説明

損傷指標予測システムおよび損傷指標予測方法

【課題】回路基板上の実装部品等の高精度な損傷予測が可能な電子機器の損傷指標予測システムを提供する。
【解決手段】電子部品を実装用の回路基板と電気的に接続する接合部と、この接合部よりも低寿命に設計された検出用接合部とを有する電子機器の接合部の損傷に関する指標を予測する損傷予測システムであって、接合部と検出用接合部の破損に関する関係を蓄積したデータベースと、検出用接合部の破損を検出する破損検出部と、この破損検出部で得られた検出用接合部の破損に関する情報と、データベースに蓄積されている関係から、接合部の損傷に関する指標の予測値を演算する演算部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷指標予測システムに関し、特に、電子機器の損傷指標予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では半導体装置を実装したあらゆる機器の高機能化および多機能化が進み、これにともなって半導体チップの高集積化、大規模化が一層進み、この半導体チップを搭載した半導体パッケージと回路基板とを接続する電気的接合部、一般的にははんだ接合部の数が大幅に増加する傾向にある。その結果、半導体パッケージの接合部に熱応力が繰り返し生じ、熱疲労破壊することが問題になっている。
【0003】
そこで、接合部の熱疲労破壊を未然に防ぐために、接合部の熱疲労破壊が近づいていることを検出する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これは、電気接続用バンプとは別に、半導体パッケージ側と回路基板側とを電気的に接続するセンサーバンプを設け、このセンサーバンプを含む接続経路の電気抵抗値を自動的に検出し、所定レベルを超えたときに熱疲労破壊が進んでいることを判別するものである。
【特許文献1】特許第3265197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1で提案されている熱疲労破壊の検出手法では、半導体パッケージの接合部の熱疲労破壊が近づいていることを検出するが、接合部の余寿命がどの程度であるかを判別することができないという問題がある。
【0005】
また、回路基板上の実装部品の接合部について、電子機器使用前に損傷予測される場合、あるいは電子機器使用中に測定されたパラメータから損傷予測される場合においては、電子機器、実装部品、接合部などの各構成部品に個体差が存在する。また、接合部の疲労特性にもばらつきが存在するため、実際の接合部の損傷には大きなばらつきが生じ、損傷予測値と大きく異なる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、搭載した回路基板上の実装部品の接合部について、より確実な損傷予測が可能な損傷指標予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、電子部品を実装用の回路基板と電気的に接続する接合部と、この接合部よりも低寿命に設計された検出用接合部とを有する電子機器の前記接合部の損傷に関する指標を予測する損傷予測システムであって、前記接合部と前記検出用接合部の破損に関する関係を蓄積したデータベースと、前記検出用接合部の破損を検出する破損検出部と、この破損検出部で得られた前記検出用接合部の破損に関する情報と、前記データベースに蓄積されている前記関係から、前記接合部の損傷に関する指標の予測値を演算する演算部と、を備えたことを特徴とする損傷指標予測システムが提供される。
【0008】
本発明の別の一態様によれば、電子部品を実装用の回路基板と電気的に接続する接合部と、この接合部よりも低寿命に設計され検出用接合部とを有する電子機器の前記接合部の損傷に関する指標を予測する損傷予測方法であって、前記接合部の損傷に関する指標と前記検出用接合部の損傷に関する指標との関係を用意し、前記検出用接合部の破損を検出し、この破損検出部で得られた前記検出用接合部の損傷に関する指標と、前記データベースに蓄積されている前記関係から、前記接合部の損傷に関する指標の予測値を演算することを特徴とする損傷指標予測方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子機器の使用中に、検出用接合部の破損指標をもとに、電子部品の接合部の寿命を予測することで、機器周辺の環境および使用状況、機器の個体差を加味した高精度な損傷指標予測が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係り、搭載した回路基板上の電子部品の接合部の損傷情報を利用する損傷指標予測システムの概略構成を示すブロック図である。この損傷指標予測システムは、電子機器の内部に組み込むことも出来るし、また電子機器の外部に配置されて、接続することもできる。
【0012】
図1に示すように、損傷指標予測システム100は、接合部と検出用接合部の損傷に関する関係についてのデータベース11、検出用接合部の破損を検出する破損検出部12、接合部の損傷に関する指標を演算する演算部13、表示出力部14を備えている。ただし、この表示出力部14はあえて設けなくてもよい。
【0013】
データベース11には、例えば、あらかじめ、電子機器について温度サイクル試験などの加速試験や、応力解析などの現象解析を行い、その結果から、電子部品の接合部と検出用接合部(後述する)について、損傷に関する関係を算出した結果を蓄積する。
【0014】
また、電子部品の接合部と検出用接合部の損傷に関する関係は、例えば、両者の損傷に関する指標の関数式で表され、検出用接合部の損傷に関する指標から電子部品の接合部の損傷に関する指標を算出できる。
【0015】
ここで、損傷に関する指標について説明する。一般的に、電子機器は使用の都度、電源が投入され、使用が終了すると電源断となる。このような電源ON/OFFの繰り返しに伴う電子機器内部の実装部品に熱応力が生じる。また、移動中の車内で使用する場合や、電子機器を落下させた場合には、電子機器内部の電子部品にも振動が加わる。このような電子部品に生じる熱応力や振動は損傷あるいは寿命を左右することになり、これを指標として表したものを損傷に関する指標とする。損傷に関する指標としては、例えば、破損寿命、損傷値、破損寿命を用いた関数、損傷値を用いた関数などがある。
【0016】
ここで、破損寿命とは、破損までの期間を表すもので、例えば、破損までのサイクル数や破損時間などで表される。
【0017】
また、損傷値は次のように定義することができる。繰返し負荷が1サイクル加わった際の損傷値は、同一の繰返し負荷を与えたときの寿命サイクル数の逆数で表され、負荷が繰返し生じた場合の損傷値は、各サイクルで生じる損傷値を累積したものである。累計した損傷値が1に達したとき、接合部が破損したことを表す。
【0018】
仮に、損傷に関する指標を破損寿命とし、損傷に関する指標の関係を寿命比とし、検出用接合部は温度変動などに対する破損寿命が電子部品の接合部のそれの半分として設計・製造されたとする。寿命比を電子部品の接合部の予測寿命を1としたときの検出用接合部の予測寿命の比率であると定義すると、このときの検出用接合部の寿命比は、0.5となる。このとき、検出用接合部が2000回の繰り返し使用に耐えたならば、当該電子部品の接合部は4000回の繰り返し使用に耐えると、予測することができる。尚、予測寿命は、温度変動の繰り返しサイクル数だけに限って寿命予測するものではない。すなわち、検出用接合部の破損寿命と使用時間で把握したとすると、予測寿命を当該電子機器の寿命に至るまでの時間として予測することができる。
【0019】
検出用接合部の破損検出部12は、検出用接合部の破損を検出するためのものである。検出の手法については後述する。例えば、破損検出部12は、電気回路として構成することができる。
【0020】
また、検出用接合部は、電子部品の接合部と構造的に同様な接合部、すなわち電子部品の機能を発動するための電気的信号は通らないが、構造的には電子部品の接合部の一部として形成してもよく、これらの検出部は例えばはんだ材料で構成される。
【0021】
接合部の損傷に関する指標の演算部13は、まず、破損検出部12から検出用接合部の情報を入力する一方、データベース11から蓄積されている損傷に関する関係を取り込んで、電子部品の接合部の損傷に関する指標の予測値、例えば破損に至るまでのサイクル数の予測値を算出する。この演算部13は、例えばCPUで構成することができる。なお、算出された電子部品の接合部の損傷に関する指標の予測値は、表示出力部14に表示するようにしても良い。
【0022】
個々の電子機器は、使用される環境がそれぞれ異なり、また、個体差も有していることから、使用前の一律な予測では、確からしさとの観点からは十分とは言えず、機器の使用経過と個体差を予測に反映させることにより、適切な損傷指標予測ができる。
【0023】
表示出力部14は、当該電子機器の操作者に対して、寿命に関する情報を提示するためのものであって、電子機器のディスプレイを共用することが好適である。例えば、「繰り返し使用可能回数は4000回、現在までの使用回数は2000回です。」と表示する。ただし、この表示出力部14はあえて設けなくてもよい。
【0024】
次に、検出用接合部の構成について説明する。図2は、本発明の実施形態に関する電子部品とその周辺の断面図である。図2に示すように、電子部品2は回路基板1に実装され、回路基板1を介してその裏面側に検出用デバイス3が実装されている。検出用デバイス3は、検出用接合部7によって回路基板1に電気的に接続されている。検出用接合部7は電子機器2の接合部6より低寿命で、例えば、接合部6が繰り返し使用1万回に耐える寿命であるとき、検出用接合部7は接合部6の寿命の半分である繰り返し使用5000回に耐える寿命となるように設計されている。
【0025】
寿命に相違が生じるような設計手法としては、多様なものがある。例えば、回路基板1の曲率が特徴的に変化する電子部品2コーナー直下、もしくは、電子部品2が半導体パッケージの場合には、チップコーナー直下付近の回路基板の裏面側に、検出用デバイス3を配置する。このような配置にすると、検出用接合部7への負荷は、接合部6への負荷に比べて大きくなるため、低寿命になる。
【0026】
また、回路基板1と電子部品2のパッケージ基板4と各検出用デバイス基板5は、線膨張率の異なる材料で作成し、その線膨張率は回路基板1、パッケージ基板4、検出用デバイス基板5の順に大きくし、パッケージ基板4と回路基板1の線膨張率差より、検出用デバイス基板5と回路基板1の線膨張率差の方を大きくする。例えば、回路基板1とパッケージ基板4は樹脂基板とし、検出用デバイス基板5はセラミックス基板とする。これにより、接合部の形状および境界条件が同一の場合には、線膨張率差が大きいほど接合部に生じる熱応力が大きくなるので、検出用接合部7の方が電子部品2の接合部6に比べて、より低寿命になるようにできる。また、検出用デバイス基板5もそれぞれ線膨張率が異なる材料を使用することで、段階的に寿命を設定することができ、回路基板1との線膨張率差が大きいデバイスほど低寿命になる。
【0027】
次に、検出用接合部の寿命の把握に不可欠となる検出用接合部7の破損検出について説明する。ここでは、例えば電気特性値の変化を利用する。電気特性値として電気抵抗を用いるとすると、導通がとれず抵抗値が無限大となる、あるいは、抵抗値が従前から著しく変化した場合には、検出用接合部は破損したものと把握することができる。電気特性値の他の例としては、静電容量が上げられ、その変化によって検出用接合部は破損を検出することもできる。
【0028】
本実施形態において、検出用接合部7は、複数箇所に設けることも可能であり、検出用接合部7を1箇所設けた場合に比して、より確からしい損傷指標予測が可能となる。
【0029】
図3は、例えば損傷に関する指標を破損寿命、損傷に関する関係を寿命比とした場合において、温度サイクル試験などの加速試験から接合部6と検出用接合部7の寿命比のデータベース構築の構成概略を示すブロック図である。また寿命比は、電子部品の接合部の予測寿命を1としたときの検出用接合部の予測寿命の比率であるとする。加速試験結果のデータベース31、接合部6と検出用接合部7の寿命比の演算部32と接合部6と検出用接合部7の寿命比のデータベース33を備えている。予め温度サイクル試験などの加速試験が行われ、加速試験における接合部6と検出用接合部7の破損寿命を加速試験結果データベース31に蓄積する。上記したように破損寿命は、例えば試験時間やサイクル数などである。加速試験結果31の接合部6と検出用接合部7の加速試験における破損寿命から、演算部32で接合部と検出用接合部7の寿命比を算出し、接合部と検出用接合部7の寿命比のデータベース33に蓄積する。
【0030】
図4は、検出用接合部7を1個とした場合の、電子部品の接合部6の損傷に基づく損傷指標予測手法の流れを示している。図4に示すように、検出用接合部7の電気特性値が測定される(S401)。検出用接合部7における電気特性値が規定範囲内でない場合には、検出用接合部7が破損したと判定する(S402)。検出用接合部7が破損を検出した(S403)ときは、実際の検出用接合部7の破損寿命と、予め構築されたデータベース33から接合部6と検出用接合部7の寿命比のデータを取り込み、接合部6の寿命予測値が算出され(S404)、電子部品2の接合部6の寿命予測値として、適宜出力される(S405)。
【0031】
本システムは、使用中常時稼動する場合や、機器立ち上げ時といった一定使用回数毎に稼動する場合や、週一回など一定期間毎に稼動する場合などがある。
【0032】
本実施形態によれば、電子機器の使用中に、検出用接合部の破損寿命をもとに、電子部品の接合部の寿命を予測することで、機器周辺の環境および使用状況、機器の個体差を加味した高精度な損傷指標予測が可能になる。
【0033】
次に、第1の実施形態の変形例1について説明する。図5は、変形例1における電子部品の接合部6の損傷指標予測手法の流れを示している。図5に示すように、本変形例1では、各検出用接合部が破損する毎に電子部品2の接合部6の損傷に関する指標の予測値を算出する手法以外は、第1の実施形態と同様である。本変形例では、電子部品2の接合部6の損傷に関する指標を損傷値、接合部6と検出用接合部7との損傷に関する関係を寿命比として説明する。本変形例1では、検出用接合部7の電気特性値が測定される(S501)。検出用接合部7における電気特性値が規定値範囲内でない場合には、検出用接合部7が破損したと判定する(S502)。検出用接合部7が破損した(S503)ときは、データベース33からの接合部6と検出用接合部7の寿命比のデータを取り込んで、電子部品2の接合部6の損傷値が算出され(S504)、電子部品2の接合部6の予測損傷値として、適宜出力される(S505)。仮に、検出用接合部7と接合部6の寿命比を0.5としたとき、検出用接合部7が破損した時点で、接合部6の損傷値は、0.5であると予測することができる。また、表示出力部14を有する場合は、例えば「現在使用可能時間の50%です。」と表示できる。
【0034】
本変形例1によれば、検出用接合部の破損寿命を用いずに、検出用接合部が破損した時点で、検出用接合部の破損に関する情報と、電子部品の接合部6と検出用接合部7の破損に関する関係である寿命比に基づき、電子部品2の接合部6の予測損傷値が算出されるため、検出用接合部のサイクル数や使用時間を測定する必要がない。したがって、サイクル数や使用時間を測定するための装置およびサイクル数や使用時間を記憶する装置を要することなく、損傷指標予測が可能になる。本変形例1は検出用接合部が1個の場合であるが、複数個にすることも可能であり、より高精度な寿命予測が可能になる。
【0035】
次に、第1の実施形態の変形例2について説明する。図6は、変形例2における電子部品とその周辺の断面図である。本変形例2の構造は、検出用接合部7が複数個存在すること以外は、第1の実施形態と同様である。いずれの検出用接合部7も電子部品2の接合部6より低寿命であるように設計されている。
【0036】
図7は接合部6の損傷指標予測手法の流れを示している。図7に示すように、本変形例2では検出用接合部7がn個存在し、各検出用接合部7が破損する毎に接合部6の損傷に関する指標の予測値を修正する手法以外は、第1の実施形態と同様である。xは検出用接合部の状況を示し、正常の場合0、破損した場合に1の値であるとする。また、kは破損した接合部の順番を示す。kとすべての接合部のxの初期値を0とする(S701)。kの値は検出用接合部が破損する毎に1ずつ増加していき、xの値は検出用接合部の破損を検出した際に1となるように設定されている(S706)。n個の検出用接合部7のそれぞれについて電気特性値が測定される(S702〜S708)。検出用接合部7が破損していないかを判断し(S703)、破損していない検出用接合部の電気特性値を測定する(S704)。検出用接合部7の電気特性値が規定範囲内でない場合には、検出用接合部7が破損したと判定する(S705)。その破損を検出したときは(S706)、破損検出された検出用接合部7の破損寿命と、接合部6と検出用接合部7の寿命比のデータベース33から取り込んだ接合部6と破損した検出用接合部7の寿命比から、接合部6の寿命を予測し、その値をNfkとする(S707)。Nf1〜Nfkの統計値、たとえば本変形例2では平均値を算出し、寿命予測値Nfとし(S710)、修正された寿命予測値として表示する(S711)。検出用接合部が1個も破損していない場合には、寿命予測値は表示されない(S709)。以降、検出用接合部7が破損する毎に、それまでに破損した各検出用接合部7の破損寿命と、接合部6と破損した検出用接合部7の寿命比から算出された、接合部6の各寿命予測値の平均値を算出し、接合部6の寿命予測値Nfを修正していく。
【0037】
本変形例2では、損傷に関する指標として破損寿命を用いたが、代わりに変形例1で説明した損傷値を用いても良い。
【0038】
本変形例2によれば、複数の検出用接合部の破損検出により、損傷指標予測の修正を段階的に行うことでより高精度な予測が可能になる。
【0039】
次に、第1の実施形態の変形例3について説明する。図8は、変形例3における接合部6の損傷指標予測手法の流れを示している。図8に示すように、本変形例3では、複数の検出用接合部の破損寿命から算出された複数の接合部の寿命予測値から接合部の寿命予測値を決定する処理方法以外は、第1の実施形態の変形例2と同様である。n個の検出用接合部7の破損を検出するため、それぞれについて電気特性値が測定される(S802〜S808)。その破損を検出したときは(S806)、実際に得られた検出用接合部7の破損寿命と、接合部6と破損した検出用接合部7の寿命比データ(33)から、接合部6の寿命予測値Nfkを算出する(S807)。N1〜Nfkで最小値を接合部6の寿命予測値Nfとし(S810)、修正された寿命予測値として表示する(S811)。以降、それまでに破損した各検出用接合部7の破損寿命と、接合部6と破損した検出用接合部7の寿命比から算出された、接合部6の各寿命予測値の最小値を算出し、接合部6の寿命予測値Nfを修正していく。
【0040】
本変形例3によれば、複数の破損寿命データの中で最低寿命のデータを反映させるので、より安全側の損傷指標予測が可能になる。
【0041】
複数の検出用接合部の破損寿命から算出された複数の接合部の寿命予測値から接合部の寿命予測値を決定する処理方法は上記に限ったものではなく、他に、各寿命予測値の中央値とする場合や、最後に破損した検出用接合部の破損寿命から算出された寿命予測値を使用する場合などがある。最後に破損した検出用接合部の破損寿命は、当該電子機器の使用開始から破損時点までの使用履歴を反映したものであるため、その時点で最後に破損した検出用接合部7の破損寿命をもとに予測する場合は、より使用履歴に応じた損傷指標予測の修正を段階的に行うことができる。
【0042】
本変形例3では、損傷に関する指標として破損寿命を用いたが、代わりに変形例1で説明した損傷値を用いても良い。
【0043】
次に、第1の実施形態において、接合部6と検出用接合部7の寿命比のデータベースを構築する方法を変えた変形例4について説明する。図9は、例えば損傷に関する指標を破損寿命、損傷に関する指標の関係を寿命比とした場合において、FEM解析などの現象解析から接合部6と検出用接合部7の寿命比のデータベース構築の構成概略を示すブロック図である。設計情報、材料のデータベース91、現象解析モジュール92、接合部6と検出用接合部7の状態パラメータのデータベース93、疲労特性データベース94、接合部6と検出用接合部7の寿命比の演算部95、接合部6と検出用接合部7の寿命比のデータベース33を備えている。設計情報、材料データベース91には、現象解析に必要な情報、例えば、各部品のサイズや配置、各部品の材料物性値などを蓄積しておく。現象解析モジュール92は、データベース91の設計情報および材料情報から、電子機器の使用状況を模擬した現象解析を実施し、電子部品の接合部と検出用接合部について、状態パラメータを算出し、データベース93に蓄積しておく。仮に状態パラメータを接合部のひずみ範囲とすると、データベース93に蓄積されている電子部品の接合部6と検出用接合部7に生じるひずみ範囲のデータと、疲労特性データベース94に蓄積されている接合部のひずみ範囲と寿命の関係を表すデータを用いて、演算部95で接合部6と検出用接合部7の寿命比を算出し、データベース33に蓄積する。
【0044】
本変形例4によれば、実験装置を要することなく、比較的短時間で容易に接合部6と検出用接合部7の寿命比のデータベースを構築することができる。
【0045】
次に、第1の実施形態において、電子部品2と回路基板1を電気的に接続する接合部6の損傷に関する指標を予測するための検出用デバイス3の配置を変えた変形例5について説明する。図10は、変形例5における電子部品とその周辺の断面図である。図10に示すように、電子部品2は回路基板1に実装され、回路基板1の電子部品2と同一面上に、電子部品2の近隣に複数個の検出用デバイス3が実装されている。複数個の検出用デバイス3は、検出用接合部7によって回路基板1に電気的に接続されている。いずれの検出用接合部7も、電子機器2の接合部6より低寿命で、かつそれぞれの寿命に相違が生じるように設計されている。本変形例5によれば、検出用デバイス3の配置が回路基板1の電子部品2と同一面上に配置しているので、電子機器全体の厚さを薄くすることができる。しかも、段階的な損傷に関する指標を有する複数の検出用デバイスの接合部における損傷に関する指標を利用することで、より高精度な損傷指標予測が可能になる。
【0046】
次に、接合部の寿命を予測するための検出部の配置を変えた更なる変形例6について説明する。図11は、変形例6に係る電子部品とその周辺を説明する図であり、(a)は電子部品2とその周辺の断面図であり、(b)は電子部品2の接合部6と検出用接合部7の配置を示している。
【0047】
図11に示すように、パッケージ基板4上に搭載された電子部品2はBGA型半導体パッケージであり、回路基板1に実装されている。回路基板1とパッケージ基板4との間には、電子部品2と回路基板1を電気的に接続する接合部6が配設され、接合部6は格子状に位置している。また、パッケージコーナー部には、接合部6の寿命を予測するための検出用接合部7が配設されている。検出用接合部7は2個で1組とし、1組で一つの回路に組み込まれ、その回路の電気特性値をモニターすることによって、2個のうち片方もしくは両方が破損したことを検出することができるように構成されている。
【0048】
いずれの検出用接合部7も、接合部6より低寿命になるように、かつ各検出用接合部7のそれぞれ寿命が異なるように設計されている。図11に示す変形例6では、一般的に回路基板1の曲率変化が大きく、負荷が大きい電子部品2のコーナー周辺に検出用接合部7を配置させている。しかも、検出用接合部7の直径を接合部6の直径より小さくすることで、接合部6より低寿命になるように設計している。また、検出用接合部7の各組の大きさを異なるようにすることで、検出用接合部7の各組の寿命に相違を生じさせることが可能である。
【0049】
本変形例6によれば、検出用接合部7を含めた外形サイズを、コンパクトなものとすることができる。
【0050】
更に、検出用接合部7の配置等についての変形が可能である。図12は、本変形例7に係る電子部品とその周辺を説明する図であり、(a)は電子部品2とその周辺の断面図であり、(b)は電子部品2の接合部6と検出用接合部7の配置を示している。図12に示すように、検出用接合部7の直径を接合部6の直径より小さくすることで、接合部6より低寿命になるように設計している。一般的に、電子機器2のコーナー周辺は回路基板1の曲率変化が大きく、負荷が大きくなる。そこで、本変形例7においては、各組の検出用接合部7のパッケージコーナー部からの距離が異なるように配置することで、検出用接合部7の各組の寿命に相違を生じさせるものである。
【0051】
本変形例7によれば、パッケージ基板4上のレイアウト設計の自由度が確保しやすくなる。
【0052】
更に、検出用接合部7の配置等についての変形が可能である。図13は、本変形例8に係る電子部品とその周辺を説明する図であり、(a)は電子部品2とその周辺の断面図であり、(b)は電子部品2の接合部6と検出用接合部7の配置を示すものである。本変形例8においても、検出用接合部7はいずれも接合部6より低寿命になるように、かつ各検出用接合部7それぞれの寿命が異なるように設計されている。本変形例8では、一般的に負荷が大きい電子部品2のコーナー付近に検出用接合部7を配置し、かつ検出用接合部7の直径を接合部6の直径より小さくすることで、接合部6より低寿命になるように設計している。一般的に、回路基板1を固定するための固定部8周辺は、それ以外の領域に比べて変形が大きい。そこで、検出用接合部7の各組の固定部8位置からの距離が異なるように配置することで、検出用接合部7の各組の寿命に相違を生じさせることが可能である。
【0053】
本変形例8によっても、パッケージ基板上のレイアウト設計の自由度が確保しやすくなる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0055】
本実施形態は、電子部品における接合部の損傷指標予測を行うに際し、電子機器の使用状況を模擬した現象解析等を利用するものである。図14は、第2の実施形態における、損傷指標予測システムの概略構成を示すブロック図である。この損傷指標予測システムは、電子機器の内部に組み込むことも出来るし、また電子機器の外部に配置されて、接続することもできる。図14に示すように、損傷指標予測システム200は、検出用接合部の破損検出部141、疲労特性データベースを修正する修正演算部142、疲労特性データベース143、接合部6と検出用接合部7の状態パラメータを蓄積した状態パラメータデータベース144と、接合部6の損傷に関する指標の予測値の演算部145、表示出力部146を備えている。ただし、この表示出力部146はあえて設けなくてもよい。
【0056】
破損検出部141は、検出用接合部7の破損を検出するためのものである。状態パラメータデータベース144には、予め接合部6と検出用接合部7の状態パラメータ、例えば温度、荷重、応力、変位、ひずみなどのデータを蓄積している。修正演算部142では、破損検出部141から検出用接合部7の破損検出情報が入力されると、検出用接合部7の損傷に関する指標のデータと状態パラメータデータベース144から取り込んだ検出用接合部7の状態パラメータに基づいて、疲労特性データベース143を修正する(詳細は後述する)。疲労特性データベース143には、接合部6の状態パラメータと損傷に関する指標との関係を表す疲労特性データを蓄積している。状態パラメータデータベース144から接合部6と検出用接合部7の状態パラメータ、データベース143から接合部の状態パラメータと損傷に関する指標の関係を表す疲労特性データを取り込んで、演算部145で接合部6の損傷に関する指標の予測値を算出する。表示出力部146を設ける場合は、接合部6の損傷に関する指標の予測値を表示するようにしても良い。これによって、当初予測した値よりも、より確からしい損傷指標予測を可能とする。
【0057】
図15は、第2の実施形態において、接合部の状態パラメータを例えば接合部に生じるひずみ範囲とし、接合部の損傷に関する指標を破損寿命とした場合における、FEM解析などの現象解析から接合部6と検出用接合部7のひずみ範囲に関する状態パラメータデータベースを構築する際の構成概略を示すブロック図である。
【0058】
設計情報、材料のデータベース151、現象解析モジュール152、接合部6と検出用接合部7のひずみ範囲のデータベース(状態パラメータデータベース)153を備えている。設計情報、材料データベース151には、現象解析に必要な情報、例えば、各部品のサイズや配置、各部品の材料物性値などを蓄積しておく。現象解析モジュール152ではデータベース151から現象解析に必要な情報を取り込んで、例えば使用環境もしくは加速試験を模擬したFEM解析などの現象解析を実施して各接合部のひずみ範囲を算出し、データベース153に蓄積する。
【0059】
図16は、第2の実施形態における電子部品の接合部6の寿命予測手法の流れを示している。ここでは、状態パラメータデータベースとして図15に示した接合部6と検出用接合部7のひずみ範囲のデータベース153を用いることとする。
【0060】
検出用接合部7の電気特性値が測定され(S1601)、検出用接合部7の電気特性値が規定範囲外の場合に破損を検出する(S1602)。ここで、電気特性値は上記したように電気抵抗値や静電容量値などが用いられる。検出用接合部7の破損を検出(S1603)したときは、検出用接合部7の実際の破損寿命とデータベース153から取り込んだ検出用接合部7のひずみ範囲のデータに基づいて、疲労特性データベース143を修正する(S1604)。修正方法の詳細は後述する。データベース153から接合部6のひずみ範囲のデータを、疲労特性データベース143から接合部のひずみ範囲と寿命との関係のデータを取り込み、接合部6と検出用接合部7の寿命予測値を算出し(S1605)、接合部6の寿命予測値を表示する(S1606)。
【0061】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が奏されることに加えて、予め構築された疲労特性データベースを使用状況に応じて修正することにより、より高精度な損傷予測が可能になる。
【0062】
本実施形態では、検出用接合部7は1個であるが、複数箇所に設けることも可能であり、検出用接合部7を1箇所設けた場合に比して、より確からしい損傷指標予測が可能となる。
【0063】
図17は、接合部の疲労特性のデータベースの修正方法を説明するための模式図である。状態パラメータを接合部のひずみ範囲Δε、損傷に関する指標を破損寿命サイクル数Nfとし、疲労特性データベースのデータがひずみ範囲Δεと破損寿命サイクル数Nfとの関係式とする。図17の縦軸は、接合部のひずみ範囲Δεを表し、横軸は破損寿命サイクル数Nfの予測値を表す。また、黒色のプロットは、破損した各検出用接合部7の、現象解析や回路基板の状態に関する情報などから予測されたひずみ範囲Δεと実際の破損寿命サイクル数Nfのデータを示している。例えば、一般的な金属材料の疲労特性は、低サイクル疲労ではCoffin-Manson則、高サイクル疲労ではBaskin則、低サイクル疲労と高サイクル疲労の両方を考慮するとCoffin-Manson則とBaskin則の組み合わせなどで表せる。本実施形態では、疲労特性データベースが、図17のグラフのように1本の直線で表すことができるひずみ範囲と破損寿命の関係式を有するとする。図17において、finitialは例えば電子機器の設計時における疲労特性データを示す直線である。
【0064】
破損した検出用接合部7のひずみ範囲Δεと破損寿命Nfの各プロットがひずみ範囲Δεと破損寿命サイクル数Nfの関係を示す直線上に乗るように、すべてのプロットに対して直線を横方向に平行移動させ、プロットの数だけの直線f1~fnを得る。移動後のn本の直線f1~fnに対し、その時点での接合部6の予測ひずみ範囲Δεpと直線f1~fnそれぞれから推定される接合部6の破損寿命予測値Nf1~Nfnについて、統計処理を行う。接合部6の破損寿命予測値Nfを算出し、ひずみ範囲がΔεpのときに破損寿命予測値がNfとなるように、ひずみ範囲Δεと破損寿命サイクル数Nfの関係を示す直線を平行にシフトさせることで、疲労特性データベースが修正される。
【0065】
統計処理については、破損寿命予測値Nf1~Nfnが対数正規分布のときは、その平均値を破損寿命予測値Nfとするのが適している。破損寿命予測値Nf1~Nfnがワイブル分布のときは、その中央値を破損寿命予測値Nfとするのが適している。図17は、Nf1~Nfnの中央値をNfとした場合の例であり、Nf3が中央値となるため、破損寿命予測値Nf = Nf3、損傷予測用モデルベースの直線はf3となる。尚、上述の説明では、損傷指標予測用の直線を、図17に示すグラフの横方向に平行移動させているが、縦方向に平行移動させるケースも可能である。
【0066】
次に、疲労特性のデータベース修正方法の変形例について説明する。この変形例においても、損傷指標予測用データベースを直線で表現している。図18は、本変形例における疲労特性データベースの修正手法を説明するための模式図である。
【0067】
状態パラメータを接合部のひずみ範囲Δε、損傷に関する指標を破損寿命サイクル数Nfとし、疲労特性データベースのデータが、ひずみ範囲Δεと破損寿命Nfの関係式とする。図18のグラフに示すような1本の直線finitialを例えば電子機器の設計時における疲労特性データとする。破損した検出用接合部7のひずみ範囲Δεと実際の破損寿命Nfの各プロット(黒色のプロット)の最小二乗法で決定される直線fを求め、接合部6の予測ひずみ範囲Δεpと直線fから、接合部6の寿命予測値Nfを算出する。検出用接合部7の破損が検出される毎に、ひずみ範囲Δεと破損寿命Nfのデータが拡充され、直線fが変化し、疲労特性データベースが修正される。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態の変形例について説明する。本変形例においては、電子部品における接合部の損傷指標予測を行うに際し、電子機器の使用中に測定される状態に関する情報を利用するもので、図19は、本変形例における接合部6と検出用接合部7のひずみ範囲のデータベース153を構築のための概略構成を示すブロック図である。本変形例では、接合部6と検出用接合部7のひずみ範囲のデータベース153を構築する手法以外は、第2の実施形態と同様である。図19に示すように、回路基板の状態に関する情報を測定する測定部191と、設計情報データベース192、応答曲面データベース193、接合部6と検出用接合部7のひずみ範囲を算出する演算部194、接合部6と検出用接合部7のひずみ範囲のデータベース153を備えており、電子機器使用中にリアルタイムでデータベース153にデータが蓄積される。回路基板の状態に関する情報の測定部191では、たとえば回路基板の温度やひずみ、応力、加速度、電気抵抗値などを測定する。設計情報データベース192には、例えば、各構成部材のサイズや配置などを蓄積しておく。応答曲面データベース193には、回路基板の状態に関する情報および設計情報から各接合部のひずみ範囲を算出するための応答曲面データを蓄積している。演算部194は、測定部191から回路基板の状態に関する情報を、設計情報データベース192から設計情報を、応答曲面データベース193から回路基板の状態に関する情報と設計情報と各接合部のひずみ範囲の関係を表す応答曲面データを取り込み、接合部6と検出用接合部7のひずみ範囲を算出し、データベース153に蓄積する。これによって、当初予測した値よりも、より確からしい寿命予測を可能とする。
【0069】
電子機器の使用中に接合部に生じるひずみ範囲は、使用時間や使用時の周囲環境等が同一でないため、使用の都度、変動する。そこで、電子機器の繰り返し使用に応じて変動するひずみ範囲Δεの繰り返しを、使用毎の損傷が等価になるように一定のひずみ範囲Δεeqの繰り返しに換算し、Δεeqを累積等価ひずみ範囲と呼ぶことにする。本変形例では、疲労特性データベースの疲労特性データを接合部の累積等価ひずみ範囲Δεeqと破損寿命の関係式とし、接合部6の累積等価ひずみΔεeqと接合部の累積等価ひずみ範囲Δεeqと破損寿命の関係式から寿命予測値を算出する。
【0070】
本変形例によれば、使用中に測定したデータに基づいてリアルタイムで損傷指標予測を行い、かつ損傷指標予測に用いるデータベースも随時更新していくため、より使用履歴に応じた高精度な接合部の損傷指標予測が可能である。
【0071】
なお、本発明は上記の実施形態のそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に関する損傷指標予測システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に関する電子部品とその周辺の断面図である。
【図3】寿命比のデータベース構築の構成概略を示すブロック図である。
【図4】電子部品の接合部の損傷に基づく損傷指標予測手法の流れを示す図である。
【図5】変形例1における電子部品の接合部の損傷指標予測手法の流れを示す図である。
【図6】変形例2に係る電子部品とその周辺の断面図である。
【図7】接合部の損傷指標予測手法の流れを示す図である。
【図8】変形例3における電子部品の接合部の損傷指標予測手法の流れを示す図である。
【図9】現象解析から接合部と検出用接合部の寿命比のデータベース構築の構成概略を示すブロック図である。
【図10】変形例5に係る電子部品とその周辺の断面図である。
【図11】変形例6に係る電子部品とその周辺を説明する図であり、(a)は電子部品とその周辺の断面図であり、(b)は電子部品の接合部と検出用接合部の配置を示している。
【図12】本変形例7に係る電子部品とその周辺を説明する図であり、(a)は電子部品2とその周辺の断面図であり、(b)は電子部品2の接合部6と検出用接合部7の配置を示している。
【図13】本変形例8に係る電子部品とその周辺を説明する図であり、(a)は電子部品2とその周辺の断面図であり、(b)は電子部品2の接合部6と検出用接合部7の配置を示すものである。
【図14】第2の実施形態における、損傷指標予測システムの概略構成を示すブロック図である。
【図15】現象解析から接合部と検出用接合部のひずみ範囲のデータベース構築の構成概略を示すブロック図である。
【図16】第2の実施形態における電子部品の接合部6の寿命予測手法の流れを示している。
【図17】接合部の疲労特性のデータベースの修正方法を説明するための模式図である。
【図18】疲労特性データベースの修正手法を説明するための模式図である。
【図19】変形例における接合部と検出用接合部のひずみ範囲のデータベースを構築のための概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
1・・・回路基板、2・・・電子部品、3・・・検出用デバイス、4・・・パッケージ基板、5・・・検出用デバイス基板、6・・・接合部、7・・・検出用接合部、11・・・接合部と検出用接合部の損傷に関する指標の関係についてのデータベース、12・・・破損検出部、13・・・演算部、14・・・表示出力部、100・・・損傷指標予測システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装用の回路基板と電気的に接続する接合部と、この接合部よりも低寿命に設計された検出用接合部とを有する電子機器の前記接合部の損傷に関する指標を予測する損傷予測システムであって、
前記接合部と前記検出用接合部の破損に関する関係を蓄積したデータベースと、
前記検出用接合部の破損を検出する破損検出部と、
この破損検出部で得られた前記検出用接合部の破損に関する情報と、前記データベースに蓄積されている前記関係から、前記接合部の損傷に関する指標の予測値を演算する演算部と、
を備えたことを特徴とする損傷指標予測システム。
【請求項2】
前記演算部で演算された前記接合部の損傷に関する指標を表示する表示出力部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の損傷指標予測システム。
【請求項3】
前記接合部の損傷に関する指標が破損寿命であり、前記関係が前記接合部と前記検出用接合部の寿命比であるとき、前記演算部は前記接合部が破損に至るまでの寿命予測値を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の損傷指標予測システム。
【請求項4】
前記接合部の損傷に関する指標が損傷値であり、前記関係が前記接合部と前記検出用接合部の寿命比であるとき、前記演算部は前記検出用接合部が破損した時点での前記接合部の予測損傷値を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の損傷指標予測システム。
【請求項5】
前記検出用接合部は複数個所に配設され、
前記演算部は前記検出用接合部が破損する毎に、前記接合部の損傷に関する指標の平均値を算出し、前記予測値を修正することを特徴とする請求項1または2に記載の損傷指標予測システム。
【請求項6】
前記検出用接合部は複数個所に配設され、
前記演算部は前記検出用接合部が破損する毎に、前記寿命予測値のうち最も低寿命の寿命予測値を前記接合部の寿命予測値として演算することを特徴とする請求項3に記載の損傷指標予測システム。
【請求項7】
前記検出用接合部は、それぞれに付加される負荷が異なり、該電子機器の繰り返し使用に対する強度が相違するように形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の損傷指標予測システム。
【請求項8】
前記データベースは、予め、前記電子部品が搭載された電子機器に対して加速試験を実行し、前記接合部と前記検出用接合部の破損に関する関係を算出して得られたデータで構築されていることを特徴とする請求項1に記載の損傷指標予測システム。
【請求項9】
前記データベースは、回路基板の設計情報及び材料データベースを利用して、前記電子部品が搭載された電子機器に対して現象解析を実行し、前記接合部と前記検出用接合部に生じる負荷を予測し、かつ、前記接合部の疲労特性データベースを利用して、前記接合部と前記検出用接合部の破損に関する関係を算出して得られたデータで構築されていることを特徴とする請求項1に記載の損傷指標予測システム。
【請求項10】
電子部品を実装用の回路基板と電気的に接続する接合部と、この接合部よりも低寿命に設計された検出用接合部とを有する電子機器の前記接合部の損傷に関する指標を予測する損傷予測システムであって、
前記検出用接合部の破損を検出する破損検出部と、
前記接合部と前記検出用接合部の状態パラメータを蓄積した状態パラメータデータベースと、
前記接合部の状態パラメータと前記接合部の損傷に関する指標との関係を表わす疲労特性データを蓄積した疲労特性データベースと、
前記破損検出部から前記検出用接合部の破損検出情報を受け取り、該検出用接合部の損傷に関する指標と該検出用接合部の状態パラメータに基づいて、前記疲労特性データベースを修正する修正演算部と、
前記接合部と前記検出用接合部の状態パラメータ及び修正された前記疲労特性データベースの前記疲労特性データを取り込んで、前記接合部の損傷に関する指標の予測値を演算する演算部と、
を備えたことを特徴とする損傷指標予測システム。
【請求項11】
前記演算部で演算された前記接合部の損傷に関する指標を表示する表示出力部をさらに備えたことを特徴とする請求項10に記載の損傷指標予測システム。
【請求項12】
前記状態パラメータデータベースは、温度、荷重、応力、変位、ひずみのデータで構築されていることを特徴とする請求項10または11に記載の損傷指標予測システム。
【請求項13】
前記電子部品に関する設計情報及び材料情報が蓄積された設計情報・材料データベースをさらに備え、
前記接合部の状態パラメータは、前記接合部のひずみ範囲であって、前記設計情報・材料データベースから必要な情報を取り込んで現象解析を実行し、得られた前記接合部のひずみ範囲が前記状態パラメータデータベースに蓄積されていることを特徴とする請求項10または11に記載の損傷指標予測システム。
【請求項14】
現象解析や回路基板の状態に関する情報から予測された前記接合部のひずみ範囲と実際に得られた前記接合部の損傷に関する指標に応じて、前記疲労特性データベースに蓄積されている前記接合部の疲労特性データを修正することを特徴とする請求項10または11に記載の損傷指標予測システム。
【請求項15】
前記回路基板の状態に関する情報を測定する測定部と、
前記電子部品に関する設計情報が蓄積された設計情報データベースと、
前記測定部で測定された前記回路基板の状態に関する情報及び前記電子部品に関する設計情報から前記接合部のひずみ範囲を算出するための応答曲面データが蓄積された応答曲面データベースと、
前記測定部から前期回路基板の状態に関する情報を、前記設計データベースから前記設計情報を、前記応答曲面データベースから前記応答曲面データを取り込み、前記接合部と前記検査用接合部のひずみ範囲を算出するひずみ範囲演算部をさらに備え、
前記接合部の状態パラメータデータベースは、前記ひずみ範囲演算部で前記電子機器の使用中にリアルタイムで演算されたひずみ範囲のデータが蓄積されることを特徴とする請求項10または11に記載の損傷指標予測システム。
【請求項16】
前記回路基板の状態に関する情報は、温度、ひずみ、応力、加速度、電気抵抗値の少なくともひとつであることを特徴とする請求項15に記載の損傷指標予測システム。
【請求項17】
前記電子部品のコーナー直下付近、あるいは前記電子部品が半導体パッケージの場合にはチップコーナー直下付近の回路基板の裏面側に、前記検出用接合部が配置され、前記検出用接合部への負荷を、前記接合部への負荷に比べて大きくしていることを特徴とする請求項1、2、10、11のいずれか一項に記載の損傷指標予測システム。
【請求項18】
前記回路基板の線膨張率、前記電子部品のパッケージ基板の線膨張率、前記検出用デバイスの基板の線膨張率の順に大きくし、かつ、該パッケージ基板と該回路基板の線膨張率差より、前記検出用デバイスの該基板と該回路基板の線膨張率差の方が大きくなるように材料を選定してなることを特徴とする請求項16に記載の損傷指標予測システム。
【請求項19】
前記検出用接合部が、前記電子部品の側と前記回路基板の側とを電気的に接続するように複数個設けられ、少なくとも2個が前記回路基板に設けられた配線を介して電気的に直列接続されていることを特徴とする請求項1、2、10、11のいずれか一項に記載の損傷指標予測システム。
【請求項20】
前記検出用接合部が、前記回路基板上にパッケージ基板を介して載置される前記電子部品と同一面上に配設されていることを特徴とする請求項1、2、10、11のいずれか一項に記載の損傷指標予測システム。
【請求項21】
前記検出用接合部は、2個で1組として、パッケージコーナー部に配設され、2個のうち片方もしくは両方が破損したことを検出して、前記検出用接合部の破損と判定することを特徴とする請求項1、2、10、11のいずれか一項に記載の損傷指標予測システム。
【請求項22】
前記検出用接合部は、前記接合部の直径よりも小さくし、各組の前記検出用接合部のパッケージコーナー部からの距離がそれぞれ異なるように配置されていることを特徴とする請求項21に記載の損傷指標予測システム。
【請求項23】
前記回路基板を固定するための固定部が形成され、各組の前記検出用接合部の前記固定部の位置からの距離がそれぞれ異なるように配置されていることを特徴とする請求項21に記載の損傷指標予測システム。
【請求項24】
電子部品を実装用の回路基板と電気的に接続する接合部と、この接合部よりも低寿命に設計され検出用接合部とを有する電子機器の前記接合部の損傷に関する指標を予測する損傷予測方法であって、
前記接合部の損傷に関する指標と前記検出用接合部の損傷に関する指標との関係を用意し、
前記検出用接合部の破損を検出し、
この破損検出部で得られた前記検出用接合部の損傷に関する指標と、前記データベースに蓄積されている前記関係から、前記接合部の損傷に関する指標の予測値を演算することを特徴とする損傷指標予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−73795(P2010−73795A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237935(P2008−237935)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】