説明

搭載艇揚降装置

【課題】艇に固定された艇固定枠と係合するアタッチメントを取りはずすことなく装置の格納に要する空間を縮小することの可能な搭載艇揚降装置を提供する。
【解決手段】甲板DBに設置されて搭載艇と係合する吊索23を繰り込むクレーン体11と、搭載艇に固定された艇固定枠にクレーン体11の先端を係合するアタッチメント30とを備える搭載艇揚降装置であって、アタッチメント30の基端は、該アタッチメント30の回転軸25Aを中心とする回転が可能にクレーン体11の先端に支持され、アタッチメント30には、該アタッチメント30の基端から先端へ吊索23が挿通され、アタッチメント30の先端は、挿通された吊索23が巻き回される格納用シーブ40を備え、クレーン体11は、格納用シーブ40に巻き回された吊索23を繰り込む繰り込み部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巡視船、艦船等の各種船舶に搭載される作業用、救命用等の艇を揚げ降ろしする装置である搭載艇揚降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載のように、巡視船や艦船等の各種船舶には、作業や救命等に用いられる艇が搭載されている。また船舶には、こうした艇を揚げ降ろしするための搭載艇揚降装置が備えられている。上記文献に記載の搭載艇揚降装置を、図6を参照して以下に説明する。
【0003】
船舶の甲板DBに固定される固定ポスト101には、固定ポスト101に対して旋回可能に旋回ポスト102が連結されるとともに、旋回ポスト102の先端部には、該旋回ポスト102に対して上下方向への傾動が可能なようにアーム103が連結されている。アーム103を構成する各ブームのうち、旋回ポスト102に対して回転可能に連結されたインナーブーム103Aの先端部には、インナーブーム103Aに対して回転可能にアウターブーム103Bが連結されている。また、アウターブーム103Bの先端部には、アーム103を搭載艇に係合するアタッチメント104がそれの自重で回転可能に連結されている。このような構成によれば、旋回ポスト102による旋回と、アーム103による上下方向への傾動とによって、アタッチメント104の位置が定められる。
【0004】
また、アウターブーム103Bの基端部には、ワイヤーロープ等の吊索105の繰り出し及び繰り込みを行うウインチ106が装着される一方、アウターブーム103Bの先端部には、吊索105が掛け渡されるシーブ107が設けられている。そして、ウインチ106から繰り出される吊索105は、該吊索105の先端にフック108が取り付けられた状態で、これらシーブ107とアタッチメント104の内部とを介して吊り下げられる。こうした搭載艇揚降装置では、吊索105の先端に取り付けられたフック108とアタッチメント104とが搭載艇に係合された状態で、搭載艇の揚げ降ろしが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−112622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、搭載艇の揚げ降ろしが行われないときには、上記搭載艇揚降装置は、船舶の甲板DB上における所定の位置に格納されている。このとき、アタッチメント104がアウターブーム103Bに連結されたままであると、アタッチメントがそれの自重によって回転するため、アタッチメント104と搭載艇揚降装置の他の部位、例えばアーム103との衝突を避ける上で、アーム103を伸ばした状態とする必要がある。その結果、アームが伸びている分だけ格納に必要な空間が大きくなることに加え、アーム103を支持するための支持台と、アタッチメント104の載置空間とが必要になる。
【0007】
一方、上述のように、アーム103は、複数のブームが一方向に沿って順に回転可能に連結された構成であって、上記ブーム同士の連結部分においてアーム103を折りたたむことができる。これに対して、アタッチメント104とは、艇に固定された艇固定枠と係合する構成であって、アーム103が延びる方向とは異なる方向にも広がる構造体である。そのため、アタッチメント104がアウターブーム103Bから取り外されれば、上記
アーム103を折りたたむことができる。これにより、搭載艇揚降装置の格納に必要とされる空間を小さくすることができるようにはなる。しかしながら、搭載艇揚降装置を格納するたびにアタッチメント104を取り外す手間がかかることに加え、搭載艇揚降装置の使用時には、アタッチメント104の取り付け時間がかかることから、緊急を要する事態への対応が困難になってしまう。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、艇に固定された艇固定枠と係合するアタッチメントを取りはずすことなく装置の格納に要する空間を縮小することの可能な搭載艇揚降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する請求項1に記載の発明は、船舶の甲板に設置されて搭載艇と係合する吊索を繰り込むクレーン体と、前記搭載艇に固定された艇固定枠に前記クレーン体の先端を係合するアタッチメントとを備える搭載艇揚降装置であって、前記アタッチメントの基端は、前記クレーン体の先端に回転可能に支持され、前記アタッチメントには、該アタッチメントの基端から先端へ前記吊索が挿通され、前記アタッチメントの先端は、前記挿通された前記吊索が巻き回されるシーブを備え、前記クレーン体は、前記シーブに巻き回された前記吊索を繰り込む繰り込み部を備えることをその要旨とする。
【0010】
上記構成では、繰り込み部によってシーブを介した吊索が引っ張られることで、アタッチメントの動きが制約されるようになる。そのため、搭載艇揚降装置の格納時にクレーン体を動かしたり、船舶からの振動が該装置に伝わったりしても、アタッチメントとクレーン体との衝突を抑えることができることから、アタッチメントをクレーン体から外す必要がなくなる。加えて、アタッチメントの動きを抑えるための受け台や、アタッチメントの荷重がかかったクレーン体を支えるためのレストを甲板上に設置する必要もなくなるため、搭載艇揚降装置の格納に必要な空間を縮小することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記クレーン体が、前記搭載艇と係合する前記吊索を繰り込むウインチを有し、前記ウインチが、前記シーブに巻き回された前記吊索を繰り込む前記繰り込み部であることをその要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、搭載艇を揚げ降ろしする際に、該搭載艇に係合される吊索を繰り込むウインチが、搭載艇揚降装置の格納時にシーブを介した吊索を繰り込む繰り込み部を兼ねる。そのため、搭載艇揚降装置をより簡易な構成としつつ、該装置の格納に要する空間を縮小することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記アタッチメントは、該アタッチメントの回転軸と平行な方向で伸縮することをその要旨とする。
上記構成によれば、アタッチメントは、回転軸と平行な方向においてその寸法を伸縮することができる。そのため、例えば、繰り込み部によるシーブを介した吊索の繰り込み時に、言い換えれば、搭載艇揚降装置の格納時に、上記回転軸と平行な方向の寸法を縮小することができる。このようにアタッチメントの寸法を縮小することで、搭載艇揚降装置全体としての体格を縮小することができることから、該装置の格納に要する空間を縮小することができる。加えて、アタッチメントにおける回転軸と平行な方向で寸法を縮小することから、搭載艇揚降装置の格納時に、クレーン体を折りたたむ等によってアタッチメントがその軸を中心に回転したとしても、クレーン体に衝突しにくくなる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記繰り込み部が、前記シーブによって案内された前記吊索の先端を固定する吊索固定部を備えていることをその要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、繰り込み部によって繰り込まれる吊索の基端と、同吊索の先端とが略一致することになる。そのため、吊索の先端が吊索固定部に固定された状態で、該吊索の繰り込みが行われると、アタッチメントは、その基端がクレーン体に連結されつつ、その先端がクレーン体に設けられた繰り込み部に近づく。そのため、アタッチメントの全体がクレーン体に近づくことになる。それゆえに、搭載艇揚降装置の格納に必要とされる空間をより縮小することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記クレーン体が、前記シーブに巻き回された前記吊索の繰り込みによって該クレーン体側に引き寄せられた前記アタッチメントに接続されて、該アタッチメントを固定するアタッチメント固定部を備えていることをその要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、クレーン体の先端に連結されたアタッチメントは、シーブに巻き回された吊索の繰り込みによってクレーン体側に引き寄せられた状態で、該クレーン体に設けられた固定部に接続される。そのため、搭載艇揚降装置の設置された船舶の揺れが、該装置に伝わったとしても、クレーン体に対するアタッチメントの位置がより安定に維持されるようになる。それゆえに、搭載艇揚降装置の格納時におけるクレーン体とアタッチメントとの衝突が抑えられるようになる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明において、前記アタッチメントの先端は、前記シーブを着脱可能な取り付け部を備えていることを要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、搭載艇揚降装置の格納時にシーブを取り付けて、搭載艇揚降装置が搭載艇を揚げ降ろしする際には、該シーブを取り外すことが可能である。そのため、搭載艇揚降装置が搭載艇を揚げ降ろしする際には、上述したシーブと吊索とが干渉することを確実に抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、艇に固定された艇固定枠と係合するアタッチメントを取りはずすことなく装置の格納に要する空間を縮小することの可能な搭載艇揚降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態における搭載艇揚降装置の側面構造を示す側面図。
【図2】(a)アタッチメントの正面構造を示す正面図、(b)アタッチメントの側面構造を示す側面図、(c)揺動支持フレームが短縮されたアタッチメントの側面構造を示す側面図。
【図3】(a)格納用シーブと格納用フックとが吊索によって連結された状態の搭載艇揚降装置の側面構造を示す側面図、(b)アタッチメントが折り畳まれた状態の搭載艇揚降装置の側面構造を示す側面図。
【図4】アウターブームが折り畳まれた状態の搭載艇揚降装置の側面構造を示す側面図。
【図5】(a)インナーブームが折り畳まれた状態の搭載艇揚降装置の側面構造を示す側面図、(b)インナーブームが折り畳まれた状態の搭載艇揚降装置の側面構造を示す側面図。
【図6】従来例の搭載艇揚降装置の側面構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の搭載艇揚降装置を具体化した一実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。図1に示されるように、搭載艇揚降装置を構成するクレーン体11の固定ポストDPには、旋回ポスト12が旋回可能に連結されている。この旋回ポスト12の先端部には、インナーブーム13の基端部が回転可能に連結され、また、インナーブーム13の基端部と旋回ポスト12の基端部との間には、インナーシリンダ14が連結されている。そして、インナーシリンダ14の伸縮がインナーブーム13の回転に変換されるように、これら旋回ポスト12、インナーブーム13、及びインナーシリンダ14からなる回転リンクが構成されている。
【0023】
インナーブーム13の先端部には、アウターブーム15の基端部がこれもまた回転可能に連結され、また、アウターブーム15の基端部とインナーブーム13の基端部との間には、アウターシリンダ16が連結されている。これにより、アウターシリンダ16の伸縮がアウターブーム15の回転に変換されるように、これらインナーブーム13、アウターブーム15、及びアウターシリンダ16からなる回転リンクが構成されている。
【0024】
アウターブーム15の内部には、インナーブーム13に対して伸縮可能な伸縮ブーム17が搭載され、また、伸縮ブーム17の先端部とアウターブーム15の基端部との間には、アウターブーム15の長手方向に沿って伸縮する伸縮シリンダ18が連結されている。そして、伸縮シリンダ18がアウターブーム15の長手方向に伸縮すると、アウターブーム15の長手方向に沿って伸縮ブーム17が伸縮する。
【0025】
アウターブーム15の基端部には、ドラム21Dに吊索23を繰り込む繰り込み部としてのウインチ21が装着されている。ドラム21Dの周囲には、先端に吊索フック22の取り付けられたワイヤーロープやチェーン等の吊索23が巻き付けられている。こうしたウインチ21の下端部には、上記吊索フック22が固定される吊索固定部としての格納用フック21Bが固設されている。
【0026】
本実施形態では、搭載艇を揚げ降ろしする際に、該搭載艇に係合される吊索23を繰り込むウインチ21が、搭載艇揚降装置の格納時に格納用シーブ40を介した吊索23を繰り込む繰り込み部を兼ねる。そのため、搭載艇揚降装置をより簡易な構成としつつ、該装置の格納に要する空間を縮小することができる。
【0027】
なお、上記ウインチ21には、アウターブーム15の先端部と搭載艇との間の吊索23の張力を調整する張力調整部21Cが搭載されている。この張力調整部21Cは、吊索23に過剰な張力が加わらないようにする。例えば、ウインチ21によって吊索23が繰り入れられるとき、吊索23に所定値以上の張力が加わった場合に、張力調整部21Cは、図示しないレバーやスイッチ等の操作により作動する。そして、張力調整部21Cは、一時的にドラム21Dの回転を停止させたり、吊索23が引き出される方向にドラム21Dを回転させたりする。
【0028】
アウターブーム15の先端部には、一つのアームシーブ25が回転可能に支持されている。このアームシーブ25の周囲には、ドラム21Dから引き出された吊索23が巻き付けられている。また、アウターブーム15の先端部には、アームシーブ25を支える回転軸25Aに対してアタッチメント30が回転可能に吊り下げられている。
【0029】
アウターブーム15のうちでウインチ21の先端側には、アタッチメント固定部としてのターンバックル15Fが回動可能に連結されている。このターンバックル15Fは、アタッチメント30と係合してアタッチメント30の姿勢をアウターブーム15に対して固定する。
【0030】
ターンバックル15Fは、格納用シーブ40に巻き回された吊索23の繰り込みによってクレーン体11のアームに引き寄せられたアタッチメント30を、この引き寄せられた状態でアウターブーム15に固定する。そのため、搭載艇揚降装置の設置された船舶の揺れが、該装置に伝わったとしても、クレーン体11に対するアタッチメント30の位置がより安定に維持されるようになる。それゆえに、搭載艇揚降装置の格納時におけるクレーン体11とアタッチメント30との衝突が抑えられるようになる。
【0031】
図2(a)に示されるように、アタッチメント30の上端部である連結フレーム31は、アームシーブ25の回転軸25Aに対して回転可能に支持されている。そして、伸縮ブーム17の先端が固定ポストDPに対して傾動するとき、連結フレーム31は、図2(a)の矢印で示されるように、アームシーブ25の回転軸25Aを中心にしてアタッチメント30の自重により回転する。すなわち、アタッチメント30の先端が常に鉛直方向に向かうように、アタッチメント30は回転する。なお、連結フレーム31の一側面には、アタッチメント30の自重による回転速度を抑制するブレーキモータ31Mが固定されている。
【0032】
図2(b)に示されるように、連結フレーム31の下側には、上下方向に伸縮する連結シャフト32が揺動軸A3を介して揺動可能に連結されている。連結フレーム31と連結シャフト32とには、互いに対向するピン挿通孔が貫通形成されるとともに、該ピン挿通孔には、位置決めピンP1が挿通されている。そして、位置決めピンP1が取り外されると、連結シャフト32は、図2(b)の矢印で示されるように、該連結シャフト32が受ける荷重に従って伸張するとともに、揺動軸A3を中心にして揺動する。これに対して、上述した位置決めピンP1が連結フレーム31と連結シャフト32とに取り付けられると、上述した連結シャフト32の伸張及び揺動が規制される。
【0033】
連結シャフト32の内部には、上下方向に延びる吊索通路が貫通するとともに、同連結シャフト32の下端部には、これもまた上下方向に延びる吊索通路を有した多段円筒状の係合ブロック33が固着されている。この係合ブロック33の下半部には、艇に固設された艇固定枠と係合する艇係合部33Bが、係合ブロック33の上半部に対して回転可能に連結されている。また、係合ブロック33の上半部には、上述した艇係合部33Bを回転させるための整合モータ33Mが搭載されている。
【0034】
連結フレーム31を構成する側面のうち、伸縮ブーム17が延びる方向と直交する方向には、同方向に伸縮可能な一対の揺動支持フレーム34が連結されている。一対の揺動支持フレーム34の各々では、連結フレーム31に連結された筒状の基端フレーム34B内に、筒状に形成された先端フレーム34Tが挿入されている。基端フレーム34Bの外周面には、それを貫通する位置決め孔が形成される一方、先端フレーム34Tの外周には、それを貫通する複数の位置決め孔が長手方向に沿って形成されている。そして、これら基端フレーム34Bの位置決め孔と先端フレーム34Tにおける一つの位置決め孔とに共通する位置決めピン34Pが挿通されることによって、基端フレーム34Bに対する先端フレーム34Tの位置が固定される。
【0035】
上記一対の揺動支持フレーム34の各々の先端部には、伸縮可能なリンクである一対の保持シリンダ35の基端部が回転可能に連結されて、また、これら一対の保持シリンダ35の各々の先端部には、上述した係合ブロック33が回転可能に連結されている。この係合ブロック33の内部には、上下方向に延びる吊索通路が貫通するとともに、該吊索通路内を通る吊索23が挟まれるように、一対の第1ローラ33Fと一対の第2ローラ33Sとが並設されている。一対の第1ローラ33Fと一対の第2ローラ33Sとは、吊索通路の周方向にて、互いに90度異なる方向に配置されている。そして、吊索通路内を通る吊索23は、これら一対の第1ローラ33Fと一対の第2ローラ33Sとに案内されて鉛直
線上に配置される。
【0036】
また、係合ブロック33の下端部には、格納用シーブ40が回転可能に連結されている。この格納用シーブ40は、係合ブロック33の吊索通路から繰り出される吊索23を巻装することの可能な位置に連結されている。そして、アタッチメント30が自重によって吊り下げられると、格納用シーブ40は、吊索通路から繰り出される吊索23を鉛直方向へ案内する。また、吊索フック22が格納用フック21Bに連結されると、格納用シーブ40は、吊索フック22とウインチ21との間の吊索23をドラム21Dへ繰り込む。
【0037】
ウインチ21が格納用シーブ40を介した吊索23を繰り込むことによって、アウターブーム15に対するアタッチメント30の姿勢が制約されるようになる。そのため、搭載艇揚降装置の格納時にクレーン体11を動かしたり、船舶からの振動が該装置に伝わったりしても、アタッチメント30と各ブーム13,15との衝突を抑えることができる。それゆえに、アタッチメント30をクレーン体11から外すことなく、クレーン体11のアームを折り畳むことが可能となる。すなわち、搭載艇に固定された艇固定枠と係合するアタッチメント30を取り外すことなく装置の格納に要する空間を縮小することができる。
【0038】
また、自重によって揺動するアタッチメント30の動きを抑えるための受け台や、アタッチメント30の荷重がかかったクレーン体11を支えるためのレストを甲板DB上に設置する必要もなくなるため、搭載艇揚降装置の格納に必要な空間を縮小することができる。
【0039】
このような構成からなるアタッチメント30によれば、揺動支持フレーム34において位置決めピン34Pが取り外されると、先端フレーム34Tが基端フレーム34Bに対して伸縮可能になる。この状態から、先端フレーム34Tが基端フレーム34B内へ収容されるように、先端フレーム34Tと基端フレーム34Bとが再び固定されると、図2(c)に示されるように、揺動支持フレーム34そのものの占有する空間が縮小されることとなる。また、図2(c)に示される状態から、先端フレーム34Tが基端フレーム34Bから突出するように、先端フレーム34Tと基端フレーム34Bとが再び固定されると、図2(b)に示されるように、係合ブロック33に加わる荷重が一対の揺動支持フレーム34の各々へ分散されることとなる。
【0040】
なお、係合ブロック33の受ける荷重が連結シャフト32に作用すると、連結シャフト32が連結フレーム31に対して揺動又は伸縮するとともに、連結フレーム31がアウターブーム15に対して揺動する。そして、係合ブロック33の位置に応じて、連結シャフト32の延びる方向や連結シャフト32の長さ、さらには一対の保持シリンダ35の各々が伸縮する。
【0041】
上記アタッチメント30によれば、例えば、ウインチ21による格納用シーブ40を介した吊索23の繰り込み時に、言い換えれば、搭載艇揚降装置の格納時に、上記回転軸25Aと平行な方向の寸法を縮小することができる。このようにアタッチメント30の寸法を縮小することで、搭載艇揚降装置全体としての体格を縮小することができることから、該装置の格納に要する空間を縮小することができる。加えて、アタッチメントにおける回転軸と平行な方向で寸法を縮小することから、搭載艇揚降装置の格納時に、クレーン体を折りたたむ等によってアタッチメントがその軸を中心に回転したとしても、クレーン体に衝突しにくくなる。
【0042】
次に、上述した構成からなる搭載艇揚降装置が搭載艇を甲板DB上に揚げる動作、すなわち、揚収動作について以下に説明する。まず、クレーン体11のアームが、旋回、傾動、及び伸張されて、これにより、搭載艇の位置である揚収位置上にアームの先端が配置さ
れる。次いで、アームの先端から繰り出される吊索23が、搭載艇の艇固定枠に掛けられた後に、その吊索23が、ウインチ21によって巻き取られる。この際、吊索23が所定の張力でドラム21Dに巻き取られるため、吊索23の掛けられた搭載艇は、水面上の波に追従しながらアタッチメント30の直下まで移動する。続いて、アームの先端から吊索23がさらに巻き取られると、該アームの先端が搭載艇に接近させられるとともに、該搭載艇の艇固定枠とアタッチメントとが接近した位置でアームの姿勢が保持される。そして、水面上の波によって搭載艇が最もアームに接近するときに、アームの先端から吊索23が巻き取られて、これにより、艇固定枠内にアタッチメント30が挿入される。すなわち、艇固定枠とアタッチメント30とが係合する。
【0043】
続いて、吊索23がさらに巻き取られると、一対の保持シリンダ35及び連結シャフト32が収縮する。このとき、搭載艇が波を受けて上下に揺れているため、アームが該搭載艇を水面に押え付けることになるものの、保持シリンダが収縮することによって、この押え付けがやわらげられる。そして、搭載艇の艇固定枠が係合ブロック33に圧接された状態でアームが上昇することにより、搭載艇が水面から完全に引き上げられた状態、すなわち、搭載艇の水切りが完了した状態となる。そして、アームが旋回、傾動、及び収縮することによって、搭載艇が甲板DB上の保管台に載せられて、これにより、搭載艇の揚収作業が完了する。なお、搭載艇を甲板DB上から水面へ降ろす動作、すなわち降下動作では、艇固定枠とアタッチメント30とが係合した状態でアームの先端が水面に近づけられる。そして、吊索23が繰り出されることによって、搭載艇が水面に配置される。
【0044】
次に、上述した構成からなる搭載艇揚降装置が甲板DB上に格納される動作、すなわち、格納動作について、図3(a)(b)、図4、及び図5を参照して説明する。まず、図3(a)に示されるように、上述した位置決めピンP1が、連結フレーム31と連結シャフト32とに挿通される。これにより、連結シャフト32においては、連結フレーム31に対する揺動及び伸縮が規制されて、アウターブーム15に対する回転のみが許容されることとなる。また、正面視にてアウターブーム15に近い揺動支持フレーム34では、位置決めピン34Pが一旦取り外される。そして、該揺動支持フレーム34の先端フレーム34Tが基端フレーム34B内へ収容されるように、先端フレーム34Tと基端フレーム34Bとが再び位置決めピン34Pによって固定される。これにより、アタッチメント30の周囲のうち、正面視にてアウターブーム15に近い側では、揺動支持フレーム34そのものの占有する空間が縮小されることとなる。このようにしてアタッチメント30の姿勢が固定されると、アタッチメント30から繰り出される吊索23の吊索フック22が、格納用シーブ40を介して格納用フック21Bに掛けられる。
【0045】
次いで、上述した吊索23をウインチ21が繰り込むと、格納用シーブ40がアウターブーム15に近づくように、回転軸25Aを回転中心にしてアタッチメント30が回転する。その結果、図3(b)に示されるように、自重に従って垂れ下がるようになっていたアタッチメント30は、アウターブーム15の姿勢にかかわらず、アウターブーム15に向けて折り曲げられることとなる。吊索23の繰り込み時には、上記格納用フック21Bに吊索フック22が掛けられるため、ウインチ21によって繰り込まれる吊索23の基端と同吊索23の先端とが、略一致することになる。そのため、吊索フック22が格納用フック21Bに掛けられた状態で、該吊索23の繰り込みが行われると、アタッチメント30は、その基端がクレーン体11に連結されつつ、その先端である格納用シーブ40がウインチ21に近づく。そのため、アタッチメント30の全体がクレーン体11に近づくことになる。それゆえに、搭載艇揚降装置の格納に必要とされる空間をより縮小することができる。
そして、アウターブーム15に向けて折り曲げられたアタッチメント30がターンバックル15Fによってアウターブーム15に連結され、これにより、アタッチメント30の姿勢がアウターブーム15に対して固定される。
【0046】
続いて、インナーブーム13の長手方向が鉛直方向となるようにインナーブーム13が回転するとともに、アウターブーム15がインナーブーム13に近づくように、アウターブーム15がインナーブーム13に対して折曲げられる。これにより、図4に示されるように、インナーブーム13、アウターブーム15、及びアタッチメント30が、旋回ポスト12の鉛直方向に並ぶように配置される。この状態から、インナーブーム13が旋回ポスト12に対してさらに近づくように、インナーブーム13が旋回ポスト12に対して折り曲げられる。これにより、図5(a)に示されるように、インナーブーム13、アウターブーム15、及びアタッチメント30が、側面視にて重なるように配置される。
【0047】
なお、このようにして各ブーム13,15が折り畳まれる際、正面視にてアウターブーム15に近い揺動支持フレーム34では、先端フレーム34Tが基端フレーム34B内へ収容されている。それゆえに、図5(b)に示されるように、アタッチメント30の揺動支持フレーム34とアームを構成する各ブーム13,15とが干渉することなく、搭載艇揚降装置がコンパクトに格納される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態における搭載艇揚降装置によれば、以下列記する効果が得られる。
(1)繰り込み部としてのウインチ21が格納用シーブ40を介した吊索23を繰り込むことによって、アウターブーム15に対するアタッチメント30の姿勢が制約されるようになる。そのため、搭載艇揚降装置の格納時にクレーン体11を動かしたり、船舶からの振動が該装置に伝わったりしても、アタッチメント30と各ブーム13,15との衝突を抑えることができる。それゆえに、アタッチメント30をクレーン体11から外すことなく、クレーン体11のアームを折り畳むことが可能となる。すなわち、搭載艇に固定された艇固定枠と係合するアタッチメント30を取り外すことなく装置の格納に要する空間を縮小することができる。
【0049】
(2)自重によって揺動するアタッチメント30の動きを抑えるための受け台や、アタッチメント30の荷重がかかったクレーン体11を支えるためのレストを甲板DB上に設置する必要もなくなるため、搭載艇揚降装置の格納に必要な空間を縮小することができる。
【0050】
(3)搭載艇を揚げ降ろしする際に、該搭載艇に係合される吊索23を繰り込むウインチ21が、搭載艇揚降装置の格納時に格納用シーブ40を介した吊索23を繰り込む繰り込み部を兼ねる。そのため、搭載艇揚降装置をより簡易な構成としつつ、該装置の格納に要する空間を縮小することができる。
【0051】
(4)正面視にてアウターブーム15に近い揺動支持フレーム34では、先端フレーム34Tが基端フレーム34B内へ収容される。これにより、アタッチメント30の寸法を縮小することで、搭載艇揚降装置全体としての体格を縮小することができることから、該装置の格納に要する空間を縮小することができる。加えて、アタッチメント30における上記寸法を縮小することから、搭載艇揚降装置の格納時に、クレーン体11を折りたたむ等によってアタッチメント30がその軸を中心に回転したとしても、同アタッチメント30は、クレーン体11に衝突しにくくなる。
【0052】
(5)ウインチ21の下端部に設けられた格納用フック21Bに吊索フック22が掛けられるため、ウインチ21によって繰り込まれる吊索23の基端と同吊索23の先端とが、略一致することになる。そのため、吊索フック22が格納用フック21Bに掛けられた状態で、該吊索23の繰り込みが行われると、アタッチメント30は、その基端がクレーン体11に連結されつつ、その先端である格納用シーブ40がウインチ21に近づく。そ
のため、アタッチメント30の全体がクレーン体11に近づくことになる。それゆえに、搭載艇揚降装置の格納に必要とされる空間をより縮小することができる。
【0053】
(6)アタッチメント30は、格納用シーブ40に巻き回された吊索23の繰り込みによってクレーン体11のアームに引き寄せられるとともに、その引き寄せられた状態でターンバックル15Fによりアームに固定される。そのため、搭載艇揚降装置の設置された船舶の揺れが、該装置に伝わったとしても、クレーン体11に対するアタッチメント30の位置がより安定に維持されるようになる。それゆえに、搭載艇揚降装置の格納時におけるクレーン体11とアタッチメント30との衝突が抑えられるようになる。
【0054】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・係合ブロック33に格納用シーブ40の着脱可能な取り付け部が形成されて、搭載艇揚降装置が格納される都度、係合ブロック33に格納用シーブ40が取り付けられる構成であってもよい。このような構成であれば、搭載艇が揚げられたり降ろされたりする際に、係合ブロック33から繰り出される吊索23と格納用シーブ40との干渉を抑えることが可能である。
【0055】
・上記ターンバックル15Fとは異なる他の固定部によって、搭載艇揚降装置の格納時に用いるアタッチメント固定部を具現化するようにしてもよい。
・格納用フック21Bの形成される位置は、上記ウインチ21の下端部に限らず、アタッチメント30の先端がアームに近づくことの可能な部位であればよい。
【0056】
・アタッチメント30が有する揺動支持フレーム34を、伸縮可能なシャフトとして具現化するようにしてもよい。これによっても、アタッチメント30の上記回転軸25Aと平行な方向における寸法が伸縮可能になる。
【0057】
・揺動支持フレーム34を固定フレームとするとともに、アタッチメント30そのものが幅方向にスライドするようにしてもよい。
・上記格納用シーブ40を介した吊索23の繰り込みにも上記ウインチ21を用いるようにした。これに限らず、該ウインチ21とは異なる繰り込み部を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
A3…揺動軸、DB…甲板、DP,101…固定ポスト、P1…位置決めピン、11…クレーン体、12,102…旋回ポスト、13,103A…インナーブーム、14…インナーシリンダ、15,103B…アウターブーム、15F…ターンバックル、16…アウターシリンダ、17…伸縮ブーム、18…伸縮シリンダ、21,106…ウインチ、21B…格納用フック、21C…張力調整部、21D…ドラム、22…吊索フック、23,105…吊索、25…アームシーブ、25A…回転軸、30,104…アタッチメント、31…連結フレーム、31M…ブレーキモータ、32…連結シャフト、33…係合ブロック、33B…艇係合部、33M…整合モータ、33F…第1ローラ、33S…第2ローラ、34…揺動支持フレーム、34B…基端フレーム、34P…位置決めピン、34T…先端フレーム、35…保持シリンダ、40…格納用シーブ、101…固定ポスト、103…アーム、107…シーブ、108…フック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の甲板に設置されて搭載艇と係合する吊索を繰り込むクレーン体と、
前記搭載艇に固定された艇固定枠に前記クレーン体の先端を係合するアタッチメントと
を備える搭載艇揚降装置であって、
前記アタッチメントの基端は、前記クレーン体の先端に回転可能に支持され、
前記アタッチメントには、該アタッチメントの基端から先端へ前記吊索が挿通され、
前記アタッチメントの先端は、前記挿通された前記吊索が巻き回されるシーブを備え、
前記クレーン体は、前記シーブに巻き回された前記吊索を繰り込む繰り込み部を備えることを特徴とする搭載艇揚降装置。
【請求項2】
前記クレーン体は、前記搭載艇と係合する前記吊索を繰り込むウインチを有し、
前記ウインチが、前記シーブに巻き回された前記吊索を繰り込む前記繰り込み部である
請求項1に記載の搭載艇揚降装置。
【請求項3】
前記アタッチメントは、該アタッチメントの回転軸と平行な方向で伸縮する
請求項1又は2に記載の搭載艇揚降装置。
【請求項4】
前記繰り込み部が、前記シーブによって案内された前記吊索の先端を固定する吊索固定部を備えている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の搭載艇揚降装置。
【請求項5】
前記クレーン体が、前記シーブに巻き回された前記吊索の繰り込みによって該クレーン体側に引き寄せられた前記アタッチメントに接続されて、該アタッチメントを固定するアタッチメント固定部を備えている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の搭載艇揚降装置。
【請求項6】
前記アタッチメントの先端は、前記シーブを着脱可能な取り付け部を備えている
請求項1〜5のいずれか一項に記載の搭載艇揚降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−91876(P2012−91876A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238018(P2010−238018)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(593206986)株式会社関ヶ原製作所 (18)
【Fターム(参考)】