発電機25が駆動され、発電を行う。発電機25で起こした電力は、電力利用設備(不図示)で利用することができる。なお、発電に際しては、回転軸26の回転数を一定に制御するかインバーターなどを使用して周波数を一定に制御することが好ましい。
また、排気温度計24aによって測定されるタービン24の排気温度は、燃料供給装置22から燃焼器23への燃料の供給量の制御に用いられる。燃料の供給量を制御することで、タービン24の回転数を制御することができる。
【0022】
タービン24から排出される排気の経路27は2つに分岐しており、一方の排気経路は、排気に含まれる熱量を回収するための廃熱ボイラー30に通じており、他方の排気経路は、上述したように酸化触媒の予熱に利用するため触媒酸化装置31に通じている。
廃熱ボイラー30は、水の導入及び水蒸気の導出のための管路(図示略)を備えており、タービン24の排気が保有する廃熱を利用して水を加熱し、水蒸気を発生させる。廃熱ボイラー30で生成された蒸気は、蒸気利用設備(図示略)で利用することができる。
なお、コージェネレーションにおける排気が有する廃熱の利用手段としては、水蒸気に限定されるものではなく、この他、温水などによることも可能である。
タービン24から排出される排気は、VOCが650℃以上の温度で燃焼処理され完全に分解されたものであるから、その保有する熱量を廃熱ボイラー30又は触媒酸化装置31において利用したあとは、共通の排出経路32を通じて、大気中に放出することができる。
【0023】
本発明の処理装置10で処理されるVOCガス中のVOCの種類は、可燃性のものであれば特に限定されないが、一般的な例としてはトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)などが挙げられる。これらのVOCの発火点は400〜500℃であるため、圧縮機21内でVOCの発火を防止するため、圧縮機21内の温度は、350℃以下に設定することが望ましい。また、圧縮機21で圧縮する前のVOCガス中のVOCの濃度は、圧縮機21による圧縮時の圧力における当該VOCの爆発下限界の1/4以下であることが好ましい。その様な濃度としては、例えばトルエンであれば、圧縮機21に導入するときの濃度を1000ppm以下とすることが好ましい。これらにより、VOCガスを圧縮したときのバックファイアーを抑制することができる。
本形態例のVOC処理装置10においては、ガス濃度計11aにより測定されるVOC濃度が高くなりすぎたときには、VOCガスの一部または全部を触媒酸化装置31に転送して酸化処理するようにしているので、VOCガスを圧縮したときのバックファイアー、燃焼器23内やタービン24内の高温異常を防止することができる。
また、給気手段11におけるVOCガスの圧力を圧力計11bで監視して、該VOCガスの圧力が高くなりすぎたとき、切替弁制御手段12aは、圧縮機21でVOCガスの爆発が起きたものとしてそのときのVOC濃度に基づいて爆発下限界未満の上限濃度を設定し、切替弁12を制御するので、以後、該上限濃度を越えるVOCガスが圧縮機21に供給されることを防止することができる。
【0024】
また、本形態例のVOC処理装置10では、燃料の効率的な消費の観点から、VOCガスを燃料と一緒に燃焼させたときに一定の出力が安定的に得られるようにするため、VOCガス中のVOCの量に応じて燃料の供給量を減らすことができるように構成されている。
一例として、燃料供給量制御手段は、タービン24内の温度を300℃以下に保ち、温度がそれ以上に上昇する場合には、燃料供給装置22による燃料の供給量を削減するように制御する。これにより、VOCガスを圧縮したときのバックファイアー、燃焼器23内やタービン24内の高温異常による破損を防止することができ、しかも燃料消費量を減少させることができる。あるいは、回転軸26の回転数を測定して出力を制御しても良い。
【0025】
本発明の処理装置において、切替弁12の制御は、図3、図4に示すように、燃焼器23における燃焼温度(燃焼室内の温度)の測定によっても実施可能である。図3,図4において図1,図2と同じ構成には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図3に示すVOC処理装置10Aの場合、燃焼器23には、燃焼器23における燃焼温度(燃焼室内の温度)を測定するための温度計である燃焼温度計23aが設けられている。さらに本形態例のVOC処理装置10には、該燃焼温度計23aによる前記燃焼温度を予め設定された上限温度と比較して前記燃焼温度が前記上限温度より高いとき、VOCガスの代わりに空気が、または、VOCガスと空気とが、圧縮機21に送られるように前記切替弁12を制御する制御手段(不図示)が設けられている。
【0026】
燃焼温度計23aによって測定された燃焼温度が所定の上限温度以下であるときの切替弁12は、VOCガスが圧縮機21へ送られる第1の状態をとり、VOCは燃焼器23による燃焼によって処理される。これに対して、給気手段11から圧縮機21に送られるVOCガス中のVOCが所定の濃度より高濃度であると、圧縮機21での爆発及び燃焼器23の燃焼室内やタービン24の高温異常が発生するおそれがある。よって、燃焼器23における燃焼温度を測定して、この燃焼温度の測定値が所定の上限温度より高いときには、切替弁12を前記第2の状態へと切り替え、圧縮機21へはVOCガスの代わりに空気を送り、VOCガスは触媒酸化装置31で処理させるのである。このような切替弁12の制御を行うことにより、高濃度のVOCの燃焼に伴う上記の問題を解決することができる。
また、燃焼温度の測定値が所定の上限温度より高いときに、VOCガスの一部と空気とが圧縮機21に送られ、VOCガスの残部が触媒酸化装置31に送られるように切替弁12を制御することもできる。この場合は、燃焼器23に対するVOCガスの供給量を低減して燃焼室内の高温化を軽減できるとともに、触媒酸化装置31の負荷(VOCの処理量)も軽減できる。
【0027】
以上説明したように、本発明の揮発性有機化合物処理装置10,10Aによれば、燃焼ガスを動力源とするガスタービン20において、VOCと空気との混合ガスを供給し、圧縮機21で圧縮した後に燃料を補給して燃焼させることによって、VOCを効率よく処理すると同時に、タービン24を駆動して発電及び廃熱利用を行うことが可能となる。排気中のVOCを処理する装置及びそれに掛かる運転費用も抑制でき、低コストにて大気汚染防止法のVOC排出規制に対応することができる。また、VOCガスのもつ燃焼エネルギーを利用することで、ガスタービン20の燃料消費を減少させることができるので、省エネルギーのコージェネレーションシステム(CGS)として用いることが可能である。
【0028】
また、本発明の揮発性有機化合物処理装置10,10Aによれば、VOCガスが発生しない場合には、切替弁12より大気を吸引した状態で運転することで、通常のガスタービンとしての使用も可能となっている。また、VOCガスが高濃度である場合には、触媒酸化装置で効率的に処理することが可能である。
このため、VOCの濃度が比較的高濃度であってもVOCを安全かつ確実に処理できる上、VOCの発生の有無にかかわらずガスタービンを継続して安定的に運転することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、有機溶剤などの揮発性有機化合物を使用する工場等の施設、特に、乾燥オーブンを有する溶剤型塗工機を設置した施設において、比較的高濃度の揮発性有機化合物(VOC)を含有する空気を効率よく処理するために利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の揮発性有機化合物の処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す揮発性有機化合物の処理装置の動作を説明する流れ図である。
【図3】本発明の揮発性有機化合物の処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【図4】図3に示す揮発性有機化合物の処理装置の動作を説明する流れ図である。
【符号の説明】
【0031】
10,10A…揮発性有機化合物の処理装置(VOC処理装置)、11…給気手段、11a…濃度計、11b…圧力計、12…切替弁、20…ガスタービン、21…圧縮機、22…燃料供給装置、22a…燃料供給量制御手段、23…燃焼器、23a…燃焼温度計、24…タービン、24a…排気温度計、25…発電機、28…燃料バルブ、30…廃熱ボイラー、31…触媒酸化装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物と空気との混合ガスを供給する給気手段と、該給気手段から供給された前記混合ガスを圧縮する圧縮機と、該圧縮機にて圧縮された前記混合ガスに燃料を補給して燃焼させる燃焼器と、該燃焼器にて生成した燃焼ガスにより駆動され前記圧縮機に接続されたタービンとを備える揮発性有機化合物と空気との混合ガスの処理装置であって、
該処理装置は、前記給気手段における前記混合ガス中の揮発性有機化合物の濃度、燃焼器における前記燃焼ガスの温度および前記給気手段における前記混合ガスの圧力から選ばれる一または複数の情報に基づいて前記混合ガスに代えて空気または前記混合ガスと空気とを前記圧縮機に供給するように制御される切替弁を有することを特徴とする揮発性有機化合物の処理装置。
【請求項2】
前記揮発性有機化合物の処理装置は、さらに、前記給気手段における揮発性有機化合物の濃度を測定するガス濃度計と、該濃度計による揮発性有機化合物の濃度を予め設定された上限濃度と比較して、揮発性有機化合物の濃度が前記上限濃度より高いときに、前記混合ガスに代えて空気または前記混合ガスと空気とを前記圧縮機に供給するように前記切替弁を制御する切替弁制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の揮発性有機化合物の処理装置。
【請求項3】
前記揮発性有機化合物の処理装置は、さらに、前記給気手段における前記混合ガスの圧力を測定する圧力計を備えると共に、前記切替弁制御手段は、前記圧力計による前記混合ガスの圧力が予め設定された上限圧力を越えたときに、前記ガス濃度計の濃度に基づいて前記上限濃度を設定するものであることを特徴とする請求項2に記載の揮発性有機化合物の処理装置。
【請求項4】
前記揮発性有機化合物の処理装置は、さらに、前記燃焼器の燃焼温度を測定する燃焼温度計と、該燃焼温度計による前記燃焼温度を予め設定された上限温度と比較して、前記燃焼温度が前記燃焼上限温度より高いときに、前記混合ガスに代えて空気または前記混合ガスと空気とを前記圧縮機に送るように前記切替弁を制御する制御手段とを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の揮発性有機化合物の処理装置。
【請求項5】
前記揮発性有機化合物の処理装置は、さらに、タービンから排出される燃焼ガスの温度を測定する排気温度計と、該排気温度計による前記燃焼ガスの温度を予め設定された上限温度と比較して、前記燃焼ガスの温度が前記燃焼ガス上限温度より高いときに、前記燃焼器への燃料の供給量を抑制する方向に制御する制御手段とを備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の揮発性有機化合物の処理装置。
【請求項6】
前記揮発性有機化合物の処理装置は、さらに、前記切替弁の作動によって前記混合ガスが余剰となった場合に、前記混合ガスを酸化して分解処理する酸化装置を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の揮発性有機化合物の処理装置。
【請求項7】
揮発性有機化合物と空気との混合ガスをタービンに連結された圧縮機によって圧縮し、圧縮後に燃料と混合して燃焼させると共に、この燃焼により生成した燃焼ガスによってタービンを駆動する揮発性有機化合物と空気との混合ガスの処理方法であって、
該処理方法は、供給される前記混合ガス中の揮発性有機化合物の濃度、燃焼時の前記燃焼ガスの温度または供給される前記混合ガスの圧力を測定して予め設定された上限値と比較し、前記測定値が前記上限値より高いときに、前記混合ガスに代えて空気または空気で希釈された前記混合ガスを前記圧縮機に供給することを特徴とする揮発性有機化合物の処理方法。
【請求項8】
供給される前記混合ガスの圧力を測定して前記圧力が予め設定された上限値を越えたときに、前記圧縮機内において前記混合ガスが圧縮されて爆発下限界を超えたと判断すると共に、その時に供給された前記混合ガスの濃度に基づいて濃度の前記上限値を設定することを特徴とする請求項7に記載の揮発性有機化合物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−283182(P2007−283182A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111694(P2006−111694)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(599019269)株式会社トヨタタービンアンドシステム (7)
【出願人】(593193468)日本電技株式会社 (5)
【Fターム(参考)】