摩擦攪拌加工及び摩擦攪拌混合による材料の固体状態加工
摩擦攪拌加工、摩擦攪拌混合、または摩擦攪拌溶接できる工具を使用することによって工作物表面に固体状態加工を実行し、ここで、固体状態加工は工作物の特性を修正し、同時に、幾つかの具体例においては固相を実質的に維持し、他の具体例においては幾つかの元素に液相を通過させ、材料の修正された特性としては、微細構造、巨視的構造、靱性、硬さ、粒界、結晶粒度、相の分布、延性、超塑性、核生成部位密度の変化、圧縮性、膨張性、摩擦係数、耐摩耗性、耐食性、疲れ抵抗、磁気特性、強度、放射線吸収、及び熱伝導率が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、摩擦攪拌加工及び摩擦攪拌混合による材料の固体状態加工(solid state processing)に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦攪拌溶接(下文で“FSW”)は、金属及び金属合金を溶接するために開発された技術である。FSWプロセスはしばしば、回転する撹拌ピンまたはスピンドルによって、2つの隣接する工作物の材料を接合部のいずれかの側の表面で係合させることを含む。力を及ぼしてスピンドル及び工作物を一緒に圧迫し、スピンドルと工作物との間の相互作用によって生じる摩擦熱は、接合部のいずれかの側の表面での材料の可塑化をもたらす。スピンドルは接合部に沿って横断して、前進するにつれて材料を可塑化し、前進するスピンドルの通った跡に残された可塑化された材料は冷却して溶接部を形成する。
【0003】
図1は、肩部12及び肩部から外側に延在するピン14を有する略円柱形の工具10を特徴とする、摩擦攪拌溶接のために使用される工具の斜視図である。十分な熱が発生するまでピン14は工作物16に当てられて回転し、この時点で工具のピンは可塑化された工作物材料中に沈む。工作物16はしばしば、接合線18において一緒に突き合わせられる材料の2枚のシートまたはプレートである。ピン14は、接合線18において工作物16中に沈む。この工具は従来技術において開示されているが、工具は新たな目的のために使用できることが説明されよう。また、“工作物”及び“基材”という用語は、本文書全体にわたって互換性があることに注意されたい。
【0004】
工作物材料16に当てられたピン14の回転運動によって生じた摩擦熱は、工作物材料を融点に達することなく軟化させる。工具10は接合線18に沿って横断的に移動し、それによって、可塑化された材料がピンの周りを前縁から後縁に流れるにつれて溶接部を生成する。結果は、他の溶接部と比較して、工作物材料16自体と一般に区別できないことがある、接合線18における固相結合20である。
【0005】
肩部12が工作物の表面に接触する時に、その回転は、挿入されたピン14の周りの材料のより大きな円柱形の柱を可塑化する追加の摩擦熱を生成することが観察される。肩部12は、工具ピン14によって生じる上向きの金属流れを含む鍛造力を提供する。
【0006】
FSWの最中に、溶接されるべき区域及び工具は、工具が溶接接合部の所望の長さを横断するように互いに対して移動する。回転するFSW工具は、連続した熱間加工作用を提供して、母材に沿って横断的に移動するにつれて狭い帯域の内部で金属を可塑化し、同時にピンの前面からその後縁に金属を運ぶ。溶接帯域が冷却する時には、工具が通過するにつれて液体が生成しないので典型的に凝固は存在しない。しばしば、得られた溶接部は、溶接部の区域において形成された無欠陥で再結晶した微細粒子の微細構造であるが、常にではない。
【0007】
進行速度は典型的に10〜500mm/minであり、回転速度は200〜2000rpmである。到達する温度は通常、固相線温度に近いがこれ未満である。摩擦攪拌溶接パラメータは、材料の熱的性質、高温流れ応力及び侵入深さの関数である。
【0008】
摩擦攪拌溶接は、融接にまさる幾つかの利点を有し、というのは、1)溶加材が存在しない、2)プロセスを完全自動化でき、比較的に低い操作員の熟練レベルを必要とする、3)全ての加熱は工具/工作物界面において起きるので、エネルギー入力は効果的である、4)固体状態の性質及びFSWの極度の再現性が理由となって、最小の溶接後検査が必要である、5)FSWは界面ギャップに許容度があり、従って溶接前作製がほとんど必要ない、6)除去すべき溶接スパッターが存在しない、7)溶接後仕上げ面は並外れで滑らかとなることができ、ばりはごくわずかから全く存在しない、8)ポロシティー及び酸素汚染が存在しない、9)歪みまたは囲繞する材料がほとんどまたは全く存在しない、10)有害な放出が存在しないので、操作員の保護が必要ではない、及び11)溶接特性が改良されるからである。
【0009】
以前の特許文書は、以前には機能的に溶接できないとみなされていた材料を用いて摩擦攪拌溶接を実行できることの利益を教示している。こうした材料の幾つかは融接可能でないか、または溶接するのが全く困難である。こうした材料は、例えば、金属マトリックス複合体、鉄合金の例えば鋼及びステンレス鋼、並びに非鉄材料を含む。また摩擦攪拌溶接を利用できた別のクラスの材料は、超合金である。超合金は、高融解温度青銅またはアルミニウムを有する材料とすることができ、その上、中に混合された他の元素を有してよい。超合金の幾つかの例は、一般に1000°Fを超える温度で使用されるニッケル、鉄−ニッケル、及びコバルトに基づく合金である。超合金において一般に見い出される追加の元素としては、クロム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル、及びレニウムが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0010】
チタンも摩擦攪拌溶接するために望ましい材料であることに注意されたい。チタンは非鉄材料であるが、他の非鉄材料よりも高い融点を有する。
以前の特許は、摩擦攪拌溶接される材料よりも高い融解温度を有する材料を使用して形成された工具を必要とすることを教示している。幾つかの具体例においては、超砥粒を工具中に使用した。
【0011】
本発明の具体例は一般に、こうした機能的に溶接できない材料、並びに超合金に関し、下文で本文書全体にわたって“高融解温度”材料と呼ばれる。
摩擦攪拌溶接の有利な特性を使用し、これを高融解温度材料の摩擦攪拌加工の新たな分野に適用することは、従来技術にまさる利点であると思われる。
【0012】
材料の液体状態加工
周期表は、開発され、現在製造されている材料の全てを設計するために使用される元素を略述し、組織化する。こうした元素の各々は、温度及び圧力に依存して固体、液体、または気体状態で存在することができる。こうした元素から生成する固体材料の例えば金属鉄合金、金属非鉄合金、金属マトリックス複合体、金属間化合物(intermetallics)、サーメット、超硬合金、ポリマー等は特定の加工を受けて、材料の所望の物理的及び機械的性質を生成する。
【0013】
先に挙げた固体材料タイプの各々は、元素をある仕方で一緒に混合し、熱及び/または圧力を加え、その結果液体及び/または液体−固体混合物が形成されるようにすることによって生成した。混合物を次に冷却して、結果として生じる固体材料を形成する。形成された固体材料は、加工特性の幾つか、元素混合物の相、粒子配向等を明らかにする特徴的な微視的結晶性または顆粒状構造を有しよう。例えば、軟鋼は、指定の量の炭素及び鉄を一緒に(微量元素と共に)混合し、液体が形成されるまで混合物を加熱することによって製造される。液体が冷却し、凝固するにつれて、鋼が形成される。
【0014】
冷却速度、その後の熱処理及び機械的加工は、鋼の微細構造及びその得られた特性に影響しよう。微細構造は、平均特定結晶粒度(average specific grain size)及び形状を有する顆粒状構造を明らかにする。何十年もの研究及び設計は、様々な材料を理解し、所望の材料及び機械的性質を生成するための温度及び機械的加工を使用して様々な元素から生成することに専念してきた。
【0015】
設計された材料の例えば金属鉄合金、金属非鉄合金、金属マトリックス複合体、金属間化合物、サーメット、超硬合金等は全て、元素の幾つかまたは全てを一緒に融解して固体を形成するプロセスを必要とする。しかしながら、この液相から固相への変態を有することの結果として生じる幾つかの問題が存在する。
【0016】
例えば、液相にある間、ある温度及び/または圧力での時間はしばしば重要な変数になる。幾つかの元素は下位混合物中に溶解し、一方、他のものは他の元素と化合して新たな相を形成するにつれて析出する。この動的挙動は、元素溶解度、拡散特性、及び熱力学的挙動の複雑な相互作用である。こうした複雑さが理由となって、最初から材料を設計するのは困難である。材料はむしろ、試行錯誤実験によって開発される。特定の元素組成が決定している場合でさえも、液相加工は、得られる固体材料の特性を変更するであろう多数のプロセスパラメータを有し得る。この液相にある間、時間、温度及び圧力は、材料の特性を決定する際に重要な役割を果たす。より多くの元素が混合物中で化合する程、液相加工は予測可能な材料を製造するのがより困難になる。
【0017】
混合物が凝固するにつれて、望ましくない相が固体構造中に析出し、有害な樹枝状構造が形成し得、結晶粒度勾配が温度勾配から生成し、残留応力が誘起され、その結果として、得られた材料中に歪みまたは望ましくない特性を生じる。凝固欠陥の例えば亀裂及びポロシティーは、前の液相から形成された材料の加工を苦しめる絶えざる問題である。こうした問題の全ては組み合わさって、与えられた材料の機械的性質及び材料特性を低下させる。材料の特性の予測不可能性は、このような材料から製造された構成要素の信頼性の予測不可能性をもたらす。
【0018】
こうした凝固の問題及び生じた欠陥が理由となって、材料の望ましい特性の幾つかを戻すために追加の機械的及び熱的プロセスがしばしば実行される。こうしたプロセスは、幾つかを挙げると、鍛造、熱間圧延、冷間圧延、及び押出しを含む。あいにく、機械的プロセスはしばしば材料に望ましくない方向特性(directional properties)を与え、延性を低減し、増分残留応力(incremental residual stresses)を加え、コストを増大させる。熱処理を使用して残留応力を軽減することができるが、こうした処理でさえも結晶粒を成長させ、他の歪みを生じさせ得る。
【0019】
しばしば、加工される材料のバルクサイズは、結晶粒成長を防ぐために必要なより短い加工時間を禁じる。こうした大きなバルク材料の熱キャパシタンスもまた長時間の高温を維持し、これはまた単独で、有害な多量に生じる結晶粒成長のための環境を生成する。あいにく、バルク材料の温度を焼入れによって急速に低下させることは、亀裂及び材料の引張強さに近い残留応力が形成され得るので再度問題がある。
【0020】
従って、固体材料を生成するために液相混合物を使用することが必要な場合に、所望の範囲の特性を有する与えられた結晶粒度、結晶粒度分布及び元素組成を有する材料を設計し、製造するのがなぜ非常に困難なのかは明瞭なはずである。
【0021】
多くの材料の製造者は、最高の可能な材料及び可能な機械的性質を得るために、非常に微細な粒子(サブミクロン)の微細構造を生成することを希望している。現在、微細粒子の微細構造は、結晶粒成長阻害元素(grain growth inhibiting elements)または混合物を加工の液相に加えることを用いて実現される。結晶粒度は低減するが、こうした阻害剤はしばしば他の材料加工の問題を生じる。こうした問題の幾つかは、材料のより低い強度、粒界欠陥、及び有害な相を含む。従って、必要とされるものは、可能な最小量の熱入力を用いて固体状態で一緒に結合する材料を生成するであろう加工システム及び方法である。すなわち、必要とされるものは、液相を使用しないプロセスによって材料を生成するであろう加工システム及び方法である。
【0022】
高温摩擦攪拌溶接工具
液相から固相への変態を必要とする材料の生成に関係した問題に関連して、摩擦攪拌溶接(FSW)技術における最近の進歩は、摩擦攪拌溶接の固体状態接合プロセスの最中に高融解温度材料の例えば鋼及びステンレス鋼を一緒に接合するために使用できる工具をもたらした。
【0023】
先に説明したように、この技術は、特殊な摩擦攪拌溶接工具を使用することを含む。図2は、多結晶性立方晶窒化ホウ素(PCBN)チップ30、ロッキングカラー32、移動を防ぐための熱電対止めねじ34、及びシャンク36を示す。
【0024】
この工具を使用する場合、これは様々な材料の摩擦攪拌溶接において有効である。この工具設計はまた、PCBN及びPCD(多結晶性ダイヤモンド)以外の様々な工具チップ材料を使用する場合に有効である。こうした材料の幾つかは、耐火物の例えばタングステン、レニウム、イリジウム、チタン、モリブデン等を含む。
【0025】
こうしたチップ材料はしばしば製造するのが高価なので、交換可能なチップを有する設計は、製造及び工具に市場を提供する経済的な様式であり、というのはこれは摩耗または破壊した際に交換できるからである。
【発明の開示】
【0026】
有益な微細構造を得るために、材料の摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、本発明の1態様である。
有益な巨視的構造を得るために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
【0027】
工作物の靱性を改良するために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
工作物の硬さを増大させるかまたは減少させるために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
【0028】
工作物の標的区域を修正するために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
同じ工作物の異なる区域を修正して異なる特性を有するように工作物を修正するために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
【0029】
工作物の表面を修正するために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
工作物の表面及び内部の少なくとも一部分を修正するために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
【0030】
工作物の一部分のみを修正し、同時に、修正されない他の部分を残す摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
本発明の様々な具体例においては、摩擦攪拌加工、摩擦攪拌混合、または摩擦攪拌溶接できる工具を使用することによって工作物表面に固体状態加工を実行し、ここで、固体状態加工は工作物の特性を修正し、同時に、幾つかの具体例においては固相を実質的に維持し、他の具体例においては幾つかの元素に液相を通過させ、材料の修正された特性としては、微細構造、巨視的構造、靱性、硬さ、粒界、結晶粒度、相の分布、延性、超塑性、核生成部位密度(nucleation site densities)の変化、圧縮性、膨張性、摩擦係数、耐摩耗性、耐食性、疲れ抵抗、磁気特性、強度、放射線吸収、及び熱伝導率が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
本発明の上述した態様、特徴、利点及び他の態様、特徴、利点は、添付図面と組み合わせて以下の詳細な説明を検討することによって、当業者には明瞭になろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
ここから図面を参照し、ここで、本発明の具体例の様々な要素は参照番号を与えられ、本発明は、当業者が具体例を作り、使用することを可能にするように検討されよう。以下の説明は、本発明の原理の単なる模範例であり、下記の請求の範囲を狭めるものとみなすべきではないことは理解されるはずである。
【0033】
下文で説明する本発明は、幾つかの異なるクラスの材料に適用されよう。1具体例においては、材料は、以前に開示したように青銅及びアルミニウムよりも高い融解温度を有する材料とみなしてよい。このクラスの材料としては、金属マトリックス複合体、鉄合金の例えば鋼及びステンレス鋼、非鉄材料、超合金、チタン、典型的に表面硬化肉盛のために使用されるコバルト合金、及び空気焼入れまたは高速度鋼が挙げられるがこれらに限定されるものではない。別の具体例においては、材料は、上記に説明したより高い融解温度の定義の範囲内に含まれない全ての他のより低融解温度の材料とみなしてよい。
【0034】
固体状態加工
本発明の第1の具体例においては、固体状態加工及び固体状態接合方法は、新たな及び既存の材料のために改良された材料特性及び機械的性質を与えるために開発された。加工及び接合は互いに排他的な事象としてよく、またはこれらは同時に行われてよいことに注意されたい。また、固体状態加工はまた“摩擦攪拌加工”という句と互換性があるように言及されることがあることに注意されたい。固体状態加工は本明細書において、典型的に液相を含まない可塑化された状態への一時的変態と定義される。しかしながら、幾つかの具体例は、1つ以上の元素に液相を通過させ、依然として本発明の利益を得ることに注意されたい。
【0035】
固体状態接合の利益は、2つ以上の材料を一緒に接合する場合に摩擦攪拌溶接(FSW)の開発と共に明瞭になった。より初期に、摩擦攪拌溶接工具の進行速度は典型的に10〜500mm/minであり、回転速度は200〜2000rpmであると言及された。しかしながら、進行速度及び回転速度は、本発明の幾つかの具体例においては変化し得ることに注意されたい。例えば、進行速度及び回転速度を増大させるかまたは減少させることができるように工具の直径を修正することができる。
【0036】
本発明においては、この技術の基礎は、様々な形態の固体の加工を実現することができるように、微視的スケールで材料に適用される。この方法を使用して、低融解温度及び高融解温度材料の両方を使用して新たなまたは既存の材料を合成することができる。
【0037】
本発明の第1の態様は、摩擦攪拌加工を実行するために使用する工具である。摩擦攪拌加工は、図1に示す工具を使用して実行することができる。従って、摩擦攪拌加工工具は、シャンク、肩部、及びピンを有し得る。1具体例においては、工具ピンは回転し、加工されるべき材料中に沈む。工具は材料の加工区域にわたって横断的に移動する。これが、最初の材料と異なる特性を有するように修正される材料をもたらすことができる固体状態プロセスにおいて材料に可塑化を受けさせる働きである。
【0038】
本発明の別の具体例は、図3に示す工具を使用することである。図3は、円柱形の摩擦攪拌加工工具50の断面図である。摩擦攪拌加工工具50はシャンク52及び肩部54を有するが、ピンを有しない。従って、固体状態加工されるべき材料中にピンが沈む代わりに、肩部は、材料に押し当てられる。肩部による侵入は典型的に、ピンと比較して肩部のより大きな表面積が理由となって、材料の表面またはその直下に制限される。
【0039】
図1の工具10のピン14は材料中に沈む必要は無いが、ピンは容易な侵入を得るように設計してよいことに注意されたい。従って、ピン14は図3の工具50と比較して恐らく非常に小さな表面積を有するので、ピンは恐らく材料中に沈む。しかしながら、ちょうど表面でさえも、材料のはるかに小さな区域を加工するためにピン14のより小さな表面積を使用することは有利なことがある。従って、表面及び近表面加工もまた、より典型的に材料の侵入及び接合のために使用される工具を使用して成し遂げることができることは本発明の別の具体例である。
【0040】
図4は、ピンを有しない工具のための他の具体例として提供される。図4は、肩部64よりも直径が小さなシャンク62を有する工具60を示す。この設計は、肩部64の直径のスケールに依存してより経済的となり得る。
【0041】
図3及び4における肩部54及び64の形状から何も推論すべきではないことを認識するのは重要である。肩部54及び64は説明のためにのみ示され、その正確な断面形状は、特定の結果を実現するために修正できる。
【0042】
実験結果は、加工される材料は、摩擦攪拌加工の最中に幾つかの重要な変化を受けることがあることを証明した。こうした変化としては、以下のものが挙げられるがこれらに限定されるとみなすべきではない:靱性、硬さ、粒界、結晶粒度、相の分布、延性、超塑性、核生成部位密度の変化、圧縮性、膨張性、摩擦、及び熱伝導率。
【0043】
核生成に関しては、観察は、摩擦攪拌加工の最中に発生した熱及び変形から材料中に誘起されるエネルギーが理由となって、より多くの核生成部位が存在するかもしれないことを示す。従って、より多量の溶質材料が溶液または析出物から出て、より高密度の析出物または第2の相を形成するかもしれない。
【0044】
例として、工具が材料中に沈むことによって摩擦攪拌加工を受けた材料の断面を示す以下の図を検討する。図を観察するが、工具が加工される材料中に沈まない場合、同様のまたは同一の結果をより小さなスケールで得ることができることは理解されるはずである。
【0045】
図5において、図2に示す工具と同様の工具を基材70中に沈め、工具を中央長手方向に沿って横断的に移動させることによって、ATS34鋼の一部分を摩擦攪拌加工した。横断的な移動はページに対して垂直であると思われ、従って図5は基材70の断面図である。
【0046】
図5は、工具は、上部72から基材70中に沈んだことを示す。小さな円として現れている幾つかの区域は、基材の様々な帯域においてロックウェルスケールを基準として硬さに関して試験したとして示される。撹拌帯域74は、硬さ60RCを有することが示される。内部TMAZ(熱的機械的影響部(thermally mechanically-affected zone))及び外部HAZ(熱影響部)の境界近くで、基材70は、位置76で硬さ値44RCを有するとして示される。最後に、未加工のまたは最初の基材帯域は、他の試料において、ほぼ位置78でその最初の硬さ値12RCを保持しているとして示される。
【0047】
図6は、加工された基材80の微細構造を示すために提供される。図は、摩擦攪拌加工はマルテンサイトを生成し、加工された基材80のより硬質な相を示すことを示す。
同様に、図7も、摩擦攪拌加工された後の材料80の微細構造の図である。図は、加工された基材80における低減された結晶粒度を示す。
【0048】
比較のために、図5の基材70の熱処理は、硬さ値60RC未満をもたらすと思われる。本発明の幾つかの具体例においては、別の状況では他の熱処理方法を用いて行うことが困難な基材70の大きな部分を選択的に摩擦攪拌加工することが可能である。加えて、材料設計者は、加工を受ける予定の材料の区域をより選択することができる。その上、熱処理は材料の微細構造を変更するであろうが、変化は、摩擦攪拌加工を用いて実現できる同じタイプの変化ではないだろう。例えば、加工された区域はまた、靱性の実質的な増大を経験している。これは、従来の処理技術を使用して材料を加工する場合、典型的に靱性と硬さとの間に妥協が存在するので、注目に値する。
【0049】
別の具体例においては、D2鋼で形成した部材をその1端部に沿って摩擦攪拌加工した。端部を加工した後に、内部の未加工の領域から加工された領域までの部材の幅にわたる硬さを決定した。摩擦攪拌加工から生じた材料における硬さ勾配を、グラフ1に示す。この例において、摩擦攪拌加工は、靱性の改良と共に摩擦攪拌帯域における材料の硬さ特性のかなりの改良をもたらした。
【0050】
【表1】
【0051】
図8は、ATS−34鋼基材70表面のカッティングエッジのオーバーレイ90の図である。オーバーレイ90は、材料70から機械加工される可能性があるカッティングエッジの1つの有利な形状を示し、ここで、形状は、摩擦攪拌加工された材料70の改良された靱性及び硬さ特性を最大に利用する。カッティングエッジオーバーレイ90は、硬質でしかもなお強靱なカッティングエッジをもたらすであろう加工された領域74中に形成されることに注意されたい。同様に、加工された材料から形成される任意の物体を、最も有利な特性を提供するように配置することができ、ここで、これは物体にとって最も重要である。この例においては、有益なカッティングエッジは、加工された材料の十分に内部にエッジを配置させることから実現しよう。
【0052】
図9は、図6及び7の加工された基材80の微細構造とここで示す未加工の基材80との間で比較をする場合に助けになる。微細構造は、摩擦攪拌加工の前の基材80の焼なましされた状態の大きな結晶粒度を示す。
【0053】
図5〜8は、摩擦攪拌加工に関して本発明の態様を示した。この場合には、“加工”という用語は、本発明によって教示するように単一の材料が単独で加工される場合に使用されている。“加工”という用語は同様に、少なくとも2つの材料を一緒に混合する場合に適用することができる。しかしながら、明瞭にするために、少なくとも2つの材料を混合するこの概念を“摩擦攪拌混合”と呼ぶ。
【0054】
図10は、別の添加物材料を含むように摩擦攪拌混合された基材の断面図である。特に、鋼部材100は、ダイヤモンド粒子102が鋼部材中に進入するように摩擦攪拌混合された。
【0055】
図11は、鋼部材100の微細構造の断面図である。図は、鋼部材100の混合された領域全体にわたってダイヤモンド粒子102が存在することを示す。
図12は、添加物材料112を適所に保持するためにメッシュまたはスクリーン110を使用して、添加物材料112を別のものの中に摩擦攪拌混合するための、1具体例の断面図である。特に、ステンレス鋼メッシュまたはスクリーン110は、粉末の形態の炭化物112を保持するために使用されている。スクリーン110及び炭化物粉末112は、基材114の表面に配置される。基材114の表面は次に摩擦攪拌加工され、基材の表面におけるステンレス鋼110、炭化物112、及び基材114の混合をもたらす。他に、ピンを有する工具を使用して、または基材中によりしっかり押し付けられる肩部を有する工具を使用することによって、様々な材料がさらに基材114中に混合される可能性がある。
【0056】
図13は、粉末の形態の炭化タングステンを鋼部材120中に摩擦攪拌混合した結果の断面図である。
図14は、鋼部材120及び炭化タングステン粉末を混合した領域の表面の微細構造の平面図である。
【0057】
本発明の別の態様は、固体状態プロセス及び接合の両方を同時にする能力である。一緒に溶接されている2つの工作物を検討する。工作物は同じ材料または異なる材料である可能性がある。工作物を一緒に摩擦攪拌溶接することによって、得られた材料は、一緒に接合されている材料のものと明白に異なる特性を溶接領域において有する。
【0058】
図12に示すように、具体例は、摩擦攪拌混合のために別の材料を基材中に導入することが可能であることを示す。しかしながら、本発明はこの1つの設計に限定されるとみなすべきではない。添加物材料を導入する幾つかの他の方法としては、充填された粉末を工作物の表面中の溝に入れる(entrench)、一緒に接合されるべき工作物同士の間に材料を挟む、及び一緒に摩擦攪拌混合されるまで接着剤さえ使用して添加物を工作物に結合させる、が挙げられるがこれらに限定されるものではない。摩擦攪拌混合プロセスの最中に燃え尽き、それによって得られた混合材料に影響しないように、接着剤を選択することができる。しかしながら、添加物を基材に結合するために使用されるどのような材料でも含むことが望ましいことがあることは理解されるはずである。
【0059】
添加物を導入する別の方法は、消費可能な工具の使用による。例えば、ピンは、基材中に浸食するであろう材料で構成されてよい。従って、ピンは添加物材料で構成される。
本発明はまた、材料加工にエネルギーを導入するための新たな手段とみなすことができる。本質的に、機械的エネルギーは、材料を修正するために固体状態プロセスにおいて使用されている。機械的エネルギーは、摩擦攪拌加工または摩擦攪拌混合の作用によって発生した熱及び変形の形態である。
【0060】
本発明の別の態様は、加工された材料における残留表面及び下位表面応力成分を修正し、制御する能力である。幾つかの具体例においては、圧縮応力を導入するかまたは増大させることが可能であり、一方、他の具体例においては、望ましくない応力が低減されるかもしれない。
【0061】
残留応力を制御することは、幾つかの高融解温度材料において特に重要なことがある。摩擦攪拌加工及び摩擦攪拌混合は、工作物を回転する(またはさもなければ移動する)摩擦攪拌加工または摩擦攪拌混合工具と接触させて、それによって材料の固体状態加工を生じさせて材料の表面に沿って応力を修正することを含む。応力の低減は、表面のみに限定されるとみなすべきではない。他の具体例においては、下位表面応力を修正する態様も本発明の部分である。
【0062】
幾つかの具体例はまた、プロセスパラメータの制御を行うことによって使用者が加熱及び冷却速度を制御することを可能にする。摩擦攪拌加工及び混合パラメータは、工具の相対的運動(例えば、工具の回転速度及び並進運動速度)、工具侵入の深さ、工具に加える下向きの力、冷却媒体(水冷)と共に冷却速度等を含む。
【0063】
摩擦攪拌混合に関して、添加物材料の性質はまた、得られた加工された区域の性質に直接に影響を与えることができる。粉末及びダイヤモンド粒子は上記に検討した。他の具体例においては、添加物材料の物理的構造は、得られる特性に影響することがある。例えば、混合領域の内側並びにすぐ外側の帯域において繊維または他のタイプの細長い粒子を基材中に混合できる。加えて、添加物材料は、基材または他の添加物よりも硬質または軟質とすることができる。
【0064】
基材の機械的性質の例えば特に耐摩耗性、耐食性、硬さ、靱性、亀裂防止、疲れ抵抗、磁気特性、及び水素脆化を制御するように、全ての添加物材料を選択してよい。例えば、硬質粒子は、機械的にまたは固体状態拡散によって適所に保持され、鋳造組織よりも大きな保持であり、というのは混合領域の強度は基材におけるものを超えても超えなくてもよいからである。
【0065】
硬質粒子は、炭化タングステン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、立方晶窒化ホウ素、及び/またはダイヤモンドまたは、混合温度(通常、基材の融点よりも100〜200℃低い)で十分に溶解しないであろう、基材よりも硬質な任意の材料を含んでよい。加えて、繊維を同じ仕方で加えて、基材を局所的に強化してよくまたは方向特性を加えてよい。
【0066】
加工された基材の幾つかの特定の特性を実現するために、添加物材料を、溶解する能力に関して特に選択してよい。添加物はまた、靱性、硬さを向上し、熱特性等を向上することができる。
【0067】
添加物を基材中に置くことの別の利点は、粒子または繊維を、溶融または表面硬化肉盛加工において使用できない材料から選択できるということであり、というのはこれは、基材の液相にある間に溶解すると思われるからである。摩擦攪拌加工においては、二重の特性を実現できるように、粒子/繊維と基材との共融組成物を避けることができる。与えられた工作物の内部の様々な特性に適応させるために、粒子/繊維の基材中への導入を変化させることができる。
【0068】
例えば、長いピンを有する工具を使用して粒子/繊維をより深い深さに撹拌することができ、次により短いピンを有する第2の工具を使用して様々な深さで様々な粒子/繊維を撹拌して、基材における層状特徴を形成することができる。混合領域の幾何学的形状、粒子/繊維組成、粒子/繊維サイズ、粒子/繊維分布及び基材の内部の位置は、与えられた物体に、設計された摩耗及び強度特徴を提供することができる。
【0069】
図2に示す工具と同様の摩擦攪拌加工工具を使用して、新たな材料を生成し、既存の材料を修正することができる。例えば、粉末形態の元素を型中に置くことができる。工具10は回転し、粉末中に沈んで熱を発生することができる。工具10が粉末を通って横断するにつれて、固体状態拡散が起きて、粉末を基材と共に固体形態に接合する。同様に、溝を材料中に切り、元素の混合物を有する粉末を充填し、次に摩擦攪拌加工して材料を一緒に混合することができる。
【0070】
他に、材料を材料の表面に直接に加えることができ、またはこれを2つの部片の鋼のような材料の間に挟み、次に摩擦攪拌加工して材料を一緒に接合することができる。他の方法も使用して、摩擦攪拌混合において材料を一緒に混合することを成し遂げることができる。
【0071】
摩擦攪拌混合した場合、粉末は摩擦攪拌混合によって基材と混合されて、撹拌領域において修正された特性を有する材料を形成する。選択された具体例においては、プロセスは熱発生をほとんど生じず、低いエネルギー入力を有し、ある温度で非常に短い時間を必要とし、一般により少ない凝固欠陥を有しようし、完全自動化できる。有利に、1つ以上の具体例は、固体状態の性質及び加工の極度の再現性が理由となって、最小の加工後検査を必要とする。
【0072】
加工方法は、界面ギャップに許容度があり、従って加工前作製がほとんど無い。除去すべき材料スパッターは存在しない。選択された具体例においては加工後仕上げ面は並外れで滑らかとなることができ、ばりはごくわずかから全く存在しない。他のプロセスと異なり、本発明の幾つかの具体例に従って実行される摩擦攪拌加工は、ポロシティー及び酸素汚染がほとんど無く並びに歪みがほとんどまたは全く無い状態で行うことができる。その上、摩擦攪拌加工は、制御された気体または液体環境中で実行できる。
【0073】
元素、合金、金属、及びまたは他の材料タイプを、固体形態、粉末形態、繊維形態、プレート形態で、ワイヤとして、または一連の複合体組成物で加工できる。幾つかの具体例においては、新たな材料を現在液相問題の懸念無しに設計することができる。
【0074】
下記の表1は、どのようにして材料特性が影響され得るかという幾つかの例を示す。添加物を摩擦攪拌加工または摩擦攪拌混合することによって、所望の材料特性を相殺することが起きることがあることに注意されたい。
【0075】
【表2】
【0076】
上記に説明した配置及び具体例は、本発明の原理の適用を例示するのみであることは理解されるはずである。多数の修正及び他の配置は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって考案できる。添付の請求の範囲は、このような修正及び配置を包含することを意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】摩擦攪拌溶接に関して従来技術において教示された工具の斜視図であり、ここで、工具を使用して、新たな機能を実行することができる。
【図2】取り外し可能な多結晶性立方晶窒化ホウ素(PCBN)チップ、ロッキングカラー及びシャンクの斜視図である。
【図3】等しい直径の肩部及びシャンクを有する摩擦攪拌加工工具の1具体例である。
【図4】異なる直径の肩部及びシャンクを有する摩擦攪拌加工工具の別の具体例である。
【図5】基材の特性を修正するために摩擦攪拌加工された基材の断面図である。
【図6】摩擦攪拌加工の前の基材の微細構造の図である。
【図7】摩擦攪拌加工の後の基材の微細構造の図である。
【図8】基材の特性を修正するために摩擦攪拌加工された基材の断面図であり、どこにカッティングエッジが摩擦攪拌加工された材料から形成される可能性があるかを特定するオーバーレイを有する。
【図9】材料の焼なましされた状態の大きな結晶粒度を示す微細構造の図である。
【図10】別の材料を含むように摩擦攪拌混合された材料の断面図である。
【図11】図10の鋼の微細構造の断面図である。
【図12】添加物材料112を適所に保持するためにメッシュまたはスクリーン110を使用して、添加物材料112を別のものの中に摩擦攪拌混合するための、1具体例の断面図である。
【図13】粉末の形態の炭化タングステンを鋼中に摩擦攪拌混合した結果の断面図である。
【図14】鋼120及び炭化タングステン粉末を混合した領域の表面の微細構造の平面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、摩擦攪拌加工及び摩擦攪拌混合による材料の固体状態加工(solid state processing)に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦攪拌溶接(下文で“FSW”)は、金属及び金属合金を溶接するために開発された技術である。FSWプロセスはしばしば、回転する撹拌ピンまたはスピンドルによって、2つの隣接する工作物の材料を接合部のいずれかの側の表面で係合させることを含む。力を及ぼしてスピンドル及び工作物を一緒に圧迫し、スピンドルと工作物との間の相互作用によって生じる摩擦熱は、接合部のいずれかの側の表面での材料の可塑化をもたらす。スピンドルは接合部に沿って横断して、前進するにつれて材料を可塑化し、前進するスピンドルの通った跡に残された可塑化された材料は冷却して溶接部を形成する。
【0003】
図1は、肩部12及び肩部から外側に延在するピン14を有する略円柱形の工具10を特徴とする、摩擦攪拌溶接のために使用される工具の斜視図である。十分な熱が発生するまでピン14は工作物16に当てられて回転し、この時点で工具のピンは可塑化された工作物材料中に沈む。工作物16はしばしば、接合線18において一緒に突き合わせられる材料の2枚のシートまたはプレートである。ピン14は、接合線18において工作物16中に沈む。この工具は従来技術において開示されているが、工具は新たな目的のために使用できることが説明されよう。また、“工作物”及び“基材”という用語は、本文書全体にわたって互換性があることに注意されたい。
【0004】
工作物材料16に当てられたピン14の回転運動によって生じた摩擦熱は、工作物材料を融点に達することなく軟化させる。工具10は接合線18に沿って横断的に移動し、それによって、可塑化された材料がピンの周りを前縁から後縁に流れるにつれて溶接部を生成する。結果は、他の溶接部と比較して、工作物材料16自体と一般に区別できないことがある、接合線18における固相結合20である。
【0005】
肩部12が工作物の表面に接触する時に、その回転は、挿入されたピン14の周りの材料のより大きな円柱形の柱を可塑化する追加の摩擦熱を生成することが観察される。肩部12は、工具ピン14によって生じる上向きの金属流れを含む鍛造力を提供する。
【0006】
FSWの最中に、溶接されるべき区域及び工具は、工具が溶接接合部の所望の長さを横断するように互いに対して移動する。回転するFSW工具は、連続した熱間加工作用を提供して、母材に沿って横断的に移動するにつれて狭い帯域の内部で金属を可塑化し、同時にピンの前面からその後縁に金属を運ぶ。溶接帯域が冷却する時には、工具が通過するにつれて液体が生成しないので典型的に凝固は存在しない。しばしば、得られた溶接部は、溶接部の区域において形成された無欠陥で再結晶した微細粒子の微細構造であるが、常にではない。
【0007】
進行速度は典型的に10〜500mm/minであり、回転速度は200〜2000rpmである。到達する温度は通常、固相線温度に近いがこれ未満である。摩擦攪拌溶接パラメータは、材料の熱的性質、高温流れ応力及び侵入深さの関数である。
【0008】
摩擦攪拌溶接は、融接にまさる幾つかの利点を有し、というのは、1)溶加材が存在しない、2)プロセスを完全自動化でき、比較的に低い操作員の熟練レベルを必要とする、3)全ての加熱は工具/工作物界面において起きるので、エネルギー入力は効果的である、4)固体状態の性質及びFSWの極度の再現性が理由となって、最小の溶接後検査が必要である、5)FSWは界面ギャップに許容度があり、従って溶接前作製がほとんど必要ない、6)除去すべき溶接スパッターが存在しない、7)溶接後仕上げ面は並外れで滑らかとなることができ、ばりはごくわずかから全く存在しない、8)ポロシティー及び酸素汚染が存在しない、9)歪みまたは囲繞する材料がほとんどまたは全く存在しない、10)有害な放出が存在しないので、操作員の保護が必要ではない、及び11)溶接特性が改良されるからである。
【0009】
以前の特許文書は、以前には機能的に溶接できないとみなされていた材料を用いて摩擦攪拌溶接を実行できることの利益を教示している。こうした材料の幾つかは融接可能でないか、または溶接するのが全く困難である。こうした材料は、例えば、金属マトリックス複合体、鉄合金の例えば鋼及びステンレス鋼、並びに非鉄材料を含む。また摩擦攪拌溶接を利用できた別のクラスの材料は、超合金である。超合金は、高融解温度青銅またはアルミニウムを有する材料とすることができ、その上、中に混合された他の元素を有してよい。超合金の幾つかの例は、一般に1000°Fを超える温度で使用されるニッケル、鉄−ニッケル、及びコバルトに基づく合金である。超合金において一般に見い出される追加の元素としては、クロム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル、及びレニウムが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0010】
チタンも摩擦攪拌溶接するために望ましい材料であることに注意されたい。チタンは非鉄材料であるが、他の非鉄材料よりも高い融点を有する。
以前の特許は、摩擦攪拌溶接される材料よりも高い融解温度を有する材料を使用して形成された工具を必要とすることを教示している。幾つかの具体例においては、超砥粒を工具中に使用した。
【0011】
本発明の具体例は一般に、こうした機能的に溶接できない材料、並びに超合金に関し、下文で本文書全体にわたって“高融解温度”材料と呼ばれる。
摩擦攪拌溶接の有利な特性を使用し、これを高融解温度材料の摩擦攪拌加工の新たな分野に適用することは、従来技術にまさる利点であると思われる。
【0012】
材料の液体状態加工
周期表は、開発され、現在製造されている材料の全てを設計するために使用される元素を略述し、組織化する。こうした元素の各々は、温度及び圧力に依存して固体、液体、または気体状態で存在することができる。こうした元素から生成する固体材料の例えば金属鉄合金、金属非鉄合金、金属マトリックス複合体、金属間化合物(intermetallics)、サーメット、超硬合金、ポリマー等は特定の加工を受けて、材料の所望の物理的及び機械的性質を生成する。
【0013】
先に挙げた固体材料タイプの各々は、元素をある仕方で一緒に混合し、熱及び/または圧力を加え、その結果液体及び/または液体−固体混合物が形成されるようにすることによって生成した。混合物を次に冷却して、結果として生じる固体材料を形成する。形成された固体材料は、加工特性の幾つか、元素混合物の相、粒子配向等を明らかにする特徴的な微視的結晶性または顆粒状構造を有しよう。例えば、軟鋼は、指定の量の炭素及び鉄を一緒に(微量元素と共に)混合し、液体が形成されるまで混合物を加熱することによって製造される。液体が冷却し、凝固するにつれて、鋼が形成される。
【0014】
冷却速度、その後の熱処理及び機械的加工は、鋼の微細構造及びその得られた特性に影響しよう。微細構造は、平均特定結晶粒度(average specific grain size)及び形状を有する顆粒状構造を明らかにする。何十年もの研究及び設計は、様々な材料を理解し、所望の材料及び機械的性質を生成するための温度及び機械的加工を使用して様々な元素から生成することに専念してきた。
【0015】
設計された材料の例えば金属鉄合金、金属非鉄合金、金属マトリックス複合体、金属間化合物、サーメット、超硬合金等は全て、元素の幾つかまたは全てを一緒に融解して固体を形成するプロセスを必要とする。しかしながら、この液相から固相への変態を有することの結果として生じる幾つかの問題が存在する。
【0016】
例えば、液相にある間、ある温度及び/または圧力での時間はしばしば重要な変数になる。幾つかの元素は下位混合物中に溶解し、一方、他のものは他の元素と化合して新たな相を形成するにつれて析出する。この動的挙動は、元素溶解度、拡散特性、及び熱力学的挙動の複雑な相互作用である。こうした複雑さが理由となって、最初から材料を設計するのは困難である。材料はむしろ、試行錯誤実験によって開発される。特定の元素組成が決定している場合でさえも、液相加工は、得られる固体材料の特性を変更するであろう多数のプロセスパラメータを有し得る。この液相にある間、時間、温度及び圧力は、材料の特性を決定する際に重要な役割を果たす。より多くの元素が混合物中で化合する程、液相加工は予測可能な材料を製造するのがより困難になる。
【0017】
混合物が凝固するにつれて、望ましくない相が固体構造中に析出し、有害な樹枝状構造が形成し得、結晶粒度勾配が温度勾配から生成し、残留応力が誘起され、その結果として、得られた材料中に歪みまたは望ましくない特性を生じる。凝固欠陥の例えば亀裂及びポロシティーは、前の液相から形成された材料の加工を苦しめる絶えざる問題である。こうした問題の全ては組み合わさって、与えられた材料の機械的性質及び材料特性を低下させる。材料の特性の予測不可能性は、このような材料から製造された構成要素の信頼性の予測不可能性をもたらす。
【0018】
こうした凝固の問題及び生じた欠陥が理由となって、材料の望ましい特性の幾つかを戻すために追加の機械的及び熱的プロセスがしばしば実行される。こうしたプロセスは、幾つかを挙げると、鍛造、熱間圧延、冷間圧延、及び押出しを含む。あいにく、機械的プロセスはしばしば材料に望ましくない方向特性(directional properties)を与え、延性を低減し、増分残留応力(incremental residual stresses)を加え、コストを増大させる。熱処理を使用して残留応力を軽減することができるが、こうした処理でさえも結晶粒を成長させ、他の歪みを生じさせ得る。
【0019】
しばしば、加工される材料のバルクサイズは、結晶粒成長を防ぐために必要なより短い加工時間を禁じる。こうした大きなバルク材料の熱キャパシタンスもまた長時間の高温を維持し、これはまた単独で、有害な多量に生じる結晶粒成長のための環境を生成する。あいにく、バルク材料の温度を焼入れによって急速に低下させることは、亀裂及び材料の引張強さに近い残留応力が形成され得るので再度問題がある。
【0020】
従って、固体材料を生成するために液相混合物を使用することが必要な場合に、所望の範囲の特性を有する与えられた結晶粒度、結晶粒度分布及び元素組成を有する材料を設計し、製造するのがなぜ非常に困難なのかは明瞭なはずである。
【0021】
多くの材料の製造者は、最高の可能な材料及び可能な機械的性質を得るために、非常に微細な粒子(サブミクロン)の微細構造を生成することを希望している。現在、微細粒子の微細構造は、結晶粒成長阻害元素(grain growth inhibiting elements)または混合物を加工の液相に加えることを用いて実現される。結晶粒度は低減するが、こうした阻害剤はしばしば他の材料加工の問題を生じる。こうした問題の幾つかは、材料のより低い強度、粒界欠陥、及び有害な相を含む。従って、必要とされるものは、可能な最小量の熱入力を用いて固体状態で一緒に結合する材料を生成するであろう加工システム及び方法である。すなわち、必要とされるものは、液相を使用しないプロセスによって材料を生成するであろう加工システム及び方法である。
【0022】
高温摩擦攪拌溶接工具
液相から固相への変態を必要とする材料の生成に関係した問題に関連して、摩擦攪拌溶接(FSW)技術における最近の進歩は、摩擦攪拌溶接の固体状態接合プロセスの最中に高融解温度材料の例えば鋼及びステンレス鋼を一緒に接合するために使用できる工具をもたらした。
【0023】
先に説明したように、この技術は、特殊な摩擦攪拌溶接工具を使用することを含む。図2は、多結晶性立方晶窒化ホウ素(PCBN)チップ30、ロッキングカラー32、移動を防ぐための熱電対止めねじ34、及びシャンク36を示す。
【0024】
この工具を使用する場合、これは様々な材料の摩擦攪拌溶接において有効である。この工具設計はまた、PCBN及びPCD(多結晶性ダイヤモンド)以外の様々な工具チップ材料を使用する場合に有効である。こうした材料の幾つかは、耐火物の例えばタングステン、レニウム、イリジウム、チタン、モリブデン等を含む。
【0025】
こうしたチップ材料はしばしば製造するのが高価なので、交換可能なチップを有する設計は、製造及び工具に市場を提供する経済的な様式であり、というのはこれは摩耗または破壊した際に交換できるからである。
【発明の開示】
【0026】
有益な微細構造を得るために、材料の摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、本発明の1態様である。
有益な巨視的構造を得るために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
【0027】
工作物の靱性を改良するために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
工作物の硬さを増大させるかまたは減少させるために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
【0028】
工作物の標的区域を修正するために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
同じ工作物の異なる区域を修正して異なる特性を有するように工作物を修正するために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
【0029】
工作物の表面を修正するために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
工作物の表面及び内部の少なくとも一部分を修正するために、摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
【0030】
工作物の一部分のみを修正し、同時に、修正されない他の部分を残す摩擦攪拌加工のためのシステム及び方法を提供することは、別の態様である。
本発明の様々な具体例においては、摩擦攪拌加工、摩擦攪拌混合、または摩擦攪拌溶接できる工具を使用することによって工作物表面に固体状態加工を実行し、ここで、固体状態加工は工作物の特性を修正し、同時に、幾つかの具体例においては固相を実質的に維持し、他の具体例においては幾つかの元素に液相を通過させ、材料の修正された特性としては、微細構造、巨視的構造、靱性、硬さ、粒界、結晶粒度、相の分布、延性、超塑性、核生成部位密度(nucleation site densities)の変化、圧縮性、膨張性、摩擦係数、耐摩耗性、耐食性、疲れ抵抗、磁気特性、強度、放射線吸収、及び熱伝導率が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
本発明の上述した態様、特徴、利点及び他の態様、特徴、利点は、添付図面と組み合わせて以下の詳細な説明を検討することによって、当業者には明瞭になろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
ここから図面を参照し、ここで、本発明の具体例の様々な要素は参照番号を与えられ、本発明は、当業者が具体例を作り、使用することを可能にするように検討されよう。以下の説明は、本発明の原理の単なる模範例であり、下記の請求の範囲を狭めるものとみなすべきではないことは理解されるはずである。
【0033】
下文で説明する本発明は、幾つかの異なるクラスの材料に適用されよう。1具体例においては、材料は、以前に開示したように青銅及びアルミニウムよりも高い融解温度を有する材料とみなしてよい。このクラスの材料としては、金属マトリックス複合体、鉄合金の例えば鋼及びステンレス鋼、非鉄材料、超合金、チタン、典型的に表面硬化肉盛のために使用されるコバルト合金、及び空気焼入れまたは高速度鋼が挙げられるがこれらに限定されるものではない。別の具体例においては、材料は、上記に説明したより高い融解温度の定義の範囲内に含まれない全ての他のより低融解温度の材料とみなしてよい。
【0034】
固体状態加工
本発明の第1の具体例においては、固体状態加工及び固体状態接合方法は、新たな及び既存の材料のために改良された材料特性及び機械的性質を与えるために開発された。加工及び接合は互いに排他的な事象としてよく、またはこれらは同時に行われてよいことに注意されたい。また、固体状態加工はまた“摩擦攪拌加工”という句と互換性があるように言及されることがあることに注意されたい。固体状態加工は本明細書において、典型的に液相を含まない可塑化された状態への一時的変態と定義される。しかしながら、幾つかの具体例は、1つ以上の元素に液相を通過させ、依然として本発明の利益を得ることに注意されたい。
【0035】
固体状態接合の利益は、2つ以上の材料を一緒に接合する場合に摩擦攪拌溶接(FSW)の開発と共に明瞭になった。より初期に、摩擦攪拌溶接工具の進行速度は典型的に10〜500mm/minであり、回転速度は200〜2000rpmであると言及された。しかしながら、進行速度及び回転速度は、本発明の幾つかの具体例においては変化し得ることに注意されたい。例えば、進行速度及び回転速度を増大させるかまたは減少させることができるように工具の直径を修正することができる。
【0036】
本発明においては、この技術の基礎は、様々な形態の固体の加工を実現することができるように、微視的スケールで材料に適用される。この方法を使用して、低融解温度及び高融解温度材料の両方を使用して新たなまたは既存の材料を合成することができる。
【0037】
本発明の第1の態様は、摩擦攪拌加工を実行するために使用する工具である。摩擦攪拌加工は、図1に示す工具を使用して実行することができる。従って、摩擦攪拌加工工具は、シャンク、肩部、及びピンを有し得る。1具体例においては、工具ピンは回転し、加工されるべき材料中に沈む。工具は材料の加工区域にわたって横断的に移動する。これが、最初の材料と異なる特性を有するように修正される材料をもたらすことができる固体状態プロセスにおいて材料に可塑化を受けさせる働きである。
【0038】
本発明の別の具体例は、図3に示す工具を使用することである。図3は、円柱形の摩擦攪拌加工工具50の断面図である。摩擦攪拌加工工具50はシャンク52及び肩部54を有するが、ピンを有しない。従って、固体状態加工されるべき材料中にピンが沈む代わりに、肩部は、材料に押し当てられる。肩部による侵入は典型的に、ピンと比較して肩部のより大きな表面積が理由となって、材料の表面またはその直下に制限される。
【0039】
図1の工具10のピン14は材料中に沈む必要は無いが、ピンは容易な侵入を得るように設計してよいことに注意されたい。従って、ピン14は図3の工具50と比較して恐らく非常に小さな表面積を有するので、ピンは恐らく材料中に沈む。しかしながら、ちょうど表面でさえも、材料のはるかに小さな区域を加工するためにピン14のより小さな表面積を使用することは有利なことがある。従って、表面及び近表面加工もまた、より典型的に材料の侵入及び接合のために使用される工具を使用して成し遂げることができることは本発明の別の具体例である。
【0040】
図4は、ピンを有しない工具のための他の具体例として提供される。図4は、肩部64よりも直径が小さなシャンク62を有する工具60を示す。この設計は、肩部64の直径のスケールに依存してより経済的となり得る。
【0041】
図3及び4における肩部54及び64の形状から何も推論すべきではないことを認識するのは重要である。肩部54及び64は説明のためにのみ示され、その正確な断面形状は、特定の結果を実現するために修正できる。
【0042】
実験結果は、加工される材料は、摩擦攪拌加工の最中に幾つかの重要な変化を受けることがあることを証明した。こうした変化としては、以下のものが挙げられるがこれらに限定されるとみなすべきではない:靱性、硬さ、粒界、結晶粒度、相の分布、延性、超塑性、核生成部位密度の変化、圧縮性、膨張性、摩擦、及び熱伝導率。
【0043】
核生成に関しては、観察は、摩擦攪拌加工の最中に発生した熱及び変形から材料中に誘起されるエネルギーが理由となって、より多くの核生成部位が存在するかもしれないことを示す。従って、より多量の溶質材料が溶液または析出物から出て、より高密度の析出物または第2の相を形成するかもしれない。
【0044】
例として、工具が材料中に沈むことによって摩擦攪拌加工を受けた材料の断面を示す以下の図を検討する。図を観察するが、工具が加工される材料中に沈まない場合、同様のまたは同一の結果をより小さなスケールで得ることができることは理解されるはずである。
【0045】
図5において、図2に示す工具と同様の工具を基材70中に沈め、工具を中央長手方向に沿って横断的に移動させることによって、ATS34鋼の一部分を摩擦攪拌加工した。横断的な移動はページに対して垂直であると思われ、従って図5は基材70の断面図である。
【0046】
図5は、工具は、上部72から基材70中に沈んだことを示す。小さな円として現れている幾つかの区域は、基材の様々な帯域においてロックウェルスケールを基準として硬さに関して試験したとして示される。撹拌帯域74は、硬さ60RCを有することが示される。内部TMAZ(熱的機械的影響部(thermally mechanically-affected zone))及び外部HAZ(熱影響部)の境界近くで、基材70は、位置76で硬さ値44RCを有するとして示される。最後に、未加工のまたは最初の基材帯域は、他の試料において、ほぼ位置78でその最初の硬さ値12RCを保持しているとして示される。
【0047】
図6は、加工された基材80の微細構造を示すために提供される。図は、摩擦攪拌加工はマルテンサイトを生成し、加工された基材80のより硬質な相を示すことを示す。
同様に、図7も、摩擦攪拌加工された後の材料80の微細構造の図である。図は、加工された基材80における低減された結晶粒度を示す。
【0048】
比較のために、図5の基材70の熱処理は、硬さ値60RC未満をもたらすと思われる。本発明の幾つかの具体例においては、別の状況では他の熱処理方法を用いて行うことが困難な基材70の大きな部分を選択的に摩擦攪拌加工することが可能である。加えて、材料設計者は、加工を受ける予定の材料の区域をより選択することができる。その上、熱処理は材料の微細構造を変更するであろうが、変化は、摩擦攪拌加工を用いて実現できる同じタイプの変化ではないだろう。例えば、加工された区域はまた、靱性の実質的な増大を経験している。これは、従来の処理技術を使用して材料を加工する場合、典型的に靱性と硬さとの間に妥協が存在するので、注目に値する。
【0049】
別の具体例においては、D2鋼で形成した部材をその1端部に沿って摩擦攪拌加工した。端部を加工した後に、内部の未加工の領域から加工された領域までの部材の幅にわたる硬さを決定した。摩擦攪拌加工から生じた材料における硬さ勾配を、グラフ1に示す。この例において、摩擦攪拌加工は、靱性の改良と共に摩擦攪拌帯域における材料の硬さ特性のかなりの改良をもたらした。
【0050】
【表1】
【0051】
図8は、ATS−34鋼基材70表面のカッティングエッジのオーバーレイ90の図である。オーバーレイ90は、材料70から機械加工される可能性があるカッティングエッジの1つの有利な形状を示し、ここで、形状は、摩擦攪拌加工された材料70の改良された靱性及び硬さ特性を最大に利用する。カッティングエッジオーバーレイ90は、硬質でしかもなお強靱なカッティングエッジをもたらすであろう加工された領域74中に形成されることに注意されたい。同様に、加工された材料から形成される任意の物体を、最も有利な特性を提供するように配置することができ、ここで、これは物体にとって最も重要である。この例においては、有益なカッティングエッジは、加工された材料の十分に内部にエッジを配置させることから実現しよう。
【0052】
図9は、図6及び7の加工された基材80の微細構造とここで示す未加工の基材80との間で比較をする場合に助けになる。微細構造は、摩擦攪拌加工の前の基材80の焼なましされた状態の大きな結晶粒度を示す。
【0053】
図5〜8は、摩擦攪拌加工に関して本発明の態様を示した。この場合には、“加工”という用語は、本発明によって教示するように単一の材料が単独で加工される場合に使用されている。“加工”という用語は同様に、少なくとも2つの材料を一緒に混合する場合に適用することができる。しかしながら、明瞭にするために、少なくとも2つの材料を混合するこの概念を“摩擦攪拌混合”と呼ぶ。
【0054】
図10は、別の添加物材料を含むように摩擦攪拌混合された基材の断面図である。特に、鋼部材100は、ダイヤモンド粒子102が鋼部材中に進入するように摩擦攪拌混合された。
【0055】
図11は、鋼部材100の微細構造の断面図である。図は、鋼部材100の混合された領域全体にわたってダイヤモンド粒子102が存在することを示す。
図12は、添加物材料112を適所に保持するためにメッシュまたはスクリーン110を使用して、添加物材料112を別のものの中に摩擦攪拌混合するための、1具体例の断面図である。特に、ステンレス鋼メッシュまたはスクリーン110は、粉末の形態の炭化物112を保持するために使用されている。スクリーン110及び炭化物粉末112は、基材114の表面に配置される。基材114の表面は次に摩擦攪拌加工され、基材の表面におけるステンレス鋼110、炭化物112、及び基材114の混合をもたらす。他に、ピンを有する工具を使用して、または基材中によりしっかり押し付けられる肩部を有する工具を使用することによって、様々な材料がさらに基材114中に混合される可能性がある。
【0056】
図13は、粉末の形態の炭化タングステンを鋼部材120中に摩擦攪拌混合した結果の断面図である。
図14は、鋼部材120及び炭化タングステン粉末を混合した領域の表面の微細構造の平面図である。
【0057】
本発明の別の態様は、固体状態プロセス及び接合の両方を同時にする能力である。一緒に溶接されている2つの工作物を検討する。工作物は同じ材料または異なる材料である可能性がある。工作物を一緒に摩擦攪拌溶接することによって、得られた材料は、一緒に接合されている材料のものと明白に異なる特性を溶接領域において有する。
【0058】
図12に示すように、具体例は、摩擦攪拌混合のために別の材料を基材中に導入することが可能であることを示す。しかしながら、本発明はこの1つの設計に限定されるとみなすべきではない。添加物材料を導入する幾つかの他の方法としては、充填された粉末を工作物の表面中の溝に入れる(entrench)、一緒に接合されるべき工作物同士の間に材料を挟む、及び一緒に摩擦攪拌混合されるまで接着剤さえ使用して添加物を工作物に結合させる、が挙げられるがこれらに限定されるものではない。摩擦攪拌混合プロセスの最中に燃え尽き、それによって得られた混合材料に影響しないように、接着剤を選択することができる。しかしながら、添加物を基材に結合するために使用されるどのような材料でも含むことが望ましいことがあることは理解されるはずである。
【0059】
添加物を導入する別の方法は、消費可能な工具の使用による。例えば、ピンは、基材中に浸食するであろう材料で構成されてよい。従って、ピンは添加物材料で構成される。
本発明はまた、材料加工にエネルギーを導入するための新たな手段とみなすことができる。本質的に、機械的エネルギーは、材料を修正するために固体状態プロセスにおいて使用されている。機械的エネルギーは、摩擦攪拌加工または摩擦攪拌混合の作用によって発生した熱及び変形の形態である。
【0060】
本発明の別の態様は、加工された材料における残留表面及び下位表面応力成分を修正し、制御する能力である。幾つかの具体例においては、圧縮応力を導入するかまたは増大させることが可能であり、一方、他の具体例においては、望ましくない応力が低減されるかもしれない。
【0061】
残留応力を制御することは、幾つかの高融解温度材料において特に重要なことがある。摩擦攪拌加工及び摩擦攪拌混合は、工作物を回転する(またはさもなければ移動する)摩擦攪拌加工または摩擦攪拌混合工具と接触させて、それによって材料の固体状態加工を生じさせて材料の表面に沿って応力を修正することを含む。応力の低減は、表面のみに限定されるとみなすべきではない。他の具体例においては、下位表面応力を修正する態様も本発明の部分である。
【0062】
幾つかの具体例はまた、プロセスパラメータの制御を行うことによって使用者が加熱及び冷却速度を制御することを可能にする。摩擦攪拌加工及び混合パラメータは、工具の相対的運動(例えば、工具の回転速度及び並進運動速度)、工具侵入の深さ、工具に加える下向きの力、冷却媒体(水冷)と共に冷却速度等を含む。
【0063】
摩擦攪拌混合に関して、添加物材料の性質はまた、得られた加工された区域の性質に直接に影響を与えることができる。粉末及びダイヤモンド粒子は上記に検討した。他の具体例においては、添加物材料の物理的構造は、得られる特性に影響することがある。例えば、混合領域の内側並びにすぐ外側の帯域において繊維または他のタイプの細長い粒子を基材中に混合できる。加えて、添加物材料は、基材または他の添加物よりも硬質または軟質とすることができる。
【0064】
基材の機械的性質の例えば特に耐摩耗性、耐食性、硬さ、靱性、亀裂防止、疲れ抵抗、磁気特性、及び水素脆化を制御するように、全ての添加物材料を選択してよい。例えば、硬質粒子は、機械的にまたは固体状態拡散によって適所に保持され、鋳造組織よりも大きな保持であり、というのは混合領域の強度は基材におけるものを超えても超えなくてもよいからである。
【0065】
硬質粒子は、炭化タングステン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、立方晶窒化ホウ素、及び/またはダイヤモンドまたは、混合温度(通常、基材の融点よりも100〜200℃低い)で十分に溶解しないであろう、基材よりも硬質な任意の材料を含んでよい。加えて、繊維を同じ仕方で加えて、基材を局所的に強化してよくまたは方向特性を加えてよい。
【0066】
加工された基材の幾つかの特定の特性を実現するために、添加物材料を、溶解する能力に関して特に選択してよい。添加物はまた、靱性、硬さを向上し、熱特性等を向上することができる。
【0067】
添加物を基材中に置くことの別の利点は、粒子または繊維を、溶融または表面硬化肉盛加工において使用できない材料から選択できるということであり、というのはこれは、基材の液相にある間に溶解すると思われるからである。摩擦攪拌加工においては、二重の特性を実現できるように、粒子/繊維と基材との共融組成物を避けることができる。与えられた工作物の内部の様々な特性に適応させるために、粒子/繊維の基材中への導入を変化させることができる。
【0068】
例えば、長いピンを有する工具を使用して粒子/繊維をより深い深さに撹拌することができ、次により短いピンを有する第2の工具を使用して様々な深さで様々な粒子/繊維を撹拌して、基材における層状特徴を形成することができる。混合領域の幾何学的形状、粒子/繊維組成、粒子/繊維サイズ、粒子/繊維分布及び基材の内部の位置は、与えられた物体に、設計された摩耗及び強度特徴を提供することができる。
【0069】
図2に示す工具と同様の摩擦攪拌加工工具を使用して、新たな材料を生成し、既存の材料を修正することができる。例えば、粉末形態の元素を型中に置くことができる。工具10は回転し、粉末中に沈んで熱を発生することができる。工具10が粉末を通って横断するにつれて、固体状態拡散が起きて、粉末を基材と共に固体形態に接合する。同様に、溝を材料中に切り、元素の混合物を有する粉末を充填し、次に摩擦攪拌加工して材料を一緒に混合することができる。
【0070】
他に、材料を材料の表面に直接に加えることができ、またはこれを2つの部片の鋼のような材料の間に挟み、次に摩擦攪拌加工して材料を一緒に接合することができる。他の方法も使用して、摩擦攪拌混合において材料を一緒に混合することを成し遂げることができる。
【0071】
摩擦攪拌混合した場合、粉末は摩擦攪拌混合によって基材と混合されて、撹拌領域において修正された特性を有する材料を形成する。選択された具体例においては、プロセスは熱発生をほとんど生じず、低いエネルギー入力を有し、ある温度で非常に短い時間を必要とし、一般により少ない凝固欠陥を有しようし、完全自動化できる。有利に、1つ以上の具体例は、固体状態の性質及び加工の極度の再現性が理由となって、最小の加工後検査を必要とする。
【0072】
加工方法は、界面ギャップに許容度があり、従って加工前作製がほとんど無い。除去すべき材料スパッターは存在しない。選択された具体例においては加工後仕上げ面は並外れで滑らかとなることができ、ばりはごくわずかから全く存在しない。他のプロセスと異なり、本発明の幾つかの具体例に従って実行される摩擦攪拌加工は、ポロシティー及び酸素汚染がほとんど無く並びに歪みがほとんどまたは全く無い状態で行うことができる。その上、摩擦攪拌加工は、制御された気体または液体環境中で実行できる。
【0073】
元素、合金、金属、及びまたは他の材料タイプを、固体形態、粉末形態、繊維形態、プレート形態で、ワイヤとして、または一連の複合体組成物で加工できる。幾つかの具体例においては、新たな材料を現在液相問題の懸念無しに設計することができる。
【0074】
下記の表1は、どのようにして材料特性が影響され得るかという幾つかの例を示す。添加物を摩擦攪拌加工または摩擦攪拌混合することによって、所望の材料特性を相殺することが起きることがあることに注意されたい。
【0075】
【表2】
【0076】
上記に説明した配置及び具体例は、本発明の原理の適用を例示するのみであることは理解されるはずである。多数の修正及び他の配置は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって考案できる。添付の請求の範囲は、このような修正及び配置を包含することを意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】摩擦攪拌溶接に関して従来技術において教示された工具の斜視図であり、ここで、工具を使用して、新たな機能を実行することができる。
【図2】取り外し可能な多結晶性立方晶窒化ホウ素(PCBN)チップ、ロッキングカラー及びシャンクの斜視図である。
【図3】等しい直径の肩部及びシャンクを有する摩擦攪拌加工工具の1具体例である。
【図4】異なる直径の肩部及びシャンクを有する摩擦攪拌加工工具の別の具体例である。
【図5】基材の特性を修正するために摩擦攪拌加工された基材の断面図である。
【図6】摩擦攪拌加工の前の基材の微細構造の図である。
【図7】摩擦攪拌加工の後の基材の微細構造の図である。
【図8】基材の特性を修正するために摩擦攪拌加工された基材の断面図であり、どこにカッティングエッジが摩擦攪拌加工された材料から形成される可能性があるかを特定するオーバーレイを有する。
【図9】材料の焼なましされた状態の大きな結晶粒度を示す微細構造の図である。
【図10】別の材料を含むように摩擦攪拌混合された材料の断面図である。
【図11】図10の鋼の微細構造の断面図である。
【図12】添加物材料112を適所に保持するためにメッシュまたはスクリーン110を使用して、添加物材料112を別のものの中に摩擦攪拌混合するための、1具体例の断面図である。
【図13】粉末の形態の炭化タングステンを鋼中に摩擦攪拌混合した結果の断面図である。
【図14】鋼120及び炭化タングステン粉末を混合した領域の表面の微細構造の平面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦攪拌加工によって基材の特性を修正する方法であって:
1)高融解温度基材を提供する工程と;
2)一部分の表面に前記基材よりも高融解温度の材料を含む摩擦攪拌加工工具を提供する工程と;
3)前記基材を摩擦攪拌加工して、それによって少なくとも1つの特性を修正する工程と;
を含む方法。
【請求項2】
前記方法は、前記基材の液体状態を通過することなく実質的に固体状態の変態を生じる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高融解温度基材を提供する工程は、鉄合金、非鉄材料、超合金、チタン、典型的に表面硬化肉盛のために使用されるコバルト合金、及び空気焼入れまたは高速度鋼を含む高融解温度材料の群から前記高融解温度基材を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記基材と異なる少なくとも1つの特性を有する新たな材料を合成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は:
1)添加物材料を提供する工程と;
2)添加物材料を前記基材中に摩擦攪拌混合して、それによって前記基材の少なくとも1つの特性を修正する工程と;
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記基材の微細構造を修正する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記基材の巨視的構造を修正する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の靱性を増大させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の硬さを増大させるかまたは減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の粒界を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の結晶粒度を減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の相の分布を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の延性を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の超塑性を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の核生成部位密度を増大させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の圧縮性を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の延性を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の摩擦係数を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記微細構造を修正する工程は、熱伝導率を増大させるかまたは減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
前記微細構造を修正する工程は、耐摩耗性を増大させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項21】
前記微細構造を修正する工程は、耐食性を増大させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項22】
前記微細構造を修正する工程は、磁気特性を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、前記基材の特定の区域を修正するのみである工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、少なくとも2つの摩擦攪拌加工された区域を有するように前記基材を修正する工程をさらに含み、前記少なくとも2つの摩擦攪拌加工された区域は、互いに異なる少なくとも1つの特性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、一般に前記基材の前記表面または前記表面の近くを摩擦攪拌加工するのみである工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、前記基材の内部の少なくとも一部分を摩擦攪拌加工する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記基材よりも高融解温度の材料を含む摩擦攪拌加工工具を提供する工程は、該摩擦攪拌加工工具中に超砥粒を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、金属マトリックス複合体を含む溶接するのが困難なより低融解温度の材料を選択する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、高融解温度群及びより低融解温度の群から選択される基材を摩擦攪拌混合して、溶接領域中に新たな材料を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記方法は、前記基材を少なくとも1つの他の工作物に摩擦攪拌溶接する工程さらに含み、前記基材と前記少なくとも1つの他の工作物との間の溶接領域は、前記基材及び前記少なくとも1つの他の工作物と異なる特性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記摩擦攪拌加工工具を提供する工程は、シャンク、肩部及びピンを有する前記摩擦攪拌加工工具を提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
シャンク、肩部及びピンを有する前記摩擦攪拌加工工具を提供する工程は、超砥粒材料を含む工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は、前記ピンが前記基材中に沈むことなく摩擦攪拌加工する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記摩擦攪拌加工工具を提供する工程は、シャンク及び肩部を有する前記摩擦攪拌加工工具を提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記方法は、前記基材の加工された区域と未加工の区域との間で前記基材中に硬さ勾配を有する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記微細構造を修正する工程は、エネルギーを前記基材中に導入して、それによって加工される基材の特性を修正することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材中の残留応力成分を修正することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材中の残留表面応力を修正することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項39】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材中の残留下位表面応力を修正することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項40】
前記方法は、プロセスパラメータを制御し、それによって前記加工される基材の特性を制御することによって、摩擦攪拌加工の最中に前記基材の加熱及び冷却速度を制御する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記方法は、前記基材に対する前記工具の回転速度、前記基材に沿った前記工具の並進移動速度、前記基材中への工具侵入深さ、前記工具によって前記基材に対して加えられる力、及び冷却媒体の存在を含むプロセスパラメータの群から、制御するためのプロセスパラメータを選択する工程をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記方法は、硬質粒子、軟質粒子、細長い粒子、及び繊維質粒子を含む特性の群から前記添加物材料の特性を選択する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項43】
前記方法は、前記基材が液体状態にさらされた場合、別の状況では溶解すると思われる添加物材料から前記添加物材料を選択する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項44】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の強度を増大させるかまたは減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項45】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の放射線吸収を増大させるかまたは減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項46】
摩擦攪拌加工によって基材の特性を修正するシステムであって:
高融解温度基材と;
一部分の表面に前記基材よりも高融解温度の材料を含む摩擦攪拌加工工具と;
で構成されるシステムにおいて、前記工具は使用されて摩擦攪拌加工を実行して、それによって前記基材の固体状態変態を生じ、前記基材の特性は修正される、システム。
【請求項47】
前記工具は、シャンク、肩部及びピンでさらに構成される、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記工具は、シャンク及び肩部でさらに構成される、請求項46に記載のシステム。
【請求項49】
摩擦攪拌加工によって基材の特性を修正する方法であって:
1)高融解温度基材を提供する工程と;
2)一部分の表面に前記基材よりも高融解温度の材料を含む摩擦攪拌加工工具を提供する工程と;
3)前記工具を前記基材に当てて移動させて、それによって前記基材の固体状態変態を生じる工程と;を含む方法において、前記基材の特性は修正される、方法。
【請求項50】
前記方法は、回転運動及び直線運動を含む超砥粒工具移動の群から超砥粒工具の移動を選択する工程をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項1】
摩擦攪拌加工によって基材の特性を修正する方法であって:
1)高融解温度基材を提供する工程と;
2)一部分の表面に前記基材よりも高融解温度の材料を含む摩擦攪拌加工工具を提供する工程と;
3)前記基材を摩擦攪拌加工して、それによって少なくとも1つの特性を修正する工程と;
を含む方法。
【請求項2】
前記方法は、前記基材の液体状態を通過することなく実質的に固体状態の変態を生じる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高融解温度基材を提供する工程は、鉄合金、非鉄材料、超合金、チタン、典型的に表面硬化肉盛のために使用されるコバルト合金、及び空気焼入れまたは高速度鋼を含む高融解温度材料の群から前記高融解温度基材を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記基材と異なる少なくとも1つの特性を有する新たな材料を合成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は:
1)添加物材料を提供する工程と;
2)添加物材料を前記基材中に摩擦攪拌混合して、それによって前記基材の少なくとも1つの特性を修正する工程と;
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記基材の微細構造を修正する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記基材の巨視的構造を修正する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の靱性を増大させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の硬さを増大させるかまたは減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の粒界を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の結晶粒度を減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の相の分布を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の延性を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の超塑性を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の核生成部位密度を増大させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の圧縮性を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の延性を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の摩擦係数を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記微細構造を修正する工程は、熱伝導率を増大させるかまたは減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
前記微細構造を修正する工程は、耐摩耗性を増大させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項21】
前記微細構造を修正する工程は、耐食性を増大させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項22】
前記微細構造を修正する工程は、磁気特性を修正することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、前記基材の特定の区域を修正するのみである工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、少なくとも2つの摩擦攪拌加工された区域を有するように前記基材を修正する工程をさらに含み、前記少なくとも2つの摩擦攪拌加工された区域は、互いに異なる少なくとも1つの特性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、一般に前記基材の前記表面または前記表面の近くを摩擦攪拌加工するのみである工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、前記基材の内部の少なくとも一部分を摩擦攪拌加工する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記基材よりも高融解温度の材料を含む摩擦攪拌加工工具を提供する工程は、該摩擦攪拌加工工具中に超砥粒を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、金属マトリックス複合体を含む溶接するのが困難なより低融解温度の材料を選択する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、高融解温度群及びより低融解温度の群から選択される基材を摩擦攪拌混合して、溶接領域中に新たな材料を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記方法は、前記基材を少なくとも1つの他の工作物に摩擦攪拌溶接する工程さらに含み、前記基材と前記少なくとも1つの他の工作物との間の溶接領域は、前記基材及び前記少なくとも1つの他の工作物と異なる特性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記摩擦攪拌加工工具を提供する工程は、シャンク、肩部及びピンを有する前記摩擦攪拌加工工具を提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
シャンク、肩部及びピンを有する前記摩擦攪拌加工工具を提供する工程は、超砥粒材料を含む工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は、前記ピンが前記基材中に沈むことなく摩擦攪拌加工する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記摩擦攪拌加工工具を提供する工程は、シャンク及び肩部を有する前記摩擦攪拌加工工具を提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記方法は、前記基材の加工された区域と未加工の区域との間で前記基材中に硬さ勾配を有する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記微細構造を修正する工程は、エネルギーを前記基材中に導入して、それによって加工される基材の特性を修正することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材中の残留応力成分を修正することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材中の残留表面応力を修正することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項39】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材中の残留下位表面応力を修正することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項40】
前記方法は、プロセスパラメータを制御し、それによって前記加工される基材の特性を制御することによって、摩擦攪拌加工の最中に前記基材の加熱及び冷却速度を制御する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記方法は、前記基材に対する前記工具の回転速度、前記基材に沿った前記工具の並進移動速度、前記基材中への工具侵入深さ、前記工具によって前記基材に対して加えられる力、及び冷却媒体の存在を含むプロセスパラメータの群から、制御するためのプロセスパラメータを選択する工程をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記方法は、硬質粒子、軟質粒子、細長い粒子、及び繊維質粒子を含む特性の群から前記添加物材料の特性を選択する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項43】
前記方法は、前記基材が液体状態にさらされた場合、別の状況では溶解すると思われる添加物材料から前記添加物材料を選択する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項44】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の強度を増大させるかまたは減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項45】
前記微細構造を修正する工程は、前記基材の放射線吸収を増大させるかまたは減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項46】
摩擦攪拌加工によって基材の特性を修正するシステムであって:
高融解温度基材と;
一部分の表面に前記基材よりも高融解温度の材料を含む摩擦攪拌加工工具と;
で構成されるシステムにおいて、前記工具は使用されて摩擦攪拌加工を実行して、それによって前記基材の固体状態変態を生じ、前記基材の特性は修正される、システム。
【請求項47】
前記工具は、シャンク、肩部及びピンでさらに構成される、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記工具は、シャンク及び肩部でさらに構成される、請求項46に記載のシステム。
【請求項49】
摩擦攪拌加工によって基材の特性を修正する方法であって:
1)高融解温度基材を提供する工程と;
2)一部分の表面に前記基材よりも高融解温度の材料を含む摩擦攪拌加工工具を提供する工程と;
3)前記工具を前記基材に当てて移動させて、それによって前記基材の固体状態変態を生じる工程と;を含む方法において、前記基材の特性は修正される、方法。
【請求項50】
前記方法は、回転運動及び直線運動を含む超砥粒工具移動の群から超砥粒工具の移動を選択する工程をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−530791(P2007−530791A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505202(P2007−505202)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/009922
【国際公開番号】WO2005/094541
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506039715)エスアイアイ・メガダイアモンド・インコーポレーテッド (6)
【出願人】(506322307)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/009922
【国際公開番号】WO2005/094541
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506039715)エスアイアイ・メガダイアモンド・インコーポレーテッド (6)
【出願人】(506322307)
【Fターム(参考)】
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