説明

携帯電子機器及びその制御方法

【課題】より確実且つ容易に低消費電力化を行うことが可能な携帯電子機器及びその制御方法を提供する。
【解決手段】複数の有機EL素子から構成される画素を多数配列してなるEL表示部20と、EL表示部20に表示させる表示画像における全てまたは一部の領域のデータを格納する表示用情報記憶部11と、表示用情報記憶部11に格納された領域のデータからこの領域の全ての画素に対する輝度情報を演算する輝度情報演算部12と、輝度情報演算部12で演算した輝度情報と閾値との比較に基づいて、当該領域の画素の輝度を制御する制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、有機ELディスプレイ等の自発光素子型ディスプレイを備えた携帯電子機器及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話装置において、有機ELディスプレイが注目されている。この有機ELディスプレイは自発光素子である有機EL素子を用いたディスプレイであり、高輝度、広視野角、超薄型および省電力といった特徴を有している。有機EL素子は、単色で緑色、青色、赤色等の色に発光するものがあり、これらを組み合わせることでマルチカラーディスプレイを作成することができる。また、バックライトが不要となるため、市場において要望の高い装置の薄型化が実現できる。
【0003】
ところが、有機ELディスプレイは、表示の行われる画素の発光輝度が高い程、電力を消費し、輝度値の高い画素が全画素中に占める割合が高ければ高い程、電力消費が大きくなる。また、携帯電子機器のように、電子メールや、Web閲覧などテキスト情報をベースにした機器の場合には、その文字を見やすくするために、文字色と背景色とを区別して、一方を高輝度、他方を低輝度の色情報にする場合が多い。
【0004】
携帯電話装置等に有機ELディスプレイを用いる場合に、その消費電力の低減を図るため、背景は黒色で、文字は白色で表示する補正をかけて表示を行うことで、消費電力の低減を図るようにした技術がある(特許文献1参照)。つまり、有機ELディスプレイでは、黒表示を行う際、有機EL素子への電流の供給をカットして発光を停止させるため、黒表示を行う画素では電流は消費されないことから、背景を黒色にして画面のほとんどの画素を黒表示とすることによって消費電力量を小さくするのである。
【特許文献1】特開2002−199078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記の従来技術では、文字情報と背景情報とを区別する必要があり、現在の携帯電話装置に用いられているようなカメラで撮影されたような自然画像がユーザによって背景画像に設定されている場合や、背景が文字で埋め尽くされているような場合には、適切な低消費電力化を図ることができない。さらに、文字情報と背景情報とを区別して、各々の輝度情報を制御する必要があるため、煩雑な制御を必要とする。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑み、より確実且つ容易に低消費電力化を行うことが可能な携帯電子機器及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、複数の自発光素子から構成される画素を多数配列してなる表示部と、該表示部に表示させる表示画像における全てまたは一部の領域のデータを格納する表示用情報記憶部と、該表示用情報記憶部に格納された前記領域のデータから該領域の全ての前記画素に対する輝度情報を演算する輝度情報演算部と、該輝度情報演算部で演算した前記輝度情報と閾値との比較に基づいて、当該領域の前記画素の輝度を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明は、前記輝度情報演算部は、前記輝度情報として1画素あたりの平均輝度を演算することを特徴とする。
本発明では、輝度情報として1画素あたりの平均輝度を演算することによって、所定画像の表示に要する電力を推定することができる。例えば、この平均輝度が閾値を超えるような場合には、それぞれの画素の輝度を低く制御することにより消費電力の削減を図ることができる。
【0009】
本発明は、前記制御部は、前記閾値を複数有しており、前記輝度情報演算部の演算結果と前記複数の閾値に基づいて、前記領域の前記画素の輝度を段階的に制御することを特徴とする。
本発明では、閾値を複数有して、輝度情報演算部の演算結果と複数の閾値に基づいて、表示用情報記憶部に格納された領域の画素の輝度を段階的に制御することにより、低電力化を図りながら、輝度切替時にユーザに違和感を与えることなく表示画像を提供することができる。
【0010】
本発明は、電池残量検出部を備え、前記制御部は、電池残量に応じて、該領域の前記画素の輝度を制御することを特徴とする。
本発明では、電池残量に応じて、表示用情報記憶部に格納された領域のデータを、この領域の画素の輝度を変更するように制御することにより、電池残量が少ない時には、表示部の画素の輝度を大幅に低下させたりすることができる。そのため、電池残量が残り少ない時には、電力の消費を低減することによって電池切れとなる時期を延ばすことができる。
【0011】
本発明は、光センサを備え、前記制御部は、周囲光の明るさに応じて、該領域の前記画素の輝度を制御することを特徴とする。
本発明では、制御部は周囲光の明るさに応じて、表示用情報記憶部に格納された領域のデータを、この領域の画素の輝度を変更するように制御することで、表示部の画像を良好に表示させつつ低消費電力化を図ることができる。周囲が明るい場合には画素を高輝度発光させたままにし、一方、周囲が暗い場合には、画素の輝度が低くてもユーザは視認できるため、周囲が明るい場合よりも輝度を下げることで消費電力を下げて電池切れとなる時期を延ばすことができる。
【0012】
本発明は、複数の自発光素子から構成される画素を多数配列してなる表示部に表示させる表示画像における全てまたは一部の領域のデータから該領域の全ての前記画素に対する輝度情報を演算し、該演算した輝度情報と閾値との比較に基づいて、当該領域の前記画素の輝度を制御することを特徴とする。
本発明では、複数の自発光素子から構成される画素を多数配列してなる表示部に表示させる表示画像における全てまたは一部の領域のデータからこの領域の全ての画素に対する輝度情報を演算し、演算した輝度情報と閾値との比較に基づいて、当該領域の画素の輝度を制御するようにしたことにより、ユーザがどのような画像を背景に設定した場合でも煩雑な制御を必要とすることなく表示部の消費電力量を低減することが可能になる。また、どのような画面構成においても画質を低下させずに表示部の消費電力量を低減することが可能になる。これにより、確実且つ容易に低消費電力化を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、どのような画面構成においても画質を低下させずに表示部の消費電力量を低減することが可能になる。これにより、確実且つ容易に低消費電力化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の携帯電子機器として、ここでは携帯電話機を例に挙げて述べる。図1は、本実施形態の構成を示すブロック図である。
図1において、符号10は、携帯電話機1の処理動作を統括して制御する制御部であって、表示用情報記憶部11、輝度情報演算部12及び輝度制御部13からなる。符号20は、制御部10から出力される信号により、電池残量マーク、電波の受信状態マーク、時刻表示及び任意の画像等を表示するEL表示部で、有機ELディスプレイで構成され、カラー画像が表示可能である。符号21は、EL表示部20を駆動するEL表示駆動回路である。
【0015】
制御部10は、自発光素子である有機EL素子から構成される画素を縦横に多数配列してなるEL表示部20に表示する表示画像の全ての領域または所定の一部の領域のデータを表示用情報記憶部11に記憶する一方、輝度情報演算部12において、表示用情報記憶部11に記憶した前記領域のデータを表示させる全ての画素の輝度値Yを加算平均し、1画素あたりの平均輝度値を算出する。そして、輝度制御部13が、算出された平均輝度値に基づいて、表示用情報記憶部11に記憶した前記領域のデータを表示させる全ての画素の輝度値Yを制御する。輝度制御部13で変換されたデータは、EL表示駆動回路21を介してEL表示部20に表示される。
【0016】
符号30は、ユーザによる操作内容に応じた信号を制御部10に出力する操作部である。符号31は、携帯電話機1を動作させるためのプログラム等が予め記憶されたROMである。符号32は、EL表示部20に画像等を表示するためのプログラム等を随時記憶するRAMである。符号33は、携帯電話機1の電池残量(電力供給量)を検出する電池残量検出部であり、ここで検出された測定値を制御部10に出力する。さらに、電池残量の残量に対応する表示を電池残量マークとしてEL表示部20に表示し、ユーザは、電池残量マークの表示により電池残量を確認しながら携帯電話機1を使用して電池残量が少なくなると充電を行う。符号34は、話者の音声を集音するマイクであり、ユーザにより発せられた音声を音声信号に変換して制御部10に出力する。符号35は、通話相手の音声を発音するスピーカーであって、音声信号を音声に変換することによって発音する。符号36は、基地局からの電波を受信するとともに、基地局に向けて電波を送信するアンテナである。符号37は、アンテナ36と基地局との間で無線通信を確立し、電話機能や情報通信を実現する送受信部である。符号38は、使用時における携帯電話機1の周囲の明るさを測定する光センサ部であって、この測定値を制御部10に出力する。制御部10は、光センサ部38の測定値に応じてEL表示部20の輝度を制御する。
【0017】
携帯電話機1の内部に設けられる電気回路は、これら制御部10、EL表示部20、EL表示駆動回路21、操作部30、ROM31、RAM32、電池残量検出部33、マイク34、スピーカー35、アンテナ36、送受信部37及び光センサ部38を含んでなる。
【0018】
次に、EL表示部20について説明する。このEL表示部20は、自発光素子である有機EL素子から構成される画素を、縦横に多数配列してなっており、ここでは、240×320画素となっている。これら画素の一つ一つを発光させて、多数の画素が連続発光することにより任意の画像を形成する。一つの画素は、赤、緑、青(即ちRGB)の3つの有機EL素子により構成されており、これら有機EL素子のそれぞれの発光強度を調整することによって画素全体としての発光色を形成している。
【0019】
画素は、上述したように、赤、緑、青の各有機EL素子それぞれの発光強度により、様々な色を作り出すことができる。各有機EL素子のRGBのそれぞれの値(光の強度)は、0から255の間で変化するように定義されている。例えば、光の三原色の法則に従い、黄色や紫色なども作ることができるばかりか、3つの有機EL素子すべてが強く発光して、RGB値が全て「255」であれば「白」、逆にすべて発光させずにRGB値が全て「0」であれば、ディスプレイの地の色、即ち「黒」を表現することもできる。このように、画素毎に3つの有機EL素子それぞれに対する発光強度を指示する信号の組み合わせ(パターン)によって画素の発光色を指示することができ、EL表示部20に画像が表示されることになる。つまり、画素のRGB値に対するパターン指示を複数の画素に対して行うことにより、EL表示部20における画素毎の色表示を変化させて、文字や記号やアイコンなどの表示物、およびその背景色を表示させることができる。なお、有機EL素子自体が自発光するため、特段バックライトは設けられていない。
【0020】
しかしながら、白表示、すなわち高輝度発光を行うことがそのまま消費電力へ反映されることになり、黒を基調とする表示画像よりも、白を基調とする表示画像の方が消費電力が多くなる。そのため、消費電力の低減を図るには、画素の色相を変えずに、輝度を低下させる必要がある。
【0021】
RGBの3原色によって、輝度値Y(輝度情報)と色差(基準となる色との差)U,Vとを求めることができる。
これらY,U,Vは、例えば以下の式により求められる。
Y= 0.299R+0.587G+0.114B(1)
U=−0.169R−0.331G+0.500B(2)
V= 0.500R−0.419G−0.081B(3)
【0022】
Uは青色との差、Vは赤色との差であって、U=Cb、V=Crと表記されることもある。例えば、Uの値が小さいと緑色となり、Uの値が大きくなるにつれて青色を表示する。また、Vの値が小さいと緑色となり、Vの値が大きくなるにつれて赤色を表示する。このように、Yで1画素あたりの輝度、つまり明るさを表し、U及びVで色を表すことができる。以上のことから、画素の色を変えることなく輝度値Yのみの制御が可能となっている。従って、表示画像はそのままで、表示する画素の輝度を制御することにより低消費電力化を図ることができる。
【0023】
なお、輝度値Yを変更した後の画素のRGB値は、例えば以下の式より求められる。
R= 1.000Y+1.402V(4)
G= 1.000Y−0.344U−0.714V(5)
B= 1.000Y+1.772U(6)
ここで、画素の輝度を制御するだけであって表示色はそのままなので、UとVは変更する必要はなく、輝度値Yを求めたときの値をそのまま使用する。
【0024】
次に、上記構成の携帯電話機1の動作、即ち本実施形態による携帯電子機器の制御方法について説明する。
図2は、携帯電話機1の制御方法の第1実施例を示すフローチャートである。このフローチャートは、表示させるべき画像を取得して、その画像における所定領域のデータを示す画素の輝度を制御してEL表示部20に表示させるまでの処理を示すもので、携帯電話機1の電源が入れられた時点、ユーザによって所定の操作がなされた時点、又は操作待機時点等、電源が消されるまで随時行われる。
【0025】
第1実施例の制御方法は、EL表示部20に表示させる表示画像の全ての領域或いは所定の一部の領域のデータを表示用情報記憶部11に格納し(ステップS1)、格納した領域のデータを表示する全ての画素に対する輝度値Y及び色差U,Vを上記した式(1)〜(3)により算出し、算出された各画素の輝度値Yを輝度情報演算部12にて加算平均して、1画素あたりの平均輝度値を求める(ステップS2)。そして、ステップS2で求められた平均輝度値と予め設定された閾値(0〜255の間における所定の値)とを比較して、平均輝度値が閾値を超えているかどうかを判断し(ステップS3)、この判断結果が「Yes」の場合には、輝度制御部13において、ステップS1で格納した前記領域のデータを表示する全ての画素の色相は変えずに各画素の輝度値Yを、例えば、既定値から50%程度まで低下させるように制御し、制御後の輝度値Yと制御前と同様の色差U,Vの値とを用いて、上記した式(4)〜(6)により制御後のRGB値を算出し、処理後のデータでEL表示部20に表示を行う(ステップS4,S5)。一方、ステップS3の判断結果が「No」の場合には輝度値Yの制御を行うことなく処理を終了し、そのままのデータでEL表示部20に表示を行う(ステップS5)。
【0026】
このように、図2に示すフローチャートでは、指定された画面領域に属する全画素の平均輝度値を閾値と比較して、平均輝度値が閾値を超えるような場合、つまり、高輝度値の画素を多く含む画像の場合には、表示画像の色相は変えずに輝度を下げるように制御することにより、EL表示部20に、図3のように表示されるはずだった表示画像が、図4(a)のように表示画面全体の輝度を低く制御して表示される。図4(a)においては、電池残量マークやメール受信マーク、時刻及び操作表示マークの輝度までもが低下制御されているが、図4(b)のように、背景画像の輝度のみ制御し、これら電池残量マークやメール受信マーク、時刻及び操作表示マークの輝度は変化させないように制御してもよい。いずれにせよ、表示画像の全体或いは一部の領域の画素の輝度を低下させることによって効果的な低消費電力化を図ることができる。
【0027】
なお、表示用情報記憶部11に格納する画像領域の設定は、ユーザによって適宜設定変更可能なものとしてもよい。さらに、ステップS2における平均輝度値の演算は、表示用情報記憶部11に格納されたデータにおける全ての画素に対して毎回行ってもよいし、前回格納されたデータにおける各画素の輝度値を保存しておき、変更があった画素のみを制御しても良い。また、上記では、表示用情報記憶部11の演算結果を平均輝度値としているが、これ以外の値、例えば全画素の輝度の合計値を用いても良い。また、閾値や輝度レベルは、ユーザが適宜設定変更できるようにしても良い。また、以降の実施例(第2実施例〜第4実施例)についても同様に適用出来る。
【0028】
図5は、携帯電話機1の制御方法の第2実施例を示すフローチャートである。
このフローチャートは、表示用情報記憶部11に格納された領域のデータを表示する全画素の輝度レベルを、図6に示す輝度レベルテーブルに基づいて選定する。このパターンテーブルは、輝度情報演算部12により算出された1画素当たりの平均輝度値に応じて輝度レベルを判断するもので、0〜255の間に設定された複数具体的には3つの閾値に関連付けて輝度レベルを段階的に設定したものである。
【0029】
第2実施例の制御方法は、例えば、EL表示部20に表示させる表示画像の全ての領域或いは所定の一部の領域のデータを表示用情報記憶部11に格納し(ステップS1)、格納した領域のデータを表示する全ての画素に対する輝度値Yを輝度情報演算部12にて加算平均して、1画素あたりの平均輝度値を求める(ステップS2)。ステップS2で求められた平均輝度値に対応する輝度レベルを図6に示すテーブルから求め、輝度制御部13において、該当する輝度レベルに応じた発光となるように、ステップS1で格納した前記領域のデータを表示する全ての画素の色相は変えずに輝度値Yを制御し(ステップSa1)、処理後のデータでEL表示部20に表示を行う(ステップS5)。
【0030】
このように、図6に示す輝度レベルテーブルでは、演算結果として、指定された画面領域に属する全画素の平均輝度値に応じた各画素の輝度レベルを段階的に設定している。例えば、平均輝度値が0以上63未満の範囲内の場合、各画素の輝度レベルを90%としてステップS1で格納したデータに基づく輝度値から10%低下させた状態に制御する。平均輝度値が63以上127未満の範囲内の場合は輝度レベルが80%、平均輝度値が127以上191未満の範囲内の場合は輝度レベルが70%、平均輝度値が191以上255以下の範囲内の場合には輝度レベルが60%となるよう輝度レベルを低下させて各画素の発光を抑制する。このように、高輝度値の画素が多い画像ほど輝度レベルを大幅に低下させることによって、より効果的に低消費電力化を図ることができる。
【0031】
図7は、携帯電話機1の制御方法の第3実施例を示すフローチャートである。
このフロ−チャートは、表示用情報記憶部11に格納された領域のデータを表示する全画素の輝度レベルを、図8に示す電池残量別輝度テーブルに基づいて選定する。このパターンテーブルは、輝度情報演算部12により算出された1画素当たりの平均輝度値及び電池残量検出部33より検出された電池残量に応じて輝度レベルを判断するもので、0〜255の間に設定された3つの閾値と3段階に設定された電池残量とに関連付けて、輝度レベルを段階的に設定したものである。
【0032】
第3実施例の制御方法は、EL表示部20に表示させる表示画像の全ての領域或いは所定の一部の領域のデータを表示用情報記憶部11に格納し(ステップS1)、格納した領域のデータを表示する全ての画素に対する輝度情報を輝度情報演算部12にて加算平均して、1画素あたりの平均輝度値を求める(ステップS2)。さらに、携帯電話機1の電池残量を電池残量検出部33から取得し(ステップSb1)、ステップS2で求められた平均輝度値及びステップSb1で求められた電池残量に対応する輝度レベルを電池残量別輝度テーブルから求め(ステップSb2)、輝度制御部13において、該当する輝度レベルに応じた発光となるように、ステップS1で格納した前記領域のデータを表示する全ての画素の色相は変えずに輝度値を制御して、処理後のデータでEL表示部20に表示を行う(ステップS5)。また場合によっては、無制御のままEL表示部20に表示を行う(ステップS5)。
【0033】
つまり、図8に示す電池残量別輝度テーブルでは、指定された画面領域に属する全画素における1画素あたりの平均輝度値及び電池残量によって各画素の輝度レベルを設定する。電池残量は、fullからemptyまで通常3段階に区切るための閾値が設定されており、fullを「3」と設定し、emptyに至るまでの残り少ない電池残量を「1」として設定する。また、閾値を3つ設けて輝度レベルを4段階に設定したが、これに限らず何段階に設定してもよい。ここで例えば、平均輝度値が0以上63未満の範囲内の低輝度値であって、電池残量が「3」のfull状態である場合、輝度値の変更はなされず、ステップS1で格納したデータに基づく輝度値で表示画像が表示される。一方、平均輝度値が191以上255以下の範囲内の高輝度値であって、電池残量が残り少ない「1」の状態である場合、ステップS1で格納したデータに基づく輝度値の半分に低下するように制御される。また、同じ平均輝度値であっても電池残量が残り少ない場合(電池残量「1」)には、電池残量が多い場合(電池残量「3」)よりも各画素の輝度レベルを低下させることで消費電力を削減し、電池切れの時期をさらに延ばすことができる。このように、電池残量に応じて各画素の輝度値の低下率を変更させることにより効果的に低消費電力化を図ることができる。
【0034】
図9は、携帯電話機1の制御方法の第4実施例を示すフローチャートである。
このフロ−チャートは、表示用情報記憶部11に格納された領域のデータを表示する全画素の輝度レベルを、図10に示す周囲光別輝度テーブルに基づいて選定する。このパターンテーブルは、輝度情報演算部12により算出された1画素当たりの平均輝度値と、電池残量及び携帯電話機1の周囲光の強度に応じて輝度レベルを判断するもので、0〜255の間に設定された3つの閾値及び3段階に設定された電池残量に関連付けて、光センサ部により検出される周囲光の「暗い」(図10(a))、「普通」(図10(b))、「明るい」(図10(c))の3段階の光の状況に分けて判断する輝度レベルを段階的に設定したものである。
【0035】
ここで、周囲光の強さとしては、例えば、携帯電話機1の使用時の状況が「明るい」とされる状況は、日差しの強い屋外で使用した場合を想定し、「普通」とされる状況は、室内における蛍光灯などによる照明の下で使用した場合を想定し、「暗い」とされる状況は、夜間、照明等の明かりのない状況で使用した場合を想定したものとする。
【0036】
第4実施例の制御方法は、EL表示部20に表示させる表示画像の全ての領域或いは所定の一部の領域のデータを表示用情報記憶部11に格納し(ステップS1)、格納した領域のデータを表示する全ての画素に対する輝度情報を輝度情報演算部12にて加算平均して、1画素あたりの平均輝度値を求める(ステップS2)。さらに、光センサ部38で携帯電話機1の周囲光の強度を取得するとともに電池残量検出部33より電池残量を取得し(ステップSc1)、ステップSc1で求められた携帯電話機1の周囲光の強度及び電池残量に対応するパターンテーブルを選択し、選択したパターンテーブルからステップS2で求められた平均輝度値に対応する輝度レベルを求め、(ステップSc2)、輝度制御部13において、該当する輝度レベルに応じた発光となるように、ステップS1で格納した前記領域のデータを表示する全ての画素の色相は変えずに輝度値を制御して処理後のデータでEL表示部20に表示を行う(ステップS5)。また場合によっては、無制御のままEL表示部20に表示を行う(ステップS5)。
【0037】
つまり、図10に示す周囲光別輝度テーブルでは、携帯電話機1の使用時における電池残量のほかに周囲光に応じてパターンテーブルを選択し、表示用情報記憶部11に格納されたデータを表示する全画素における1画素あたりの平均輝度値及び電池残量によって各画素の輝度レベルを設定する。電池残量を判断する閾値は、上記同様、fullからemptyまで3段階に設定され、fullを「3」と設定し、emptyを「1」と設定している。また、平均輝度値の閾値は4段階に設定されている。例えば、図10(c)に示すように、周囲光が「明るい」と検出され、平均輝度値が0以上63未満の範囲内であるとともに電池残量が「3」の状態である場合、輝度値の変更はなされず、ステップS1で格納したデータに基づく輝度値で表示画像が表示される。一方、図10(a)に示すように、周囲光が「暗い」と検出され、平均輝度値が191以上255以下の範囲内であるとともに電池残量が残り少ない「1」の状態である場合、ステップS1で格納したデータに基づく輝度値の半分以下(40%の輝度レベル)に低下するように制御される。また、図10(a)及び図10(c)を参照し、同じ平均輝度値及び電池残量であっても周囲光が「暗い」と判定される状況下で使用した場合には、周囲光が「明るい」場合よりも各画素の輝度レベルを低下させる。
【0038】
これはつまり、周囲が暗い状況の下で携帯電話機1を使用する場合においては、EL表示部20の輝度レベルが低くても視認することが可能であるため、周囲が明るい状況の下で携帯電話機1を使用した場合に比べて輝度レベルを低下させることで電池切れの時期を延ばすことができる。
【0039】
なお、上記においては、閾値を3つ設けて輝度レベルを4段階に設定したが、これに限らず何段階に設定してもよい。より多くの閾値を設定し、変更する輝度レベルを段階的にすることにより、ユーザから見た表示画像の輝度変化を小さくすることができる。さらに、閾値の設定を自由に変更できるようにしてもよい。
【0040】
以上のことから、本実施形態によれば、EL表示部20に表示させる表示画像における全て又は一部の領域のデータを表示用情報記憶部11に記憶し、この領域データからこの領域の全ての画素に対する輝度情報を輝度情報演算部12で演算して、この輝度情報と閾値との比較に基づいて、輝度制御部13が表示用情報記憶部11に格納された領域のデータを、この領域の画素の輝度を変更するように制御することにより、ユーザがどのような画像を背景に設定した場合でも、EL表示部20の消費電力量を低減することが煩雑な制御を必要とすることなく可能になる。また、どのような画面構成においても画質を低下させずにEL表示部20の消費電力量を低減することが可能になる。これにより、確実且つ容易に低消費電力化を行うことが可能となる。
【0041】
また、輝度情報として1画素あたりの平均輝度を演算することによって、所定画像の表示に要する電力を推定することができる。つまり、この平均輝度が予め設定された閾値を超えるような場合には、それぞれの画素の輝度を低く制御することにより消費電力の削減を図ることができる。
【0042】
また、閾値を複数有して、輝度情報演算部12の演算結果に基づいて、表示用情報記憶部11に格納された領域のデータを段階的に制御することにより、低電力化を図りながら、輝度切替時にユーザに違和感を与えることなく良好な表示画像を提供することができる。
【0043】
さらに、電池残量に応じて、表示用情報記憶部11に格納された領域のデータを、領域の画素の輝度を変更するように制御することにより、電池残量が少ない時には、EL表示部20の輝度を大幅に低下させたりすることができる。そのため、電池残量が残り少ない時には、電力の消費を低減することによって電池切れとなる時期を延ばすことができる。
【0044】
また、携帯電話機1に光センサ部38を備えたことにより、周囲光の明るさに応じて、表示用情報記憶部11に格納された領域のデータを、この領域の画素の輝度を変更するように制御することで、EL表示部20の画像を良好に表示させつつ低消費電力化を図ることができる。すなわち、携帯電話機1の周囲が明るい場合には画素を高輝度発光させたままにし、一方、周囲が暗い場合には、画素の輝度が低くてもユーザは視認できるため、周囲が明るい場合よりも輝度を下げることで消費電力を下げて電池切れとなる時期を延ばすことができる。
【0045】
また、本実施例では、変更する輝度値をデフォルトの輝度に対する低減率で示している。そして、この低減率に基づいて表示用のデータに対して処理を行っているが、この処理のほかにも、表示部に関する電流、電圧、発光している時間(デューティー比)などを制御して画面の輝度を変更する輝度値に基づいて下げる制御により実現しても良い。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の精神及び意図を逸脱しない限り、種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明における一実施形態の携帯電話機の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明における第1実施例の制御方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明における制御前のデータによる表示画像である。
【図4】(a)は本発明における第1実施例の制御方法によって制御されたデータによる表示画像であり、(b)は第1実施例の他の制御方法によって制御されたデータによる表示画像である。
【図5】本発明における第2実施例の携帯電話機の制御方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明における第2実施例の制御方法に用いる輝度レベルを示すテーブルである。
【図7】本発明における第3実施例の制御方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明における携帯電話機の電池残量テーブルを示す説明図である。
【図9】本発明における第4実施例の制御方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明における携帯電話機の輝度レベルテーブルを示す説明図であって、(a)は周囲光が「暗い」場合、(b)は周囲光が「普通」の場合、(c)は周囲光が「明るい」の場合である。
【符号の説明】
【0047】
1 携帯電話機
10 制御部
11 表示用情報記憶部
12 輝度情報演算部
13 輝度制御部
20 EL表示部(表示部)
21 EL表示駆動回路
30 操作部
31 ROM
32 RAM
33 電池残量検出部
34 マイク
35 スピーカー
36 アンテナ
37 送受信部
38 光センサ部(光センサ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自発光素子から構成される画素を多数配列してなる表示部と、
該表示部に表示させる表示画像における全てまたは一部の領域のデータを格納する表示用情報記憶部と、
該表示用情報記憶部に格納された前記領域のデータから該領域の全ての前記画素に対する輝度情報を演算する輝度情報演算部と、
該輝度情報演算部で演算した前記輝度情報と閾値との比較に基づいて、当該領域の前記画素の輝度を制御する制御部と、を有することを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記輝度情報演算部は、前記輝度情報として1画素あたりの平均輝度を演算することを特徴とする請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記閾値を複数有しており、前記輝度情報演算部の演算結果と前記複数の閾値に基づいて、前記領域の前記画素の輝度を段階的に制御することを特徴とする請求項1または請求項2記載の携帯電子機器。
【請求項4】
電池残量検出部を備え、前記制御部は、電池残量に応じて、該領域の前記画素の輝度を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の携帯電子機器。
【請求項5】
光センサを備え、前記制御部は、周囲光の明るさに応じて、該領域の前記画素の輝度を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の携帯電子機器。
【請求項6】
複数の自発光素子から構成される画素を多数配列してなる表示部に表示させる表示画像における全てまたは一部の領域のデータから該領域の全ての前記画素に対する輝度情報を演算し、
該演算した輝度情報と閾値との比較に基づいて、当該領域の前記画素の輝度を制御することを特徴とする携帯電子機器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−148064(P2007−148064A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343375(P2005−343375)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】