説明

携帯端末への発信者情報表示システムおよび発信者情報表示用プログラム

【課題】通信事業者との連携を要することなく、大きな設備投資もせずに、構内交換機経由で電話の転送を受けた携帯端末にて発信者情報を表示できるようにする。
【解決手段】電話機200から構内交換機10に電話の着信があったときに、公衆回線300上の携帯端末20に電話を転送する前に、インターネット400を介して携帯端末20に発信者番号を通知し、構内交換機10の宅内固定番号と関連付けてローカル電話帳記憶部26に記憶させる。その後、宅内固定番号を用いて携帯端末20に電話を転送し、ローカル電話帳記憶部26から宅内固定番号に対応する発信者番号を取得して表示部28に表示させることにより、構内交換機10と携帯端末20との間の通信だけで、宅内固定番号を用いて公衆回線300上の携帯端末20に電話を転送するという総務省の規約を守りながら、電話の転送を受けた携帯端末20において発信者情報を表示させることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末への発信者情報表示システムおよび発信者情報表示用プログラムに関するものであり、特に、宅内設置のPBX(Private Branch eXchange:構内交換機)経由で外部から着信した電話を公衆回線上の携帯端末に転送する場合に、当該携帯端末に対し発信者情報の表示を実現する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、公衆加入の電話機や構内交換機の配下にある固定電話機で電話を着信した際に発信者の電話番号を表示する技術、いわゆる発信者番号表示技術が広く知られている。さらに、着信した電話機に登録されている電子電話帳を照合し、発信者番号が電子電話帳に登録されていれば、発信者番号とそれに対応する発信者の氏名とを固定電話機に表示するようにした技術も広く知られている。
【0003】
一方、固定電話機で着信した電話を構内交換機経由で公衆回線上の携帯端末に転送する技術も広く提供されている。このように、固定電話機で着信した電話を携帯端末に転送する際にも、転送を受けた携帯端末において発信者の電話番号や氏名を表示することが求められている。
【0004】
ところが、一般的には、図4に示すように、外部から着信する電話を構内交換機経由で公衆回線上の携帯端末に転送する場合、転送先の携帯端末に表示される電話番号は、転送元(構内交換機)が加入している回線の契約番号もしくは付加番号となる。これは、総務省の規約により、番号詐欺ができないように、転送元の電話番号を使って電話の転送を行うよう取り決められているからである。技術的には、電話を着信した構内交換機上で発信者の電話番号を把握できるので、その発信者番号を設定して電話を転送する仕組みは実装可能である。しかし、実際には上位の通信事業者(キャリア)で制限がかけられており、エラーとなってしまう。
【0005】
これに対して、転送を受けた携帯端末において発信者情報を表示するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の携帯電話通信システムでは、交換機のほかにデータベースサーバおよび通信業者センタサーバを備え、通信事業者サーバを介して、発信者からの電話を携帯電話機で着信し、携帯電話機の表示部に発信者情報を表示するように成されている。
【0006】
具体的には、データベースサーバは、携帯電話機の電話番号(発信先番号)と公開電話番号との対応関係、および発信者を識別する情報(発信者識別情報)と発信者の電話機の電話番号との対応関係を管理する。交換機は、データベースサーバで管理される電話番号から公開電話番号への電話発信を受信したことをデータベースサーバへ通知する。この通知を受けたデータベースサーバは、発信者識別情報、交換機発信番号および発信先番号を指定し、通信事業センタサーバから命令の送信を要求する。携帯電話機は、通信事業センタサーバから送信された命令に従って、自ら有するアドレス帳内に、発信者識別情報および交換機発信番号を発信者情報として登録し、かつ交換機から転送される通話の受信に際してアドレス帳に登録された発信者識別情報を表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−147619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、発信先番号と公開電話番号との対応関係および発信者識別情報と発信者番号との対応関係を管理するための情報をあらかじめ登録したデータベースサーバが必要である。また、上記特許文献1に記載の技術では、通信事業者(キャリア)と連携して着信情報を携帯電話機にショートメッセージで送る仕組みとなっており、通信業者センタサーバを備えることが必要である。
【0009】
そのため、通信事業者内に追加設備を置くことや、データベースサーバや通信業者センタサーバなどの設備投資に大きなコストがかかってしまうことなどのため、現実的にはかなり高い障壁のある方法であった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、通信事業者との連携を要することなく、大きな設備投資もせずに、構内交換機経由で電話の転送を受けた携帯端末において発信者情報を表示できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明では、構内交換機において外部から発信された電話が着信し、公衆回線上の携帯端末に電話を転送させようとするときには、転送処理の先行動作として、公衆回線以外のネットワークを経由して携帯端末に発信者番号を通知し、当該発信者番号を、構内交換機の宅内固定番号と関連付けて携帯端末の記憶部に記憶させる。その後、構内交換機の宅内固定番号を用いて公衆回線上の携帯端末に電話を転送し、転送を受けた携帯端末が宅内固定番号により記憶部を照合することにより、当該宅内固定番号に関連付けられた発信者番号を取得して表示部に表示させるようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、構内交換機と携帯端末との間の通信だけで、構内交換機の宅内固定番号を用いて公衆回線上の携帯端末に電話を転送するという総務省の規約を守りながら、構内交換機経由で電話の転送を受けた携帯端末において発信者情報を表示させることができる。このため、通信事業者との連携は不要であり、構内交換機および携帯端末に実装するプログラム以外に大きな設備投資もせずに、構内交換機経由で外部からの電話の転送を受けた携帯端末において発信者情報を表示できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態による発信者情報表示システムの概略構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による発信者情報表示システムの構成要素である構内交換機および携帯端末の機能構成例を示すブロック図である。
【図3】本実施形態による発信者情報表示システムの動作例を示すフローチャートである。
【図4】外部から着信する電話を構内交換機経由で公衆回線上の携帯端末に転送する場合の一般的な動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による発信者情報表示システム100の概略構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の発信者情報表示システム100は、発信元の電話機200から発信された電話を受信して公衆回線300上の携帯端末20に転送する機能を有する構内交換機(PBX)10と、当該電話の転送を受ける携帯端末20とを備えて構成されている。
【0015】
構内交換機10は、公衆回線300を介して発信元の電話機200や携帯端末20と接続される。携帯端末20は、公衆回線300を介して構内交換機10や発信元の電話機200と接続される。また、構内交換機10と携帯端末20との間は、インターネット400(本発明における「公衆回線以外のネットワーク」に相当する)を介してTCP(Transmission Control Protocol)により常時接続される。携帯端末20は、電話機能を有する端末であり、例えば携帯電話機、スマートフォンあるいはタブレット端末などにより構成される。
【0016】
構内交換機10および携帯端末20には、発信者情報表示用のアプリケーションプログラム10a,20aがそれぞれインストールされており、これらのアプリケーションプログラム10a,20aが連携して、発信元の電話機200から着信する電話を構内交換機10を介して携帯端末20に転送する場合に、転送先の携帯端末20に発信者情報を表示させる。
【0017】
図2は、本実施形態による発信者情報表示システム100の構成要素である構内交換機10および携帯端末20の機能構成例を示すブロック図である。図2に示す機能構成は、例えば、図1に示したアプリケーションプログラム10a,20aを記憶したRAMあるいはROMと、CPUあるいはMPUを備えたマイクロコンピュータと、不揮発性のメモリ(何れも図示せず)とを備えて実現される。
【0018】
したがって、構内交換機10および携帯端末20が図2に示す機能を果たすように動作させるアプリケーションプログラム10a,20aを例えばCD−ROMのような記録媒体に記録し、これを構内交換機10および携帯端末20に読み込ませることによって、本実施形態の発信者情報表示システム100を実現することができる。上記アプリケーションプログラム10a,20aを記録する記録媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク、DVD、不揮発性メモリカード等を用いることができる。また、上記アプリケーションプログラム10a,20aをインターネット400等のネットワークを介して構内交換機10および携帯端末20にそれぞれダウンロードすることによっても実現できる。
【0019】
図2に示すように、構内交換機10は、アプリケーションプログラム10aによって実現される機能構成として、発信者番号通知部11および電話転送部12を備えている。構内交換機10は、これらの機能構成の他に、固定番号記憶部13を更に備えている。
【0020】
一方、携帯端末20は、アプリケーションプログラム20aによって実現される機能構成として、記憶制御部21、応答部22、発信者情報取得部23および表示制御部24を備えている。携帯端末20は、これらの機能構成の他に、電話帳記憶部25、ローカル電話帳記憶部26(本発明の記憶部に相当する)、予備電話帳記憶部27および液晶ディスプレイ等の表示部28を更に備えている。なお、発信者情報取得部23および表示制御部24の機能は、携帯端末20に元々組み込まれている電話アプリケーションプログラムを一部利用して実現するようにしてもよい。
【0021】
まず、構内交換機10の構成について説明する。固定番号記憶部13は、不揮発性のメモリであり、構内交換機10に設定されている固有の電話番号である宅内固定番号を記憶している。また、固定番号記憶部13は、宅内固定番号と異なる予備の固定番号も記憶している。電話転送部12において電話の転送を行う際に、通常時は宅内固定番号を使用する。ただし、インターネット400の接続が確立できない異常時には、電話転送に予備固定番号を使用する。
【0022】
発信者番号通知部11は、公衆回線300を介して発信元の電話機200から発信された電話を構内交換機10の電話転送部12にて受信(着信)したときに、その着信通知を電話転送部12から受けて、構内交換機10の公知の手法により発信元の電話機200の電話番号である発信者番号を取得する。そして、公衆回線300以外のネットワークであるインターネット400を利用して、携帯端末20に発信者番号を通知する。
【0023】
また、発信者番号通知部11は、通知した発信者番号が携帯端末20に正常に送られて発信者情報として記憶されたときに携帯端末20から返信されてくる応答信号を受信する。発信者番号通知部11は、この応答信号を所定時間以内に受信したときは、発信者情報が携帯端末20に記憶されたことを電話転送部12に通知する。一方、応答信号を所定時間以内に受信しなかったとき、発信者番号通知部11は、発信者情報が携帯端末20に記憶されなかったことを電話転送部12に通知する。
【0024】
電話転送部12は、発信者番号通知部11による発信者番号の通知が行われた後に、構内交換機10の公知の手法により、固定番号記憶部13に設定されている宅内固定番号(インターネット400の接続が確立できない異常時には予備固定番号)を用いて、発信元の電話機200から受信した電話を公衆回線300により携帯端末20へ転送する。
【0025】
具体的には、電話転送部12は、発信者番号通知部11による発信者番号の通知が行われてから所定時間以内に携帯端末20から応答信号を受信したときは、宅内固定番号を用いて、発信元の電話機200から受信した電話を公衆回線300により携帯端末20へ転送する。一方、携帯端末20から所定時間以内に応答信号を受信しなかったときは、予備固定番号を用いて、発信元の電話機200から受信した電話を公衆回線300により携帯端末20へ転送する。
【0026】
次に、携帯端末20の構成について説明する。電話帳記憶部25は、不揮発性のメモリであり、1以上の電話番号と1以上の氏名とを関連付けて構成した電子電話帳を記憶する。この電子電話帳は、携帯端末20のユーザが図示しない操作部を操作して任意に設定したものであり、電話機能を有する携帯端末20であれば普通に有している公知の情報である。
【0027】
記憶制御部21は、構内交換機10の発信者番号通知部11により構内交換機10からインターネット400を介して発信者番号が通知されたときに、通知された発信者番号を、構内交換機10の宅内固定番号と関連付けてローカル電話帳記憶部26に記憶させる。なお、構内交換機10の宅内固定番号は、ローカル電話帳記憶部26にあらかじめ記憶されている。あるいは、発信者番号通知部11が発信者番号と共に宅内固定番号を携帯端末20に通知するようにしてもよい。
【0028】
記憶制御部21は、構内交換機10から通知された発信者番号をローカル電話帳記憶部26に記憶させる際に、発信者番号により電話帳記憶部25を照合する。そして、発信者番号に関連付けられた氏名が電子電話帳として登録されていれば、その氏名を取得する。記憶制御部21は、こうして取得した氏名を発信者番号と共に発信者情報として、宅内固定番号と関連付けてローカル電話帳記憶部26に記憶させる。一方、発信者番号に関連付けられた氏名が電子電話帳として登録されていなければ、記憶制御部21は、発信者番号のみを発信者情報としてローカル電話帳記憶部26に記憶させる。
【0029】
ローカル電話帳記憶部26は、不揮発性のメモリであり、構内交換機10の宅内固定番号と、構内交換機10から通知された発信者番号(この発信者番号に対応する氏名が電話帳記憶部25に電子電話帳として登録されている場合は、発信者番号および氏名)とを関連付けて構成した電子電話帳を一時的に記憶する。一時的というのは、例えば、次に構内交換機10から新たな発信者番号が通知されてくるまでの間という意味である。すなわち、新たな発信者番号が通知された場合、当該新たな発信者番号を含む発信者情報によってローカル電話帳記憶部26の記憶内容は更新される。
【0030】
予備電話帳記憶部27は、不揮発性のメモリであり、構内交換機10の予備固定番号と、構内交換機10が設置されている施設(例えば、携帯端末20を使用するユーザが所属する会社)から電話が転送されてきたことを意味する所定の文字列(例えば「会社電話着信」など)とを関連付けて構成した予備の電子電話帳を記憶する。なお、構内交換機10の予備固定番号および所定の文字列は、予備電話帳記憶部27にあらかじめ記憶されている。所定の文字列は、テキスト情報であってもよいし、画像情報であってもよい。
【0031】
応答部22は、記憶制御部21により発信者情報を宅内固定番号と関連付けてローカル電話帳記憶部26に記憶させる処理が完了したときに、インターネット400を介して構内交換機10の発信者番号通知部11に応答信号を返信する。応答信号を受信した発信者番号通知部11は、発信者情報がローカル電話帳記憶部26に記憶されたことを電話転送部12に通知する。
【0032】
なお、インターネット400による常時接続が確立していれば、携帯端末20では構内交換機10から発信者番号を正常に受信し、応答部22が所定時間以内に応答信号を構内交換機10に返すことができる。一方、ノイズや通信環境などの影響によりインターネット400の常時接続による通信状態が悪化すると、携帯端末20では構内交換機10から発信者番号を正常に受信することができなくなり、応答部22が所定時間以内に応答信号を構内交換機10に返すことはなくなる。この場合に発信者番号通知部11は、発信者情報がローカル電話帳記憶部26に記憶されなかったことを電話転送部12に通知する。
【0033】
発信者情報取得部23は、構内交換機10の電話転送部12により宅内固定番号を用いて電話が転送されてきたときに、ローカル電話帳記憶部26を照合し、宅内固定番号に関連付けられた発信者情報(発信者番号および氏名のうちローカル電話帳記憶部26に実際に記憶されている情報)を取得する。また、発信者情報取得部23は、構内交換機10の電話転送部12により予備固定番号を用いて電話が転送されてきたときに、予備電話帳記憶部27を照合し、予備固定番号に関連付けられた文字列「会社電話着信」を取得する。
【0034】
発信者情報取得部23は、ローカル電話帳記憶部26から発信者情報を取得した場合は、その発信者情報を表示制御部24に通知する。一方、発信者情報取得部23は、予備電話帳記憶部27から所定の文字列「会社電話着信」を取得した場合は、その文字列を表示制御部24に通知する。
【0035】
表示制御部24は、発信者情報取得部23から発信者情報が通知された場合には、当該発信者情報を表示部28に表示させる。一方、発信者情報取得部23から所定の文字列が通知された場合には、表示制御部24は当該文字列を表示部28に表示させる。
【0036】
次に、上記のように構成した本実施形態による発信者情報表示システム100の動作を説明する。図3は、本実施形態による発信者情報表示システム100の動作例を示すフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートは、公衆回線300を介して発信元の電話機200から発信された電話を構内交換機10にて受信したときに開始する。
【0037】
図3において、公衆回線300を介して発信元の電話機200から発信された電話を構内交換機10の電話転送部12にて受信したときに、まず発信者番号通知部11は、構内交換機10の公知の手法により発信者番号を取得して、インターネット400を介して携帯端末20に発信者番号を通知する(ステップS1)。
【0038】
携帯端末20では、発信者番号の通知を受けた記憶制御部21が、電話帳記憶部25を照合し、発信者番号に関連付けられた氏名が電子電話帳として登録されていれば、その氏名を取得する(ステップS2)。そして、記憶制御部21は、発信者情報(構内交換機10から通知された発信者番号、電話帳記憶部25から氏名を取得した場合は更にその氏名)を、宅内固定番号に関連付けてローカル電話帳記憶部26に記憶させる(ステップS3)。
【0039】
記憶制御部21により発信者情報をローカル電話帳記憶部26に記憶させる処理が完了すると、応答部22は、インターネット400を介して構内交換機10に応答信号を返信する(ステップS4)。なお、インターネット400の常時接続による通信状態が悪化して、携帯端末20で構内交換機10からの発信者番号を正常に受信できないときは、ステップS2,S3の処理は行われない。よって、発信者番号通知部11による発信者番号の通知から所定時間以内に、ステップS4で応答部22が応答信号を構内交換機10に返すこともない。
【0040】
構内交換機10では、発信者番号通知部11は、ステップS1で発信者番号の通知を行ってから所定時間以内に、携帯端末20から応答信号が返信されてきたか否かを判定する(ステップS5)。そして、携帯端末20から所定時間以内に応答信号を受信したと判断した場合、発信者番号通知部11は、ローカル電話帳記憶部26に発信者情報が記憶されたことを電話転送部12に通知する。この通知を受けた電話転送部12は、固定番号記憶部13に記憶されている宅内固定番号を用いて、発信元の電話機200から受信した電話を公衆回線300により携帯端末20へ転送する(ステップS6)。
【0041】
一方、携帯端末20から所定時間以内に応答信号を受信しなかったと判断した場合、発信者番号通知部11は、ローカル電話帳記憶部26に発信者情報が記憶されなかったことを電話転送部12に通知する。この通知を受けた電話転送部12は、固定番号記憶部13に記憶されている予備固定番号を用いて、発信元の電話機200から受信した電話を公衆回線300により携帯端末20へ転送する(ステップS7)。
【0042】
携帯端末20の発信者情報取得部23は、構内交換機10から電話の転送を受けて、その転送に使われた固定電話番号が宅内固定番号か否かを判定する(ステップS8)。具体的には、発信者情報取得部23は、構内交換機10の公知の手法と同様の手法によって、転送に使われた固定電話番号を取得し、それが宅内固定番号か否かを判定する。この判定を行うために、発信者情報取得部23は、少なくとも宅内固定番号をあらかじめ把握している。
【0043】
ここで、電話転送に使われた固定電話番号が宅内固定番号であると判断した場合、発信者情報取得部23は、ローカル電話帳記憶部26を照合し、宅内固定番号に関連付けられた発信者情報を取得する(ステップS9)。そして、取得した発信者情報を表示制御部24に通知する。
【0044】
一方、電話転送に使われた固定電話番号が宅内固定番号ではない、つまり予備固定番号であると判断した場合は、発信者情報取得部23は、予備電話帳記憶部27を照合し、予備固定番号に関連付けられた所定の文字列を取得する(ステップS10)。そして、取得した文字列を表示制御部24に通知する。
【0045】
最後に、表示制御部24は、ステップS9またはステップS10にて発信者情報取得部23により取得された情報(発信者情報または所定の文字列)を表示部28に表示させる(ステップS11)。
【0046】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、構内交換機10において発信元の電話機200から発信された電話を受信したときに、公衆回線300上の携帯端末20にその電話を転送する前に、インターネット400での常時接続を利用して携帯端末20に発信者番号を通知し、当該発信者番号を、構内交換機10の宅内固定番号と関連付けて携帯端末20のローカル電話帳記憶部26に記憶させておく。その後、構内交換機10の宅内固定番号を用いて公衆回線300上の携帯端末20に電話を転送し、転送を受けた携帯端末20が宅内固定番号によりローカル電話帳記憶部26を照合することにより、当該宅内固定番号に関連付けられた発信者番号を取得して表示部28に表示させるようにしている。
【0047】
このように構成した本実施形態によれば、構内交換機10と携帯端末20との間の通信だけで、構内交換機10の宅内固定番号を用いて公衆回線300上の携帯端末20に電話を転送するという総務省の規約を守りながら、構内交換機10を介して電話の転送を受けた携帯端末20において発信者情報を表示させることができる。このため、通信事業者との連携は不要であり、構内交換機10および携帯端末20に実装するアプリケーションプログラム10a,20a以外に大きな設備投資もせずに、発信元の電話機200から構内交換機10で着信した電話の転送を受けた携帯端末20に発信者情報を表示させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、構内交換機10から携帯端末20に発信者番号が通知されたときに、発信者番号により電話帳記憶部25を照合し、発信者番号に関連付けられた氏名があれば当該氏名を取得し、発信者番号と共にローカル電話帳記憶部26に記憶させる。そして、その後に構内交換機10から携帯端末20に対して宅内固定番号を用いて電話が転送されてきたときに、ローカル電話帳記憶部26から発信者番号と氏名とを取得して表示部28に表示させるようにしている。
【0049】
このように構成した本実施形態によれば、携帯端末20が一般的に備えている電子電話帳を利用して、発信元の電話機200から構内交換機10で着信した電話の転送を受けた携帯端末20において発信者番号に加えて発信者の氏名も表示させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、宅内固定番号と異なる予備固定番号と所定の文字列とを関連付けて構成した予備の電子電話帳を携帯端末20の予備電話帳記憶部27に記憶させておく。そして、インターネット400の接続状態が悪くて発信者番号を携帯端末20に通知できないときは、予備固定番号を用いて電話を構内交換機10から携帯端末20へ転送し、当該予備固定番号により予備電話帳記憶部27を照合することによって取得した「会社電話着信」という所定の文字列を表示部28に表示させるようにしている。
【0051】
インターネット400の接続状態が悪くて発信者番号を携帯端末20に通知できないときに、予備固定番号ではなく宅内固定番号を用いて電話を転送すると、以前の着信時に構内交換機10から携帯端末20に通知されて記憶された古い発信者番号や氏名がローカル電話帳記憶部26から取得されて表示されてしまう。これに対して、上記実施形態のように、現在の着信時に発信者番号を構内交換機10から携帯端末20に通知できないときは、予備固定番号を用いて電話を転送することにより、間違った発信者情報が表示されてしまうことを防ぐことができる。
【0052】
また、上記のように構成した本実施形態によれば、万が一にもインターネット400の接続状態が悪くて発信者番号を携帯端末20にあらかじめ通知して記憶させておくことができない場合でも、構内交換機10が設置された会社等の施設から電話が転送されてきたことを意味する所定の文字列が表示される。このため、誰から電話がかけられてきたのかが分からないとしても、少なくとも会社にかけられた電話の転送であることは把握することができる。
【0053】
なお、電話の転送を受けた携帯端末20において発信者情報を表示した後、携帯端末20の通話ボタンを押すことなく着信動作が終了したとき、あるいは、通話ボタンを押して通話を行った後でその電話を切ったときに、ローカル電話帳記憶部26から発信者情報を削除して記憶内容をクリアするのであれば、予備固定番号ではなく宅内固定番号を用いて電話を転送するようにしてもよい。
【0054】
この場合、次の着信時にインターネット400の接続状態が悪くて発信者番号が構内交換機10から携帯端末20に通知されないと、発信者情報がローカル電話帳記憶部26に記憶されていない状態となる。そのため、電話の転送に使われた宅内固定番号をもとにローカル電話帳記憶部26から発信者情報を取得することができず、表示部28には何も表示されないことになる。この場合でも、今回の着信とは関係のない間違った発信者情報が表示されてしまうことは防ぐことができる。また、発信者情報が何も表示されないことにより、会社にかけられた電話の転送であると推測することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、電話帳記憶部25から発信者番号に対応する氏名を取得したときは、その氏名を発信者番号と共にローカル電話帳記憶部26に記憶させる例について説明したが、発信者番号に代えて氏名だけをローカル電話帳記憶部26に記憶させるようにしてもよい。逆に、電話帳記憶部25は利用せず、発信者番号だけをローカル電話帳記憶部26に記憶させるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、構内交換機10と携帯端末20との間をインターネット400で常時接続しておく例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、発信元の電話機200から発信された電話を構内交換機10にて受信したときに、構内交換機10と携帯端末20との間をインターネット400のTCPで接続するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、構内交換機10の電話転送部12により電話が転送されてきたときに、その転送に使われた構内交換機10の固定電話番号が宅内固定番号であるか否かを判定し、その判定結果に応じて、ローカル電話帳記憶部26または予備電話帳記憶部27の何れかを照合する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、転送に使われた固定電話番号が宅内固定番号であるか否かは判定せず、取得した固定電話番号によりローカル電話帳記憶部26および予備電話帳記憶部27の両方を照合することにより、当該固定電話番号(宅内固定番号または予備固定番号)に関連付けられた氏名または所定の文字列を取得するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、インターネット400の接続状態が悪くて発信者番号を構内交換機10から携帯端末20に通知できない場合に、予備固定番号を用いて電話を転送し、当該予備固定番号に対応する所定の文字列を表示部28に表示させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、所定の文字列が表示された状態で携帯端末20のユーザが通話ボタンを押して電話に出た場合に、構内交換機10側で発信者番号を自動で読み上げるようにしてもよい。
【0059】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 構内交換機
10a 構内交換機の発信者情報表示用アプリケーションプログラム
11 発信者番号通知部
12 電話転送部
13 固定番号記憶部
20 携帯端末
20a 携帯端末の発信者情報表示用アプリケーションプログラム
21 記憶制御部
22 応答部
23 発信者情報取得部
24 表示制御部
25 電話帳記憶部
26 ローカル電話帳記憶部
27 予備電話帳記憶部
300 公衆回線
400 インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信元の電話機から発信された電話を受信して公衆回線上の携帯端末に転送する機能を有する構内交換機と、上記電話の転送を受ける上記携帯端末とを備えて構成される携帯端末への発信者情報表示システムであって、
上記構内交換機は、
上記発信元の電話機から発信された電話を受信したときに、当該発信元の電話機の電話番号である発信者番号を取得し、上記公衆回線以外のネットワークを経由して上記携帯端末に上記発信者番号を通知する発信者番号通知部と、
上記発信者番号通知部による上記発信者番号の通知後に、上記構内交換機に設定されている電話番号である宅内固定番号を用いて、上記発信元の電話機から受信した電話を上記公衆回線により上記携帯端末へ転送する電話転送部とを備え、
上記携帯端末は、
上記発信者番号通知部により上記構内交換機から上記発信者番号が通知されたときに、当該通知された発信者番号を、上記宅内固定番号と関連付けて記憶部に記憶させる記憶制御部と、
上記電話転送部により上記構内交換機から上記宅内固定番号を用いて電話が転送されてきたときに、上記記憶部を照合し、上記宅内固定番号に関連付けられた上記発信者番号を取得する発信者情報取得部と、
上記発信者情報取得部により取得された上記発信者番号を発信者情報として表示部に表示させる表示制御部とを備えたことを特徴とする携帯端末への発信者情報表示システム。
【請求項2】
上記携帯端末は、1以上の電話番号と1以上の氏名とを関連付けて構成した電子電話帳を記憶する電話帳記憶部を更に備え、
上記記憶制御部は、上記発信者番号通知部により上記構内交換機から上記発信者番号が通知されたときに、上記電話帳記憶部を照合し、上記発信者番号に関連付けられた氏名があれば当該氏名を取得し、当該取得した氏名を上記通知された発信者番号に代えてまたは加えて、上記宅内固定番号と関連付けて上記記憶部に記憶させ、
上記発信者情報取得部は、上記電話転送部により上記構内交換機から上記宅内固定番号を用いて電話が転送されてきたときに、上記記憶部を照合し、上記宅内固定番号に関連付けられた上記発信者番号および上記氏名のうち上記記憶部に実際に記憶されている情報を取得し、
上記表示制御部は、上記発信者情報取得部により取得された情報を上記発信者情報として上記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末への発信者情報表示システム。
【請求項3】
上記携帯端末は、上記記憶制御部により上記発信者番号を上記宅内固定番号と関連付けて上記記憶部に記憶させる処理が完了したときに、上記公衆回線以外のネットワークを経由して上記構内交換機に応答信号を返す応答部を更に備え、
上記構内交換機の上記電話転送部は、上記携帯端末から所定時間以内に上記応答信号を受信したときに、上記宅内固定番号を用いて、上記発信元の電話機から受信した電話を上記公衆回線により上記携帯端末へ転送することを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末への発信者情報表示システム。
【請求項4】
上記携帯端末は、上記宅内固定番号と異なる予備固定番号と所定の文字列とを関連付けて構成した予備の電子電話帳を記憶する予備電話帳記憶部を更に備え、
上記構内交換機の上記電話転送部は、上記携帯端末から上記所定時間以内に上記応答信号を受信しなかったときは、上記予備固定番号を用いて、上記発信元の電話機から受信した電話を上記公衆回線により上記携帯端末へ転送し、
上記発信者情報取得部は、上記電話転送部により上記構内交換機から上記予備固定番号を用いて電話が転送されてきたときに、上記予備電話帳記憶部を照合し、上記予備固定番号に関連付けられた文字列を取得し、
上記表示制御部は、上記発信者情報取得部により上記文字列が取得された場合に、当該文字列を上記表示部に表示させることを特徴とする請求項3に記載の携帯端末への発信者情報表示システム。
【請求項5】
発信元の電話機から発信された電話を受信して公衆回線上の携帯端末に転送する機能を有する構内交換機と、上記電話の転送を受ける上記携帯端末とのそれぞれにおいて動作し、上記携帯端末へ発信者情報を表示させる発信者情報表示用プログラムであって、
上記構内交換機において、上記発信元の電話機から発信された電話を受信したときに、当該発信元の電話機の電話番号である発信者番号を取得し、上記公衆回線以外のネットワークを経由して上記携帯端末に上記発信者番号を通知する発信者番号通知手段、
上記構内交換機において、上記発信者番号通知手段による上記発信者番号の通知後に、上記構内交換機に設定されている電話番号である宅内固定番号を用いて、上記発信元の電話機から受信した電話を上記公衆回線により上記携帯端末へ転送する電話転送手段、
上記携帯端末において、上記発信者番号通知手段により上記構内交換機から上記発信者番号が通知されたときに、当該通知された発信者番号を、上記宅内固定番号と関連付けて記憶部に記憶させる記憶制御手段、
上記携帯端末において、上記電話転送手段により上記構内交換機から上記宅内固定番号を用いて電話が転送されてきたときに、上記記憶部を照合し、上記宅内固定番号に関連付けられた上記発信者番号を取得する発信者情報取得手段、および
上記携帯端末において、上記発信者情報取得手段により取得された上記発信者番号を発信者情報として表示部に表示させる表示制御手段、
として上記構内交換機および上記携帯端末を機能させるためのコンピュータ読み取り可能な発信者情報表示用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−138689(P2012−138689A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288643(P2010−288643)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(502114559)エス・アンド・アイ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】