説明

携帯端末及びその発光制御方法

【課題】筐体の色が変わってもLED光が筺体を透過した後に意図した色が得られるように、容易にLEDの発光色を調整できる携帯端末を提供する。
【解決手段】複数色の発光部を備える多色発光手段が筺体内部に配置された携帯端末であって、多色発光手段に対してパルス幅変調信号を出力し、多色発光手段を制御する発光制御手段と、所定の発光色を得るために各色発光部についてパルス幅変調信号の出力値を求め、発光制御手段に設定する信号出力値設定手段と、筺体色に応じたパルス幅変調信号の補正情報を保持する補正情報保持手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末及びその発光制御方法に関し、特に、例えばカラーバリエーションが豊富でLEDを筺体内部に実装した携帯電話機などに好ましく適用される発光制御の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの携帯端末は、高機能化や小型化が進む一方で、デザイン性もユーザ志向として大きく重視されるようになった。また、このような携帯端末の状態をユーザに伝える手段として、LED(Light Emitting Diode)の色や点灯パターンで知らせる方法が広く用いられている。
【0003】
しかし、従来の携帯端末では、電話の着信時や通話時に多色LEDが光る部分について筐体に穴を開け、白色や透明のプラスチックをはめ込むなど、デザインの面で妨げとなっていた。また、多色LEDの光を筐体に透過させる構造とした場合は、筐体の色によって透過したLEDの色が変化して見えてしまいユーザに誤解を招く恐れがあった。すなわち、筐体を透過してLEDを光らせる構造である場合、筐体色によってはLEDの透過色が制限され、意図した色でユーザに示すことができないといった問題があった。
【0004】
例えば特許文献1には、ユーザに対して視覚的に強くかつ多彩に訴えることのできる新たな面発光部を備えた携帯端末装置が開示されている。当該携帯端末装置は、筺体の外側の面に配置された面発光部と、透明あるいは半透明で面発光部を覆う着脱可能なパネル部材を備え、着信時などには面発光部全体が発光し、これによりパネル部材もその図柄に応じて発光する。
【特許文献1】特開2004−80390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示された携帯端末装置は、変更したパネル部材に応じて面発光部の発光パターンを変更させるものであり、無色透明でない筺体を透過した後のLED光が意図した色となるようにすることはできない。すなわち、筺体通過後にLEDの光が意図した色となるように発光色の調整を行うものではない。
【0006】
そこで、本発明は、筐体の色が変わってもLED光が筺体を透過した後に意図した色が得られるように、容易にLEDの発光色を調整できる携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の第1の携帯端末は、複数色の発光部を備える多色発光手段が筺体内部に配置された携帯端末であって、多色発光手段に対してパルス幅変調信号を出力し、多色発光手段を制御する発光制御手段と、所定の発光色を得るために各色発光部についてパルス幅変調信号の出力値を求め、発光制御手段に設定する信号出力値設定手段と、筺体色に応じたパルス幅変調信号の補正情報を保持する補正情報保持手段と、を有する。
【0008】
また、本発明の第一の携帯端末の発光制御方法は、複数色の発光部を備える多色発光手段が筺体内部に配置された携帯端末の発光制御方法であって、筺体色情報と各色発光部のパルス幅変調信号に対する補正係数とが対応付けられた補正情報を保持する記憶手段から、携帯端末の筺体色情報に対応した補正係数を取得する補正係数取得ステップと、補正係数取得ステップにより取得された補正係数を用いて、各色発光部のパルス幅変調信号の出力値を補正する信号出力値補正ステップと、信号出力値補正ステップにより得られた補正出力値を、多色発光手段へのパルス幅変調信号の出力値として設定する信号出力値設定ステップと、信号出力値設定ステップにより設定された出力値でパルス幅変調信号を出力し、多色発光手段を制御する発光制御ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、携帯端末の筐体色が変わっても、LED光が筺体を透過した後に意図した色が得られるように、容易にLEDの発光色を調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の述べる実施形態は、本発明の好適な実施の形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0011】
本発明の実施形態として、図1に示すような多色LEDを備える携帯電話機について説明する。本実施形態の携帯電話機では、以下の構成により、筐体色が変わっても同じ色で透過するようにLEDの発光色を容易に調整することが可能となっている。
【0012】
本実施形態の携帯端末装置は、図2に示すように、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色のLEDを具備した多色LED208、PWM(Pulse Width Modulation)信号の出力によって多色LED208を制御するLEDコントローラ207、LEDコントローラ207に対してPWM信号のデューティ値を設定するCPU201、携帯端末の制御プログラム及びデータが書き込まれた内蔵メモリ202、そしてLCD203、キー入力回路204、マイク205、スピーカ206を有する。
【0013】
内蔵メモリ202は、制御プログラム、電話帳、メール、スケジュール、メモ、音声、画像、動画など携帯電話機101が扱う様々なデータを格納する。また、内蔵メモリ202は、請求項1の補正情報保持手段に対応し、図5に示すような筐体色情報501と補正乗数テーブル502を保持する。
【0014】
CPU201は、制御全般を行うための中央演算処理装置である。また、CPU201は、請求項1の信号出力値設定手段に対応し、演算で求めたR、G、Bの各デューティ値に対して筐体色に応じた補正乗数をかけて補正デューティ値を算出し、該補正デューティ値をLEDコントローラ207に設定する。
【0015】
LEDコントローラ207は、請求項1の発光制御手段に対応し、CPU201で設定されたPWM信号のデューティ値をもとに、多色LED208のPWM信号制御を行う回路である。
【0016】
多色LED208は、R、G、Bの3色のLEDがパッケージされた発光素子である。また、多色LED208は、請求項1の多色発光手段に対応し、LEDコントローラ207から入力したPWM信号に従って各色のLEDを点灯、点滅する。
【0017】
キー入力回路204は、テンキー、機能キー等を含んだキーボードからなるボタンスイッチ群で構成される。また、LCD203、マイク205、スピーカ206は、当業者において一般的によく知られているため、構成の説明は省略する。
【0018】
本実施形態における多色LEDの発光制御について図2を用いて説明する。
【0019】
図2において、多色LED208のR、G、Bの制御は、LEDコントローラ207によるPWM信号の出力によって行われる。PWM信号のデューティ値は、R、G、BそれぞれをCPU201で演算し、LEDコントローラ207へ設定する。なお、ここで演算されるデユーティ値は、所望の色(筺体通過前の色)を得るための各色LEDに対するPWM信号の出力値といえる。
【0020】
また、PWM信号のデューティ値は0〜128の範囲で設定が可能であり、128の時にLEDの輝度が最大となる。また、R、G、BのそれぞれのPWM信号出力をCPU201からLEDコントローラへ設定するよってON、OFF制御することができる。
【0021】
例えば、R(赤)とG(緑)の混色により多色LED208を黄色で点滅させる場合には、R(赤)とG(緑)のPWM信号出力をON、B(青)のPWM信号出力をOFFにして、図3に示すように、CPU201からLEDコントローラ207にデューティ値を設定することで多色LED208を黄色点滅させることが可能である。
【0022】
次に、図4を用いて加法混色と呼ばれる色空間での色の組み合わせについて説明する。R、G、Bの各デューティ値を全て128(100%)の設定とすると、本図に示すように、多色LED208のR(赤)、G(緑)、B(青)の混色により、7種類の色の組み合わせが可能である。
【0023】
加法混色では、多色LED208のR、G、Bの全てのPWM信号出力をONにすると、白色の発色となる。次に、例えば、R(赤)、G(緑)のPWM信号出力をONにすると、黄色の発色となり、B(青)、R(赤)のPWM信号出力をONにすると、マゼンダ色の発色となり、G(緑)、B(青)のPWM信号出力をONすると、シアン色の発色となる。
【0024】
次に、図5を用いてPWM信号のデューティ値の補正について説明する。先に述べたように、本実施形態では、図5に示すような筐体色情報501と補正乗数テーブル502が内蔵メモリ202にあらかじめ書き込まれている。まずは上で説明した通りに、色の組み合わせに応じて、R、G、Bの各デューティ値がCPU201で算出される。
【0025】
次に、筐体色情報501と、それに対応した補正乗数を、補正乗数テーブル502より読み出す。例えば、読み出した筐体色情報501が1であった場合、補正乗数テーブル502より、R:0.5、G:1.0、B:1.0の補正乗数が読み出される。
【0026】
次に、上記で算出したR、G、Bの各デューティ値に、補正乗数テーブル502から読み出した補正乗数をかける。例えば、算出された赤、緑、青の各デューティ値がそれぞれ、128、128、0であったとすると、以下のような計算となる。
128(Rデューティ値) × 0.5(R補正乗数) = 64
128(Gデューティ値) × 1.0(G補正乗数) = 128
0(Bデューティ値) × 1.0(B補正乗数) = 0
【0027】
CPU201は、上記の計算結果を最終的なデューティ値として、LEDコントローラ207に設定する。これにより、筐体色に応じた、R、G、Bの各デューティ値の補正が可能となる。
【0028】
こうして、図6に示すように、多色LED208が発したLED発光色602が筐体601を透過して、筐体外に透過色603となって透過する構造である場合、例えば筐体色がピンクであるときには、透過色603は赤味が強くなり、R(赤)とG(緑)の混色によりLED発行色602が黄色を発色しても透過色603は、赤に寄った色となる。その場合、補正乗数を調整して赤色デューティ値を小さくすることで、透過色を黄色にすることが可能である。
【0029】
上述した本実施形態によれば、CPUの演算で求めたデューティ値に筺体色に応じた補正係数を乗じて補正デューティ値を算出し、該補正デューティ値をLEDコントローラに設定して多色LEDの制御を行うため、CPUで演算する全てのデューティパターン制御に手を加えることなく、色の調整が容易に可能であることである。
【0030】
また、上述した本実施形態によれば、所望の透過色を得るための多色LEDの発光色調整が容易になるため、多色LEDが光る部分について筐体に穴を開けたりする必要がなく、LED光を筐体に透過させて筐体外の透過色を得る構造を採用できるため、デザイン性に自由度が与えられる。
【0031】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0032】
すなわち、上記実施例においては、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色LEDを筐体に透過させた場合の透過色の調整方法について説明したが、3色LEDをLCDのバックライトとして使用してもよい。LCDモジュールの特性として、赤味が強かったり、青みが強かったりしていた場合にLCDバックライトの色を調整することによって、LCDを正しい色で発色させることが可能となり、色の再現性を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の外観を示した斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯電話機の概略構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施形態におけるPWM信号の出力状態の一例を示したチャート図である。
【図4】加法混色と呼ばれる色空間での色の組み合わせを説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態におけるLED発光制御に用いられる補正データの一例を示した図である。
【図6】本発明の実施形態に係る携帯電話機のLED発光状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
101 携帯電話機
201 CPU
202 内蔵メモリ
203 LCD
204 キー入力回路
205 マイク
206 スピーカ
207 LEDコントローラ
208 多色LED
501 筺体色情報
502 補正乗数テーブル
601 筺体
602 LED発光色
603 透過色

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色の発光部を備える多色発光手段が筺体内部に配置された携帯端末であって、
前記多色発光手段に対してパルス幅変調信号を出力し、前記多色発光手段を制御する発光制御手段と、
所定の発光色を得るために各色発光部についてパルス幅変調信号の出力値を求め、前記発光制御手段に設定する信号出力値設定手段と、
筺体色に応じたパルス幅変調信号の補正情報を保持する補正情報保持手段と、
を有することを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記補正情報保持手段は、筺体色情報と各色発光部のパルス幅変調信号に対する補正係数とが対応付けられた補正対応テーブルを前記補正情報として保持することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記信号出力値設定手段は、前記補正情報保持手段から携帯端末の筺体色情報に対応した前記補正係数を取得し、前記求めた各色発光部のパルス幅変調信号の出力値に前記補正係数を乗じて補正出力値を算出し、前記補正出力値を前記発光制御手段に設定することを特徴とする請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記発光制御手段は、前記信号出力値設定手段により設定された前記補正出力値で前記多色発光手段に対してパルス幅変調信号を出力することを特徴とする請求項3に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記多色発光手段は、赤色、緑色、青色の3色のLEDがパッケージ化された発光素子であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項6】
複数色の発光部を備える多色発光手段が筺体内部に配置された携帯端末の発光制御方法であって、
筺体色情報と各色発光部のパルス幅変調信号に対する補正係数とが対応付けられた補正情報を保持する記憶手段から、携帯端末の筺体色情報に対応した前記補正係数を取得する補正係数取得ステップと、
前記補正係数取得ステップにより取得された前記補正係数を用いて、各色発光部のパルス幅変調信号の出力値を補正する信号出力値補正ステップと、
前記信号出力値補正ステップにより得られた前記補正出力値を、前記多色発光手段へのパルス幅変調信号の出力値として設定する信号出力値設定ステップと、
前記信号出力値設定ステップにより設定された出力値でパルス幅変調信号を出力し、前記多色発光手段を制御する発光制御ステップと、
を有することを特徴とする携帯端末の発光制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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