損耗部材の残存厚み測定方法、及び残存厚み測定用プローブ
【課題】損耗部材の残存厚みを高精度に測定することのできる損耗部材の残存厚み測定方法の提供。
【解決手段】損耗部材13の残存厚みを測定する損耗部材13の残存厚み測定方法は、損耗部材13の損耗により厚みが減少する方向に沿って延びる一対の電極22を形成し、一対の電極22間に絶縁体21を介在させてコンデンサを形成する手順と、このコンデンサの静電容量の変化を検出し、検出された静電容量の変化に基づいて、損耗部材13の残存厚みを算出する手順とを備えている。
【解決手段】損耗部材13の残存厚みを測定する損耗部材13の残存厚み測定方法は、損耗部材13の損耗により厚みが減少する方向に沿って延びる一対の電極22を形成し、一対の電極22間に絶縁体21を介在させてコンデンサを形成する手順と、このコンデンサの静電容量の変化を検出し、検出された静電容量の変化に基づいて、損耗部材13の残存厚みを算出する手順とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損耗部材の残存厚みを測定する損耗部材の残存厚み測定方法、及びこの測定方法に用いる残存厚み測定用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部を直接視認することが困難な容器や配管部材において、内部を材料が流通することにより、容器の隔壁や配管部材を構成する部材が損耗するので、この損耗量を外側から非破壊で計測したいという要求がある。
例えば、高炉においては、溶銑を受ける炉底部分には耐火煉瓦等の炉底耐火物が用いられている。この炉底耐火物は、溶銑流れ等により損耗し、高炉の寿命を律する大きな因子の一つとされ、高炉操業中に炉底耐火物の残存厚みを逐次測定して、高炉の寿命を推定することが要求されている。
【0003】
この炉底耐火物の損耗状況を外側から測定する方法としては、従来、炉底耐火物外面の温度を測定し、測定温度に基づいて、炉底耐火物の残存厚みを推定算出する方法が知られている。
一方、非破壊による絶縁体からなる測定対象の厚み測定方法としては、静電容量を利用した方法も知られており、この厚み測定方法では、測定対象を厚さ方向で挟み込むように電極を配置してコンデンサを形成し、コンデンサの静電容量を測定することにより、測定対象の厚みを推定することができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
この静電容量による方法を、前記の高炉の炉床耐火物の残存厚み測定に利用する場合、図11に示されるように、炉底耐火物となる炉底側壁煉瓦13の外周面を金属板101で覆って電極を形成し、高炉内部の溶銑Sとの電気的導通を確保して、炉底側壁煉瓦13を介して離隔される溶銑S及び金属板101間の静電容量を検出することにより、炉底側壁煉瓦13の損耗による残存厚みを算出することが考えられる。
この場合、炉底耐火物の誘電率をε(F/m)、残存厚みをd(m)、静電容量をC(F)、電極面積をS(m2)とすると、C=ε・S/dという式に基づいて、残存厚みを算出することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−109409号公報(図1、図5参照)
【特許文献2】特開平6−194114号公報(図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来提案されている残存厚みの測定方法では次のような問題がある。すなわち、炉底耐火物外周面の温度を測定して残存厚みを推定する方法では、測定温度のばらつきが大きいため、残存厚みを高精度に推定することが困難であるという問題がある。
また、静電容量により残存厚みを測定する方法では、炉底耐火物の内面、すなわち損耗面に導電性の材料が不可欠であり、内部に溶銑等が存在する特殊な場合を除いては利用が困難であるという問題がある。さらに、高炉等の導電性材料が存在している場合に利用しても、初期の損耗が進行していない状態では、前記の式からも判るように、電極間距離dが長すぎて検出される静電容量の値が小さくなってしまい、やはり高精度に測定することが困難であるという問題がある。
なお、このような課題は、前述した高炉の炉底耐火物のみならず、内部に摺動面を有する機械や容器等の構造体において、損耗面を直接観察することができず、外側から、摺動による残存厚みを測定したい場合にも同様の課題として把握される。
【0007】
本発明の目的は、損耗部材の残存厚みを高精度に測定することのできる損耗部材の残存厚み測定方法、及びこの測定方法に用いられる残存厚み測定用プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る損耗部材の残存厚み測定方法は、損耗部材の残存厚みを測定する損耗部材の残存厚み測定方法であって、
前記損耗部材の損耗により厚みが減少する方向に沿って延びる一対の電極を形成し、前記一対の電極間に絶縁体を介在させてコンデンサを形成する手順と、
前記コンデンサの静電容量の変化を検出し、検出された静電容量の変化に基づいて、前記損耗部材の残存厚みを算出する手順とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、前述のように形成されたコンデンサの静電容量の変化を検出することにより、損耗による損耗部材の厚みの減少に伴って電極の延出方向損耗面側端部が損耗していくので、電極長さの減少という形で静電容量の変化を検出することができ、損耗の度合いによらず検出精度が変化することがなく、高精度に残存厚みを測定することができる。
【0010】
ここで、検出された静電容量の変化から残存厚みを算出する方法としては、例えば、損耗によって減少する電極の長さに応じた静電容量を予め検出しておき、これに基づいて検量線を作成することにより求めることができる。
また、検出される静電容量をC(F)、一対の電極間の絶縁体の誘電率をε(F/m)、損耗部材の残存厚みをL(m)、電極の幅をW(m)、対向する電極間の距離をd0(m)とすると、次の式(A)に基づいて求めることもできる。
L=C・d0/ε/W…(A)
【0011】
(2) 本発明において、損耗部材が複数組み合わされて用いられる場合、コンデンサを形成する手順は、損耗部材間の境界部分の互いに対向する面に、損耗部材の厚み減少方向に沿って延びる電極をそれぞれ形成し、形成された電極間に絶縁体材料を充填することを採用することができる。
この発明によれば、別途特殊な部材等を用いる必要がないので、境界部分に面する損耗部材のそれぞれの端面に電極を形成し、絶縁体材料を充填するだけで簡単に本発明の作用及び効果を享受することができる。
【0012】
ここで、損耗部材の端面に電極を形成する方法としては、銅、白金、タングステン、モリブデン、鉄、バナジウム、チタニウム等の金属材料を、溶射、蒸着等により損耗部材の端面に薄膜として形成したり、これらの金属材料をフィルム上に薄膜形成しておき、これを損耗部材の端面に貼り付ける等の方法を採用することができる。
また、充填する絶縁体材料としては、損耗部材が複数組み合わされて構成されるので、モルタル等の損耗部材間の接合を行う材料を採用するのが好ましい。
【0013】
(3) 本発明において、コンデンサを形成する手順としては、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されたプローブを予め準備しておき、損耗部材の厚み減少方向に孔を穿設し、プローブを穿設された孔に挿入することが考えられる。
この発明によれば、損耗部材の厚み減少方向に孔を穿設して、この孔にプローブを挿入するだけで、本発明の作用及び効果を享受できるので、既に、操業中の高炉に用いられた炉底耐火物に対しても、高精度に炉底耐火物の残存厚みの測定を行うことができる。
ここで、プローブは、例えば、絶縁体としてポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム等の合成樹脂からなるテープの表裏面に銅、白金、タングステン、モリブデン、鉄、バナジウム、チタニウム等を蒸着形成、溶射形成したり、これらの金属材料が表面に形成されたフィルムを、絶縁体の表裏面に貼り付けることにより構成することができる。
【0014】
(4) 本発明において、損耗部材が複数組み合わされて用いられる場合、コンデンサを形成する手順は、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、該絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されたプローブを予め準備しておき、プローブを損耗部材間の境界部分に介在させることを特徴とする。
この発明によっても、前記と同様の作用効果を享受できる上、(2)と比較すると、溶射、蒸着等の金属薄膜形成の手順が必要となくなるので、コンデンサ形成に要する手間が大幅に軽減される。
【0015】
(5) 本発明は、前述した損耗部材の残存厚み測定方法に直接用いられる装置、器具等のサブコンビネーション発明としても成立するものである。
具体的には、本発明に係る残存厚み測定用プローブは、損耗部材の残存厚みを測定する損耗部材の残存厚み測定方法に用いられ、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、該絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明によれば、損耗部材の損耗による残存厚みの程度によらず、残存厚みを高精度に測定することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔高炉構造〕
図1には、本発明の実施の形態に係る高炉10が示されている。この高炉10は、鉄皮11と、鉄皮11の内部に内張りされた炉底煉瓦12及び炉底側壁煉瓦13と、炉底煉瓦12を保持する底盤14と、羽口15、16とを備えている。
炉底煉瓦12は、底盤14上に複数段積重ねられており、この炉底煉瓦12の外側並びに上方に鉄皮11の内壁に接触した状態で炉底側壁煉瓦13が複数段積重ねられ、炉底煉瓦12と炉底側壁煉瓦13とが一体となっている。
【0018】
具体的には、図2に示されるように、炉底側壁煉瓦13は、炉底煉瓦12を囲むように平面視で略円形状に配置されて上下方向に積み重ねられて炉底側壁を構成している。炉底煉瓦12及び炉底側壁煉瓦13は、無煙炭、土壌黒煙、人造黒煙など耐溶損性に優れる材質が採用され、例えば、タール、ピッチ、樹脂の1種以上をバインダーとして混練し、プレス板間に充填し加圧プレスにて成形することができる。
また、底盤14には、図示を略したが、冷却管が設けられており、調整弁により冷却管に供給する冷却水量を調整することが可能な構成となっている。
羽口15は、図1に示されるように、高炉10内に酸素や微粉炭等を吹込むことができ、吹込み量比率の増減ができ、羽口前16における燃焼温度を増減することができる。
【0019】
このような構造の高炉10が正常な場合は、炉底側壁煉瓦13に異常な損耗がなく、操業も安定した状態を維持できる。
しかし、底盤14の不適切な冷却、炉内状況の異常等によって、炉底煉瓦12の表面にメタルとスラグを有する凝固層(粘稠層とも言う)が異常形成されることがある。この形成される凝固層の量によっては、高炉10の底部に溶銑の炉底側壁煉瓦13に沿う環状の流れが発生して、炉底側壁煉瓦13が損耗する。
【0020】
また、異常形成した凝固層により、高炉10の底部の熱が炉底煉瓦12に伝わることが抑制されるので、この場合、炉底煉瓦12の温度が低下する。これにより、炉底煉瓦12が収縮するので、炉底煉瓦12と一体となった炉底側壁煉瓦13が高炉10の中心部へ移動し、鉄皮11と炉底側壁煉瓦13との間に、例えば、0.2〜1mm程度の隙間が形成される。このため、鉄皮11の外側から冷却しても、炉底側壁煉瓦13を冷却することはできず、炉底側壁煉瓦13が損耗する。
以上のような現象により、炉底側壁煉瓦13は、高炉10の内面側から損耗するため、この損耗の程度、すなわち炉底側壁煉瓦13の残存厚みを外側から高精度に測定することは、高炉10の寿命を検討する上で非常に重要となる。
【0021】
〔第1実施形態〕
このような高炉10の炉底側壁煉瓦13の損耗による残存厚みを測定するために、第1実施形態に係る測定方法では、図3に示されるように、炉底側壁煉瓦13に内外を貫通する、すなわち、炉底側壁煉瓦13の厚みが減少する方向に沿って延びる孔131を穿設し、この孔131にプローブ20を挿入し、このプローブ20の静電容量の変化を検出することにより、炉底側壁煉瓦13の残存厚みを測定する。
プローブ20の取付位置は、炉底側壁煉瓦13の任意の位置に設定することができ、例えば、複数の炉底側壁煉瓦13を組み合わせて構成される壁体において、上下方向に複数箇所、さらに平面視円形状の壁体を均等に分割する複数の箇所に設定することが可能である。
また、プローブ20は帯状であり、孔131は断面円形状に穿設されるのが通常であるから、孔131の隙間部分には、封止用のモルタル132が充填される。
【0022】
プローブ20は、帯状の絶縁体21と、この絶縁体21の表裏面に形成される導体からなる電極22とを備えて構成され、図中右側となる炉底側壁煉瓦13の外周面には、電極22から引き出された端子23が露出している。
絶縁体21としては、アルミナ等のセラミックやポリイミドテープ等の合成樹脂材料を用いることができる。
導体からなる電極22は、図4に示されるように、絶縁体21の幅寸法W0よりも若干小さな幅寸法Wとされ、絶縁体21の延出方向に沿って複数配列された電極セル221と、各電極セル221間の電気的導通を確保する連結部222とを備えて構成されている。電極22を構成する導体としては、Mo、Cu、W、Ta、Cr、Au、Ag、Pt等の金属フィルムを用いることができる。
【0023】
このようなプローブ20を高炉10の側壁等の高温で使用する場合、前述した絶縁体21の材料、電極22の材料のうち、絶縁体21としてアルミナ箔、導体からなる電極22としてMoフィルムを採用するのが、耐熱性が良好なので好ましい。
一方、高炉10の側壁と比較して低温で使用する場合、プローブ20の絶縁体21としてはポリイミドテープ、導体からなる電極22としてCuフィルムを採用するのが安価でコスト的にも好ましい。
なお、絶縁体21の厚さ寸法としては、例えば400μmのものを採用し、電極22の厚さ寸法は、例えば10μmとすることができる。
また、プローブ20は、絶縁体21に対して導体金属を接着、蒸着、溶射等の手法によって形成することができるが、最も好ましいのは溶射である。
【0024】
絶縁体21の表裏面に形成されたそれぞれの電極22は、電極セル221同士が対向するように配置され、隣接する電極セル221同士の間には、僅かな隙間が形成され、絶縁体21の幅方向略中央の連結部222によって連絡している。
電極22の端部に設けられた端子23には、図3及び図4では略したが、プローブ20の静電容量を測定するためのLCRメータ等が接続される。
プローブ20は、端子23が設けられていない側の端部から損耗等により長さ寸法Lが減少するに伴って静電容量が変化し、この変化は端子23に接続されたLCRメータによって検出することができる。
【0025】
次に、本実施形態による炉底側壁煉瓦13の残存厚みの測定手順を具体的に説明する。
まず、図4において、端子23側とは反対側の端部から長さ方向に電極セル221を切り取って、それぞれの長さにおける静電容量Cを予め測定しておく。この際、電極セル221間の隙間部分をはさみ等で順次切り取るのが好ましい。
具体的には、例えば、JIS R 1661に準拠したLCRメータの一種であるケミカルインピーダンスメータ(日置電機株式会社製)を用いて、電極セル221の欠損数に応じた静電容量を測定すると、図5に示されるように、切り取りによる欠損セル数と電極セル221の数に応じた静電容量Cとの関係を与える検量線G1が得られることとなる。この欠損セル数は、プローブ20の長さL方向の減少量として把握される。
【0026】
次に、炉底側壁煉瓦13の外周から内部に向かって孔131を穿設し、この孔131内に、検量線G1と同様の仕様のプローブ20を挿入し、孔131の隙間部分にモルタル132を充填して硬化させ、高炉10の内外の連通を遮断する。
炉底側壁煉瓦13の複数箇所にこのようにプローブ20を装着し、高炉10を操業させると、前述した現象により、図6に示されるように、炉底側壁煉瓦13の溶銑との接触面が徐々に損耗していく。この際、プローブ20の内側端部は一瞬溶銑と接触し、一対の電極22間は溶銑を介して短絡する。しかし、この後、プローブ20は、溶銑の熱によって収縮するため、端部が炉底側壁煉瓦13の接触面よりも内側に凹んだ状態となり、一対の電極22間の電気的導通は遮断され、適切なコンデンサとして機能する。
【0027】
このような炉底側壁煉瓦13が損耗した状態において、前述したケミカルインピーダンスメータを端子23に接続し、プローブ20によって形成されるコンデンサの静電容量を測定し、図5に示される検量線G1に基づいて、欠損した電極セル221の数から炉底側壁煉瓦13の残存厚みL(図6参照)を、前述した式(A)を用いて算出することができることとなる。
なお、本実施形態においては、炉底側壁煉瓦13に孔131を穿設して、孔131にプローブ20を挿入していたが、これに限らず、例えば、炉底側壁煉瓦13の加圧プレス成形に際して、プローブ20を炉底側壁煉瓦13の内部に埋設した状態で加圧プレス成形を行い、プローブ20が埋設された炉底側壁煉瓦13を、高炉10の建設時に所定位置に組み込んでもよい。また、高炉10の建設時に、炉底側壁煉瓦13同士の境界部分、すなわち目地の部分にプローブ20を配設し、目地モルタル中にプローブ20を埋設してもよい。
【0028】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態において既に説明した部材については同一符号を付してその説明を省略する。
前述した第1実施形態では、予め形成されたプローブ20を炉底側壁煉瓦13に穿設された孔131に挿入し、このプローブ20によって形成されるコンデンサの静電容量を測定することにより、炉底側壁煉瓦13の残存厚みの測定を行っていた。
これに対して、第2実施形態に係る測定方法では、図7に示されるように、高炉の建設時に、隣接する炉底側壁煉瓦13の互いに対向する面のそれぞれに電極31を形成し、一対の電極31間を目地モルタル32で充填することにより、コンデンサ30を形成している点が相違する。
【0029】
本実施形態では、高炉建設時、適宜の位置の炉底側壁煉瓦13に電極31を形成するが、具体的には、以下の手順でコンデンサ30が形成される。
電極31は、図8に示されるように、炉底側壁煉瓦13の目地部に相当する端面に形成され、電極31を形成する方法としては、例えば、Mo、Cu、W、Ta、Cr、Au、Ag、Pt等の金属を炉底側壁煉瓦13の端面に溶射したり、蒸着したり、片面に金属薄膜が形成された合成樹脂製のフィルム等を炉底側壁煉瓦13の端面に貼り付けたりする方法を採用することができる。なお、電極31は、炉底側壁煉瓦13の端面全部に形成する必要はなく、それぞれの電極31が互いに対向配置されるような一部の位置に帯状に形成すればよい。
【0030】
電極31の形成が終了したら、炉底側壁煉瓦13の外周側端部に端子線33を設け、電極31との電気的導通を確保した状態で高炉外部に端子線33を引き出しておく。
電極31の形成及び端子線33の取付が終了したら、図9に示されるように、目地モルタル32を一方の炉底側壁煉瓦13の電極31を覆うように塗り込み、双方の電極31が対向するように、他方の炉底側壁煉瓦13を接合する。
炉底側壁煉瓦13の損耗による残存厚みを測定する際には、LCRメータを端子33に接続して、静電容量C(F)を検出し、予め測定しておいた目地幅d0(m)、電極幅W(m)、及び目地モルタル32の誘電率ε(F/m)に基づいて、残存厚みL=C・d0/ε/Wを算出する。
【0031】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
前述した第1実施形態に係るプローブ20は、電極22が幅広の電極セル221と幅狭の連結部222が連続するように構成されていた。
これに対して第3実施形態に係るプローブ40は、図10に示されるように、絶縁体21の表裏面に帯状に電極22が形成されている点が相違する。
本実施形態におけるプローブでは、一方の電極22の幅方向寸法W1が他方の電極22の幅方向寸法W2よりも小さくなっている。これは、製造時の導通を防止するためである。
尚、本実施形態におけるプローブ40の材質、形成方法、及び使用方法は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0032】
〔実施形態の変形〕
尚、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、次に示すような変形をも含むものである。
前述の第1実施形態では、高炉10の炉底側壁煉瓦13の損耗による残存厚みを測定するために、本発明の残存厚み測定方法を採用していたが、本発明はこれに限られない。すなわち、コンクリートスラリー等を搬送する配管部材の内部の損耗状態を測定する際に、本発明の残存厚み測定方法を採用してもよく、さらには、内部に進入するのが困難な腐食性液体や気体等を貯蔵する容器を構成する隔壁の内側の損耗状態を測定する際に、本発明の残存厚み測定方法を採用してもよい。
【0033】
また、前述の第2実施形態では、炉底側壁煉瓦13の端面に電極31を形成し、この間に目地モルタル32を充填して状態でコンデンサ30を形成していたが、本発明はこれに限られない。すなわち、既に建設された高炉の炉底を構成する煉瓦に孔を穿設し、この孔の互いに対向する面の間に電極を形成し、この孔を目地モルタル等で充填してコンデンサを形成してもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、内部の損耗状態を測定することが困難な隔壁等の残存厚みを高精度に測定するのに好適に用いることができ、とりわけ、高炉の炉底煉瓦、炉底側壁煉瓦の残存厚みを測定するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る高炉の構造を表す模式断面図。
【図2】本実施形態における炉底の構造を表す部分斜視図。
【図3】本実施形態における炉底側壁煉瓦にプローブを取り付けた状態を表す断面図。
【図4】本実施形態におけるプローブの構造を表す平面図。
【図5】本実施形態におけるプローブの電極セルの欠損数と静電容量の関係を表すグラフ。
【図6】本実施形態における炉底側壁煉瓦の損耗時におけるプローブの状態を表す断面図。
【図7】本発明の第2実施形態に係るコンデンサの構造を表す断面図。
【図8】本実施形態におけるコンデンサ形成の手順を説明するための模式図。
【図9】本実施形態におけるコンデンサ形成の手順を説明するための模式図。
【図10】本発明の第3実施形態に係るプローブの構造を表す平面図。
【図11】従来技術における損耗部材の残存厚みの測定方法を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0036】
10…高炉、11…鉄皮、12…炉底煉瓦、13…炉底側壁煉瓦(損耗部材)、14…底盤、15…羽口、16…羽口前、20…プローブ(残存厚み測定用プローブ)、21…絶縁体、22…電極、23…端子、30…コンデンサ、31…電極、32…目地モルタル(絶縁体材料)、33…端子線、40…プローブ、101…金属板、131…孔、132…モルタル、221…電極セル、222…連結部
【技術分野】
【0001】
本発明は、損耗部材の残存厚みを測定する損耗部材の残存厚み測定方法、及びこの測定方法に用いる残存厚み測定用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部を直接視認することが困難な容器や配管部材において、内部を材料が流通することにより、容器の隔壁や配管部材を構成する部材が損耗するので、この損耗量を外側から非破壊で計測したいという要求がある。
例えば、高炉においては、溶銑を受ける炉底部分には耐火煉瓦等の炉底耐火物が用いられている。この炉底耐火物は、溶銑流れ等により損耗し、高炉の寿命を律する大きな因子の一つとされ、高炉操業中に炉底耐火物の残存厚みを逐次測定して、高炉の寿命を推定することが要求されている。
【0003】
この炉底耐火物の損耗状況を外側から測定する方法としては、従来、炉底耐火物外面の温度を測定し、測定温度に基づいて、炉底耐火物の残存厚みを推定算出する方法が知られている。
一方、非破壊による絶縁体からなる測定対象の厚み測定方法としては、静電容量を利用した方法も知られており、この厚み測定方法では、測定対象を厚さ方向で挟み込むように電極を配置してコンデンサを形成し、コンデンサの静電容量を測定することにより、測定対象の厚みを推定することができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
この静電容量による方法を、前記の高炉の炉床耐火物の残存厚み測定に利用する場合、図11に示されるように、炉底耐火物となる炉底側壁煉瓦13の外周面を金属板101で覆って電極を形成し、高炉内部の溶銑Sとの電気的導通を確保して、炉底側壁煉瓦13を介して離隔される溶銑S及び金属板101間の静電容量を検出することにより、炉底側壁煉瓦13の損耗による残存厚みを算出することが考えられる。
この場合、炉底耐火物の誘電率をε(F/m)、残存厚みをd(m)、静電容量をC(F)、電極面積をS(m2)とすると、C=ε・S/dという式に基づいて、残存厚みを算出することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−109409号公報(図1、図5参照)
【特許文献2】特開平6−194114号公報(図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来提案されている残存厚みの測定方法では次のような問題がある。すなわち、炉底耐火物外周面の温度を測定して残存厚みを推定する方法では、測定温度のばらつきが大きいため、残存厚みを高精度に推定することが困難であるという問題がある。
また、静電容量により残存厚みを測定する方法では、炉底耐火物の内面、すなわち損耗面に導電性の材料が不可欠であり、内部に溶銑等が存在する特殊な場合を除いては利用が困難であるという問題がある。さらに、高炉等の導電性材料が存在している場合に利用しても、初期の損耗が進行していない状態では、前記の式からも判るように、電極間距離dが長すぎて検出される静電容量の値が小さくなってしまい、やはり高精度に測定することが困難であるという問題がある。
なお、このような課題は、前述した高炉の炉底耐火物のみならず、内部に摺動面を有する機械や容器等の構造体において、損耗面を直接観察することができず、外側から、摺動による残存厚みを測定したい場合にも同様の課題として把握される。
【0007】
本発明の目的は、損耗部材の残存厚みを高精度に測定することのできる損耗部材の残存厚み測定方法、及びこの測定方法に用いられる残存厚み測定用プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る損耗部材の残存厚み測定方法は、損耗部材の残存厚みを測定する損耗部材の残存厚み測定方法であって、
前記損耗部材の損耗により厚みが減少する方向に沿って延びる一対の電極を形成し、前記一対の電極間に絶縁体を介在させてコンデンサを形成する手順と、
前記コンデンサの静電容量の変化を検出し、検出された静電容量の変化に基づいて、前記損耗部材の残存厚みを算出する手順とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、前述のように形成されたコンデンサの静電容量の変化を検出することにより、損耗による損耗部材の厚みの減少に伴って電極の延出方向損耗面側端部が損耗していくので、電極長さの減少という形で静電容量の変化を検出することができ、損耗の度合いによらず検出精度が変化することがなく、高精度に残存厚みを測定することができる。
【0010】
ここで、検出された静電容量の変化から残存厚みを算出する方法としては、例えば、損耗によって減少する電極の長さに応じた静電容量を予め検出しておき、これに基づいて検量線を作成することにより求めることができる。
また、検出される静電容量をC(F)、一対の電極間の絶縁体の誘電率をε(F/m)、損耗部材の残存厚みをL(m)、電極の幅をW(m)、対向する電極間の距離をd0(m)とすると、次の式(A)に基づいて求めることもできる。
L=C・d0/ε/W…(A)
【0011】
(2) 本発明において、損耗部材が複数組み合わされて用いられる場合、コンデンサを形成する手順は、損耗部材間の境界部分の互いに対向する面に、損耗部材の厚み減少方向に沿って延びる電極をそれぞれ形成し、形成された電極間に絶縁体材料を充填することを採用することができる。
この発明によれば、別途特殊な部材等を用いる必要がないので、境界部分に面する損耗部材のそれぞれの端面に電極を形成し、絶縁体材料を充填するだけで簡単に本発明の作用及び効果を享受することができる。
【0012】
ここで、損耗部材の端面に電極を形成する方法としては、銅、白金、タングステン、モリブデン、鉄、バナジウム、チタニウム等の金属材料を、溶射、蒸着等により損耗部材の端面に薄膜として形成したり、これらの金属材料をフィルム上に薄膜形成しておき、これを損耗部材の端面に貼り付ける等の方法を採用することができる。
また、充填する絶縁体材料としては、損耗部材が複数組み合わされて構成されるので、モルタル等の損耗部材間の接合を行う材料を採用するのが好ましい。
【0013】
(3) 本発明において、コンデンサを形成する手順としては、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されたプローブを予め準備しておき、損耗部材の厚み減少方向に孔を穿設し、プローブを穿設された孔に挿入することが考えられる。
この発明によれば、損耗部材の厚み減少方向に孔を穿設して、この孔にプローブを挿入するだけで、本発明の作用及び効果を享受できるので、既に、操業中の高炉に用いられた炉底耐火物に対しても、高精度に炉底耐火物の残存厚みの測定を行うことができる。
ここで、プローブは、例えば、絶縁体としてポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム等の合成樹脂からなるテープの表裏面に銅、白金、タングステン、モリブデン、鉄、バナジウム、チタニウム等を蒸着形成、溶射形成したり、これらの金属材料が表面に形成されたフィルムを、絶縁体の表裏面に貼り付けることにより構成することができる。
【0014】
(4) 本発明において、損耗部材が複数組み合わされて用いられる場合、コンデンサを形成する手順は、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、該絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されたプローブを予め準備しておき、プローブを損耗部材間の境界部分に介在させることを特徴とする。
この発明によっても、前記と同様の作用効果を享受できる上、(2)と比較すると、溶射、蒸着等の金属薄膜形成の手順が必要となくなるので、コンデンサ形成に要する手間が大幅に軽減される。
【0015】
(5) 本発明は、前述した損耗部材の残存厚み測定方法に直接用いられる装置、器具等のサブコンビネーション発明としても成立するものである。
具体的には、本発明に係る残存厚み測定用プローブは、損耗部材の残存厚みを測定する損耗部材の残存厚み測定方法に用いられ、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、該絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明によれば、損耗部材の損耗による残存厚みの程度によらず、残存厚みを高精度に測定することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔高炉構造〕
図1には、本発明の実施の形態に係る高炉10が示されている。この高炉10は、鉄皮11と、鉄皮11の内部に内張りされた炉底煉瓦12及び炉底側壁煉瓦13と、炉底煉瓦12を保持する底盤14と、羽口15、16とを備えている。
炉底煉瓦12は、底盤14上に複数段積重ねられており、この炉底煉瓦12の外側並びに上方に鉄皮11の内壁に接触した状態で炉底側壁煉瓦13が複数段積重ねられ、炉底煉瓦12と炉底側壁煉瓦13とが一体となっている。
【0018】
具体的には、図2に示されるように、炉底側壁煉瓦13は、炉底煉瓦12を囲むように平面視で略円形状に配置されて上下方向に積み重ねられて炉底側壁を構成している。炉底煉瓦12及び炉底側壁煉瓦13は、無煙炭、土壌黒煙、人造黒煙など耐溶損性に優れる材質が採用され、例えば、タール、ピッチ、樹脂の1種以上をバインダーとして混練し、プレス板間に充填し加圧プレスにて成形することができる。
また、底盤14には、図示を略したが、冷却管が設けられており、調整弁により冷却管に供給する冷却水量を調整することが可能な構成となっている。
羽口15は、図1に示されるように、高炉10内に酸素や微粉炭等を吹込むことができ、吹込み量比率の増減ができ、羽口前16における燃焼温度を増減することができる。
【0019】
このような構造の高炉10が正常な場合は、炉底側壁煉瓦13に異常な損耗がなく、操業も安定した状態を維持できる。
しかし、底盤14の不適切な冷却、炉内状況の異常等によって、炉底煉瓦12の表面にメタルとスラグを有する凝固層(粘稠層とも言う)が異常形成されることがある。この形成される凝固層の量によっては、高炉10の底部に溶銑の炉底側壁煉瓦13に沿う環状の流れが発生して、炉底側壁煉瓦13が損耗する。
【0020】
また、異常形成した凝固層により、高炉10の底部の熱が炉底煉瓦12に伝わることが抑制されるので、この場合、炉底煉瓦12の温度が低下する。これにより、炉底煉瓦12が収縮するので、炉底煉瓦12と一体となった炉底側壁煉瓦13が高炉10の中心部へ移動し、鉄皮11と炉底側壁煉瓦13との間に、例えば、0.2〜1mm程度の隙間が形成される。このため、鉄皮11の外側から冷却しても、炉底側壁煉瓦13を冷却することはできず、炉底側壁煉瓦13が損耗する。
以上のような現象により、炉底側壁煉瓦13は、高炉10の内面側から損耗するため、この損耗の程度、すなわち炉底側壁煉瓦13の残存厚みを外側から高精度に測定することは、高炉10の寿命を検討する上で非常に重要となる。
【0021】
〔第1実施形態〕
このような高炉10の炉底側壁煉瓦13の損耗による残存厚みを測定するために、第1実施形態に係る測定方法では、図3に示されるように、炉底側壁煉瓦13に内外を貫通する、すなわち、炉底側壁煉瓦13の厚みが減少する方向に沿って延びる孔131を穿設し、この孔131にプローブ20を挿入し、このプローブ20の静電容量の変化を検出することにより、炉底側壁煉瓦13の残存厚みを測定する。
プローブ20の取付位置は、炉底側壁煉瓦13の任意の位置に設定することができ、例えば、複数の炉底側壁煉瓦13を組み合わせて構成される壁体において、上下方向に複数箇所、さらに平面視円形状の壁体を均等に分割する複数の箇所に設定することが可能である。
また、プローブ20は帯状であり、孔131は断面円形状に穿設されるのが通常であるから、孔131の隙間部分には、封止用のモルタル132が充填される。
【0022】
プローブ20は、帯状の絶縁体21と、この絶縁体21の表裏面に形成される導体からなる電極22とを備えて構成され、図中右側となる炉底側壁煉瓦13の外周面には、電極22から引き出された端子23が露出している。
絶縁体21としては、アルミナ等のセラミックやポリイミドテープ等の合成樹脂材料を用いることができる。
導体からなる電極22は、図4に示されるように、絶縁体21の幅寸法W0よりも若干小さな幅寸法Wとされ、絶縁体21の延出方向に沿って複数配列された電極セル221と、各電極セル221間の電気的導通を確保する連結部222とを備えて構成されている。電極22を構成する導体としては、Mo、Cu、W、Ta、Cr、Au、Ag、Pt等の金属フィルムを用いることができる。
【0023】
このようなプローブ20を高炉10の側壁等の高温で使用する場合、前述した絶縁体21の材料、電極22の材料のうち、絶縁体21としてアルミナ箔、導体からなる電極22としてMoフィルムを採用するのが、耐熱性が良好なので好ましい。
一方、高炉10の側壁と比較して低温で使用する場合、プローブ20の絶縁体21としてはポリイミドテープ、導体からなる電極22としてCuフィルムを採用するのが安価でコスト的にも好ましい。
なお、絶縁体21の厚さ寸法としては、例えば400μmのものを採用し、電極22の厚さ寸法は、例えば10μmとすることができる。
また、プローブ20は、絶縁体21に対して導体金属を接着、蒸着、溶射等の手法によって形成することができるが、最も好ましいのは溶射である。
【0024】
絶縁体21の表裏面に形成されたそれぞれの電極22は、電極セル221同士が対向するように配置され、隣接する電極セル221同士の間には、僅かな隙間が形成され、絶縁体21の幅方向略中央の連結部222によって連絡している。
電極22の端部に設けられた端子23には、図3及び図4では略したが、プローブ20の静電容量を測定するためのLCRメータ等が接続される。
プローブ20は、端子23が設けられていない側の端部から損耗等により長さ寸法Lが減少するに伴って静電容量が変化し、この変化は端子23に接続されたLCRメータによって検出することができる。
【0025】
次に、本実施形態による炉底側壁煉瓦13の残存厚みの測定手順を具体的に説明する。
まず、図4において、端子23側とは反対側の端部から長さ方向に電極セル221を切り取って、それぞれの長さにおける静電容量Cを予め測定しておく。この際、電極セル221間の隙間部分をはさみ等で順次切り取るのが好ましい。
具体的には、例えば、JIS R 1661に準拠したLCRメータの一種であるケミカルインピーダンスメータ(日置電機株式会社製)を用いて、電極セル221の欠損数に応じた静電容量を測定すると、図5に示されるように、切り取りによる欠損セル数と電極セル221の数に応じた静電容量Cとの関係を与える検量線G1が得られることとなる。この欠損セル数は、プローブ20の長さL方向の減少量として把握される。
【0026】
次に、炉底側壁煉瓦13の外周から内部に向かって孔131を穿設し、この孔131内に、検量線G1と同様の仕様のプローブ20を挿入し、孔131の隙間部分にモルタル132を充填して硬化させ、高炉10の内外の連通を遮断する。
炉底側壁煉瓦13の複数箇所にこのようにプローブ20を装着し、高炉10を操業させると、前述した現象により、図6に示されるように、炉底側壁煉瓦13の溶銑との接触面が徐々に損耗していく。この際、プローブ20の内側端部は一瞬溶銑と接触し、一対の電極22間は溶銑を介して短絡する。しかし、この後、プローブ20は、溶銑の熱によって収縮するため、端部が炉底側壁煉瓦13の接触面よりも内側に凹んだ状態となり、一対の電極22間の電気的導通は遮断され、適切なコンデンサとして機能する。
【0027】
このような炉底側壁煉瓦13が損耗した状態において、前述したケミカルインピーダンスメータを端子23に接続し、プローブ20によって形成されるコンデンサの静電容量を測定し、図5に示される検量線G1に基づいて、欠損した電極セル221の数から炉底側壁煉瓦13の残存厚みL(図6参照)を、前述した式(A)を用いて算出することができることとなる。
なお、本実施形態においては、炉底側壁煉瓦13に孔131を穿設して、孔131にプローブ20を挿入していたが、これに限らず、例えば、炉底側壁煉瓦13の加圧プレス成形に際して、プローブ20を炉底側壁煉瓦13の内部に埋設した状態で加圧プレス成形を行い、プローブ20が埋設された炉底側壁煉瓦13を、高炉10の建設時に所定位置に組み込んでもよい。また、高炉10の建設時に、炉底側壁煉瓦13同士の境界部分、すなわち目地の部分にプローブ20を配設し、目地モルタル中にプローブ20を埋設してもよい。
【0028】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態において既に説明した部材については同一符号を付してその説明を省略する。
前述した第1実施形態では、予め形成されたプローブ20を炉底側壁煉瓦13に穿設された孔131に挿入し、このプローブ20によって形成されるコンデンサの静電容量を測定することにより、炉底側壁煉瓦13の残存厚みの測定を行っていた。
これに対して、第2実施形態に係る測定方法では、図7に示されるように、高炉の建設時に、隣接する炉底側壁煉瓦13の互いに対向する面のそれぞれに電極31を形成し、一対の電極31間を目地モルタル32で充填することにより、コンデンサ30を形成している点が相違する。
【0029】
本実施形態では、高炉建設時、適宜の位置の炉底側壁煉瓦13に電極31を形成するが、具体的には、以下の手順でコンデンサ30が形成される。
電極31は、図8に示されるように、炉底側壁煉瓦13の目地部に相当する端面に形成され、電極31を形成する方法としては、例えば、Mo、Cu、W、Ta、Cr、Au、Ag、Pt等の金属を炉底側壁煉瓦13の端面に溶射したり、蒸着したり、片面に金属薄膜が形成された合成樹脂製のフィルム等を炉底側壁煉瓦13の端面に貼り付けたりする方法を採用することができる。なお、電極31は、炉底側壁煉瓦13の端面全部に形成する必要はなく、それぞれの電極31が互いに対向配置されるような一部の位置に帯状に形成すればよい。
【0030】
電極31の形成が終了したら、炉底側壁煉瓦13の外周側端部に端子線33を設け、電極31との電気的導通を確保した状態で高炉外部に端子線33を引き出しておく。
電極31の形成及び端子線33の取付が終了したら、図9に示されるように、目地モルタル32を一方の炉底側壁煉瓦13の電極31を覆うように塗り込み、双方の電極31が対向するように、他方の炉底側壁煉瓦13を接合する。
炉底側壁煉瓦13の損耗による残存厚みを測定する際には、LCRメータを端子33に接続して、静電容量C(F)を検出し、予め測定しておいた目地幅d0(m)、電極幅W(m)、及び目地モルタル32の誘電率ε(F/m)に基づいて、残存厚みL=C・d0/ε/Wを算出する。
【0031】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
前述した第1実施形態に係るプローブ20は、電極22が幅広の電極セル221と幅狭の連結部222が連続するように構成されていた。
これに対して第3実施形態に係るプローブ40は、図10に示されるように、絶縁体21の表裏面に帯状に電極22が形成されている点が相違する。
本実施形態におけるプローブでは、一方の電極22の幅方向寸法W1が他方の電極22の幅方向寸法W2よりも小さくなっている。これは、製造時の導通を防止するためである。
尚、本実施形態におけるプローブ40の材質、形成方法、及び使用方法は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0032】
〔実施形態の変形〕
尚、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、次に示すような変形をも含むものである。
前述の第1実施形態では、高炉10の炉底側壁煉瓦13の損耗による残存厚みを測定するために、本発明の残存厚み測定方法を採用していたが、本発明はこれに限られない。すなわち、コンクリートスラリー等を搬送する配管部材の内部の損耗状態を測定する際に、本発明の残存厚み測定方法を採用してもよく、さらには、内部に進入するのが困難な腐食性液体や気体等を貯蔵する容器を構成する隔壁の内側の損耗状態を測定する際に、本発明の残存厚み測定方法を採用してもよい。
【0033】
また、前述の第2実施形態では、炉底側壁煉瓦13の端面に電極31を形成し、この間に目地モルタル32を充填して状態でコンデンサ30を形成していたが、本発明はこれに限られない。すなわち、既に建設された高炉の炉底を構成する煉瓦に孔を穿設し、この孔の互いに対向する面の間に電極を形成し、この孔を目地モルタル等で充填してコンデンサを形成してもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、内部の損耗状態を測定することが困難な隔壁等の残存厚みを高精度に測定するのに好適に用いることができ、とりわけ、高炉の炉底煉瓦、炉底側壁煉瓦の残存厚みを測定するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る高炉の構造を表す模式断面図。
【図2】本実施形態における炉底の構造を表す部分斜視図。
【図3】本実施形態における炉底側壁煉瓦にプローブを取り付けた状態を表す断面図。
【図4】本実施形態におけるプローブの構造を表す平面図。
【図5】本実施形態におけるプローブの電極セルの欠損数と静電容量の関係を表すグラフ。
【図6】本実施形態における炉底側壁煉瓦の損耗時におけるプローブの状態を表す断面図。
【図7】本発明の第2実施形態に係るコンデンサの構造を表す断面図。
【図8】本実施形態におけるコンデンサ形成の手順を説明するための模式図。
【図9】本実施形態におけるコンデンサ形成の手順を説明するための模式図。
【図10】本発明の第3実施形態に係るプローブの構造を表す平面図。
【図11】従来技術における損耗部材の残存厚みの測定方法を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0036】
10…高炉、11…鉄皮、12…炉底煉瓦、13…炉底側壁煉瓦(損耗部材)、14…底盤、15…羽口、16…羽口前、20…プローブ(残存厚み測定用プローブ)、21…絶縁体、22…電極、23…端子、30…コンデンサ、31…電極、32…目地モルタル(絶縁体材料)、33…端子線、40…プローブ、101…金属板、131…孔、132…モルタル、221…電極セル、222…連結部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
損耗部材の残存厚みを測定する損耗部材の残存厚み測定方法であって、
前記損耗部材の損耗により厚みが減少する方向に沿って延びる一対の電極を形成し、前記一対の電極間に絶縁体を介在させてコンデンサを形成する手順と、
前記コンデンサの静電容量の変化を検出し、検出された静電容量の変化に基づいて、前記損耗部材の残存厚みを算出する手順とを備えていることを特徴とする損耗部材の残存厚み測定方法。
【請求項2】
前記損耗部材は複数組み合わされて用いられ、
前記コンデンサを形成する手順は、前記損耗部材間の境界部分の互いに対向する面に、前記損耗部材の厚み減少方向に沿って延びる電極をそれぞれ形成し、形成された電極間に絶縁体材料を充填することを特徴とする請求項1記載の損耗部材の残存厚み測定方法。
【請求項3】
前記コンデンサを形成する手順は、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、該絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されたプローブを予め準備しておき、前記損耗部材の厚み減少方向に孔を穿設し、前記プローブを穿設された孔に挿入することを特徴とする請求項1記載の損耗部材の残存厚み測定方法。
【請求項4】
前記損耗部材は複数組み合わされて用いられ、
前記コンデンサを形成する手順は、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、該絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されたプローブを予め準備しておき、前記プローブを前記損耗部材間の境界部分に介在させることを特徴とする請求項1記載の損耗部材の残存厚み測定方法。
【請求項5】
損耗部材の残存厚みを測定する損耗部材の残存厚み測定方法に用いられ、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、該絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されていることを特徴とする残存厚み測定用プローブ。
【請求項1】
損耗部材の残存厚みを測定する損耗部材の残存厚み測定方法であって、
前記損耗部材の損耗により厚みが減少する方向に沿って延びる一対の電極を形成し、前記一対の電極間に絶縁体を介在させてコンデンサを形成する手順と、
前記コンデンサの静電容量の変化を検出し、検出された静電容量の変化に基づいて、前記損耗部材の残存厚みを算出する手順とを備えていることを特徴とする損耗部材の残存厚み測定方法。
【請求項2】
前記損耗部材は複数組み合わされて用いられ、
前記コンデンサを形成する手順は、前記損耗部材間の境界部分の互いに対向する面に、前記損耗部材の厚み減少方向に沿って延びる電極をそれぞれ形成し、形成された電極間に絶縁体材料を充填することを特徴とする請求項1記載の損耗部材の残存厚み測定方法。
【請求項3】
前記コンデンサを形成する手順は、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、該絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されたプローブを予め準備しておき、前記損耗部材の厚み減少方向に孔を穿設し、前記プローブを穿設された孔に挿入することを特徴とする請求項1記載の損耗部材の残存厚み測定方法。
【請求項4】
前記損耗部材は複数組み合わされて用いられ、
前記コンデンサを形成する手順は、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、該絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されたプローブを予め準備しておき、前記プローブを前記損耗部材間の境界部分に介在させることを特徴とする請求項1記載の損耗部材の残存厚み測定方法。
【請求項5】
損耗部材の残存厚みを測定する損耗部材の残存厚み測定方法に用いられ、長尺の絶縁体の表裏面のそれぞれに、該絶縁体の延出方向に沿って電極が連続して形成されていることを特徴とする残存厚み測定用プローブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−205717(P2007−205717A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21284(P2006−21284)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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