説明

撥水性表面処理及び処理された物品

基体表面を覆って撥水性被覆を適用する方法が与えられている。表面を、少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシラン、少なくとも一種類の加水分解可能な下塗り剤、例えば、シラン及び/又はシロキサン、及び少なくとも一種類の非ハロゲン化、例えば、非フッ素化アルキルシランを含む少なくとも一種類の被覆組成物と接触させる。ペルフルオロアルキルアルキルシラン及び非フッ素化アルキルシランは、その非フッ素化アルキルシランの有効鎖長が、前記ペルフルオロアルキルアルキルシランの有効鎖長に等しいか又はそれより長くなるように選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に表面処理の分野に関し、特に、種々の基体上に撥水性表面を生成する方法及びそれによって作られた基体に関する。
【背景技術】
【0002】
撥水性表面処理は当分野で知られている。例えば、米国特許第5,707,740号及び第5,980,990号明細書には、ペルフルオロアルキルアルキルシラン、及び場合により、完全に加水分解可能なシラン又はシロキサンのような一体的下塗り剤(integral primer)を有する撥水性被覆組成物が記載されている。これらの文献には、基体上に撥水性被覆を形成する前に基体を酸で活性化することも記載されている。
【0003】
米国特許第6,025,025号明細書には、酸溶液中に研磨材料を入れた分散物を最初に適用し、表面の結合部位の数を増大して露出することにより、基体表面上の撥水性被覆の耐久性を改良する方法が記載されている。
【0004】
他の撥水性被覆も報告されており、例えば、米国特許第5,523,161号、第5,674,967号、第5,328,768号、及び第5,688,864号明細書に記載されている。
【0005】
これらの既知の組成物及び方法は、優れた撥水性を有する耐久性被覆を与える。これらの既知の撥水性被覆は、100°以上の程度の水接触角を与えるのが典型的である。そのような大きな水接触角は、被覆した表面上の水滴を球状にし易くする。しかし、大きな接触角だけでは、球状水滴が被覆表面から如何に早く滑り落ちるかには直接関係がないことがある。被覆表面から球状水滴が出来るだけ早く滑り落ちることが望ましいことは当業者に認められるであろう。例えば、自動車透明体の場合、球状水滴がその被覆透明体から落ちるのが早い程、その物品を通る許容可能な視界が早く回復することができる。
【0006】
水滴がいかに早く基体から滑り落ちるかを特徴付ける一つの慣用的方法は、慣用的「水滑り角度(water sliding angle)」測定によるものである。水滑り角度が小さい程、早く水滴が表面から滑り落ちる。既知の撥水性被覆は、22°以上の程度の水滑り角度を有するのが典型的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、商業的に許容可能な耐久性、例えば、既知の撥水性被覆と同様な耐久性を与えるのみならず、既知の撥水性被覆よりも小さな水滑り角度を与える撥水性被覆組成物及び/又は被覆方法を与えることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による基体表面を覆って撥水性被覆を適用する方法は、少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシラン、少なくとも一種類の一体的下塗り剤、例えば、加水分解可能なシラン又はシロキサン、及び少なくとも一種類の実質的にハロゲン化されていない、例えば、実質的にフッ素化されていないアルキルシランを含む少なくとも一種類の被覆組成物と基体の表面とを接触させることを含む。この方法は、少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシランを含む第一被覆組成物と表面とを接触させ、その表面を、実質的にフッ素化されていないアルキルシランを含む第二被覆組成物と接触させることを含むことができる。第一及び/又は第二被覆組成物は、加水分解可能なシラン又はシロキサンのような少なくとも一種類の一体的下塗り剤を含むこともできる。適当な非フッ素化アルキルシランには分岐鎖又は直鎖アルキルシランが含まれる。非フッ素化アルキルシランは、その非フッ素化アルキルシランの有効な鎖長が、ペルフルオロアルキルアルキルシランの有効鎖長に等しいか又はそれより長いように選択することができる。
【0009】
本発明の被覆物品は、少なくとも一つの表面を有し、その表面の少なくとも一部分を覆って適用された被覆を有する基体を含む。その被覆は、本発明の少なくとも一種類の被覆組成物から形成することができ、その被覆組成物は、少なくとも一種類の実質的にハロゲン化されていない、例えば、実質的にフッ素化されていないアルキルシランで、一般式、RSiR4−t−u(式中、Rは、一般式C2p+1を有するアルキル部分にすることができ、Yは加水分解可能な部分、例えば、一種類以上のハロゲン、アシルオキシ、及び/又はアルコキシ部分にすることができ、Rは、アルキル部分、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のような、一般式C2n+1を有するアルキル部分、又はビニル部分のような、一般式C2n−1を有するアルケニル部分にすることができる)を有するアルキルシランを含む。一つの態様として、tは1、2、又は3にすることができ、uは、0、1、又は2にすることができ、t+uは4より小さい。被覆は、(1)少なくとも一種類の実質的にハロゲン化されていないアルキルシラン、(2)少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシランで、一般式(RSiR4−m−n〔式中、Rは、一般式C2q+1を有するペルフルオロアルキル部分であり、Rは、一般式・(C2s)・を有する二置換有機ラジカルであり、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のような、一般式C2n+1を有するアルキル部分であるか、又はビニル部分のような、一般式C2n−1を有するアルケニル部分であり、Xは、一つ以上の加水分解可能な部分、例えば、ハロゲン、アシルオキシ、及び/又はアルコキシ部分にすることができる〕を有するペルフルオロアルキルアルキルシラン、及び(3)少なくとも一種類の一体的下塗り剤で、例えば、少なくとも一種類の加水分解可能な、例えば、完全に加水分解可能な、一般式SiZを有するシラン、及び/又は例えば、式Si(4v−2w)を有するシロキサンのような一体的下塗り剤、の反応生成物を含むことができる。上記(3)で、式SiZについて、Zは、ハロゲン、アルコキシ、及び/又はアシルオキシ部分の一つ以上の加水分解可能な基にすることができる。適当なシランは、Zが、例えば、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、及びアセトキシである場合のシランから選択することができる。加水分解可能なシランの適当な例には、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、及びテトラアセトキシシランが含まれる。上記(3)で、式Si(4v−2w)について、Zは、ハロゲン、アルコキシ、及びアシルオキシ基からなる群から選択され、vは2以上であり、wは1以上であり、(4v−2w)は、0より大きい。適当な加水分解可能なシロキサンには、ヘキサクロロジシロキサン、オクタクロロトリシロキサン、及びそれより高級のオリゴマークロロシロキサンが含まれる。これらのシラン及びシロキサンについては、更に米国特許第6,025,025号明細書(これは参考のためここに入れてある)に更に記載されている。上記(2)についての一つの態様として、mは、1、2、又は3にすることができ、nは、0、1、又は2にすることができ、m+nは4より小さい。撥水性被覆は、被覆物品に22°より小さく、例えば、20°より小さく、例えば、15°より小さく、例えば、0°より大きく15°までの範囲の水滑り角度を与えることができる。
【0010】
別の被覆物品は、少なくとも一つの表面を有し、その表面の少なくとも一部分を覆って適用された被覆を有する基体を含む。被覆は、第一有効鎖長を有する少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシラン、及び第二有効鎖長を有する少なくとも一種類の実質的にハロゲン化されていない、例えば、実質的にフッ素化されていないアルキルシランを含む被覆組成物から形成することができる。第二有効鎖長は、第一有効鎖長よりも長くすることができる。被覆組成物は、少なくとも一種類の加水分解可能な、例えば、完全に加水分解可能なシラン又はシロキサンのような少なくとも一種類の一体的下塗り剤を含むこともできる。
【0011】
基体を覆って撥水性被覆を適用するための本発明の被覆系、例えば、被覆キットは、少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシラン、少なくとも一種類の下塗り剤、例えば、少なくとも一種類の加水分解可能なシラン又はシロキサン、及び少なくとも一種類の実質的にハロゲン化されていない、例えば、実質的にフッ素化されていないアルキルシランを含む少なくとも一種類の被覆組成物を含む。例えば、被覆系は、少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシランを含む第一被覆組成物、及び少なくとも一種類の実質的にハロゲン化されていない、例えば、実質的にフッ素化されていないアルキルシランを含む第二被覆組成物を含むことができる。第一又は第二のどちらの被覆組成物でも、加水分解可能なシラン又はシロキサンのような一体的下塗り剤を含むことができる。
【0012】
発明の記述
ここで用いられる「内側(inner)」、「外側(outer)」、「より上に(above)」、「より下に(below)」、「一番上(top)」、「一番下(bottom)」、等のような空間又は方向的用語は、図面に示されているような本発明に関する。しかし、本発明は、種々の別な配向を取ることもでき、従ってそのような用語は限定するものとして考えるべきではないことを理解すべきである。更に、本明細書及び特許請求の範囲の範囲で用いられている大きさ、物理的特徴、処理パラメーター、成分量、反応条件等を表現する全ての数字は、どの場合でも用語「約」によって修正できるものとして理解すべきである。従って、反対のことが指示されていない限り、次の明細書及び特許請求の範囲中に記載された数値は大略のものであり、本発明によって得られるように求められる希望の性質に依存して変化させることができるものである。最低限、特許請求の範囲に均等論の適用を制限しようとする意図としてではなく、各数値は、少なくとも多数の報告された重要な数値を参照し、通常の端数を丸める方法を適用することにより与えられたものと見做すべきである。更に、ここに記載した多くの範囲は、その中に含まれるどのような小さい範囲でも全て包含されるものと理解すべきである。例えば、「1〜10」と述べた範囲は、1の最低値と10の最大値の間に入る(それらの数値をも含めて)どのような小さい範囲でも全て包含するものと考えるべきである。即ち、1以上の最低値で始まり、10以下の最大値で終わる全ての小範囲、例えば5.5〜10のような範囲が含まれる。更に、ここで用いられる用語「を覆って堆積した(deposited over)」、「を覆って適用した(applied over)」、又は「を覆って与えた(provided over)」とは、上ではあるが必ずしも支持表面と接触しないで堆積、適用、又は与えられていることを意味する。例えば、基体「を覆って堆積した」被覆とは、堆積した被覆と基体との間に位置する同じか又は異なる組成物の一つ以上の他の被覆又はフイルムが存在することを排除するものではない。更に、ここに記載する全ての%は、反することが指示されていない限り、問題にしている組成物の全重量に基づく「重量」による。「ここに入れてある」どの文献も、全体的に組込まれているものと理解されたい。ここで用いる用語「撥水性被覆」とは、50°より大きく、例えば、70°より大きく、例えば、90°より大きく、例えば、100°より大きい水接触角を与える被覆を意味する。ここに記載する全ての水滑り角度値は、下の実施例に記載した慣用的水滑り角度試験法により決定されたものである。
【0013】
本発明の撥水性被覆及び/又は方法は、いずれかの特別な分野で使用するように限定されるものではなく、どのような希望の基体、例えば、幾つかの名前を挙げれば、建築窓、絶縁ガラスユニット、及び空中、水中・水上、又は地上の乗り物のための透明体(例えば、自動車風防ガラス、バックライト、サイドライト、ムーンルーフ等)(それらに限定されるものではない)に対し実施することができることを理解すべきである。
【0014】
図1に関し、第一主表面14及び第二主表面16を有する基体12を有する物品10の一部分が示されている。撥水性被覆18は、基体12の少なくとも一部分を覆い、例えば、主表面14及び/又は16の一つ以上の少なくとも一部分を覆って適用することができる。下で一層詳細に論ずるように、場合により、一つ以上の下塗り被覆20、及び/又は場合により一つ以上の機能性被覆22を、基体12の少なくとも一部分を覆って与えることができる。
【0015】
基体12に、本発明は限定されるものではなく、どのような希望の特性を有するどのような希望の材料からなっていてもよく、例えば、可視光線に対し不透明、半透明、又は透明であってもよい。「透明」とは、0%より大きく、100%までの基体を通る透過率を有することを意味する。「可視光」又は「可視領域」とは、395nm〜800nmの範囲の電磁波エネルギーを意味する。別法として、基体は半透明又は不透明にすることができる。「半透明」とは、電磁波エネルギー(例えば、可視光)が基体を通過するが、見る人の側とは反対の基体側では目的物がはっきりとは見えない位にそのエネルギーを拡散させることを意味する。「不透明」とは、可視光透過率が0%であることを意味する。適当な基体の例には、プラスチック基体〔例えば、ポリアクリレートのようなアクリル重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、等のようなポリアルキルメタクリレート;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等のようなポリアルキルテレフタレート;ポリシロキサン含有重合体;又はそれらを製造するための単量体の共重合体、又はそれらの混合物〕;金属基体、例えば、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、及びアルミニウム(それらに限定されるものではない);セラミック基体;タイル基体;ガラス基体;それらのいずれかの混合物又は組合せ;が含まれる。例えば、基体は、慣用的無色ソーダ・石灰・シリカガラス、即ち、「透明ガラス」でもよく、或は有色又は他の仕方で着色したガラス、硼珪酸塩ガラス、鉛ガラス、強化ガラス、非強化ガラス、アニールしたガラス、又は熱強化ガラスにすることができる。ガラスはどのような種類のものでもよく、例えば、慣用的フロート法ガラス又は平板ガラスでもよく、どのような光学的性質、例えば、可視光透過率、紫外線透過率、赤外線透過率、及び/又は全太陽エネルギー透過率のどのような値でも、それを持つどのような組成物からなっていてもよい。本発明に実施に適したガラスの種類は、例えば、米国特許第4,746,347号、第4,792,536号、第5,240,886号、第5,385,872号、及び第5,393,593号明細書に記載されているが、それらに限定されるものではない。
【0016】
基体12を覆って撥水性被覆18を適用する前に、撥水性被覆18を堆積させようとする表面(又は表面の少なくとも一部分)は、場合により、クリーニング、研磨、及び他の仕方で前処理してもよく、例えば、汚れ及び/又は表面汚染物を除去することができる。そのような前処理の例は、例えば、米国特許第5,707,740号、及び第5,980,990号明細書(参考としてここに入れる)に記載されているが、それに限定されるものと考えるべきではない。
【0017】
例えば、基体表面の少なくとも一部分を、酸溶液を適用することにより活性化し、後で適用された撥水性被覆18の耐久性を延ばすことができる。用いる酸溶液は基体12を損傷することなく、撥水性被覆18の耐久性を増大するそれらの能力に基づいて選択することができる。本発明を限定するものではないが、用いることができる酸溶液には、塩酸、硫酸、及び有機酸の溶液が含まれる。一つの態様として、約5より小さく、例えば、約3より小さなpHを有する強有機酸溶液のような有機酸を用いることができる。用いることができる他の酸には、燐酸、臭化水素酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、及び/又はクエン酸が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0018】
酸が塩酸である場合、塩酸が0.5〜30重量%、例えば、0.5〜20重量%、例えば、0.5〜10重量%の範囲にある、脱イオン水に塩酸を溶解した酸溶液を用いることができる。酸が硫酸である場合、硫酸が0.5〜30重量%、例えば、0.5〜20重量%、例えば、0.5〜10重量%の範囲にある、脱イオン水に硫酸を溶解した酸溶液を用いることができる。酸が酒石酸である場合、酒石酸を脱イオン水に溶解した酸溶液で、酸濃度が、残余の水中に溶解した酒石酸が1〜40重量%、例えば、2〜20重量%の範囲になっているものを用いることができる。一層低い又は一層高い酸濃度を用いることもできることは認められるであろうが、そのような濃度を用いることは、撥水性フイルムの耐久性を改良するための基体上の活性化時間をそれに対応して一層長くするか又は短くする必要がある。
【0019】
基体表面の酸活性化は、どのような慣用的技術でも、例えば、浸漬、流動、噴霧、又は拭い(それらに限定されるものではない)によって基体に酸溶液を適用することにより達成することができる。必要な拭い回数と言うものはないが、約2分間基体に接触させることで許容できる結果を与えることが見出されている。拭いは、酸溶液を含む耐酸性吸収パッド、例えば、木綿パッドに手で穏やかな圧力を加えることにより行うことができる。
【0020】
酸溶液が揮発性で残留物を残すことなく基体から蒸発する場合、酸溶液を基体に適用し、蒸発させ、それにより撥水性組成物を基体を覆って適用することができる。揮発性酸溶液は、ここでは基体に適用した後、短時間で(例えば、10分以内で)周囲条件で揮発することができるものとして定義する。揮発性酸溶液の例には、塩酸、臭化水素酸、酢酸、硝酸、及びトリフルオロ酢酸の溶液が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0021】
酸溶液が不揮発性であるか、又は不揮発性であるが蒸発により残渣を残す場合、基体を、酸活性化工程後に蒸留水又は脱イオン水で濯ぎ、酸溶液又はその残渣を除去することができる。濯いだ後、基体を乾燥し、撥水性組成物を基体を覆って適用することができる。不揮発性酸溶液は、ここでは基体に適用した後、短時間(例えば、約10分以内)で周囲条件で揮発することができないものとして定義する。不揮発性酸の例には、硫酸、酒石酸、クエン酸、及び燐酸が含まれるが、それらに限定されるものではない。濯ぎ溶液は、蒸留水又は脱イオン水のような水、又は水と混合したアルコールを含むことができる。
【0022】
別法として、又は付加的に、撥水性被覆18を堆積する前に、被覆18を適用しようとする表面(又は少なくともその一部分)を、場合により、例えば、参考のためここに入れる米国特許第6,025,025号明細書に記載されているように、同時に研磨及び化学的に調製することができるが、それに限定されるものと考えるべきではない。例えば、撥水性被覆18を適用する前に、溶液中に少なくとも一種類の研磨用化合物及び少なくとも一種類の酸を含む分散物を、基体12の少なくとも一部分を覆って、例えば、撥水性被覆18を堆積しようとする基体12のその部分を覆って適用することができる。
【0023】
酸溶液中に含有させる酸の選択に影響を与える因子には、処理される基体、選択される酸又は酸の組合せ、酸溶液中に分散される研磨用化合物、及び除去される物質と基体との間の化学的結合の強さ及び種類が含まれるが、それらに限定されるものではない。例えば、酸溶液は、その中に分散された研磨用化合物を完全に溶解することはなく、処理される基体表面を損傷することなく、基体表面から材料を除去するように選択することができる。酸は、Na、Ca、Sn、Fe及びAlイオン(それらに限定されるものではない)のような基体表面から除去された物質が酸溶液に溶けたままになり、それらが酸溶液から沈澱して、基体表面上に再付着しないように、選択するすることができる。
【0024】
多くの基体と共に用いるのに適した酸には、塩酸、硫酸、燐酸、臭化水素酸、硝酸、及び有機酸、又はそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるものではない。有機酸を選択した場合、約5より小さく、例えば、約3より小さなpHを有する酸溶液を含めた強有機酸溶液を用いることができる(例えば、酒石酸、酢酸、蓚酸、トリフルオロ酢酸、及びクエン酸)。
【0025】
酸溶液中の酸濃度は、選択された酸(一種又は多種)、酸溶液の溶媒、及び酸溶液と基体との相互作用、に大きく依存する。しかし、多くの用途にとって、酸濃度は一般に約1〜5重量%の範囲内にすることができる。酸が塩酸(HCl)である場合、塩酸が0.1〜30重量%、例えば、0.1〜20重量%、例えば、0.5〜10重量%、例えば、1〜5重量%の範囲にある、水に塩酸を溶解した酸溶液を用いることができる。前記範囲及び議論は、硫酸にも適用することができる。酸が酒石酸である場合、1〜40重量%、例えば、2〜20重量%の範囲の酒石酸の酸濃度を用いることができる。一層低い又は一層高い酸濃度を用いることもできることは認められるであろうが、そのような濃度を用いることは、撥水性フイルムの耐久性を改良するための基体上の活性化時間をそれに対応して一層長くするか又は短くする必要がある。
【0026】
適当な研磨用化合物の選択に影響を与える因子には、処理される基体、酸溶液の酸性環境に耐える研磨用化合物の能力、研磨用化合物の粒径又は他の研磨性の尺度、基体の表面を研磨用化合物で処理する方法、除去される物質と基体との間の結合強度及び種類、及び特定の研磨用化合物に伴われる取得コスト、使い易さ、安全性及び廃棄コストが含まれるが、それらに限定されるものではない。基体の表面を、研磨用化合物/酸溶液分散物を基体の表面上に拭うことにより処理する場合、基体の方へ向ける力の強さ及び基体の表面に亙って適用される往復回数は、研磨用化合物を選択する時に考慮することができる。酸溶液の酸性環境に耐えることができ、表面の機械的又は光学的性質又は光学的性質に、例えば基体をその目的用途に許容できなくする程表面に擦り傷を付けることにより、実質的に悪影響を与えることのないようにしながら、適用した圧力で適用した往復回数に亙って結合用部位をブロックしていた物質を緩め、脱落させるのに充分な濃度で研磨用化合物は存在し、充分な研磨性を持つことができる。多くの用途について、基体表面の約2Å〜約10Åを除去することにより、撥水性フイルムの耐久性を測定できる程改良するのに充分な数の結合用部位を露出することができる。多くの酸溶液と共に用いるのに適した研磨用化合物には、アルミナ、セリア、酸化鉄、ガーネット、ジルコニア、シリカ、炭化珪素、酸化クロム、軽石、ダイヤモンド系研磨用化合物、及びそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0027】
一つの態様として、研磨用化合物は、約0.1〜20μ、例えば、0.5〜5μ、例えば、1〜3μの範囲の粒径を有することができる。研磨用化合物は、乾燥粒子状態になっていてもよく、或は液体キャリヤーに入れた分散物として存在していてもよい。本発明を限定するものではないが、用いることができる研摩材の一つの種類は、マサチューセッツ州ウエストフィールドのミクロ・アブレイシブズ・コーポレーション(Micro Abrasives Corporation)から入手することができる酸化アルミニウム研磨材であるミクログリット(Microgrit)(登録商標名)WCAラッピング(lapping)粉末である。一つの態様として、研磨用化合物は、前に論じたように、研磨用化合物/酸溶液分散物を形成するために、酸溶液に約5〜30重量%の範囲で添加することができる。限定する例としてではないが、基体がガラス基体である場合、適当な研磨用化合物には、約1〜3μの平均粒径を有するアルミナ又はセリアが含まれるが、それらに限定されるものではなく、それらは1〜5重量%塩酸/脱イオン水溶液中に約15〜20重量%の全濃度で存在する。
【0028】
基体の酸活性化は、当業者に知られている慣用的技術により、基体表面上に研磨用化合物/酸溶液分散物を適用し、拭うことにより達成することができる。例えば、分散物を直接基体表面上に適用し、吸収性耐酸性パッドに穏やかな手の圧力を加えながら手で拭うことができる。分散物は直接パッドに適用し、次に、基体表面上に拭ってもよい。別法として、非研磨性パッドを有するオービタル・サンダー(orbital sander)のような粉末化設備を用いて、研磨用化合物/酸溶液分散物を適用してもよい。少なくとも研磨用化合物/酸溶液分散物が基体の表面を「濡らす」まで、即ち、それが最早基体表面のどの部分からも「引き離される」ことがなくなるまで、基体表面を拭うことができる。一つの態様として、研磨用化合物/酸溶液分散物を、約1〜5分、例えば、約1〜2分の範囲の滞留時間、即ち、研磨用化合物/酸溶液分散物が、除去される前に基体上に留まっている時間の長さになるように適用することができる。
【0029】
上に記載した任意的前処理工程の一つを行っても、或は行わなくても、撥水性被覆18を、基体12の表面の全て又は少なくとも一部分を覆って、例えば、表面14及び/又は表面16の全て又は一部分を覆って適用することができる。撥水性被覆18は、本発明の撥水性被覆組成物の少なくとも一つを基体の少なくとも一部分を覆って適用することにより形成することができる。一層詳細に下で記述するように、少なくとも一種類の被覆組成物は、(1)ペルフルオロアルキルアルキルシラン;(2)一体的下塗り剤、例えば、シラン又はシロキサン;及び(3)実質的にハロゲン化されていない、例えば、実質的にフッ素化されていないアルキルシラン;を含むことができる。「実質的にハロゲン化されていない」及び「実質的にフッ素化されていない」とは、ハロゲン又はフッ素原子が、確かに存在していたとしても、被覆の滑り角度を22°より大きく上昇させるのに充分な量では存在しないこと、例えば、20°より大きくなく、例えば、15°より大きくなく、好ましくは10°より大きくしないことを意味する。後に記載する一つの特定の非限定的態様として、被覆18は、二段階適用法を用いて堆積することができ、この場合、一種類以上の上記成分を含む第一被覆成分を基体12を覆って適用し、次に一種類以上の残余の成分を含む第二被覆組成物を基体12を覆って適用することにより被覆18を形成する。
【0030】
一つの態様として、第一被覆組成物は、少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシラン、及び少なくとも一種類の一体的下塗り剤、例えば、加水分解可能な、例えば、完全に加水分解可能なシラン又はシロキサン(それらに限定されるものではない)を含むことができる。許容可能なペルフルオロアルキルアルキルシラン及び下塗り剤の非限定的例は、参考としてここに入れる米国特許第5,328,768号及び第5,523,162号明細書(それらに限定されるものではない)に記載されている。これらに記載されたペルフルオロアルキルアルキルシランは、一般式、RR′SiX4−m−n(式中、Rは、ペルフルオロアルキルアルキル部分であり;mは1、2、又は3であり;nは0、1、又は2であり;m+nは4より小さく;R′は、ビニル又はアルキルラジカル、例えば、メチル、エチル、ビニル、又はプロピルであり、Xは加水分解可能なラジカル、例えば、ハロゲン、アシルオキシ、及び/又はアルコキシである)を有する。
【0031】
許容可能なペルフルオロアルキルアルキルシランを表す別の方法は、一般式(RSiR4−m−n〔式中、Rは、一般式C2q+1を有するペルフルオロアルキル部分であり;Rは、一般式・(C2s)・を有する二置換有機ラジカルであるのが好ましく;Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のような、一般式C2n+1を有するアルキル部分であるか、又はビニル部分のような、一般式C2n−1を有するアルケニル部分であり;Xは、一つ以上の加水分解可能な部分、例えば、一つ以上のハロゲン、アシルオキシ、及び/又はアルコキシ部分にすることができる〕を用いることである。「二置換有機ラジカル」とは、二つの場所で置換された、即ち、二つの場所で結合した他の成分を有する有機部分を意味する。特定のペルフルオロアルキルアルキルシランのための「X」置換基は、全てが同じ部分である必要はないことは分かるであろう。例えば、一つの置換基をハロゲンにし、一つの置換基をアシルオキシ部分にし、一つの置換基をアルコキシ部分にすることができるであろう。一つの態様として、mは、1、2、又は3にすることができ;nは、0、1、又は2にすることができ;m+nは4より小さい。
【0032】
許容可能なペルフルオロアルキル部分(R)の例には、1〜30、例えば、6〜18、例えば、8〜12の範囲のqを有するもの、例えば、CF〜C3061、C13〜C1837、C17〜C1225が含まれる。ペルフルオロアルキルアルキルシランのペルフルオロアルキル成分は、分岐鎖又は線状、即ち直鎖にすることができる。許容可能な二置換基有機部分(R)の例には、sが2〜10、例えば、2〜5、例えば、2〜3の範囲にある分岐鎖又は直鎖炭素を有するものが含まれる。一つの非限定的態様として、Rは、置換アルキル、例えば、エチル、プロピル、ブチル、及びペンチルにすることができる。Xのための成分の例には、加水分解可能なクロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、及びアセトキシ基が含まれる。本発明の実施に適切なペルフルオロアルキルアルキルシランの例には、ペルフルオロアルキルエチルトリクロロシラン、ペルフルオロアルキルエチルトリメトキシシラン、ペルフルオロアルキルエチルトリアセトキシシラン、ペルフルオロアルキルエチルジクロロ(メチル)シラン、ペルフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、及びペルフルオロアルキルエチルジエトキシ(メチル)シランが含まれるが、それらに限定されるものではない。一つの態様として、ペルフルオロアルキルアルキルシラン成分は、第一組成物中、その第一組成物の全重量に基づき、0重量%より大きく、15重量%まで、例えば、0.25重量%〜3重量%の範囲で存在させることができる。一つの特定の態様として、ペルフルオロアルキルアルキルシラン成分は、第一組成物中、その第一組成物の全重量に基づき、0.5〜1重量%の量で存在させることができる。
【0033】
例として、RがC17であり、RがCであり、RがCHであり、XがClであり、m=1、及びn=1である場合のペルフルオロアルキルアルキルシランの例は、次の一般式により記述することができる:
【0034】
【化1】

【0035】
がC17であり、RがCであり、Rがアルケニル部分、Cであり、XがClであり、m=2、及びn=1である場合のペルフルオロアルキルアルキルシランの別の例は、次の一般式により記述することができる:
【0036】
【化2】

【0037】
式I及びIIのペルフルオロアルキルアルキルシラン構造は、単に適当な構造の例として与えられているものであり、本発明は、これらの特別に記載した構造に限定されるものではないことは、当業者によって認められるであろう。
【0038】
ペルフルオロアルキルアルキルシランは、第一鎖長(例えば、有効鎖長)を有することができることは、当業者によって認められるであろう。ペルフルオロアルキルアルキルシランについての「有効鎖長」とは、R及びR成分を一緒にした長さを意味する。直鎖、即ち、分岐していない鎖の場合、この第一有効鎖長は、長さの中の(q+s)の炭素数として定義することができる。例えば、上の式Iの場合、第一有効鎖中は、10炭素単位の長さである。分岐した鎖の場合、この第一鎖長は、R成分の最も近い端(即ち、Siに結合した炭素)からR成分の末端(即ち、Siから最も遠く隔たった−CF部分)までの長さとして定義することができる。
【0039】
本発明に適切な一体的下塗り剤の例は、例えば、ここに参考として入れる米国特許第5,707,740号、及び第5,523,161号に記載されている。本発明を限定するものではないが、一体的下塗り剤は、加水分解縮合してシリカゲルを形成することができる加水分解可能なシラン又はシロキサンにすることができる。加水分解してシリカゲルを形成することができる適当なシランは、一般式SiZを有することができ、この場合、Zは、一つ以上のハロゲン、アルコキシ、及び/又はアシルオキシ基のような加水分解可能な基にすることができる。適当なZ部分の例には、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、及びアセトキシ基が含まれるが、それらに限定されるものではない。適当な加水分解可能なシランの例には、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、及びテトラアセトキシシランが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0040】
適当なシロキサンは、一般式、Si4y−2z(式中、Xは一つ以上のハロゲン、アルコキシ、及び/又はアシルオキシ基にすることができ、yは2以上にすることができ、zは1以上にすることができ、4y−2zは、0より大きい)を有することができる。適当な加水分解可能なシロキサンには、ヘキサクロロジシロキサン、オクタクロロトリシロキサン、及びそれより高級のオリゴマークロロシロキサンが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0041】
一つの態様として、下塗り剤成分は、少なくとも一つの被覆組成物、例えば、第一組成物中、その第一組成物の全重量に基づき、0重量%より大きく、5重量まで、例えば、0.05重量%〜2重量%の範囲で存在することができる。一つの特別な態様として、下塗り剤成分は、第一組成物中、その第一組成物の全重量に基づき、1.25重量%の量で存在することができる。その量は、1.25重量%より大きくすることができるが、それは滑り接触角を僅かに減少するが、フランネル摩耗試験により測定して、被覆の耐久性を増大することができる。この試験は、当業者によく知られている。
【0042】
第一組成物は、非プロトン性溶媒、例えば、アルカン又はアルカンの混合物、又はフッ素化溶媒のような第一溶媒を含むことができる。第一組成物は、当業者に知られているどのような慣用的技術でも、例えば、浸漬、流動、又は拭いのような技術により基体に適用することができるが、それらに限定されるものではない。一つの態様として、第一溶媒は、エーテル及び/又はヒドロキシル基を含まないか、又は実質的に含まないものにすることができる。「エーテル及び/又はヒドロキシル基を実質的に含まない」とは、たとえ存在していたとしても、そのような基が、シランを妨害して悪影響を与えることがないような充分低いレベルでしか存在しないことを意味する。例えば、存在していたとしても、ヒドロキシル官能基のモル数が、全てのシランのモル数を越えることはない。
【0043】
第二被覆組成物は、少なくとも一種類のハロゲン化されていない、又は実質的にハロゲン化されていない、例えば、フッ素化されていないアルキルシランを含むことができる。アルキルシランの例は、一般式、RSiR4−t−u(式中、Rは、一般式C2p+1を有するアルキル基にすることができ、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のような、一般式C2n+1を有するようなアルキル部分であるか、又はビニル部分のような、一般式C2n−1を有するアルケニル部分にすることができる)により表すことができる。一つの態様として、tは、1、2、又は3にすることができ、uは、0、1、又は2にすることができ、t+uは4より小さく、Yは、ペルフルオロアルキルアルキルシランの「X」について上に記載したような加水分解可能な部分にすることができる。一つの態様として、pは、1〜30、例えば、5〜20、例えば、10〜20、例えば、15〜20の範囲にすることができる。Rは、第二有効鎖長有する分岐鎖アルキル基、又は線状、即ち、直鎖基にすることができる。当業者によって認められるように、フッ素化されていないアルキルシランの「有効鎖長」は、アルキル鎖の最も近い端(例えば、Siに結合した炭素)から鎖の末端(例えば、その近い端から最も遠く隔たった炭素原子)までの長さとして定義することができる。一般式C2p+1を有する直鎖アルキル鎖の場合、鎖長は、p個の炭素原子の長さとして定義することができる。適当な非フッ素化アルキルシランの例には、幾つかを挙げれば、n−デシルトリクロロシラン、n−ドデシルトリクロロシラン、及びn−オクタデシルトリクロロシランが含まれる。一つの態様として、非フッ素化アルキルシラン成分は、第二組成物中、第一組成物の全重量に基づき、0重量%より大きく、20重量%まで、例えば、0.1重量%〜20重量%、例えば、0.1〜10重量%、例えば、0.5重量%〜3重量%、例えば、1重量%〜2重量%の範囲の量で存在することができる。一つの特別な態様として、非フッ素化アルキルシラン成分は、第二組成物中、第一組成物の全重量に基づき、1.75重量%の量で存在することができる。
【0044】
第二組成物は、非プロトン性溶媒、例えば、アルカン又はアルカン混合物のような第二溶媒を含むことができる。第二組成物は、当業者に知られているどのような慣用的技術でも、例えば、浸漬、流動、又は拭いのような技術により基体に適用することができるが、それらに限定されるものではない。第二溶媒は、上に記載したように、エーテル及び/又はヒドロキシル基を含まないか、又は実質的に含まないものにすることができる。本発明を限定するものではないが、第二溶媒は、第一溶媒と同じものにすることができる。
【0045】
本発明の一つの実施法として、ペルフルオロアルキルアルキルシラン及び非フッ素化アルキルシランは、非フッ素化アルキルシラン成分の有効鎖長が、ペルフルオロアルキルアルキルシラン成分の有効鎖長に等しいか又はそれより大きくなるように選択することができる。上記一般式を用いると、このことは、直鎖アルキルの場合、pは、(q+s)の合計に等しいか又はそれより大きいことを意味する。分岐鎖の場合、このことは、Si原子から最も遠い所に位置する、アルキル鎖の炭素原子までのSi原子からの距離が、ペルフルオロアルキルアルキルシランの場合よりも、非フッ素化アルキルシランの場合の方が大きいことを意味する。ペルフルオロアルキルアルキルシラン部分の有効鎖長よりも長い非フッ素化アルキルシラン有効鎖長を有することにより、非フッ素化アルキルシランのアルキル鎖の外側部分が、ペルフルオロアルキルアルキルシラン鎖の少なくとも一部分の上に折れ曲がるか、又は遮蔽することができ、被覆18の滑り角度を減少させるのに役立つと考えられる。ペルフルオロアルキルアルキルシランが存在すると、被覆18の耐候性を改良する。
【0046】
ペルフルオロアルキルアルキルシラン、一体的下塗り剤、及び非フッ素化アルキルシランは、適用後、反応して被覆18を形成する。被覆18を形成するために必要なものではないが、適用した被覆組成物を65℃(150°F)より高い温度に、30分以上、例えば、1時間以上の時間、被覆基体を加熱することにより硬化することができる。硬化温度が高くなる程、硬化時間を短くすることができることは認められるであろう。例えば、被覆基体を、232℃(450°F)の温度に1分以上加熱することができる。
【0047】
撥水性表面の汚れ反発性を向上させるため潤滑性を与えるのに、第一又は第二被覆組成物は、場合により、ここに参考として入れる米国特許第4,983,459号、第4,997,684号、第5,328,768号、及び第5,523,162号明細書に記載されているようなフッ素化オレフィンテロマー(それらに限定されるものではない)を含むこともできる。一つの態様として、オレフィンテロマーは、一般式C2m+1CH=CH(式中、mは1〜30、例えば、1〜16、例えば、4〜10である)により表される基から選択することができる。
【0048】
上の組成物の例では、一体的下塗り剤は第一被覆組成物中に存在するが、下塗り剤は第一組成物、又は第二組成物、又は両方の組成物に存在させてもよいことは分かるであろう。
【0049】
更に、被覆18は、上に記載した二段階法を用いて適用する必要はない。例えば、被覆18は、少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシラン、少なくとも一種類の一体的下塗り剤、及び少なくとも一種類の実質的にハロゲン化されていないアルキルシラン、例えば、上に記載したものを含む単一の被覆組成物を溶媒(例えば、上に記載した第一又は第二溶媒)中に溶解したものから堆積することができる。
【0050】
本発明の撥水性被覆は、22°より小さく、例えば、20°より小さく、例えば、15°より小さく、例えば、13°より小さく、例えば、0°より大きく、15°までの範囲の水滑り角度を有する被覆表面を与えることができる。
【0051】
一つの別の態様として、シリカ層のような明確な下塗り層20を、基体12の少なくとも一部分を覆って与えることができ、本発明の撥水性被覆18は、その下塗り層20を覆って堆積することができる。適当な下塗り層及び下塗り剤堆積法の例は、例えば、参考としてここに入れる米国特許第5,328,768号、第5,523,162号、及び第5,707,740号明細書に記載されているが、それらに限定されるものではない。
【0052】
図1に示したように、場合により一つ以上の機能性被覆22を、基体12を覆って、例えば、基体14、16の一つ以上の全て又は一部分を覆って堆積することもできる。機能性被覆22は、撥水性被覆18と基体12との間、又は図1に示したように、撥水性被覆18とは異なる表面の上に与えることができる。機能性被覆22は、どのような希望の種類のものでもよい。ここで用いる用語「被覆」には、一つ以上の被覆層及び/又は被覆フイルムが含まれる。機能性被覆22は、同じか又は異なる組成物又は機能性の一つ以上のフイルム又は機能性被覆層を有することができる。ここに用いる用語「層」又は「フイルム」とは、希望の又は選択した被覆組成物の被覆領域を指す。本発明を限定するものではないが、機能性被覆22は、機能性被覆基体の、太陽光調節性、例えば、放射率、遮光係数、透過率、吸収率、反射率等、又は伝導性、例えば、熱又は電気伝導度、又は物理的性質、例えば親水性に影響を与える被覆にすることができる。例えば、機能性被覆22は、電気伝導性被覆、加熱可能な被覆、アンテナ被覆、親水性被覆、光活性被覆(例えば、光親水性及び/又は光触媒性被覆)、又は低放射性被覆のような太陽光調節被覆にすることができるが、それらに限定されるものと考えるべきではない。ここで用いる用語「太陽光調節被覆」とは、被覆した物品の太陽光についての性質に影響を与える被覆を指し、例えば、遮光係数及び/又は放射率及び/又は太陽輻射線反射量及び/又は被覆物品による吸収及び/又は透過した量、例えば、赤外線又は紫外線吸収率又は反射率に影響を与える被覆を指すが、それらに限定されるものではない。太陽光調節被覆は、太陽光スペクトル、例えば、可視スペクトル(それに限定されるものではない)の選択された部分を遮蔽、吸収、又は濾波することができる。太陽光調節及びアンテナ被覆の例は、米国特許第4,898,789号、第5,821,001号、第4,716,086号、第4,610,771号、第4,902,580号、第4,716,086号、第4,806,220号、第4,898,790号、第4,834,857号、第4,948,677号、第5,059,295号、及び第5,028,579号明細書(これらの特許は参考のためここに入れてある)に記載されているが、それらに限定されるものではない。電気伝導性被覆の例は、米国特許第5,653,903号及び第5,028,759号(これらは参考のためここに入れてある)に記載されているが、それらに限定されるものではない。
【0053】
一つの態様の例として、機能性被覆22は、低放射性被覆にすることができる。「低放射性」被覆は、その被覆を堆積する仕方に依存して異なった放射性の値を持つことができることは、当業者に認められるであろう。例えば、スパッターで適用した低放射性被覆は、被覆中に存在する反射性金属層の数に依存して、0.01〜0.06の範囲の放射率を持つのが典型的である。熱分解的に適用された低放射性被覆は、0.03より小さい範囲の放射率を有するのが典型的である。従って、ここで一般的に用いられる用語「低放射率」とは、0.1より小さく、例えば、0.05より小さい放射率を意味する。低放射率被覆の例は、例えば、米国特許第4,952,423号、及び第4,504,109号明細書に見出される。機能性被覆22は、単一層又は多層被覆でもよく、一種類以上の金属、非金属、半金属、半導体、及び/又は合金、化合物、複合体、それらの組合せ又は混合物を含むことができる。例えば、機能性被覆22は、単一層金属酸化物被覆、多層金属酸化物被覆、非金属酸化物被覆、又は多層被覆にすることができる。
【0054】
本発明と共に用いることができる機能性被覆22の例は、ペンシルバニア州ピッツバーグのPPGインダストリーズ社から、被覆のサンゲート(SUNGATE)(登録商標名)及びソーラーバン(SOLARBAN)(登録商標名)系のものとして市販されているが、それらに限定されるものではない。そのような機能性被覆は、可視光に対し透明であるか又は実質的に透明である誘電体又は反射防止性材料、例えば、金属酸化物又は金属合金の酸化物を含む一つ以上の反射防止性被覆フイルムを含むのが典型的である。機能性被覆22は、反射性金属、例えば、金のような貴金属、銅、又は銀、又はそれらの組合せ又は合金を含む赤外線反射性フイルムを含むこともでき、更に、金属反射性層の上及び/又は下に位置する、当分野で知られているような、チタンのような下地フイルム又は障壁フイルムを含むことができる。
【0055】
別法として、機能性被覆22は、親水性又は光活性(例えば、光親水性及び/又は光触媒性)被覆にすることができる。光活性被覆の例は、参考のためここに入れる米国特許第5,873,203号、第5,854,169号、第6,027,766号、第6,054,227号、第6,603,363号、第6,077,492号、及び第6,013,372号明細書に記載されているが、それらに限定されるものではない。
【0056】
図2は、キット30の形の本発明の被覆系を示している。キット30は、上で記載したような本発明の少なくとも一種類の被覆組成物を含む。例示した態様では、キット30は、上に記載した第一被覆組成物を含む第一容器32、及び上に記載した第二被覆組成物を含む第二容器34を含んでいる。キット30は、被覆組成物(一種又は多種)を適用するための一つ以上のアプリケーター40、場合により、被覆組成物を適用する前に基体表面を前処理又は活性化するための上に記載したような酸溶液の入った溶液36、及び/又は場合により、上に記載したような酸/研磨用化合物分散物の入った容器38を含んでいてもよい。キットの種々の成分は、運搬用ケース、袋、又は同様な器具に入れて与えることができる。
【0057】
本発明の一般的概念を更に次の実施例を参照して記述する。しかし、次の実施例は、本発明の一般的概念を単に例示するだけで、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【実施例】
【0058】
次の例1〜3は、第一非フッ素化処理の後に長鎖非フッ素化アルキルシラン溶液を適用し、もし第二処理を省略したならば生ずるであろう水滑り角度よりも低い水滑り角度を第二処理により与える結果になることを実証している。例4は、長鎖非フッ素化アルキルシランを用いると、1回の処理工程でそのシランが無い場合に観察される滑り角度よりも、その滑り角度が減少することを例示する。
【0059】
滑り角度は、水滴がガラスから転がり落ちる容易さを示すことは当業者によって認められるであろう。次の例では、滑り角度の決定は、試料表面をエタノールで洗浄し、ナイロン・クリーンルームワイパーで3回拭くことにより表面を確実に奇麗にし、その試料を0.1°の解像力を与えることができるデジタルレベルを具えた傾斜可能なプレートの上に置き、例1〜3では、試料及び注射針に帯電する静電気を少なくするため、ディスクワシャー社(Discwacher,Inc.)から市販されているゼロスタット(Zerostat)静電防止器具を使用することを含んでいた。傾斜可能なプレートを、5〜9°の出発傾斜角度に傾けた(予想される結果よりも低い5〜10°に計画された)。較正したピペットから五つの水滴を表面上に置き、各水滴は約48.7μlの重量を持つものと推定された。それら液滴は、ガラス試料の下に置いた紙に書いた1mmの黒い線の坂の上端に対して水滴の後縁が来るように置いた。1mm線の坂の下端に前記後縁が当たることにより決定するようにして、1mm下へ水滴の後縁が動くまで、プレートを4°/分の速度で傾けた。各水滴が1mmの移動を完了した時の角度を、滑り角度として記録し、5回の読みを平均した。
【0060】
例1
PPGインダストリーズ社から市販されている2.3mm厚の透明フロート法ガラス試料の錫側表面を2−プロパノールと脱イオン水との50体積%混合物で、ペーパータオルを用いて奇麗にした。次にそれらの表面を酸性化酸化アルミニウム研磨用媒体で、オービタル・サンダー(orbital sander)を用いて機械的に研磨した。研磨残留物を5重量%の塩酸で表面を洗浄することにより除去し、次にガラス表面を5重量%HClと2分間接触させた。2分後、それらの表面を脱イオン水で洗浄した。二つのガラス試料(試料A及びB)を、イソパラフィン系アルカンの溶媒〔エクソン社(Exxon Corporation)から市販されているイソパール(ISOPAR)L溶媒〕中に入れた1.75重量%の四塩化珪素及び0.75重量%のC17CHCHSiClの混合物2mlを含むセルロースパッドで表面を拭くことにより処理した。試料Bは、更に同じ溶媒中に入れた1.75重量%のCH(CH17SiClの混合物3mlを含むセルロースパッドで拭くことにより処理した。クロロシラン溶液による各処理後、表面をペーパータオルで拭き乾燥した。試料Aは13.5°の滑り角度を示し、試料Bは10.9°の減少した滑り角度を示した。
【0061】
例2
二つの試料(試料C及びD)を、例1のものと同様に調製した。但しクロロシランの溶液を変化させた。試料C及びDは、例1と同じ溶媒中に0.75重量%の四塩化珪素及び0.75重量%のC17CHCHSiClの混合物2mlを含むセルロースパッドで拭くことにより両方共処理した。試料Dは、更に、同じ溶媒中に入れた1.25重量%のCH(CH17SiClの混合物3mlを含むセルロースパッドで拭くことにより処理した。クロロシラン溶液による各処理後、表面をペーパータオルで拭き乾燥した。試料Cは17.4°の滑り角度を示し、試料Dは15.0°の減少した滑り角度を示した。
【0062】
例3
二つの試料(試料E及びF)を、例1のものと同様に調製した。但しクロロシランの溶液を変化させた。試料E及びFは、イソパラフィン系アルカン溶媒中に1.25重量%の四塩化珪素及び0.75重量%のC17CHCHSiClの混合物2mlを含むセルロースパッドで拭くことにより処理した。試料Fは、更に、同じ溶媒中に入れた1.75重量%のCH(CH17SiClの混合物3mlを含むセルロースパッドで拭くことにより処理した。クロロシラン溶液による各処理後、表面をペーパータオルで拭き乾燥した。試料Eは15.9°の滑り角度を示し、試料Fは12.5°の減少した滑り角度を示した。
【0063】
例4
2枚の4mm厚の透明フロート法ガラス試料(試料G及びH)の錫側表面を2−プロパノールと脱イオン水との50体積%溶液で奇麗にした。次にそれらの表面を、フェルトパッド上の酸性化酸化アルミニウム研磨用媒体で、オービタル・サンダーを用いて機械的に研磨した。研磨残留物を2分間表面上に放置し、次にその表面を脱イオン水で洗浄することにより除去した。試料Gを上に記載したイソパラフィン系溶媒中に入れた0.8重量%の四塩化珪素及び0.8重量%のC17CHCHSiClの混合物4mlを含むセルロースパッドで拭くことにより処理した。試料Hは、同じ溶媒中に入れた0.5重量%のC17CHCHSiCl及び0.5重量%のCH(CH17SiClの混合物4mlを含むセルロースパッドで拭くことにより処理した。クロロシラン溶液による各処理後、表面をペーパータオルで拭き乾燥した。試料Gの2枚のガラス試料片は平均して17.5°の滑り角度を示し、試料Hの2枚の試料片は平均して14.2°の減少した滑り角度を示した。
【0064】
前記説明で開示した概念から離れることなく、本発明に修正を行えることは当業者によって容易に認められるであろう。従って、ここに詳細に記載した特定の態様は単に例示のためであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の全広さ及びそれと同等な如何なるものでも、その全てに亙るものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明の特徴を組込んだ被覆物品の一部分の側断面図(実物大ではない)である。
【図2】図2は、基体を覆って本発明の撥水性被覆を適用するためのキットの形の被覆系の前面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシランを含む第一被覆組成物と基体表面とを接触させ、そして
前記表面を、少なくとも一種類の実質的にハロゲン化されていないアルキルシランを含む第二被覆組成物と接触させる、
ことを含む基体表面を覆って撥水性被覆を適用する方法。
【請求項2】
第一及び第二被覆組成物の少なくとも一つが、少なくとも一種類の加水分解可能な下塗り剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペルフルオロアルキルアルキルシランが、一般式(RSiR4−m−n〔式中、Rは、一般式C2q+1を有するペルフルオロアルキル部分であり、Rは、一般式・(C2s)・を有する二置換有機ラジカルであり、Rは、アルキル、ビニル、又はアルケニル部分であり、Xは、一つ以上の加水分解可能な基であり、mは、1、2、又は3であり、nは、0、1、又は2であり、m+nは4より小さく、m、n、q、及びsは整数である〕を有する化合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
qが、1〜30の範囲にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
qが、6〜18の範囲にある、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
qが、8〜12の範囲にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
sが、2〜10の範囲にある、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
sが、2〜5の範囲にある、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
sが、2〜3の範囲にある、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
Xが、例えば、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、及びアセトキシ基からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
ペルフルオロアルキルアルキルシランが、ペルフルオロアルキルエチルトリクロロシラン、ペルフルオロアルキルエチルトリメトキシシラン、ペルフルオロアルキルエチルトリアセトキシシラン、ペルフルオロアルキルエチルジクロロ(メチル)シラン、及びペルフルオロアルキルエチルジエトキシ(メチル)シランからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
加水分解可能な下塗り剤が、一般式SiZ(式中、Zは、ハロゲン、アルコキシ、及びアシルオキシ基の一つ以上である)を有するシランを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
第一組成物が、0重量%より大きく、15重量%までの範囲のペルフルオロアルキルアルキルシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第一組成物が、0.25重量%より大きく、2重量%までの範囲のペルフルオロアルキルアルキルシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第一組成物が、0重量%より大きく、5重量%までの範囲の加水分解可能な下塗り剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
第一組成物が、0.05重量%〜2重量%の範囲の加水分解可能な下塗り剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
第一組成物が、少なくともエーテル基及びヒドロキシル基の一つを実質的に含まない第一溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第一溶媒が、アルカンの混合物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
非ハロゲン化アルキルシランが、非フッ素化アルキルシランである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
非ハロゲン化アルキルシランが、一般式、RSiR4−t−u(式中、Rは、アルキル基であり、Rは、アルキル、ビニル、又はアルケニル基であり、Yは、一つ以上の加水分解可能な基であり、tは1、2、又は3であり、uは、0、1、又は2であり、t+uは4より小さい)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
が、一般式C2p+1(式中、pは、1〜30の範囲にある)を有するアルキル基である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
pが、5〜20の範囲にある、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
pが18であり、YがClである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
が、直鎖アルキル基である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
第二組成物が、0.1重量%〜20重量%の範囲の非ハロゲン化アルキルシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
第二組成物が、0.5重量%〜3重量%の範囲の非ハロゲン化アルキルシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
第二組成物が、1重量%〜2重量%の範囲の非ハロゲン化アルキルシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
第二組成物が、少なくともエーテル基及びヒドロキシル基の一つを実質的に含まない第二溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
第一及び第二組成物を、得られる撥水性被覆が0Åより大きく、100Åまでの範囲の厚さを有するように適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
撥水性被覆が、20Å〜100Åの範囲の厚さを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
撥水性被覆が、50Åに等しいか又はそれより薄い厚さを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
第一及び第二組成物を、得られる撥水性被覆が、22°に等しいか又はそれより小さい水滑り角度を与えるように適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
第一及び第二組成物を、得られる撥水性被覆が、20°より小さい水滑り角度を与えるように適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
第一及び第二組成物を、得られる撥水性被覆が、15°より小さい水滑り角度を与えるように適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
ペルフルオロアルキルアルキルシランが、第一有効鎖長を有し、非ハロゲン化アルキルシランが第二有効鎖長を有し、前記第二有効鎖長が、前記第一有効鎖長に等しいか又はそれより大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
表面を、酸溶液と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
酸溶液を、塩酸、硫酸、硝酸、及び酒石酸から選択する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
酸溶液と研磨剤材料とを含む分散物を表面に適用することによりその表面を同時に研磨及び化学的に調製することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
研磨用材料が、アルミナ、セリア、酸化鉄、ガーネット、ジルコニア、シリカ、炭化珪素、酸化クロム、軽石、及びダイヤモンドからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシラン、少なくとも一種類の加水分解可能なシラン、及び少なくとも一種類の実質的にハロゲン化されていないアルキルシランを含む少なくとも一種類の被覆組成物と基体表面とを接触させることを含む、基体表面の少なくとも一部分を覆って撥水性被覆を適用する方法。
【請求項41】
ペルフルオロアルキルアルキルシランが第一有効鎖長を有し、非ハロゲン化アルキルシランが第二有効鎖長を有し、前記第二有効鎖長が、前記第一有効鎖長に等しいか又はそれより大きい、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項1に記載の方法により製造された被覆物品。
【請求項43】
少なくとも一つの表面を有する基体;及び
前記表面の少なくとも一部分を覆って適用された被覆で、
一般式(RSiR4−m−n〔式中、Rはペルフルオロアルキル基であり、Rは、二置換有機ラジカルであり、Rは、アルキル、ビニル、又はアルケニル基であり、Xは、少なくとも一つの加水分解可能な基である〕を有するペルフルオロアルキルアルキルシラン;
一般式SiZ(式中、Zは、一つ以上の加水分解可能基である)を有する加水分解可能なシラン;及び
一般式、RSiR4−t−u(式中、Rは、アルキル基であり、Rは、アルキル、ビニル、又はアルケニル基であり、Yは、少なくとも一つの加水分解可能な基であり、tは1、2、又は3であり、uは、0、1、又は2であり、t+uは4より小さく、m、n、t、及びuは整数である)を有する実質的にフッ素化されていないアルキルシラン;
の反応生成物を含む被覆;
を含む被覆物品。
【請求項44】
非フッ素化アルキルシランの有効鎖長が、ペルフルオロアルキルアルキルシランの有効鎖長に等しいか又はそれより大きい、請求項43に記載の被覆物品。
【請求項45】
被覆物品が、22°に等しいか又はそれより小さい水滑り角度を有する、請求項43に記載の物品。
【請求項46】
被覆物品が、20°に等しいか又はそれより小さな水滑り角度を有する、請求項43に記載の物品。
【請求項47】
被覆物品が、15°に等しいか又はそれより小さな水滑り角度を有する、請求項43に記載の物品。
【請求項48】
少なくとも一つの表面を有する基体;及び
前記表面の少なくとも一部分を覆って適用された被覆で、
一般式、RSiR4−t−u(式中、Rは、アルキル基であり、Rは、アルキル、ビニル、又はアルケニル基であり、Yは、少なくとも一つの加水分解可能な基であり、tは1、2、又は3であり、uは、0、1、又は2であり、t+uは4より小さく、t及びuは整数である)を有する実質的にフッ素化されていないアルキルシラン、
を含む被覆;
を含む被覆物品で、然も、22°より小さい水滑り角度を有する被覆物品。
【請求項49】
少なくとも一つの表面を有する基体;及び
前記表面の少なくとも一部分を覆って適用された被覆で、
第一有効鎖長を有するペルフルオロアルキルアルキルシラン;及び
第二有効鎖長を有する実質的にフッ素化されていないアルキルシラン;
を含み、然も、前記第二有効鎖長が、前記第一有効鎖長より長い被覆;
を含む被覆物品。
【請求項50】
基体を覆って撥水性被覆を適用するための被覆キットにおいて、
少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシランを含む第一組成物;及び
非フッ素化アルキルシランを含む第二組成物;
を含み、然も、前記第一又は第二の少なくとも一方の組成物が、少なくとも一種類の加水分解可能なシランを更に含む、被覆キット。
【請求項51】
ペルフルオロアルキルアルキルシランが第一有効鎖長を有し、非フッ素化アルキルシランが第二有効鎖長を有し、前記第二有効鎖長が、前記第一有効鎖長より長い、請求項50に記載の被覆キット。
【請求項52】
少なくとも一種類のペルフルオロアルキルアルキルシラン、少なくとも一種類の加水分解可能な下塗り剤、及び少なくとも一種類の実質的にフッ素化されていないアルキルシランを含む少なくとも一種類の被覆組成物を含む被覆キット。
【請求項53】
下塗り剤が、シラン及びシロキサンの少なくとも一方を含む、請求項52に記載の被覆キット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−512193(P2006−512193A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564012(P2004−564012)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/041124
【国際公開番号】WO2004/058418
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(399074983)ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド (60)
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
【Fターム(参考)】