説明

携帯型ランドマーク情報表示装置

【課題】簡素な構成で安価な携帯型ランドマーク情報表示装置を提供する
【解決手段】特定の景観観察地点の周囲にあるランドマークの情報を表示する携帯型ランドマーク情報表示装置1であって、方位センサ31と、ランドマーク71の方位情報73を含むランドマーク情報70に景観観察地点61を対応付けしたランドマーク表示情報60を記憶する記憶部34と、操作入力部5と、複数の角度範囲を個別に指示するための方向表示パターン部44とランドマーク情報表示部43aを備えた表示器4と、指定された特定の景観観察地点に対応付けされているランドマーク情報に含まれる方位情報に対応する角度範囲を指示する方向表示パターン部を表示する処理と、当該方向表示パターン部を表示している状態で所定の利用者入力があると、前記角度範囲に該当する方位情報を含むランドマーク情報を表示器に表示する処理とを実行する制御部20を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周囲のランドマークの名称を表示するためのランドマーク情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、登山をして、峰に立ったとき、遠くに見える山々の名称を知りたい、と思うことは珍しくない。街中においても、前に見える建物の名称がわかれば、道にも迷わないし、待ち合わせ場所を間違えるといった可能性もなくなる。以下の非特許文献1に記載されている車載型ナビゲーション装置は、GPSによって現在位置を特定するとともに、運転手の顔が向いている方向をデジタルカメラで検出して、その方向にあるランドマークの名称などを表示することができる。また、GPS信号の受信機能と方位センサとを搭載し、記憶しているランドマークの位置情報と現在の位置情報とに基づいて、前方にあるランドマークまでの距離や名称を、ランドマークの詳細な形状とともに表示することができる携帯電話機もある(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−329463号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】KDDI株式会社、”「G'zOne W62CA 特集:機能や使い勝手で観るG'zOne W62CA」”、[online]、[平成21年2月24日検索]、インターネット<URL:http://k-tai.auone.jp/model/gzone/special/index1.html#01>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載のナビゲーション装置や上記非特許文献に記載の携帯電話機は、GPS受信機能と多色表示が可能な高精細の表示装置を搭載し、ランドマークの位置や形状を正確かつ緻密に表示することができる。しかし、その反面、装置自体が高価なものとなる。また、小型・軽量化にも限界がある。また、小型化を達成したとしても、情報を表示するための領域が小さくくなり、GPSによって正確な相対位置情報を得られても、それに見合う十分な情報を表示することができなくなる。操作キーやボタンの数も限られ、複雑な操作が困難となる。
【0006】
本発明は、必要十分な機能を備えるとともに、簡素な構成で安価な携帯型ランドマーク情報表示装置を提供することを目的としている。なお、その他の目的については、以下の記載で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、特定の景観観察地点において、当該地点の周囲に存在するランドマークの情報を表示するための携帯型ランドマーク情報表示装置であって、
基準方位を検出する方位センサと、
ランドマークの方位情報を含むランドマーク情報に景観観察地点を対応付けしたランドマーク表示情報を記憶する記憶部と、
利用者入力を受け付ける操作入力部と、
複数の角度範囲を個別に指示するための方向表示パターン部とランドマーク情報の内容を表示するランドマーク情報表示部とを備えた表示器と、
ランドマーク方位表示処理とランドマーク情報表示処理とを実行する制御部と、
を備え、
前記ランドマーク方位表示処理は、利用者入力により特定の景観観察地点が指定されると、当該景観観察地点に対応付けされているランドマーク情報に含まれる方位情報に対応する角度範囲を指示するための前記方向表示パターン部を表示し、
前記ランドマーク情報表示処理は、特定の角度範囲を指示する方向表示パターン部を表示している状態で所定の利用者入力があると、当該角度範囲に該当する方位情報を含むランドマーク情報の内容を前記ランドマーク情報表示部に表示する、
ことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の携帯型ランドマーク情報表示装置の一実施形態であるリスト・コンピュータを示す図である。
【図2】上記リスト・コンピュータの液晶表示器に配設されているパターンを示す図である。
【図3】上記リスト・コンピュータの機能ブロック構成を示す図である。
【図4】上記リスト・コンピュータをクレイドルに接続した状態を示す図(A)と、クレイドルの内部回路の概略図(B)である。
【図5】上記リスト・コンピュータが使用される場面の具体例を示す図である。
【図6】上記リスト・コンピュータに記憶されているランドマーク表示情報のデータ構造を示す図である。
【図7】上記リスト・コンピュータの液晶表示器に時刻が表示された状態から、ビューポイントを表示させるまでの表示状態の遷移を示す図である。
【図8】上記リスト・コンピュータの液晶表示器にビューポイントが表示された状態から、ランドマークの方向を表示させるまでの表示状態の遷移を示す図である。
【図9】記リスト・コンピュータにおいて、ランドマークの方向を表示するための制御方法を説明するための図である。
【図10】上記リスト・コンピュータの液晶表示器にランドマークの方向が表示された状態から、ランドマークの情報を表示させるまでの表示状態の遷移を示す図である。
【図11】上記リスト・コンピュータの12時方向がランドマークの方向に一致したことを報知するための方法についての一例を示す図である。
【図12】上記リスト・コンピュータにおけるランドマーク情報の表示の仕方の一例を示す図である。
【図13】複数のランドマークが所定の角度範囲内に存在するときに、それぞれのランドマーク情報を個別に表示する制御の例を示す図である。
【図14】複数のページにわたって複数のランドマーク情報を表示する制御の例を示す図である。
【図15】複数のランドマークの輪郭線に隠線処理を施して表示した状態を示す図である。
【図16】液晶表示器のその他のパターン配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===本発明の特徴===
本発明は、周囲のランドマークの名称を表示するランドマーク情報表示装置であり、常時携帯が可能な大きさの携帯型ランドマーク情報表示装置を対象としている。そして、本発明は「携帯型」という用途や目的に鑑みてなされたもので、例えば、腕時計程度の大きさで、操作ボタンの数や表示装置の面積や表示可能な情報量など情報入出力機能が極めて限定的な情報処理端末において、利用者の周囲に存在する未知のランドマークについて、その位置を精度良く検出し、名称などの情報を表示するところに特徴を有している。また、簡素な情報入出力機能でも快適なユーザインタフェース環境を備えていることも特徴としている。そして、本発明は、上記主たる発明の他に、以下の特徴を備えた携帯型ランドマーク情報表示装置にも及んでいる。
【0010】
前記方向表示パターン部は、表示面の周囲を所定角度毎に複数に分割する複数のパターンであること。
【0011】
一つの前記景観観察地点に複数の前記ランドマーク情報が対応付けされているとともに、各ランドマーク情報は、対応する景観観察地点からの遠近関係を特定するための距離情報を含み、
前記制御部は、前記ランドマーク情報表示処理では、前記特定の方向表示パターン部が指示する角度範囲に該当する方位情報を含むランドマーク情報が複数存在する場合、当該複数のランドマーク情報のそれぞれに含まれる前記距離情報に基づいて、各ランドマーク情報の順位を決定するとともに、所定の利用者入力がある毎に、当該順位に従って各ランドマーク情報の内容を順次表示すること。
【0012】
前記ランドマーク情報には、ランドマークの形状を象る輪郭線データが含まれ、前記制御部は、前記ランドマーク情報表示処理では、ランドマーク情報に含まれる前記輪郭線データを前記ランドマーク表示部に表示すること。
【0013】
前記ランドマーク情報には、ランドマークの形状を象る輪郭線データが含まれ、前記制御部は、前記ランドマーク情報表示処理では、前記複数のランドマーク情報のそれぞれに含まれる方位情報と前記距離情報とに基づいて当該輪郭線を隠線処理して前記ランドマーク表示部に表示すること。
【0014】
ランドマークの輪郭線を表示する携帯型ランドマーク情報表示装置において、前記制御部は、前記ランドマーク情報表示処理では、あるランドマーク情報を表示する際、当該ランドマークの輪郭線部分を識別可能にして表示すること。
【0015】
前記制御部は、前記ランドマーク情報表示処理によりあるランドマーク情報を表示する際、前記表示面の所定位置が当該ランドマークの方位に一致すると、その旨を利用者に報知する処理を実行すること。
【0016】
===ランドマーク情報表示装置の基本的な構成===
図1は、本発明の実施例における携帯型ランドマーク表示装置の外観図である。当該携帯型ランドマーク表示装置1は、腕に装着するためのバンド2を備えた腕時計型であり、基本的な構造や構成は、ケース3の前面に液晶表示器(LCD)4を文字盤として備えたデジタル式腕時計と同様である。そして、ケース3の側面には、この携帯型ランドマーク情報表示装置(以下、リスト・コンピュータ)1を操作するための複数のボタン5が配設されている。すなわち、リスト・コンピュータ1は、情報表示量が極めて限られる時計用のLCD4といくつかの操作ボタン5のみを入出力装置としている。
【0017】
図2に、LCD4の表示パターンを示した。特定の文字や図形を専用に表示するためのアイコン用パターン41と、数字を表示するための7セグメントパターン42、テキストや図形をビットマップ表示するための大小2つのドットマトリクスパターン(43a,43b)が配設されている。また、このLCD4の表示面の周囲には、その周囲を所定角度毎に分割するパターン(方向表示パターン)44も配設されている。本実施例では、各方向表示パターン44は、それぞれ15゜の角度範囲毎に、全部で24個配設されている。
【0018】
図3に、上記リスト・コンピュータ1の機能ブロック構成を示した。リスト・コンピュータのハードウエア構成は、各種センサ(29〜31)を搭載して、温度、気圧や標高、方位などの情報を表示する、いわゆる「アウトドア・ウオッチ」と呼ばれる腕時計と同様である。MPU20、RAM21、ROM22からなるコンピュータ本体をコントローラとし、ROM22にはMPU20によって実行される各種プログラムやフォントデータが記憶されている。
【0019】
発振回路23と分周回路24は、各種周波数のクロックを発生させる回路であり、MPU20を動作させるための基準クロックや時刻表示やストップウオッチなどの計時機能に関わるクロックを発生する。表示制御部25は、MPU20からの指示に従って各種情報をLCD4に表示し、操作制御部26は、操作ボタン5からの操作信号をMPU20に入力する。音声制御部28は、MPU20からの指示に従ってスピーカ27を駆動し、アラーム音など音声出力させる。
【0020】
さらに、アウトドアでの用途を想定した様々な情報を利用者に提供するための機能(アウトドア機能)を実現するために、気圧センサ29、温度センサ30、方角センサ31を備え、各センサ(29〜31)が出力する信号は、それぞれのセンサ(29〜31)に対応するA/D変換回路(32a〜32c)にて各種デジタルータ(気圧データ、温度データ、方角データ)に変換されてMPU20に入力される。
【0021】
MPU20は、操作制御部26からの操作信号に応動してROM22に記憶されている所定のプログラムを実行し、そのプログラムの実行結果などをRAM21に書込んだり、その書き込んだデータをRAM21から読み出したりする。MPU20は、各センサ(29〜31)に接続されているA/D変換回路(32a〜32c)からの各種データについても、サンプリング機会ごとに更新しながらRAM21に読み出し可能にして格納する。
【0022】
さらに、格納した各種データ基づいて所用の情報を随時生成してRAM21に格納する。例えば、あらかじめ記憶されている気圧と高度との関係から気圧センサ29からの気圧データに基づいて高度を計算し、その計算結果を格納する。
【0023】
さらにリスト・コンピュータ1は、パーソナルコンピュータ(PC)などの外部の情報処理装置と通信するための通信インタフェース(IF)33を備えている。MPU20は、この通信IF33を介して、情報処理装置に各種データを転送したり、情報処理装置から各種データを受け取ったりする。
【0024】
なお、通信IF33と外部の情報処理装置とは、直接接続される形態である場合もあるし、クレイドルと呼ばれる中間装置を介して接続される形態である場合もある。本実施例では、通信IF33は、電波や赤外線などを用いた無線信号によりクレイドルと通信する。
【0025】
図4の(A)と(B)に、クレイドル50に装着された状態のリスト・コンピュータ1と、クレイドル50の内部回路の概略構成とを示した。クレイドル50は、無線信号によりリスト・コンピュータ1の通信IFと通信するための無線通信IF51と、情報処理装置と汎用の通信規格に準じたプロトコルで通信するための汎用通信IF52とを備え、CPU、RAM、ROMを備えたコントローラ53は、双方の通信IF(41,42)を介して送受信されるプロトコルの異なる信号を解釈して相互変換する。なお、クレイドル50と情報処理装置とは、例えば、USB規格に準じたコネクタ54を両端に備えたケーブル55を介して接続される。このような構成により、リスト・コンピュータ1のMPU20は、通信IF33を介して間接的に外部の情報処理装置と通信する。
【0026】
リスト・コンピュータ1は、外部記憶としてフラッシュメモリ34を内蔵している。MPU20は、利用者が操作ボタン5によって入力した数値やテキストなどのデータを操作制御部26を介して受け取って、このフラッシュメモリ34に記憶する。また、MPU20は、通信IF33を介して外部の情報処理装置から転送されてきたデータをこのフラッシュメモリ34に格納したり、フラッシュメモリ34内のデータを外部の情報通信装置に転送したりする。
【0027】
MPU20は、表示制御部25を制御してアウトドア機能や時計機能に関わる情報、受信したデータ、情報処理の実行結果などをLCD4に表示させたり、音声制御部28を制御してアラーム音をスピーカ27から出力させたりする。
【0028】
そして、上記構成を備えたリスト・コンピュータは、アウトドア機能として、センサ(29〜31)からのデータに基づく各種情報(温度、気圧、高度、方位など)を出力するだけではなく、GPSに頼らなくても、方位センサ31とフラッシュメモリ34に記憶されている情報とに基づいて、リスト・コンピュータ1の周囲に存在する利用者にとって未知のランドマークについて、そのランドマークの情報を表示するランドマーク情報表示機能を備えている。そして、数個の操作ボタン5と表示面積が小さく表示できる情報量も少ないLCD4であっても、操作手順と表示パターンと表示制御を工夫することで、必要十分の情報と快適なユーザインタフェース環境を利用者に提示することができるようになっている。
【0029】
===ランドマーク表示機能の概略===
本実施例のリスト・コンピュータ1に搭載されているランドマーク表示機能は、利用者が特定の地点(景観観察地点:以下、ビューポイント)にいるとき、その場所の周囲に存在するランドマークの情報を表示出力するものである。また、利用者は、自身がその特定のビューポイントにいることだけを認識していれば、周囲にどのようなランドマークがあるのかは一切知らなくてもよい。そして、簡単な操作で、そのビューポイントに対してどの方向にランドマークがあって、そのランドマークが何なのかを知ることができる。
【0030】
ここで、利用者が特定の山に登り、その山頂から見える他の山々の名称や標高を確認する、という場面を具体的に想定してみる。図5に、当該想定場面の具体例を示した。当該具体例では、八ヶ岳における横岳の山頂をビューポイントとし、このビューポイントの周囲にある山や峰の名称と標高を表示する、という事例を挙げている。なお、リスト・コンピュータ1に搭載されている方位センサ31は、この図に示した北(N:0゜)を検出する。以下、この具体例に基づいて本実施例におけるランドマーク情報表示機能について説明する。
【0031】
===ランドマーク情報===
ROMには、上記ランドマーク機能を実現するためのプログラムが記憶されており、フラッシュメモリ34には、そのプログラムの処理対象となる情報(ランドマーク表示情報)が記憶されている。図6にランドマーク表示情報60のデータ構造を示した。ビューポイント(VP)61毎に、ランドマーク情報70が対応付けさている。各ビューポイント61に対応付けされているランドマーク情報70は、複数のランドマーク71に対応して複数存在し、それぞれのランドマーク情報70には、ランドマークの名称72、方位73、標高74の各情報が含まれている。なお方位73は、ビューポイントからみて北(N)を0゜とした時計回り方向の角度で記述されている。また、この例では、ビューポイント61の名称62もランドマーク表示情報60に含まれている。
【0032】
===ユーザインタフェース環境===
次に、図6に示したランドマーク表示情報60を記憶したリスト・コンピュータ1を携帯する利用者が、上記具体例として示した想定の下、「横岳」の山頂に到着し、その場所で、リスト・コンピュータ1の周囲に存在する山や峰についての名称と標高をLCD4に表示させるまでの手順を説明する。
【0033】
<ビューポイントの指定>
まず、利用者は、自身がいるビューポイントを指定する操作を行う。図7に当該指定動作に伴うLCD4の表示画面の遷移を示した。基本表示状態である時刻表示の状態(A)で、所定の操作ボタン5を押すと、MPU20は、フラッシュメモリ34に記憶されているランドマーク表示情報60から、最初のビューポイントである「VP1」についての情報を読み出し、「VP1」を小さい方のドットマトリクスパターンの領域(副ドットパターン領域)43bに文字表示する。そして、大きい方のドットマトリクスパターンの領域(主ドットパターン領域)43aに「VP1」の名称である「富士山」を表示する(B)。「富士山」は、利用者がいるビューポイントではないので、利用者は、再度同じ操作ボタン5を押して、次のビューポイント「VP2」を指定する。MPU20は、次の「VP2」と「横岳」の文字をそれぞれ副ドットパターン43bと主ドットパターン43aに表示する(C)。
【0034】
<ランドマーク方位指示>
利用者は、自身がいる「横岳」が表示されたならば、所定の操作を行い、その「横岳」を現在のビューポイントに指定する。図8(A)(B)にこのビューポイントの指定操作にともなうLCD4の表示状態の遷移を示した。また、(C)にMPU20が方位を特定する処理についての概念を示した。
【0035】
利用者は、「VP2」の「横岳」を表示させた状態(A)で、所定の操作を行って現在のビューポイントを指定する。ここで、LCD4の周囲において、表示される文字や数字を正立させた状態で12時方向の位置を基準位置とすると、MPU20は、(C)に示したように、0゜から時計回りでこの12時の方向までの角度θを計算しており、利用者によるビューポイントの指定操作があると、方位センサ29からの方位データに基づいて、この基準位置方向の方位(角度)を時刻表示用の7セグメントパターン42aに表示するとともに、角度の単位「゜」のアイコン41aを表示する。また、12時方向の大まかな方位(北北西:NNWなど)が分かるように主ドットパターン領域43aに図形や文字を表示する。
【0036】
またMPU20は、ランドマーク表示情報60において、ビューポイント「横岳」に対応付けされている全てのランドマークの方位を取得し、その方位に対応する方向表示パターン44を表示する(B)。具体的には、方向表示パターンは15゜刻みで、LCD4の周囲を24に分割している。すなわち、24個の方向表示パターンには、現時点の12時方向の方位を基準としてそれぞれ15゜刻みで角度範囲が対応付けされることになる。MPU20は、現在の12時方向の方位と各ランドマークの方位との角度が含まれる範囲に配設されている方向表示パターン44を表示する。
【0037】
図9に方向表示パターンの表示状態の変化を示した。この図では、あるビューポイントにおいてLCD4の表示面がほぼ水平となっている状態で、リスト・コンピュータ1を水平面で回転させたときの12時方向と、そのときのLCD4の表示状態を示している。そして、ビューポイントにおいてa〜fのランドマークが対応付けされている場合、ビューポイントを指定した段階でLCD4には、ランドマークa〜fの方位に対応する方向表示パターン44が表示される(A)。この状態で、リスト・コンピュータ1を水平面で回転させると、リスト・コンピュータ1と各ランドマーク(a〜f)との相対的な角度関係が変わり、それに伴って表示される方向表示パターン44も変わる(B)。このようにして、利用者は、方向表示パターン44が表示されている方向にランドマーク情報が対応付けされていることを確認することができる。
【0038】
<ランドマーク情報表示>
利用者は、ビューポイントにおいて各ランドマークの方位を確認したならば、そのランドマークの情報を表示させる操作を行う。図10(A)(B)にビューポイントを指定してから、ランドマーク情報を表示させるまでのLCD4の表示遷移を示した。また、(C)に、この表示状態おける12時方向と基準方位(N:0゜)との関係とを示した。利用者は、リスト・コンピュータ1を水平面で回転させ、LCD4の表示面における12時方向を名前などの情報が知りたい山や峰に合わせる。このとき、12時方向の表示方向パターン(基準方向表示パターン)44aが表示されていれば、その方向にランドマーク情報が存在することになる。そして、この状態で所定の操作を行う。ここでは、表示面の12時方向が北(N:0゜)を基準にして時計回りに225゜の方向にあるとき、この操作を行ったものとする。
【0039】
MPU20は、ビューポイントが指定されている状態で、この操作入力があると、12時方向の方位から左右7.5゜の角度範囲の方位が対応付けされているランドマーク情報を取得し、その情報をLCD4に表示する。ここでは、217.5゜から232.5゜の範囲の方位に対応付けされている「阿弥陀岳」のランドマーク情報を取得し、その名称を主ドットパターン領域43aに表示するともに、標高を時刻表示用の7セグメントパターン42aにより表示する。また、副ドットパターン43bに標高の単位である「m」を表示する。
【0040】
このように、本実施例のリスト・コンピュータ1では、GPSに頼らずに、また、高精細の表示器や複雑な入力装置が無くてもビューポイントの周囲のランドマークを特定し、そのランドマークの情報を表示することができる。すなわち、極めて小型軽量化が可能であり、また安価に提供することが可能となる。もちろん、消費電力も少ない。
【0041】
また、LCD4の表示面を水平面で回転させると、その表示面の周囲を所定角度毎に分割する方向表示パターン44の表示位置が変化する。また、12時の方向の方向表示パターン44aが表示されていれば、その状態で所定の操作(ボタンを押すだけなど)をするだけで、ランドマークの情報を得ることができる。このように、軽量小型化に伴って表示器と入力装置が簡素な構成となってもため、直感的に操作できる優れたユーザインタフェース環境を備えている。
【0042】
===ランドマークの特定について===
例えば、12時の方向を中心とした15゜の範囲に峰がいつつも重なり合っている場合も想定される。そのような場合、表示された峰の名称が実際に見ている複数の峰の内のどれなのかを確認することができない。そこで、ランドマーク情報に記述されている方位と方位センサが検出する基準方位に基づく表示面の12時方向の方位とが正確に一致したときにアラーム音を出力して12時方向が正しくランドマークの方位に一致していることを利用者に報知するようにしてもよい。
【0043】
あるいは、図11(A)〜(F)に示すように、12方向がランドマークの方位80に一致したときに山や峰の名称45を拡大表示するようにして、一致方向から離れていくのに従って徐々にその表示を小さくしていってもよい。このように、ランドマーク情報の表示方法を工夫することでランドマークの正しい方位を報知してもよい。主ドットパターン領域43aにてランドマークの名称などを縦、あるいは横スクロール表示し、その領域の中央に名称が表示されるようにしてもよい。
【0044】
===ランドマークの表示方法について===
同じ方向に峰がいくつも重なっていて、どの峰がランドマークなのかが分からない場合、上記の方法では、正しい方向を報知してランドマークを利用者に確認させていた。この方法の他に、ランドマーク情報としてランドマークの形状を象る輪郭線のビットマップデータを用意しておき、この輪郭線を表示してもよい。図12にランドマーク情報として、輪郭線を主ドットパターン領域43aに表示する例を示した。この例では、ランドマーク以外の峰や山も含めた輪郭線46が各ランドマーク情報に含まれていることになる。そして、ランドマークが確認できるように、ランドマークに対応する位置に名称45を付記している。もちろん、ランドマークの峰に対応する部分の輪郭線を太線で表現したり、ランドマークの位置に矢印を付記したりしてもよい。
【0045】
また、同じ角度範囲に複数のランドマークがある場合も考えられる。例えば、図5において、LCDの12の方向を342.5゜〜347.5゜の角度に向けた場合、「硫黄岳」と「天狗岳」が同じ角度範囲に含まれることになる。したがって、リスト・コンピュータ1の表示面を水平方向で回転させていったとき、12時の方向の方向表示パターン44aの角度範囲に複数のランドマークが存在する場合では、それぞれのランドマーク情報を個別に表示する制御が必要となる。
【0046】
図13にその制御方法をいくつか例示した。リスト・コンピュータ1の表示面を水平面で僅かな角度で回転させたとき、12時方向と一致したランドマークの名称45aと左右にあるランドマークの名称45bの文字の大きさを異ならせる。そして、表示面を回転させていくのにしたがって、大小関係が変わっていくようにする(A)。あるいは、複数の峰を輪郭線46で表し、方位が一致した峰の輪郭線46を強調する(B)。もちろん、輪郭線46において、その方位が一致した峰に矢印を付記してもよい。なお、ここでは、複数のランドマークが存在する場合、その数を時刻の秒を表示するための7セグメントパターン42bに表示し、同じ方向にいくつのランドマークが存在するのかを確認することができるようになっている。
【0047】
===遠近関係について===
所定の角度範囲内に複数のランドマークが存在する場合で、しかも、ランドマークがビューポイントから遠いところにある場合、その遠いランドマークと近くのランドマークとの角度差が極めて小さくなり、同じ方位、あるいは方位センサの解像度(例えば1゜)以下の角度範囲に2つのランドマークが存在する、という可能性も考えられる。そこで、同じビューポイントに対応付けされている複数のランドマークについてそれぞれの遠近関係をランドマーク表示情報に含めてもよい。この遠近関係は、距離そのものであってもよいし、単純に近いランドマークから順位をつけていってもよい。
【0048】
そして、同じ方角に複数のランドマークが存在する場合、その遠近関係に基づいてランドマーク情報の表示順位を決定する。すななち、複数のランドマーク情報を表示するたに個別のページを作成し、所定の操作を受け付ける毎にページ送りをして各ランドマークのページを順番に表示するようにしてもよい。なお、複数のランドマークの方位の差が比較的大きな場合は、上記図13に示したように、一つのページで複数のランドマーク情報を表示してもするようにしてもよい。
【0049】
図14に複数のページにわたって複数のランドマーク情報を表示する例を示した。図5を参照すると、「横岳」から見て同じ角度範囲に「硫黄岳」と「天狗岳」があり、この場合、ビューポイントからの距離は「硫黄岳」の方が近い。利用者はビューポイントにおいて、ビューポイントを指定し、周囲のランドマークの方角を方向表示パターン44に表示させ、リスト・コンピュータ1を水平面で回転させていく。12方向を含む左右7.5゜の範囲に「硫黄岳」と「天狗岳」が存在すると、その方向に存在するランドマークの数「2」が秒表示用の7セグメントパターン42bに表示される(A)。
【0050】
この状態でランドマーク情報を表示させるための操作を行うと、まず、近い方のランドマークについての情報が最初のページとして表示される(B)。このページには、ページ数47と現在表示しているページ48が、主ドットパターン領域43aに名称45とともに表示される。ページ送りのための所定の操作を行うと、2ページ目が表示され、次に近いランドマークの情報が表示される(C)。
【0051】
また、各山や峰の輪郭線を個別に用意しておき、各峰や山の遠近関係に基づいてその輪郭線を隠線処理してもよい。図15にその隠線処理の概略を示した(A)はあるビューポイント(VP)に対応付けされている各ランドマーク(LMa〜LMc)についての輪郭線データと、各ランドマーク(LMa〜LMc)間の相互の遠近関係を示している。(B)(C)は、各ランドマーク(LMa〜LMc)の輪郭線が表示面の回転角度に応じて変わる様子を示しており、LMaとLMbが同じ角度範囲にあるときは、双方の遠近関係に基づいてLMaの輪郭線46aが手前となるように輪郭線(46a,46b)が描出され(B)、LMbとLMcが同じ角度範囲にあるときは、LMbの輪郭線46bがLMcの輪郭線46cより手前となるように輪郭線(46a,46b)が描出される(C)。このように、ランドマーク毎に遠近関係と輪郭線データを用意することで、正確に各山や峰の輪郭線を表示することができ、利用者はランドマークを特定しやすくなる。
【0052】
===ランドマーク表示情報の入力について===
上記実施例では、フラッシュメモリ34内にすでにランドマーク表示情報が記憶されているものとして説明した。ランドマーク表示情報は、適宜な方法で入力可能である。例えば、かなり手間が掛かるが、操作ボタン5により、テキストや数値入力をすることも可能であるが、本実施例では、リスト・コンピュータ1が標準で備える外部の情報処理装置との通信機能を使ってランドマーク表示情報を入力している。例えば、PCを情報処理装置として、そのPCにランドマーク表示情報を編集するためのソフトウエアをインストールさせておく、利用者はPCを使ってランドマーク表示情報を編集し、所定形式のファイルに作成する。そして、そのファイルをフラッシュメモリ34に転送し記憶させる。MPU20は所定形式のファイルをランドマーク表示情報として認識する。
【0053】
あるいは、Webサーバー上にランドマーク表示情報をダウンロード可能に用意しておいてもよい。この場合、PCはブラウザを実装しるだけでよく、ランドマーク表示情報の編集ソフトウエアをインストールする必要がない。
【0054】
===応用例・変形例===
上記実施例において、方向表示パターン44は、表示面の周囲を所定角度毎に分割するようなパターン形状をしていた。それによって、表示面における方向表示パターン44の占有面積を少なくすることができ、方向表示パターン44に取り囲まれた内側に時刻やテキストなどの他の情報を表示する領域を広く取ることができるようになっている。すなわち、限られた面積の表示面を有効に利用することができるパターン配置となっていた。
【0055】
もちろん、方向表示パターン44は、この表示面の周囲を取り囲むような形状に限らず、所定の角度範囲を指示するように配設されていればよく、例えば、図16に示すように、放射線状のパターン44bであってもよい。なお、放射線状のパターン44bを形成するためには、放射状のパターンとその他のパターンとが重ならないように各パターンを配置したり、LCD4全面をドットマトリクスパターンにしたり、LCD4を2層構造にして、一方を放射線状の方向表示パターン44bを表示するためのLCDとし、他方を時刻や他の情報を表示するためのLCDとすればよい。
【0056】
上記実施例では、山頂をビューポイントとして各山や峰をランドマークとしていた、もちろん、ビューポイントやランドマークは、この例に限らず、岬をビューポイントとして、その岬から見える海上の島々をランドマークとしたり、特定の駅の出口や高層ビルや塔の上層階をビューポイントとして、そのビューポイントから見える他の建物をラードマークとしたりするなど、様々な場面に応用することができる。もちろん、携帯型ランドマーク情報表示装置の形態は、リスト・コンピュータに限るものではない。専用の装置としてもよいし、簡素な表示装置とボタンなどの入力部が少ない携帯型の情報処理装置に適用することもできる。例えば、携帯型音楽プレーヤや携帯型ゲーム装置。GPS受信機能がない携帯電話機などにランドマーク表示機能を搭載することも考えられる。
【符号の説明】
【0057】
1 リスト・コンピュータ、4 液晶表示器、5 操作ボタン、
20 MPU、21 RAM、22 ROM、25 表示制御部、
26 操作制御部、27 スピーカ、28 音声出力制御部、
29〜31 センサ、33 通信インタフェース、34 不揮発性メモリ、
42,42a,42b 7セグメントパターン、
43a 主ドットパターン領域、43b 副ドットパターン領域、
44 方向表示パターン、44a 基準方向表示パターン、
50 クレイドル、60 ランドマーク表示情報、70 ランドマーク情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の景観観察地点において、当該地点の周囲に存在するランドマークの情報を表示するための携帯型ランドマーク情報表示装置であって、
基準方位を検出する方位センサと、
ランドマークの方位情報を含むランドマーク情報に景観観察地点を対応付けしたランドマーク表示情報を記憶する記憶部と、
利用者入力を受け付ける操作入力部と、
複数の角度範囲を個別に指示するための方向表示パターン部とランドマーク情報の内容を表示するランドマーク情報表示部とを備えた表示器と、
ランドマーク方位表示処理とランドマーク情報表示処理とを実行する制御部と、
を備え、
前記ランドマーク方位表示処理は、利用者入力により特定の景観観察地点が指定されると、当該景観観察地点に対応付けされているランドマーク情報に含まれる方位情報に対応する角度範囲を指示するための前記方向表示パターン部を表示し、
前記ランドマーク情報表示処理は、特定の角度範囲を指示する方向表示パターン部を表示している状態で所定の利用者入力があると、当該角度範囲に該当する方位情報を含むランドマーク情報の内容を前記ランドマーク情報表示部に表示する、
ことを特徴とする携帯型ランドマーク情報表示装置。
【請求項2】
請求項1において、前記方向表示パターン部は、表示面の周囲を所定角度毎に複数に分割する複数のパターンであることを特徴とする携帯型ランドマーク情報表示装置。
【請求項3】
請求項1または2において、一つの前記景観観察地点に複数の前記ランドマーク情報が対応付けされているとともに、各ランドマーク情報は、対応する景観観察地点からの遠近関係を特定するための距離情報を含み、
前記制御部は、前記ランドマーク情報表示処理では、前記特定の方向表示パターン部が指示する角度範囲に該当する方位情報を含むランドマーク情報が複数存在する場合、当該複数のランドマーク情報のそれぞれに含まれる前記距離情報に基づいて、各ランドマーク情報の順位を決定するとともに、所定の利用者入力がある毎に、当該順位に従って各ランドマーク情報の内容を順次表示する、
ことと特徴とする携帯型ランドマーク情報表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかおいて、前記ランドマーク情報には、ランドマークの形状を象る輪郭線データが含まれ、前記制御部は、前記ランドマーク情報表示処理では、ランドマーク情報に含まれる前記輪郭線データを前記ランドマーク表示部に表示することを特徴とする携帯型ランドマーク情報表示装置。
【請求項5】
請求項3において、前記ランドマーク情報には、ランドマークの形状を象る輪郭線データが含まれ、前記制御部は、前記ランドマーク情報表示処理では、前記複数のランドマーク情報のそれぞれに含まれる方位情報と前記距離情報とに基づいて当該輪郭線を隠線処理して前記ランドマーク表示部に表示することを特徴とする携帯型ランドマーク情報表示装置。
【請求項6】
請求項4または5において、前記制御部は、前記ランドマーク情報表示処理では、あるランドマーク情報を表示する際、当該ランドマークの輪郭線部分を識別可能にして表示することを特徴とする携帯型ランドマーク情報表示装置。
【請求項7】
請求項1または2において、前記制御部は、前記ランドマーク情報表示処理によりあるランドマーク情報を表示する際、前記表示面の所定位置が当該ランドマークの方位に一致すると、その旨を利用者に報知する処理を実行することを特徴とする携帯型ランドマーク情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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