説明

搬送装置および搬送誤差補正方法

【課題】被処理物とその被処理物の一部に所定の処理を施す1つ以上の処理部とを相対移動させる搬送装置であって、安価に搬送精度を向上できるものを提供すること。
【解決手段】定盤10を備える。定盤10上に、被処理物1が載置されるテーブル2と、処理部14を支持する構造物12とを備える。テーブル2に複数の光源6a,6bが取り付けられている。各光源6a,6bにそれぞれ対応して定盤10上に複数の光検出器8a,8bを備える。搬送部4は定盤10上でテーブル2をY方向に搬送して、テーブル2と処理部14とを相対移動させる。定盤10上でのテーブル2の搬送位置を検出する。光検出器8a,8bが出力する光の位置ずれを表す信号に基づいて、その搬送位置でのテーブル2の変位を検出する。その検出したテーブル2の変位に基づいて、処理部14を構造物12上で変位させ又は処理タイミングを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理物とその被処理物の一部に所定の処理を施す1つ以上の処理部とを相対移動させる搬送装置に関する。
【0002】
また、この発明は、そのような搬送装置よって被処理物と処理部とを相対移動させる場合に、搬送精度を向上できる搬送誤差補正方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、大画面液晶ディスプレイの普及に伴って、その製造工場では、ガラス基板のような平板状の被処理物とその被処理物の一部に所定の処理を施す処理部とを相対移動させる搬送装置が広く用いられている。この種の搬送装置を用いれば、比較的小型で安価な処理部を用いて、被処理物の略全体を処理することができる。被処理物と処理部とを相対移動させる方法としては、被処理物をY方向に移動させながら処理部をX方向に移動させる方法と、被処理物を固定し処理部をX、Y方向に移動させる方法との2つが代表的である。
【0004】
例えば特許文献1(特開平9−308978号公報)には、図9に示すような、前者の方法を実行する装置が開示されている。この装置は、概ね、XY平面に置かれた定盤122と、定盤122の上面に敷設されたY方向に延びる一対のガイド129、129と、ガイド129、129上にY方向に往復移動可能に設けられたテーブル123と、定盤122上にガイド129、129をまたぐ態様で架設された架台124と、架台124上にX方向に往復移動可能に設けられた処理部としての記録ヘッド125とを備えている。
【0005】
テーブル123上には、感光剤が塗布されたガラス製の乾板からなる感光材料126が被処理物として載置されている。このテーブル123は、同期ベルト127を介してY軸駆動モータ128と連結されており、Y方向に延びる一対のガイド129に案内されることによりY方向に往復移動する。
【0006】
記録ヘッド125は、ボールネジ134を介してX軸駆動モータ135と連結されており、X軸駆動モータ135の駆動によりX方向に往復移動する。そして、記録ヘッド125のX方向の位置はX軸測長器(図示しない)により計測されている。また、記録ヘッド125には、感光材料126に画像を記録するための光学系136が配設されている。
【0007】
さらに、テーブル123の下縁に移動誤差測定用のレーザ光源133が取り付けられている。一方、テーブル123の下方の定盤122上に、そのレーザ光源133から照射されるレーザビーム101を受光するCCD137が搭載されている。
【0008】
動作時には、先ず、レーザ光源133を点灯し、レーザビーム101をY方向に出射させる。この状態において、テーブル123をY方向に移動させると共に、レーザビーム101の位置をCCD137により測定する。そして、CCD137により測定されたレーザビーム101の位置データと、Y軸測長器(図示しない)により測定されたテーブル123のY座標値のデータとを対応づけて、制御部(図示しない)に記憶する。これにより、テーブル123のY方向への移動に伴う移動誤差が測定される。ここで記録した移動誤差を制御に使用することにより、精度向上を図っている。
【特許文献1】特開平9−308978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の装置では、テーブル123のY方向への移動に伴う移動誤差のうち、テーブル123のXY平面内での回転変位(XY軸に対する角度の変化)と水平変位(X方向への平行移動)とを区別することができないという問題がある。この問題を、図8を用いて説明する。図8(a)に示すように、テーブル123の移動誤差が無い状態では、レーザ光源133より照射されたビームスポット101aがCCD137の中心Oに一致している。図8(b)は、テーブル123(したがって、それに取り付けられたレーザ光源133)が角度Θだけ回転変位したことにより、CCD137上のビームスポット101aが点101bに変位(X方向変位)した様子を示している。また、図8(c)は、テーブル123(したがって、それに取り付けられたレーザ光源133)が水平変位したことにより、CCD137上のビームスポット101aが点101bに変位(X方向変位)した様子を示している。図8(b)と図8(c)とを比較した場合、CCD137上で検出できる変位量(誤差量)は両者とも一致しているが、その発生要因は回転変位と水平変位とで互いに異なる。このため、制御部では、移動誤差を補正しようとしても、回転変位による誤差であるのか、水平変位による誤差であるのかを区別することができず、したがって適正な補正を行うことができない。
【0010】
そこで、この発明の課題は、被処理物とその被処理物の一部に所定の処理を施す1つ以上の処理部とを相対移動させる搬送装置であって、安価に搬送精度を向上できるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の搬送装置は、被処理物とその被処理物の一部に所定の処理を施す1つ以上の処理部とを相対移動させる搬送装置であって、
定盤と、
上記定盤上に設けられ、上記被処理物が載置されるテーブルと、
上記定盤上に設けられ、上記被処理物に対向し得るように上記処理部を支持する構造物と、
上記テーブルに取り付けられた複数の光源と、
上記各光源にそれぞれ対応して上記定盤上に設けられ、それぞれ対応する光源からの光を受けて上記光の位置ずれを表す信号を出力する複数の光検出器と、
上記定盤上で上記テーブルを少なくとも一方向に搬送して、上記テーブルと上記処理部とを相対移動させる搬送部と、
上記一方向に関して上記定盤上での上記テーブルの搬送位置を検出する搬送位置検出部と、
上記複数の光検出器が出力する上記光の位置ずれを表す信号に基づいて、上記搬送位置検出部が出力した上記搬送位置での上記テーブルの変位を検出する変位検出部と、
上記変位検出部が検出した上記テーブルの変位に基づいて、上記処理部を上記構造物上で変位させ又は処理タイミングを変更する変位補正部を備えたことを特徴とする。
【0012】
この発明の搬送装置では、変位検出部は、上記複数の光検出器が出力する上記光の位置ずれを表す信号に基づいて、上記搬送位置検出部が出力した上記搬送位置での上記テーブルの変位を検出する。そして変位補正部は、上記変位検出部が検出した上記テーブルの変位に基づいて、上記処理部を上記構造物上で変位させ又は処理タイミングを変更する。このようにした場合、上記搬送部による搬送誤差を適切に補正でき、搬送精度を向上できる。また、逆に言えば、その分だけ搬送部の搬送精度を低くしても良いので、搬送部を安価に構成することが可能になる。この利点は、被処理物が大型化して、製品の品質を高めるために搬送部の搬送精度に対する要求が高まり、搬送部が高価格となっている近年の状況下では、極めて有益である。
【0013】
一実施形態の搬送装置では、上記テーブルが上記一方向に関して基準位置にあるとき、上記各光源からの光が上記光検出器の受光領域内の基準位置に入射するように、上記各光源と上記テーブルとの間に上記光源の光出射方向を変更し得る光源取付機構部を備えたことを特徴とする。
【0014】
この一実施形態の搬送装置では、例えば上記搬送部による搬送開始の直前、つまり上記テーブルが上記一方向に関して基準位置にあるとき、上記各光源からの光が上記光検出器の受光領域内の基準位置に入射するように、上記光源取付機構部によって、各光源の光出射方向がそれぞれ変更され得る。したがって、例えば上記テーブルが上記一方向に関して基準位置にあるとき、上記各光源からの光が対応する光検出器の受光領域内の基準位置に入射するように、容易に調節できる。そのようにした場合、上記搬送部による搬送開始後に、上記変位検出部が上記テーブルの変位を容易に検出できる。
【0015】
一実施形態の搬送装置では、
上記複数の光源として第1光源と第2光源との2つが設けられ、
上記第1光源と第2光源は上記一方向に関して互いに反対向きに光を出射し、
上記第1光源、第2光源にそれぞれ対応して、上記複数の光検出器として第1光検出器、第2光検出器が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この一実施形態の搬送装置では、上記第1光源と第2光源は上記一方向に関して互いに反対向きに光を出射する。この結果、上記定盤上の上記搬送位置での上記テーブルの変位が水平移動(水平面内での平行移動)の場合と回転移動の場合とで、光検出器上の光の移動方向が異なる。したがって、上記変位検出部は両者を区別して検出することが可能となる。したがって、変位補正部は、上記テーブルの変位を容易に適切に補正できる。
【0017】
一実施形態の搬送装置では、上記光源は上記テーブルの両側に配置されていることを特徴とする。
【0018】
この一実施形態の搬送装置では、上記光源は上記テーブルの両側に配置されているので、上記テーブルの重量バランスの偏りがなくなり、姿勢が安定化する。この結果、上記搬送部による搬送に伴った上記テーブルの変位が生じにくくなる。
【0019】
一実施形態の搬送装置では、上記各光検出器は2分割フォトディテクタからなることを特徴とする。
【0020】
この一実施形態の搬送装置では、上記各光検出器は2分割フォトディテクタからなるので、上記テーブルのヨーイング変位、水平面内で搬送方向に対して垂直な方向のシフト変位など水平方向の変位をリアルタイムで検出することができる。例えば、2分割フォトディテクタを分割線が鉛直方向に延びる配置とし、光源からの光が2分割フォトディテクタの各受光領域に跨って照射されるように設定する。このようにした場合、2分割フォトディテクタの水平方向に並ぶ受光領域間の出力差が上記テーブルの水平方向の変位量に対応する。
【0021】
一実施形態の搬送装置では、上記各光検出器は4分割フォトディテクタからなることを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の搬送装置では、上記各光検出器は4分割フォトディテクタからなるので、上記テーブルのヨーイング変位、水平面内で搬送方向に対して垂直な方向のシフト変位などの水平方向の変位、ピッチング変位などの垂直方向の変位をリアルタイムで検出することができる。例えば、4分割フォトディテクタの分割線が鉛直方向と水平方向にそれぞれ延びる配置とし、光源からの光が4分割したフォトディテクタの各受光領域に跨って照射されるように設定する。このようにした場合、4分割フォトディテクタの各受光領域のうち、水平方向に並ぶ受光領域間の出力差が水平方向の変位量に対応し、垂直方向に並ぶ受光領域間の出力差が垂直方向の変位量に対応する。
【0023】
一実施形態の搬送装置では、上記各光検出器はCCDラインセンサからなることを特徴とする。
【0024】
この一実施形態の搬送装置では、上記各光検出器はCCDラインセンサからなる。各CCDラインセンサを水平方向に延在する配置としておけば、上記テーブルのヨーイング変位、水平面内で搬送方向に対して垂直な方向のシフト変位などの水平方向の変位量を、上記各CCDラインセンサ上の光スポットの変位量として検出することが可能である。
【0025】
一実施形態の搬送装置では、上記各光検出器はCCDエリアセンサからなることを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の搬送装置では、上記各光検出器はCCDエリアセンサからなるので、上記テーブルのヨーイング変位、水平面内で搬送方向に対して垂直な方向のシフト変位などの水平方向の変位量に加えて、ピッチング変位などの垂直方向の変位をも、上記各CCDエリアセンサ上の光スポットの変位量として検出することが可能である。
【0027】
一実施形態の搬送装置では、上記位置検出部が出力した上記テーブルの搬送位置と、その搬送位置での上記テーブルの変位とを対応させて、ディジタル情報として記録する記憶部を備えたことを特徴とする。
【0028】
上記搬送部による搬送に伴った上記テーブルの変位が再現性をもつ(繰り返し精度が高い)場合には、上記テーブルの変位を予測することができる。そこで、この一実施形態の搬送装置では、上記位置検出部が出力した上記テーブルの搬送位置と、その搬送位置での上記テーブルの変位とを対応させて、記憶部にディジタル情報として記録する。これにより、上記変位補正部が上記記憶部の記録内容を参照して上記処理部を制御することによって、上記テーブルの変位をより高速に補正することが可能となる。さらには、データを蓄積して現行データと比較することにより、経年変化を調べることが可能となる。その経年変化に関する情報は、搬送装置のメンテナンス時期の予測などに活用できる。
【0029】
一実施形態の搬送装置では、上記光源を間欠的に発光させることを特徴とする。
【0030】
光源を常時点灯させておくと、熱の影響などで性能劣化、寿命短縮などの悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、この一実施形態の搬送装置では、例えばあまり緩慢にならない程度に、つまり、上記搬送部による搬送速度を考慮して上記テーブルの変位に関する必要な情報が得られる限り、光源を間欠的に発光させる。これにより、光源の長寿命化を図ることが可能となる。また、消費電力の削減にも寄与する。
【0031】
別の局面では、この発明の搬送装置は、被処理物とその被処理物の一部に所定の処理を施す1つ以上の処理部とを相対移動させる搬送装置であって、
定盤と、
上記定盤上に設けられ、上記被処理物が載置されるテーブルと、
上記定盤上に設けられ、上記被処理物に対向し得るように上記処理部を支持する構造物と、
上記構造物に取り付けられた複数の光源と、
上記各光源にそれぞれ対応して上記定盤上に設けられ、それぞれ対応する光源からの光を受けて上記光の位置ずれを表す信号を出力する複数の光検出器と、
上記定盤上で上記構造物を少なくとも一方向に搬送して、上記テーブルと上記処理部とを相対移動させる搬送部と、
上記一方向に関して上記定盤上での上記構造物の搬送位置を検出する搬送位置検出部と、
上記複数の光検出器が出力する上記光の位置ずれを表す信号に基づいて、上記搬送位置検出部が出力した上記搬送位置での上記構造物の変位を検出する変位検出部と、
上記変位検出部が検出した上記構造物の変位に基づいて、上記処理部を上記構造物上で変位させ又は処理タイミングを変更する変位補正部を備えたことを特徴とする。
【0032】
この発明の搬送装置では、変位検出部は、上記複数の光検出器が出力する上記光の位置ずれを表す信号に基づいて、上記搬送位置検出部が出力した上記搬送位置での上記構造物の変位を検出する。そして変位補正部は、上記変位検出部が検出した上記構造物の変位に基づいて、上記処理部を上記構造物上で変位させ又は処理タイミングを変更する。このようにした場合、上記搬送部による搬送誤差を適切に補正でき、搬送精度を向上できる。また、逆に言えば、その分だけ搬送部の搬送精度を低くしても良いので、搬送部を安価に構成することが可能になる。この利点は、被処理物が大型化して、製品の品質を高めるために搬送部の搬送精度に対する要求が高まり、搬送部が高価格となっている近年の状況下では、極めて有益である。
【0033】
この発明の搬送誤差補正方法は、上記発明の搬送装置によって被処理物と処理部とを相対移動させる場合に、搬送による上記テーブルの変位を補正する搬送誤差補正方法であって、
上記定盤の上面に沿った水平面内にXY座標を設定し、
上記変位検出部が検出した上記テーブルの変位に基づいて、上記被処理物上の目標位置のX軸方向の変位ΔxおよびY軸方向の変位Δyを求め、
上記X軸方向の変位Δxを相対的に解消するように上記処理部を上記構造物上でX軸方向に変位させるとともに、上記Y軸方向の変位Δyに応じて上記処理部による処理タイミングを変更することを特徴とする。
【0034】
この発明の搬送誤差補正方法によれば、上記搬送部による搬送誤差、ここでは上記X軸方向の変位Δxおよび上記Y軸方向の変位Δyを適切に補正できる。したがって、搬送精度を向上できる。また、逆に言えば、その分だけ搬送部の搬送精度を低くしても良いので、搬送部を安価に構成することが可能になる。
【0035】
別の局面では、この発明の搬送誤差補正方法は、一実施形態の搬送装置によって被処理物と処理部とを相対移動させる場合に、搬送による上記テーブルの変位を補正する搬送誤差補正方法であって、
上記定盤の上面に沿った水平面内にXY座標を設定するとともに、上記XY座標に鉛直方向のZ座標を加えたXYZ座標を設定し、
上記変位検出部が検出した上記テーブルの変位に基づいて、上記被処理物上の目標位置のX軸方向の変位Δx、Y軸方向の変位ΔyおよびZ軸方向の変位Δzを求め、
上記X軸方向の変位Δxを相対的に解消するように上記処理部を上記構造物上でX軸方向に変位させるとともに、上記Y軸方向の変位ΔyおよびZ軸方向の変位Δzに応じて上記処理部による処理タイミングを変更することを特徴とする。
【0036】
この発明の搬送誤差補正方法によれば、上記搬送部による搬送誤差、ここでは上記被処理物上の目標位置のX軸方向の変位Δx、Y軸方向の変位ΔyおよびZ軸方向の変位Δzを適切に補正できる。したがって、搬送精度を向上できる。また、逆に言えば、その分だけ搬送部の搬送精度を低くしても良いので、搬送部を安価に構成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0038】
図1、図2は、本発明の搬送装置を適用した一実施形態のインクジェット方式の液滴塗布装置を、それぞれ上方、側方から見たところを示している。なお、同じ構成要素には同じ参照符号を付している。
【0039】
この種のインクジェット方式の液滴塗布装置は、液晶パネル等を構成するカラーフィルタを製造するために好適に用いられる。液晶パネル等に用いられるカラーフィルタとは、ガラス基板上でブラックマトリクスにより区切られた領域(画素)に形成される(赤)、G(緑)、B(青)各色の薄膜を意味している。このようなカラーフィルタは、撥液性を有したブラックマトリクスによって区切られた親液性の領域に、処理部としてのインクジェットヘッドによってR、G、B各色の液体材料をそれぞれ吐出し硬化させる方法(インクジェット方式)によって製造される。このカラーフィルタの画素は、幅200μm程度の高精細であることが要求される。それを実現するためには、インクジェットヘッドから吐出されたインクが10μm以下の着弾精度を有することが要求される。
【0040】
図1、図2に示すように、この液滴塗布装置は、概ね、除振台11と、除振台11のXY平面に沿った上面に置かれた定盤10と、定盤10の上面に敷設されたY軸方向に延びる一対のガイドレール3a、3aと、ガイドレール3a、3aの上方にY軸方向に往復移動可能に設けられたテーブル2と、定盤10上にガイドレール3a、3aをまたぐ態様で架設された門型構造物12と、門型構造物12上にX軸方向に往復移動可能に設けられた処理部14と、この装置全体の制御を行う制御部22とを備えている。
【0041】
テーブル2のXY平面に沿った上面には、被処理物としての平板状のガラス基板1が置かれている。このテーブル2は、スクリューシャフト3等を介してY軸駆動モータ4と連結されている。テーブル2は、Y軸駆動モータ4による駆動に伴って、Y軸方向に延びる一対のガイドレール3a、3aに案内されて、Y軸方向に往復移動する。この例では、Y軸駆動モータ4、スクリューシャフト3が搬送部を構成する。なお、XY平面内でテーブル2をガラス基板1とともに細かく位置調整するアライメント位置調整機構については後述する。
【0042】
なお、テーブル2のY軸方向への駆動方式として、ガイド軸を設けてスライドさせる方式を採用することもできる。
【0043】
また、この例ではテーブル2のY軸方向に沿った一対の側面に、それぞれ光源取付機構部5a、5bを介して光源としての第1レーザ光源6a、第2レーザ光源6bが取り付けられている。手前の第1レーザ光源6aからは平行光であるレーザビーム7aが+Y軸方向に出射される。第2レーザ光源6bからは平行光であるレーザビーム7bが−Y軸方向に出射される。レーザ光源6a、6bはテーブル2の両側に配置されているので、テーブル2の重量バランスの偏りがなくなり、姿勢が安定化する。この結果、上記Y軸駆動モータ4を含む搬送部による搬送に伴った上記テーブルの変位が生じにくくなる。
【0044】
定盤10の上面において、第1レーザ光源6aが出射したレーザビーム7aが照射されるべき位置に、取付台9aを介して第1光検出器8aが搭載され、また、第2レーザ光源6bが出射したレーザビーム7bが照射されるべき位置に、取付台9bを介して第2光検出器8bが搭載されている。第1光検出器8a、第2光検出器8bはそれぞれ矩形の受光領域を有するCCDエリアセンサからなる。取付台9a、9bはそれぞれ定盤10に固定されている。レーザ光源6a、第2レーザ光源6bがそれぞれ出射したレーザビーム7a、7bは、第1光検出器8a、第2光検出器8bの受光領域にそれぞれビームスポット71a、71bとして集光される。
【0045】
このような配置の結果、定盤10上のテーブル2の変位が水平移動(水平面内での平行移動)の場合と回転移動の場合とで、光検出器8a、8b上の光の移動方向が異なる。したがって、両者を区別して検出することが可能となり、テーブル2の変位を容易に適切に補正できるようになる。
【0046】
なお、このレーザ光源6a、6bおよび対応する光検出器8a、8bを取り付けた時点で、それぞれ光軸を合わせるための初期の位置調整(初期アライメント)が行われる。この初期アライメントの方法としては、レーザ光源6a、6bを点灯し、光源取付機構部5a、5bによってテーブル2に対するレーザ光源6a、6bのレーザ出射方向を可変して、ビームスポット71a、71bが光検出器8a、8bの中心(より詳しくは、受光領域の中心を意味する。以下同様。)に位置するように調整する。このようにした場合、光検出器8a、8b内でビームスポット71a、71bの移動量を検出できる範囲が最も広くなるので、望ましい。
【0047】
図2によって良く分かるように、スクリューシャフト3に嵌合してY軸方向に往復移動可能なスライダ19が設けられている。このスライダ19上に、ガラス基板1をX軸方向、Y軸方向、および回転方向に位置調整するためのアライメント位置調整機構としてアライメントステージ18が設けられている。既述のテーブル2は、このアライメントステージ18上に搭載されている。
【0048】
ガラス基板1の表面の予め定められた複数の箇所にアライメントマーク17が形成されている(図2中には、簡単のため1箇所のみ示す。)。テーブル2の上方には、そのアライメントマーク17を撮像するためのアライメント用カメラ16が設けられている。
【0049】
ガラス基板1の位置調整を行う場合、まずガラス基板1表面の複数のアライメントマーク17をそれぞれアライメント用カメラ16で撮像する。アライメント用カメラ16の出力は配線23を通して制御部22へ送られる。制御部22は、撮像した画像を所定位置に移動させるべく、上述のアライメントステージ18をX軸方向、Y軸方向、および回転方向に駆動する。その結果、テーブル2上のガラス基板1がXY平面内で所定位置に配置される(初期化)。
【0050】
また、スライダ19にはテーブル2のY方向の位置を検出するためのエンコーダ検出器21が取り付けられている。一方、定盤10にはスケール20が固定して設けられている。エンコーダ検出器21は、定盤10上でテーブル2がアライメントステージ18やスライダ19とともにY軸方向に往復移動するとき、スケール20上の位置情報に基づいて、テーブル2のY軸方向の位置を検出する。つまり、エンコーダ検出器21とスケール20とが搬送位置検出部を構成する。エンコーダ検出器21の出力は、配線23を通して制御部22へ送られる。
【0051】
処理部14は、X軸方向に往復移動可能なスライダ13を介して門型構造物12に取り付けられている。処理部14の底部には、インクジェットヘッド14aが突出している。処理部14は、スライダ13を介してX軸方向に移動されるとともに、インク吐出タイミングに合わせてインクジェットヘッド14aからインクを吐出するように、制御部22によって制御される。この制御に応じて、処理部14のインクジェットヘッド14aからガラス基板1上の処理目標15へ向けてインクが吐出される。
【0052】
図3(a)は、この液滴塗布装置における処理フローを示している。
【0053】
まず、ステップS1で、この装置のところに搬入されたガラス基板1をテーブル2上に搭載し、公知の吸着などの手法によりテーブル2に固定する。
【0054】
次に、ステップS2で、レーザ光源6a、6bを点灯し、光検出器8a、8b上のビームスポット71a、71bの位置を検出する。なお、レーザ光源6a、6bと光検出器8a、8bとの間で初期アライメントは完了しているものとする。
【0055】
次に、ステップS3で、アライメントステージ18をX軸方向、Y軸方向、および回転方向に駆動して、テーブル2とともにガラス基板1の位置調整すなわち基板アライメントを行う。この基板アライメントでは、テーブル2がX軸方向、Y軸方向、および回転方向に駆動される。その結果、ガラス基板1が所定の位置、姿勢となる。そのようにした場合、Y軸駆動モータ4による後述の搬送開始後に、テーブル2の変位を容易に検出できるようになる。
【0056】
この基板アライメントに伴って、テーブル2に搭載されているレーザ光源6a、6bはテーブル2と共に移動する。その結果、レーザ光源6a、6bより照射されるビームスポット71a、71bの位置も光検出器8a、8bの上で移動することになる。この基板アライメント時にビームスポット71a、71bの移動軌跡を記憶部に記録しておく。また、基板アライメントを実施した際、アライメントステージ18を駆動したデータを記憶部に記録しておく。ここで記録したビームスポット71a、71bの移動軌跡または、およびアライメントステージ駆動データからビームスポット71a、71bの位置補正を実施する。
【0057】
次に、ステップS4で、前述の基板アライメントにより移動した光検出器8a、8b上のビームスポット71a、71bの位置を検出する。このとき検出されたビームスポット71a、71bの位置を、光検出器8a、8bの受光領域の中心へ、光源取付機構部5a、5bを駆動して移動させる。これは前述の基板アライメントによってビームスポット71a、71bが光検出器8a、8b上の中心位置からずれたことを補正することを意味する。このとき、先に記録したビームスポット71a、71bの移動軌跡、アライメントステージ18を駆動したデータを使用してもよい。もし光検出器8a、8bの受光領域内にビームスポット71a、71bがない場合には、基板アライメントの際に記録したビームスポット71a、71bの移動軌跡を解析してビームスポット71a、71bを光検出器上8上に移動させるための情報とする。すなわち、ビームスポット71a、71bの移動軌跡を逆に辿るように光源取付機構部5a、5bを駆動することにより、ビームスポット71a、71bを光検出器8a、8bの受光領域上に来るようにすることができる。
【0058】
次に、ステップS5で、Y軸駆動モータ4を駆動してスクリューシャフト3等を介して、ガラス基板1を搭載したテーブル2をY軸方向に搬送する。これにより、被処理物としてのガラス基板1が処理部14のインクジェットヘッド14aの直下をY軸方向へ移動することになる。このY軸方向の搬送の間、ステップS6に示すように、光検出器8a、8b上のビームスポット71a、71bの位置変化を常時検出することとする。
【0059】
すると、上記光検出器8a、8b上のビームスポット71a、71bの位置の変化により、ガラス基板1を搬送しているテーブル2のXY平面内での変位を検出することが可能となる。すなわち、搬送開始時には、光検出器8a、8b上のビームスポット71a、71bは光検出器8a、8bの中心に位置するように調整されていた。このため、搬送開始後のビームスポット71a、71bの移動量はテーブル2の移動量と対応している。したがって、テーブル2の移動量、姿勢を検出することができる。このテーブル2の変位は一般に、ヨーイング、ピッチング、ローリング、また水平真直度、垂直真直度と呼ばれる。もし、光検出器8a、8b上でビームスポット71a、71bが変位しないのであれば、上記した様なテーブル2の変位はなく、テーブル2はY軸に沿って直進していることになる。
【0060】
仮に前述したようなテーブル2の変位がおこると、テーブル2に搭載されているガラス基板1も同じように変位し、ガラス基板1上の処理目標15も変位する。その結果、インクジェットヘッド14aとガラス基板1上の処理目標15との間の位置関係がずれて、インクジェットヘッド14aから吐出されたインク(液滴)がガラス基板1上で処理目標15から外れた箇所に着弾する。つまり、着弾誤差が生じてしまう。
【0061】
そこで、ステップS7では、制御部22が変位検出部として働いて、光検出器8a、8b上でのビームスポット71a、71bの移動量に基づいてガラス基板1上の処理目標15と実際の着弾箇所との間の位置ずれ量(これを「着弾位置ずれ量」と呼ぶ。)を算出し、その着弾位置ずれ量を相対的に解消するように、処理部14を駆動すべき駆動量を算出する。
【0062】
続いてステップS8で、前述した処理部14を駆動すべき駆動量を、光検出器8a、8b上でのビームスポット71a、71bの位置情報、テーブル2の位置情報と共に記憶部に記録する。ここで記録したデータを蓄積して統計処理を行う。このようにした場合、この統計処理の結果を、テーブル2の変位の監視に使用することが可能となる。すなわち、経年変化によるステージ移動精度の劣化などを監視することが可能となる。また、テーブル2の変位にばらつきが無いようであれば、記録したデータに基づき処理部14を駆動することが可能となる。
【0063】
次に、ステップS9で、上記算出された駆動量に基づいて処理部14を駆動する。
【0064】
その後、ステップS10で、インクジェットヘッド14aによってガラス基板1上を処理する。具体的には、インクジェットヘッド14aによる液滴塗布処理を行う。
【0065】
次に、図4〜図5を用いて、テーブル2がヨーイング変位した場合を例として、基板上の処理目標15からの位置ずれ量の算出の仕方について説明する。これらの図には、図1におけるガラス基板1、レーザ光源6aおよび6b、レーザビーム7aおよび7b、光検出器8aおよび8b、ビームスポット71aおよび71bが模式的に示されている。また、光検出器8a、8b(の受光領域)の中心はそれぞれO8a、O8bと表されている。
【0066】
図4(a)に示すように、この装置のところに搬入されたガラス基板1に対して基板アライメントを実施した後、光源取付機構部5a、5bを駆動することによって、テーブル2上に取り付けられた2つのレーザ光源6a、6bによるビームスポット71a、71bが光検出器8a、8bの中心O8a、O8bにそれぞれ位置調整された状態となる。その状態から、ガラス基板1がテーブル2とともにY軸方向に搬送される。
【0067】
このY軸方向の搬送の間、XY平面上で搬送に伴うガラス基板1のY軸方向の変位以外の変位が無い場合、図4(a)の状態が維持される。すなわち、2つのレーザ光源6a、6bによるビームスポット71a、71bが光検出器8a、8bの中心O8a、O8bにそれぞれ存在する状態が維持される。
【0068】
一方、Y軸方向の搬送の間、XY平面上で搬送に伴ってガラス基板1がヨーイング変位を起こしたものとする。図4(b)の例では、光検出器8a、8b上のビームスポット71a、71bはそれぞれxa1、xb1の変位を起こしている。
【0069】
ここで、図5(a)に示すように、2つの座標系を使用する。1つの座標系は、この液滴塗布装置の光検出器8bの中心O8bを原点とするXY座標系である。もう1つの座標系は、ガラス基板1上の点(図5(a)において左下隅の点)1aを原点とするUV座標系である。ここでUV座標系の原点1aは、アライメントマークなどを基準とする点であり、処理目標を特定する座標系である。ガラス基板1の原点1aは、UV座標系では(0,0)であるが、XY座標系では(x0,y0)となる。つまり、UV座標系はXY座標系をX方向にx0、Y方向にy0平行移動したものである。処理目標15aの座標をUV座標系で(u,v)、XY座標系で(x,y)とそれぞれ表すものとすると、それらの関係は次式の通りである。
【数1】

この式に基づいて、基板上の処理目標15aのUV座標は、XY座標系の座標から算出することができる。逆に、UV座標からXY座標を算出することも可能である。今後の演算についてはXY座標系で説明する。
【0070】
今、図4(a)に示すテーブル2上の処理目標15a(その座標を(x,y)とする。)がヨーイング変位により図4(b)の位置15b(その座標を(x’,y’)とする。)に変位したとする。このとき、2つの光検出器8a、8b上でビームスポット71a、71bの位置がそれぞれxa1、xb1に変位したとする。もし、ヨーイング変位が無ければ、xa1=0、xb1=0である。したがって、変位後のxa1、xb1をそれぞれ0になるようにテーブル2を移動させると、ヨーイングによる各点の変位量を求めることができる。
【0071】
ヨーイング変位後の座標(x’、y’)とヨーイング前の座標(x、y)との関係について説明する。まず、ビームスポット71a、71bの変位量xa1、xb1と、光検出器8a、8b間の距離ynから、テーブル2の回転角度θは次式で算出できる(なお、atan{}はtan{}の逆関数である。)。
θ=atan{(xa1−xb1)/yn}
【0072】
次に、図5(b)に示すように、光検出器8b上のビームスポット71bが座標原点O8bに来るようにX軸方向に水平移動させる。このとき、処理目標15b、座標(x’、y’)は次式のように変化する。
(x’−xb1,y’)
【0073】
さらに、−θの回転を加えると、ヨーイング前の座標(x、y)に一致する。すなわち、次式が成り立つ。
【数2】

この式を(x’、y’)について解くと、次式が成り立つ。
【数3】

【0074】
したがって、処理目標15a、座標(x、y)での変位量(Δx、Δy)は、次式によって求めることができる。
【数4】

【0075】
制御部22は、上述の式に基づいて変位量Δxを算出する。そして、制御部22は変位補正部として働いて、その変位量Δxを相対的に解消するように、処理部14を駆動すべき駆動量を算出する。X軸方向に関しては、この駆動量だけ処理部14を駆動すれば、テーブル2のヨーイング変位によって生じる着弾位置ずれを補正することできる。
【0076】
また、Y軸方向に関しては、ステージ2のヨーイングで生じた変位Δyについては、制御部22は、その変位量Δyに応じて処理部14のインクジェットヘッド14aによる液滴吐出タイミングを変更する。これにより、Y軸方向に関して着弾位置ずれを補正する。
【0077】
このようにした場合、上記Y軸方向の搬送によるテーブル2の変位、つまり搬送誤差を適切に補正でき、搬送精度を向上できる。また、逆に言えば、その分だけ搬送部の搬送精度を低くしても良いので、Y軸駆動モータ4を含む搬送部を安価に構成することが可能になる。この利点は、ガラス基板1のような被処理物が大型化して、製品の品質を高めるために搬送部の搬送精度に対する要求が高まり、搬送部が高価格となっている近年の状況下では、極めて有益である。
【0078】
上述の図3(a)の処理フローでは、ステップS6で「光検出器上のビーム移動を検出」し、ステップS7で「処理部の駆動量を算出」し、ステップS8で「ビームスポット位置、テーブル位置、駆動データを記録」している。
【0079】
これらの記録したデータの活用法の1つは、ステップS8で記録した所定のテーブル位置毎に、ビームスポット位置、駆動データを蓄積して、現在のデータと比較することである。これにより、テーブル搬送の繰り返し精度を得ることができる。
【0080】
また、テーブル搬送の繰り返し精度が高い場合には、所定のテーブル位置でのビームスポット位置、駆動データはほぼ同じになる。したがって、図3(b)の処理フローに示すように、テーブル搬送毎に処理部の駆動量を算出(図3(a)中のステップS7)する必要がなくなる。
【0081】
具体的には、図3(b)中のステップS11〜S16は図3(a)中のステップS1〜S6と同様に進める。図3(b)中のステップS17において、処理部14を駆動すべき駆動量を記憶部から読み出して、その駆動量だけ処理部14を駆動する。その後、図3(b)中のステップS18〜S19は図3(a)中のステップS9〜S10と同様に進める。
【0082】
このようにした場合、上記テーブル2の変位をより高速に補正することが可能となる。さらには、データを蓄積して現行データと比較することにより、経年変化を調べることが可能となる。その経年変化に関する情報は、搬送装置のメンテナンス時期の予測などに活用できる。
【0083】
上述の図4〜図5の例では、光検出器8a、8b上のビームスポット71a、71bのX軸方向の変位に着目して、テーブル2のヨーイング変位が起こった場合の着弾位置ずれを補正する方法について説明した。これに対して、次に図6を用いて、テーブル2のヨーイング変位のみならず、ピッチング、水平シフト、垂直シフトを検出して補正する例について説明する。この方法では、光検出器としてのCCDエリアセンサ8a、8b上のビームスポット71a、71bのX軸方向およびZ軸方向の変位に着目する。
【0084】
図6(a)はCCDエリアセンサ8a上に集光されるビームスポット71aの様子を表し、また、図6(b)はCCDエリアセンサ8b上に集光されるビームスポット71aの様子を表している。なお、図6(a)、図6(b)ではCCDエリアセンサ8a、8bの受光領域が矩形枠で示されている。図6(a)ではビームスポット71aはX軸方向にxa1、Z軸方向にza1だけ変位している。一方、図6(b)ではビームスポット71bはX軸方向にxb1、Z軸方向にzb1だけ変位している。
【0085】
この例でも、ヨーイング変位については、図4〜図5を用いて説明したのと同様に、ビームスポット71a、71bのX軸方向の変位xa1、xb1を使って処理部14を駆動すべき駆動量を算出して、補正する。
【0086】
また、図6中に示すビームスポット71a、71bのZ軸方向の変位za1、zb1と、処理目標15の座標(x、y)とを使うことにより、処理目標(x、y)でのZ軸方向の変位を算出することができる。具体的には、前述したヨーイングにおける角度θの算出式において、xa1、xb1をそれぞれza1、zb1で置き換えることにより、ピッチングの角度を算出できる。また、処理目標(x、y)でのZ軸方向の変位についても、xa1、xb1をそれぞれza1、zb1で置き換えることにより、算出できる。ここで算出されたZ軸方向の変位を補正する方法は、処理目標(x、y)でのZ軸方向の変位に応じて、それを相対的に解消するように制御部22での処理タイミングを変化させることである。つまり、テーブル2の変位によりインクジェットヘッド14aとガラス基板1との間の距離がΔzだけ短くなるように変位したのであれば、液滴の吐出速度v0とすると、着弾までの時間は(Δz/v0)だけ短くなる。このため、テーブル2の搬送速度が一定vtであるなら、着弾位置ずれとしてvt・(Δz/v0)を生じる。これを補正するには、短くなった時間分だけ、すなわち(Δz/v0)分だけ処理タイミング、つまり液滴吐出タイミングを早くするように制御すればよいことになる。
【0087】
また、上述の例では、光検出器8a、8bはCCDエリアセンサからなるものとした。当然ながら、これに限られるものではない。各光検出器8a、8bはCCDラインセンサからなっていても良い。その場合、各CCDラインセンサを水平方向に延在する配置としておけば、テーブル2のヨーイング変位、水平面内で搬送方向に対して垂直な方向のシフト変位などの水平方向の変位量を、各CCDラインセンサ上の光スポットの変位量として検出することが可能である。
【0088】
また、光検出器8a、8bはフォトディテクタからなっていても良い。次に図7を用いて、光検出器としてフォトディテクタを使用した場合のX軸方向およびZ軸方向の変位の検出の仕方について説明する。
【0089】
図7(a)は、光検出器8aとして2分割フォトディテクタを備えた例を示している。この2分割フォトディテクタの受光領域8aa、8abは、点O8aを通りZ軸方向に延びる分割線によって左右対称に2分割されている。これらの受光領域8aa、8abに跨って上にビームスポット71aが照射されている。なお、既にテーブル2がY軸方向に駆動されて移動した結果、ビームスポット71aの中心が点O8aから点(xa1、za1)に移動している。ここで、受光領域8aa、8abの出力信号の間の差分である差信号(8ab−8aa)を考える。ビームスポット71aが2分割フォトディテクタ上を水平方向(x軸方向)に沿って変位した場合、ビームスポットの中心(xa1、za1)の移動に伴い、差信号(8ab−8aa)の出力は、図7(b)に示す波形となる。この波形を参照すると、2分割フォトディテクタの差信号(8ab−8aa)から水平方向の変位量xa1を検出することができる。
【0090】
また、図7(c)は、光検出器8aとして4分割フォトディテクタを備えた例を示している。この4分割フォトディテクタの受光領域8aa、8ab、8ac、8adは、点O8aを通りX軸方向、Z軸方向に延びる分割線によって田の字型に4分割されている。これらの受光領域8aa、8ab、8ac、8adに跨ってビームスポット71aが照射されている。なお、既にテーブル2がY軸方向に駆動されて移動した結果、ビームスポット71aの中心が点O8aから点(xa1、za1)に移動している。ここで、受光領域aa、8ab、8ac、8adのそれぞれの出力信号から、水平方向の差信号{(8ab+8ad)−(8aa+8ac)}、垂直方向の差信号{(8aa+8ab)−(8ac+8ad)}を考える。ビームスポット71aが上記4分割フォトディテクタ上を水平方向(x軸方向)に沿って変位した場合、ビームスポット中心(xa1、za1)の移動に伴い水平方向の差信号{(8ab+8ad)−(8aa+8ac)}の出力は、図7(d)に示す波形となる。この波形を参照すると、4分割フォトディテクタの水平方向の差信号{(8ab+8ad)−(8aa+8ac)}から水平方向の変位量xa1を検出することができる。また、ビームスポット71aが上記4分割フォトディテクタ上を垂直方向(z軸方向)に沿って変位した場合、ビームスポット中心(xa1、za1)の移動に伴い垂直方向の差信号{(8aa+8ab)−(8ac+8ad)}の出力は、図7(e)に示す波形となる。この波形を参照すると、4分割フォトディテクタの垂直方向の差信号{(8aa+8ab)−(8ac+8ad)}から垂直方向の変位量za1を検出することができる。
【0091】
なお、光源としてのレーザ光源6a、6bを間欠的に駆動することにより、レーザ光源6a、6bの長寿命化を図ることができる。光検出器8a、8bでのビームスポット71a、71bの位置検出を行い、処理部の駆動量を算出するには、ある程度の時間を要する。また、テーブル2など可動部の質量は比較的大きいため、急激な変位は少ないと考えられる。このようなことから、レーザ光源6a、6bを常時点灯しておく必要はない。むしろ、テーブル2の最も早い変位の2倍以上の周波数で発光させ、そのときのビームスポット71a、71bを光検出器8a、8bにて検出すれば十分である。
【0092】
また、上述の例では、門型構造物12に1つの処理部14が取り付けられているが、当然ながら、複数の処理部が取り付けられていても良い。複数の処理部によって処理箇所を分担すれば、処理時間の短縮を図ることができる。
【0093】
また、上述の例では、定盤10上で、処理部14を搭載した門型構造物12に対して、被処理物としてのガラス基板1を搭載したテーブル2がY軸方向に駆動されて移動する構成になっている。当然ながら、これに限られるものではない。逆に、定盤10上に固定的に載置された被処理物としてのガラス基板1に対して、処理部14を搭載した門型構造物12がY軸方向に駆動されて移動する構成になっていても良い。この場合、光源としてのレーザ光源6a、6bは、テーブル2ではなく、門型構造物12に取り付けられる。光検出器8a、8bは、定盤10上で、それぞれ門型構造物12に取り付けられたレーザ光源6a、6bからのレーザビームを受けるように配置される。
【0094】
この実施形態では、本発明の搬送装置をインクジェット方式の液滴塗布装置に適用した。しかしながら、当業者ならば分かるように、本発明の搬送装置は、液滴塗布装置に限られず、他の様々な用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明の搬送装置を適用した一実施形態の液滴塗布装置を上方から見たところを示す図である。
【図2】上記液滴塗布装置を側方から見たところを示す図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ上記液滴塗布装置を動作させる処理フローを示す図である。
【図4】(a)、(b)は上記液滴塗布装置上のガラス基板の変位を示す図である。
【図5】(a)、(b)は上記液滴塗布装置上のガラス基板の変位を示す図である。
【図6】(a)、(b)は上記液滴塗布装置の光検出器としてのCCDエリアセンサ上のビームスポットを示す図である。
【図7】(a)は上記液滴塗布装置の光検出器としての2分割フォトディテクタ上のビームスポットを示す図、(b)はその2分割フォトディテクタによる出力を示す図、(c)は上記液滴塗布装置の光検出器としての4分割フォトディテクタ上のビームスポットを示す図、(d)および(e)はその4分割フォトディテクタによる出力を示す図である。
【図8】従来のテーブル移動誤差測定装置におけるテーブルの移動誤差を検出する仕方を説明する図である。
【図9】従来のテーブル移動誤差測定装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0096】
1 ガラス基板
2 テーブル
4 Y軸駆動モータ
5a、5b 光源取付機構部
6a 第1レーザ光源
6b 第2レーザ光源
7a、7b レーザビーム
8a、8b 光検出器
9a、9b 取付台
10 定盤
11 除振台
12 門型構造物
13 スライダ
14 処理部
14a インクジェットヘッド
20 スケール
21 エンコーダ検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物とその被処理物の一部に所定の処理を施す1つ以上の処理部とを相対移動させる搬送装置であって、
定盤と、
上記定盤上に設けられ、上記被処理物が載置されるテーブルと、
上記定盤上に設けられ、上記被処理物に対向し得るように上記処理部を支持する構造物と、
上記テーブルに取り付けられた複数の光源と、
上記各光源にそれぞれ対応して上記定盤上に設けられ、それぞれ対応する光源からの光を受けて上記光の位置ずれを表す信号を出力する複数の光検出器と、
上記定盤上で上記テーブルを少なくとも一方向に搬送して、上記テーブルと上記処理部とを相対移動させる搬送部と、
上記一方向に関して上記定盤上での上記テーブルの搬送位置を検出する搬送位置検出部と、
上記複数の光検出器が出力する上記光の位置ずれを表す信号に基づいて、上記搬送位置検出部が出力した上記搬送位置での上記テーブルの変位を検出する変位検出部と、
上記変位検出部が検出した上記テーブルの変位に基づいて、上記処理部を上記構造物上で変位させ又は処理タイミングを変更する変位補正部を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、
上記テーブルが上記一方向に関して基準位置にあるとき、上記各光源からの光が上記光検出器の受光領域内の基準位置に入射するように、上記各光源と上記テーブルとの間に上記光源の光出射方向を変更し得る光源取付機構部を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の搬送装置において、
上記複数の光源として第1光源と第2光源との2つが設けられ、
上記第1光源と第2光源は上記一方向に関して互いに反対向きに光を出射し、
上記第1光源、第2光源にそれぞれ対応して、上記複数の光検出器として第1光検出器、第2光検出器が設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の搬送装置において、
上記光源は上記テーブルの両側に配置されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の搬送装置において、
上記各光検出器は2分割フォトディテクタからなることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の搬送装置において、
上記各光検出器は4分割フォトディテクタからなることを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の搬送装置において、
上記各光検出器はCCDラインセンサからなることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の搬送装置において、
上記各光検出器はCCDエリアセンサからなることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つに記載の搬送装置において、
上記位置検出部が出力した上記テーブルの搬送位置と、その搬送位置での上記テーブルの変位とを対応させて、ディジタル情報として記録する記憶部を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一つに記載の搬送装置において、
上記光源を間欠的に発光させることを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
被処理物とその被処理物の一部に所定の処理を施す1つ以上の処理部とを相対移動させる搬送装置であって、
定盤と、
上記定盤上に設けられ、上記被処理物が載置されるテーブルと、
上記定盤上に設けられ、上記被処理物に対向し得るように上記処理部を支持する構造物と、
上記構造物に取り付けられた複数の光源と、
上記各光源にそれぞれ対応して上記定盤上に設けられ、それぞれ対応する光源からの光を受けて上記光の位置ずれを表す信号を出力する複数の光検出器と、
上記定盤上で上記構造物を少なくとも一方向に搬送して、上記テーブルと上記処理部とを相対移動させる搬送部と、
上記一方向に関して上記定盤上での上記構造物の搬送位置を検出する搬送位置検出部と、
上記複数の光検出器が出力する上記光の位置ずれを表す信号に基づいて、上記搬送位置検出部が出力した上記搬送位置での上記構造物の変位を検出する変位検出部と、
上記変位検出部が検出した上記構造物の変位に基づいて、上記処理部を上記構造物上で変位させ又は処理タイミングを変更する変位補正部を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項12】
請求項1に記載の搬送装置によって被処理物と処理部とを相対移動させる場合に、搬送による上記テーブルの変位を補正する搬送誤差補正方法であって、
上記定盤の上面に沿った水平面内にXY座標を設定し、
上記変位検出部が検出した上記テーブルの変位に基づいて、上記被処理物上の目標位置のX軸方向の変位ΔxおよびY軸方向の変位Δyを求め、
上記X軸方向の変位Δxを相対的に解消するように上記処理部を上記構造物上でX軸方向に変位させるとともに、上記Y軸方向の変位Δyに応じて上記処理部による処理タイミングを変更することを特徴とする搬送誤差補正方法。
【請求項13】
請求項6または8に記載の搬送装置によって被処理物と処理部とを相対移動させる場合に、搬送による上記テーブルの変位を補正する搬送誤差補正方法であって、
上記定盤の上面に沿った水平面内にXY座標を設定するとともに、上記XY座標に鉛直方向のZ座標を加えたXYZ座標を設定し、
上記変位検出部が検出した上記テーブルの変位に基づいて、上記被処理物上の目標位置のX軸方向の変位Δx、Y軸方向の変位ΔyおよびZ軸方向の変位Δzを求め、
上記X軸方向の変位Δxを相対的に解消するように上記処理部を上記構造物上でX軸方向に変位させるとともに、上記Y軸方向の変位ΔyおよびZ軸方向の変位Δzに応じて上記処理部による処理タイミングを変更することを特徴とする搬送誤差補正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−137669(P2009−137669A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313346(P2007−313346)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】