説明

摩耗及び腐食に対する防護が増大した潤滑油

【課題】リンと硫黄のレベルを下げながら、ディーゼルエンジン油、特に高負荷用途のディーゼルエンジン油としての潤滑剤性能が改善された潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】(a)主要量の潤滑粘度の油、および(b)一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属ホウ酸化スルホネート清浄剤を含む潤滑油組成物であって、リンを約0.20質量%以下で、かつ硫黄を約0.50質量%以下で含む潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。特には、本発明は、リンと硫黄のレベルを下げながら、ディーゼルエンジン油、特に高負荷用途のディーゼルエンジン油としての潤滑剤性能が改善された潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への関心により、圧縮点火(ディーゼル燃料)及び火花点火(ガソリン燃料)内燃機関から、一酸化炭素(CO)や炭化水素、窒素酸化物(NOX)といった排出物を低減しようとする継続的な努力が行なわれている。また、圧縮点火ディーゼル内燃機関から粒子状排出物を低減しようとする努力も継続している。乗用車や他の車両、重負荷機械の今日の排出基準を満たすために、装置製造業者(OEM)は、排ガス後処理装置を装着してきている。そのような排ガス後処理装置としては、これらに限定されるものではないが、触媒コンバータおよび/または微粒子捕集装置が挙げられる。
【0003】
触媒コンバータには一般に、一種以上の酸化触媒、NOX蓄積触媒および/またはNH3低減触媒が含まれている。含まれた触媒は一般に白金などの触媒金属と金属酸化物の組合せからなる。触媒コンバータは、排気系統、例えば自動車の排気管に搭載されて、有毒なガスを無毒のガスに変換する。触媒コンバータの使用は、地球温暖化傾向および他の環境破壊を食い止めようと努力する上で欠かせないと考えられている。だが、触媒は一定の元素または化合物、特にリン化合物にさらされると、結果として被毒するため、無効にはならないとしても効力が薄れることがある。リン化合物が排気ガスに混入するいろいろな道筋の中には、リン含有潤滑油添加剤の分解がある。リン潤滑油添加剤の例としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、性能と原価効率両方の観点から、潤滑油組成物において最も有効で従来より使用されている酸化防止剤であり、耐摩耗性添加剤である。それらは有効な酸化防止剤で耐摩耗性添加剤であるが同時に、それらによってエンジンに混入するリン、硫黄および灰分が、触媒と反応して触媒コンバータのサービス寿命を縮めることがある。また、潤滑剤をブレンドするのに使用する基油と硫黄含有潤滑油添加剤の両方の分解によって混入する排気ガス中の高レベルの硫黄および硫黄化合物によって、還元触媒は損傷を受けやすい。硫黄含有潤滑油添加剤の例としては、これらに限定されるものではないが、マグネシウムスルホネート、および他の硫酸化又はスルホン化清浄剤が挙げられる。
【0004】
微粒子捕集装置は通常、排気系統、特にディーゼルエンジンの排気系統に搭載されて、カーボンブラック粒子またはその微細凝縮粒子又は凝集塊(すなわち、「ディーゼルスス」)が、環境中に放出されるのを防いでいる。大気や水、他の環境構成要素を汚染することとは別に、ディーゼルススは認定された発癌物質である。そして、これら捕集装置は、普通の灰生成清浄添加剤を含む金属含有潤滑油添加剤の分解生成物である金属灰分によって閉塞することがある。
【0005】
後処理装置の長期間の使用有効期間を確実にするために、そのような装置に負の影響を最も少なく及ぼす潤滑油添加剤を開発することが望まれている。この目的で装置製造業者はしばしば、「新規な潤滑油充填」及び「最初の潤滑油交換」のための潤滑油について硫黄分及び/又はリン分の上限に種々の制限を設けている。例えば、軽負荷自動車用内燃機関に使用する場合には、一般に硫黄レベルは0.30質量%又はそれ以下で、リンレベルは0.08質量%又はそれ以下であるように要求している。だが、潤滑油組成物を重負荷内燃機関に使用する場合には、最大硫黄、リン及び/又は硫酸灰分レベルは違っていてもよいとされ、例えば、最大リンレベルはそれら重負荷エンジンでは0.2質量%ぐらい高くてもよいし、また最大硫黄レベルは0.5質量%ぐらい高くてもよいとされている。
【0006】
排出適合性を増大させようとする努力によって、充分な潤滑剤性能をもたらす必要性にマイナスが出るべきではない。自動車の火花点火及びディーゼルエンジンには、弁、カムおよびロッカアームを含むバルブトレーン系統があり、それら全部を潤滑にして摩耗から保護しなければならない。さらに、エンジン油は、エンジン清浄度を保証し、また炭化水素燃料の不燃物や不完全燃焼物およびエンジン油劣化の生成物である堆積物の生成を抑えるために、充分な清浄性を与えるものでなければならない。
【0007】
上述したように、触媒コンバータの保全を維持する必要から、リン酸エステル及びリン含有添加剤の使用の低減が行なわれている。しかし、清浄剤は一般には金属スルホネート清浄剤であるが、酸化により生じた酸の中和により生成した極性酸化残留物を潤滑油に懸濁するという必要性があることから、その使用は往々にして避けられない。これら清浄剤は、排気中の硫黄又は硫黄化合物の生成をもたらしている。実際のところ、今日の大半の環境基準で許可されている灰分の量を、充分な清浄性能に達するのに必要な量よりもはるかに少ない金属スルホネート清浄剤でも越えてしまうことがある。清浄剤過塩基化のレベルを下げることは、生じる灰分のレベルを下げることになるが、潤滑油組成物の酸中和能も低減し、もしかするとエンジンピストンや他の部分の酸腐食を招くことにもなる。
【0008】
従って、触媒コンバータおよび微粒子捕集装置が汚染物質を有効に低減するのを可能にすることで、よりきれいな環境をもたらすのみならず、例えばエンジン内の摩耗や摩擦を低減することでエンジン性能を改善することもできるエンジン油添加剤を開発することには利益があると言える。よって、環境保護基準とエンジン潤滑要求の両方を満たすことができる折衷案または新しい方法の必要性は明らかである。
【0009】
望ましい低リン及び低硫黄の潤滑剤であっても、最小レベルの耐摩耗及び腐食防止利益を示さなければならない。しかし、潤滑油組成物のリンレベルを下げると、耐摩耗、腐食防止又は酸化防止性能も付随して低下しがちであることが認められている。このような耐摩耗及び/又は腐食防止能力の低下を補うのに、ある種のホウ素含有化合物が摩耗及び腐食防護並びに極圧利益をもたらすことが判明した。
【0010】
様々なホウ酸化化合物が、当該分野の熟練者により製造されて清浄剤として用いられている。例えば、特許文献1には、ホウ素およびリンを含むコロイド物質が開示されている。コロイド生成物は次の工程からなる方法により得られている:(1)アルカリ金属スルホネートまたはホウ酸化アルカリ土類スルホネートを得る工程、(2)(1)のホウ酸化過塩基性スルホネートを少なくとも一種の硫化リンと反応させる工程、そして(3)得られた生成物を反応物から分離する工程。そのコロイド生成物は潤滑油組成物に好ましい耐摩耗性と極圧性を与えると記載されている。
【0011】
別の例では特許文献2に、ホウ酸化分散剤、リン酸の金属塩、少なくとも一種のカルボキシレート、フェネートまたはスルホネートからなる過塩基性金属組成物を含み、金属がリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムである潤滑油組成物が開示されている。その特許文献2のホウ酸化分散剤はアルコールホウ酸エステルであり、潤滑油組成物に好ましい耐摩耗性を与えると記載されている。
【0012】
また、特許文献3には、アルカリ土類金属カーボネートとアルカリ土類金属炭化水素スルホネートの潤滑油分散液を、ホウ酸、酸化ホウ素およびホウ酸の水性アルキルエステルから選ばれたホウ素化合物と反応させることにより製造された潤滑油組成物が開示されている。
【0013】
特許文献4には、ホウ酸を親油性液体反応媒体中でアルカリ金属炭酸塩過塩基性金属スルホネートと接触させることにより製造された、アルカリ金属ホウ酸塩化合物の粒子状分散液が開示されている。その金属ホウ酸塩の粒子状分散液は潤滑油組成物に好ましい極圧性を与えると記載されている。
【0014】
特許文献5には、下記のホウ素含有化合物を含む潤滑油組成物が開示されている。
【0015】
【化1】

【0016】
ただし、各Rは独立に有機基であり、何れの2つの隣接するR基も共同して環状基を形成することができ、そして硫黄とホウ素とリンの比は、式:Sl+5Bl+3Pl>0.35で表されている(ここで、Slは組成物中の硫黄の質量パーセントの濃度であり、Blは組成物中のホウ素の質量パーセントの濃度であり、そしてPlは組成物中のリンの質量パーセントの濃度である)。その潤滑油組成物は、0.01乃至0.25質量%の硫黄、および0.08質量%又はそれ以下のリンを含み、摩耗防護の改善をもたらすと記載されている。
【0017】
【特許文献1】米国特許第5346636号明細書(パルク、外)
【特許文献2】米国特許第6008165号明細書(シャンクリン、外)
【特許文献3】米国特許第3480548号明細書(ヘルムス、外)
【特許文献4】米国特許第3929650号明細書(キング、外)
【特許文献5】米国特許第6605572号明細書(カーリック、外)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、摩耗防護及び腐食防止の利点を高レベルでもたらすが、ディーゼルエンジンにはリン及び/又は硫黄を混入させるレベルが低くなった潤滑油組成物を提供するものである。本発明の潤滑油組成物中のリン含有量のレベルは一般に、約0.20質量%又はそれ以下、又は約0.16質量%又はそれ以下、又は約0.12質量%又はそれ以下ですらある。本発明の潤滑油組成物中の硫黄含有量のレベルは一般に、約0.50質量%又はそれ以下、又は約0.40質量%又はそれ以下ですらあり、例えば約0.35質量%又はそれ以下である。また、要求はされてはいないが、これら組成物の灰分の量も一般に低くて、約1.6質量%又はそれ以下、又は約1.5質量%又はそれ以下、又は約1.2質量%又はそれ以下であり、例えば約1.15質量%又はそれ以下である。従って、本発明の潤滑油組成物は環境的観点から、リンと硫黄を多く含む従来のディーゼルエンジン油よりも望ましいものである。本発明の組成物は、触媒コンバータおよび微粒子捕集装置のより長い使用寿命を容易にしながら、同時にそれらエンジンに所望の摩耗及び腐食防護をもたらすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第一の最も広義の態様では本発明は、重負荷ディーゼルエンジンを含む各種のディーゼルエンジンで使用するのに適した潤滑油組成物であって、主要量の潤滑粘度の油、および一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤を含む潤滑油組成物、ただし、潤滑油組成物のリン含有量は約0.20質量%以下で、かつ硫黄含有量は約0.50質量%以下、を提供する。この態様の一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤は、一般に過塩基性である。これら清浄剤は、公知の種々の方法により製造することができるが、好ましくは本明細書に記載する改良方法によっても製造することができる。
【0020】
第二の態様では本発明は、一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤を基油などの有機希釈液中に含み、かつ任意に、例えば無灰分散剤、他の非ホウ酸化金属含有清浄剤、耐摩耗性添加剤、酸化防止剤、摩擦緩和剤、腐食防止剤、消泡剤、シール固定剤又はシール安定剤などその他所望の種々の添加剤を潤滑油中に含有してなる、添加剤パッケージ組成物または濃縮物を提供する。
【0021】
第三の態様では本発明は、一台以上の排ガス後処理装置が設けられたディーゼルエンジンを作動させる方法であって、第一の態様の潤滑油組成物を用いて、または第二の態様の添加剤パッケージ組成物又は濃縮物を用いて、該エンジンを潤滑にすることからなる方法を提供する。
【0022】
第四の態様では本発明は、第一の態様の潤滑油組成物または第二の態様の添加剤パッケージ/濃縮物を製造する方法を提供する。
【0023】
当該分野の熟練者であれば以下の記述を参照することによって、本発明のその他更なる目的、利点および特徴を理解されることであろう。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、摩耗防護及び腐食防止利益を高レベルでもたらすが、ディーゼルエンジンに混入するリン及び/又は硫黄を低レベルとすることのできる潤滑油組成物を提供するものである。本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは一般に、約0.20質量%又はそれ以下、又は約0.16質量%又はそれ以下、又は約0.12質量%又はそれ以下である。本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは一般に、約0.50質量%又はそれ以下、又は約0.40質量%又はそれ以下であり、例えば約0.35質量%又はそれ以下である。また、要求はされてはいないが、これら組成物の灰分の量も一般に低くて、約1.6質量%又はそれ以下、又は約1.5質量%又はそれ以下、又は約1.2質量%又はそれ以下であり、例えば約1.15質量%又はそれ以下である。従って、本発明の潤滑油組成物は環境的観点から、リンと硫黄を多く含む従来のディーゼルエンジン油よりも望ましいものである。本発明の組成物は、触媒コンバータおよび微粒子捕集装置のより長い使用寿命を容易にしながら、同時にそれらエンジンに所望の摩耗及び腐食防護をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、様々な特徴および態様について限定しない説明として記載する。
【0026】
上述したように、本発明は潤滑油組成物を提供する。組成物の全リン分は、一般的な態様では約0.2質量%又はそれ以下であり、別の態様では約0.16質量%又はそれ以下であり、そしてまた別の態様では約0.12質量%又はそれ以下である。本発明の典型的な潤滑油組成物は、リンを組成物の全質量に基づき約0.12質量%含んでいる。
【0027】
本発明の潤滑油組成物の全硫黄分は、一般的な態様では約0.5質量%又はそれ以下であり、別の態様では約0.4質量%又はそれ以下であり、そしてまた別の態様では約0.35質量%又はそれ以下である。本発明の典型的な潤滑油組成物は、硫黄を組成物の全質量に基づき約0.34質量%含んでいる。
【0028】
[潤滑粘度の油]
本発明の潤滑油組成物は一種以上の基油から構成され、基油は主要量(すなわち、約50質量%より多い量)で存在する。一般に基油は、潤滑油組成物の約60質量%より多い量、又は約70質量%より多い量、又は約80質量%より多い量で存在する。基油の硫黄分は、一般に約1.0質量%未満であり、好ましくは約0.6質量%未満、より好ましくは約0.4質量%未満、そして特に好ましくは約0.3質量%未満である。本発明の典型的な潤滑油組成物は、基油を約87.2質量%含んでいる。
【0029】
好適な基油の粘度は、40℃で少なくとも約2.5cSt、又は少なくとも約3.0cStであり、又は少なくとも約3.5cStですらあり、例えば少なくとも約4.0cStである。また、好適な基油は、流動点が約20℃より低い、又は約10℃より低い、又は約5℃よりも低い、例えば約0℃より低いものであってよい。
【0030】
本発明の潤滑油組成物に用いられる基油は、天然油であっても合成油であっても、またはそれらの混合物であってもよい、ただし、そのような油の硫黄分は、低硫黄潤滑油組成物を維持するのに要求される上に示した硫黄濃度制限を越えない。適した天然油としては、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)が挙げられる。また、天然油としては、鉱油系潤滑油、例えば液体石油、およびパラフィン型、ナフテン型又は混合パラフィン・ナフテン型の溶剤処理又は酸処理鉱油系潤滑油も挙げることができる。石炭または頁岩から誘導された油も使用できる。
合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン類(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレン共重合体等);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等およびそれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)ベンゼン等);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル等);アルキル化ジフェニルエーテルおよびそれらの誘導体、類似物及び同族体等を挙げることができる。また、合成潤滑油としては、公知のフィッシャー・トロプシュ気液合成法により製造された油も挙げられる。
【0031】
別の公知の合成潤滑油の部類としては、末端ヒドロキシル基がエステル化またはエーテル化などの方法で変性した、アルキレンオキシド重合体及び共重合体及びそれらの誘導体が挙げられる。これら合成油の例としては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合により製造されたポリオキシアルキレン重合体、およびポリオキシアルキレン重合体のアルキル及びアリールエーテル(例えば、分子量が1000のメチル−ポリイソ−プロピレングリコールエーテル、または分子量が1000乃至1500のポリ−エチレングリコールのジフェニルエーテル);およびそれらのモノ及びポリカルボン酸エステル(例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C3−C8脂肪酸エステル及びC13オキソ酸ジエステル)を挙げることができる。
【0032】
別の好適な合成潤滑油の部類は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と、各種アルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステル類である。そのようなエステル類の特定の例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、および1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸との反応により生成した複合エステル等を挙げることができる。
【0033】
また、合成油として使用できるエステル類としては、C5−C12モノカルボン酸と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトルトール、ジペンタエリトルトールおよびトリペンタエリトルトールなどのポリオール及びポリオールエステルとから製造されたものも挙げられる。
【0034】
合成油はまた、ポリ−アルファ−オレフィン(PAO)であってもよい。一般にPAOsは、炭素原子数4〜30、又は4〜20、又は6〜16の単量体から誘導される。使用できるPAOsの例としては、オクテン、デセンおよびそれらの混合物等から誘導されたものが挙げられる。これらPAOsの粘度は、100℃で2乃至15、又は3乃至12、又は4乃至8mm2/s(cSt)であってよい。鉱油と一種以上の上記PAOsとの混合物も使用することができる。
【0035】
上に開示した種類の油の未精製、精製、再精製油も、天然であっても合成であっても(並びに二種以上の混合物であっても)、本発明の潤滑油組成物に使用することができる。未精製油(または原油)は、天然又は合成原料からそれ以上の精製処理をしないで直接に得られたものである。精製油は、更に一以上の精製工程で処理されたことを除いては未精製油と同様である。溶剤抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、ろ過およびパーコレーションなど多数のそのような精製技術が当該分野の熟練者には知られている。再精製油は、潤滑油として実際に使用されたが、再使用できるように順次処理された油である。使用済み油は殆ど常に使い古した添加剤と分解生成物を含んでいるから、標準油精製工程に加えて、使い古した添加剤と分解生成物を取り除く工程も行わなければならない。そのような再精製油は再生油又は再処理油としても知られている。
【0036】
[ホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤]
本発明の一定のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤を混合することによって、所望のレベルの摩耗及び腐食防護を有する潤滑油組成物となることが分かった。この新しい手段により、リンと硫黄が従来レベルより低くても最高のエンジン性能が実現する。本発明のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤は、公知の種々の方法によっても、また本明細書に記載する新規な改良方法によっても製造することができる。
【0037】
ホウ酸化スルホネート類の幾つかの製造方法は当該分野でも知られている。例えば、米国特許第4683126号明細書には井上、外により、アルカリ土類金属ホウ酸塩分散物の二段階製造方法が開示された。第一工程では、物質(A)乃至(E)を混合して20℃乃至100℃で反応を進める、ここで、(A)は100質量部の油溶性で中性のアルカリ土類金属のスルホネートであり、(B)は10乃至100質量部のアルカリ土類金属の水酸化物又は酸化物であり、(C)は(B)の量の0.5乃至6.5倍の量のホウ酸であり、(D)は5乃至50質量部の水であり、そして(E)は50乃至200質量部の希釈溶媒である。第二工程では、水と大半の希釈溶媒を除去するために、第一工程の反応混合物を100℃乃至200℃に加熱した。この特許文献の開示内容も、ホウ酸化スルホネートの製造に関する限り、かつ本発明の開示内容及び特許請求の範囲と矛盾しない限り、参照内容として本明細書の記載とする。
【0038】
二つの関連特許文献にはヘルムス、外により、ホウ酸化添加剤の製造方法、および該ホウ酸化添加剤を過塩基化してその全塩基価(TBN)を増加させる方法が開示されている。すなわち、米国特許第3480548号明細書には、アルカリ土類金属炭酸塩とアルカリ土類金属炭化水素スルホネートの潤滑油分散液を、ホウ酸、酸化ホウ素およびホウ酸の水性アルキルエステルからなる群より選ばれたホウ素化合物と、反応させることによって製造されたホウ酸化添加剤が記載されている。また、米国特許第3679584号明細書には、過塩基性アルカリ土類金属スルホネート潤滑油組成物においてアルカリ土類金属の割合を増加させる方法が記載されている。その方法は次の工程を含む:(1)炭酸塩−過塩基性アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属水酸化物およびホウ酸を混合する工程、そして(2)得られた混合物を二酸化炭素と接触させる工程。これら特許文献の開示内容も、ホウ酸化スルホネートの製造に関する限り、かつ本発明の開示内容及び特許請求の範囲と矛盾しない限り、参照内容として本明細書の記載とする。
【0039】
また別の例では、フィッシャー、外により米国特許第4744920号明細書に、更にホウ酸化した炭酸塩−過塩基性生成物が開示されている。すなわち、その方法は次の工程を含む:(a)過塩基性スルホネートを一種以上の不活性液体媒体と混合物する工程、(b)(a)の混合物を実質的な泡立ちを防げるほど充分に低い温度にて、ホウ酸化剤でホウ酸化する工程、(c)(b)の混合物の温度を水の沸点よりも高い温度まで上げる工程、(d)実質的に全ての添加した又は反応で生じた水を、(c)の反応混合物の残部から取り除きながら、同時に実質的に全ての炭酸塩を残す工程、そして(e)(d)の生成物を収穫する工程。この特許文献の開示内容も、ホウ酸化スルホネートの製造に関する限り、かつ本発明の開示内容及び特許請求の範囲と矛盾しない限り、参照内容として本明細書の記載とする。
【0040】
更に別の例では、シュリクトにより米国特許第4965003号明細書に、潤滑剤用の油溶性のホウ酸化した過塩基性金属清浄添加剤の製造方法が開示されている。すなわち、その方法は次の工程を含む:(a)炭化水素溶媒に分散した金属塩を、金属塩基および極性溶媒と混合する工程、(b)(a)の金属塩混合物を約10℃乃至約100℃の範囲の温度で処理しながら、混合物に酸性ガスを通す工程、(c)(b)の処理混合物を約10℃乃至約100℃の温度でろ過する工程、(d)(c)のろ液にホウ酸化剤を添加し、そしてろ液を約15℃乃至約100℃の範囲の温度で、約0.25乃至約5.0時間かけてホウ酸化剤と反応させる工程、(e)(d)のホウ酸化混合物を、全ての水および大部分の極性溶媒を蒸留できるほど充分に高い温度で熱する工程、(f)(e)の蒸留したホウ酸化混合物を、残留溶媒の沸点より低くなるまで冷却し、そして冷却したろ液混合物をろ過する工程、そして(g)(f)の蒸留冷却したろ液混合物を、約10乃至約200mmsHgの範囲の圧力下、約20℃乃至約150℃の範囲の温度でストリップし、それによりホウ酸化金属清浄添加剤を回収する工程。この特許文献の開示内容も、ホウ酸化スルホネートの製造に関する限り、かつ本発明の開示内容及び特許請求の範囲と矛盾しない限り、参照内容として本明細書の記載とする。
【0041】
この方法の変形がシュリクト、外により米国特許第4965004号明細書に開示されている。その方法は次の工程を含む:(a)プロトン性溶媒と炭化水素溶媒の存在下で、過塩基性金属塩にホウ酸化剤を添加し、そして15℃乃至100℃の範囲の温度で、0.25乃至5.0時間かけて反応させる工程、(b)(a)のホウ酸化金属塩混合物を、少なくとも約80%のプロトン性溶媒供給物を蒸留できるほど充分に高い温度に加熱する工程、(c)(b)の蒸留したホウ酸化混合物を、残留溶媒の沸点より低くなるまで冷却し、そして冷却したろ液混合物をろ過する工程、そして(d)(c)の蒸留冷却したろ液混合物を、10乃至200mmsHgの範囲の圧力下、20℃乃至150℃の範囲の温度でストリップして、ホウ酸化金属清浄添加剤を回収する工程。この特許文献の開示内容も、ホウ酸化スルホネートの製造に関する限り、かつ本発明の開示内容及び特許請求の範囲と矛盾しない限り、参照内容として本明細書の記載とする。
【0042】
(ホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネートの改良製造方法)
具体的には、本発明のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤は、下記の工程を含む改良法により製造することができる:
(a)(i)少なくとも一種の油溶性トルエンスルホン酸、または油溶性アルカリ土類金属トルエンスルホネート塩、またはそれらの混合物、
(ii)少なくとも一種のアルカリ土類金属源、
(iii)a)少なくとも一種の炭化水素溶媒とb)少なくとも一種の低分子量のアルコールとからなる混合物中に存在する少なくとも一種のホウ素源、
および
(iv)一種以上の過塩基化酸、ただし、それらのうちの少なくとも一種はホウ酸である、を反応させる工程、
(b)工程(a)の反応生成物を、炭化水素溶媒、低分子量のアルコールおよび工程(a)で生成した水のいずれの蒸留温度よりも高い温度に加熱することにより、工程(a)の生成物から炭化水素溶媒、低分子量のアルコールおよび生成水を蒸留により除く工程、
ただし、上記方法において反応混合物への外部からの水の添加は行なわない。
【0043】
上記の方法により製造されたホウ酸化アルカリ土類金属トルエンスルホネート塩は、一般に沈降速度が遅い。例えば沈降容量は、得られた塩の全容量に基づき約0.15容量%未満、又は約0.12容量%未満、又は約0.10容量%未満、又は約0.05容量%未満であり、例えば約0.03容量%未満である。沈降速度は、当該分野でよく知られた一定の標準法、例えばASTM D2273により測定することができる。
【0044】
公知の多数の炭化水素溶媒を上記方法に使用することができる。例えば好適な炭化水素溶媒は、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−デカン、またはそれらの混合物であってよい。また、好適な炭化水素溶媒は芳香族溶媒であってもよく、例えば次の中から選ばれたものである:キシレン、ベンゼン、トルエン、およびそれらの混合物。
【0045】
上記方法に適したアルコールは一般には、分子量が比較的低く、例えば炭素原子数が約1〜約13および/または分子量が約200以下のものである。そのような分子量のアルコールは、反応が終了したのち反応混合物から蒸留して除くことできるほど充分に低い沸点を有する傾向にある。例えば好適なアルコールは、各々炭素原子約1〜約13個を含む種々の低分子量の一価アルコールから選ばれたものであってよい。より具体的には、そのようなアルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソオクタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、イソブチルアルコール、ベンジルアルコール、ベータ−フェニル−エチルアルコール、2−エチルヘキサノール、ドデカノール、トリデカノール、2−メチルシクロヘキサノール、sec−ペンチルアルコール、およびtert−ブチルアルコールがある。本発明の典型的なホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩は、メタノールの存在下で製造される。
【0046】
また、好適な低分子量のアルコールは多価アルコールであってもよい。例えばそのようなアルコールとしては、エチレングリコールなどの二価アルコールがある。
【0047】
さらに、幾種かの好適な低分子量の一価又は多価アルコールの誘導体も使用することができる。これら誘導体の例としては、エチレングリコールのモノメチルエーテル、およびエチレングリコールのモノブチルエーテルなど、グリコールモノエーテル及びモノエステル類を挙げることができる。
【0048】
本発明のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩に変換するのできるアルキルトルエンスルホン酸は、当該分野で知られた方法により製造することができる。例えば、アルキルトルエン前駆体を、公知のスルホン化剤、例えば硫酸、三酸化硫黄、クロロスルホン酸またはスルファミド酸を使用してスルホン化することにより、アルキルトルエンスルホン酸を製造することができる。その他の従来法、例えば、アルキルトルエン前駆体を、ケミソン(CHEMITHON、商標)又はバレストラ(BALLESTRA、商標)製のSO3/空気流下膜に混合する、SO3/空気薄膜スルホン化法も適用することができる。
【0049】
そして、アルキルトルエン前駆体は始めに、トルエンをオレフィンでアルキル化する従来のフリーデル・クラフツ反応から誘導することができる。好適なアルキルトルエン前駆体は、炭素原子約10〜約40個、又は炭素原子約14〜約30個、又は炭素原子約18〜約26個の長さのアルキル鎖を含むことができる。トルエン環は、アルキル鎖の1位以外の任意のアルキル鎖位置に結合することができる。当該分野の熟練者であれば分かるように、アルキル鎖の「1位」とは、鎖の末端の炭素位置を意味する。一方、アルキル鎖は、トルエンのメチル基が結合している位置以外の任意の炭素位置でトルエン環に結合することができる。
【0050】
トルエンをアルキル化するのに使用するオレフィンは、単一オレフィンであっても種々のオレフィン類の混合物であってもよいが、通常は後者が一般に好ましいアルキル化剤である。ただし、トルエンをアルキル化するのに単一オレフィンを使用しようと混合物を使用しようとそれに関係なく、しばしばオレフィンを異性化する。異性化はアルキル化工程の前でも、その工程の間でも、後でも行うことができるが、好ましくはアルキル化工程の前に異性化する。
【0051】
オレフィンの異性化法も知られている。当該分野の熟練者は一般に、この目的で少なくとも二種類の酸性触媒のうちの一つを使用している。つまり、酸性触媒は固体であっても液体であってもよい。公知の多数の固体酸性触媒が適しているが、少なくとも一種類の金属酸化物を含む固体触媒が好ましい。金属酸化物は次の中から選ばれたものであってよい:天然ゼオライト、合成ゼオライト、合成分子ふるい、および粘土。例えば固体酸性触媒は、酸性粘土の酸性形、または酸性分子ふるい、または平均孔径が少なくとも6.0オングストロームのゼオライトからなる。使用できる酸性粘土は、例えばモンモリロナイト、ラポナイトおよびサポナイトが挙げられるが、自然発生物質からでも合成物質からでも誘導することができる。柱状粘土もアルキル化触媒として働くことができる。一次元の孔組織を持ち、平均孔径が5.5オングストローム未満の別の分子ふるいも、酸性触媒として働くことができる。例としては、SM−3、MAPO−11、SAPO−11、SSZ−32、ZSM−23、MAPO−39、SAPO−39、ZSM−22、SSZ−20、ZSM−35、SUZ−4、NU−23、NU−86、および天然又は合成フェリエライトを挙げることができる。これらの触媒については、例えばロザマリー・ゾスタク(Rosamarie Szostak)著、「分子ふるい辞典(HANDBOOK OF MOLECULAR SIEVES)」(ニューヨーク、バン・ノースランド・ラインホールド(Van Norsrand Reinhold)、1992年)、および米国特許第5282858号明細書に記載されていて、それらも参照内容として本明細書の記載とする。
【0052】
異性化法は、例えば約50℃乃至約280℃の範囲の温度で実施することができる。オレフィンは沸点が高い傾向にあるので、該方法はバッチ式でも連続式でも液相で実施することが適している。バッチ式では、撹拌しながら所望の反応温度に加熱できるオートクレーブ又はガラスフラスコを一般に使用する。一方、連続法は固定床法で最も効率良く実施できる。固定床法で空間速度は、反応体と触媒床間の接触の速度を測るものであるが、約0.1WHSV乃至約10WHSV又はそれ以上(すなわち、毎時触媒の質量当りの反応体供給物の質量)の範囲にあってよい。触媒を反応器に充填し、反応器を所望の反応温度まで加熱することができる。オレフィンも触媒床に接触する前に加熱することができる。
【0053】
当該分野の熟練者であれば、特定の異性化レベルを達成できる異性化条件を選ぶことが可能である。つまり、異性化レベルは一般に、特定のオレフィン試料又は混合物中のアルファオレフィンの量と分枝のレベルにより特徴づけられる。アルファオレフィン量と分枝レベルは順次、例えば試料の910cm-1の吸光度を追跡することによるフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を含む、各種の従来法を使用して決定することができる。分枝の比率も、FTIR分光法により試料の1378cm-1の吸光度を追跡することで測定することができる。
【0054】
アルキル化混合物のオレフィンは分枝していても線状であってもよいが、本発明の典型的な方法では、主として線状のアルファオレフィンの混合物から誘導したアルキルトルエンを含む。
【0055】
本発明のアルキル化工程は、異性化工程の前でも、同時でも、あるいは後でも行うことができる。だが、アルキル化工程の前に異性化工程を行うことが好ましく、それによりトルエンをアルキル化するのに用いるオレフィンは異性化オレフィンを含んでいる。
【0056】
アルキルトルエン前駆体を作るのに、公知の各種のアルキル化法を使用することができる。例えば、代表的なアルキル化反応はフッ化水素触媒の存在下で起こるが、この目的に充分に利用できる。ただし、アルキル化を遂行するのに使用する方法に関係なく、殆ど常に一段反応器を反応を行う好ましい容器として用いる。
【0057】
アルキル化法は一般に、約20℃乃至約250℃の範囲の温度で行う。前述した異性化法と同様にアルキル化法も、これらの温度で液体オレフィンを適切に処理するために液相で実施することが好ましい。アルキル化法はバッチ式でも連続式でも活性化させることができ、前者のバッチ式は加熱及び撹拌したオートクレーブ又はガラスフラスコで実施し、後者の連続式は固定床法で実施する。何れの方式でも、反応器流出液は一般にアルキルトルエンを余分なトルエンが混じった状態で含んでいる。余分なトルエンは、蒸留、減圧下でのストリッピング蒸発、または当該分野の熟練者に知られた他の手段により取り除くことができる。
【0058】
上記の新規方法における別の代替出発物質は、アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩であってもよく、これも当該分野の熟練者に知られた方法により製造することができる。つまり、アルキルトルエンスルホン酸をヒドロキシル促進剤の存在下で、好適なアルカリ土類金属源と反応させることにより得ることができる。従来はこのヒドロキシル促進剤は水であってよいが、水の外部水源の不在下で反応を実施することもできる。その場合には、反応混合物中に存在するかどうか分からないが、唯一の水は反応の副生物である。水の代わりに、2−エチルヘキサノール、メタノールまたはエチレングリコールなどの好適なアルコールがヒドロキシル促進剤として作用させることができる。
【0059】
また、この反応は、得られたスルホネート塩が溶解しうる不活性溶媒中で行う。前述したように、その不活性溶媒は次の中から選ぶことができる:n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、またはそれらの混合物。
【0060】
アルカリ土類金属は、カルシウム、バリウム、マグネシウムまたはストロンチウムであることが適している。例えば、アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネートはカルシウム塩であってよく、そして対応するその塩の反応性塩基は水酸化カルシウム(石灰としても知られている)または酸化カルシウムであってよい。
【0061】
本方法において低分子量アルコールとアルカリ土類金属源との質量比は、一般に約0.20:1より大きく、又は約0.30:1より大きく、又は約0.35:1よりも大きく、例えば約0.40:1より大きい。
【0062】
本発明のアルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩を、始めに油溶性のアルキルトルエンスルホン酸出発物質から誘導しようと、あるいはそれ自体が出発物質であろうと、更にホウ酸化を行なう。すなわち、ホウ素源を反応混合物に導入してこの目的を遂行する。そのホウ素源は、例えばホウ酸、無水ホウ素、ホウ素エステル、または同様のホウ素含有物質の形であってよい。本発明の典型的な方法のホウ素源は、オルトホウ酸(ホウ酸としても知られている)である。外部からの水は反応混合物に添加しないが、それでもなお水は、好適な低分子量のアルコールの存在下で、アルキルトルエンスルホン酸および/またはアルカリ土類アルキルトルエンスルホネート塩と共に、アルカリ土類金属反応性塩基を含む反応の副生物として生成する。水の存在下ではホウ酸の縮合が生じて、例えば下記式で表されるもののようなホウ酸オリゴマーが生成すると思われる。
【0063】
【化2】

【0064】
これらのオリゴマーは次いで、アルカリ土類金属反応性塩基と反応してホウ酸化塩が生成し、それにより本発明のアルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネートにホウ素が導入される。
【0065】
本発明のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩は、一般には過塩基性である。定義によれば過塩基性物質の特徴は、過塩基性と言われるスルホネートにおける、金属カチオンの化学量論に従って存在する量よりも過剰の金属含量にある。「塩基価」又は「BN」は、試料1グラム中のKOHのミリグラムと等価な塩基の量を意味する。従って、BNが高いほど、生成物のアルカリ性が強いこと、よって保有するアルカリ度が大きいことを反映している。試料のBNは、例えばASTM D2896試験または他の同等の方法を含む各種の方法により決定することができる。「全塩基価」又は「TBN」は、機能液1グラム中のKOHのミリグラムと等価な塩基の量を意味する。これらの用語はしばしば、「塩基価」又は「BN」それぞれと交替で使用されている。「低過塩基性」は、BN又はTBNが約2乃至約60を意味する。「高過塩基性」は、BN又はTBNが約60又はそれ以上を意味する。
【0066】
本発明のアルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩のTBNは、約10乃至約500、又は約50乃至約400、又は約100乃至約300でも、例えば約150乃至約200であってよい。本発明の典型的なホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩は、高過塩基性であってTBNが約160である。
【0067】
過塩基化の多数の従来法及び反応条件には、二酸化炭素による過塩基化が含まれる。そのような方法及び条件の例は、米国特許第3496105号明細書等に記載されている。本発明のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネートを各々、一種以上の過塩基化酸で過塩基化するが、そのうちの少なくとも一種はホウ酸である。従って、ホウ酸がホウ素源として方法に含まれるなら、それも得られたホウ酸化塩を過塩基化するために作用する。
【0068】
本発明の典型的なホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩は、例えばまず、キシレンなどの炭化水素溶媒を、メタノールなどの低分子量アルコール、および水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属源と予備混合することにより製造することができる。この予備混合工程は、周囲温度又はその付近、例えば約15℃乃至約40℃、又は約20℃乃至約35℃で行うことができる。
【0069】
予備混合に続いて、必要により消泡剤および他の処理助剤を任意に反応容器に添加してもよい。
【0070】
次に、アルキルトルエンスルホン酸を撹拌しながら混合物に加える。一般に、反応混合物の温度の急激な上昇を避けるためにアルキルトルエンスルホン酸を時間をかけて穏やかに加えて、その混合物の温度を約20℃乃至約55℃の範囲に維持する。その後、反応混合物を約40℃乃至約50℃、又は約41℃乃至約46℃の温度で、約5分間乃至約20分間撹拌し、それによりアルカリ土類金属反応性塩基の充分な中和を確実にする。次に、浴または他の冷却機構を用いて反応混合物を約20℃乃至約25℃、又は約21℃乃至約24℃まで冷却し、そしてこの温度範囲で約1時間乃至約3時間保持する。アルキルトルエンスルホン酸の代わりに、アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩が出発物質であるならば、この中和工程を省略してもよい。
【0071】
次に、中和した反応混合物の温度を約20℃乃至約30℃に維持しながら、ホウ酸などのホウ素源を、約20分乃至約40分かけて穏やかにその混合物に加える。この後に、反応混合物を約25℃乃至約50℃で更に15分間保持する。再び、この混合物を約20℃乃至約25℃に冷却する。次いで、直ちに又は約30分以内に冷却機構を反応容器から取り除く。
【0072】
一般的には、それから反応混合物を穏やかに加熱して一つ以上の中間温度に至らせる。この段階的な加熱方法が最終生成物において沈降速度を下げるのに役立つと思われる。例えば、反応混合物を約65℃の第一の中間温度に約20分乃至約40分で加熱した後、約80℃の第二の中間温度に約90分乃至約2時間で加熱し、そののち約90℃乃至約95℃の第三の中間温度に約1時間で加熱することからなる方法にて、本発明のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩を製造することができる。
【0073】
次に、低分子量アルコール、炭化水素溶媒、並びにこれまでに反応過程で発生した水を、当該分野で知られた分離法により反応混合物から取り除く。例えば、単に反応混合物をアルコール、溶媒及び水の沸点より高くまで加熱する、よく知られた蒸留法からなる方法にて、本発明のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩を製造することができる。その方法では、反応混合物を約125℃乃至約140℃の温度に約1時間で加熱する。
【0074】
次に、反応混合物の粘度を下げたり、および/または生成物を分散させるために、任意に不活性液体媒体、例えば希釈油または潤滑油基油を反応混合物に添加してもよい。好適な希釈油は、当該分野で知られていて、例えば「燃料及び潤滑剤辞典(FUELS AND LUBRICANTS HANDBOOK)」(ジョージ E.トッテン(George E. Totten)編集、2003年)、p.199には、「鉱物由来、合成化学物質由来または生物由来の・・基液」と定義されている。例えば生成物を押し出すならば、この時点でそのような不活性液体媒体を添加する必要はないであろう。
【0075】
蒸留工程を、一般には約180℃乃至約200℃の温度で約2時間続けた後、反応混合物をその温度で約15分間保持する。次に、遠心分離および/またはろ過など従来公知の方法を使用して、未反応のアルカリ土類金属反応性塩基、ホウ素源(あるならば、ホウ酸以外の)およびホウ酸を除去する。例えば、プレコート加圧フィルタで一定のろ過助剤を存在させて反応生成物のろ過を行った後、得られたペレットをプレコート油で洗ってそのペレットを貯蔵することからなる方法にて、本発明のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩を製造することができる。
【0076】
得られた本発明のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩は、ホウ素を約2乃至約6質量%、又は約3乃至約5質量%、又は約3.2乃至約4.5質量%、例えば約3.5乃至約4.3質量%含有している。塩のホウ素のレベルは、当該分野でよく知られた一定の標準法、例えばASTM D4951又はASTM D5185により測定することができる。また、得られた本発明のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネートは一般に、ホウ素とアルカリ土類金属イオンとの比が約1:0.2乃至約1:0.7、又は約1:0.3乃至約1:0.6、又は約1:0.5乃至約1:0.58、例えば約1:0.51乃至約1:0.56の範囲にある。
【0077】
さらに、本発明の製造されたホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩は、ASTM D445に従って測定したときに、100℃での粘度が約150cSt乃至約280cSt、又は約170cSt乃至約250cSt、例えば約200cStである。また、その塩の引火点はASTM D93に従って測定したときに、約170℃より高く、又は約180℃以上であり、例えば約190℃である。
【0078】
本発明の潤滑油組成物は、上に例示した方法など種々の好適な方法に従って製造された一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩を含有している。一般に本発明の潤滑油組成物は、一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩を、潤滑油組成物の全質量に基づき約5乃至約60mM、又は約10乃至約50mM、又は約15乃至約40mM含有することができる。本発明の典型的な潤滑油組成物は、ホウ酸化カルシウムアルキルトルエンスルホネート塩を、潤滑油組成物の全質量に基づき約16mM含有している。
【0079】
[その他の添加剤]
(金属含有清浄剤)
本発明の潤滑油組成物は、上述した一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート塩に加えて、他の一種以上の金属を含むがホウ酸化してない清浄剤を含有していてもよい。金属含有又は灰分生成性清浄剤は、堆積物を低減又は除去する清浄剤としても、また酸中和剤またはさび止め添加剤としても機能し、それにより摩耗および腐食を低減してエンジン寿命を延ばすものである。清浄剤は一般に長い疎水性尾を持つ極性頭部からなり、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩からなる。本発明の組成物は一種以上の非ホウ酸化清浄剤を含有していてもよく、該清浄剤は通常は塩、特には過塩基性塩である。過塩基性塩又は過塩基性物質は、金属および金属と反応する特定の酸性有機化合物の化学量論に従って存在する量よりも過剰の金属含量に特徴がある、単相で均質のニュートン系である。酸性物質(一般には、無機酸または二酸化炭素などの低級カルボン酸)を、少なくとも一種の不活性有機溶媒(例えば、鉱油、ナフサ、トルエンまたはキシレン)を含む反応媒体中で、化学量論量より過剰の金属塩基と促進剤の存在下で、酸性有機化合物を含む混合物と反応させることにより過塩基性物質が製造される。
【0080】
本発明の過塩基性組成物を製造するのに使用できる酸性有機化合物としては、カルボン酸、スルホン酸、リン含有酸、フェノールまたはそれらの混合物が挙げられる。しばしば酸性有機化合物は、スルホン酸又はチオスルホン酸基を持つカルボン酸またはスルホン酸(例えば、炭化水素置換ベンゼンスルホン酸)、および炭化水素置換サリチル酸である。
【0081】
カルボキシレート清浄剤、例えばサリチレートは、芳香族カルボン酸を酸化物または水酸化物など適当な金属化合物と反応させることにより製造することができる。中性又は過塩基性生成物は、そののち当該分野でよく知られた方法により得ることができる。芳香族カルボン酸の芳香族部は、窒素や酸素などのヘテロ原子を含むことができるが、好ましくは芳香族部は炭素原子のみを含む。芳香族部は、ベンゼン部のように炭素原子6個又はそれ以上を含むことが適している。芳香族カルボン酸は、縮合もしくはアルキレン橋で連結した、1個以上のベンゼン環のような1個以上の芳香族部を含んでいてもよい。芳香族カルボン酸の例としては、サリチル酸およびそれらの硫化誘導体、例えば炭化水素置換サリチル酸およびその誘導体が挙げられる。例えば炭化水素置換サリチル酸を硫化する方法は当該分野の熟練者には知られている。サリチル酸は一般に、フェノキシドを例えばコルベ・シュミット法でカルボキシ化することにより製造される。その場合に、一般に希釈剤中に非カルボキシ化フェノールとの混合でサリチル酸が得られる。
【0082】
スルホネートは、石油の精留から得られたものまたは芳香族炭化水素のアルキル化により得られたものなどのアルキル置換芳香族炭化水素を、スルホン酸を用いてスルホン化することにより製造することができる。アルカリールスルホネートは通常、アルキル置換芳香族部当り炭素原子約9〜約80個又はそれ以上、好ましくは炭素原子約16〜約60個を含んでいる。
【0083】
フェノールおよび硫化フェノールの金属塩は、酸化物または水酸化物など適当な金属化合物と反応させることにより製造される。中性又は過塩基性生成物は当該分野でよく知られた方法により得ることができる。例えば硫化フェノールは、フェノールを、硫黄もしくは硫黄含有化合物、例えば硫化水素、一ハロゲン化硫黄または二ハロゲン化硫黄と反応させることにより製造することができ、二つ以上のフェノールを硫黄含有ブリッジで架橋した化合物の混合物である生成物が生成する。
【0084】
過塩基性塩を製造するのに使用できる金属化合物は一般に、元素の周期表の任意の1族又は2族金属化合物である。金属化合物の1族金属としては、1族アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム)、並びに1b族金属、例えば銅が挙げられる。1族金属は、ナトリウム、カリウム、リチウムおよび銅であることが好ましく、より好ましくはナトリウムまたはカリウムであり、特にはナトリウムである。金属塩基の2族金属としては、2a族アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)、並びに2b族金属、例えば亜鉛またはカドミウムが挙げられる。2族金属は、マグネシウム、カルシウム、バリウムまたは亜鉛であることが好ましく、より好ましくはマグネシウムまたはカルシウムであり、特にはカルシウムである。
【0085】
過塩基性清浄剤の例としては、これらに限定されるものではないが、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、カルシウムサリチレート、カルシウムサリザレート、およびそれらの混合物が挙げられる。本発明の潤滑油と共に使用するのに適した過塩基性清浄剤は、低過塩基性であってもよい(すなわち、全塩基価(TBN)が100より低い)。そのような低過塩基性清浄剤のTBNは、約5乃至約50、又は約10乃至約30、又は約15乃至約20であってよい。本発明の潤滑油と一緒に使用するのに適した過塩基性清浄剤は、あるいは高過塩基性であってもよい(すなわち、TBNが約100より高い)。そのような高過塩基性清浄剤のTBNは、約150乃至約450、又は約200乃至約350、又は約250乃至約280であってよい。TBNが約16の低過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤と、TBNが約260の高過塩基性カルシウム硫化フェネートは、本発明の潤滑油組成物における二種の典型的な過塩基性清浄剤である。本発明の潤滑油組成物は過塩基性清浄剤を一種より多く含んでいてもよく、全て低TBN清浄剤であっても、全て高TBN清浄剤であっても、あるいはそれら二種の混合物であってもよい。
【0086】
また、本発明の潤滑油組成物に適した清浄剤としては、「混成」清浄剤、例えばフェネート/サリチレート、スルホネート/フェネート、スルホネート/サリチレート、およびスルホネート/フェネート/サリチレート等も挙げることができる。混成清浄剤については、例えば米国特許第6153565号、第6281179号、第6429178号及び第6429179号の各明細書に記載されている。これら特許出願及び特許文献の開示内容も、混成清浄剤に関する限り、かつ本明細書の開示内容と矛盾しない限り、全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0087】
本発明の潤滑油組成物において、非ホウ酸化過塩基性清浄剤(群)が存在するとすれば、その量は約0.5乃至約50mM、又は約1乃至約40mM、又は約2乃至約38mMであってよい。本発明の典型的な態様では、約4mMの低TBNスルホネート清浄剤と、約32mMの高TBN硫化フェネート清浄剤が潤滑油組成物に存在している。
【0088】
(無灰分散剤)
本発明の潤滑油組成物は一種以上の無灰分散剤も含有していてもよい。分散剤は一般に、使用中に酸化により生じた不溶性物質をけん濁状態で維持して、それによりスラッジの凝集や沈殿または金属部分への堆積を防ぐために使用される。窒素含有無灰(無金属)分散剤は、塩基性であり、よって追加の硫酸灰分を持ち込むことなしに、添加された潤滑油組成物のTBNに寄与する。無灰分散剤は一般に、分散対象の粒子と会合できる官能基を持つ油溶性の高分子炭化水素骨格からなる。多種類の無灰分散剤が当該分野では知られている。
【0089】
代表的な分散剤としては、これらに限定されるものではないが、アミン類、アルコール類、アミド類、または重合体骨格に架橋基で結合してなるエステル極性部が挙げられる。本発明の無灰分散剤は例えば、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩、エステル、アミノエステル、アミド、イミドおよびオキサゾリン、長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体、ポリアミンが直接結合した長鎖脂肪族炭化水素、および長鎖置換フェノールをホルムアルデヒドとポリアルキレンポリアミンで縮合することにより生成したマンニッヒ縮合物から選ぶことができる。
【0090】
「カルボン酸分散剤」は、炭素原子を少なくとも34個、好ましくは少なくとも54個含むカルボン酸アシル化剤(酸、無水物、エステル等)と、窒素含有化合物(例えば、アミン)、有機ヒドロキシ化合物(例えば、一価及び多価アルコールを含む脂肪族化合物、またはフェノールおよびナフトールを含む芳香族化合物)、および/または塩基性無機物質との反応生成物である。
【0091】
コハク酸イミド分散剤は、カルボン酸分散剤の一種である。それらは、炭化水素置換コハク酸アシル化剤を、有機ヒドロキシ化合物と、または少なくとも1個の水素原子が窒素原子に結合してなるアミンと、またはヒドロキシ化合物とアミンの混合物と反応させることにより生成する。「コハク酸アシル化剤」は、炭化水素置換コハク酸またはコハク酸生成化合物を意味し、後者には酸自体も含まれる。そのような物質としては一般に、炭化水素置換コハク酸、無水物、エステル(半エステルも含む)およびハロゲン化物が挙げられる。
【0092】
コハク酸系分散剤は様々な化学構造を有するが、下記式で表すことができる。
【0093】
【化3】

【0094】
式中、各R1は独立に、炭化水素基、例えばポリオレフィン誘導基である。一般に炭化水素基は、ポリイソブチル基などのアルキル基である。選択的に表せば、R1基は炭素原子約40〜500個を含むことができ、これらの原子は脂肪族の形で存在できる。R2は、アルキレン基、普通はエチレン(C24)基である。コハク酸イミド分散剤については、例えば米国特許第4234435号、第3172892号及び第6165235号の各明細書にもっと詳しく記載されている。これら特許文献の開示内容も、コハク酸イミド分散剤に関する限りかつ本明細書の開示内容と矛盾しない限り、全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0095】
置換基が誘導されるポリアルケンは一般に、炭素原子数2〜16、通常は炭素原子数2〜6の重合可能なオレフィン単量体の単独重合体又は共重合体である。コハク酸アシル化剤と反応してカルボン酸分散剤組成物を生成させるアミンは、モノアミンであってもポリアミンであってもよい。
【0096】
アミド官能基はアミン塩、アミド、イミダゾリン並びにそれらの混合物の形をとりうるが、コハク酸イミド分散剤は、通常イミド官能基の形で窒素を沢山含んでいるので、そのように呼ばれる。コハク酸イミド分散剤を製造するには、一種以上のコハク酸生成化合物と一種以上のアミンを、任意に通常は液体で実質的に不活性な有機液体溶媒/希釈剤の存在下で、加熱し、そして一般的には水を取り除く。反応温度は、一般には約80℃から混合物又は生成物の分解温度までの範囲にあり、通常は100℃から300℃の間にある。本発明のコハク酸イミド分散剤の製造方法の更なる詳細および例については、例えば米国特許第3172892号、第3219666号、第3272746号、第4234435号、第6440905号及び第6165235号の各明細書に記載されている。これら特許文献の開示内容も、コハク酸イミド分散剤の製造に関する限りかつ本明細書の開示内容と矛盾しない限り、全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0097】
また、好適な無灰分散剤としてはアミン分散剤も挙げられ、比較的高分子量の脂肪族ハロゲン化物とアミン、好ましくはポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である。それらの例は、例えば米国特許第3275554号、第3438757号、第3454555号及び第3565804号等の各明細書に記載されている。これら特許文献の開示内容も、アミン分散剤に関する限りかつ本明細書の開示内容と矛盾しない限り、全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0098】
さらに、好適な無灰分散剤としては「マンニッヒ分散剤」も挙げられ、アルキル基が炭素原子少なくとも30個を含むアルキルフェノールと、アルデヒド(特には、ホルムアルデヒド)、およびアミン(特には、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。これらの分散剤については、例えば米国特許第3036003号、第3586629号、第3591598号及び第3980569号等の各明細書に記載されている。これら特許文献の開示内容も、マンニッヒ分散剤に関する限りかつ本明細書の開示内容と矛盾しない限り、同様に参照内容として本明細書の記載とする。
【0099】
好適な無灰分散剤としては後処理分散剤も挙げられ、カルボン酸、アミン又はマンニッヒ分散剤を、ジメルカプトチアゾール、尿素、チオ尿素、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、ニトリルエポキシドおよびホウ素化合物等のような試薬と反応させることにより得られる。後処理分散剤は、例えば米国特許第3329658号、第3449250号及び第3666730号等の各明細書に記載されている。これら特許文献の開示内容も、後処理分散剤に関する限りかつ本明細書の開示内容と矛盾しない限り、更に参照内容として本明細書の記載とする。
【0100】
好適な無灰分散剤は高分子であってもよく、デシルメタクリレート、ビニルデシルエーテルおよび高分子量オレフィンなどの油可溶性単量体と、極性置換基を含む単量体との共重合体である。高分子分散剤については、例えば米国特許第3329658号、第3449250号及び第3666730号等の各明細書に記載されている。これら特許文献の開示内容も同様に参照内容として本明細書の記載とする。
【0101】
本発明の典型的な潤滑油組成物では、エチレン・カーボネートで処理したビスコハク酸イミドが無灰分散剤として使用される。本発明の別の典型的な潤滑油組成物では、重質ポリアミンとポリイソブチレンコハク酸無水物から誘導されたホウ酸化ビスコハク酸イミドが、無灰分散剤として使用される。本発明のまた別の典型的な潤滑油組成物では、両方のこれらビスコハク酸イミドを含む無灰分散剤混合物が使用される。
【0102】
無灰分散剤は、約0.5乃至約10.0質量%、又は約2.0乃至約8.0質量%、又は約3.0乃至約7.0質量%でも、例えば約4.0乃至約6.0質量%の量で存在することが適している。本発明の典型的な潤滑油組成物は、エチレン・カーボネート処理ビスコハク酸イミド分散剤を約2.0質量%の量で含有する。本発明の別の潤滑油組成物は、ホウ酸化ビスコハク酸イミド分散剤を約4.0質量%の量で、並びにエチレン・カーボネート処理ビスコハク酸イミド分散剤を約2.0質量%の量で含有する。
【0103】
(耐摩耗性添加剤)
本発明の潤滑油組成物は更に、一種以上の耐摩耗性添加剤を含有していてもよい。二炭化水素ジチオリン酸金属塩が、しばしば耐摩耗性添加剤および酸化防止剤として使用されている。金属は、アルカリ又はアルカリ土類金属、もしくはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケルまたは銅であってよい。この特定の種類の耐摩耗性添加剤の量は、本発明の潤滑油組成物の最大リン分によって制限されうる。従って、これらの亜鉛塩は潤滑油中に約12乃至約24mM、又は約14乃至約22mM、又は約16乃至約20mMの量で存在することができる。本発明の典型的な潤滑油組成物は、約19mMのジチオリン酸亜鉛を含有する。
【0104】
それらは、公知技術に従って、まず、通常は一種以上のアルコールまたはフェノールをP25と反応させて二炭化水素ジチオリン酸(DDPA)を生成させ、次に生成したDDPAを亜鉛化合物で中和することにより製造することができる。例えばジチオリン酸は、第一級と第二級アルコールの混合物を反応させることにより製造することができる。あるいは、複数種のジチオリン酸は、一つのアルコールの炭化水素基の特質が全体的に第二級であり、その他のアルコールの炭化水素基の特質が全体的に第一級である場合に製造することができる。亜鉛塩を製造するには任意の塩基性又は中性亜鉛化合物を使用することが可能であるが、酸化物、水酸化物および炭酸塩が最もしばしば用いられている。市販の添加剤は、中和反応で塩基性亜鉛化合物が過剰に使用されるために、しばしば余分な亜鉛を含んでいる。
【0105】
好ましい油溶性のジアルキルジチオリン酸亜鉛は、下記式のジアルキルジチオリン酸から生成させることができる。
【0106】
【化4】

【0107】
ジアルキルジチオリン酸が誘導されるヒドロキシルアルキル化合物は一般に、式:ROH又はR’OH(ただし、RまたはR’はアルキルまたは置換アルキルであり、好ましくは炭素原子3〜30個を含む分枝又は非分枝アルキルである)で表すことができる。より好ましくは、RまたはR’は炭素原子3〜8個を含む分枝又は非分枝アルキルである。
【0108】
ヒドロキシルアルキル化合物の混合物も使用することができる。これらヒドロキシルアルキル化合物は、モノヒドロキシアルキル化合物である必要はない。従って、ジアルキルジチオリン酸は、モノ、ジ、トリ、テトラ及び他のポリヒドロキシアルキル化合物、もしくは前者の二種以上の混合物から製造することができる。第一級アルキルアルコールのみから誘導されたジアルキルジチオリン酸亜鉛は、単一の第一級アルコールから誘導されることが好ましい。その単一の第一級アルコールは2−エチルヘキサノールであることが好ましい。第二級アルキルアルコールのみから誘導されたジアルキルジチオリン酸亜鉛も好ましい。その第二級アルコールの混合物は、2−ブタノールと4−メチル−2−ペンタノールの混合物であることが好ましい。
【0109】
ジアルキルジチオリン酸の生成工程で使用された五硫化リン反応体は、P23、P43、P47またはP49のうちの何れか一種以上を少量含んでいることがある。組成物それ自体も少量の遊離硫黄を含んでいることがある。
【0110】
(粘度指数調整剤)
本発明の潤滑油組成物は、任意に一種以上の粘度指数調整剤を含有していてもよい。粘度調整剤(VM)又は粘度指数向上剤(VII)として機能する一定の高分子物質を混合することにより、基材油の粘度指数が増加又は改善される。一般に粘度調整剤として使用できる高分子物質は、数平均分子量(Mn)が約5000乃至250000、好ましくは約15000乃至200000、より好ましくは約20000乃至150000のものである。これらの粘度調整剤を任意に、例えば無水マレイン酸などのグラフト物質でグラフトさせることができ、そしてグラフトした物質を、例えばアミン、アミド、窒素含有複素環化合物またはアルコールと反応させて、多機能の粘度調整剤(分散型粘度調整剤)を生成させることができる。
【0111】
本発明の典型的な潤滑油組成物は、無水マレイン酸でグラフトしていても或いはグラフトしていなくてもよい、種々のエチレン・プロピレン共重合体を用いている。共重合体は、潤滑油組成物の約0.2乃至約10.0質量%、又は約1.0乃至約8.0質量%、例えば約2.0乃至約6.0質量%の量で用いることができる。
【0112】
(摩擦緩和剤)
幾つかの態様では、本発明の潤滑油組成物は更に、一種以上の摩擦緩和剤を含有していてもよい。種々の硫黄含有オルガノモリブデン化合物が、潤滑油組成物で摩擦緩和剤として機能することが知られているが、同時に酸化防止及び耐摩耗性クレジットも潤滑油組成物に与える。そのような油溶性のオルガノモリブデン化合物の例としては、ジチオカルバメート、ジチオリン酸エステル、ジチオホスフィン酸エステル、キサントゲン酸エステル、チオキサントゲン酸エステルおよびスルフィド等、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0113】
油溶性又は分散性の三核モリブデン化合物は、適当な液体(群)/溶媒(群)中で、(NH42Mo313・n(H2O)(ただし、nは0から2の間で変動し、非化学量論値も含む)などのモリブデン源を、テトラアルキルチウラムジスルフィドなどの好適な配位子源と反応させることにより製造することができる。別の油溶性又は分散性三核モリブデン化合物は、適当な溶媒(群)中で、(NH42Mo313・n(H2O)などのモリブデン源と、テトラアルキルチウラムジスルフィド、ジアルキルジチオカルバメートまたはジアルキルジチオリン酸エステルなどの配位子源と、シアニドイオン、スルフィットイオンまたは置換ホスフィンなどの硫黄引抜き剤との反応過程で生成させることができる。あるいは、[M’]2[Mo376](ただし、M’は対イオンであり、そしてAはCl、BrまたはIなどのハロゲンである)などの三核モリブデン・ハロゲン化硫黄塩を、適当な液体(群)/溶媒(群)中で、ジアルキルジチオカルバメートまたはジアルキルジチオリン酸エステルなどの配位子源と反応させて、油溶性又は分散性三核モリブデン化合物を生成させることもできる。適当な液体/溶媒は、例えば水性であっても有機物であってもよい。
【0114】
ここで用いた「油溶性」又は「分散性」とは、必ずしも化合物又は添加剤が油にあらゆる比率で可溶性、溶解性、混和性である、あるいはけん濁できることを示すものではない。だが、これらの用語は、例えば油が用いられる環境でそれらの意図した効果を及ぼせるほど充分な程度には、油に可溶性または安定して分散できることを意味する。また、所望により、他の添加剤の追加混合によっても高レベルの特定の添加剤の混合が可能になりうる。
【0115】
本発明の典型的な潤滑油組成物は、摩擦緩和剤としてモリブデンコハク酸イミド錯体を用いている。潤滑油組成物のうちモリブデン錯体は、約0.1乃至0.8質量%、又は約0.15乃至約0.5質量%、又は約0.20乃至約0.40質量%を成すことができる。本発明の典型的な潤滑油組成物は、硫化モリブデンコハク酸イミド錯体を、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.20質量%の量で含有している。
【0116】
(酸化防止剤)
本発明の潤滑油組成物は任意に、更に一種以上の酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤又は抗酸化剤は、鉱油がサービス中に劣化する傾向を低減するものである。そのような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、好ましくはC5−C12アルキル側鎖を持つアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、油溶性フェネート及び硫化フェネート、リン硫化又は硫化炭化水素又はエステル、リンエステル、金属チオカルバメート、例えば米国特許第4867890号明細書に記載されている油溶性銅化合物を挙げることができる。
【0117】
少なくとも2個の芳香族基が直接窒素に結合した芳香族アミン類も、酸化防止性のためにしばしば使用される別の部類の化合物を構成する。少なくとも2個の芳香族基が直接1個のアミン窒素に結合した代表的な油溶性芳香族アミンは、炭素原子6〜16個を含んでいる。アミンは芳香族基を2個より多く含んでいてもよい。芳香環はしばしば、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基およびニトロ基から選ばれた一個以上の置換基で置換されている。
【0118】
本発明に従う潤滑油組成物は、一種以上の酸化防止剤を約0.05乃至5.0質量%、又は約0.10乃至約3.0質量%、例えば約0.50乃至約2.0質量%含有することができる。本発明の典型的な潤滑油組成物は、ジ−C8−ジフェニルアミンである酸化防止剤を約0.5質量%含んでいる。本発明の別の典型的な潤滑油組成物は、ヒンダードフェノールプロピオン酸エステル酸化防止剤を約1.0質量%、並びにジ−C8−ジフェニルアミンを約0.5質量%を含んでいる。
【0119】
(他の添加剤)
ディーゼルエンジン油に関連した特定の性能要求条件を満たすために、他の添加剤を本発明の潤滑油組成物に混合してもよい。そのような他の添加剤の例としては例えば、さび止め添加剤、消泡剤およびシール固定剤が挙げられる。
【0120】
さび止め添加剤又は腐食防止剤は、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤であってもよい。非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤としては、これらに限定されるものではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエートを挙げることができる。さび止め添加剤又は腐食防止剤は、他の化合物であってもよく、例えばステアリン酸および他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステルを挙げることができる。
【0121】
消泡剤としては一般に、アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコン重合体が挙げられる。本発明の典型的な組成物は、シリコン系消泡剤を組成物の全質量に基づき約10ppm乃至約50ppm、又は約20ppm乃至約40ppmの範囲で、例えば約30ppmの量で含んでいる。
【0122】
シール固定剤は、シール膨潤剤またはシール安定剤とも呼ばれる。それらは、適正なエラストマー封止を確実にして早期のシール破損や漏れを防ぐために、しばしば潤滑油又は添加剤組成物に用いられている。シール膨潤剤は、例えばジ−2−エチルヘキシルフタレートなど油溶性の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素エステル、トリデシルアルコールなどの脂肪族アルコールを含む鉱油、ヒドロカルボニル置換フェノールと組み合わせたトリス亜リン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルセバケートであってもよい。
【0123】
上述した添加剤の一部は多重の効果を与えることができ、よって、例えば単一の添加剤が分散剤としてもまた酸化防止剤としても働くことができる。これら多機能の添加剤もよく知られている。
【0124】
当該分野の熟練者であれば容易に理解できるように、ある種の添加剤の量は、「質量%」単位よりもむしろ「mM」単位で記載する方が適している。添加剤の量は、「mM」単位で記載するとき、そのような添加剤を含む添加剤濃縮物1キログラム中のカルシウムイオンの量に関して計算している。
【0125】
潤滑油組成物が上述した添加剤のうちの一種以上を含んでいるとき、各添加剤は一般に、添加剤がその所望の機能を与えることができる量で基油にブレンドされている。添加剤を含む一種以上の添加剤濃縮物(濃縮物は時には添加剤パッケージとも呼ばれる)を製造することが必須ではないものの望ましく、それにより幾種類かの添加剤を同時に油に添加して潤滑油組成物を作ることができる。最終組成物は、濃縮物を5乃至30質量%、好ましくは5乃至25質量%、通常は10乃至20質量%用いることができ、残りは潤滑粘度の油である。本発明の典型的な最終潤滑油組成物は濃縮物を約12.8質量%用いていて、残りは好適な潤滑粘度の油である。成分は、任意の順序でブレンドすることもできるし、また成分の組合せとしてブレンドすることもできる。
【0126】
本発明について以下の実施例を参照することにより更に理解できるが、実施例は本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0127】
本発明を限定することなく本発明を説明するために、以下の実施例を提示する。本発明を特定の態様に関して記載しているが、本出願は、添付した特許請求の範囲の真意および範囲から逸脱することなく当該分野の熟練者により成されうるような、種々の変更や置換を包含することを意図するものである。
【0128】
[実施例1] 過塩基性ホウ酸化カルシウムアルキルトルエンスルホネート塩の製造
5リットルガラス容器内で、メタノール約228グラム、キシレン約1800グラム、および水和石灰(水酸化カルシウム)約192.5グラムを混合して、均質又はほぼ均質した。反応混合物の温度を約20℃乃至約30℃の範囲に維持しながら、分子量が約471のアルキルトルエンスルホン酸約572グラムを容器に加えた。この添加は約15分で終えた。次に、反応混合物の温度を約30℃乃至約35℃の範囲に維持しながら、ホウ酸粉末約291.9グラムを容器に加えた。そののち、反応混合物をこの温度で約15分間保った。次いで、反応混合物を含む容器を、次の三段階で加熱した:(1)約35℃から約65℃まで、(2)約65℃から約93℃まで、および(3)約93℃から約128℃まで。I種鉱油約358グラムを容器に加え、そして混合物を撹拌した。次に、混合物全体を10000Gで遠心分離に掛け、そして固体沈降物を取り除いた。こののち、液相を約40ミリバールの減圧下で約185℃まで加熱し、それによりキシレン溶媒を蒸留した。
【0129】
第二のバッチでは、予備混合物に添加するメタノールの量を約240グラムに増やしたこと以外は、一連の工程および全物質を同量で使用してこの方法を繰り返した。得られた塩を分析した結果を下記の第1表に記載する。
【0130】
第1表:ホウ酸化カルシウムアルキルトルエンスルホネート塩の分析
────────────────────────────────
性状 バッチ1 バッチ2
────────────────────────────────
カルシウム(質量%) 7.66 7.90
硫黄(質量%) 2.81 2.80
ホウ素(質量%) 4.09 4.08
塩基価(mgKOH/g) 168 174
密閉カップ式PMCC引火点(℃) 202 196
────────────────────────────────
【0131】
[実施例2] 過塩基性ホウ酸化カルシウムアルキルトルエンスルホネートの大規模製造
タービン混合機と熱油ジャケットと冷却コイルを備えた1900リットルステンレス鋼反応器を、反応容器として使用した。混合キシレン約798キログラムを容器に充填した。次いで、反応器をキシレンの引火点より低い約20℃に冷却した。窒素パージ工程を用いて、反応器内の酸素の量を約3ppmまで減らした。次に、水酸化カルシウム粉末約126キログラムをスクリューコンベヤにより反応器に加えた。反応器の内容物をブレンド及び混合しながら、アルキルトルエンスルホン酸約351キログラムを約48分かけて反応器に加えたが、その間に反応混合物の温度は約43℃まで上がった。反応器を約20℃に冷却し、そしてホウ酸約195キログラムをスクリューコンベヤにより約10分かけて加えた。次に、メタノール約113キログラムを約15分かけて反応器に加えたが、その間に反応混合物の温度は約36℃まで上がった。反応器の内容物をその温度で更に約15分間ブレンド及び混合した。次に、反応器を大気圧にて次の四段階で加熱して、メタノールおよび反応過程で発生した水を取り除いた:(1)約60分かけて約34℃から約69℃まで、(2)約100分かけて約69℃から約78℃まで、(3)約60分かけて約78℃から約93℃まで、および(4)約60分かけて約93℃から約127℃まで。
次に、100ニュートラル油約163キログラムを反応器に加えた。そして、キシレンを蒸留するために、約115分かけて反応器を約171℃に加熱し、反応器内の圧力を約50mmHgに下げた。次に、反応器内の圧力を大気圧に戻した。そののち、100ニュートラル油約23キログラムを反応器に加えた。けいそう土助剤入り加圧フィルタを用いてろ過して沈降物を除いたところ、沈降物は概算で約1.2容量%であった。得られたホウ酸化トルエンスルホネート塩を分析した。下記の第2表にその性状を記載する。
【0132】
第2表:過塩基性ホウ酸化カルシウム
アルキルトルエンスルホネートの大規模製造
──────────────────────────
性状 大規模バッチ
──────────────────────────
カルシウム(質量%) 7.65
硫黄(質量%) 2.78
ホウ素(質量%) 4.03
塩基価(mgKOH/g) 167
100℃動粘度(cSt) 112
──────────────────────────
【0133】
[実施例3] 摩耗防護の評価
油Aおよび比較のための油Aを製造し、そして改良四球摩耗試験にて摩耗防護の試験を行った。具体的には、一般的な四球試験機を使用した。試験に先立って、ステンレス鋼球を160℃の試験油中で、気泡器として単純なガラス管を用いて15リットル/時の空気流を導入して、2日間「予備老化(劣化)」させた。試験機をおよそ毎分1800回転の単一速度で運転した。モータと荷重アームとモータ及び荷重アーム間に取り付けられた力変換器とからなる自動荷重装置を用いて、球に荷重を掛けた。力変換器は、各試験段階で要求される荷重量に応じて荷重を測って調整するコンピュータにも連結していた。荷重アームの先端には変位検出器が取り付けられていて、変位検出器は、毎分1回検出器と荷重アーム間の距離を測ってその結果を記録し、摩耗の程度を継続的に読み出した。装置は更にトルク検出器を含んでいて、トルク検出器は、下部静止球と相対した回転球の摩擦を測って毎分読取りを記録した。温度検出器も球保持器に取り付けられていて油の温度を維持した。
【0134】
下記の第3表に、油Aおよび比較油Aの成分を記載する、一方下記の第4表には、改良四球摩耗試験の結果を記載する。油Aおよび比較油Aは各々、リン分約0.12質量%、硫黄分約0.34質量%であった。
【0135】
第3表:油Aおよび比較油Aの成分
─────────────────────────────────────
成分 油A 比較油A
─────────────────────────────────────
ホウ酸化カルシウムアルキルトルエン 16 mM 無
スルホネート
ホウ酸化コハク酸イミド 4 質量% 4 質量%
エチレンカーボネート処理 2 質量% 2 質量%
ビスコハク酸イミド
低過塩基性ベンゼンスルホネート 4 mM 4 mM
高過塩基性フェネート 32 mM 32 mM
亜鉛−DTP 19 mM 19 mM
モリブデン錯体 0.2質量% 0.2質量%
ジ−C8−ジフェニルアミン 0.5質量% 0.5質量%
ヒンダードフェノール系エステル 1 質量% 1 質量%
消泡剤 30 ppm 30 ppm
流動点降下剤 0.2質量% 0.2質量%
粘度指数向上剤 3.6質量% 3.6質量%
MAグラフトEP共重合体 6 質量% 6 質量%
処理速度 12.8質量% 12.8質量%
─────────────────────────────────────
【0136】
第4表:改良四球摩耗試験の結果
────────────────────────────────
油A 比較油A
────────────────────────────────
計量摩耗指数 25 34.6
(2回運転の平均) (3回運転の平均)
────────────────────────────────
【0137】
ホウ酸化カルシウムアルキルトルエンスルホネート塩清浄剤を16mM含んだ油Aが、そのような清浄剤を含まない比較油Aに比べて、摩耗防護の著しい改善を示したことが認められる。
【0138】
下記の第5表に記載した成分に従って油Bおよび比較油Bを製造した。つまり、比較油Bは、ホウ酸化カルシウムアルキルトルエンスルホネート塩よりはむしろホウ酸化カルシウムアルキルベンゼンスルホネートを含んだ。油Bおよび比較油Bは各々硫黄分約0.39質量%、リン分約0.16質量%であった。
【0139】
これらの油の摩耗防護能力について標準マックT−12試験にて測定した。この試験は、重負荷ディーゼルエンジンの作動条件をシミュレートして、試験油の存在下で摩耗の測定ができるものである。具体的には、EGRと2002低渦流燃焼系統を備え、460bhp、1800rpmと評定された改良マックE7E−Tech460エンジンを試験に使用した。300時間の操作で、最初の100時間はススが発生する定格速度及び馬力であった。そののち最後の200時間では、リングおよびライナの摩耗を最大にするために、最大トルクrpmでエンジンを過度に加速した。下記の第6表に、リングおよびライナの摩耗量を報告する。
【0140】
第5表:油Bおよび比較油Bの成分
─────────────────────────────────────
成分 油B 比較油B
─────────────────────────────────────
ホウ酸化カルシウムアルキルトルエン 15 mM 無
スルホネート
ホウ酸化カルシウムアルキルベンゼン 無 15 mM
スルホネート
ホウ酸化ビスコハク酸イミド 0.85質量% 0.85質量%
エチレンカーボネート処理 6.60質量% 6.60質量%
ビスコハク酸イミド
モリブデン錯体 0.10質量% 0.10質量%
流動点降下剤 0.30質量% 0.30質量%
高過塩基性フェネート 15 mM 15 mM
低過塩基性スルホネート 1.75mM 1.75mM
ジ−C8−ジフェニルアミン 0.05質量% 0.05質量%
第二級亜鉛DTP 22 mM 22 mM
第一級亜鉛DTP 4 mM 4 mM
消泡剤 10 ppm 10 ppm
粘度指数向上剤 8.3 質量% 8.3 質量%
処理速度 14.05質量% 14.05質量%
─────────────────────────────────────
【0141】
第6表:マックT−12試験の結果
─────────────────────────────────────
油B 比較油B 合格/不合格
基準CJ−4
─────────────────────────────────────
線状摩耗(μM) 25.9 25 ≦24
トップ・リング質量損失(mg) 60 81 ≦105
EPO Pb増加(ppm) 15 18 ≦35
250−300時間Pb増加(ppm) 8 8 ≦15
油消費(g/h) 60.7 80.6 ≦85
全マック・メリット 905 641 ≧1000
─────────────────────────────────────
【0142】
第6表に認められるように、ホウ酸化カルシウムアルキルトルエンスルホネート塩を含む潤滑油組成物は、ホウ酸化カルシウムアルキルベンゼンスルホネート塩を含む潤滑油組成物よりも、線状摩耗、トップ・リング質量損失、Pb増加、油消費および全マック・メリットにおいて性能が優れていた。後者の塩は、その塩が一部を成す潤滑油組成物に摩耗防護の改善をもたらすことが実証された。
【0143】
[実施例4] 腐食防護の評価
下記の第7表の成分表に従って油Cおよび比較油Cを製造した。つまり、比較油Cは、ホウ酸化カルシウムアルキルトルエンスルホネート塩よりはむしろホウ酸化カルシウムアルキルベンゼンスルホネート塩を含んだ。油Cおよび比較油Cは各々リン分約0.12質量%、硫黄分約0.34質量%であった。
【0144】
これらの油の腐食防護能力について、標準ASTM D6549(HTCBT)試験にて決定し、油がエンジンを腐食から保護する能力を比較した。具体的には、銅、鉛、スズおよびリン青銅を含む四種類の金属試験片を、計量した量の試験油に浸漬した。高温の油に空気を一定時間通した。試験が終了した時点で、試験片および疲労した油を調べて腐食を検出した。下記の第8表に、銅、鉛およびスズの濃度を報告した。
【0145】
第7表:油Cおよび比較油Cの成分
─────────────────────────────────────
成分 油C 比較油C
─────────────────────────────────────
ホウ酸化カルシウムアルキルトルエン 16 mM 無
スルホネート
ホウ酸化カルシウムアルキルベンゼン 無 16 mM
スルホネート
ホウ酸化コハク酸イミド 4 質量% 4 質量%
エチレンカーボネート処理 2 質量% 2 質量%
ビスコハク酸イミド
低過塩基性スルホネート 4 mM 4 mM
高過塩基性フェネート 32 mM 32 mM
亜鉛−DTP 19 mM 19 mM
モリブデン錯体 0.2質量% 0.2質量%
ジ−C8−ジフェニルアミン 0.5質量% 0.5質量%
ヒンダードフェノール系エステル 1 質量% 1 質量%
消泡剤 30 ppm 30 ppm
流動点降下剤 0.2質量% 0.2質量%
粘度指数向上剤 3.6質量% 3.6質量%
MAグラフトEP共重合体 6 質量% 6 質量%
処理速度 12.8質量%
─────────────────────────────────────
【0146】
第8表:HTCBT試験の結果
────────────────────────────────
油C 比較油C 合格/不合格基準
────────────────────────────────
Cu(ppm) 6 6 ≦20
Sn(ppm) 1 1 ≦50
Pb(ppm) 8 11 ≦100
────────────────────────────────
【0147】
第8表から、ホウ酸化カルシウムアルキルトルエンスルホネート塩を含む潤滑油組成物は、ホウ酸化カルシウムアルキルベンゼンスルホネート塩を含む組成物よりも、僅かに優れた腐食防止能力を示すとの結論を引き出すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤、
ただし、潤滑油組成物のリン含有量は約0.20質量%以下であって、かつ硫黄含有量は約0.50質量%以下である。
【請求項2】
下記の成分を含む潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)下記の工程を含む方法により製造された一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤:
(i)(1)少なくとも一種の油溶性トルエンスルホン酸、または油溶性アルカリ土類金属トルエンスルホネート塩、またはそれらの混合物、
(2)少なくとも一種のアルカリ土類金属源、
(3)a)少なくとも一種の炭化水素溶媒とb)少なくとも一種の低分子量のアルコールとからなる混合物中に存在する少なくとも一種のホウ素源、
および
(4)一種以上の過塩基化酸、ただし、それらのうちの少なくとも一種はホウ酸である、を反応させる工程、
(ii)工程(i)の反応生成物を、炭化水素溶媒、低分子量のアルコールおよび工程(i)で生成した水のいずれの蒸留温度よりも高い温度に加熱することにより、工程(i)の生成物から炭化水素溶媒、低分子量のアルコールおよび生成水を蒸留により除く工程、
ただし、上記方法において反応混合物への外部からの水の添加は行なわない、そしてまた、潤滑油組成物は、リン含有量は約0.20質量%以下であって、かつ硫黄含有量は約0.50質量%以下である。
【請求項3】
リン含有量が約0.16質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
リン含有量が約0.12質量%以下である請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
硫黄含有量が約0.40質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
硫黄含有量が約0.35質量%以下である請求項5に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤を、約5乃至約60mM含む請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤を、約10乃至約50mM含む請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤を、約15乃至約40mM含む請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤が、過塩基性清浄剤である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤の各々のTBNが、約10乃至約500である請求項10又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤の各々のTBNが、約50乃至約400である請求項11に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤の各々のTBNが、約100乃至約300である請求項12に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤の各々のTBNが、約150乃至約200である請求項13に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
さらに、一種以上の非ホウ酸化金属含有清浄剤を含む請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
一種以上の非ホウ酸化金属含有清浄剤が、カルボキシレート清浄剤、スルホネート清浄剤、フェネート清浄剤およびそれらの混合物から選ばれる請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
一種以上の非ホウ酸化金属含有清浄剤の金属が、ナトリウム、カリウム、リチウム、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛およびカドミウムから選ばれる請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
一種以上の非ホウ酸化金属含有清浄剤のうちの少なくとも一種が、カルシウム塩またはマグネシウム塩である請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
一種以上の非ホウ酸化金属含有清浄剤のうちの少なくとも一種が、カルシウムスルホネートである請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
一種以上の非ホウ酸化金属含有清浄剤のうちの少なくとも一種が、カルシウムフェネートである請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
カルシウムスルホネートが低過塩基性清浄剤である請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項22】
カルシウムフェネートが高過塩基性清浄剤である請求項20に記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
一種以上の非ホウ酸化金属含有清浄剤が、約0.5乃至約50mMの量で存在する請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
一種以上の非ホウ酸化金属含有清浄剤が、約2乃至約38mMの量で存在する請求項23に記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
さらに、一種以上の無灰分散剤を含む請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
一種以上の無灰分散剤のうちの少なくとも一種が、コハク酸系分散剤である請求項25に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
コハク酸系分散剤がビスコハク酸イミド分散剤である請求項26に記載の潤滑油組成物。
【請求項28】
コハク酸系分散剤がホウ酸化分散剤である請求項26に記載の潤滑油組成物。
【請求項29】
一種以上の無灰分散剤が、0.5乃至約10.0質量%の量で存在する請求項25に記載の潤滑油組成物。
【請求項30】
一種以上の無灰分散剤が、2.0乃至約8.0質量%の量で存在する請求項29に記載の潤滑油組成物。
【請求項31】
一種以上の無灰分散剤が、4.0乃至約6.0質量%の量で存在する請求項30に記載の潤滑油組成物。
【請求項32】
さらに、一種以上の耐摩耗性添加剤を含む請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項33】
一種以上の耐摩耗性添加剤のうちの少なくとも一種が、ジチオリン酸亜鉛である請求項32に記載の潤滑油組成物。
【請求項34】
一種以上の耐摩耗性添加剤が、約12乃至約24mMの量で存在する請求項32に記載の潤滑油組成物。
【請求項35】
一種以上の耐摩耗性添加剤が、約16乃至約20mMの量で存在する請求項34に記載の潤滑油組成物。
【請求項36】
さらに、一種以上の粘度指数調整剤を含む請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項37】
一種以上の粘度指数調整剤のうちの少なくとも一種が、エチレン・プロピレン共重合体である請求項36に記載の潤滑油組成物。
【請求項38】
一種以上の粘度指数調整剤が、約2.0乃至約6.0質量%の量で存在する請求項36に記載の潤滑油組成物。
【請求項39】
さらに、一種以上の摩擦緩和剤を含む請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項40】
一種以上の摩擦緩和剤のうちの少なくとも一種が、モリブデン含有物質である請求項39に記載の潤滑油組成物。
【請求項41】
モリブデン含有物質がモリブデンコハク酸イミド錯体である請求項40に記載の潤滑油組成物。
【請求項42】
一種以上の摩擦緩和剤が、約0.1乃至約0.8質量%の量で存在する請求項39に記載の潤滑油組成物。
【請求項43】
一種以上の摩擦緩和剤が、約0.15乃至約0.5質量%の量で存在する請求項42に記載の潤滑油組成物。
【請求項44】
一種以上の摩擦緩和剤が、約0.20乃至約0.40質量%の量で存在する請求項43に記載の潤滑油組成物。
【請求項45】
さらに、一種以上の酸化防止剤を含む請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項46】
一種以上の酸化防止剤のうちの少なくとも一種が、芳香族アミンである請求項45に記載の潤滑油組成物。
【請求項47】
一種以上の酸化防止剤のうちの少なくとも一種が、フェノール系エステルである請求項45に記載の潤滑油組成物。
【請求項48】
一種以上の酸化防止剤が、約0.1乃至約3.0質量%の量で存在する請求項45に記載の潤滑油組成物。
【請求項49】
一種以上の酸化防止剤が、約0.5乃至約2.0質量%の量で存在する請求項48に記載の潤滑油組成物。
【請求項50】
さらに、さび止め添加剤、消泡剤およびシール固定剤から選ばれた一種以上の添加剤を含む請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項51】
消泡剤のうちの少なくとも一種が、シリコン系消泡剤である請求項50に記載の潤滑油組成物。
【請求項52】
約20乃至約40ppmのシリコン系消泡剤を含む請求項51に記載の潤滑油組成物。
【請求項53】
ホウ素を、潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも約50ppm含む請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項54】
ホウ素を、潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも約100ppm含む請求項53に記載の潤滑油組成物。
【請求項55】
ホウ素を、潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも約500ppm含む請求項54に記載の潤滑油組成物。
【請求項56】
ホウ素を、潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも約1000ppm含む請求項55に記載の潤滑油組成物。
【請求項57】
一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤の各々が、アルキルトルエンスルホン酸から誘導され、そしてアルキルトルエンスルホン酸のアルキル基が、炭素原子約10〜約40個を含んでいる請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項58】
アルキルトルエンスルホン酸のアルキル基が、炭素原子約12〜約30個を含んでいる請求項57に記載の潤滑油組成物。
【請求項59】
アルキルトルエンスルホン酸のアルキル基が、炭素原子約16〜約26個を含んでいる請求項58に記載の潤滑油組成物。
【請求項60】
アルキルトルエンスルホン酸のアルキル基が、線状アルキル基である請求項57に記載の潤滑油組成物。
【請求項61】
下記のことを含む潤滑油組成物の製造方法:
下記の成分を混合して:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤、
その結果、リン含有量が約0.20質量%以下で、かつ硫黄含有量を約0.50質量%以下である潤滑油組成物を得ること。
【請求項62】
下記の成分を混合して、リン含有量が約0.20質量%以下であって、かつ硫黄含有量が約0.50質量%以下である潤滑油組成物を製造する方法:
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)下記の工程を含む方法により製造された一種以上のホウ酸化アルカリ土類金属アルキルトルエンスルホネート清浄剤:
(i)(1)少なくとも一種の油溶性トルエンスルホン酸、または油溶性アルカリ土類金属トルエンスルホネート塩、またはそれらの混合物、
(2)少なくとも一種のアルカリ土類金属源、
(3)a)少なくとも一種の炭化水素溶媒とb)少なくとも一種の低分子量のアルコールとからなる混合物中に存在する少なくとも一種のホウ素源、
および
(4)一種以上の過塩基化酸、ただし、それらのうちの少なくとも一種はホウ酸である、を反応させる工程、
(ii)工程(i)の反応生成物を、炭化水素溶媒、低分子量のアルコールおよび工程(i)で生成した水のいずれの蒸留温度よりも高い温度に加熱することにより、工程(i)の生成物から炭化水素溶媒、低分子量のアルコールおよび生成水を蒸留により除く工程、
ただし、上記方法において反応混合物への外部からの水の添加は行なわない、
【請求項63】
ディーゼルエンジンの摩耗を低減する方法であって、請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物を用いて該エンジンを作動させることからなる方法。
【請求項64】
ディーゼルエンジンの腐食を低減する方法であって、請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物を用いて該エンジンを作動させることからなる方法。

【公開番号】特開2008−297547(P2008−297547A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141672(P2008−141672)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(598066514)シェブロン・オロナイト・エス.アー. (20)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】