説明

撮像システムおよびプログラム

【課題】複数枚の画像を位置合わせするのに用いる画像変位量を高い精度で推定することができ、高解像度画像の生成等が可能な撮像システム等を提供する。
【解決手段】本発明に係る撮像システムは、第1段階の撮影指示が入力された後に第2段階の撮影指示が入力されるシャッターボタン104と、第1段階の撮影指示が入力されてから第2段階の撮影指示が入力されるまでの間に複数枚の画像を撮影する前撮影処理を行って、第2段階の撮影指示が入力された後に複数枚の画像を撮影する後撮影処理を行う撮影手段と、第2段階の指示が入力される前後の所定の期間である規定期間に撮影されたいずれかの画像を基準画像として、前撮影処理および後撮影処理において撮影された複数枚の画像と基準画像との間の画像変位量を推定する画像変位量推定部20bとを備えることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システムおよびプログラムに関し、特に複数枚の画像を撮影して画像間の画像変位量を推定する撮像システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子カメラ(デジタルカメラ)では、使用者がシャッターボタンを半押ししているときに通常よりも高解像の画像を複数枚撮影して内蔵バッファメモリに記録しておき、シャッターボタンを全押ししたときに、全押しする直前の半押し中に撮影された高解像度画像を本撮影画像としてメモリーパックに記録して、シャッタータイミングにおける液晶表示パネルの表示画像と本撮影画像とのタイムラグを低減するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また最近では、複数枚の画像間の画像変位量をサブピクセルマッチングによって推定して複数枚の低解像度画像を位置合わせし(例えば、特許文献2参照)、超解像処理によって一枚の高解像度画像を生成する技術が開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−94288号公報(第1頁、図3)
【特許文献2】国際公開第04/63991号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/68862号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の電子カメラでは(例えば、特許文献1参照)、全押しする直前に撮影された高解像度画像を本撮影画像として記録しているものの、本撮影画像の解像度はCCD等の撮像素子の画素数によって制限されるという問題点があった。
【0005】
また、高解像度画像を生成するために複数枚の低解像度画像を位置合わせする場合には(例えば、特許文献2、3参照)、位置合わせの基準となる基準画像のフレームタイミングから撮影時間が離れるほど画像の画像変位量が大きくなり、適切な位置合わせを行うことが困難になるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、複数枚の画像を位置合わせするのに用いる画像変位量を高い精度で推定することができ、高解像度画像の生成等が可能な撮像システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像システムは、画像を撮影して、画像の画像データを生成する撮像システムであって、第1段階の撮影指示が入力された後に第2段階の撮影指示が入力される撮影指示入力手段と、第1段階の撮影指示が入力されてから第2段階の撮影指示が入力されるまでの間に複数枚の画像を撮影する前撮影処理を行って、第2段階の撮影指示が入力された後に複数枚の画像を撮影する後撮影処理を行う撮影手段と、第2段階の指示が入力される前後の所定の期間である規定期間に撮影されたいずれかの画像を基準画像として、前撮影処理および後撮影処理において撮影された複数枚の画像と基準画像との間の画像変位量を推定する画像変位量推定手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る撮像システムでは、第2段階の撮影指示が入力される前に前撮影処理を行って、第2段階の撮影指示が入力された後に後撮影処理を行い、第2段階の指示が入力される前後の所定の期間である規定期間に撮影されたいずれかの画像を基準画像として、前撮影処理および後撮影処理において撮影された複数枚の画像と基準画像との間の画像変位量を推定するため、複数枚の画像を位置合わせするための画像変位量を高い精度で推定することができ、高解像度画像の生成等が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態1に係る撮像システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る撮像システムの構成を示すブロック図である。なお図1には、撮像システムの例として静止画像を撮影する電子スチルカメラ(デジタルスチルカメラ)を示しているが、例えば静止画像の他に動画を撮影することのできる電子カメラ(デジタルカメラ)等であってもよい。また、撮像システムの構成は図1に示すものに限定されず、必要に応じて他の構成要素を追加したり、不必要な構成要素を省略することができる。
【0010】
本実施形態に係る撮像システムは、絞り1aを内包するレンズ系1、分光ハーフミラー系3、シャッター4、ローパスフィルタ5、CCD(Charge Coupled Devices)撮像素子6、A/D変換回路7、切替部8、AE(Automatic Exposure)用フォトセンサー9、AF(AutoFocus)モーター10、撮像制御部11、第一画像処理部12、バッファメモリ13、圧縮部14、メモリーカードI/F(インターフェース)部15、メモリーカード16、シャッターボタン判定部17、シャッターボタン18、操作表示部19、第二画像処理部20を備える。なお、レンズ系1、分光ハーフミラー系3、シャッター4、ローパスフィルタ5、CCD撮像素子6、A/D変換回路7、切替部8、AE用フォトセンサー9、AFモーター10、撮像制御部11、第一画像処理部12、バッファメモリ13、圧縮部14等は、後に説明する前撮影処理および後撮影処理を行う撮影手段を構成する。
【0011】
絞り1aを内包するレンズ系1、分光ハーフミラー系3、シャッター4、ローパスフィルタ5、CCD撮像素子6は、光軸に沿って配置されている。なお、本実施形態1ではCCD撮像素子6として単板式のCCD撮像素子を使用するものとするが、例えばCCD撮像素子6の代わりにCMOS撮像素子等を用いてもよい。分光ハーフミラー系3から分岐した光束はAE用フォトセンサー9に導かれる。レンズ系1には、合焦作業時にレンズ系の一部を移動するためのAFモーター10が接続されている。CCD撮像素子6からの信号は、A/D変換回路7、切換部8および第一画像処理部12を介してバッファメモリ13へ入力されるか、または第一画像処理部12を経由せずに切換部8からバッファメモリ13へ直接入力される。
【0012】
バッファメモリ13は、圧縮部14、第二画像処理部20との間で画像データの入出力が可能であり各処理のワークバッファとしても使用される。バッファメモリ13に保存された画像データは、メモリーカードI/F部15を介して、脱着可能なメモリーカード16へ入力され記録される。
【0013】
AE用フォトセンサー9からの信号は撮像制御部11へ入力されており、撮影制御部11は、AE用フォトセンサー9からの信号に基づいて絞り1aを制御すると共に、AFモーター10、CCD撮像素子6、切替部8を制御する。また、シャッターボタン18の状態をシャッターボタン判定部17が判定し撮像制御部11へ入力する。さらに、操作表示部19からの信号も撮像制御部11へ入力される。
【0014】
第二画像処理部20は、画像変位量推定部20a、高解像度化処理部20bを備えている。また第二画像処理部20は、バッファメモリ13との間で画像データの入出力が可能であり、さらにメモリーカードI/F部15を介してメモリーカード16との間で画像データの入出力が可能となっている。
【0015】
図2は、本発明の実施形態1に係る撮像システムの外観構成を示す背面図である。本実施形態に係る撮像システムは電子スチルカメラであり、カメラ本体100と、カメラ本体100に備えられた電源スイッチ101、液晶表示パネル102(操作表示部19)、操作ボタン103、シャッターボタン104(シャッターボタン18)とを有している。
【0016】
図3は、本発明の実施形態1に係る撮像システムで行われる処理を示すフローチャートである。本実施形態に係る撮像システムは、後に説明する高解像度化処理(S111)に必要となる複数枚の画像を得るため、撮影枚数設定(S101)で設定した枚数分の画像を撮影、記録する。使用者によって撮影枚数設定(S101)された枚数を元に前後撮影規定枚数決定処理(S102)を行って、後に説明する前撮影処理(S107)と後撮影処理(S109)において撮影、記録する画像の枚数を決定する。
【0017】
図4は、前後撮影規定枚数決定処理(S102)の内容を示すフローチャートである。ここで、前後撮影規定枚数決定処理(S102)について説明する。図4に示すように、撮影枚数設定(S101)で設定された枚数が複数枚かどうかを判定し(S201)、1枚なら処理を終了し、複数枚なら前撮影処理(S107)で撮影、記録する前撮影枚数と後撮影処理(S109)で撮影、記録する後撮影枚数を以下の式(1)、式(2)で計算し(S202、S203)、処理を終了する。
前撮影枚数=α×(撮影枚数/(α+β))・・・(1)
後撮影枚数=撮影枚数 − 前撮影枚数・・・(2)
本実施形態では、式(1)におけるα、βは、予め設定されているものとする。なお、撮影枚数設定(S101)において、前撮影枚数と後撮影枚数を直接的に指定するように構成することもできる。また、撮影枚数設定(S101)において設定する撮影枚数や、α、βの値を、ユーザーが撮影しようとするシーンに応じて設定しておくこともできる。例えば、被写体の動きが激しいシーンを撮影する旨を操作ボタン103などの操作でユーザーが指示したとき等には、撮影枚数が多くなるように、撮影枚数を設定したり、αを比較的大きく設定したりすることができる。
【0018】
このように前後撮影規定枚数決定処理(S102)を行った後、バッファメモリ13等に記録されている前後撮影記録枚数を0枚に初期化(S103)し、シャッターボタン104の状態判定を行う(S104)。シャッターボタン104が全押し状態なら通常の1枚撮影を行い(S113)、撮影された画像の画像データを記録(S112)して終了する。シャッターボタン104が半押し状態ならAF制御(S105)を行う。その後、撮影枚数が複数枚かどうかを判定して(S106)、撮影枚数が複数枚の場合には前撮影処理(S107)において複数枚の画像を撮影、記録する。
【0019】
図5は、前撮影処理(S107)の内容を示すフローチャートである。ここで、前撮影処理(S107)について説明する。図5に示すように、まず画像の1枚撮影を行って撮影された画像の画像データをバッファメモリ13に循環記録(S301)する。ここで循環記録とは、古い画像の画像データを新しい画像の画像データで上書きしながら所定枚数分の画像の画像データ、例えば前後撮影規定枚数決定処理(S102)で決定された前撮影枚数分の画像データを循環的に記録することである。なおバッファメモリ13は、前撮影処理(S107)において撮影される複数枚の画像のうち所定枚数分の画像の画像データを記録できる記憶領域を有しており、例えば、既に所定枚数分の画像の画像データが記録されている場合には、記録されている画像データの中で一番古い画像データから上書きすることにより画像データを循環的に記録するようになっている。これにより、メモリを節約することが可能となる。
【0020】
その後、前撮影記録枚数をカウントアップして(S302)、図3の前後撮影規定枚数決定処理(S102)で決定した前撮影枚数とカウントアップした前撮影記録枚数が同じになったかどうかを判定(S303)し、同じになるまで1枚撮影と循環記録(S301)、前撮影記録枚数カウントアップ(S302)を繰り返す。前撮影枚数と前撮影記録枚数が同じになったら、後撮影準備完了通知(S304)を使用者に通知する。通知方法としては、図2の液晶表示パネル102に完了の通知を表示しても良いし、例えば音声を使って通知しても良い。
【0021】
このように前撮影処理(S107)を行った後、シャッターボタン104(シャッターボタン18)の状態を判定(S108)し、半押し状態なら前撮影処理(S107)を繰り返し、全押し状態なら後撮影処理(S109)において複数枚の画像を撮影、記録する。それ以外の状態、例えば使用者がシャッターボタン104を離している場合には、前後撮影記録枚数初期化処理(S103)へ戻る。
【0022】
図6は、後撮影処理(S109)の内容を示すフローチャートである。ここで、後撮影処理(S109)について説明する。本実施形態では、後撮影処理(S109)においてまずm枚の撮影(S401)を行うが、このm枚の撮影のタイミングは使用者がシャッターボタン104を全押しした直後のタイミングである。本実施形態では、m=1の場合で説明するが、撮像素子の性能や、上述の撮影しようとするシーンに応じてm=2枚以上とすることもできる。また、操作ボタン103などの操作によって、ユーザーがmの値を指定する構成にすることもできる。1枚目の撮影(S401)を行った後、後撮影記録枚数をカウントアップ(S402)して、前後撮影規定枚数決定処理(S102)で決定した後撮影枚数とカウントアップした後撮影記録枚数が同じになったかどうかを判定し(S403)、1枚撮影(S405)、後撮影記録枚数カウントアップ(S402)を繰り返す。この際、例えばバッファメモリ13の記憶領域を前撮影処理用と後撮影処理用に割り当てておき、それぞれの撮影処理に割り当てられた記憶領域を使用するようにする。
【0023】
また本実施形態では、後撮影処理(S109)において全押し直後のm枚(上述のように、本実施形態ではm=1としている)の撮影(S401)を行った後、シャッターボタン104が全押しされてから所定の時間tが経過したかどうかを判定(S404)し、所定の時間tが経過するまで画像の撮影を停止する。S404においてシャッターボタン104が全押しされてから所定の時間tが経過したと判定された場合には、2枚目以降の画像の撮影(S405)を開始する。この撮影を停止する所定の時間tは、予め設定されており、所定の時間tは、例えばシャッターボタン18が全押しされる際の手ぶれ量が大きいと考えられる時間として設定することができる。したがって、所定の時間tは、撮像素子の性能や、上述の撮影しようとするシーンに応じて、適当な値が設定される。
【0024】
このように後撮影処理(S109)を行った後に、画像変位量推定処理(S110)、高解像度化処理(S111)を行って、高解像度化処理(S111)によって生成された高解像度画像を画像記録(S112)し、処理を終了する。なお画像変位量推定処理(S110)、高解像度化処理(S111)については、後に説明する。
【0025】
ここで、本実施形態に係る撮像システムで行われる上述の処理について、画像信号(画像データ)の流れに沿ってさらに詳しく説明する。まず、使用者が電源スイッチ101をON状態にしてシャッターボタン104を押すことなどにより、撮像制御部11は、絞り1a、シャッター4、AFモーター10等を制御して画像の撮影を行う。画像の撮影では、CCD撮像素子6からの画像信号がA/D変換回路7にてデジタル信号化され、第一画像処理部12により周知のホワイトバランス、強調処理、補間処理などがなされたRGB(赤、緑、青)の画像信号として、バッファメモリ13に出力される。
【0026】
図3のS104においてシャッターボタン104が半押しされている場合にAF制御(S105)を行うが、このときの合焦位置は、CCD撮像素子6からの出力信号をA/D変換回路7にてデジタル信号化し、単板状態の画像信号から(例えば、G成分のみを用いて)輝度信号を算出して、その輝度信号中のエッジ強度から求められる。すなわち、AFモーター10にてレンズ系1の合焦位置を段階的に変えることで、エッジ強度が最大となる合焦位置を推定する。
【0027】
そしてAFをロックした後、シャッターボタン104が半押しされている間、前撮影処理(S107)を行い、例えばバッファメモリ13に確保された前撮影枚数分の記憶領域を用いて画像データの循環記録を行う。その際、A/D変換回路7にてデジタル信号化された画像信号は、第一画像処理部12を介してバッファメモリ13に記録される。前撮影枚数分の画像データがバッファメモリ13に記録されると、撮像制御部11が後撮影準備完了通知を出すための信号を出力し、例えば液晶表示パネル102に後撮影準備完了通知が表示される。
【0028】
図7は、後撮影準備完了通知の例を示す図である。図7に示す例では、液晶表示パネル102に「本撮影OK!」という後撮影準備完了通知106を表示することにより、使用者に通知を行うようになっている。
【0029】
後撮影準備完了通知の後、使用者がシャッターボタン104を全押しすると撮像制御部11が後撮影処理(S109)を行う。後撮影処理(S109)では最初に撮影された一枚目の画像の画像信号を、第一画像処理部12を介してバッファメモリ13へ保存し、撮像制御部11でシャッターボタン104が全押しされてから所定の時間tが経過したかどうかを判定する(S404)。シャッターボタン104が全押しされてから所定の時間tが経過するまでは画像の撮影を停止して、所定の時間tが経過したら後撮影処理(S109)における二枚目以降の撮影を開始し、二枚目以降の画像の画像信号も同様に第一画像処理部12を介してバッファメモリ13に保存される。バッファメモリ13に保存された画像データは圧縮部14でJPEGなどの画像圧縮が施され、バッファメモリ13をワークバッファとして圧縮された画像データがバッファメモリ13からメモリーカードI/F部15を介してメモリーカード16に記録される。
【0030】
なお第二画像処理部20は、メモリーカードI/F部15を介してメモリーカード16との間で画像データの入出力が可能となっており、またバッファメモリ13との間でも画像データの入出力が可能となっている。このためバッファメモリ13が大容量の場合には、圧縮された画像データや圧縮される前の画像データをメモリーカード16へ記録せずこれらの画像データをバッファメモリ13に記録しておき、高解像度化処理部20bで生成された高解像度画像の画像データのみをバッファメモリ13からメモリーカード16へ記録しても良い。
【0031】
図8は、本発明の実施形態1に係る撮像システムの処理シーケンスを示す図である。本実施形態では上述のように、シャッターボタン104が半押しされてからAFロックした後、例えば図8のAに示す期間中、前撮影処理(S107)を行いバッファメモリ13に前撮影枚数分の画像データを確保しながら循環記録する。そしてシャッターボタン104が全押しされた直後に、後撮影処理(S109)における一枚撮影(S401)を行った後、例えば図8のBに示す期間中、画像の撮影を停止する。それから、後撮影処理(S109)における二枚目以降の撮影を行い、バッファメモリ13に後撮影枚数分の画像データを記録する。なお図8のCは、後に説明する画像変位量推定処理(S110)に用いられる画像データが記録される期間を示している。図8に示す処理を行った後、高解像度化処理(S111)に必要な枚数分の画像データを用いて画像変位量推定処理(S110)、高解像度化処理(S111)を行う。
【0032】
ここで、第二画像処理部20で行われる画像変位量推定処理(S110)、高解像度化処理(S111)について説明する。第二画像処理部20では、はじめに画像変位量推定部20aにおいて画像間の画像変位量(画素位置対応)を推定した後、この画素変位量と前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)で得られた画像データを用いて高解像度化処理部20bにおいて高解像度画像を生成する。
【0033】
まず、画像変位量推定処理(S110)について説明する。画像変位量推定部20aは、シャッターボタン104が全押しされる前後の所定の期間である規定期間に撮影されたいずれかの画像を基準画像として、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)において撮影された複数枚の画像と基準画像との間の画像変位量を推定する。なお本実施形態では、シャッターボタン104が全押しされた直後に撮影された画像(図8の1枚撮影時の画像)を基準画像とする。この場合、上記の規定期間はシャッターボタン104が全押しされてから最初の画像が撮影されるまでの期間である。
【0034】
図9は、画像変位量推定部20aで行われる画像変位量推定処理(S110)のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、図9に示すアルゴリズムの流れに添って画像変位量推定処理(S110)の説明を行う。まず、画像変位量推定の基準となる画像を基準画像として1枚読み込む(S501)。本実施形態では、シャッターボタン104が全押しされた直後に撮影された画像が基準画像となる。次に、基準画像を複数の画像変位パラメータで変形させ、画像列を生成する(S502)。このとき、例えば基準画像を所定の範囲で並進、回転させて画像列を生成する。それから、基準画像との間の画像変位量推定を行う参照画像として、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)において撮影された複数枚の画像のうち1枚の画像を読み込む(S503)。そして、領域ベースマッチング手法等のピクセルマッチング手法を用いて基準画像と参照画像との間で大まかな画素位置の対応付けを行う(S504)。これにより、基準画像と参照画像との間の画像変位量がピクセル(画素)レベルで求められる。
【0035】
次に、S502で基準画像を変形することにより生成された画像列と参照画像との間の類似度値を算出する(S505)。この類似度は、例えばSSD(Sum of Squared Difference)やSAD(Sum of Absolute Difference)等の画像列と参照画像との差分として求めることができる。そしてS502において画像列を生成した際の画像変位パラメータと、S505で算出した類似度値との関係を用いて、離散的な類似度マップを作成する(S506)。それから、S506で作成した離散的な類似度マップを補完して連続的な類似度曲線を求め、この連続的な類似度曲線において類似度値の極値を探索する(S507)。離散的な類似度マップを補完して連続的な類似度曲線を求める方法としては、例えばパラボラフィッティングやスプライン補間法がある。この連続的な類似度曲線において類似度値が極値になるときの画像変位パラメータが、基準画像と参照画像との間の画像変位量として推定される。
【0036】
その後、高解像度化処理(S111)で用いられるすべての画像について画像変位量推定が行われたかどうかを判定し(S508)、すべての画像について画像変位量推定が行われていない場合には、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)において撮影された複数枚の画像のうち他の画像を次の画像として(S509)、S503からS508までの処理を繰り返す。なお本実施形態では、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)において撮影されバッファメモリ13に記録されたすべての画像について画像変位量推定を行うものとするが、バッファメモリ13に記録された複数枚の画像の一部についてのみ画像変位量推定を行うようにしてもよい。S508において、高解像度化処理(S111)で用いられるすべての画像について画像変位量推定が行われたと判定された場合には処理を終了する。
【0037】
図10は、画像変位量推定処理(S110)のS507において求められた類似度曲線の例を示す図である。図10において、縦軸は類似度値を、横軸は図9のS502において画像列を生成した際の画像変位パラメータを示している。図10の例では、画像列と参照画像との間の類似度がSSDで算出されており、類似度曲線が離散的な類似度マップをパラボラフィッティングで補完することにより求められているため、類似度値が小さいほど類似度が高くなる。このように、離散的な類似度マップを補完して連続的な類似度曲線を求め、その極値(図10の例では極小値)を探索することにより、基準画像と参照画像との間の画像変位量をサブピクセルレベルで求めることができる。
【0038】
このように、画像変位量推定部20aで推定された画像変位量と、画像変位量を求めた画像の画像データを高解像度化処理部20bへ転送し、基準画像に対して超解像処理を用いた高解像度化処理(S111)を行う。
【0039】
図11は、高解像度化処理部20bで行われる高解像度化処理(S111)のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、図11に示すアルゴリズムの流れに添って超解像処理を用いた高解像度化処理(S111)の説明を行う。まず、基準画像の画像データと画像変位量推定処理(S110)において画像変位量が推定された複数枚の画像の画像データを読み込む(S601)。次に、基準画像を高解像度化処理のターゲット画像として、このターゲット画像に対しバイリニア補間やバイキュービック補間等の補完処理を行って初期画像z0を作成する(S602)。なおこの補間処理は、場合により省略することができる。
【0040】
それから、画像変位量推定部20aで推定された画像変位量を用いて、ターゲット画像と画像変位量推定処理(S110)において画像変位量が推定された画像との間の画素対応関係を明らかにし、ターゲット画像の拡大座標を基準とする座標空間において重ねあわせ処理を行って、レジストレーション画像yを生成する(S603)。なおここでyは、レジストレーション画像の画像データを表すベクトルである。このレジストレーション画像yを生成する方法の詳細については、「田中・奥富、再構成型超解像処理の高速化アルゴリズム、Computer Vision and Image Media(CVIM) Vol.2004、No.113、pp.97-104 (2004-11)」に開示されている。S603における重ねあわせ処理は、例えば画像変位量推定処理(S110)において画像変位量が推定された複数枚の画像の各ピクセル値と、ターゲット画像の拡大座標との間で画素位置の対応付けを行い、各ピクセル値をターゲット画像の拡大座標の最も近い格子点上においていくことで行われる。このとき、同一の格子点上に複数のピクセル値をおく場合があるが、その場合にはそれらのピクセル値に対して平均化処理を実施する。
【0041】
次に、光学伝達関数(OTF、Optical Transfer Function)、CCDアパーチャ(CCD開口)等の撮像特性を考慮した点広がり関数(PSF、Point Spread Function)を求める(S604)。このPSFは、以下の式(3)における行列Aに反映され、例えば簡易的にGauss関数を用いることができる。それから、S603で生成されたレジストレーション画像yとS604で求められたPSFを用いて、以下の式(3)で表される評価関数f(z)の最小化を行い(S605)、f(z)が最小化されたかどうかを判定する(S606)。
【0042】
【数1】

【0043】
式(3)において、yはS603で生成されたレジストレーション画像の画像データを表す列ベクトル、zはターゲット画像を高解像度化した高解像度画像の画像データを表す列ベクトル、AはPSF等を含めた撮像システムの特性をあらわす画像変換行列である。また、g(z)は画像の滑らかさや画像の色の相関等を考慮した正則化項であり、λは重み係数である。式(3)で表される評価関数f(z)の最小化には、例えば最急降下法を用いることができる。最急降下法を用いる場合には、f(z)をzの各要素で偏微分した値を計算して、それらの値を要素とするベクトルを生成する。そして以下の式(4)に示すように、偏微分した値を要素とするベクトルをzに付加することにより、高解像度画像zを更新させていき(S607)、f(z)が最小となるzを求める。
【0044】
【数2】

【0045】
式(4)において、znはn回目の更新を行った高解像度画像の画像データを表す列ベクトルであり、αは更新量の歩み幅である。なお、最初のS605の処理では、高解像度画像zとしてS602で求められた初期画像z0を用いることができる。S606においてf(z)が最小化されたと判定された場合には処理を終了し、そのときのznを最終的な高解像度画像としてメモリーカード16等に記録する。このようにして、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)において撮影された複数枚の画像よりも高解像の高解像度画像を得ることができる。
【0046】
図12は、高解像度化処理部20bの構成例を示すブロック図である。ここで、高解像度化処理部20bで行われる超解像処理を用いた高解像度化処理(S111)についてさらに説明する。図12に示す高解像度化処理部20bは、補間拡大部201、画像蓄積部202、PSFデータ保持部203、畳込み積分部204、レジストレーション画像生成部205、画像比較部206、畳込み積分部207、正則化項演算部208、更新画像生成部209、収束判定部210から構成される。
【0047】
はじめに、シャッターボタン104が全押しされる前後の所定の期間である規定期間に撮影された基準画像を補間拡大部201に与え、基準画像の補間拡大を行う(図11のS602に対応)。ここで用いられる補間拡大の方法としては、例えばバイリニア補間やバイキュービック補間などが挙げられる。補間拡大部201において補間拡大された基準画像は、例えば初期画像z0として画像蓄積部202に送られ、ここに蓄積される。次に、補間拡大された基準画像は畳込み積分部204に与えられ、PSFデータ保持部203により与えられるPSFデータ(式(3)の画像変換行列Aに相当)との間で畳込み積分が行われる。
【0048】
また、基準画像および画像変位量推定処理(S110)において画像変位量が推定された複数枚の参照画像は、レジストレーション画像生成部205に与えられ、画像変位量推定部20aで求められた画像変位量を元に基準画像の拡大座標を基準とする座標空間で重ねあわせ処理を行うことにより、レジストレーション画像yが生成される(図11のS603に対応)。レジストレーション画像生成部205における重ねあわせ処理は、例えば画像変位量推定処理(S110)において画像変位量が推定された複数枚の画像の各ピクセル値と、基準画像の拡大座標との間で画素位置の対応付けを行い、各ピクセル値を基準画像の拡大座標の最も近い格子点上においていくことで行われる。このとき、同一の格子点上に複数のピクセル値をおく場合があるが、その場合にはそれらのピクセル値に対して平均化処理を実施する。
【0049】
畳込み積分部204において畳込み積分された画像データ(ベクトル)は画像比較部206に送られ、レジストレーション画像生成部205において生成されたレジストレーション画像yとの間で、同一のピクセル位置におけるピクセル値の差分を算出することにより、差分画像データ(式(3)の(y−Az)に相当)が生成される。画像比較部206において生成された差分画像データは畳込み積分部207に与えられ、PSFデータ保持部203により与えられるPSFデータとの間で畳込み積分が行われる。畳込み積分部207は、例えば式(3)における画像変換行列Aの転置行列と差分画像データを表す列ベクトルとを畳込み積分することにより、式(3)の‖y−Az‖2をzの各要素で偏微分したベクトルを生成する。
【0050】
また、画像蓄積部202に蓄積された画像は正則化項演算部208に与えられ、式(3)における正則化項g(z)が求められると共に、正則化項g(z)をzの各要素で偏微分したベクトルが求められる。正則化項演算部208は、例えば、画像蓄積部202に蓄積された画像データに対して、RGBからYCrbの色変換処理を行い、そのYCrb成分(輝度成分と色差成分)に対して周波数高域通過フィルタ(ラプラシアンフィルタ)を畳込み積分したベクトルを求める。そして、このベクトルの二乗ノルム(長さの二乗)を正則化項g(z)として、g(z)をzの各要素で偏微分したベクトルを生成する。Cr、Cb成分(色差成分)にラプラシアンフィルタを掛けると偽色の成分が抽出されるため、正則化項g(z)を最小化することにより偽色の成分を除去することができる。このため、式(3)に正則化項g(z)を含めることで「一般に画像の色差成分は滑らかな変化である」という画像の先験情報を用いることとなり、色差を抑制した高解像度画像を安定して求めることが可能となる。
【0051】
畳込み積分部207で生成された画像データ(ベクトル)、画像蓄積部202に蓄積された画像データ(ベクトル)、正則化項演算部208で生成された画像データ(ベクトル)は、更新画像生成部209に与えられる。更新画像生成部209では、これらの画像データ(ベクトル)が式(3)、式(4)に示すλ、α等の重み係数を乗じて加算され、更新された高解像度画像が生成される(式(4)に対応)。
【0052】
それから、更新画像生成部209において更新された高解像度画像は、収束判定部210へ与えられ、収束判定が行われる。この収束判定では、収束にかかった繰り返し演算回数が一定回数よりも多くなった場合に高解像度画像の更新作業が収束したと判断しても良いし、また、過去に更新された高解像度画像を記録しておき、現在の高解像度画像との差分を取って、その更新量が一定の値よりも少ないと判断された場合に高解像度画像の更新作業が収束したと判断しても良い。
【0053】
収束判定部210において更新作業が収束したと判断された場合には、更新された高解像度画像は最終的な高解像度画像として外部へ出力される。更新作業が収束していないと判断された場合には、更新された高解像度画像は画像蓄積部202へ与えられ、次回の更新作業に利用される。この高解像度画像は、次回の更新作業のために畳込み積分部204、正則化項演算部208へ与えられる。以上の処理を繰り返し、更新画像生成部209で高解像度画像を更新していくことで、良好な高解像度画像を得ることができる。
【0054】
本実施形態では、第1段階の撮影指示としてシャッターボタン104が半押しされている間に前撮影処理(S107)を行って、第2段階の撮影指示としてシャッターボタン104が全押しされた後に後撮影処理(S109)を行い、シャッターボタン104が全押しされた直後に撮影された画像を基準画像として、参照画像と基準画像との間の画像変位量を推定するため、参照画像と基準画像との間の画像変位量を高い精度で推定することができ、良好な高解像度画像の生成が可能となる。
【0055】
また、後撮影処理(S109)において全押し直後の1枚撮影(S401)を行った後に、手ぶれ量が大きいと考えられる時間が経過するまで画像の撮影を停止することにより、参照画像と基準画像との間の画像変位量をさらに高い精度で推定することが可能となる。
【0056】
(実施形態2)
図13は、本発明の実施形態2に係る撮像システムにおいて基準画像を自動的に決定する方法の例を示す図である。なお、本実施形態に係る撮像システムの構成および処理は、以下に示す点を除いて実施形態1に係る撮像システムと同様であり、異なる部分についてのみ説明する。
【0057】
図13(a)では、シャッターボタン104が全押しされる前後に所定の枚数の画像が撮影される期間として規定期間が決められており、この規定期間に撮影されたいずれかの画像を基準画像として、複数枚の参照画像と基準画像との間の画像変位量を推定し、後の高解像度化処理(S111)等を行う。なお図13(a)の例では、前撮影枚数が30枚、後撮影枚数が30枚であり、シャッターボタン104が全押しされる前10枚と後10枚の合計20枚が撮影される期間を規定期間とし、この20枚の中から基準画像を決定するようになっている。
【0058】
図13(b)では、図13(a)と同様にシャッターボタン104が全押しされる前後に所定の枚数の画像が撮影される期間として規定期間が決められているが、後撮影枚数が6枚しかないため、シャッターボタン104が全押しされる前14枚と後6枚の合計20枚が撮影される期間を規定期間とし、この20枚の中から基準画像を決定するようになっている。
【0059】
図13(c)では、シャッターボタン104が全押しされる前後の所定の長さの時間として規定期間が決められており、この規定期間に撮影されたいずれかの画像を基準画像として、複数枚の参照画像と基準画像との間の画像変位量を推定し、後の高解像度化処理(S111)等を行う。なお図13(c)の例では、前撮影処理(S107)を行う時間が1秒、後撮影処理(S109)を行う時間が1秒であり、シャッターボタン104が全押しされる前1/3秒と後1/3秒の合計2/3秒を規定期間とし、この2/3秒の間に撮影された画像の中から基準画像を決定するようになっている。ここで例えば、撮像システムのフレームレートが30fpsの場合、1/3秒の間に撮影される画像は10枚となる。
【0060】
図13(d)では、図13(c)と同様にシャッターボタン104が全押しされる前後の所定の長さの時間として規定期間が決められているが、前撮影処理(S107)を行う時間が0.2秒しかないため、シャッターボタン104が全押しされる前0.2秒と後((1/3−0.2)+1/3)秒の合計2/3秒を規定期間とし、この2/3秒の間に撮影された画像の中から基準画像を決定するようになっている。なお効果については、実施形態1に係る撮像システムと同様である。
【0061】
(実施形態3)
図14は、本発明の実施形態3に係る撮像システムの処理シーケンスを示す図である。なお、本実施形態に係る撮像システムの構成および処理は、以下に示す点を除いて実施形態1や実施形態2に係る撮像システムと同様であり、異なる部分についてのみ説明する。
【0062】
本実施形態では図14に示すように、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)において撮影された画像の画像データを、画像処理の施されていないローデータ(RAWデータ)としてバッファメモリ13に記録する。なおバッファメモリ13は、前撮影処理(S107)において撮影された画像の画像データをRAWデータとして循環記録(実施形態1参照)するものとする。また本実施形態では、切替部8が前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)において撮影された画像の画像データをRAWデータのままバッファメモリ13に直接記録する。これにより、高解像度化処理部20bにおいて高解像度化処理(S111)に適したRAWデータを用いることができる。その他の効果については、実施形態1や実施形態2に係る撮像システムと同様である。
【0063】
(実施形態4)
図15は、本発明の実施形態4に係る撮像システムにおける高解像度化処理について説明するための図である。なお、本実施形態に係る撮像システムの構成および処理は、以下に示す点を除いて実施形態1や実施形態2や実施形態3に係る撮像システムと同様であり、異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
本実施形態では、レジストレーション画像yを生成する代わりに、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)において撮影された複数枚の画像の画像データykを用いて高解像度化処理(実施形態1の高解像度化処理S111に相当)を行い、その際、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)において撮影された複数枚の画像に対して重み付けを行う。本実施形態における評価関数f(z)は、以下の式(5)で表される。
【0065】
【数3】

【0066】
式(5)において、ykは前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)においてk番目に撮影された画像(低解像度画像)の画像データを表す列ベクトル、akは各低解像度画像に対する重み係数、zはターゲット画像を高解像度化した高解像度画像の画像データを表す列ベクトル、Akは画像間モーション、PSF等を含めた撮像システムの特性をあらわす画像変換行列である。本実施形態では、Akが画像変位量推定処理(S110)で推定された画像変位量を用いて算出されており、ターゲット画像と低解像度画像の位置合わせができるようになっている。また、g(z)は画像の滑らかさや画像の色の相関等を考慮した正則化項であり、λは重み係数である。本実施形態でも実施形態1と同様に、最急降下法等を用いて、式(5)で表される評価関数f(z)が最小となる高解像度画像zを求める。
【0067】
本実施形態では図15に示すように、シャッターボタン104が全押しされた時点(基準画像が撮影される直前)により近い時点で撮影された画像に対してより高い重み付けを行うようになっている。例えば、低解像度画像のnフレーム目(基準画像)を高解像度化する場合には、nフレーム目に近いフレームほど重み係数akの値を大きくする。なお重み係数akの値は、図15に示すようにガウス分布的に重みを変化させてもよいし、基準画像から近い所定の範囲内のフレームに他のフレームよりも大きい一定の重みをつけるようにしてもよい。
【0068】
本実施形態では、基準画像が撮影される時点により近い時点で撮影された画像に対してより高い重み付けを行うようになっているため、類似度が高いと考えられる画像を用いて良好な高解像度画像を生成することが可能となる。その他の効果については、実施形態1や実施形態2や実施形態3に係る撮像システムと同様である。
【0069】
(実施形態5)
図16は、本発明の実施形態5に係る撮像システムの処理シーケンスを示す図である。なお、本実施形態に係る撮像システムの構成および処理は、以下に示す点を除いて実施形態1や実施形態2や実施形態3や実施形態4に係る撮像システムと同様であり、異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
本実施形態では、後撮影処理(実施形態1のS109)において画像の撮影を停止せず、前撮影処理(実施形態1のS107)と同様に複数枚の画像を連続的に撮影する。そして、シャッターボタン104が全押しされた直後(図16のN)に撮影された画像を基準画像とするが、図16(a)の例では、基準画像が撮影された後に撮影された所定の枚数(図16(a)では2枚)の画像を除外して高解像度化処理を行う。なお高解像度化処理に用いない画像については、画像変位量推定処理(S110)を行う必要もない。
【0071】
また図16(b)の例では、実施形態4の重み付けを用いた高解像度化処理を行うが(式(5)参照)、基準画像が撮影された後に撮影された所定の枚数(図16(b)では2枚)の画像の重み係数akを小さくする。
【0072】
本実施形態では、シャッターボタン104が全押しされた後に撮影された手振れ量が多いと考えられる所定の枚数の画像を除外若しくは区別して高解像度化処理を行うため、良好な高解像度画像を生成することが可能となる。その他の効果については、実施形態1や実施形態2や実施形態3や実施形態4に係る撮像システムと同様である。
【0073】
(実施形態6)
図17は、本発明の実施形態6に係る撮像システムにおける高解像度画像の倍率と高解像度化処理で使用される画像の枚数の関係を示すグラフである。なお、本実施形態に係る撮像システムの構成および処理は、以下に示す点を除いて実施形態1や実施形態2や実施形態3や実施形態4や実施形態5に係る撮像システムと同様であり、異なる部分についてのみ説明する。
【0074】
本実施形態では、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)において撮影された複数枚の画像のうち、高解像度化処理に使用する画像の枚数が、生成される高解像度画像の倍率(元の画像に対する解像度の比)に応じて自動的に設定される。このとき図17に示すように、高解像度画像の倍率が大きいほど高解像度化処理に使用する画像の枚数を多くする。
【0075】
また、例えば実施形態1の撮影枚数設定(S101)の代わりに、使用者が高解像度画像の倍率を設定するようにして、その高解像度画像の生成に必要な枚数の画像を算出し、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)においてその枚数分の画像を撮影するようにしてもよい。なおこのとき、前撮影処理(S107)と後撮影処理(S109)で撮影する画像の枚数を別々に算出するようにしてもよい。
【0076】
本実施形態では、高解像度画像の倍率に応じた枚数の画像を用いて高解像度化処理を行うため、良好な高解像度画像を生成することが可能となる。その他の効果については、実施形態1や実施形態2や実施形態3や実施形態4や実施形態5に係る撮像システムと同様である。
【0077】
(実施形態7)
本実施形態に係る撮像システムは、前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)をデジタルスチルカメラ等の撮像装置で行い、画像変位量推定処理(S110)および高解像度化処理(S111)をパーソナルコンピュータ等の画像処理装置で行うようになっている。その他の撮像システムの構成および処理は、実施形態1から6のいずれかの撮像システムと同様である。本実施形態のように画像の撮影と画像処理を別の装置で行う場合には、画像変位量推定処理(S110)および高解像度化処理(S111)で用いられる画像データ、どの画像を基準画像とするかについての情報等を画像処理装置に転送若しくは入力する必要がある。また実施形態4のように重み付けを用いた高解像度化処理を行う場合には、重み係数の情報等を画像処理装置に与えることが必要である。なお効果については、実施形態1から6のいずれかの撮像システムと同様である。
【0078】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。例えば実施形態1から6では、前撮影処理(S107)を開始する第1の段階の撮影指示としてシャッターボタン104の半押しを、後撮影処理(S109)を開始する第2段階の撮影指示としてシャッターボタン104の全押しを例に挙げているが、第1の段階の撮影指示および第2段階の撮影指示の入力を別の方法で行ってもよい。また、実施形態1から6では基準画像を高解像度化処理する方法として超解像処理を用いているが、超解像処理を用いた高解像度化処理の代わりに、例えば前撮影処理(S107)および後撮影処理(S109)で撮影された画像の画像変位量を推定した後、画像を重ね合わせて加重平均し、ランダムノイズを低減するような画像処理を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態1に係る撮像システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る撮像システムの外観構成を示す背面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る撮像システムで行われる処理を示すフローチャートである。
【図4】実施形態1における前後撮影規定枚数決定処理の内容を示すフローチャートである。
【図5】実施形態1における前撮影処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】実施形態1における後撮影処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】実施形態1における後撮影準備完了通知の例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態1に係る撮像システムの処理シーケンスを示す図である。
【図9】画像変位量推定部で行われる画像変位量推定処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図10】画像変位量推定処理において求められた類似度曲線の例を示す図である。
【図11】高解像度化処理部で行われる高解像度化処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図12】高解像度化処理部の構成例を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施形態2に係る撮像システムにおいて基準画像を自動的に決定する方法の例を示す図である。
【図14】本発明の実施形態3に係る撮像システムの処理シーケンスを示す図である。
【図15】本発明の実施形態4に係る撮像システムにおける高解像度化処理について説明するための図である。
【図16】本発明の実施形態5に係る撮像システムの処理シーケンスを示す図である。
【図17】本発明の実施形態6に係る撮像システムにおける高解像度画像の倍率と高解像度化処理で使用される画像の枚数の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
1 レンズ系
1a 絞り
3 分光ハーフミラー系
4 シャッター
5 ローパスフィルタ
6 CCD撮像素子
7 A/D変換回路
8 切替部
9 AE用フォトセンサー
10 AFモーター
11 撮像制御部
12 第一画像処理部
13 バッファメモリ
14 圧縮部
15 メモリーカードI/F部
16 メモリーカード
17 シャッターボタン判定部
18 シャッターボタン
19 操作表示部
20 第二画像処理部
20a 画像変位量推定部
20b 高解像度化処理部
100 カメラ本体
101 電源スイッチ
102 液晶表示パネル
103 操作ボタン
104 シャッターボタン
106 後撮影準備完了通知
201 補間拡大部
202 画像蓄積部
203 PSFデータ保持部
204 畳込み積分部
205 レジストレーション画像生成部
206 画像比較部
207 畳込み積分部
208 正則化項演算部
209 更新画像生成部
210 収束判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮影して、前記画像の画像データを生成する撮像システムであって、
第1段階の撮影指示が入力された後に第2段階の撮影指示が入力される撮影指示入力手段と、
前記第1段階の撮影指示が入力されてから前記第2段階の撮影指示が入力されるまでの間に複数枚の画像を撮影する前撮影処理を行って、前記第2段階の撮影指示が入力された後に複数枚の画像を撮影する後撮影処理を行う撮影手段と、
前記第2段階の指示が入力される前後の所定の期間である規定期間に撮影されたいずれかの画像を基準画像として、前記前撮影処理および前記後撮影処理において撮影された複数枚の画像と前記基準画像との間の画像変位量を推定する画像変位量推定手段と、
を備えることを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記画像変位量推定手段によって推定された画像変位量と、前記前撮影処理および前記後撮影処理において撮影された複数枚の画像を用いて、前記前撮影処理および前記後撮影処理において撮影された画像よりも高解像の高解像度画像を生成する高解像度化処理手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記高解像度化処理手段は、前記高解像度画像を生成する際に、前記前撮影処理および前記後撮影処理において撮影された複数枚の画像に対して重み付けを行う重み付け手段を有し、前記重み付け手段は、前記第2段階の撮影指示が入力された時点により近い時点で撮影された画像に対してより高い重み付けを行うことを特徴とする請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記高解像度化処理手段は、前記後撮影処理において撮影された複数枚の画像のうち、所定の枚数の画像を除外して前記高解像度画像を生成することを特徴とする請求項2または3に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記高解像度化処理手段は、前記後撮影処理において撮影された複数枚の画像のうち、所定の枚数の画像を区別して処理することを特徴とする請求項2に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記高解像度化処理手段は、前記高解像度画像の倍率に応じて、前記高解像度画像の生成に用いる画像の枚数、または前記前撮影処理および前記後撮影処理において撮影される画像の枚数を設定する使用枚数設定手段を有することを特徴とする請求項2から5のいずれか一つに記載の撮像システム。
【請求項7】
前記撮影手段は、前記後撮影処理において所定の枚数の画像を撮影した後に所定の時間が経過するまで画像の撮影を停止することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の撮像システム。
【請求項8】
前記画像変位量推定手段は、前記第2段階の撮影指示が入力された後に最初に撮影された画像を基準画像とすることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の撮像システム。
【請求項9】
前記前撮影処理において撮影される複数枚の画像のうち所定枚数分の画像の画像データを記録することができ、古い画像の画像データを新しい画像の画像データで上書きしながら前記所定枚数分の画像の画像データを循環的に記録する循環記録手段を備え、前記循環記録手段は、前記前撮影処理および前記後撮影処理において撮影された画像の画像データを画像処理の施されていないローデータとして記録することを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の撮像システム。
【請求項10】
前記規定期間は、前記第2段階の撮影指示が入力される前後の所定の長さの時間として決められていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の撮像システム。
【請求項11】
前記規定期間は、前記第2段階の撮影指示が入力される前後に所定の枚数の画像が撮影される期間として決められていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の撮像システム。
【請求項12】
シャッターボタンが全押しされる前後に複数枚の画像を撮影する撮像システムから複数枚の画像の画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記シャッターボタンが全押しされる前後の所定の期間である規定期間に撮影された画像から基準画像を自動的に決定する基準画像決定ステップと、
前記シャッターボタンが全押しされる前後に撮影された複数枚の画像と前記基準画像との間の画像変位量を推定する画像変位量推定ステップと、
を有することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−306651(P2008−306651A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154097(P2007−154097)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】