説明

揮発性有機化合物の排出、回収、処理方法、タンクコンテナ内の洗浄処理方法及びタンクコンテナ内の洗浄処理装置

【課題】VOCの輸送に使用するタンクコンテナの洗浄において、タンク内に残留せる気化したVOCガスを安全に簡便な方法で排出、捕集回収するとともに回収工程にて排出される微量の残余VOCを無害化処理する方法を提供する。
【解決手段】タンクコンテナの洗浄にあたりタンクコンテナ内に不活性ガスを導入し、タンク内に残留する揮発性有機化合物(VOCと言う)をパージし、冷媒を循環閉回路となした凝縮器に導き冷却液化せしめ、然る後、気液分離器に導き液化した該VOCを回収するとともに気液分離器から排出される未凝縮の微量VOCガスを触媒燃焼器にて燃焼処理することを特徴とするタンクコンテナ内に残留するVOCの排出、回収、処理する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンクコンテナの洗浄にあたりタンクコンテナ内に残留するVOCをタンク内より排出し効率的に回収、処理する方法に関するもので、大気汚染の防止、水質汚染の防止、生活環境の保全、コンテナで輸送する化成品間の異物混入を防ぐことに関わる技術である。
【背景技術】
【0002】
化成品の陸上、鉄道、海上等の輸送には様々な性状の物質に対応する安全性、効率性、利便性、輸送コスト等の点から、また、ドラム缶輸送に比べると充填作業の簡略化、荷積み・荷卸しの際の異物混入の危険性が低いというメリットからタンクコンテナが一般に多用され輸送に欠かせない手段となって来ている。
【0003】
国際間の輸送を円滑にするため、その仕様が国際規格に基づいて製作されているものもある。タンクコンテナにて輸送する場合の問題点は荷卸し後の残留する化成品の処理及びコンテナタンク内の洗浄処理である。特に低沸点のVOCの輸送にあっては、安全上、タンク内容積一杯の積載はできず不活性ガスで置換しているため化成品の荷卸し後、VOCガスがタンク内に0.5%程度残留してしまう。該低沸点有機化合物が無害なものであれば問題ないのであるが、有害大気汚染物質である場合、大気、水域への放出に際しては法に則した適切な処理が必要になる。
【0004】
しかし、現状では充分な排出管理がなされていないのが実態である。1999年に制定された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に基づくPRTR制度(Pollutant Releaeant and Transfer Register)で指定化学物質とその排出量の実態が明らかにされつつある。
【0005】
環境省の資料によれば、アセトアルデヒドの届出排出量は大気へ91トン、水域へ48トン、廃棄物移動で423トンと集計されていて(平成15年度)タンクコンテナからの排出寄与も大きいものと推測されている。
【0006】
これらアルデヒドは悪臭防止法の特定悪臭物質でもあり、気化速度が速く、反応性が高く、健康被害、生活環境への影響が極めて大で、大気への排出、水域への排出対策が急がれている。
【0007】
本発明はタンクコンテナ内に残留する極めて沸点の低いVOCをタンク内より排出し効率的に回収、処理する方法に関するものでVOCとしてホルムァルデヒド、アセトァルデヒド等を対象ガスとしているが、VOCを前記対象ガスに限定するものではない。
【0008】
有害大気汚染物質の排ガス処理方式には多くの技術が存在する。たとえば、活性炭等吸着、加熱焼却、触媒酸化、水、酸、アルカリによる吸収、冷却・凝縮、油による吸収等がある。
【0009】
しかし、これらの技術はガスの捕集後の処理技術であって、実際に遭遇する処理にあっては、発生場所、ガスの性状(濃度、沸点、反応性等)、処理量を検討するとともにVOCガスの捕集方法、投資コスト、ランニングコスト、操作性、メンテナンス性等を併せ検討することが最優先されなければならない。
【0010】
上記の技術をガソリン、べンゼン、トルエンなどの貯蔵、充填、移送する際、発生するVOCガスの処理に適用した例として、例えば、特公昭52−39785号公報(特許文献1)では、VOCを含むガスを加圧下で或は加圧冷却の前処理をした珪酸、リン酸、脂肪酸エステル類の1種類以上からなる吸収剤と接触吸収させる方法が提案されている。
【0011】
特公昭54−11154号公報(特許文献2)では、高沸点のアルキルベンゼンを吸収液として循環使用することによってVOCを含むガスからVOCだけを除去する技術が提案されている。
【0012】
特公昭58−2503号公報(特許文献3)では、炭化水素蒸気含有ガスと向流接触させて該ガス中の炭化水素蒸気を吸収した吸収剤を減圧度の異なる複数の容器中で2段以上でフラッシュ蒸発させて該吸収剤から炭化水素蒸気を分離回収する方法を提案している。
【0013】
さらに、改良した吸収剤として常圧での沸点が260〜360℃の精製鉱油を使用した処理方法が特開平5−68841号公報(特許文献4)に記載されている。
また、特開平11−509891号公報(特許文献5)には、原油をタンカー船倉に積み込む際、船倉から排出されるVOC/不活性ガス混合物をケロセンに吸収させた後、VOCを分離回収する蒸気回収システムが開示されている。
【0014】
しかし、これら公報の中には、本発明の目的であるVOCガスを発生するタンクコンテナの洗浄に言及している技術は見あたらず、また、前記の技術を応用し適用することも困難である。
【0015】
【特許文献1】特公昭52−39785号公報
【特許文献2】特公昭54−11154号公報
【特許文献3】特公昭58−2503号公報
【特許文献4】特開平5−68841号公報
【特許文献5】特開平11−509891号公報
【特許文献6】特開2002−119556号公報
【特許文献7】特開2003−144920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、VOCの輸送に使用するタンクコンテナの洗浄において、タンク内に残留せる気化したVOCガスを安全に簡便な方法で排出、捕集回収するとともに回収工程にて排出される微量の残余VOCを無害化処理する方法を提供する。
一方、アルデヒド類は水溶性が非常に高いので水吸収処理が適すると考えられるが、吸収後の安価な分離回収あるいは無害化処理が課題として残されている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで、本発明はタンクコンテナ洗浄にあたりタンクコンテナ内に残留する揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound:以下単に「VOC」と言う)を不活性ガスにてパージし、冷媒閉回路を構成する凝縮器に導きVOCガスを冷却液化せしめた後、気液分離器に導き、不活性ガスを放出し該VOCを液体として回収した後、気液分離器で完全に液化していないVOCガスは燃焼に必要な空気と共にアルマイト触媒燃焼器に導き燃焼させ無害化処理するという基本的技術思想を採用するものである。
【0018】
本発明に於いては、この一連の処理操作により大部分のVOCは効率的に回収され、触媒燃焼器に対しても大きな負荷がかからず投資コスト、運転コストも安価にすることが可能になる。
【0019】
より具体的には、本発明に於ける第1の態様としては、タンクコンテナの洗浄にあたりタンクコンテナ内に不活性ガスを導入し、タンク内に残留するVOCをパージし、冷媒を循環閉回路となした凝縮器に導き冷却液化せしめ、然る後、気液分離器に導き液化した該VOCを回収するとともに気液分離器から排出される未凝縮の微量VOCガスを触媒燃焼器にて燃焼処理することを特徴とするタンクコンテナ内に残留するVOCの排出、回収、処理する方法である。
【0020】
又、本発明に於ける第2の態様としては、移動可能なタンクコンテナ内に残留する液体状のVOCを排出、回収、処理する当該タンクコンテナ内の洗浄処理方法であって、当該洗浄処理方法は、当該タンクコンテナ内に加熱した不活性ガスを導入し、当該タンクコンテナ内に残存する当該液体状のVOCをガス化させることによって当該不活性ガスと当該VOCガスとの混合ガスを発生させる第1の工程、当該混合ガスを当該タンクコンテナから排出させ当該タンクコンテナ内部をパージする第2の工程、当該タンクコンテナから排出された当該混合ガスを冷却凝縮することによって、当該混合ガスに含まれている当該VOCガスを凝縮液化して当該混合ガスから液状のVOCを分離する第3の工程、当該第3の工程に於いて、当該液状のVOCから分離された未凝縮の微量のVOCガスと当該不活性ガスからなる混合ガスを、触媒燃焼手段を使用して燃焼処理する第4の工程、とから構成されている事を特徴とする液体状のVOCが内部に残留するタンクコンテナ内の洗浄処理方法である。
【0021】
更に、本発明に於ける第3の態様としては、移動可能なタンクコンテナ内に残留する液体状のVOCを排出、回収、処理する当該タンクコンテナ内の洗浄処理装置であって、当該洗浄処理装置は、当該タンクコンテナ内に加熱した不活性ガスを導入し、当該液体状のVOCをガス化させることによって当該不活性ガスと当該VOCガスとの混合ガスを発生させる為の加熱手段を含む不活性ガス供給手段、当該タンクコンテナ内に供給された不活性ガスと当該加熱された不活性ガスによって当該液状VOCがガス化されたVOCガスとの混合ガスを当該タンクコンテナから排出させる混合ガス排出手段、当該タンクコンテナから排出された混合ガスを冷却凝縮して液状のVOCと当該不活性ガスと微量のVOCガスとを含む混合ガスとに分離する気液分離手段、当該液状のVOCを回収する液状VOC回収手段、当該微量のVOCガスを含む混合ガスを燃焼処理する触媒燃焼手段とから構成されている事を特徴とする液体状のVOCが内部に残留するタンクコンテナ内の洗浄処理装置である。
【発明の効果】
【0022】
従来、タンクコンテナの洗浄は洗浄物の種類、性状、タンクの構造に応じた洗浄装置を用い、VOC洗浄にあっては高圧蒸気をタンク内壁面に吹き付けVOCを大気へ放散し、水溶性VOCはそのまま水域へ排出していた。この洗浄によるVOCの大気汚染、水質汚染はPRTR制度で明らかになってきたように量的に看過できない情況にある。
【0023】
本発明の実施によりタンクコンテナの洗浄は、簡便なプ口セスで安全で効率的にVOCを回収、処理でき環境への影響の回避が期待される。
即ち、近年では、当該液状VOCを搬送するタンクコンテナは世界中を移動しており、従って、当該液状VOCが残留している当該タンクコンテナも世界中に分散されその数も膨大なものとなっているので、当該タンクコンテナ内の残留液状VOCの排出、処理は、世界環境保護上極めて切迫した緊急且つ重要な問題となって来ている。
【0024】
係る問題の解決に際し、本発明は、簡易な構成と簡素な処理システムを採用していることから、処理装置自体がコンパクトで可搬性があり、コストも安価であって処理費用を提言する事が可能であるほか処理能力も大きく、効率的であり、且つ可搬性の装置として構成できるから如何なる場所でも処理する事が可能となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に於ける第1の態様であるタンクコンテナ内に残留する液状VOCを排出、回収、処理する方法の具体例を図面を参照しながら詳細に説明する。
即ち、図1は本発明の第1の具体例を実施するための態様を示すフロー図であって、タンクコンテナ1の洗浄にあたりタンクコンテナ1内に不活性ガスを導入し、タンク内に残留する揮発性有機化合物(VOC)をパージし、冷媒を循環閉回路となした凝縮器7に導き冷却液化せしめ、然る後、気液分離器8に導き液化した該VOCを回収するとともに気液分離器8から排出される未凝縮の微量VOCガスを触媒燃焼器13にて燃焼処理するタンクコンテナ内に残留するVOCの排出、回収、処理する方法が示されている。
【0026】
即ち、本発明に於いては、まず、タンクコンテナ1に残留しているVOC(気体/液体)を不活性ガス、例えば、窒素ガス等を、窒素ガスボンベ2より供給し、当該窒素ガスを窒素ガス加熱器3で加温し、タンクコンテナ1の当該液状VOCを注入する際に使用される注入口4よりタンクコンテナ1内へ導入する。
【0027】
本発明に於いては、当該タンクコンテナ内を不活性ガスでパージするには残留している液体状のVOCを気体にして行う必要があるので、当該窒素ガスの温度は当該VOCの沸点に対応して最適な温度に加温する必要がある。例えば、アセトアルデヒドでは常温下では気体状(沸点20℃)であるので窒素ガス温度は30℃以上あれば充分であるが、液体状で残っているVOCを気体状にして除去する場合はVOCが気化熱を奪うことも考慮し窒素ガスの温度を決めねばならない。
【0028】
本発明に於いて取り扱う当該VOCの種類は特に限定されるものではなく、又当該不活性ガスも窒素に限定されるものではなく、何れも従来周知のものが使用可能である。
【0029】
従って、当該不活性ガスの加熱温度は、当該タンクコンテナ1内に残留しているVOCの種類及び当該不活性ガスの種類によって適宜決定する必要がある。
この場合、当該不活性ガスの加熱温度は、当該タンクコンテナ1内に残留しているVOCの種類及び当該不活性ガスの種類に応じて使用される加熱温度を予め実験等によって決定しておき、当該温度条件を所定の記憶手段に記憶させておく事によって、当該不活性ガスの温度設定を容易に実行する事が可能となり、又自動化も実現する。
【0030】
次に、本発明に於いては、当該タンクコンテナ1内部のバージが完了したか否かを検出して、当該パージ作業を終了させるために、当該タンクコンテナ1内の当該VOCの濃度を参考にすることが望ましい。
【0031】
その為に、例えば、当該タンクコンテナ1の液状VOC排出用の排出口5若しくは当該排出口5に接続される当該混合ガス排出手段16の一部に、当該タンクコンテナ排出口5の出口ガス中のVOC濃度を測定するVOC濃度測定手段17を設け、当該VOC濃度測定手段17によってそのVOC濃度を確認することが望ましい。
【0032】
当該VOC濃度が予め定めた所定のレベル値以下となった場合に、当該タンクコンテナ1内のVOCのパージは完了したものと見なし、後述する所定の処理操作を終了する。
【0033】
この場合でも、当該VOCの種類によって、当該タンクコンテナ1内のVOCのパージが完了したとの判断を行う該VOC濃度の所定のレベル値は、処理すべきVOCによって異なるので、予め実験等によって各VOC毎に実験によりそのレベル値を決定しておき、当該レベル値を所定の記憶手段に記憶させておく事によって、当該処理されるVOCの種類に応じた当該パージ完了判断基準が明確になり当該判断を容易に実行する事が可能となり、又自動化も実現する。
【0034】
次に、本発明に於いては、パージされたVOCガスを含む不活性ガスとの混合ガスは、適宜の凝縮器7に送られ、適宜のチラーユニット6から供給された冷媒により冷却され凝縮液化される。
【0035】
当該凝縮器7は、冷媒が閉鎖回路を構成するものである事が望ましい。
又、当該チラーユニット6は、例えば、圧縮機、熱交換器、送風機がひとつの架台に組み込まれている構造を有しているものであっても良く、処理されるべき当該VOCの沸点に応じて冷媒を変えることにより温度調整がマイナス低温用、中低温(5〜15℃)用と使い分けが可能で好都合である。
【0036】
かかる使用冷媒と処理されるべきVOCの種類とその際に設定されるべき温度条件等も予め、実験等によって決定しておき、当該使用温度条件を所定の記憶手段に記憶させておく事によって、当該処理されるVOCの種類と使用冷媒の種類に応じた当該冷媒温度条件の設定判断基準が明確になり当該判断を容易に実行する事が可能となり、又自動化も実現する。
【0037】
その後、本発明に於いては、冷却液化されたVOCは適宜の構成を有する気液分離器8を経て、当該液化された液状VOCの回収容器9に回収される。
一方、本発明に於いては、当該気液分離器8から排出された凝縮されずに極微量のVOCガスを含む不活性ガスからなる混合ガスは、触媒燃焼器13にて燃焼させて無害化処理した後に排出口14から排出される。
【0038】
本発明に於いては、当該気液分離器8から排出された混合ガスに含まれる当該VOCガスを触媒を用いて燃焼処理するに際しては、当該VOCガスの種類、濃度に応じて空気流量調整機10より送られる燃焼に必要な空気と混合され、ブロワー11を経て触媒燃焼器13にて燃焼させて無害化処理される。
【0039】
この場合でも、当該VOCの種類によって、当該触媒燃焼器13に供給される空気の流量は、当該VOCガスの種類、濃度に応じて変化するので、必要な空気の流量は、当該VOCガスの種類、濃度に応じて予め実験等によってその流量値を決定しておき、当該流量値を所定の記憶手段に記憶させておく事によって、当該処理されるVOCの種類と濃度に応じた当該必要な空気の流量の設定操作が明確になり当該設定操作を容易に実行する事が可能となり、又自動化も実現する。
【0040】
本発明に於いては、当該触媒燃焼器13に於けるVOCの無害化処理に対応する当該燃焼処理操作に際し、当該VOCガスを先ず触媒余熱器12に通過させ、当該触媒燃焼器13を予め予熱しておき、その後に当該VOCガスを当該触媒燃焼器13を通過させ二段で効率よく処理する事が望ましい。
【0041】
更に、本発明に於いては、この処理にはアルマイト触媒を備えた触媒燃焼器13が極めて有効である。
ここで、アルマイト触媒とは、例えば、特開2002−119856号公報(特許文献6)および特開2003−144920号公報(特許文献7)に記載される方法にて得られるアルマイトを触媒担体として、ラジウム、白金、ルテニウム、ロジウムなど触媒能を有する金属粒子を担持させた棒状,帯状、箔状、粒状、鞍状など公知の形状にしたものの総称である。
【0042】
本発明に供する触媒燃焼器13はこうして得られたアルマイト触媒を適用したもので安価で本発明の実施に効果を発揮する。処理可能なVOC濃度は100〜3000ppmまで可能である。
又、当該触媒燃焼器13の温度は、処理されるべきVOCの種類によって異なるが、300℃前後の温度が通常採用される。
【0043】
当該触媒燃焼器13の燃焼温度も予め実験等によって確認した結果を適宜の記憶手段に記憶させておく事によって、当該処理されるVOCの種類と濃度と触媒の種類等に応じた当温度の設定操作が明確になり当該設定操作を容易に実行する事が可能となり、又自動化も実現する。
【0044】
本発明に於いては、当該処理後のVOC濃度は0.02ppm以下となるのでそのままで大気へ放出される。このように本発明によればタンクコンテナ1に残留するVOC気体/液体を、簡便な装置で効率よく回収でき、処理後の排ガスも無害な形で大気に放出でき環境対策に大きく寄与するとともに、輸送する化成品への異物混入を防ぐことができる。
【0045】
尚、本発明に於ける上記したパージ操作に於いて、当該タンクコンテナ1内には、不活性ガスとの分圧比の関係で100%の液状VOCを回収する事ができず、微量な液状VOCがどうしても残留することになるが、当該タンクコンテナ1内に残留する液状VOCは、極めて少ないので、最終的には、水洗により洗い出し、そのまま廃棄する事が出来る。
【0046】
一方、本発明に於いて使用される当該タンクコンテナ1は、国際的に規格化されたタンクコンテナ1で移動可能な可搬性を有しているものである事が望ましく、当該タンクコンテナ1の全体の形状或は寸法及び当該液状VOCの注入用注入口4と当該液状VOCの排出用排出口5の配置位置等は、予め固定されて設計され配置されているものであることが望ましい。
【0047】
尚、本発明に於ける当該可搬性を有しているタンクコンテナ1としては、船の船倉に設けられたタンクで有ってもよい。
更に、本発明に於いては、所定の場所に固定されたタンクに対して使用することも可能である。
【0048】
係る規格化されたタンクコンテナ1を使用する場合には、トラック、船等で液状VOCを充填したタンクコンテナを移動させる操作が容易であるばかりでなく、残留した液状VOCを内部に含む複数個のタンクコンテナ1の当該VOCの排出、処理或は洗浄処理する場合に、同じ場所で同じ処理方法乃至処理装置を使用して効率的に処理する事が可能となるので、処理コストの大幅な低減が可能となる。
【0049】
又、本発明に係る後述するタンクコンテナの洗浄処理装置を世界中の如何なる場所にも設置したり、移動させたりする事が可能となる。
更に、本発明に於いては、上記した様に、必要な処理条件等を予め所定の記憶手段に記憶させておく事によって、コンピュータ等を利用して、所定の操作プログラムを用いて自動化された処理システムを構築する事も可能である。
【0050】
(実施例)
以下に、本発明に於ける第1の態様に於ける、VOCの排出、回収、処理する方法の一具体例を実施例として説明する。
即ち、容積10mのタンクコンテナ1よりアセトアルデヒドを積み下ろし後、本願発明を適用実施した。この時、タンクコンテナ1内にはVOCであるアセトアルデヒドは濃度95〜100VOL%の気体状および/あるいは液体状で約15Kg残留していた。このコンテナに40℃の窒素ガスを圧力0.2MPaG、流量0.2m/min.で60分間通し、アセトアルデヒド濃度を測定したところ、完全にパージされたことを確認した。
【0051】
パージされ、凝縮器7に導かれたアセトアルデヒド(窒素混合)ガスはチラーユニット6から供給された−10℃冷媒と熱交換器で−5℃に冷却されたアセトアルデヒドが液体化され、気液分離器8にて回収された。回収量は14kgで、90%以上の回収率であった。
【0052】
一方、気液分離器8では、10〜50VOL%のアセトアルデヒドガスを含む窒素ガス入り混合ガスが発生いたので、アセトアルデヒド濃度が3000ppmになるよう空気を導入し、流量300m/hでアルマイト触媒装置13に導き燃焼処理した。燃焼後のアセトアルデヒド濃度は0.02ppm以下であった。なお、触媒燃焼処理装置13は触媒予熱器12を有するもので、(株)アルマイト触媒研究所製の触媒燃焼装置(デオドアクト−5M)を用いた。この燃焼処理器13は濃度1000〜3000ppmのアセトアルデヒドガスを毎時300m/h処理できる能力を有しており、本発明の実施に優れた効果を発揮した。
【0053】
次に、本発明に於ける第2の態様の構成について、図1を参照しながら説明する。
即ち、本発明に於ける第2の態様の技術的構成は、基本的には、上記した第1の態様に於ける構成と実質的に同じであるが、具体的には、移動可能なタンクコンテナ内に残留する液体状のVOCを排出、回収、処理する当該タンクコンテナ内の洗浄処理方法であって、当該洗浄処理方法は、当該タンクコンテナ1内に加熱した不活性ガスを導入し、当該タンクコンテナ1内に残存する当該液体状のVOCをガス化させることによって当該不活性ガスと当該VOCガスとの混合ガスを発生させる第1の工程、当該混合ガスを当該タンクコンテナ1から排出させ当該タンクコンテナ1内部をパージする第2の工程、当該タンクコンテナ1から排出された当該混合ガスを冷却凝縮することによって、当該混合ガスに含まれている当該VOCガスを凝縮液化して当該混合ガスから液状のVOCを分離する第3の工程、当該第3の工程に於いて、当該液状のVOCから分離された未凝縮の微量のVOCガスと当該不活性ガスからなる混合ガスを、触媒燃焼手段13を使用して燃焼処理する第4の工程、とから構成されている液体状のVOCが内部に残留するタンクコンテナ内の洗浄処理方法である。
【0054】
本発明に於ける当該第2の態様に於ける各構成についての詳細な条件等は、前記した第1の態様に於けるそれぞれの条件と同じである。
次に、本発明に於ける第3の態様に係る技術構成について、図1を参照しながら説明する。
【0055】
即ち、本発明に於ける第3の態様の技術的構成は、基本的には、上記した第1の態様に於ける構成と実質的に同じであるが、具体的には、移動可能なタンクコンテナ内に残留する液体状のVOCを排出、回収、処理する当該タンクコンテナ1内の洗浄処理装置20であって、当該洗浄処理装置20は、当該タンクコンテナ1内に加熱した不活性ガスを導入し、当該液体状のVOCをガス化させることによって当該不活性ガスと当該VOCガスとの混合ガスを発生させる為の加熱手段3を含む不活性ガス供給手段21、当該タンクコンテナ1内に供給された不活性ガスと当該加熱された不活性ガスによって当該液状VOCがガス化されたVOCガスとの混合ガスを当該タンクコンテナから排出させる、混合ガス排出手段16、当該タンクコンテナ1から排出された混合ガスを凝縮器7で冷却凝縮して液状のVOCと当該不活性ガスと微量のVOCガスとを含む混合ガスとに分離する気液分離手段8、当該液状のVOCを回収する液状VOC回収手段9、当該微量のVOCガスを含む混合ガスを燃焼処理する触媒燃焼手段13とから構成されているタンクコンテナ内の洗浄処理装置20である。
【0056】
本発明に於ける当該第3の態様に於ける各構成についての詳細な条件等は、前記した第1の態様に於けるそれぞれの条件と同じである。
尚、本態様に於ける具体例では、当該タンクコンテナ内の洗浄処理装置20は、更に当該混合ガスを当該触媒燃焼手段13に供給するに際し、当該触媒燃焼手段13に空気流を供給するためのブロワーを含む空気流量調整手段11を更に含んでいる事が望ましい。
【0057】
更に、本態様に於ける具体例では、当該触媒燃焼手段13は、触媒予熱手段12と触媒燃焼手段13とを含んでいる事も望ましい。
又、本態様に於ける具体例では、当該タンクコンテナ1に導入する不活性ガスを当該液状VOCの大気圧沸点以上の温度に加熱せしめる加熱手段3を有している事も望ましい具体例である。
【0058】
一方、本態様に於ける具体例にあっては、当該不活性ガス供給手段21は、当該タンクコンテナの液状VOC注入口4若しくはその排出口5の一方に嵌合し、当該不活性ガスを当該タンクコンテナ1内に供給しうる第1の接合手段15を有すると共に、当該混合ガス排出手段16は、当該タンクコンテナの液状VOC注入口4若しくはその排出口5の他方に嵌合しうる第2の接合手段18を有する事が望ましい。
【0059】
又、本態様に於ける具体例にあっては、当該第2の接合手段18若しくは当該混合ガス排出手段16には、当該タンクコンテナ1内のVOC濃度を測定するVOC濃度測定手段17が設けられている事も望ましい具体例である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明はVOCタンクコンテナの洗浄、VOC貯蔵施設の洗浄、VOC輸送の船倉の洗浄などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明に於けるタンクコンテナからVOCガスを排出し、液化、分離、回収するプロセスのフローを示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1.タンクコンテナ
2.窒素ガスボンベ
3.加熱器
4.タンクコンテナ注入口
5.タンクコンテナ排出口
6.チラーユニット
7.凝縮器
8.気液分離器
9.VOC回収容器
10.空気流量調整器
11.ブ口ワー
12.触媒予熱器
13.触媒燃焼器
14.排ガス排出口
15.第1の接続手段
16.混合ガス排出手段
17.濃度検出手段
18.第2の接続手段
20.タンクコンテナ内の洗浄処理装置
21.不活性ガス供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクコンテナの洗浄にあたりタンクコンテナ内に不活性ガスを導入し、タンク内に残留する揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound:以下単に「VOC」と言う)をパージし、冷媒を循環閉回路となした凝縮器に導き冷却液化せしめ、然る後、気液分離器に導き液化した該VOCを回収するとともに気液分離器から排出される未凝縮の微量VOCガスを触媒燃焼器にて燃焼処理することを特徴とするタンクコンテナ内に残留するVOCの排出、回収、処理する方法。
【請求項2】
タンクコンテナの洗浄にあたりタンクコンテナ内に不活性ガスを導入し、タンク内に残留する液体状の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound:以下単にVOCと言う)をガス化して当該不活性ガスとの混合ガスを形成した後、当該混合ガスを当該タンクコンテナから排出させて、当該タンクコンテナ内をパージし、次いで、当該混合ガスを、適宜の凝縮器に導き冷却せしめて気液分離器に於いて、液化した該VOCを回収するとともに、当該気液分離器から排出される当該不活性ガスに含まれる未凝縮の微量VOCガスを触媒燃焼器にて燃焼処理することを特徴とする請求項1に記載のタンクコンテナ内に残留する液状VOCを排出、回収、処理する方法。
【請求項3】
当該触媒燃焼器の触媒がアルミニウム母材の上に、該アルミニウムを陽極酸化処理して酸化皮膜を生成し、該酸化皮膜に触媒能を有する金属粒子を担持させたアルマイト触媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタンクコンテナ内に残留するVOCの排出、回収、処理する方法。
【請求項4】
当該タンクコンテナに導入する不活性ガスを該液状VOCの大気圧沸点以上の温度に加熱せしめることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のタンクコンテナ内に残留するVOCの排出、回収、処理する方法。
【請求項5】
移動可能なタンクコンテナ内に残留する液体状のVOCを排出、回収、処理する当該タンクコンテナ内の洗浄処理方法であって、当該洗浄処理方法は、
当該タンクコンテナ内に加熱した不活性ガスを導入し、当該タンクコンテナ内に残存する当該液体状のVOCをガス化させることによって当該不活性ガスと当該VOCガスとの混合ガスを発生させる第1の工程、
当該混合ガスを当該タンクコンテナから排出させ当該タンクコンテナ内部をパージする第2の工程、
当該タンクコンテナから排出された当該混合ガスを冷却凝縮することによって、当該混合ガスに含まれている当該VOCガスを凝縮液化して当該混合ガスから液状のVOCを分離する第3の工程、
当該第3の工程に於いて、当該液状のVOCから分離された未凝縮の微量のVOCガスと当該不活性ガスからなる混合ガスを、触媒燃焼手段を使用して燃焼処理する第4の工程、
とから構成されている事を特徴とする液体状のVOCが内部に残留するタンクコンテナ内の洗浄処理方法。
【請求項6】
当該触媒燃焼手段の触媒がアルミニウム母材の上に、該アルミニウムを陽極酸化処理して酸化皮膜を生成し、該酸化皮膜に触媒能を有する金属粒子を担持させたアルマイト触媒であることを特徴とする請求項5に記載のタンクコンテナ内の洗浄処理方法。
【請求項7】
当該タンクコンテナに導入する不活性ガスを当該液状VOCの大気圧沸点以上の温度に加熱せしめることを特徴とする請求項5又は6に記載のタンクコンテナ内の洗浄処理方法。
【請求項8】
当該タンクコンテナは、規格化されたタンクコンテナである事を特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載のタンクコンテナ内の洗浄処理方法。
【請求項9】
移動可能なタンクコンテナ内に残留する液体状のVOCを排出、回収、処理する当該タンクコンテナ内の洗浄処理装置であって、当該洗浄処理装置は、
当該タンクコンテナ内に加熱した不活性ガスを導入し、当該液体状のVOCをガス化させることによって当該不活性ガスと当該VOCガスとの混合ガスを発生させる為の加熱手段を含む不活性ガス供給手段、
当該タンクコンテナ内に供給された不活性ガスと当該加熱された不活性ガスによって当該液状VOCがガス化されたVOCガスとの混合ガスを当該タンクコンテナから排出させる混合ガス排出手段、
当該タンクコンテナから排出された混合ガスを冷却凝縮して液状のVOCと当該不活性ガスと微量のVOCガスとを含む混合ガスとに分離する気液分離手段、
当該液状のVOCを回収する液状VOC回収手段、
当該微量のVOCガスを含む混合ガスを燃焼処理する触媒燃焼手段
とから構成されている事を特徴とする液体状のVOCが内部に残留するタンクコンテナ内の洗浄処理装置。
【請求項10】
当該触媒燃焼手段の触媒がアルミニウム母材の上に、該アルミニウムを陽極酸化処理して酸化皮膜を生成し、該酸化皮膜に触媒能を有する金属粒子を担持させたアルマイト触媒であることを特徴とする請求項9に記載のタンクコンテナ内の洗浄処理装置。
【請求項11】
当該タンクコンテナ内の洗浄処理装置は、更に当該混合ガスを当該触媒燃焼手段に供給するに際し、当該触媒燃焼手段に空気流を供給するための空気流量調整手段を更に含んでいる事を特徴とする請求項9又は10に記載のタンクコンテナ内の洗浄処理装置。
【請求項12】
当該触媒燃焼手段は、触媒予熱手段と触媒燃焼手段とを含んでいる事を特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のタンクコンテナ内の洗浄処理装置。
【請求項13】
当該タンクコンテナに導入する不活性ガスを当該液状VOCの大気圧沸点以上の温度に加熱せしめる加熱手段を有していることを特徴とする請求項9乃至12の何れか1項に記載のタンクコンテナ内の洗浄処理装置。
【請求項14】
当該タンクコンテナは、規格化されたタンクコンテナである事を特徴とする請求項9乃至13の何れかに記載のタンクコンテナ内の洗浄処理装置。
【請求項15】
当該不活性ガス供給手段は、当該タンクコンテナの液状VOC注入口若しくはその排出口の一方に嵌合しうる第1の接合手段を有すると共に、当該混合ガス排出手段は、当該タンクコンテナの液状VOC注入口若しくはその排出口の他方に嵌合しうる第2の接合手段を有する事を特徴とする請求項9乃至14の何れかに記載のタンクコンテナ内の洗浄処理装置。
【請求項16】
当該第2の接合手段には、当該タンクコンテナのVOC濃度を測定するVOC濃度測定手段が設けられている事を特徴とする請求項15に記載のタンクコンテナ内の洗浄処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−56380(P2009−56380A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225093(P2007−225093)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(801000072)農工大ティー・エル・オー株式会社 (83)
【Fターム(参考)】