説明

摩砕エレメント

対向する円錐形表面を有する2つの摩砕手段(1、2)間の円錐形摩砕ギャップ(6)内で、リグノセルロース繊維材料を混煉するリファイナに使用する摩砕エレメントであって、外側に配置された円錐形表面を有する摩砕手段(1)は静止し、内側に配置された円錐形表面を有する摩砕手段(2)は回転し、摩砕エレメント(11)は静止摩砕手段(1)用に設けられ、かつバー(12)および中間溝(13)を有する形状であり、バーは摩砕ギャップ(6)に沿って延びて、上面(14)および2つの側面(15、16)によって画定される。各バーの上面(14)は摩砕エレメント(11)の円錐形作用面の一部であり、上記上面(14)はバー(12)の側面(15、16)の少なくとも一方と鋭角(α)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリグノセルロース繊維材料を混煉する(work)リファイナに使用する摩砕エレメントに関し、相互に対して回転する摩砕手段は摩砕エレメントを備えており、摩砕手段間に摩砕ギャップを形成している。摩砕エレメントは材料を混煉するバーおよび中間溝を備える。摩砕手段は半径方向平面に対して傾斜を有すことにより、対向する摩砕エレメント間に円錐形摩砕ギャップを形成でき、あるいは、回転軸の最近傍に置かれる半径方向部分および後続の円錐形部分とで形成できる。内側に配置された円錐形表面を有する摩砕手段は回転するが、外側に配置された円錐形表面を有する摩砕手段は静止している。
【背景技術】
【0002】
本発明の用途の特定分野は繊維の製造のため、あるいは木材チップからの製紙パルプ、または同様なセルロース系材料のためのリファイナである。ディスク形のリファイナは半径方向に延びる摩砕手段の摩砕エレメントの間に摩砕ギャップで形成され、このギャップは遠心力が相対的に小さい原材料の中心供給ゾーンから発する。したがって、摩砕材料に作用する遠心力は半径の増加に伴い強大になる。摩砕ギャップの外側部分内の滞在時間を引き延ばすために、外側部分の摩砕ギャップは、半径方向に対してある角度の延長部を有する円錐形に形成することにより、遠心力の一部だけがギャップの流れ方向の摩砕材料に作用するようにできる。このように、摩砕ギャップは半径内側ゾーンおよび外側の円錐形ゾーンから成る。
【0003】
これは、円錐形ゾーン内の摩砕材料が、遠心力の作用および内側に置かれた摩砕エレメントに接するバーの作用により、外側に置かれた摩砕エレメントの方に外側方向に押し出されることを意味する。摩砕材料は実質的に繊維材料を含むが、特定の場合においては、砂状または他の研磨材料の不純物が繊維材料に伴うことがある。上述の流れ条件は、外側に置かれた摩砕エレメントに接するバーの磨耗の増加に対して発生する。磨耗は主に、これら摩砕エレメントに接するバーのエッジが、内側に置かれた摩砕材料に接する対応するバーのエッジの少なくとも2倍の速さで磨耗することを伴う、ことを見出した。摩砕エレメントに接するバーの磨耗は摩砕された材料の品質の劣化を発生させるため、摩砕エレメントは、品質が不合格になる前に、交換する必要がある。さらに、リファイナのエネルギー消費が増加する。
【0004】
摩砕エレメントの各交換は費用が掛かるだけでなく、リファイナの動作を停止させる必要があり、生産損失を意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の問題点を低減させる目的を有し、外側に配置された摩砕手段用に設けられる摩砕エレメントの構造体は円錐形ゾーンとして形状を与えられ、これにより、最大限に磨耗を防止する。これは、これら摩砕エレメントに接するバーが、特許請求の範囲に定義される通り、鋭角のエッジで形成されることで達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
摩砕エレメントのバーは、円錐形表面の母面に対し平行、または角度を有することができる。バーは、バー上の材料の意図する流れ方向から見て前側側面および後側側面と、円錐形表面の一部を形成する上面とにより画定される。これは、バーの前側側面の少なくとも上部が内側に傾斜し、バーの側面および上面との間に鋭角のエッジを形成する必要があることを意味する。この角度は50°から90°、適正には60°から90°、好ましくは70°から80°とし、側面の傾斜部分はバーの高さの少なくとも1/3でなければならない。
【0007】
このようにバーを形成することにより、バーの前側エッジの磨耗を低減できることを見出した。鋭角により、繊維材料は前側エッジから容易に離れるように案内され、この結果、繊維材料の混煉を劣化させることなく磨耗を低減する。これは、摩砕エレメントの耐用寿命の延長と、パルプ品質が維持された状態でのエネルギー消費を低減することを意味する。
【0008】
本発明は本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、以下により詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示すリファイナは、静止摩砕手段1と回転シャフト3に取り付けられた回転摩砕手段2とにより形成される。摩砕ギャップはシャフト3の軸方向移動により調節できる。摩砕手段は不浸透性の摩砕ハウジング4内に収容される。摩砕ギャップが摩砕手段の間に形成され、このギャップは半径内側部分5および外側の傾斜部分6から成る。回転軸に対する傾斜角度は45°未満とする必要があり、10°から30°が適正である。静止摩砕手段1には中心開口7が形成され、この開口を通して摩砕材料が供給される。
【0010】
各摩砕手段は、摩砕ギャップの半径内側部分5および外側の傾斜部分6の両方に、摩砕エレメント8から11の形状の磨耗部分を備える。摩砕エレメントは摩砕材料を混煉し、摩砕するためのバー12および中間溝13を備える。バーは上面14および2つの側面15、16により画定される。
【0011】
摩砕ギャップの外側の傾斜部分6では、静止摩砕手段1は回転摩砕手段2の外側に配置される。したがって、これら摩砕手段1、2に付着する摩砕エレメント10、11は、摩砕ギャップの外側の傾斜部分6の外側と内側にそれぞれ配置される。
【0012】
図2によれば、外側に配置された摩砕エレメント11はバー12を備え、摩砕される材料の意図する流れ方向から見て前側側面15がバーの上面14と鋭角αを形成している。内側に配置される摩砕エレメント10上のバーは、従来通りに形成される。
【0013】
図3によれば、外側に配置された摩砕エレメント11はバー12を備え、両側面15、16は上面14と鋭角αを形成する。この場合においては、本発明による効果が維持された状態で、内側の摩砕エレメント10の回転方向、したがって外側の摩砕エレメント11に対する摩砕される材料の流れ方向を変更できる。この設計においてもまた、内側に配置される摩砕エレメント10上のバーは従来通りに形成される。
【0014】
摩砕ギャップ内の繊維材料を混煉するとき、摩砕される材料は、シャフト3と同軸に取り付けられた搬送スクリュー18により、静止摩砕手段1の開口7を通して摩砕手段間の中心供給ゾーンに供給される。これにより、摩砕される材料は摩砕ギャップの半径内側部分5を通り外側方向に移動され、半径方向の摩砕エレメント8、9により同時に混煉される。次に、摩砕される材料は摩砕ギャップの外側の傾斜部分6内に移動され、傾斜した摩砕エレメント10、11によりさらに混煉される。摩砕ギャップの設計および摩砕手段2の回転により、内側に配置された摩砕エレメント10上のバーは、摩砕される材料を外側に配置された摩砕エレメント11方向に外側に押し出す。バーのエッジの鋭角αにより、繊維材料は前側エッジから容易に離れるように案内され、この結果、繊維材料の混煉を劣化させることなく磨耗を低減する。これは、摩砕エレメントの耐用寿命の延長と、パルプ品質が維持された状態でのエネルギー消費を低減することを意味する。
【0015】
本発明はここで示した実施形態に限定されず、本発明の発案の範囲内で変更することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】半径内側部分および外側の傾斜した摩砕ギャップ部分を有するリファイナの略図である。
【図2】摩砕エレメントのバーの別の構成における、図1のA−Aで切断された部分の拡大図である。
【図3】摩砕エレメントのバーの別の構成における、図1のA−Aで切断された部分の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する円錐形表面を有する2つの摩砕手段(1、2)間の円錐形摩砕ギャップ(6)内で、リグノセルロース繊維材料を混煉するリファイナに使用し、外側に配置された円錐形表面を有する摩砕手段(1)は静止し、内側に配置された円錐形表面を有する摩砕手段(2)は回転し、摩砕エレメント(11)は静止摩砕手段(1)用に設けられ、バー(12)および中間溝(13)を有する形状であり、バーは摩砕ギャップ(6)に沿って延びて、上面(14)および2つの側面(15、16)によって画定される摩砕エレメントであって、各バーの上面(14)は摩砕エレメント(11)の円錐形作用面の一部であり、前記上面(14)はバー(12)の側面(15、16)の少なくとも一方と鋭角(α)を形成することを特徴とする、摩砕エレメント。
【請求項2】
鋭角(α)は50°から90°、適正には60°から90°、好ましくは70°から80°であることを特徴とする、請求項1に記載の摩砕エレメント。
【請求項3】
バーの側面の傾斜部分はバーの高さの少なくとも1/3であることを特徴とする、請求項1または2に記載の摩砕エレメント。
【請求項4】
バーの上面はバーの両側面と鋭角を形成していることを特徴とする、請求項1または2に記載の摩砕エレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−513024(P2006−513024A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566370(P2004−566370)
【出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001928
【国際公開番号】WO2004/062807
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(502217698)メトソ ペーパー インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】