説明

搬送対象部材の出し入れ装置

【課題】 比較的簡単な構成でありかつ簡単な操作で、ガラス基板などの搬送対象部材を収納部に対して出し入れする搬送対象部材の出し入れ装置を提供する。
【解決手段】 スライダ20は、フレーム21によって軸が支持されているプーリ31〜33,34〜36,37〜39にベルト41,42,43が掛けられて構成されていて、ベルト41,42,43上にガラス基板が載置されている。ベルト41,43はカセット棚16にねじ止めされており、取手22,23を引出すと、引出した長さの2倍分だけベルト41,42,43が移動するので、ガラス基板の全長の半分の長さだけスライダ20を引出せば、ガラス基板の全長を引出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送対象部材の出し入れ装置に関し、例えばガラス基板のような平坦な搬送対象部材を基板収納カセットに対して出し入れする搬送対象部材の出し入れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビの大型化によって、使用されるガラス基板も大きくなってきており、その一辺が2メートルを越えるまでになってきている。このようなガラス基板を取扱う装置もまた大型化に対応しなければならない。
【0003】
ガラス基板は、梱包時や搬送時に、衝撃によって破損したり、静電気や埃の付着によって障害が生じないように、密閉された容器である基板収納カセットに入れてクリーンな状態で搬送される。このため、基板収納カセットは、収納する各ガラス基板が互いに接触したり、破損したりしないように容積効率がよく、また相手先工場で一枚ずつ取り出し易い容器であることが要求されている。
【0004】
さらに、相手先工場において、クリーンルーム内で各処理工程を無人で行うことが可能なように、ガラス基板を基板収納カセットから取り出して安定して供給する必要がある。各処理が行われたガラス基板は、再び基板収納カセットに収納されて、次の処理工程に搬送される。このときも、処理されたガラス基板が破損しないように、基板収納カセットに収納する必要がある。
【0005】
ガラス基板を基板収納カセットに出し入れするために種々の方法が提案されている。その第1の例として、段積段バラシ装置と称されるものがある。この装置は、下部の数か所にガラス基板を出し入れするときに使用するピン穴の開いたトレイを準備しておき、このトレイに1枚ずつガラス基板を入れ、それを数十段重ねて基板収納カセットに収納して搬送する。納入先工場では、段バラシ装置により基板収納カセット内の下のトレイから順番に、ピン穴にロボットアームでピンを差し込んでガラス基板を抜取っていく。
【0006】
第2の例として、ガラス基板を浮上させる空気穴を有した数十段の棚を基板収納カセットに設けておき、各棚にガラス基板を収納して搬送する。納入先工場において、基板収納カセットの1面の扉を開け、開口部に近接した位置にコンベアを配置し、コンベアの高さを各段の棚に合わせてコンベアの回転とエアーによる浮上を同時に行い、ガラス基板を出し入れする。
【0007】
さらに、第3の例として、破損したり、静電気や埃の付着によって障害が生じないようにガラス基板の表面にフィルムを貼った状態で重ね合わせて、それを基板収納カセットに収納して搬送する方法がある。この例では、ガラス基板がフィルムで保護されているので、積層して搬送し易いという特徴がある。
【0008】
上述のいずれかの方法を用いてガラス基板が基板収納カセットから取り出して搬送されるが、薄型テレビ工場などのメーカー内では、各種工程間でガラス基板を搬送するときに、数十枚のガラス置き棚を有するカセットにガラス基板を入れて搬送する。このカセットにガラス基板を出し入れするのは多くの場合、ロボットアームによって行われる。
【0009】
例えば、ロボットアームの一例として、特開2003ー261221号公報に記載されているガラス基板搬送用移載装置がある。この例では、カセット本体の壁面にガラス基板を支持する複数の支持部材を設けておき、カセット本体に挿入した移載機のハンドルを支持部材の間で昇降させることによりガラス基板の出し入れを行う。
【0010】
また、カセット本体内にガラス基板を収納したときに、移載装置のアクセス面を除く側面および背面から支持部材を適当なピッチで延ばすことにより、ガラス基板の撓みを防止している。
【特許文献1】特開2003ー261221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の第1の例で説明した段積段バラシ装置は、段バラシ時に積み重ねたトレイ全体を上下させるので装置の動きが危険であり、装置が大型化する。また、トレイの内部を目視できないため、動作させる段の制御を間違えるとガラス基板を破損するおそれがある。
【0012】
第2の例で説明したエアー浮上させる方法では、ガラス基板の出し入れの方向によってカセットを傾斜させる必要があり、エアー浮上と傾斜とによりガラス基板を出し入れしているため、カセットの各棚の精度などにより、ガラス基板を良好に出し入れできない場合がある。また、カセットが重く、取扱が困難であり、ガラス基板の出し入れ装置も複雑である。
【0013】
第3の例で説明したフィルム付ガラス基板は、容積効率は非常に優れているが、納入先工場では、フィルムを剥がす装置を設置しなければならず、フィルムの処理も必要となってくる。
【0014】
さらに、上述のロボットアームを用いる例では、ガラス基板のサイズが大きくなると、ガラス基板の撓みも大きくなり、ロボットアーム自体の強度を強くする必要があることや、カセット内にアームを延ばす動作により撓みがさらに大きくなってしまうので、カセット容器のピッチを大きくしてカセットの容積効率を下げざるを得ない。
【0015】
そこで、この発明の主たる目的は、比較的簡単な構成でありかつ簡単な操作で、ガラス基板などの搬送対象部材を破損するおそれを少なくして、収納部への出し入れが可能な搬送対象部材の出し入れ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、その一方が開口されて背面側に延びる複数の収納部に対して搬送対象部材を出し入れするための搬送対象部材の出し入れ装置であって、複数の収納部の開口側にそれぞれ設けられ、開口側と背面側との間に沿う出し入れ方向で移動可能な軸と、軸を通って折り返され、その一部が収納部に固定され、その上に搬送対象部材が載置され、軸を所定の長さだけ移動させたとき、搬送対象部材を出し入れするベルトとを備える。
【0017】
この発明では、搬送対象部材の全長の半分の長さだけ軸を移動させるだけで、搬送対象部材の全体を収納部に対して出し入れすることができる。
【0018】
好ましくは、1つの実施形態では、回転部材は、搬送対象部材の出し入れ方向に間隔を有して設けられる前方プーリおよび後方プーリを含み、ベルトは、前方プーリおよび後方プーリに掛け渡された無端ベルトである。他の実施形態では、回転部材は、搬送対象部材の出し入れ方向の前方に配置される前方プーリを含み、ベルトは、その一端が前方プーリを介して収納部の開口側に固定され、その他端が収納部において、出し入れ方向に移動可能な移動部材に固定されている。さらに、他の実施形態では、回転部材は、搬送対象部材の出し入れ方向に間隔を有して設けられる前方プーリおよび後方プーリを含み、さらに、収納部の背面側に設けられるリールを含み、ベルトは、その一端が前方プーリを介して収納部の開口側に固定され、その他端が後方プーリを介してリールに巻回されていて、リールは巻戻し方向とは逆方向にテンションが掛けられている。いずれの実施形態においても、搬送対象部材の半分の長さだけ軸を移動させるだけで、搬送対象部材の全体を収納部に対して出し入れすることができる。
【0019】
さらに、好ましくは、その上に出し入れ方向に沿って所定の間隔を隔てて平行に配列された複数のローラを有し、上下に昇降可能であって、収納部に対して出し入れされる搬送対象部材を載置して搬送する搬送装置を含む。このような搬送装置を用いることで、収納部から引出した搬送対象部材を破損するおそれをなくして必要な場所に搬送できる。
【0020】
さらに、好ましくは、フレームを出し入れ方向に移動させる駆動手段を含む。このような駆動手段を設けることで作業者の手を煩わせることなく、搬送対象部材を収納部に対して出し入れすることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、軸とベルトとの比較的簡単な構成で、搬送対象部材の全長の半分だけ軸を移動させるという簡単な操作で、搬送対象部材の全体を収納部に対して出し入れすることが可能になるので、破損や汚れなどを生じることがなく、安全に搬送対象部材を出し入れすることができ、さらにロボットアームなどを用いる必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1はこの発明の一実施形態における搬送対象部材の出し入れ装置に含まれる収納部の一例の基板収納カセットを示す外観斜視図であり、図2は図1に示した基板収納カセット内に搬送対象部材の一例のガラス基板を出し入れするためのスライダを示す図であり、特に(A)は平面図であり、(B)は側面図である。図3はスライダおよび受取,受渡し装置を示す外観斜視図であり、図4はスライダおよび受取,受渡し装置を示す概念図である。
【0023】
基板収納カセット1は、複数の搬送対象部材としてのガラス基板を横方向に収納して搬送するものであって、図1に示すように、前面のみが開口された開口部10を有しており、上面11と、底面12と、両側面13,14と、背面15とが閉塞された箱型形状で形成されている。
【0024】
基板収納カセット1の内側には、複数のカセット棚16が内部を上下方向に仕切りかつ、それぞれ開口部10から背面15側に延びるように平行に設けられている。カセット棚16は、その上を図2に示すスライダ20が開口部10側と背面15側との間に沿う出し入れ方向に移動する。スライダ20は、その上に図2(B)に示すガラス基板50を載置して基板収納カセット1内のカセット棚16上で移動し、図4に示すように複数のカセット棚16のそれぞれに個別に配置されている。
【0025】
スライダ20は、図2および図3に示すように、回転部材の一例の前方のプーリ31,34,37と、中央のプーリ32,35,38と、後方のプーリ33,36,39と、ベルト41,42,43と、金属棒を組合せて構成されたフレーム21とを含む。フレーム21は開口部10側であってかつ両側面13,14側に設けられ、背面15に対して平行に延びる取手22,23と、背面15に平行に設けられる部材24,25と、部材24,25に直交するように設けられて開口部10側から背面15側の出し入れ方向に延びる部材26,27,28とを含む。
【0026】
部材24は中央部に配置されており、部材25は背面15側に設けられている。部材26は、その一端が取手22に結合されており、その中央部が部材24の一端に結合され、その他端が部材25の一端に結合されている。部材27は、その一端が直角に折り曲げられており、その中央部が部材24のほぼ中央部に結合されており、その他端が部材25のほぼ中央部に結合されている。部材28は、その一端が取手23に結合され、その中央部が部材24の他端に結合され、その他端が部材25の他端に結合されている。
【0027】
取手22,部材24,25のそれぞれの一端は、プーリ31,32,33の軸を構成しており、部材27の直角に折り曲げられた一端はプーリ34の軸を構成しており、部材24,25の中央部はプーリ35,36の軸を構成している。取手23,部材24,25のそれぞれの他端はプーリ37,38,39の軸を構成している。
【0028】
ベルト41,42,43は、無端ベルトであって、プーリ31〜33,34〜36,37〜39のそれぞれに巻きつけられてベルトコンベアを構成している。そのうち、ベルト41,43の一部は、開口側のプーリ31,37の近傍でねじ45,46によりカセット棚16にねじ止めされている。そして、前方のプーリ31,37を軸として折り返されて、中央のリール32,38を介して後方のプーリ33,39に巻きつけられている。中央のベルト42は、カセット棚16に固定されておらず、プーリ34,35,36の間を自由に回転できるようになっているが、ベルト41,43と同様にして、カセット棚16に固定してもよい。
【0029】
ベルト41,43はガラス基板50を支持するために設けられ、中央のベルト42は、ガラス基板50が撓まないように支持するために設けられているが、ガラス基板50の幅寸法が短ければ、ベルト42とプーリ34〜36は、特に設けなくともよい。また、ガラス基板50の奥行き寸法が短い場合には、中央のプーリ32,35,38を省略してもよい。
【0030】
搬送装置としての受取,受渡し装置60は、図3に示すように、基板収納カセット1からスライダ20により引出されたガラス基板50を受取って各工程まで搬送し、あるいは各工程で処理されたガラス基板50をスライダ20により基板収納カセット1に収納するためのものである。このために、受取,受渡し装置60は、底面部61と両側面部62,63とを有する断面コ字状の枠部材64を含み、両側面部62,63の上部には複数のローラ65が取付けられている。両側面部62と63との幅は、スライダ20を引出したときに干渉することがないように、スライダ20の幅よりも狭くなるようにされている。
【0031】
また、受取,受渡し装置60は、図示しない昇降装置により、上下に昇降できるように構成されている。
【0032】
さらに、より好ましくは、受取,受渡し装置60には、図3に示すように、その側面にエアースライダー70を設けてもよい。このエアースライダー70は、内蔵しているシリンダーがアクチュエータ71を出し入れ方向に駆動するものである。アクチュエータ71をスライダ20の一方の取手22に嵌合できるようにしておけば、作業者が取手22,23を操作するという煩わしさをなくして、アクチュエータ71で取手22を引出し、ガラス基板50が載置されたスライダ20を基板収納カセット1から引出すことができる。このエアースライダー70は、取手22,23の両方に設けておいてもよい。
【0033】
作業者あるいはエアースライダー70により、スライダ20の取手22,23を操作して、開口側に引っ張ると、ベルト41,43はその一端がカセット棚16に固定されているため、スライダ20をガラス基板50の全長の1/2の長さだけ引出すだけで、ガラス基板50の全長が引出されて、受取,受渡し装置60側に移すことができる。
【0034】
この動作について、図5を参照して詳細に説明する。図5(A)〜(E)は、スライダ20からガラス基板50を引出す工程を示している。例えば、全長がLのガラス基板50がスライダ20上に載置されて、図5(A)に示すように基板収納カセット1のカセット棚16上に収納されている。
【0035】
図2に示したスライダ20の取手22,23を操作して、図5(B)に示すように、スライダ20を開口側に例えばL/N(N<L)の長さだけ引出すと、ベルト43はねじ46によりカセット棚16に固定されているが、プーリ37,38,39はベルト43に対して回転するので、ベルト43がカセット棚16に対して開口側に2L/Nの長さだけ動く。すなわち、スライダ20をL/Nの長さだけ引出すことにより、プーリ37の下側において、ベルト43のねじ46による固定点と、プーリ37の軸との間がL/Nの長さだけ動き、プーリ37の上側において、ベルト43の固定点に相当する点とプーリ37の軸との間がL/Nの長さだけ動く。このため、ベルト43は図5(A)に示す状態からL/Nの2倍だけ動くのでガラス基板50は、ベルト43上を2L/Nの長さだけ搬送されて2L/Nの長さだけ引出される。
【0036】
さらに、図5(B)に示す位置から図5(C)に示すように2L/Nの長さだけスライダ20を引出すと、プーリ37,38,39はベルト43に対して回転するので、ベルト43がカセット棚16に対して開口側に4L/Nの長さだけ動く。その結果、ガラス基板50は、図5(A)に示す位置から4L/Nだけ引出される。さらに、図5(D)に示すように3L/Nの長さだけスライダ20を引出すと、ベルト43上のガラス基板50が6L/Nの長さだけ引出され、さらに図5(E)に示すように4L/Nの長さだけスライダ20を引出すと、ガラス基板50が8L/Nの長さだけ引出される。すなわち、全長Lのガラス基板50の半分の長さL/2だけスライダ20を引出せば、ベルト43上のガラス基板50を全長L分を引出すことができ、ガラス基板50を図3および図4に示した受取,受渡し装置60に完全に移すことができる。
【0037】
ガラス基板50を受取,受渡し装置60からスライダ20により基板収納カセット1のカセット棚16上に収納するときは、逆に図5(E)〜図5(A)に示す順に操作すればよい。この場合はスライダ20を基板収納カセット1側に押し込むことで、ベルト43は引出し時とは逆に移動するので、ガラス基板50をスライダ20に載せた状態で、カセット棚16上に収納できる。
【0038】
図6は図5の説明で引出されたガラス基板を受取,受渡し装置に移す工程を説明するための図である。
【0039】
図6(A)に示すようにガラス基板50がスライダ20上に載置されてカセット棚16に位置している状態において、ガラス基板50を引出して、受取,受渡し装置60に移すときは、図6(B)に示すようにスライダ20を引出すことにより、図5で説明したようにガラス基板50がスライダ20の引出し長さに比べて2倍の長さだけ引出される。
【0040】
引出されたガラス基板50の下部に受取,受渡し装置60を移動させた後、ローラ65の上端がガラス基板50の下面に当接するように図示しない昇降装置により受取,受渡し装置60を上昇させる。ガラス基板50は、図6(C)に示すように、受取,受渡し装置60のローラ65上を移動し、その移動に伴って受取,受渡し装置60を後退させる。ガラス基板50がスライダ20から完全に引出されると、ガラス基板50が受取,受渡し装置60上に移される。図6(D)に示すように、スライダ20をカセット棚16側に押し込むとともに受取,受渡し装置60を降下させて、ガラス基板50を所定の処理工程に搬送する。
【0041】
上述のごとく、この発明の実施形態によれば、取手22,23を操作してガラス基板50の全長Lの半分の長さL/2だけスライダ20を引出すだけで、ガラス基板50全体を基板収納カセット1から引出して受取,受渡し装置60に移すことができる。そして、ガラス基板50を各工程で処理した後は、受取,受渡し装置60からスライダ20に移し、取手22,23を操作してガラス基板50の全長Lの半分の長さL/2だけ、スライダ20を押し込めば、ガラス基板50全体をスライダ20に載置して基板収納カセット1に収納することができる。したがって、ロボットアームなどを介することなく、ガラス基板50を破損したり撓みを発生することなく基板収納カセット1に対して、出し入れするのが容易になる。
【0042】
図7はこの発明の他の実施形態におけるスライダを示す図である。図5に示したスライダ20は、プーリ37,38,39に無端のベルト43を掛けてベルトコンベアを構成した。これに対して、図7に示したスライダ20aは、中央のプーリ38を省略し、後方のプーリ39に代えて移動部材49を設け、ベルト48の一端を、プーリ37を介してカセット棚16の開口側端部に固定し、ベルト48の他端を移動部材49に固定したものである。移動部材49は、図2に示したフレーム21とは別個にカセット棚16上を移動可能にされている。移動部材49には、例えばコイルばね47によりカセット棚16の背面側から引っ張り力が与えられている。
【0043】
図7(A)に示すようにガラス基板50がスライダ20aに載せられて図1に示した基板収納カセット1に収納されている。図7(B)に示すようにスライダ20aを開口部10側にL/Nの長さだけ引出すと、ベルト48が2L/Nの長さだけ動くので移動部材49が開口側に移動し、その上に載置されているガラス基板50も2L/Nの長さだけ移動する。その結果、ガラス基板50は、図7(A)に示す状態から2L/Nの長さだけ引出される。
【0044】
以下、図5の説明と同様にして、図7(C)に示すようにスライダ20aを2L/Nの長さだけ引出すと、移動部材49も同じ長さだけ移動するので、ガラス基板50が4L/Nの長さだけ引出される。図7(D)に示すようにスライダ20aを3L/Nの長さだけ引出すと、ガラス基板50が6L/Nの長さだけ引出され、図7(E)に示すようにスライダ20aを4L/Nの長さだけ引出すと、ガラス基板50が8L/Nの長さだけ引出される。すなわち、スライダ20aをガラス基板50の全長Lの半分の長さL/2だけ引出すだけで全長Lのガラス基板50を引出すことができる。
【0045】
ガラス基板50を受取,受渡し装置60からスライダ20aにより基板収納カセット1のカセット棚16上に収納するときは、図7(E)〜図7(A)に示す順に操作すればよい。この場合はスライダ20aを基板収納カセット1側に押し込むと、移動部材49にはコイルばね47による引っ張り力が与えられているので、ベルト48はプーリ37を引っ張るように、引出し時とは逆に移動するので、ガラス基板50をスライダ20aに載せた状態で、カセット棚16上に収納できる。
【0046】
したがって、この実施形態においても、ガラス基板50をスライダ20aに載置した状態で、破損や撓みを発生することがなく、基板収納カセット1に対して出し入れするのが容易になる。
【0047】
図8は、この発明のさらに他の実施形態における搬送対象部材の出し入れ装置に含まれるスライダからガラス基板を引出す工程を示す図である。この実施形態は、図5に示した無端のベルト43に代えて、ベルト48の一端を前方のプーリ37を介してカセット棚16の開口側端部に固定し、カセット棚16の背面側にリール40を取付け、このリール40にベルト48の他端を巻回したものである。リール40はベルト48を引出したときに撓まないように、巻取り方向にテンションが掛けられている。
【0048】
この実施形態では、スライダ20bを引出したとき、固定されているリール40からベルト48が繰り出され、ベルト48がプーリ37,38,39によって支持されながら開口側に移動し、ガラス基板50を引出す。その他の動作は図7と同じであり、スライダ20bの移動長さに対してガラス基板50を2倍の長さだけ出し入れすることができる。
【0049】
また、ガラス基板50を基板収納カセット1に収納するときには、スライダ20bを基板収納カセット1のカセット棚16に押し込めば、リール40が巻取り方向にテンションが掛けられているので、ガラス基板50をスライダ20bに載置して、カセット棚16に収納できる。
【0050】
なお、上述の各実施形態では、ガラス基板50を基板収納カセット1に出し入れする場合について説明したが、その他の搬送対象部材を収納部に出し入れする場合にもこの発明を適用できる。
【0051】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明の搬送対象部材の出し入れ装置は、ガラス基板を基板収納カセットに出し入れするのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の一実施形態における搬送対象部材の出し入れ装置に含まれる収納部の一例の基板収納カセットを示す外観斜視図である。
【図2】図1に示した基板収納カセット内にガラス基板を出し入れするためのスライダを示す図である。
【図3】スライダおよび受取,受渡し装置を示す外観斜視図である。
【図4】スライダおよび受取,受渡し装置を示す概念図である。
【図5】この発明の一実施形態における搬送対象部材の出し入れ装置に含まれるスライダからガラス基板を引出す工程を示す図である。
【図6】この発明の一実施形態における搬送対象部材の出し入れ装置から搬送装置に移す工程を説明するための図である。
【図7】この発明の他の実施形態における搬送対象部材の出し入れ装置に含まれるスライダからガラス基板を引出す工程を示す図である。
【図8】この発明のさらに他の実施形態における搬送対象部材の出し入れ装置に含まれるスライダからガラス基板を引出す工程を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 基板収納カセット、10開口部、16 カセット棚、20,20a,20b スライダ、21 フレーム、22,23 取手、31〜39 プーリ、40 リール、41〜43,48 ベルト、45,46 ねじ、47 コイルばね、49 移動部材、50 ガラス基板、60 受取,受渡し装置、65 ローラ、70 エアーシリンダ、71 アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その一方が開口されて背面側に延びる複数の収納部に対して搬送対象部材を出し入れするための搬送対象部材の出し入れ装置であって、
前記複数の収納部の開口側にそれぞれに設けられ、前記開口側と前記背面側との間に沿う出し入れ方向で移動可能な軸と、
前記軸を通って折り返され、その一部が前記収納部に固定され、その上に前記搬送対象部材が載置され、前記軸を所定の長さだけ移動させたとき、前記搬送対象部材の出し入れ方向に動くベルトとを備えた、搬送対象部材の出し入れ装置。
【請求項2】
前記軸は、前記出し入れ方向に動くとともに回転する回転部材を含む、請求項1に記載の搬送対象部材の出し入れ装置。
【請求項3】
前記回転部材は、前記搬送対象部材の出し入れ方向に間隔を有して設けられる前方プーリおよび後方プーリを含み、
前記ベルトは、前記前方プーリおよび後方プーリに掛け渡された無端ベルトである、請求項2に記載の搬送対象部材の出し入れ装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記搬送対象部材の出し入れ方向の前方に配置される前方プーリを含み、
前記ベルトは、その一端が前記前方プーリを介して前記収納部の開口側に固定され、その他端が前記収納部において、前記出し入れ方向に移動可能な移動部材に固定されている、請求項2に記載の搬送対象部材の出し入れ装置。
【請求項5】
前記回転部材は、前記搬送対象部材の出し入れ方向に間隔を有して設けられる前方プーリおよび後方プーリを含み、
さらに、前記収納部の背面側に固定的に設けられるリールを含み、
前記ベルトは、その一端が前記前方プーリを介して前記収納部の開口側に固定され、その他端が前記後方プーリを介して前記リールに巻回されていて、
前記リールは巻戻し方向とは逆方向にテンションが掛けられている、請求項2に記載の搬送対象部材の出し入れ装置。
【請求項6】
さらに、その上に前記出し入れ方向に沿って所定の間隔を隔てて平行に配列された複数のローラを有し、上下に昇降可能であって、前記収納部に対して出し入れされ、前記搬送対象部材を載置して搬送する搬送装置を含む、請求項1から5のいずれかに記載の搬送対象部材の出し入れ装置。
【請求項7】
さらに、前記軸を前記出し入れ方向に移動させる駆動手段を含む、請求項1から6のいずれかに記載の搬送対象部材の出し入れ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−182493(P2006−182493A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377261(P2004−377261)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(505002152)株式会社アルスノヴァ (1)
【Fターム(参考)】