説明

携帯機

【課題】防水機能を得ることができる構造簡素な携帯機を提供する。
【解決手段】特定の通信対象との間で所定の無線通信を行うための電子部品と、これに電力を供給するための電池とがケースに収容され、ケースは、電池を収容する電池収容部11が一側面に開口して形成されたケース本体と、電池収容部11を囲繞する防水部材26と一体形成されるとともに電池収容部11の開口部を覆う電池蓋7とを備える携帯機において、防水部材26は、電池蓋7がケース本体に取り付けられる際、電池収容部11内に進入する態様で内側へ弾性変形するとともに、この弾性変形により生じる弾性力によって電池収容部11の内壁を外側に押圧することにより、電池蓋7をケース本体に取り付けた状態に維持しつつ、両者間を液密に保持することを特徴とする携帯機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換可能に設けられた電池の電力を電源として特定の通信対象との間で所定の無線通信を行う携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両や住宅等に設けられた所定の通信対象と、該車両や住宅等の所有者(ユーザ)が所持する携帯機との間の無線通信を通じて、車両や住宅等の施解錠などを行う電子キーシステムが知られている。携帯機には、交換可能に設けられた電池が内蔵されており、この電池の電力を電源として、携帯機は特定の通信対象と無線通信を行う。
【0003】
例えば特許文献1には、水等の液体に濡れて電池がショートするのを防ぐために、防水構造を有する携帯機が開示されている。この携帯機は、電池収容部を有するケースとその電池収容部を覆う電池蓋との間にOリングを介在させている。このOリングは、電池蓋がケースにネジ止めされることによって圧迫されて、電池蓋とケースとの間を液密に保持することにより、外部から電池収容部内への液体の浸入を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−35980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の携帯機では、Oリングは、圧迫による反発力によってケースと電池蓋とを互いに引き離す方向へ付勢する。このため、Oリングを圧迫させたまま維持して防水機能を発揮させるために、ケースと電池蓋とをネジ止めする必要があった。しかしながら、ネジ止めの構成をケースと電池蓋との双方に設ける必要があり、この点において携帯機の構造が複雑になっていた。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、防水機能を得ることができる構造簡素な携帯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、特定の通信対象との間で所定の無線通信を行うための電子部品と、前記電子部品に電力を供給するための電池とがケースに収容され、前記ケースは、前記電池が配置される電池収容部が一側面に開口して形成されたケース本体と、弾性を有し前記開口部を囲繞する環状の防水部材と一体形成されるとともに前記電池収容部の開口部を覆う電池蓋とを備え、前記電池蓋は、前記防水部材の径方向に対する直交方向から前記ケース本体に取り付けられる携帯機において、前記防水部材は、前記電池蓋が前記ケース本体に取り付けられる際、前記電池収容部の開口端縁との係合を通じて、前記電池収容部内に進入する態様で内側へ弾性変形するとともに、この弾性変形により生じる弾性力によって前記電池収容部の内壁を外側に押圧することにより、前記電池蓋を前記ケース本体に取り付けた状態に維持しつつ、両者間を液密に保持することを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、電池蓋がケース本体に取り付けられると、防水部材は、電池収容部の内壁を外側へ押圧する。防水部材は、電池蓋とケース本体との間を液密的に保持して防水機能を発揮する。また、電池蓋は、弾性変形された防水部材の弾性力によってケース本体に取り付けられた状態に維持される。従って、従来、防水部材を圧迫させて防水機能を発揮させるために必要であった電池蓋とケース本体との間のネジ止め等が不要となるため、その分携帯機の構成を簡素にすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の携帯機において、前記電池蓋が前記ケース本体に取り付けられる際に、前記防水部材に対する前記電池収容部の開口端縁に係合する部位には、当該係合に伴う内側への弾性変形の方向を案内する案内部が設けられていることを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、防水部材が電池収容部の開口端縁と係合して弾性変形する際、防水部材の内側への弾性変形が案内部により案内される。これにより、弾性部材が他方向へ弾性変形することによって、電池蓋がケース本体に取り付けられない状況を防ぐことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の携帯機において、前記防水部材は、前記防水部材の径方向へ対して直交する方向であって且つ前記電池蓋の装着側へその全周に亘って開口する環状の撓み溝を有してなることを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、防水部材は、撓み溝によって自身の径方向内側への撓みが可能となる。また、撓み部は一方向へ開口する撓み溝を形成するのみで構成されるので、防水部材と電池蓋とを一体成形する金型の制作が容易となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の携帯機において、前記防水部材は、その外壁面の全周に亘って突出するとともに、前記電池蓋が前記ケース本体に取り付けられる際に前記電池収容部の内壁面に沿って湾曲する撓み部を有してなることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、電池蓋とケース本体とが取り付けられる際、防水部材の撓み部は、電池収容部の内壁面に沿うように防水部材の径方向と直交する方向へ湾曲する。湾曲された撓み部は、当該湾曲に伴う弾性力によって自身の径方向外側へ向けてケース本体の内壁面を押圧する。これにより、電池蓋とケース本体との間の液密が確保される。このとき、撓み部と電池収容部の内壁面との接触面積が大きくなるに従って電池蓋とケース本体との間の防水性が高まる。すなわち、撓み部の突出長を変更するのみで、携帯機の用途に応じて必要な防水性を確保することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の携帯機において、前記電池蓋には、その裏面に形成されて前記防水部材が設置される防水部材設置部と、同じく表面に形成された意匠溝と、これらを当該意匠溝と前記電池蓋の裏面における前記防水部材が設けられる部位とを電池蓋の内部において連結する連結溝とが形成され、前記防水部材は、前記電池蓋と異なる色の素材で形成されることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、防水部材が電池蓋と一体成形される際に、防水部材の一部が、電池蓋の裏面における防水部材設置部に設けられる防水部材に対応する部位から連結溝を介して意匠溝まで浸潤する。電池蓋と異なる色の素材の防水部材によって満たされることにより意匠溝と電池蓋とのコントラストを高めることが可能になる。従って、意匠溝よって形成された意匠をユーザにより強く認識させることが可能となる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の携帯機において、前記電池蓋及び前記ケース本体の何れか一方に形成される係止部と、前記電池蓋及び前記ケース本体の何れか他方に形成され、前記電池蓋が前記ケース本体に取り付けられて前記防水部材が防水機能を発揮する状態となったときに前記係止部と係合する係止爪とを備えることを要旨とする。
【0018】
防水部材が、電池収容部の開口部を囲繞して防水機能を発揮できる状態となった場合であっても、防水部材は弾性を有しているため、ユーザは防水部材が防水機能を発揮できる状態となったか否かを判断しにくい可能性がある。そこで、同構成によれば、係止部と係止爪とを設け、防水部材が防水機能を発揮する状態となったときに両者が係合する。これにより、電池蓋とケース本体との相対的な位置決めがなされるので、ユーザは、防水部材が防水機能を発揮できる状態となったことを判断しやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、防水機能を得ることができる構造簡素な携帯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の車両の電子キーシステムの概略図。
【図2】第1の実施形態を示す電子キーの分解斜視図。
【図3】同実施形態の電池蓋を裏側からみた平面図。
【図4】同実施形態の電池蓋を表側からみた平面図。
【図5】図3のA−A線に沿った断面図。
【図6】電池蓋とケース本体とが組み付けられた際の図3のA−A線に沿った断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す、図3のA−A線に対応する電池蓋の断面図。
【図8】同実施形態における電池蓋とケース本体とが組み付けられた際の図3のA−A線に対応する断面図。
【図9】(a)は本発明の変形例を示す電子キーの分解斜視図、(b)は(a)の電池蓋を裏側から見た拡大斜視図。
【図10】図9に示すB−B線に沿った断面図。
【図11】本発明の変形例を示す図6に示す拡大図にあたる部分の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を車両の電子キーシステムにおいて、ドアの施解錠に使用される電子キーに具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電子キーシステム1は、携帯機としての電子キー2と、車両に搭載された通信対象としての施解錠制御装置3とを備えている。施解錠制御装置3は、車両の周囲の所定のエリアにリクエスト信号Srを間欠送信する。このリクエスト信号Srは、IDコードの送信を電子キー2に要求する旨の信号である。電子キー2は、前記リクエスト信号Srを受信すると、予め自身のメモリに記録されたIDコードを含むID信号Siを送信する。施解錠制御装置3は、電子キー2から送信されてきたID信号Siを受信すると、このID信号Siに含まれるIDコードと予め自身のメモリに記憶されたIDコードとを照合して、両IDコードが一致したときのみドアを解錠する。一方、ユーザが電子キー2を所持して車両から離間して所定のエリア外に移動すると、施解錠制御装置3は、電子キー2から送信されるID信号Siを受信不能となる。施解錠制御装置3は、電子キー2からのID信号Siが受信不能になると車両のドアを施錠する。このように、この電子キーシステム1では、ユーザが車両に触れることなくドアの施解錠が行われる。
【0022】
図2に示すように、電子キー2は、施解錠制御装置3との間で無線通信を行うための電子部品5等が収容されるケース本体6と、該ケース本体6に対して着脱可能に設けられる電池蓋7と、当該電池蓋7を覆う態様でケース本体6に対して着脱可能に設けられるカバー8とからなる。カバー8は、ケース本体6とともに電子キー2の外観意匠を構成する。ケース本体6、電池蓋7、及びカバー8は、PBT(ポリブチレンテレフタラート)等の合成樹脂材料により形成される。本例では、ケース本体6、電池蓋7、及びカバー8は、黒色に着色される。なお、電子キー2は、全体として直方体状に形成されている。
【0023】
ケース本体6(正確には、カバー8が装着される一段低く形成された部分)には、電子部品5に隣接する収容部10が形成されている。収容部10の上面には、円筒状の電池収容部11が形成されている。電池収容部11の開口周縁部には、環状の段差部12が形成されている。電池収容部11には、ボタン電池9が収容される。また、収容部10の外周面には、2つの係止部13が形成されている。これら係止部13は、ケース本体6の左右方向において互いに反対側に設けられている。なお、電池収容部11には、電子部品5に連結された電極が設けられている。電池9は、電極を介して電子部品5へ電源電圧を供給する。
【0024】
図3に示すように、電池蓋7は、2つの係止爪21を備えている。これら係止爪21は、左右方向において互いに反対側に設けられている。係止爪21は、電池蓋7の裏面側へ延びている。係止爪21は係止部13に対応し、これに係合する。また、電池蓋7の裏面には、円柱状の防水部材設置部22が突設されている。防水部材設置部22の外周面には、環状の防水部材26が設けられている。防水部材26は、防水部材設置部22の外周面に密着している。防水部材26は、段差部12に対応する。また、図4に示すように、電池蓋7の表面には、意匠溝23が形成されている。本例では、意匠溝23は、電池交換をイメージする図柄とされている。図5に示すように、意匠溝23は、電池蓋7の内部に形成された連結溝24を介して電池蓋7の裏面における防水部材設置部22との境界部分に連通している。で連結されている。防水部材26は、常温で弾性を有する朱色のシリコンゴムで形成される。防水部材26は、インサート成型によって電池蓋7と一体に設けられる。シリコンゴムは、インサート成型時に連結溝24を介して意匠溝23に浸入する(アンカー効果)。シリコンゴムで満たされた意匠溝23のデザイン(意匠)は、電池蓋7とのコントラストによって映える。更に、意匠溝23に浸潤したシリコンゴムは意匠溝23からわずかに露出し、この露出した部分は、ユーザが電池蓋7を把持したときに滑り止めとしての効果を発揮する。
【0025】
図5に拡大して示すように、防水部材26において、電池蓋7の裏面と反対側の面には、撓み溝26aが全周に亘って形成されている。また、防水部材26の外周面には、互いに鈍角をなす案内面26bと斜面26cとが形成されている。案内面26bは防水部材26の裏側(図中上側)に、斜面26cは防水部材26の表側(図中下側)に、それぞれ形成されている。案内面26bは、図中下側(電池蓋7の内面)に向かうに従って徐々に外側に張り出している。斜面26cは、図中下側に向かうに従って内側に傾斜している。防水部材26の外周面には、案内面26bと斜面26cとによって頂部26dが形成されている。防水部材26は、案内面26bを介して外側から内側へ向けて外力が作用したとき、撓み溝26aによって径方向内側へ撓む。なお、この防水部材26の幅、すなわち防水部材設置部22の壁面から頂部26dまでの距離である幅W1は、図6に拡大して示すように、段差部12の幅W2よりも長く設定されている。
【0026】
次に、ケース本体6への電池蓋7、カバー8、及び電池9の組み付け態様について説明する。
図2に示すように、ケース本体6には、電池9、電池蓋7、及びカバー8がこの並び順で取り付けられる。まず、電池9を電池収容部11へ収容し、この後、電池蓋7をケース本体6へ取り付ける。この際には、電池蓋7の2つの係止爪21とケース本体6の2つの係止部13とを対応させる。すると、防水部材26と段差部12との上下方向及び左右方向の位置が対応する。この状態で、電池蓋7をケース本体6へ向けて移動させる。すると、図6に示すように、防水部材26は、その幅W1が段差部12の幅W2よりも長く設定されているため、案内面26bが収容部10の先端面(段差部12の開口周縁部)と当接する。さらに電池蓋7をケース本体6へ向かって押し込むと、防水部材26には、案内面26bによって変換された内側へ押圧する力が作用する。撓み溝26aにより、防水部材26の径方向内側への弾性変形が許容されるので、防水部材26は、径方向内側へ撓みつつ、同防水部材26の幅W1が段差部12の幅W2となるように弾性変形(縮幅)する。電池蓋7は、その裏面が、収容部10の先端面に当接する位置にまで押し込まれる。防水部材26の頂部26dは段差部12の内周面と密接する態様に維持される。これにより、電池蓋7と段差部12との間の液密性が確保される。なお、電池蓋7の裏面と収容部10の表面とが当接したとき、係止爪21と係止部13とが係合する。ユーザは、この係合によって防水部材26が、防水機能を発揮する状態となっていることを容易に認識することができる。なお、電池蓋7自体は、防水部材26の弾性力により、収容部10に保持された状態が維持される。
【0027】
そして、最後にケース本体6にカバー8を取り付ける。ケース本体6には図示しない係合部が、カバー8には図示しない係合爪が、それぞれ設けられており、両者が係合することにより、カバー8はケース本体6に固定される。
【0028】
一方、電池交換等で電池9を電子キー2から取り外す場合は、上記組み付けの場合と、逆の態様でカバー8等が取り外される。このとき、電池蓋7は、係止部13と係止爪21との係合を解除しても、防水部材26の弾性力によって、その位置(取り付け状態)が維持されている。従って、ユーザは、係止部13と係止爪21との係合を解除した後、電池蓋7をケース本体6から引き離す方向へ変位させることにより、電池蓋7をケース本体6から取り外すことができる。こうして、電池収容部11の開口部が開放されるので、ユーザは、電池収容部11に収容された電池9の交換を行うことができる。
【0029】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)電池蓋7がケース本体6に取り付けられると、防水部材26は、自身の径方向内側へ弾性変形してこの状態に維持される。すなわち、防水部材26は、環状の段差部12の内周面を外側へ向けて押圧した状態に維持される。こうして、防水部材26は、電池蓋7と段差部12(ケース本体6)との間を液密的に保持する。従って、従来、防水部材を圧迫させて防水機能を発揮させるために必要であった電池蓋とケース本体との間のネジ止め等が不要となるため、その分、電子キー2の構成、詳しくは防水に係る構成を簡素にすることができる。
【0030】
(2)電池蓋7がケース本体6に取り付けられる際、防水部材26の撓む方向は、案内面26bによって案内される。これにより、防水部材26は、他方向へ弾性変形することなく径方向内側へ撓み、その幅W1が短くなるように弾性変形する。すなわち、案内面26bを省略した構成も採用可能であるものの、この場合には、収容部10の先端面等に起因して防水部材26が他方向へ撓む(弾性変形)ことにより、電池蓋7のケース本体6への取り付けが阻害されるおそれがある。本例によれば、こうした懸念はない。従って、電池蓋7は、ケース本体6へ向けて押し込む作業のみで、ケース本体6に取り付けられるとともに、防水部材26により両者間の液密が確保される。すなわち、ネジ止めなどの作業も不要となるので、両者の取り付けが容易になる。
【0031】
(3)環状の防水部材26には、自身の径方向と直交する一方向へ開口する撓み溝26aが全周に亘って形成されている。防水部材26は、撓み溝26aによって自身の径方向への撓みが可能となる。このように、撓み溝26aは一方向へ開口する開口部を形成するのみで構成されるので、防水部材26と電池蓋7とを一体成形する金型の制作が容易となる。
【0032】
(4)防水部材26が電池蓋7と一体成形される際に、防水部材26の形成材料である朱色シリコンゴムが防水部材設置部22の近傍の連結溝24を介して意匠溝23に浸潤する。意匠溝23がシリコンゴムによって満たされることにより、当該意匠溝23が表現する意匠がシリコンゴムの朱色で表現されることとなる。すなわち、シリコンゴムと黒色である電池蓋7とのコントラストが強くなることにより、当該意匠をユーザに認識させやすくなる効果が得られる。また、意匠溝23に浸潤したシリコンゴムは、わずかに外部に露出した状態で固化するので、電池蓋7を把持したユーザの滑り止めとしての機能を発揮するとともに、ユーザの触感を刺激する。
【0033】
(5)防水部材26が、電池収容部11の開口部を囲繞して防水機能を発揮できる状態となった場合であっても、防水部材は弾性を有しているため、ユーザは防水部材が防水機能を発揮できる状態となったか否かを判断しにくい可能性がある。そこで、本実施形態によれば、防水部材26が電池蓋7と段差部12との間を液密的に保持できる状態となったときに係止部13と係止爪21とが係合する。これにより、ユーザは、防水部材26が防水機能を発揮できる状態となったことを判断しやすくなる。
【0034】
(6)電池蓋7は、防水部材26の弾性力によってケース本体6に取り付けられた状態に維持される。このとき、防水部材26は、電池蓋7とケース本体6との間を液密に保持する。すなわち、本実施形態では、両者をネジ等でつなぎ止めておく必要がない。従って、ネジ止めに必要な構成を簡略することができる分、ケース本体6の小型化が可能となる。
【0035】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。なお、本実施形態と上記第1実施形態との主たる相違点は、防水部材の構成である。このため、説明の便宜上、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
【0036】
図7に示すように、電池蓋7には、第1の実施形態と同様に環状の防水部材30がインサート成形される。防水部材30の外周面(外壁面)には、外側に向かって開口する撓み溝30aが全周に亘って形成されている。また、防水部材30において、撓み溝30aの上側(裏側)の部分には、径方向内側から外側へ向かって徐々に電池蓋7の内底面(表側)に近接するように傾斜する案内面30bが形成されている。防水部材30には、撓み溝30aと案内面30bとによって撓み部としての突出部31が形成されている。防水部材30は、撓み溝30aにより表側への弾性変形が許容される。このため、案内面30bを介して裏側から表側へ向けて外力が作用したとき、突出部31は、が表側へ向かって湾曲するように弾性変形する。なお、この防水部材30の幅、すなわち防水部材設置部22の壁面から突出部31の頂部30cまでの距離である幅W3は、段差部12の幅W2よりも長く設定されている。
【0037】
次に、このように構成された電池蓋7とケース本体6との組み付け態様について説明する。
図2に示すように、防水部材30と一体形成された電池蓋7は、上記第1の実施形態と同様にケース本体6に取り付けられる。その際、図8に示すように、突出部31(案内面30b)は、収容部10の先端面(段差部12の開口周縁部)と当接する。この状態から電池蓋7をケース本体6に向けて押し込むと、突出部31は、段差部12の開口周縁部により、電池蓋7の内底面に向けて押圧される。これにより、突出部31は、表側から径方向内側へ向かって湾曲するように弾性変形する。すなわち、防水部材30は、その幅W3が段差部12の幅W2となるように縮幅される。電池蓋7のケース本体6に対する取り付けが完了した状態において、防水部材30の頂部30cは段差部12の内周面と密接する態様に維持される。防水部材30は弾性を有しているので、突出部31は段差部12の内壁面を自身の径方向外側へ向かって押圧する。これにより、電池蓋7と段差部12との間の液密性が確保される。なお、防水部材30の防水性能は、突出部31と段差部12の内壁面との間の接触面積で決定される。すなわち、より高い防水機能を得たい場合には、突出部31の径方向への突出長を長くすればよい。このようにすれば、防水部材30が段差部12に収容された際の突出部31と段差部12の内壁との接触面積が大きくなるので、高い防水機能を得ることができるようになる。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の(1),(2),(4)〜(6)の効果に加えて、以下に示す効果が得られるようになる。
(7)突出部31の突出長を変更するのみで、携帯機の用途に応じて必要な防水性を容易に確保することができる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第1の実施形態において、案内面26bを省略してもよい。このようにしても、電池蓋7をケース本体6に装着することができる。また、両者間の液密性を確保することができる。更に、案内面26bを省略した上で、段差部12に案内面を形成してもよい。具体的には、図11に示すように、段差部12の内周面12aにおける開口端側の部分には、案内面12bが全周に亘って形成されている。案内面12bは、段差部12の開口端側へ向かうにつれて拡径するテーパ面とされている。このように、段差部12が形成されれば、電池蓋7をケース本体6へ装着するとき、防水部材26の外側の端部が案内面12bと当接する。電池蓋7をさらにケース本体6へ押し込むと、案内面12bは、防水部材26を径方向内側へ向かって押圧する。すると、防水部材26は、撓み溝26aの存在により径方向内側へ弾性変形する。そして、防水部材26の端部が案内面12bを乗り越える位置まで押し込まれた以降、防水部材26は、自身の弾性力によって段差部12の内周面12aを径方向外側へ押圧する。これにより、電池蓋7とケース本体6との間の液密性が確保される。
【0040】
このように、案内面26bを省略する場合には、電池蓋7をケース本体6へ装着する際に、防水部材26が防水に好適な方向へ弾性変形するのを補助する構成を設けることが望ましい。なお、第2の実施形態についても同様の構成を採用することが可能である。
【0041】
・上記各実施形態において、電池蓋は、電子キー2の外観意匠を形成するカバーを兼用してもよい。このように構成すれば、電池蓋とカバーとが一体となる分、電子キー2の全体として小型化が図られる。具体的には、図9(a)に示すように、電子キー40は、電子部品5を収容するケース本体41と、これに組み付けられるとともに電子キー40の外観意匠を構成する電池蓋51とからなる。ケース本体41には、電子部品5と隣接して四角板状の電池蓋51が設置される電池蓋設置部44が形成されている。電池蓋設置部44の内底面には環状溝45と、更にその内側にボタン電池49を収容する電池収容部46とが形成されている。電池蓋設置部44の四隅には、電池蓋51を係止する係止部44aが凹設されている。
【0042】
図9(b)に示すように、電池蓋51の裏面には、環状の防水部材設置部52が形成されている。電池蓋51の防水部材設置部52の外周面には、上記第1の実施形態と同様に環状の防水部材53がインサート成形される。防水部材設置部52の内側の面から防水部材53の外側の頂部までの幅(距離)は、環状溝45の溝幅よりも長く設定されている。なお、電池蓋51の裏面の四隅には、係止爪51aが形成されている。この係止爪51aは係止部44aと対応する。
【0043】
このように構成された電池蓋51は、ケース本体41に向かって押し込まれることにより、ケース本体41の電池蓋設置部44に装着される。防水部材設置部52及び防水部材53は、環状溝45に挿入される。このとき、防水部材設置部52及び防水部材53の幅の合計が環状溝45の溝幅よりも長く設定されているため、防水部材53には、環状溝45の先端面が当接する。この状態で電池蓋51をケース本体41へ向けて更に押し込むと、防水部材53は、上記第1の実施形態と同様に、径方向内側に弾性変形する。そして、防水部材設置部52及び防水部材53は、環状溝45に収容される。このように、電池蓋51がケース本体41に組み付けられた状態においては、このとき、弾性変形された防水部材53が、環状溝45の内壁面を径方向外側に押圧する。これにより、電池蓋51と環状溝45との間を液密性が確保される。また、このとき、係止爪51aが係止部44aに係止される。これにより、ユーザは、防水部材53が防水機能を発揮できる状態となったことを認識することができる。なお、第2の実施形態の防水部材30を防水部材設置部52に設けてもよい。
【0044】
・上記各実施形態において、意匠溝は、電池蓋の表面だけではなく裏面にも形成し、これを電池蓋における防水部材の形成部位と連結してもよい。具体的には、図9(a),(b)に示すように、電池蓋51は、表面に形成される意匠溝55と、裏面に形成される意匠溝56とを備える。図10に示すように、これら意匠溝55,56は、電池蓋51の内部に形成される連結溝57によって電池蓋51の裏面における防水部材53の形成部位に連通している。
【0045】
このように形成された意匠溝55,56には、シリコンゴムからなる防水部材53が電池蓋51とインサート成形される際に、シリコンゴムが連結溝57を介して浸潤する。シリコンゴムは、意匠溝55,56から電池蓋51の表面と裏面に露出した状態で固化する。従って、当該シリコンゴムは、ユーザが電池蓋51を把持した際の滑り止めとして機能する。なお、朱色のシリコンゴムで満たされた意匠溝55,56のデザイン(意匠)が、電池蓋51とのコントラストによって映えることは言うまでもない。
【0046】
・上記各実施形態において、防水部材26(30)は、円形に限らず、例えば方形等であってもよい。すなわち、防水部材26(30)は、環状をなしていればよい。
・上記各実施形態において、意匠溝23にシリコンゴムを浸潤させなくてもよい。すなわち、連結溝24は、必ずしも形成する必要はない。また、意匠溝23自体も必ずしも形成する必要はない。
【0047】
・上記各実施形態において、係止部13(44a)と係止爪21(51a)は、必ずしも設ける必要はない。
・上記各実施形態において、係止部13(44a)と係止爪21(51a)との位置関係が逆であってもよい。すなわち、電池蓋7に係止部13(44a)が、ケース本体に係止爪21(51a)が形成されていてもよい。
【0048】
・上記各実施形態において、電池蓋7と防水部材26とは一体的に形成されていればよい。すなわち、インサート成形に限らず、2色成形などであってもよい。
・上記各実施形態において、シリコンゴムは朱色に限らず他の色であってもよい。すなわち、電池蓋7(51)と異なる色であればよい。従って、電池蓋7の色も黒色に限定されるものではない。
【0049】
・上記各実施形態において、段差部12は省略してもよい。
・上記各実施形態において、防水部材26はシリコンゴムに限らず常温弾性を有し液体の通過を防止する素材であればよい。
【符号の説明】
【0050】
Si…ID信号、Sr…リクエスト信号、W1,W2,W3…幅、1…電子キーシステム、2,40…電子キー、3…施解錠制御装置、5…電子部品、6,41…ケース本体、7,51…電池蓋、8…カバー、9,49…電池(ボタン電池)、10…収容部、11,46…電池収容部、12…段差部、12a…内周面、12b,26b,30b…案内面、13,44a…係止部、21,51a…係止爪、22,52…防水部材設置部、23,55,56…意匠溝、24,57…連結溝、26,30,53…防水部材、26a,30a…撓み溝、26c…斜面、26d,30c…頂部、31…突出部、45…環状溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の通信対象との間で所定の無線通信を行うための電子部品と、前記電子部品に電力を供給するための電池とがケースに収容され、前記ケースは、前記電池が配置される電池収容部が一側面に開口して形成されたケース本体と、弾性を有し前記電池収容部の開口部を囲繞する環状の防水部材と一体形成されるとともに前記電池収容部の開口部を覆う電池蓋とを備え、前記電池蓋は、前記防水部材の径方向に対する直交方向から前記ケース本体に取り付けられる携帯機において、
前記防水部材は、前記電池蓋が前記ケース本体に取り付けられる際、前記電池収容部の開口端縁との係合を通じて、前記電池収容部内に進入する態様で内側へ弾性変形するとともに、この弾性変形により生じる弾性力によって前記電池収容部の内壁を外側に押圧することにより、前記電池蓋を前記ケース本体に取り付けた状態に維持しつつ、両者間を液密に保持することを特徴とする携帯機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯機において、
前記電池蓋が前記ケース本体に取り付けられる際に、前記防水部材に対する前記電池収容部の開口端縁に係合する部位には、当該係合に伴う内側への弾性変形の方向を案内する案内部が設けられていることを特徴とする携帯機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯機において、
前記防水部材は、前記防水部材の径方向へ対して直交する方向であって且つ前記電池蓋の装着側へその全周に亘って開口する環状の撓み溝を有してなることを特徴とする携帯機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の携帯機において、
前記防水部材は、その外壁面の全周に亘って突出するとともに、前記電池蓋が前記ケース本体に取り付けられる際に前記電池収容部の内壁面に沿って湾曲する撓み部を有してなることを特徴とする携帯機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の携帯機において、
前記電池蓋には、その裏面に形成されて前記防水部材が設置される防水部材設置部と、
同じく表面に形成された意匠溝と、これらを当該意匠溝と前記電池蓋の裏面における前記防水部材が設けられる部位とを電池蓋の内部において連結する連結溝とが形成され、
前記防水部材は、前記電池蓋と異なる色の素材で形成されることを特徴とする携帯機。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の携帯機において、
前記電池蓋及び前記ケース本体の何れか一方に形成される係止部と、
前記電池蓋及び前記ケース本体の何れか他方に形成され、前記電池蓋が前記ケース本体に取り付けられて前記防水部材が防水機能を発揮する状態となったときに前記係止部と係合する係止爪とを備えることを特徴とする携帯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−19408(P2012−19408A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156059(P2010−156059)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】