説明

搬送車システム

【課題】
ステーションの所定の位置に物品を正確に移載する。
【構成】
ステーションへ搬送車により物品を荷下ろしする。搬送車は出退自在なアームにより物品を移載する移載装置を備え、ステーションは物品がステーションの奥行き方向に沿って所定の位置まで前進したことを検出するセンサを備え、さらにセンサの信号により、搬送車の移載装置の進出を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は搬送車システムに関し、搬送車からステーションへ荷下ろしする際の位置精度の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人はリアフック式の移載装置を備えた搬送車を提案した(特許文献1:JPH11-278607A)。リアフック式の移載装置では、例えば固定片と中間片と可動片とを備えた倍速式のスライドフォークを改良し、可動片の前後両端に回動自在なフックを設ける。そして後端側のフックで棚あるいはステーションへ物品を押し込み、先端側のフックで棚とステーションから搬送車へ物品を引き込む。
【0003】
ところで物品に検査、加工、エージングなどを施すため、これらの設備を備えたステーションへ物品を移載する場合、所定の位置に物品を移載する必要がある。しかし移載装置のガイドローラ、ベルト、ギア等が摩耗すると、移載精度が低下する。同様に、物品とステーションの床面との摩擦係数が変動すると、移載精度が低下する。そこでこれらの影響を受けずに正確な位置に物品を移載する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JPH11-278607A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、搬送車から物品をステーションの所定の位置に正確に移載できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、搬送車によりステーションへ物品を荷下ろしするようにした搬送車システムであって、
搬送車は出退自在なアームにより物品を移載する移載装置を備え、
ステーションは物品がステーションの奥行き方向に沿って所定の位置まで前進したことを検出するセンサを備え、
さらにセンサの信号により、搬送車の移載装置の進出を停止させるコントローラが設けられていることを特徴とする。
【0007】
このようにすると、移載装置の摩耗及び経年変化、物品と床面の摩擦係数のばらつき等によらずに、正確な位置へ物品を移載できる。またセンサの取付位置を調整すると、物品を移載する位置も簡単に調整できる。
【0008】
好ましくは、コントローラは搬送車の移載装置を制御し、移載装置を第1の速度で所定の位置よりも手前まで進出させた後に、第1の速度よりも低速の第2の速度でさらに進出させ、第2の速度で進出中にセンサの信号を受信すると移載装置の進出を停止させるように構成されている。このようにすると低速の第2の速度からセンサの信号で移載装置を停止させるので、より正確な位置へ物品を移載できる。また比較的高速の第1の速度で進出を開始するので、移載のサイクルタイムへの影響が小さい。
【0009】
また好ましくは、搬送車は移載装置のサーボアンプとサーボモータとを備え、コントローラは地上側に設けられて、ネットワークを介して搬送車及びセンサと接続され、かつサーボアンプへネットワークを介して指令するように構成されている。センサの信号を搬送車が直接高速で受信することは難しい。しかしセンサの信号をネットワークを介して地上側のコントローラへ送信し、コントローラが移載装置のサーボアンプへ指令を送って制御するようにすると、確実にかつ高速で移載装置を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の搬送車システムの要部平面図
【図2】実施例の搬送車システムの要部正面図
【図3】搬送車の平面図
【図4】実施例の制御系を示すブロック図
【図5】移載の速度シーケンスを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0012】
図1〜図5に、実施例の搬送車システム2を示す。各図において、4は搬送車で、レール5に沿って車輪6により走行し、物品8を搬送する。10,11はそれぞれ多段のアームで、可動片33の前後両端に、アーム10,11の長手方向を軸として回動自在なフック12を設けたアームである。アーム10,11に代えてスライドフォークあるいはスカラアームなどを設けても良く、その場合はフック12は不要である。14,16はラックで、高さ方向に沿って複数段を備えている。ラック14,16は例えばレール5,5の左右両側に設けられ、17はその棚板で、例えばラック14側にステーション18を設ける。20はラック14,16の支柱である。
【0013】
ステーション18は物品8の検査用のステーションで、例えば図示しない検査装置によりステーション18に対し位置決めされた物品を、光学的にあるいは電気的に検査し、これ以外にエージングその他の試験を行っても良い。物品8の検査以外に、ステーション18でプレス、その他の加工を行っても良く、また電池等の物品8をステーション18の電源に接続してエージングしてもよい。さらにステーションは、ラック14,16以外に、搬送車4の走行経路に沿って配置されたコンベヤ等に設けても良い。
【0014】
ステーション18には発光端22と受光端23とを組み合わせた光センサが設けられ、例えば物品8の奥行き方向先端の位置を検出する。光センサに代えてリミットスイッチなどの接触型のセンサを設けても良く、物品8の奥行き方向先端ではなく後端を検出しても良い。そして発光端22と受光端23の位置を物品8を移載する位置に合わせて変更できるように、発光端22及び受光端23を取付部材24に位置調整自在に取り付ける。物品8の奥行き方向位置は発光端22と受光端23で監視し、搬送車4の走行方向位置は例えばガイド25によりガイドする。
【0015】
図2に、ラック14,16に対する搬送車4の配置を示し、ここではラック14,16の高さ方向の各段毎に搬送車4を配置するが、このような搬送車4に代えてスタッカークレーンもしくは無人搬送車などを搬送車としてもよい。図2に鎖線で示すように、可動片33の底部は棚板17よりも高い位置にあり、棚板17と可動片33の隙間に前記のガイド25を設けると共に、光センサの光軸26を配置する。
【0016】
図3に搬送車4の構造を示し、30は走行モータ、34は位置調整モータで、アーム11の走行方向位置を調整し、36は移載モータで、アーム10,11を出退させる。そしてモータ30,34,36はいずれもサーボモータである。アーム10,11はそれぞれ固定片31と中間片32及び可動片33とから成る。固定片31は搬送車4の車体に固定で、中間片32は固定片31に対してスライドし、可動片33は中間片32に対してスライドし、中間片32の2倍のストロークで移動する。なお1個の移載モータ36でアーム10,11を出退させるが、移載モータをアーム10,11に対して別々に設けても良い。38は通信部で、地上コントローラに接続した通信部と光通信し、40はレーザ距離計で搬送車4の走行方向位置を求める。なおレーザ距離計40を設けず、走行モータ30に設けたエンコーダなどで位置を求めても良い。
【0017】
図4に搬送車システム2の制御系を示し、41〜43はそれぞれサーボアンプで、Encは各モータ30,36,34の回転数を検出するエンコーダである。38は光通信器などの通信部で、LAN48に接続された光通信器などの通信部49と通信する。また前記の受光端23に通信部50が接続され、LAN48を介して地上コントローラ44に接続されている。45は通信装置,メモリ,表示器などの周辺装置で、46は地上側コントローラ44のCPUである。
【0018】
図5に移載時のアーム10,11の速度パターンを示す。コントローラ44は搬送車4のサーボアンプ41に電流指令あるいはトルク指令を送信して走行させ、レーザ距離計40の信号により、ステーション18に面した所定の位置等に停止させる。またアーム10,11の間隔を位置調整モータ34により制御し、ステーション18への移載開始前に左右の10,11で物品を挟持する。
【0019】
物品の移載では、コントローラ44はサーボアンプ42に対して移載モータ36への電流値あるいはトルク値を指令し、サーボアンプ42はこれに従って移載モータ36を動作させる。移載では最初にアーム10,11を図5の第1の速度まで加速し、移載目標位置よりも手前の位置まで達したことをエンコーダなどで検出すると、サーボアンプ42からその旨をコントローラ44へ報告する。これに応じてコントローラ44は第2の速度へ減速するようにサーボアンプ42へ指令し、位置L1で第2の速度まで減速を完了する。次いで第2の速度でアーム10,11を進出させ、光センサからの信号により、コントローラ44はサーボアンプ42に対し停止を指令する。ここで位置L2で停止を指令すると位置L3で停止し、低速の第2の速度で進出中なので、位置L2と位置L3との誤差は小さい。従って正確に所定の位置で停止させることができる。次いでフックを回動させて物品との係合を解除し、アーム10,11を搬送車4上へ後退させる。
【0020】
ステーション18以外の光センサを備えていない間口へ物品を移載する場合、移載モータ36の回転数をエンコーダでカウントして、移載位置を決定する。またラック14,16から物品を搬送車4へ引き込む場合、フック12を物品と係合しない向きに回動させ、アーム10,11間の間隔を開いた状態で、可動片33を進出させる。次いでアーム11をアーム10側へ接近させると共に、フック12を物品と係合するように回動させ、可動片33を後退させる。
【0021】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 物品8をステーション18の所定の位置に移載することができる。
(2) 物品8の移載位置は、発光端22と受光端23の位置を変更することにより調整自在である。
(3) 物品8の走行方向位置はガイド25で規制できる。
(4) 移載する位置よりも手前で低速の第2の速度へとアームを減速するので、正確に移載位置に移載でき、しかもサイクルタイムが長くならない。
(5) 光センサからLAN48を介してコントローラ44へ信号を送り、コントローラ44によりサーボアンプ42を制御することにより、高速でアーム10,11を停止させることができる。

【符号の説明】
【0022】
2 搬送車システム
4 搬送車
5 レール
6 車輪
8 物品
10,11 アーム
12 フック
14,16 ラック
17 棚板
18 ステーション
20 支柱
22 発光端
23 受光端
24 取付部材
25 ガイド
26 光軸
30 走行モータ
31 固定片
32 中間片
33 可動片
34 位置調整モータ
36 移載モータ
38 通信部
40 レーザ距離計
41〜43 サーボアンプ
44 地上コントローラ
45 周辺装置
46 CPU
48 LAN
49,50 通信部
Enc エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車によりステーションへ物品を荷下ろしするようにした搬送車システムであって、
前記搬送車は出退自在なアームにより物品を移載する移載装置を備え、
前記ステーションは物品がステーションの奥行き方向に沿って所定の位置まで前進したことを検出するセンサを備え、
さらに前記センサの信号により、搬送車の移載装置の進出を停止させるコントローラが設けられていることを特徴とする搬送車システム。
【請求項2】
前記コントローラは搬送車の移載装置を制御し、移載装置を第1の速度で前記所定の位置よりも手前まで進出させた後に、第1の速度よりも低速の第2の速度でさらに進出させ、第2の速度で進出中に前記センサの信号を受信すると移載装置の進出を停止させるように構成されていることを特徴とする、請求項1の搬送車システム。
【請求項3】
搬送車は前記移載装置のサーボアンプとサーボモータとを備え、
前記コントローラは地上側に設けられて、ネットワークを介して搬送車及び前記センサと接続され、かつ前記サーボアンプへネットワークを介して指令するように構成されていることを特徴とする、請求項1または2の搬送車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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