説明

携帯端末装置および画像補正プログラム

【課題】画像の乱れを防止可能な携帯端末装置を提供すること。
【解決手段】放送局から放送される映像を視聴可能な携帯電話機(1)が、Iピクチャを記憶した記憶部(19)と、放送局からの放送波を受信中に当該放送波の受信品質を監視し、受信品質の劣化を検出した場合に、記憶部(19)から、受信品質の劣化を検出したタイミングに対応するIピクチャを読み出し、当該読み出したIピクチャを画面上に表示させるプロセッサ(11)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上波デジタルテレビジョン放送の1セグメントを用いた近距離放送を視聴可能な携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機用のテレビジョン放送として、地上波デジタルテレビジョン放送の1セグメントを用いたテレビジョン放送(以後、ワンセグ放送と呼ぶ)が普及している。また、ワンセグ放送の一例として、半径数mから数10mの狭域の受信エリアをカバーする微弱電波を用いた「小規模放送局による近距離放送」が提案されている。
【0003】
小規模放送局による近距離放送の仕様は、基本的には、一般(近距離放送以外)のワンセグ放送と同じである。したがって、ユーザは、ワンセグ放送を受信可能な携帯電話機を利用して、小規模放送局による近距離放送を視聴することができる。このような小規模放送局による近距離放送は、微弱電波の特性を生かし、デパート,コンビニエンスストア,レストラン等、地域や店舗に合った最新の番組を提供することができる。
【0004】
ここで、従来の近距離放送視聴処理の一例を具体的に説明する。携帯電話機では、映像再生チューナでテレビジョン放送を受信しさらに受信した放送を画面に表示させながら、探波チューナでチャンネルをスキャンし、その他の放送波の検出を行う。探波チューナにより放送波が検出された場合、携帯電話機では、さらに、検出された放送波のチャンネル情報と一般放送用チャンネル記憶部に記憶されているチャンネル情報とを比較する。その結果、検出された放送波のチャンネル情報が一般放送用チャンネル記憶部に登録されていない場合には、携帯電話機では、検出された放送波が小規模放送局による近距離放送であると判断する。そして、検出された放送波のチャンネル情報を小規模放送用チャンネル記憶部に登録する。その後、携帯電話機では、映像再生チューナのチャンネルを、登録された小規模放送用のチャンネルに切り替え、近距離放送の映像を画面に表示する。このよう技術を用いることにより、ユーザは、たとえば、店舗内でのお勧めコンテンツ放送を店舗内等の所定の範囲内で視聴することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−182800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術においては、半径数mから数10mの受信エリアをカバーする微弱電波を使用しているため、店舗内を移動中に受信状態が悪化して画像品質が劣化し、ワンセグ特有の「画面が崩れた状態」になる、という問題があった。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、近距離放送の受信状態が悪化した場合における画像の乱れを防止可能な携帯端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する携帯端末装置は、一つの態様において、放送局から放送される映像を視聴可能な携帯端末装置であって、Iピクチャを記憶した記憶部と、前記放送局からの放送波を受信中に当該放送波の受信品質を監視し、受信品質の劣化を検出した場合に、前記記憶部から、受信品質の劣化を検出したタイミングに対応するIピクチャを読み出し、当該読み出したIピクチャを画面上に表示させる制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する携帯端末装置の一つの態様によれば、近距離放送の受信状態が悪化した場合における画像の乱れを防止することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、携帯端末装置の一例である携帯電話機の構成例を示す図である。
【図2】図2は、携帯電話機における画像補正処理の概要を示す図である。
【図3】図3は、携帯電話機における画像補正処理の概要を示す図である。
【図4】図4は、携帯電話機の画像補正処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、受信圏内/圏外検出の判断基準を示す図である。
【図6】図6は、Iピクチャ補間処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する画像補正プログラムおよび携帯端末装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例では、携帯端末装置の一例として携帯電話機を使用するが、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。たとえば、本願開示の技術は、PDA(Personal Digital Assistant),ノートパソコン,ゲーム機,カーナビ等、ワンセグ放送を受信可能な装置であれば同様に適用可能である。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例の携帯電話機の構成例を示す図である。図1において、本実施例の携帯電話機1は、プロセッサ11と地上波デジタル受信部12と復調分離部13と音声デコード部14と画像デコード部16とデータ放送デコード部17と、赤外線通信等を行う外部通信部18とを有する。なお、これらの構成は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成することが可能である。
【0013】
また、図1において携帯電話機1は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部15と、ROMおよびRAMを有する記憶部19と、放送波を受信するアンテナ20と、スピーカ21を有する。なお、図1に示す携帯電話機1の構成例は、説明の便宜上、本実施例の処理にかかわる構成を列挙したものであり、携帯電話機能を実現するすべての構成を表現したものではない。
【0014】
プロセッサ11は、本実施例の画像補正プログラム等を実行し、地上波デジタル受信部12,復調分離部13,音声デコード部14,表示部15,画像デコード部16,データ放送デコード部17,外部通信部18,記憶部19を制御する。
【0015】
また、地上波デジタル受信部12は、アンテナ20を介して放送波を受信し、ベースバンド信号への変換およびA/D変換等の処理を行う。復号分離部13は、受信信号に対して、復調,誤り訂正復号等の処理を行い、TS(Transport Stream)パケットを復元する。このTSパケットには、映像や音声の他に、字幕や番組情報などのデータ情報が含まれている。さらに、復号分離部13は、このTSパケットを、映像と音声とデータ放送のTSパケットにそれぞれ分離する。
【0016】
また、音声デコード部14は、分離されたTSパケットから音声信号を生成し、スピーカ21から音声を出力する。画像デコード部16は、分離されたTSパケットから映像信号を生成する。データ放送デコード部17は、分離されたTSパケットからデータ放送信号を生成する。表示部15は、たとえば、映像信号とデータ放送信号を重ね合わせた画像を表示する。
【0017】
また、記憶部19には、本実施例の画像補正プログラム等の各種プログラムが予め記憶されている。プロセッサ11は、これらのプログラムを読み出して実行する。また、記憶部19には、後述するIピクチャ補間処理用のIピクチャが記憶される。
【0018】
つづいて、上記本実施例の携帯電話機1における画像補正処理の概要について説明する。図2および図3は、携帯電話機1における画像補正処理の概要を示す図である。なお、携帯電話機1はワンセグ放送を受信可能な携帯電話機であることを前提とする。また、小規模放送局2による近距離放送の仕様は一般のワンセグ放送と同じであるため、ユーザは、ワンセグ放送を受信可能な携帯電話機1を用いて、近距離放送を視聴することができる。また、近距離放送では、同一の映像を繰り返し放送していることを前提とする。
【0019】
たとえば、携帯電話機1が小規模放送局2による近距離放送の受信エリア3内に在圏している場合に、ユーザが携帯電話機1に対し近距離放送の視聴を指示する操作を行うと、携帯電話機1は、近距離放送の放送波の受信を開始する。そして、携帯電話機1は、アンテナ20を介して得られる受信信号を復号することにより、映像データとしてIピクチャ(Intra picture)およびB/Pピクチャ(Predictive picture/Bi−directional predictive picture)を取得する(図2,図3、S1)。図3のS1には、復号により得られた映像データ(図3上部参照)の一例が記載されている。具体的には、1秒間のフレーム数を表すフレームレートを15FPSとし、GOP(Group Of Pictures)長を5とした場合の例が記載されており、この場合、次のIピクチャまでの間隔は、「1÷15×5=0.33秒」となる。携帯電話機1では、この映像データ(Iピクチャ,B/Pピクチャ)を用いて表示部15に映像を表示する(図3のS1の画像補正プログラム適用後の映像データ参照)。
【0020】
一方で、携帯電話機1は、近距離放送の受信開始とともに、たとえば、外部通信部18による赤外線通信機能を利用して、小規模放送局2に設置されたコンピュータに対し、繰り返し放送される映像のIピクチャの一括転送を要求する。そして、その応答として、赤外線通信部18による赤外線通信機能を利用して、小規模放送局2に設置されたコンピュータから、上記で要求したIピクチャを一括受信する(図2、S2)。本実施例では、赤外線通信機能の一例として、IrSimpleを採用する。なお、このIピクチャの受信処理については、プロセッサ11による制御で携帯電話機1側において自立的に実行してもよく、また、携帯電話機1がクレードルに置かれたことを契機に実行することとしてもよい。また、本実施例では、Iピクチャを受信する場合にIrSimpleを利用しているが、これに限らず、IrSimple以外の赤外線通信やBluetooth(登録商標)等の近距離通信を用いてもよい。
【0021】
S2によるIピクチャの受信が完了すると、携帯電話機1は、放送波の受信品質の監視を開始する。この監視は、プロセッサ11が地上波デジタル受信部12を制御して常時行うこととしてもよいし、また、プロセッサ11が地上波デジタル受信部12を制御して定期的(5秒毎等)に行うこととしてもよい。
【0022】
この状態で、たとえば、携帯電話機1のユーザが受信エリア3の圏外への移動を開始すると(図2,図3、S3)、携帯電話機1は、受信品質の劣化を検出したタイミングで、映像データをS2で受信しておいたIピクチャで補間する(図2,図3、S4)。たとえば、受信品質が劣化した場合には、図3に示すように映像データが得られなくなり(図3上部の復号後の映像データ参照)、携帯電話機1の表示部15の映像が乱れることになる(図2、図3参照)。そこで、本実施例の携帯電話機1では、受信品質の劣化を検出したタイミング以降の映像データを、予め一括受信しておいたIピクチャ(同一の放送フレーム番号のIピクチャ)で、補間する(図3、S4−1)。そして、つぎのIピクチャのフレームタイミング(0.33秒後)まで、補間したIピクチャを連続して表示部15に表示する(図3、S4−2)。以後、携帯電話機1では、受信品質が回復し所定の映像データが得られるまで、Iピクチャのフレームタイミングで上記補間処理を繰り返し実行することにより(図3、S4−3)、ワンセグ放送特有の画像の乱れを回避する。
【0023】
その後、受信品質の回復を検出した場合、携帯電話機1は、上記補間処理を終了し、復号により得られた映像データ(Iピクチャ,B/Pピクチャ)を用いて表示部15に映像を表示する(図3、S5)。なお、携帯電話機1では、近距離放送(図3の「ワンセグ終了」に対応)の受信終了を契機として、S2にて一括受信した補間用のIピクチャを破棄する。
【0024】
つづいて、携帯電話機1の動作をフローチャートに従い具体的に説明する。図4は、本実施例の画像補正処理を示すフローチャートである。
【0025】
たとえば、ユーザが携帯電話機1に対してワンセグ放送受信の操作を行うと、プロセッサ11は、ユーザの操作により指定されたチャネルIDを記憶部19に記憶し、地上波デジタル受信部12にワンセグ放送の放送波の受信を開始させる(S11)。
【0026】
なお、受信中のワンセグ放送が近距離放送の場合、プロセッサ11は、赤外線通信部18による赤外線通信機能を利用して、小規模放送局2に設置されたコンピュータに対し、繰り返し放送される映像に対応するIピクチャの一括転送を要求する。そして、プロセッサ11は、その応答として、赤外線通信部18による赤外線通信機能を利用して、小規模放送局2に設置されたコンピュータから、要求したIピクチャを一括受信し、記憶部19に記憶する。
【0027】
また、プロセッサ11は、地上波デジタル受信部12が小規模放送局2による近距離放送またはそれ以外の一般のワンセグ放送を受信中において(S11)、受信圏内であるかどうかを監視する(S12)。すなわち、プロセッサ11は、受信信号の受信品質を監視し、所定の受信品質を満たす場合に受信圏内であると判断し、所定の受信品質を満たしていない場合に受信圏外であると判断する。図5は、受信圏内/圏外検出の判断基準を示す図である。図5では、一例として、受信品質をCNR(Carrier to Noise ratio)とする。プロセッサ11は、このCNRがしきい値(たとえば、30dB)未満の場合に受信圏外であると判断する。なお、本実施例では受信品質としてCNRを用いているが、これに限るものではない。
【0028】
たとえば、S12による処理において、プロセッサ11により受信圏内であると判断された場合(S12、Yes)、地上波デジタル受信部12は、プロセッサ11からの転送指示に基づきA/D変換後の受信信号を復調分離部13に転送する。つぎに、復調分離部13では、プロセッサ11の制御により、受信信号に対してOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調および誤り訂正復号等の処理を行い、TSパケットを復元する(S13)。そして、復調分離部13は、復元したTSパケットを映像/音声パケットおよびデータ放送パケットに分離する(S14)。つぎに、音声デコード部14、画像デコード部16およびデータ放送デコード部17では、プロセッサ11の制御により、分離後のTSパケットを復号して、それぞれ音声信号、映像信号、データ放送信号を生成する(S15)。TSパケットを復号後、表示部15は、プロセッサ11の制御により映像を表示する(S16)。
【0029】
一方、S12による処理において、受信圏外であると判断した場合(S12、No)、プロセッサ11は、記憶部19に記憶されている受信チャネルIDに基づいて、受信中の放送波が近距離放送のものかそれ以外のワンセグ放送のものかを判断する(S17)。たとえば、受信中の放送波が近距離放送以外のワンセグ放送の放送波の場合(S17、No)、プロセッサ11は、上記と同様の処理でS13〜S16の処理を実行する。一方、受信中の放送波が近距離放送の放送波の場合(S17、Yes)、プロセッサ11は、図6に示す「Iピクチャ補間」処理を実行する(S18)。具体的には、プロセッサ11は、まず、S12において受信圏外であると判断したタイミングにおける放送フレーム番号を取得し(S21)、同一の放送フレーム番号に対応するIピクチャが記憶部19に記憶されているかどうかを判断する(S22)。同一の放送フレーム番号に対応するIピクチャが記憶部19に記憶されている場合(S22、Yes)、プロセッサ11は、記憶部19からそのIピクチャを読み出し、受信圏外と判断したタイミングの映像データを、読み出したIピクチャで補間する(S23)。そして、プロセッサ11は、補間したIピクチャを連続して表示部15に表示させる(S16)。なお、同一の放送フレーム番号に対応するIピクチャが記憶部19に記憶されていない場合(S22、No)、プロセッサ11は、同一番号に対応するIピクチャが記憶部19に記憶されていることが確認できるまで、S21およびS22の処理を繰り返し実行する。
【0030】
そして、プロセッサ11は、地上波デジタル受信部12が小規模放送局2による近距離放送またはそれ以外の一般のワンセグ放送を受信している間(S11)、上記S12〜S18の処理を繰り返し実行する。なお、プロセッサ11では、近距離放送の受信終了を契機として、記憶部19に記憶されている補間用のIピクチャを破棄する。これにより、利用可能な領域を増やすことができる。
【0031】
上述してきたように、本実施例では、携帯電話機が、近距離放送の放送波を受信中に、繰り返し放送される映像のIピクチャを一括受信する。そして、携帯電話機は、放送波の受信品質の劣化を検出した場合に、受信品質の劣化を検出したタイミング以降の映像データを、予め一括受信しておいたIピクチャ(同一の放送フレーム番号のIピクチャ)で、補間することとした。これにより、小規模放送局による近距離放送の受信状態が悪化した場合であっても、ディスプレイにおける画像の乱れを防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1 携帯電話機
2 小規模放送局
3 受信エリア
11 プロセッサ
12 地上波デジタル受信部
13 復調分離部
14 音声デコード部
15 表示部
16 画像デコード部
17 データ放送デコード部
18 外部通信部
19 記憶部
20 アンテナ
21 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送局から放送される映像を視聴可能な携帯端末装置において、
Iピクチャを記憶した記憶部と、
前記放送局からの放送波を受信中に当該放送波の受信品質を監視し、受信品質の劣化を検出した場合に、前記記憶部から、受信品質の劣化を検出したタイミングに対応するIピクチャを読み出し、当該読み出したIピクチャを画面上に表示させる制御部と、
を有することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記放送波の受信開始後の所定のタイミングで、前記放送局から放送される映像に対応する映像データに含まれるIピクチャの転送を要求する、
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記制御部は、受信品質が回復するまでの間、前記読み出したIピクチャの画面表示を維持する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
Iピクチャを記憶した記憶部を有するコンピュータにより実行される画像補正プログラムであって、
放送局からの放送波を受信中に当該放送波の受信品質を監視し、受信品質の劣化を検出した場合に、前記記憶部から、受信品質の劣化を検出したタイミングに対応するIピクチャを読み出し、当該読み出したIピクチャを画面上に表示させる、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする画像補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−199704(P2012−199704A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61753(P2011−61753)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】