説明

携帯端末装置

【課題】通信品質が維持されるようにアンテナ素子を選択する携帯端末装置を提供する。
【解決手段】携帯端末装置が備える制御回路が実行する処理は、受信回路からの信号に基づいて、受信の開始を検知するステップ(S510)と、角度センサからの信号に基づいて、携帯端末装置の傾斜角度を検出するステップ(S520)と、検出された傾斜角度に基づいて、電波の偏波面に最も近い主偏波面を有するアンテナ素子を選択するステップ(S530)と、選択されたアンテナ素子を介して、信号を受信するように、アンテナと受信回路とを接続するステップ(S540)と、スイッチによって選択されたアンテナ素子を介して受信した信号を処理し、処理後の信号を表示部またはスピーカに出力するステップ(S550)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置に関し、より特定的には、当該携帯端末装置の傾斜角度に応じて複数のアンテナ素子を選択して使用する携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に無線通信では、通信方向にアンテナの指向性を合わせることにより、または、通信に用いられる電波の偏波面とアンテナの主偏波面とを合わせることにより、エネルギー効率のよい通信を行うことが可能となる。
【0003】
しかし、携帯端末装置を用いた無線通信の場合、当該携帯端末装置のユーザの持ち方、当該携帯端末装置の傾斜角度、あるいは近接物の影響などは、常に変化する。そのため、当該携帯端末装置の近接物を含めたアンテナ系としての指向性の向き、または、主偏波面の角度は、基地局や放送局に対して変動する。その結果、安定した通信品質の維持が困難となる場合がある。
【0004】
このような問題を解決するために、装置に複数のアンテナ素子を備え、受信感度の良好なアンテナ素子を選択使用することで、通信品質を維持するという技術が提案されている。しかし、このようなアンテナ切替機能によると、各アンテナ素子の受信レベルを常に測定して比較を行う必要がある。その結果、携帯端末装置の消費電力が増加するため、電池容量が限られた携帯端末装置に搭載する場合には稼動持続時間の面で問題が発生する場合がある。また、携帯端末装置の構成が複雑となりコストが増加する場合がある。
【0005】
そこで、携帯端末装置に角度センサを備え、当該角度センサにより検知された装置の傾斜角度に基づいて、複数アンテナ素子のうち基地局や放送局の方向へ指向性の向いたアンテナ素子を選択使用するという簡易な構成のアンテナ切替機能を備えた携帯端末装置が提案された。
【0006】
たとえば、特開2008−187485号公報(特許文献1)は、「ユーザの装置筐体の握り方や基地局に対するユーザの立ち位置の変化に拘わらず、受信感度を良好に維持して、安定した通信品質を維持することができる携帯端末装置」を開示している([要約]の[課題]参照)。具体的には、「携帯端末装置10には、データを無線通信により送受信するための少なくとも3個以上のアンテナ素子31,32,33を、装置筐体11上に分散して配置し、無線通信によるデータの送受信を制御する制御回路41には、送受信処理時に、装備されているアンテナ素子31,32,33の内、受信感度の一番優れたアンテナ素子を角度センサの出力に基づき選択使用するアンテナ切替機能を備える。」というものである([要約]の[解決手段]参照)。
【0007】
また、特開2009−81769号公報(特許文献2)は、「装置の設置方向が変化した場合にも特定の通信対象との間で安定した通信が可能な、低コストで消費電力が小さい無線通信装置」を開示している([要約]の[課題]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−187485号公報
【特許文献2】特開2009−081769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、携帯端末装置を用いた無線通信では、通信に用いられる電波は、反射や回折、散乱などを起こしながらあらゆる方向から到来する。そのため、装置のアンテナの指向性を基地局や放送局に向けることが通信品質の維持にとって最適であるとは限らない。特に、基地局や放送局が見通し外である通信環境においては、基地局や放送局の方向には障害物が存在するため、アンテナの指向性を基地局や放送局の側へ向けても通信品質が改善される可能性は低い。
【0010】
また、特開2008−187485号公報に開示された技術によると、ユーザによる装置の持ち方や、装置の近接物によってアンテナ素子の指向性は変動するため、角度センサにより検知される装置の傾斜角度情報のみでは、ユーザや近接物を含めたアンテナ系としての指向性を制御するアンテナ切替機能は効率よく動作しない場合がある。
【0011】
そこで、本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、安定した通信品質が維持される携帯端末装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施の形態に従う携帯端末装置は、動作周波数帯の主偏波面が異なる複数のアンテナ素子と、各アンテナ素子を介してデータを受信するための受信回路と、携帯端末装置の傾斜角度を検知する角度センサと、角度センサにより検知された傾斜角度に基づいて、複数のアンテナ素子から、無線通信に用いられる電波の偏波面に最も近い主偏波面を有するアンテナ素子を選択するためのアンテナ切替手段とを備える。
【0013】
好ましくは、携帯端末装置は、当該携帯端末装置の位置を検出するための位置センサと、無線通信に用いられる電波の偏波面として地域ごとに予め規定された偏波面の種類を格納するための記憶手段とをさらに備える。アンテナ切替手段は、角度センサによって検知された傾斜角度と、位置センサによって検出された携帯端末装置の位置と、携帯端末装置が存在する地域の偏波面の種類とに基づいて、無線通信に用いられる電波の偏波面に最も近い主偏波面を有するアンテナ素子を選択するように構成されている。
【0014】
好ましくは、複数のアンテナ素子は、直線偏波で動作する。
好ましくは、複数のアンテナ素子のうちの少なくとも二つの主偏波面は、10度以上の角度で交差するように構成されている。
【0015】
好ましくは、複数のアンテナ素子のうちの少なくとも二つの主偏波面は、直交するように構成されている。
【0016】
好ましくは、角度センサは、ジャイロセンサ、静電容量型加速度センサ、地磁気センサのいずれかを含む。
【0017】
好ましくは、位置センサは、全地球測位システムである。
好ましくは、位置センサは、携帯電話システムの基地局より得られる情報に基づいて、携帯端末装置の位置を検出する。
【0018】
好ましくは、位置センサは、地上波デジタル放送の受信により得られる情報に基づいて、携帯端末装置の位置を検出する。
【0019】
好ましくは、位置センサは、マルチメディア放送の受信により得られる情報に基づいて、携帯端末装置の位置を検出する。
【発明の効果】
【0020】
ある局面に従う携帯端末装置によると、安定した通信品質が維持される。
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】地上波デジタル放送の受信を可能とするタブレット型の携帯端末装置10を示す図である。
【図2】携帯端末装置10のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図3】携帯端末装置10の使用態様を表わす図である。
【図4】図3に示されるような2つの使用状況について、アンテナ素子31,32の受信特性を表わす表である。
【図5】携帯端末装置10が実行する一連の処理の一部を表わすフローチャートである。
【図6】携帯端末装置600のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図7】第2の実施の形態に係る携帯端末装置700のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図8】記憶装置43におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。
【図9】携帯端末装置700を構成する制御回路42が実行する一連の処理の一部を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0023】
<第1の実施の形態>
図1〜図6を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、地上波デジタル放送の受信を可能とするタブレット型の携帯端末装置10を示す図である。携帯端末装置10は、たとえば、携帯電話機、スマートフォン、携帯テレビジョン受信装置、携帯可能なコンピュータ等であるが、これらに限られない。携帯端末装置10は、少なくとも、信号の受信機能または送信機能を有していればよい。
【0024】
図1を参照して、携帯端末装置10は、筐体11と、表示部21と、操作部22と、アンテナ素子31,32と、角度センサ41とを備える。表示部21と操作部22とは、筐体11の表面に構成されている。
【0025】
操作部22は、たとえば、データや処理命令の入力を受け付けるための操作キー23と、あるいは、データや処理命令を入力するためのポインティングデバイス24とを含む。表示部21は、ある局面において、タッチパネルである。この場合、タッチパネルは、操作部22としても機能する。携帯端末装置10のユーザは、表示部21上の表示の押下、ピンチイン、あるいはピンチアウトのような操作を行なうことにより、携帯端末装置10に対して、データや処理命令を入力することができる。
【0026】
携帯端末装置10は、さらに、筐体11の両側面の上端に、音声を再生出力するためのスピーカ25を備える。また、携帯端末装置10は、筐体11の内部に、地上波デジタル放送を受信するための2つのアンテナ素子31,32を備える。具体的には、アンテナ素子31,32は、表示部21を構成するユニットの周囲に配置されている。
【0027】
ある局面において、アンテナ素子31は、筐体11の上側面に沿って配置されている。アンテナ素子32は、筐体11の右側面に沿って配置されている。アンテナ素子31,32が配置される向きを直交させることにより、各アンテナの主偏波面も、直交する。アンテナ素子31,32の各主偏波面は、ある局面において、10度以上の角度で交差するように構成されている。
【0028】
アンテナ素子31,32として、たとえば、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、逆Fアンテナ等が、筐体11内の空きスペースに応じて選択され得る。また、アンテナ素子31,32としては、要求される出力性能に応じて、ロッドアンテナ、板金アンテナ、フレキシブル基板アンテナ、樹脂成形アンテナ等が使用できる。
【0029】
角度センサ41は、筐体11の内部に配置されて、携帯端末装置10の傾斜角度を検出するように構成されている。ある局面において、角度センサ41は、ジャイロセンサ、静電容量型加速度センサ、地磁気センサ等によって実現される。
【0030】
図2は、携帯端末装置10のハードウェア構成を表わすブロック図である。携帯端末装置10は、図1に示される構成に加えて、制御回路42と、記憶装置43と、スイッチ45と、受信回路46とを備える。
【0031】
制御回路42は、入力データや受信信号等を処理する。また、制御回路42は、アンテナ素子を切り替えるための制御信号44をスイッチ45に出力するように構成されている。たとえば、セルラー通信と呼ばれる移動通信網における通信では、日本国においては、基地局アンテナの偏波としては、常に、垂直偏波が用いられる。したがって、制御回路42は、主偏波面が最も垂直に近いアンテナ素子を選択する。
【0032】
記憶装置43は、各種のデータを格納する。格納されるデータは、携帯端末装置10を駆動するためのプログラム、携帯端末装置10の動作を制御するためのデータ等を含む。
【0033】
スイッチ45は、アンテナ素子31,32と受信回路とに接続されている。スイッチ45は、制御回路42から出力される制御信号44に基づいて、信号の受信のために使用されるアンテナ素子を切り替えるように構成されている。
【0034】
受信回路46は、アンテナ素子が受信した信号の復調を行う。受信回路46は、ある局面において、電話を受信するための回路、デジタルテレビ放送を受信するための回路等として構成される。
【0035】
図3を参照して、本実施の形態に係る携帯端末装置10の使用態様について説明する。図3(A)は、縦方向に配置された携帯端末装置10を表わす図である。図3(B)は、横方向に配置された携帯端末装置10を表わす図である。携帯端末装置10が使用される態様に応じてアンテナ素子31,32の主偏波面の方向が変化するため、アンテナ素子31,32の受信特性も変化する。
【0036】
図4を参照して、本実施の形態に係るアンテナ素子31,32の受信特性について説明する。図4は、図3に示されるような2つの使用状況について、アンテナ素子31,32の受信特性を表わす表である。
【0037】
図3(A)のように表示部21を縦画面として信号を受信する場合、たとえば、地上波デジタル放送を視聴する場合においては、アンテナ素子31の主偏波面が水平となり、アンテナ素子32の主偏波面が垂直となる。図3(B)のように表示部21を横画面として地上波デジタル放送を視聴する場合においては、アンテナ素子31の主偏波面が垂直となり、アンテナ素子32の主偏波面が水平となる。そこで、使用状況に応じて、地上波デジタル放送に使われる電波の偏波面と携帯端末装置10の受信アンテナの主偏波面とを合わせるように、受信に使用するアンテナを、アンテナ素子31とアンテナ素子32との間で切り替えることにより、携帯端末装置10の使用状況に応じてアンテナ素子の受信特性を向上させることができる。
【0038】
図5を参照して、携帯端末装置10の制御構造について説明する。図5は、携帯端末装置10が実行する一連の処理の一部を表わすフローチャートである。
【0039】
ステップS510にて、携帯端末装置10の制御回路42は、操作部22からの信号に基づいて、受信の開始を検知する。なお、後述するように、他の局面において、携帯端末装置10は、送信機能も有し得る。この場合、制御回路42は、操作部22からの出力に基づいて、送信または通信の開始を検知する。
【0040】
ステップS520にて、制御回路42は、角度センサ41からの信号に基づいて、携帯端末装置10の傾斜角度を検出する。
【0041】
ステップS530にて、制御回路42は、検出された傾斜角度に基づいて、電波の偏波面に最も近い主偏波面を有するアンテナ素子を選択する。
【0042】
ステップS540にて、制御回路42は、選択されたアンテナ素子を介して信号を受信するように、スイッチ45に対してアンテナ素子を切り替えるための制御信号を送信する。スイッチ45は、アンテナ素子31,32のうち制御信号によって特定されるアンテナ素子と受信回路46とを接続する。
【0043】
ステップS550にて、制御回路42は、スイッチ45によって選択されたアンテナ素子を介して受信した信号を処理し、処理後の信号を表示部21またはスピーカ25に出力する。携帯端末装置10がデジタルテレビジョン放送受信端末である場合には、表示部21は、テレビジョン放送される番組を表示する。
【0044】
なお、ある局面において、携帯端末装置10が待ち受け状態にあるとき、制御回路42は、アンテナ素子を選択するための処理は行なわない。このとき、制御回路42は、予め決められたアンテナ素子(以下「プライマリーアンテナ」ともいう。)を受信回路46に接続する。プライマリーアンテナとしては、たとえば、複数のアンテナ素子のうちアンテナ放射効率が最も良く、かつ、スイッチ45において消費される電力が最も少ないアンテナ素子が望ましい。
【0045】
以上のようにして、第1の実施の形態に係る携帯端末装置10によると、偏波面が地域や時間に依存することなく一定である無線システムにおいて、携帯端末装置10は、電波の偏波面に最も近いアンテナ素子を選択して、当該アンテナ素子からの信号を受信するように作動する。これにより、携帯端末装置10の姿勢によらずに、通信品質を維持することができる。
【0046】
<変形例>
図6を参照して、第1の実施の形態の変形例について説明する。図6は、携帯端末装置600のハードウェア構成を表わすブロック図である。携帯端末装置600は、たとえば、携帯電話機として実現される。本変形例に係る携帯端末装置600は、図2に示される構成に対して、受信回路46に代えて送受信回路610を備え、さらに、マイク620を備える。
【0047】
本変形例に係る制御回路42は、操作部22からの信号に基づいて、送信が行われることを検知すると、角度センサ41からの信号に基づき、アンテナ素子31,32から、送信に使用されるアンテナ素子を選択する。制御回路42は、アンテナ素子を選択すると、送受信回路610と選択されたアンテナ素子とを接続するための信号を、スイッチ45に送出する。たとえば、携帯端末装置600が携帯電話機として実現される場合、携帯端末装置600が電話の発信を検知すると、電波の偏波面に最も近い主偏波面を有するアンテナ素子をアンテナ素子31,32から選択する。これにより、通話時の音声品質が良好に維持され得る。
【0048】
なお、日本国の地上波デジタル放送においては、使われる電波の偏波面が地域によって異なる。そのため、携帯端末装置10は、上記のようにアンテナを切り替える場合には、携帯端末装置10が存在する地域の地上波デジタル放送で用いられる電波の偏波面の種類を、偏波面情報として保持しておく必要がある。
【0049】
そこで、本実施の形態に係る携帯端末装置10は、地上波デジタル放送で用いられる電波の地域による偏波面情報を、記憶装置43に格納している。偏波面情報の格納は、携帯端末装置10の製造時、あるいは、携帯端末装置10のユーザによる操作に応じて、偏波面情報の提供者からインターネットを介してダウンロードされてもよい。こうして、携帯端末装置10が存在する地域の偏波面情報と、角度センサ41による携帯端末装置10の傾斜角度と、携帯端末装置10の位置情報とを用いることにより、アンテナを選択して切り替える機能を実現することができる。
【0050】
なお、ある局面において、位置情報は、位置センサを用いて取得可能である。たとえば、位置情報は、地上はデジタル放送に含まれる信号から、あるいは、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)による測位の結果から、取得され得る。
【0051】
携帯端末装置10は、記憶装置43に格納されている各地域の偏波面情報と位置センサによって取得される携帯端末装置10の位置情報により、当該携帯端末装置10が存在する地域での地上波デジタル放送の電波が水平偏波で送られていることがわかった場合において、角度センサの情報に基づいて表示部21が縦画面として使用されていると判別すると、制御回路42は、受信アンテナとしてアンテナ素子31を選択し、アンテナ素子31からの信号が受信回路46に送られるように、アンテナ素子31と受信回路46とを接続するための制御信号44をスイッチ45に送る。
【0052】
一方、制御回路42は、角度センサの情報に基づいて表示部21が横画面として使用されていると判断すると、受信アンテナとしてアンテナ素子32を選択し、アンテナ素子32からの信号が受信回路46に送られるように、アンテナ素子32と受信回路46とを接続するための制御信号44をスイッチ45に送る。こうすることで、携帯端末装置10のアンテナの受信性能は向上し、安定した通信品質が確保され得る。
【0053】
以上説明した携帯端末装置10においては、筐体11内に配置されたアンテナ素子31,32は直交しており、互いの主偏波面も直交する。そのため、表示部21が縦画面として使用される状態から横画面として使用される状態に変化するような大きな変化に対しても、どちらかのアンテナ素子の主偏波面が地上波デジタル放送の電波の偏波面に対して良好な条件となる。したがって、携帯端末装置10の使用状況によって変化する傾斜角度に応じて、受信特性の優れたアンテナ素子に切り替えることによって、常にアンテナ素子の受信特性を良好に維持することができる。
【0054】
また、アンテナ素子31,32自体の主偏波面は、携帯端末装置10のユーザの握り方や近接物の影響の変化に対して変動しにくいため、角度センサ41による携帯端末装置10の傾斜角度のみに基づいたアンテナ切り替えによっても、通信品質が維持される。
【0055】
したがって、制御回路42は、角度センサ41により検知される携帯端末装置10の傾斜角度に基づいて主偏波面の異なるアンテナ素子31,32を切り替えることにより、受信特性を良好に維持できるアンテナ切替機能を実現することができる。結果として、簡易な構成によって消費電力を抑制しつつ、低コストを実現しながら、安定した通信品質が維持される。
【0056】
また、本実施の形態の携帯端末装置10によると、位置センサの機能は、地上波デジタル放送の電波に放送局情報または中継局情報などの受信エリアの判別が可能な情報が含まれる場合には、それらの情報を受信することで実現される。そのため、GPSのような測位装置を位置センサとして用いることなく、簡易な構成を実現することができる。なお、GPSのような測位装置が位置センサとして使用されてもよい。携帯端末装置10の位置情報が詳細に取得されるため、アンテナを選択するための詳細な制御が可能となる。
【0057】
<第2の実施の形態>
以下、図7〜図9を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は、第2の実施の形態に係る携帯端末装置700のハードウェア構成を表わすブロック図である。携帯端末装置700は、図2に示される構成に加えて、位置センサ710をさらに備える。位置センサ710の出力は、制御回路42に入力される。位置センサ710は、携帯端末装置700の位置を検出する。
【0058】
携帯端末装置700の位置の検出に関し、ある局面において、位置センサ710は、上述のGPSシステムによって実現される。他の局面において、携帯端末装置700が携帯電話機として機能する場合には、位置センサ710は、携帯電話システムを構成する基地局から送られる電波に含まれるデータを、携帯端末装置700の位置情報として取得する。他の局面において、携帯端末装置700がデジタルテレビジョン放送を受信できる端末であり、放送信号に放送局情報または中継局情報などの受信エリアの判別が可能な情報が含まれる場合には、位置センサ710は、放送信号の情報に基づいて、受信された信号を放送した放送局または中継局によりデジタルテレビジョン放送が行われる範囲を、携帯端末装置700の位置として検出する。さらに他の局面において、携帯端末装置700がマルチメディア放送を受信でき、放送信号に放送局情報または中継局情報などの受信エリアの判別が可能な情報が含まれる場合には、位置センサ710は、放送信号の情報に基づいて、受信された信号を放送した放送局または中継局によりマルチメディア放送が行われる範囲を、携帯端末装置700の位置として検出する。
【0059】
図8を参照して、携帯端末装置700のデータ構造について説明する。図8は、記憶装置43におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。記憶装置43は、地域と、偏波面情報とを格納している。図8に示される例では、4つの地域の各々について、当該地域の信号が水平偏波であるか垂直偏波であるかが規定されている。したがって、携帯端末装置700の位置が地域1〜地域4のいずれかとして検出されると、その検出された地域の電波が水平偏波であるか垂直偏波であるかが特定される。
【0060】
図9を参照して、携帯端末装置700の制御構造について説明する。図9は、携帯端末装置700を構成する制御回路42が実行する一連の処理の一部を表わすフローチャートである。なお、第1の実施の形態における処理と同一の処理には同一の番号が付されている。したがって、同一の処理の説明は繰り返さない。
【0061】
ステップS910にて、制御回路42は、通信または受信の開始が検知されたことに基づいて、携帯端末装置700の位置を検出する。携帯端末装置700がGPSのような測位機能を有する場合には、制御回路42は、携帯端末装置700の測位を実行する。携帯端末装置700がデジタルテレビジョン放送またはマルチメディア放送を受信する場合には、制御回路42は、受信した放送信号に含まれるデータに基づいて、放送が行われている場所を特定する。携帯端末装置700が携帯電話機である場合には、制御回路42は、受信した信号に含まれる基地局情報を、携帯端末装置700の位置を特定するための情報として取得する。
【0062】
ステップS920にて、制御回路42は、検出した位置に基づいて、当該位置における偏波面情報(記憶装置43)を特定する。
【0063】
ステップS930にて、制御回路42は、特定した偏波面(S920)と、検出した傾斜角度(S520)とに基づいて、電波の偏波面に最も近い主偏波面を有するアンテナ素子を、アンテナ素子31,32から選択する。その後、制御回路42は、選択されたアンテナ素子を介して信号を受信するようにスイッチを切り替える(S540)。
【0064】
以上のようにして、本発明の第2の実施の形態に係る携帯端末装置700によると、地域ごとに偏波面が異なる場合であっても、携帯端末装置700は、その地域の電波の主偏波面に応じたアンテナ素子を選択できるため、電波を確実に受信できる。その結果、通信の品質が維持される。
【0065】
なお、携帯端末装置10の具体的な構造は、上記実施の形態で示したように単一の筐体に限られない。たとえば、他の局面において、分割可能な2つの筐体(たとえば、上部筐体と下部筐体)からなる構成、または、筐体が折りたたみ式である構成が用いられてもよい。
【0066】
また、装置筐体内に装備するアンテナ素子の搭載数や配置は、上記の実施の形態に限られない。
【0067】
3個以上のアンテナ素子を配置するようにしてもよい。搭載するアンテナ素子を増やすことによって、携帯端末装置10の傾斜角度の変化に対して、受信特性の優れたアンテナ素子の候補が増えるため、携帯端末装置10の姿勢に応じて詳細に受信特性を維持することができる。
【0068】
また、本実施の形態に係る携帯端末装置10は、タブレット型の情報端末に限らない。例えば携帯電話機や、無線通信機能を備えたノートパソコンなどにも応用することができる。
【0069】
なお、アンテナが選択されるタイミングは、通信または受信の開始が検知された時に限られない。たとえば、通信中あるいは受信中に、携帯端末装置10のユーザは、携帯端末装置10を持ち替えたりすることにより、携帯端末装置10の傾斜角度が変わることもある。この場合、携帯端末装置10は、傾斜角度が予め定められた値を超えたことを検知すると、アンテナ素子を切り替えてもよい。これにより、通信中または受信中の品質の低下が防止される。
【0070】
また、不必要に頻繁な切り替えが起こらないようにするため、傾斜角度の閾値は、ヒステリシス性を持たせてもよく、あるいは、予め規定された一定時間の間に検出される傾斜角度の平均値に基づいて、アンテナ素子の選択が行われてもよい。
【0071】
また、地域によって偏波面が変わる無線通信システムもあり得る。たとえば、地上デジタル放送においては、エリアによって偏波面が異なるものもある。この場合、放送エリアが変わったときに偏波面が変わる可能性があるため、携帯端末装置は、放送エリアの変更を検知すると、アンテナ素子を選択する。これにより、一度選択されたアンテナ素子が改めて選択され得るため、通信品質の低下が防止され得る。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
10 携帯端末装置、11 筐体、21 表示部、22 操作部、23 操作キー、24 ポインティングデバイス、25 スピーカ、31,32 アンテナ素子、41 角度センサ、42 制御回路、43 記憶装置、45 アンテナ切替スイッチ、46 受信回路、600 携帯端末装置、610 送受信回路、620 マイク、700 携帯端末装置、710 位置センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末装置であって、
動作周波数帯の主偏波面が異なる複数のアンテナ素子と、
各前記アンテナ素子を介してデータを受信するための受信回路と、
前記携帯端末装置の傾斜角度を検知する角度センサと、
前記角度センサにより検知された前記傾斜角度に基づいて、前記複数のアンテナ素子から、無線通信に用いられる電波の偏波面に最も近い主偏波面を有するアンテナ素子を選択するためのアンテナ切替手段とを備える、携帯端末装置。
【請求項2】
前記携帯端末装置の位置を検出するための位置センサと、
無線通信に用いられる電波の偏波面として地域ごとに予め規定された偏波面の種類を格納するための記憶手段とをさらに備え、
前記アンテナ切替手段は、前記角度センサによって検知された前記傾斜角度と、前記位置センサによって検出された前記携帯端末装置の位置と、前記携帯端末装置が存在する地域の偏波面の種類とに基づいて、無線通信に用いられる電波の偏波面に最も近い主偏波面を有するアンテナ素子を選択するように構成されている、請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記複数のアンテナ素子は、直線偏波で動作する、請求項1または2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記複数のアンテナ素子のうちの少なくとも二つの主偏波面は、10度以上の角度で交差するように構成されている、請求項1または2に記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記複数のアンテナ素子のうちの少なくとも二つの主偏波面は、直交するように構成されている、請求項1または2に記載の携帯端末装置。
【請求項6】
前記角度センサは、ジャイロセンサ、静電容量型加速度センサ、地磁気センサのいずれかを含む、請求項1または2に記載の携帯端末装置。
【請求項7】
前記位置センサは、全地球測位システムである、請求項2に記載の携帯端末装置。
【請求項8】
前記位置センサは、携帯電話システムの基地局より得られる情報に基づいて、前記携帯端末装置の位置を検出する、請求項2に記載の携帯端末装置。
【請求項9】
前記位置センサは、地上波デジタル放送の受信により得られる情報に基づいて、前記携帯端末装置の位置を検出する、請求項2に記載の携帯端末装置。
【請求項10】
前記位置センサは、マルチメディア放送の受信により得られる情報に基づいて、前記携帯端末装置の位置を検出する、請求項2に記載の携帯端末装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−182706(P2012−182706A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44836(P2011−44836)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】