説明

携帯端末

【課題】高いアンテナ性能を有する2軸折畳携帯端末の提供。
【解決手段】第1筐体11と第2筐体12とを開閉自在に連結する第1ヒンジ部14と、第2筐体12と第3筐体13とを回転自在に連結する第2ヒンジ部15と、第3筐体13内に配置された表示部20と、第1無線システム部16と、少なくとも動作周波数の一部が第1無線システム部16と同じ第2無線システム部17と、第1筐体11内の第1ヒンジ部14側と対向する辺側かつ幅方向で一方の端部に配置された第1無線システム部16用の第1アンテナ素子18と、表示部20が前記携帯端末10の外側に配置されない閉じた状態で前記第3筐体13内の前記第2ヒンジ部15側と対向する辺側かつ幅方向で前記第1アンテナ素子18が配置された一方の端部と同じ側に配置された第2無線システム部17用の第2アンテナ素子19を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの回転軸を有する携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話は、折畳み式など用途に応じてユーザが筐体状態を選択できる様々な構造で普及している。その中には、待ち受け状態では表示画面が筐体表面にない「筐体閉じ状態」、通話状態では2つの筐体を開いた「開き状態」、筐体を閉じているにも関わらず表示画面が筐体表面にある「ビューア閉じ状態」の、3つの状態をとり得る回転2軸構造(スィーベル構造)がある。
【0003】
また、携帯電話には音声通話などに用いられるセルラ通信用無線システム以外にも、複数の無線システムが搭載されている。これら複数の無線システムの中でも、同一周波数で動作する複数の無線システムが同一の携帯電話に搭載されている場合がある。一例としては、BluetoothとWi−Fiのように、異なる無線システムではあるが2.400〜2.4835GHzの周波数を双方ともに使用する無線システムがある。このような2つの無線システムを同一筐体内に構成した場合、同一周波数で動作するアンテナが小さな筐体に2つ存在するため電磁結合影響によるアンテナ性能の劣化が問題になる場合が多い。
【0004】
スィーベル構造を有する携帯端末のアンテナ性能を確保する技術として以下のような特許文献がある。
特許文献1では、筐体閉じ状態とビューア閉じ状態の両方で一定のアンテナ性能を保つために、2本ともアンテナ素子が配置されていない側の筐体に近接しないよう、平衡系のアンテナ素子が、筐体の厚み方向で1本は必ず距離を保つよう構成されている。しかしながら、本文献には、同一周波数で同時に動作するアンテナ素子の電磁結合による性能劣化に関しては触れられていない。
【0005】
特許文献2では、筐体閉じ状態とビューア閉じ状態の両方で一定のアンテナ性能を保つために、アンテナ素子が2本ともアンテナ素子が配置されていない側の筐体内にあるアンテナ性能劣化要因となる金属物の影響を軽減するよう、アンテナ素子の両側から給電できる構造を有し、筐体の状態に応じて給電位置を選択する構造である。しかしながら、本文献には、同一周波数で同時に動作するアンテナ素子の電磁結合による性能劣化に関しては触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−19808号公報
【特許文献2】特開2007−49215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの特許文献1や2のアンテナ装置には、複数の同一動作周波数の無線装置に対応する複数のアンテナを搭載することを考慮していない為、複数のアンテナを同一筐体内に配置した場合の電磁結合によるアンテナ性能の劣化については触れられていない。
【0008】
また、様々な無線システムの使用シーンを考慮した上で、筐体状態によって高い性能を保つ必要のあるアンテナ素子の優先順位を定めておらず、どの状態においても一定の性能を求めるため、本当に必要な状態で高いアンテナ性能が得られていないという課題がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、閉じビューア状態で使用頻度の高い無線システム用のアンテナ素子と、そのアンテナ素子と同一周波数で動作するアンテナ素子との距離が離れるよう配置し、必要な使用状態で高いアンテナ性能を確保できる携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の携帯端末は、第1筐体と、第2筐体と、第3筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉自在に連結する第1ヒンジ部と、前記第2筐体と前記第3筐体とを回転自在に連結する第2ヒンジ部と、前記第1筐体に配置された第1回路基板と、前記第3筐体に配置された第2回路基板と、前記前記第3筐体内に配置された表示部と、前記第1筐体もしくは前記第3筐体に配置される第1無線システム部と、前記第1筐体もしくは前記第3筐体に配置され、少なくとも動作周波数の一部が前記第1無線システム部と同じ第2無線システム部と、前記第1筐体内に配置され、前記第1無線システム部と電気的に接続する第1アンテナ素子と、前記第3筐体内に配置され、前記第2無線システム部と電気的に接続する第2アンテナ素子と、を備え、前記表示部が外側に配置されて閉じた状態における前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子との距離は、前記表示部が内側に配置されて閉じた状態における前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子との距離よりも大きいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、筐体閉じ状態、ビューア閉じ状態それぞれにおいて優先される無線システムの高いアンテナ性能を実現することができる携帯無線を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の携帯端末10の3つの状態を示す略斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る携帯端末の開き状態正面図、側面図、筐体閉じ状態のアンテナ素子部の断面図、ビューア閉じ状態のアンテナ素子部の断面図
【図3】本発明の第2の実施形態に係る携帯端末の開き状態正面図、側面図、筐体閉じ状態のアンテナ素子部の断面図、ビューア閉じ状態のアンテナ素子部の断面図
【図4】本発明の第3の実施形態に係る携帯端末の開き状態正面図、側面図、筐体閉じ状態のアンテナ素子部の断面図、ビューア閉じ状態のアンテナ素子部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る携帯端末の全体の筐体の状態を示す図である。図1(A)は、待ち受け時など携帯端末を閉じた筐体閉じ状態を示す図であり、図1(B)は、通話時など開き状態を示す図であり、図1(C)はワンセグ視聴時など画面が表にでない閉じ状態のビューア閉じ状態を示す図である。
(第1の実施の形態)
図2(A)は、本発明の実施の形態に係る開き状態の携帯端末10の全体構造を+Z方向からみた正面図である。また、図2(B)は、―Y方向から見た側面図であり、図2(C)は筐体閉じ状態のアンテナ素子部の断面図である。図2(D)は、ビューア閉じ状態でビューア閉じ状態のアンテナ素子部の断面図である。
【0015】
図2(A)に示すように、携帯端末10は、第1筐体11、第2筐体12、第3筐体13、第1ヒンジ部14、第2ヒンジ部15、第1無線システム部16、第2無線システム部17、第1アンテナ素子18、第2アンテナ素子19、表示部20、第1回路基板21及び第2回路基板22を備えている。
【0016】
第1アンテナ素子18および第1無線システム部16は、それぞれBluetooth用のアンテナおよび無線システムである。第1無線システム部16は、第1アンテナ素子18を介し信号を送信または受信する。また、第2アンテナ素子19および第2無線システム部17は、それぞれWi−Fi用のアンテナおよびWi−Fi用の無線システムである。第1無線システム部17は、第1アンテナ素子19を介し信号を送信または受信する。
【0017】
第1ヒンジ14は、第1筐体11と第2筐体12とを回転自在にする支軸部材であり、第2ヒンジ15は、第2筐体12と第3筐体13とを回転自在にする支軸部材である。これら二つのヒンジを直交して配置することにより、携帯電話は直交した二つの回転軸を持つことができる。
【0018】
第1筐体11と第2筐体12は、第1ヒンジ部14によって開閉自在に連結され、第2筐体12と第3筐体13は、第2ヒンジ部15によって回転自在に連結される。第1筐体11上に、第1回路基板21が配置され、第3筐体13上に、第2回路基板22が配置される。第1回路基板21上に、第1無線システム部16が配置され、第2回路基板22上に、第2無線システム部17が配置される。第1アンテナ素子18は、第1筐体11内の第1ヒンジ部14と対向する辺側かつ幅方向で一方の端部に配置され、第1無線システム部16と電気的に接続される。また、第2アンテナ素子19は第3筐体13内の第2ヒンジ部15と対向する辺側かつ幅方向で一方の端部に配置され、第2無線システム部17と電気的に接続される。また、第1アンテナ素子18と第2アンテナ素子19は、これらの距離が、筐体閉じ状態に対しビューア閉じ状態の方が大きくなるよう配置される。また、第1無線システム部16と第2無線システム部17の動作周波数は、少なくてもその一部が同一である。
【0019】
一般的にアンテナは、素子同士が近接すると電磁結合影響によりアンテナ性能が劣化する。また、動作周波数が同一である場合とそうでない場合とでは、同一である場合の方がアンテナ性能はより劣化する。
また、今回の構成では、BluetoothとWi-Fiが搭載されるが、ビューア閉じ状態においてのWi-FiやBluetoothの使用頻度が高いことが想定される。このため、ビューア閉じ状態でのアンテナ性能を優先する必要がある。
【0020】
今回の構成では、筐体閉じ状態に対しビューア閉じ状態でアンテナ間の距離が大きくなるよう配置するため、アンテナ間の電磁結合影響を低減することができる。このため、ビューア閉じ状態において必要としているアンテナ素子のアンテナ性能を高く保つことができる。これにより、ビューア閉じにおいて、Bluetooth用の第1アンテナ素子17およびWi-Fi用アンテナの第2アンテナ素子18のアンテナ性能を高く保つことを実現できる。
【0021】
図2(C)及び図2(D)は、それぞれ筐体閉じ状態とビューア閉じ状態において-X方向から見たアンテナ素子の断面図である。これらの図をみても、筐体閉じ状態では第1アンテナ素子18及び第2アンテナ素子19間の距離が小さいのに対し、ビューア閉じ状態では第1アンテナ素子17と第2アンテナ素子18の距離が大きい。この為、筐体閉じでは電磁結合影響が大きいためアンテナ性能が劣化するが、ビューア閉じ状態では電磁結合影響が低減でき、筐体閉じ状態に比べビューア閉じ状態は第1アンテナ素子18と第2アンテナ素子19のアンテナ性能を高く保つことが可能になる。
なお、第1アンテナ素子の配置位置は、第1ヒンジ部14と対向する辺側かつ幅方向で一方の端部に限定されるものではなく、第1回路基板上のどの位置でも配置可能である。
また、その場合、筐体閉じ状態での第1アンテナ素子と第2アンテナ素子の距離に対しビューア閉じ状態の距離が大きくなるよう配置される。
(第2の実施の形態)
まず、第2の実施の形態に係る携帯端末30の構成について説明する。なお、本実施の形態に係る携帯端末30の構成のうち、第1の実施の形態に係る携帯端末10の構成と同様な構成については、第1の実施の形態に係る携帯端末10(図2参照。) の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0022】
図3(A)に示すように、本実施の形態に係る携帯端末30は、第2回路基板22内に配置された高周波切替手段31、リアクタンス素子32、無線システム検知手段33及び開閉検知手段34があり、携帯端末10に対し構成が異なる。
【0023】
この構成により、携帯端末30は、開閉検知手段34により筐体閉じ状態であることと、無線システム検知手段33により第1無線システム部16若しくは第1アンテナ素子18の電気的動作を検知し、リアクタンス素子32を高周波切替手段31を介し第2無線システム部17と接続することができる。これにより、第2アンテナ素子19のインピーダンスマッチングを変化させ、第1アンテナ素子18と第2アンテナ素子19の電磁結合を軽減し、第1アンテナ素子のアンテナ性能の劣化を防ぐことができる。
【0024】
なお、第1無線システム部16に高周波切替手段31を介してリアクタンス素子32を電気的に接続させ、第2無線システム部17に無線システム検知手段33を接続する構成により、第2アンテナ素子のアンテナ性能の劣化を防ぐこともできる。また、開閉検出手段34は、第1回路基板上に配置されなくともよく、筐体いずれかの場所に配置されていればよい。
(第3の実施の形態)
まず、第3の実施の形態に係る携帯端末40の構成について説明する。
【0025】
なお、本実施の形態に係る携帯端末40の構成のうち、第2の実施の形態に係る携帯端末30の構成と同様な構成については、第2の実施の形態に係る携帯端末30(図3参照。) の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0026】
図4に示すように、本実施の形態に係る携帯端末40は、第1回路基板21内に配置された第3無線システム部41と第3アンテナ素子42があり、携帯端末30に対し構成が異なる。
【0027】
この構成により、ヒンジ部周辺にセルラシステム用のアンテナが搭載された携帯端末40において、セルラシステム以外の複数のアンテナシステム用のアンテナ素子とセルラ用アンテナ素子との距離を離すことができ、セルラシステム以外の複数の無線通信用のアンテナ性能を高くすることができる。
【0028】
なお、第1無線部システム部16および第2無線部システム17の各アプリケーションはBluetoothとWi-Fiの組み合わせに限定されるものではなく、Wi-Fi(2.400〜2.4835GHz)およびセルラー(2.5〜2.69GHz)の組み合わせでも適用できる。これらの組み合わせは、動作周波数が同じではないが、動作周波数が近接しているため、電磁結合影響によるアンテナ性能の劣化が少なからずある。本実施形態を用いることにより、アンテナ性能の劣化を防ぐことができる。この場合、第1アンテナ素子18にWi-Fi、第2アンテナ素子19にセルラーを配置する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、例えば携帯電話として有用であり、その他、ポータブルテレビ、ノートパソコン、電子ブック等の様々な持ち運び可能な電子機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 携帯端末
11 第1筐体
12 第2筐体
13 第3筐体
14 第1ヒンジ部
15 第2ヒンジ部
16 第1無線システム部
17 第2無線システム部
18 第1アンテナ素子
19 第2アンテナ素子
20 表示部
21 第1回路基板
22 第2回路基板
30 携帯端末
31 高周波切替手段
32 リアクタンス素子
33 無線システム検知手段
34 開閉検知手段
40 携帯端末
41 第3無線システム部
42 第3アンテナ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
第2筐体と、
第3筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉自在に連結する第1ヒンジ部と、
前記第2筐体と前記第3筐体とを回転自在に連結する第2ヒンジ部と、
前記第1筐体に配置された第1回路基板と、
前記第3筐体に配置された第2回路基板と、
前記前記第3筐体内に配置された表示部と、
前記第1筐体もしくは前記第3筐体に配置される第1無線システム部と、
前記第1筐体もしくは前記第3筐体に配置され、少なくとも動作周波数の一部が前記第1無線システム部と同じ第2無線システム部と、
前記第1筐体内に配置され、前記第1無線システム部と電気的に接続する第1アンテナ素子と、
前記第3筐体内に配置され、前記第2無線システム部と電気的に接続する第2アンテナ素子と、を備え、
前記表示部が外側に配置されて閉じた状態における前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子との距離は、前記表示部が内側に配置されて閉じた状態における前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子との距離よりも大きいことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記表示部が外側に配置されて閉じた状態において、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子とが筐体の厚み方向において対向する位置に配置され、
前記表示部が内側に配置されて閉じた状態において、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子とが、筐体の厚み方向において互いに重ならない位置に配置されることを特徴とする携帯端末。
【請求項3】
前記第1アンテナ素子は、前記第1筐体内の前記第1ヒンジ部側と対向する辺側かつ幅方向で一方の端部に配置され、
前記第2アンテナ素子は、前記第3筐体内の前記第2ヒンジ部側と対向する辺側かつ幅方向で前記第1アンテナ素子が配置された一方の端部と同じ側に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の携帯端末。
【請求項4】
前記第2アンテナ素子に接続された高周波切替手段と、前記高周波切替手段と前記第2回路基板の接地電位となるグランドパターンとに接続されたリアクタンス素子と、前記高周波切替手段に接続された前記第2無線システム部と、前記表示部が前記携帯端末の外側に配置されない閉じた状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果と前記第1無線システム部の動作を検知する検知部とを備え、前記制御部において前記表示部が前記携帯端末の外側に配置されない閉じた状態かつ前記第1無線システム部の動作を検知した場合には前記高周波切替手段において前記第2アンテナ素子と前記リアクタンス素子とを電気的に接続し、それ以外の状態では前記高周波切替手段において前記第2アンテナ素子と前記第2無線システム部とを電気的に接続することを特徴とする請求項第1乃至請求項3のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記第1無線システム部および前記第2無線システム部とは異なる第3無線システム部と、前記第1ヒンジ部近傍に配置した前記第3無線システム部用第3アンテナ素子を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−223368(P2011−223368A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91067(P2010−91067)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】