説明

携帯型電子機器

【課題】携帯型電子機器の大型化や製造コストの増大を招くことなく、繋着部に加わった外力によるキャビネットの塑性変形や破損を防止することを目的とする。
【解決手段】本発明の実施の形態に係るデジタルカメラは、表面11aに開口部111が形成されたキャビネット11と、開口部111を開閉するための蓋体12と、キャビネット11に蓋体12を枢支するための枢支機構14とを具える。枢支機構14は、シャフト141と、シャフト141を支持する一対の軸受け部142,143とを具える。キャビネット11の表面11aには、紐状部品を繋着するための繋着部13が突設されている。そして、繋着部13は枢支機構14の近傍に配置されると共に、シャフト141は、繋着部13に近い一方の軸受け部143から繋着部13側へ突出する突出部1411を有する。突出部1411は、繋着部13が突設されているキャビネットの裏面11bに沿って延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどの携帯型電子機器に関し、特にストラップなどの紐状部品の繋着が可能な携帯型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、デジタルカメラなどの携帯型電子機器には、ストラップなどの紐状部品を繋着するための繋着部がキャビネット表面に突設されている(例えば、特許文献1参照)。そして、繋着部やキャビネットには、樹脂製のものが多く採用されている。
【0003】
しかし、繋着部がキャビネット表面に突設されていると、携帯型電子機器が落下した際に繋着部が地面と衝突するおそれがある。繋着部が地面に衝突すると、衝突した際に生じる外力(衝突力)が繋着部に集中するため、樹脂製の繋着部は破損しやすかった。また、繋着部がキャビネットと一体化されている場合には、繋着部に外力が集中すると、樹脂製のキャビネットは塑性変形し、延いては破損する可能性があった。
【0004】
繋着部やキャビネットの破損を防止するためには、繋着部やキャビネットの強度を増すべく、繋着部やキャビネットを肉厚にすることや、繋着部やキャビネットにダイキャスト製のものを採用することなどが考えられる。
【特許文献1】特開平11−54947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、繋着部やキャビネットを肉厚にすると、携帯型電子機器は大型化してしまう。また、繋着部やキャビネットにダイキャスト製のものを採用すると、携帯型電子機器の製造コストが増大してしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、携帯型電子機器の大型化や製造コストの増大を招くことなく、繋着部に加わった外力によるキャビネットの塑性変形や破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る携帯型電子機器は、表面(11a)に開口部(111)が形成されたキャビネット(11)と、該キャビネット(11)の開口部(111)を開閉するための蓋体(12)と、該キャビネット(11)に蓋体(12)を枢支するための枢支機構(14)とを具え、該枢支機構(14)は、シャフト(141)と、該シャフト(141)を支持する一対の軸受け部(142,143)とを具え、該キャビネット(11)の表面(11a)には、紐状部品を繋着するための繋着部(13)が突設されている。そして、かかる携帯型電子機器は、次の点を特徴とする。すなわち、繋着部(13)は枢支機構(14)の近傍に配置されると共に、枢支機構(14)を構成するシャフト(141)は、一対の軸受け部(142,143)のうち、繋着部(13)に近い一方の軸受け部(143)から繋着部(13)側へ突出する突出部(1411)を有する。該突出部(1411)は、繋着部(13)が突設されているキャビネット表面(11a)とは反対側の裏面(11b)に沿って延びている。
【0008】
本発明に係る携帯型電子機器によれば、枢支機構を構成するシャフトの突出部が、繋着部に近い一方の軸受け部から繋着部側へ突出すると共に、繋着部が突設されているキャビネットの裏面に沿って延びているので、該突出部は、繋着部に加わった外力をキャビネットの裏面から受け止めることができる。よって、該外力によるキャビネットの塑性変形や破損を防止することができる。しかも、蓋体を枢支するために必要なシャフトを利用して、キャビネットの塑性変形や破損を防止しているので、電子機器の大型化や製造コストの増大を招くことがない。
【0009】
上記携帯型電子機器の具体的な態様において、シャフト(141)の突出部(1411)は、キャビネット(11)のうち、繋着部(13)が形成されている領域(R1)に対応する位置まで延びている
【0010】
より具体的には、シャフト(141)の突出部(1411)は、キャビネット(11)のうち、繋着部(13)が形成されている領域(R1)を通過して突出している。
【0011】
上記具体的な態様によれば、より大きな外力が繋着部に加わった場合でも、シャフトの突出部は、キャビネットの裏面から該外力を受け止めることができる。よって、該外力によるキャビネットの塑性変形や破損を、より良く防止することができる。
【0012】
さらに具体的な態様において、シャフト(141)の突出部(1411)は、先端部が第3の軸受け部(15)によって支持されている。
【0013】
上記具体的な態様によれば、繋着部に加わった外力をシャフトの突出部で受け止めたときのシャフトの撓みを低減することができる。よって、より大きな外力が繋着部に加わった場合でも、シャフトの突出部は、キャビネットの裏面から該外力を受け止めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る携帯型電子機器によれば、携帯型電子機器の大型化や製造コストの増大を招くことなく、繋着部に加わった外力によるキャビネットの塑性変形や破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を携帯型電子機器であるデジタルカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
【0016】
1.デジタルカメラの構成
本発明の実施の形態に係るデジタルカメラは、図1乃至図3に示されるように、画像の撮影に必要な撮像機構2、フラッシュランプ3、操作部4、表示部5などが配されたキャビネット11を具えると共に、蓋体12,繋着部13、及び枢支機構14を具える。キャビネット11は、図5に示されるように、デジタルカメラのシャーシ7に固定されている。尚、本実施の形態に係るデジタルカメラでは、キャビネット11にはアルミ製のものを採用しているが、デジタルカメラの軽量化及び製造コストの削減を可能にするために、キャビネット11に樹脂製のものを採用することも可能である。
【0017】
キャビネット11の表面11aには、図3に示されるように開口部111が形成されている。開口部111を通して外部から見ることができるキャビネット11内の位置には、USB(Universal Serial Bus)ポート61が配置されており、外部からのUSBケーブルの接続が可能となっている。よって、デジタルカメラで撮影した画像を、USBケーブルを経て他の記憶装置に転送することができる。
【0018】
蓋体12は、開口部111の開閉が可能となるように、後述する枢支機構14によってキャビネット11に枢支されている。具体的には、蓋体12は、枢支機構14を構成するシャフト141に取り付けられている。尚、図2では、蓋体12は閉じられており、USBポートは蓋体12によって隠れている。他方、図3では、蓋体12は開かれており、USBポートは開口部111から見えている。
【0019】
繋着部13は、後述する枢支機構14の近傍の位置にて、キャビネット11の表面11aに突設されている。具体的には繋着部13は、図3に示されるように、キャビネット11のうち、枢支機構14によって蓋体12が枢支される表面11aに突設されている。
【0020】
繋着部13には、図4及び図5に示されるように、ストラップなどの紐状部品を繋着するための貫通孔131が形成されている。繋着部13はキャビネット11の表面11aに突設されているので、図5に示されるように、表面11aよりも外側の位置にて繋着部13を、貫通孔131によって貫通させることができる。貫通孔131を表面11aよりも外側に配置することにより、紐状部材の繋着部13への繋着が容易となる。
【0021】
枢支機構は、図3及び図5に示されるように、シャフト141と、一対の軸受け部142,143とを具える。シャフト141は金属製であり、樹脂性のキャビネット11よりも撓みにくい。一対の軸受け部142,143はそれぞれ、図5に示されるように、開口部111の両側の位置に1つずつ配置されており、シャフト141を貫通させるための同軸の貫通孔142a,143aを有する。尚、一対の軸受け部142,143は、デジタルカメラのシャーシ7に一体に形成されている。
【0022】
シャフト141は、貫通孔142a,143aに通されることにより一対の軸受け部142,143で支持されると共に、一対の軸受け部142,143のうち、繋着部13に近い一方の軸受け部143から繋着部13側へ突出している。そして、一方の軸受け部143から繋着部13側へ突出した突出部1411は、キャビネット11の内側に位置し、繋着部13が突設されているキャビネット11の表面11aとは反対側の裏面11bに沿って延びている。
【0023】
本実施の形態に係るデジタルカメラでは、突出部1411は、キャビネット11のうち、繋着部13が形成されている領域R1に対応する位置まで延びている。具体的には、突出部1411は、領域R1と重なる位置まで延びており、突出部1411の先端は領域R1内に位置している。
【0024】
2.効果
上述したデジタルカメラによれば、枢支機構14を構成するシャフト141の突出部1411が、繋着部13に近い一方の軸受け部143から繋着部13側へ突出すると共に、繋着部13が突設されているキャビネット11の裏面11bに沿って延びているので、突出部1411は、繋着部13に加わった外力をキャビネット11の裏面11bから受け止めることができる。よって、該外力によるキャビネット11の塑性変形や破損が防止される。
【0025】
具体的には、繋着部13に加わった外力によって樹脂製のキャビネット11は、弾性変形して、シャフト141の突出部1411に当たる。そして、キャビネット11のそれ以上の変形が、突出部1411によって阻止される。よって、キャビネット11の塑性変形や破損が防止される。
【0026】
上述したデジタルカメラでは、シャフト141の突出部1411は、繋着部13が形成されている領域R1と重なっている。よって、より大きな外力が繋着部13に加わった場合でも、突出部1411は、キャビネット11の裏面11bから該外力を受け止めることができる。
【0027】
更に、上述したデジタルカメラによれば、蓋体12を枢支するために必要なシャフト141を利用して、キャビネット11の塑性変形や破損を防止しているので、デジタルカメラの大型化や製造コストの増大を招くことがない。
【0028】
3.変形例
3−1.変形例1
上述したデジタルカメラでは、シャフト141の突出部1411は、その先端が領域R1内に位置するように延びていたが、図6に示されるように突出部1411は、領域R1を通過して突出してもよい。本変形例に係るデジタルカメラによれば、より大きな外力が繋着部13に加わった場合でも、突出部1411は、キャビネット11の裏面11bから該外力を受け止めることができる。よって、該外力によるキャビネット11の塑性変形や破損を、より良く防止することができる。
【0029】
3−2.変形例2
シャフト141の突出部1411は、図6に示されるように、先端部が第3の軸受け部15によって支持されることが好ましい。なぜなら、繋着部13に加わった外力を突出部1411で受け止めたときのシャフト141の撓みを低減することができるからである。これにより、より大きな外力が繋着部13に加わった場合でも、突出部1411は、キャビネット11の裏面11bから該外力を受け止めることができる。
【0030】
3−3.変形例3
上述したデジタルカメラにおいて、図7に示されるように突出部1411を領域R1に重ねなかったとしても、突出部1411が、繋着部13に近い一方の軸受け部143から繋着部13側へ突出すると共に、繋着部13が突設されているキャビネット11の裏面11bに沿って延びていれば、上述したデジタルカメラと同様に、繋着部13に加わった外力を突出部1411によって受け止めることができる。ただし、上述したデジタルカメラの方が、本変形例に係るデジタルカメラよりも、大きな外力を突出部1411で受け止めることができる。
【0031】
また、突出部1411が領域R1と重なっていない態様であっても、突出部1411が領域R1の近傍の位置(領域R1に対応する位置)まで延びている場合や、突出部1411が領域R1の横を通過している場合には、突出部1411で受け止めることができる外力の大きさは大きくなる。
【0032】
3−4.変形例4
上述したデジタルカメラでは、キャビネット11には樹脂製のものを、シャフト141には金属製のものをそれぞれ採用したが、これに限らず、キャビネット11及びシャフト141には種々の材質を採用することができる。ただし、繋着部13に加わった外力をキャビネット11の裏面11bから受け止めるためには、シャフト141の材質として、キャビネット11の材質よりも撓みにくいものを採用することが好ましい。
【0033】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、携帯型電話機やビデオカメラなどの種々の携帯型電子機器に対して、上述した技術の適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係るデジタルカメラを前面側から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るデジタルカメラを背面側から見た斜視図である。
【図3】蓋体が開かれたデジタルカメラを背面側から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るデジタルカメラの側面図である。
【図5】図4に示される線V‐Vに沿う断面図である。
【図6】変形例1及び2に係るデジタルカメラの要部を示す断面図である。
【図7】変形例3に係るデジタルカメラの要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
11 キャビネット
11a 表面
11b 裏面
111 開口部
12 蓋体
13 繋着部
14 枢支機構
141 シャフト
1411 突出部
142,143 一対の軸受け部
15 第3の軸受け部
R1 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に開口部が形成されたキャビネットと、該キャビネットの開口部を開閉するための蓋体と、該キャビネットに前記蓋体を枢支するための枢支機構とを具え、該枢支機構は、シャフトと、該シャフトを支持する一対の軸受け部とを具え、該キャビネットの表面には、紐状部品を繋着するための繋着部が突設されている携帯型電子機器において、
前記繋着部は前記枢支機構の近傍に配置されると共に、前記枢支機構を構成するシャフトは、前記一対の軸受け部のうち、前記繋着部に近い一方の軸受け部から前記繋着部側へ突出する突出部を有し、該突出部は、前記繋着部が突設されているキャビネット表面とは反対側の裏面に沿って延びていることを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項2】
前記シャフトの突出部は、前記キャビネットのうち、繋着部が形成されている領域に対応する位置まで延びている、請求項1に記載の携帯型電子機器。
【請求項3】
前記シャフトの突出部は、前記キャビネットのうち繋着部が形成されている領域を通過して突出している、請求項2に記載の携帯型電子機器。
【請求項4】
前記シャフトの突出部は、先端部が第3の軸受け部によって支持されている、請求項2または請求項3に記載の携帯型電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−27657(P2010−27657A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183707(P2008−183707)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】