説明

撮像レンズの較正のための手段を備えた立体撮像システム

【課題】 撮像レンズの較正のための手段を備えた立体撮像システムを提供する。
【解決手段】 本発明の一般的な分野は、2つのカメラを備えた立体撮像システムであって、各カメラは、レンズと、レンズ調整の制御を可能にする電気機械デバイスとを備える、撮像システムの分野である。本発明によるシステムは、動作段階でオペレータによって固定された調整セットポイントを記憶するための手段を備えた較正手段と、第1のレンズの光学パラメータと第2のレンズの光学パラメータが同一となるような方式で、第1のレンズの調整セットポイントおよび第2のレンズの調整セットポイントを閉ループ式で制御することを可能にする制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、「3D」または立体撮像システムと呼ばれる撮像システムの分野である。数種の異なる画角による撮像には数種のカメラおよびレンズが必要とされる。立体感は、2枚の画像(1枚は左側、1枚は右側)、または、投影装置の前の視認者の位置に応じて、視認者はその一対のみを視認することができる数種の画像一式に依存し得る。後者のシステムは、「多視点画像」として知られる3D画像の放送を可能にする。視認者が投影された3D画像の前で動けば、表示される対象が実際に動いているように見える。
【背景技術】
【0002】
「3D」映像は、空間において対象に位置を割り当てるために、両眼が視認する画像を脳によって解釈することに該当する。割り当てられる位置は、視認者の両眼が視認する画像間の違いに依存する。対象が動いている場合、連続して撮影された左側と右側の2枚の画像間の対象の動きを距離情報として解釈しないため、画像を同時に撮影して同期させなければならない。
【0003】
図1、2および3は、3D撮像システム1を示す。示されるシステムは、2つのカメラを備える。カメラを支える機械コンポーネントおよびその調整ターンテーブルは、これらの図には示されていない。各カメラ10は、以下の3つの主なサブアセンブリを備える。
− 感光性センサおよび付随する電子制御手段を備えたセンサユニット11
− 一般にズームレンズである光学レンズ12。少なくとも3つのパラメータ、すなわち、焦点距離、焦点調節および開口部がこのタイプの光学機器において調整可能である。
− さまざまなパラメータを制御するための調整手段を可能にする電気機械デバイス13
【0004】
図1は、撮像システムの第1の実施形態を示す。この第1の実施形態では、カメラ10はただ並べて配置され、レンズ12の光学軸は同一平面上にある。2本の光学軸は、必ずしも平行とは限らない。
【0005】
図1のシステムの欠点は、レンズの2本の光学軸を隔てる距離dが必然的に光学機器およびその支持体のサイズに関する最小値を有することである。したがって、立体感は、ある特定の撮像構成において制限される。
【0006】
図2および3に示されるシステムは、この欠点を有しない。システムは、互いに対して垂直に配置され、レンズ12の軸に対して45度に配置される準反射板14によって分離される2つのカメラを備える。図2はこのシステムの正面図を示し、図3は上面図を示す。この構成では、機械的制限は消失し、図3に示され得るように、所望の距離dだけ光学軸を隔てることができるが、光度減衰のコストおよび準反射板に起因するチャネルのいずれか1つのチャネル上の光路のわずかな違いなどのコストを伴う。
【0007】
カメラ/レンズアセンブリが、フレーミングまたは対象となる視野、「倍率」、チャネルの配列、焦点調節などの同じ特性を有しなければ、脳はもはや全く異なる2枚の画像を比較することはできない。
【0008】
3D映画を撮影するか、または、3D写真を撮るとき、カメラマンは、焦点面を選択しなければならず、そのシーンの動きを追跡するために撮像中はこの平面を動かすこともできる。したがって、カメラマンは、使用されるレンズのすべての集束距離を修正しなければならない。この修正は、さまざまなカメラによって撮影された画像間の一貫性を保つため、すべてのレンズ上で同時に行わなければならず、したがって、時間および機能性の点で同期させなければならず、単一の制御コマンドによって制御しなければならない。
【0009】
カメラマンがシステムの集束位置に対して単一の制御コマンドを修正すると、すべてのレンズは同じ集束距離に焦点を合わせる。カメラマンがある集束距離で停止すると、すべてのレンズは同じ集束距離で同時に停止する。この挙動は、カメラの感度の違いに依存し得る、レンズのフレーミング視野、焦点調節およびダイヤフラム開口部に対して同一でなければならない。しかし、レンズおよびカメラの静的および動的特性は、カメラごとにまたはレンズごとに異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この問題を解決するため、先行技術の公知の技法では、レンズは、焦点調節およびズーム機能に必要なレンズの光学上の組合せとレンズの置換機構の両方においてこれらのレンズが事実上同一となるような精度で製作される。これは、システムを構成する機械および/または光学コンポーネントの製品の精度および「再現性」に依存する。また、レンズの選別も、同じ製造ロットから得られることが多い同様な挙動を有するレンズを特定および関連付けるような方式で使用される。
【0011】
この解決策の欠点は以下の通りである。
− 特に産業環境で同じロットから得られるすべての重要なコンポーネントの入手が困難である。
− 同じロットから得られても、オペレータによって集積および調整されたレンズは、完全に同一の挙動を有することができない。
− レンズは生産ラインの開始時に最適化されるが、レンズの挙動は機械コンポーネントの摩耗とともにドリフトする。最終的に、レンズの挙動は、補正できないほど逸脱したものとなる。
− 製造業者はすべての可能な構成、すなわち、すべての焦点距離、すべての集束調整、固有の欠陥を有するすべてのカメラ、すべての動作温度、レンズのすべての動作位置などをカバーできるわけではない。
【0012】
先行技術の別の解決策は、マスターと見なされる別のレンズ上でスレーブレンズを較正することである。この手順は複雑であるため、レンズまたは撮像システムの製造業者が工場で行う。この解決策の主な欠点は以下の通りである。
− レンズは工場で適合させるが、この事実がアフターサービスにおいて困難を生じさせる。1つのレンズマスターおよび1つまたは複数のレンズスレーブは、必然的に完全に特定しなければならない。
− 製造業者はすべての可能な構成、すなわち、すべての焦点距離、すべての集束調整、固有の欠陥を有するすべてのカメラ、すべての動作温度、レンズのすべての動作位置などをカバーできるわけではない。
− 前述の通り、レンズは生産ラインの開始時に最適化されるが、レンズの挙動は機械コンポーネントの摩耗とともにドリフトする。最終的に、レンズの挙動は、補正できないほど逸脱したものとなる。
− 使用タイプに応じて、例えば、レンズが準反射鏡の両側に位置する場合、レンズにはさまざまな同期化が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるシステムは、これらの欠点を有しない。本発明によるシステムは、撮像の条件の下、実際の状況で、撮像の直前に先行し得る時間にシステムの較正を可能にし、したがって、後の撮像中のいかなるドリフトも回避することができる較正手段を備える。
【0014】
より正確には、本発明の対象物は、少なくとも第1のカメラと第2のカメラとを備えた立体撮像システムであって、
第1のカメラは、少なくとも1つの光学パラメータを調整する第1の手段を備えた第1のレンズと、前記第1の調整手段の制御を可能にする第1の電気機械デバイスとを備え、
第2のカメラは、同じ光学パラメータを調整する第2の手段を備えた第2のレンズと、前記第2の調整手段の制御を可能にする第2の電気機械デバイスとを備え、
それぞれの電気機械デバイスは、2つの動作モード、すなわち、
記憶手段が第1の調整手段に対する調整セットポイントを記録する「記憶」モードであって、それぞれのセットポイントは光学パラメータの既定値に相当し、前記値は2つのカメラに共通である、モードと、
光学パラメータの値が選択される「撮像」モードであって、前記光学パラメータの値に相当するそれぞれの調整セットポイントは、対応する電気機械デバイスによって、対応する調整手段に適用される、モードと、
を含むことを特徴とする、立体撮像システムである。
【0015】
有利には、光学パラメータは、レンズの焦点調節および/または焦点距離である。
【0016】
有利には、記憶手段は、同じパラメータに対して数種のセットポイント値を含む。記憶手段は、記憶されたセットポイント値から中間のセットポイント値を計算するよう構成される手段を備え、したがって、その変動の全範囲にわたって光学パラメータを連続して閉ループ式に制御することができる。
【0017】
有利には、カメラは、レンズの光学軸が同一平面上にある状態で並べて設置されるか、または、薄い準反射平面板の両側に配置される。
【0018】
非限定的な方式で提示される以下の説明を読むことで、また添付の図面によって、本発明はより良く理解され、他の利点が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】既に論じられたが、2つのカメラを備えた立体システムの第1の実施形態を示す。
【図2】既に論じられたが、2つのカメラを備えた立体システムの第2の実施形態を示す。
【図3】既に論じられたが、2つのカメラを備えた立体システムの第2の実施形態を示す。
【図4】本発明による立体撮像システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
非限定的な例として、図4は、並んだ構成で配置された第1のカメラ10Aと第2のカメラ10Bとを備えた立体撮像システム1を示す。勿論、本発明を撮像システムの他の構成に適用することもでき、その例としては、図2および3に示されるような準反射鏡を備えた2つのカメラを備えた構成が挙げられる。また、本発明は、3台以上のカメラを備えたアセンブリまで拡大することもできる。
【0021】
各カメラ10Aまたは10Bは、光検出ユニット11Aまたは11B、光学レンズ12Aまたは12B、レンズ12Aおよび12Bを調整するための手段を制御するための電気機械デバイス13Aまたは13Bを備える。一般的に言えば、レンズ12Aおよび12Bは、レンズの焦点調節、焦点距離の値およびダイヤフラム開口部を調整することができる光学ズームレンズである。焦点調節および焦点距離は、レンズまたはレンズ群の内部変位によって調整される。
【0022】
2つのカメラ10Aおよび10Bは実質的に同一であり、レンズ12Aおよび12Bの光学軸は同一平面上にある。カメラ10Aおよび10Bを支える機械コンポーネントならびにその調整ターンテーブルは、図4には示されていない。
【0023】
システム1は、制御ハンドルの形を取り得る制御手段15をさらに備える。
【0024】
電気機械デバイス13Aまたは13Bは、第1のレンズ12Aおよび第2のレンズ12Bの調整手段のためのセットポイント値を記憶する手段を備える。第1のレンズ12Aに対する各セットポイント値CAは、2つの調整セットポイントCAおよびCBをレンズに適用するとき、第1のレンズ12Aに対する光学パラメータの値が第2のレンズ12Bに対する同じ光学パラメータの値と同一となるような方式で、第2のレンズ12Bに対するセットポイント値CBと関連する。光学パラメータの例としては、焦点調節または焦点距離の値が言及され得る。
【0025】
したがって、レンズ12Aおよび12Bに適用されるべきパラメータの値を制御手段15が送信すると、2つのレンズ12Aおよび12Bに対する光学パラメータが同一となるような方式で、第1の電気機械デバイス13Aは、第1のレンズ12Aに対する調整セットポイントCAを命令し、第2の電気機械デバイス13Bは、それに対応する調整セットポイントCBを命令する。言い換えれば、2つのレンズ12Aおよび12Bは、同じ倍率、同じ焦点調節および同じ相対開口部を有する。
【0026】
2つの動作モード、すなわち、較正または記憶モードおよび使用または撮像モードを含む撮像システムのオペレータによる使用を容易にするため、制御手段を制御ハンドル内に配置することができる。
【0027】
オペレータにとって、デバイスの動作上の機能は非常に簡単なものである。
【0028】
第1の工程では、オペレータは、レンズ12Aおよび12Bをカメラ10Aおよび10B上に設置する。
【0029】
第2の工程では、実行すべき撮像のパラメータ(基本的には集束距離、所望の被写界深度、被写界幅である)に応じて、オペレータは、例えば、撮影予定のシーンに直接的にしっかりと焦点を合わせた状態で所望のフレーミングを得るような方式で、レンズ12Aを調整する。この動作は、電気機械デバイス13Aを制御する制御ハンドル15を使用して実行される。一旦調整が行われれば、1つまたは複数の光学パラメータを含み得るこのレンズ12Aの構成に対応するセットポイントが記憶される。これらのパラメータは、例えば、レンズ12Aの焦点調節および焦点距離の値である。
【0030】
第3の工程では、オペレータは、同様に依然として制御ハンドル15および電気機械デバイス13Bを使用して、レンズ12Aに対する光学パラメータと同一のレンズ12Bに対する光学パラメータを得るような方式で、レンズ12Bを調整する。この構成に対応するセットポイントは記憶される。これらのセットポイント値は、カメラ10Aのものと異なる可能性がある。
【0031】
言うまでもないが、オペレータは、例えば、数種の異なる焦点距離に対応するレンズ12Aおよび12Bに対する数種の適合構成を記録するため、第2および第3の工程を数回繰り返すことができる。
【0032】
撮像時は、オペレータが1つまたは複数のパラメータを含む構成を命令すると、記録時に2つのカメラ上で同一のパラメータを得るため、適正なセットポイントが自動的に生成される。したがって、2つのレンズは常に、同期方式で、同じ焦点調節、同じ開口部および同じ焦点距離を有する。
【0033】
この解決策の利点は多種多様であり、以下に言及する。
− 生産過程におけるレンズの簡素化。工場での調整は、全使用範囲の数ポイントにおけるレンズの較正に制限される。2つのレンズが完全に同一でない場合でさえも、オペレータは、依然として2つのレンズを再配置することができる。設置前に2つのレンズを適合させることはもはや必要ではない。
− アフターサービスの簡素化。欠陥を有するレンズの場合、使用される新しいレンズは、その特性に対していかなる特定の注意も払うことなく、ただ再配置するだけでよい。
− レンズの摩耗または異なる温熱条件に起因する性能上の劣化の消失。定期的な再配置により、レンズのコンポーネントの摩耗または熱変動によって導入される欠陥を補正することができる。
− 例えばセンサの位置が異なるさまざまなタイプのカメラ、または、例えば異なる厚さを有する逆反射鏡を備え得るさまざまな設置構成にレンズが容易に適合する。一旦システムが設置されればレンズは較正されるため、焦点調節とフレーミング視野の両方に関するレンズの挙動などは、完全に同一であり、カメラ、鏡、光学フィルタなどによって導入されるすべての欠陥を補償する。
− 再配置の簡素化。オペレータによって実際に使用される位置は、全使用範囲にわたってレンズよりむしろ、ただリセットするだけでよい。
− 使用のし易さ。撮像の数種の有用なポイントでレンズを較正することができるため、撮像が起こるときに修正されるズーミングまたは焦点調節のための動作は可能であるが、その理由は、どの瞬間にも、レンズは閉ループ式に制御され、同期され、較正範囲内で焦点距離または焦点調節コマンドが補正されるためである。単一の焦点距離ハンドルおよび単一の焦点調節ハンドルはすべてのレンズを制御し、したがって、すべてのレンズは同時に同じコマンドを受信する。
【符号の説明】
【0034】
1 立体撮像システム
10 カメラ
10A 第1のカメラ
10B 第2のカメラ
11 センサユニット
11A 光検出ユニット
11B 光検出ユニット
12 光学レンズ
12A 第1のレンズ
12B 第2のレンズ
13 電気機械デバイス
13A 第1の電気機械デバイス
13B 第2の電気機械デバイス
14 準反射板
15 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のカメラと第2のカメラとを備えた立体撮像システムであって、
前記第1のカメラは、少なくとも1つの光学パラメータを調整する第1の手段を備えた第1のレンズと、前記第1の調整手段の制御を可能にする第1の電気機械デバイスとを備え、
前記第2のカメラは、同じ光学パラメータを調整する第2の手段を備えた第2のレンズと、前記第2の調整手段の制御を可能にする第2の電気機械デバイスとを備え、
それぞれの電気機械デバイスは、2つの動作モード、すなわち、
記憶手段が前記第1の調整手段に対する調整セットポイントを記録する「記憶」モードであって、それぞれのセットポイントは光学パラメータの既定値に相当し、前記値は前記2つのカメラに共通である、モードと、
光学パラメータの値が選択される「撮像」モードであって、前記光学パラメータの値に相当するそれぞれの調整セットポイントは、前記対応する電気機械デバイスによって、前記対応する調整手段に適用される、モードと、
を含むことを特徴とする、立体撮像システム。
【請求項2】
前記光学パラメータは、前記レンズの焦点調節および/または焦点距離である、請求項1に記載の立体撮像システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、同じパラメータに対して複数種のセットポイント値を含む、請求項1に記載の立体撮像システム。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記記憶されたセットポイント値から中間のセットポイント値を計算するよう構成される手段を備え、したがって、その変動の全範囲にわたって光学パラメータを連続して閉ループ式に制御することができる、請求項3に記載の立体撮像システム。
【請求項5】
前記カメラは、前記レンズの光学軸が同一平面上にある状態で並べて設置される、請求項1に記載の立体撮像システム。
【請求項6】
前記カメラは、薄い準反射平面板の両側に配置される、請求項1に記載の立体撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−25315(P2013−25315A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−161647(P2012−161647)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】