撮像レンズ
【課題】小型で高密度画素の撮像素子に適した、収差が好適に補正された高画質、低コスト、小型の撮像レンズを提供する。
【解決手段】物体側から順に第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズで構成し、全てのレンズの両面を非球面で形成し、かつ第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面のうち、何れかの一つの面に色分散機能を発揮する回折光学面を形成し、全てのレンズをプラスチック材料で構成した。
【解決手段】物体側から順に第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズで構成し、全てのレンズの両面を非球面で形成し、かつ第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面のうち、何れかの一つの面に色分散機能を発揮する回折光学面を形成し、全てのレンズをプラスチック材料で構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal
Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子上に被写体の像を形成する撮像レンズに係り、携帯電話機等の携帯情報端末(PDA:Personal Digital
Assistant)に搭載される小型の撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機の殆どにカメラ機能が搭載されるようになっている。最近ではデジタルスティルカメラに匹敵するような高解像度のカメラ機能を搭載した携帯電話機も登場している。また、このようなカメラ機能を実現する撮像装置は、携帯電話機の小型化や薄型化の要求に対応して益々小型化が進んでいる。撮像装置に組み込まれる撮像レンズも、必然的に小型化が強く要求されている。また、撮像素子の高画素化、高解像度化に十分適用が可能な高い光学性能を実現した撮像レンズも強く要求されている。
【0003】
撮像素子の小型化、高画素化に伴って、益々画素サイズは微細化され、高密度化されてきている。最近では画素ピッチが1.4ミクロンを下回るような撮像素子も提案されている。このような撮像素子に対応する撮像レンズに要求される性能は、収差が小さいというだけでは不十分になりつつある。十分な回折分解能を有する明るい光学系、即ちレンズの大口径比化が強く要求されるからである。従来、3枚構成の撮像レンズが多く提案されてきたが、上述のような撮像素子に適用するために、4枚構成や5枚構成の撮像レンズも提案されるようになってきている。
【0004】
例えば特許文献1に記載の撮像レンズは、物体側から順に、物体側の面が凸形状の正の第1レンズと、像面側に凹面を向けた負のメニスカス形状の第2レンズと、像面側に凸面を向けた正のメニスカス形状の第3レンズと、両面が非球面形状で光軸近傍において像面側の面が凹形状の正または負の第4レンズとから構成される。当構成において、第1レンズと第2レンズのアッべ数を好ましい範囲に設定することで、軸上色収差および倍率色収差の補正効果を得、第2レンズと第1レンズの焦点距離の比、及び第3レンズと第4レンズの焦点距離の比について好ましい範囲に設定することによって、テレセン性の確保と軸上色収差および倍率色収差の補正とを行いつつ、レンズ系全体の小型化を確保している。
また、特許文献2、特許文献3に記載の撮像レンズは、5枚構成にすることによって、4枚構成の問題点を解決し実用的なレンズを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−219079号公報
【特許文献2】特開2007−264180号公報
【特許文献3】特開2010−197665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、比較的良好な収差を得ることは可能である。しかし、上述したような小型化、高密度化された撮像素子に適用して十分な回折分解能を得るためにはF/2.4程度の大きな口径比が要求される。特許文献1では、光学全長が長いため、小型化には向かない。また、大口径比を確保しながら、良好な収差補正を実現するのは困難である。特許文献2、及び特許文献3は、4枚構成の課題を解決して実用的なレンズを提案するものであるが、構成枚数が多いため、低コスト化に不利である。また、製造公差に敏感なレンズを多く使用することになるため、製造コストの面からも不利となる。さらに、ガラス材料を多用していることも低コスト化に不利になる。また、特許文献2、及び特許文献3において低コスト化のためにプラスチックレンズを選択すると、材料の選択肢が極めて少ないことから色収差補正や他の収差補正の両立が困難になるという問題があった。
【0007】
本発明は上述した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、近年の携帯電話機の薄型化に対応した、小型で、効果的に色収差を補正し、他の諸収差をも良好に補正し、大口径比で高性能な撮像レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明では、物体側から順に第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズを配置して構成し、全てのレンズの両面を非球面で形成し、かつ第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面のうち、何れかの一つの面に色分散機能を発揮する回折光学面を形成し、全てのレンズをプラスチック材料で構成した。
【0009】
上記のような構成とすることで、各収差を良好に補正し、最適な面に回折光学面を形成することで色収差の良好な補正を実現している。
【0010】
回折光学面は、光路差関数で定義される光路差を発生させるレリーフによって構成されるものである。通常のガラス材料のe線におけるアッベ数は25から80なのに対して、回折光学面のe線のアッベ数は約−3.3と逆符号でおよそ一桁大きな分散を示す性質がある。色収差の補正のために、少なくとも2種類の分散の異なる材料を組み合わせることは周知であるが、さらに回折光学面を適切な面に形成することで、より効果的に色収差補正を実現することが可能になる。
【0011】
回折光学面を用いない一般のレンズ系においては、色収差補正用として高分散材料のレンズを開口絞りに近い位置に配置するのが一般的である。同様に、回折光学面も開口絞りに近い位置に配置することで、軸上および軸外の色収差の補正に有効である。
【0012】
本発明では、絞りに対してコンセントリックな面となる、第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面のうち、何れかの一つの面に回折光学面を形成している。
【0013】
本発明のレンズ構成は、色収差の補正効果を得るため、第2レンズの屈折力を負にするとともに、分散の大きい材料を採用している。しかし、材料の組み合わせだけでは、補正効果に限界があり、どうしても色収差が残存してしまう。そこで本発明は、この残存する色収差を効果的に低減するため、回折光学面をレンズ系の最適な位置に形成し、軸上および軸外色収差の良好な補正を可能にしている。
【0014】
また、本発明では、製造の容易性と低コスト化のために全てのレンズをプラスチック材料で構成している。周知のように、光学系において選択可能なプラスチック材料には制限がある。即ち、ガラス材料のような高屈折率低分散材料をプラスチック材料に求めることは出来ない。従来、全てのレンズをプラスチック材料にする場合、諸収差と像面湾曲と色収差の全てを同時に補正するのは困難であった。本発明では、回折光学面が好適に色収差の補正を担うことで、色収差以外の諸収差の補正を容易にしている。従って、全てのレンズにプラスチック材料を採用しても、収差が良好に補正された低コストの撮像レンズが実現可能となる。
【0015】
上記構成の撮像レンズは、第1レンズは両凸レンズであり、第2レンズは両凹レンズであり、第3レンズは物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズであり、第4レンズは両凹レンズであり、開口絞りを第1レンズの物体側の面に配置している。
【0016】
第1レンズを両凸レンズとすることの効果について説明する。第3レンズ、第4レンズは結像面近くに位置するため、光軸上に結像する光線の通過領域が狭く、軸上色収差補正への関与は小さい。従って、軸上色収差の補正は第1レンズと第2レンズとで行うことになり、必然的に第1レンズの屈折力を強く設定する必要がある。ここで、第1レンズによる球面収差の発生と公差感度を低く抑え、その他の収差をバランスよく補正するためには、第1レンズを両凸形状にするのが効果的である。
【0017】
また、第2レンズは両凹レンズであり、色収差補正を行うと同時に非点収差及びコマ収差の補正に大きな役割を果たしている。第2レンズの物体側の面は像側の面よりも大きな曲率半径とすることが望ましい。そうすることで、倍率の色収差や軸外の諸収差を有効に補正することが可能になる。しかし、一方で大口径比化や広画角化、光学全長短縮化に対しては、第2レンズの物体側の面を像側の面よりも大きな曲率半径に設定すると軸外収差が悪化する傾向になる。また、第2レンズの像側の面の負の屈折力が強くなり過ぎると公差感度が厳しくなる傾向になる。本発明ではこれらの問題を、適切な位置に回折光学面を形成することで解決している。
【0018】
また、第3レンズを物体側の面が凹面の正の屈折力を有するメニスカスレンズとし、第4レンズを負の屈折力を有する両凹レンズとすることで、全長の短縮化と軸外光線に関わる諸収差を良好に補正している。第3レンズを物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズにすることで、適切なバックフォーカスを維持しながら、光学全長の増大を抑制することが可能になる。また、第4レンズを両凹形状のレンズにすることによって、ディストーションの低減と撮像素子に入射する主光線角度のテレセントリック性を確保している。
【0019】
さらに、開口絞りを第1レンズの物体側の面に配置することで撮像素子へ入射する主光線角度を一定の範囲内に抑制出来るようにしている。
【0020】
また、上記構成の撮像レンズは、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(1)0.83<f/f12<1.04
(2)−0.05<f/f34<0.08
(3)−0.07<f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)<−0.03
(4)−0.01<f/fd<0.15
ただし、
f :全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f34:第3レンズと第4レンズの合成焦点距離
f2 :第2レンズの焦点距離
fd :回折光学面の焦点距離
V2:第2レンズ材質のe線のアッベ数
Vd:回折光学面のe線のアッベ数
【0021】
条件式(1)は第1レンズと第2レンズの合成の屈折力を、全系の屈折力に近い値にすることで球面収差を抑え、軸上色収差を補正するための条件である。条件式(1)の下限値「0.83」を下回ると諸収差の補正、大口径化、広画角化には有利になるが、光学全長が長くなるので小型化が困難になる。一方、上限値「1.04を超えると第1レンズと第2レンズの合成の屈折力が強くなり過ぎ、諸収差の補正、大口径化、広画角化が困難となる。
【0022】
条件式(2)は第3レンズと第4レンズの合成の屈折力をゼロに近い値にすることで、光学全長の短縮化、適切なバックフォーカスの確保、ディストーションの補正、撮像素子への主光線入射角度の制御を容易にするものである。条件式(2)の下限値「−0.05」を下回ると、光学全長の短縮化には有利になるがディストーションが正方向に大きくなると同時に主光線入射角度も大きくなるため、収差補正が困難になる。一方、上限値「0.08」を超えると光学全長が長くなったり、バックフォーカスの確保が困難になる。
【0023】
条件式(3)は第2レンズの屈折力と回折光学面の近軸の屈折力との関係を規定し、最適な色収差補正を実現するための条件である。条件式(3)の下限値「−0.07」を下回ると色収差を補正するための第2レンズ及び回折光学面の屈折力が過剰となり、色収差補正が困難となる。一方、上限値「−0.03」を上回ると逆に屈折力が不足するため、この場合も色収差補正が困難になる。
【0024】
ところで、2枚構成の薄肉レンズにおける色消し補正は次式によって与えられることが知られている。
V1・f1=−V2・f2
ただし、
V1:第1レンズのアッベ数
f1:第1レンズの焦点距離
V2:第2レンズのアッベ数
f2:第2レンズの焦点距離
例えば、全系の焦点距離を1.0、V1=56.7、V2=26.0とすれば、f1=0.5414、f2=−1.1808、1/(V2・f2)=−0.033が容易に得られる。同様に第2レンズを回折光学面としてV2=−3.326を与えると、f1=1.0588、f2=18.01、1/(V2・f2)=−0.017が得られる。本発明における第2レンズの位置は、開口絞りから最適に離れた距離に配されている。この場合、条件式(3)の値は上記2枚の薄肉レンズの値より大きな絶対値となるが、回折光学面と組み合わせることで、この値を変化させることが出来る。本発明において、開口絞りから最も遠くに位置する回折光学面は、第3レンズの物体側の面である。この面に光線が通過する領域は、レンズにより集光されるため、開口絞りを通過する光線領域の約50%になる。このような場合において、上記のような薄肉レンズと同程度の色収差補正を可能にするためには条件式(3)の下限値「−0.07」が限度となる。
【0025】
条件式(4)は回折光学面の近軸の屈折力の範囲を規定するもので、条件式(3)と相まって良好な色収差補正を実現するための条件である。条件式(4)の下限値「−0.01」を下回ると第2レンズの軸上色収差補正の負担が大きくなり収差補正が困難になる。一方、上限値「0.15」を超えると軸上色収差補正が過剰となり、軸上色収差と倍率の色収差のバランスが崩れ良好な色収差補正が困難になる。
【0026】
回折光学面の近軸の屈折力は、光路差関数が高次方程式で定義されることから、必ずしも実際の色収差補正の状態を直接表すものではない。しかし、回折光学素子を設置する位置と近軸の屈折力には一定の傾向が認められる。即ち、物体側に近い側に回折光学面を配置した場合、主に軸上色収差補正のために近軸の屈折力が大きくなる。これに対して、物体側から遠い面に配置される場合は主に倍率の色収差補正が必要になるため、必ずしも近軸の屈折力を大きくする必要なない。本発明の第3レンズ、第4レンズの構成の場合、軸外における収差補正量が多く、非球面の作用で倍率の色収差の変化が大きくなるため、回折光学面は近軸の屈折力が比較的小さな値をとり、光路差関数の高次項が大きな値をとるようになる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、4枚構成で回折光学面を最適な位置に配置することにより、従来よりも色収差が良好に補正され、かつ他の収差補正との両立を実現した小型で高性能な撮像レンズを提供することができる。
【0028】
また、全てのレンズにプラスチック材料を使用することによって低コスト化を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1に係る撮像レンズの断面図である。
【図2】同上、諸収差図である。
【図3】本発明の実施例2に係る撮像レンズの断面図である。
【図4】同上、諸収差図である。
【図5】本発明の実施例3に係る撮像レンズの断面図である。
【図6】同上、諸収差図である。
【図7】本発明の実施例4に係る撮像レンズの断面図である。
【図8】同上、諸収差図である。
【図9】本発明の実施例5に係る撮像レンズの断面図である。
【図10】同上、諸収差図である。
【図11】本発明の実施例6に係る撮像レンズの断面図である。
【図12】同上、諸収差図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1、図3、図5、図7、図9、図11はそれぞれ、本発明の実施形態の実施例1〜6に対応するレンズ断面図を示したものである。いずれの実施例も基本的なレンズ構成は同一であるため、ここでは実施例1のレンズ断面図を参照しながら、本実施の形態に係る撮像レンズのレンズ構成について説明する。
【0032】
図1に示すように、本発明の撮像レンズは、第1レンズL1は両凸レンズ、第2レンズL2は両凹レンズ、第3レンズL3は物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズ、第4レンズL4は両凹レンズで構成されている。また、全てのレンズの両面は非球面で形成され、全てのレンズはプラスチック材料で構成されている。
【0033】
なお、全ての実施例において、第1レンズL1の物体側の面R1の有効径の周縁が開口絞りSTの作用を兼ねている。また、第4レンズL4の像側の面R8と結像面Sとの間にR9、R10で構成されるカバーガラスが配置されている。断面図においてd1,d2,・・・,d10は面間隔を、Xは光軸を、DOEは回折光学面をそれぞれ表している。
【0034】
本実施の形態では、全てのレンズ面を非球面で形成している。これらレンズ面に採用する非球面形状は、光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをY、円錐係数をK、非球面係数をA2iとしたとき,数式1により表される。
【0035】
また、第1レンズL1の物体側の面R1から第3レンズL3の物体側の面R5のうち、何れか一つの面に、数式2で表される光路差関数としての回折光学面DOEが形成されている。
【数1】
【数2】
ただし、
P :光路差(単位:波長)
B2i :光路差関数係数(i=1〜5)
【0036】
次に、本実施の形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fはレンズ系全体の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角をそれぞれ示す。また、面番号は物体側から数えた番号を示し、Rは曲率半径を示し、dは光軸に沿ったレンズ面間の距離(面間隔)を示し、nはe線に対する屈折率を、vはe線に対するアッベ数をそれぞれ示す。
【実施例1】
【0037】
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。なお、回折光学面DOEは第3レンズL3の物体側の面R5に形成されている。
【0038】
【表1】
【0039】
次に実施例1における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
各条件式の値を以下に示す。
(1)f/f12=0.916
(2)f/f34=0.055
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.036
(4)f/fd=−0.002
このように、実施例1に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0042】
図2は、実施例1の撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。これらの収差図において、球面収差図にはF線(486.13nm)、e線(546.07nm)C線(656.27nm)の各波長に対する収差量を示し、非点収差図にはサジタル像面Sにおける収差量とメリジオナル像面Tにおける収差量とをそれぞれ示す(図4、6、8、10、12において同じ)。
【0043】
図2に示されるように、実施例1に係る撮像レンズによれば、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【実施例2】
【0044】
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。実施例2においても、実施例1と同様、回折光学面DOEは第3レンズL3の物体側の面R5に形成されている。
【0045】
【表3】
【0046】
以下に実施例2における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
各条件式の値を以下に示す
(1)f/f12=0.943
(2)f/f34=0.024
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.053
(4)f/fd=0.045
このように、実施例2に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0049】
図4は、本実施例2に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。図4に示されるように、本実施例2に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【実施例3】
【0050】
基本的なレンズデータを以下の表5に示す。実施例3は、第2レンズL2の物体側の面R3に回折光学面DOEが形成されている。
【0051】
【表5】
【0052】
以下に実施例3における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表6に示す。
【0053】
【表6】
【0054】
各条件式の値を以下に示す。
(1)f/f12=0.927
(2)f/f34=−0.029
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.049
(4)f/fd=0.086
このように、実施例3に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0055】
図6は、本実施例3に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。図6に示されるように、実施例3に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【実施例4】
【0056】
基本的なレンズデータを以下の表7に示す。実施例4は、第1レンズL1の物体側の面R1に回折光学面DOEが形成されている。
【0057】
【表7】
【0058】
以下に実施例4における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表8に示す。
【0059】
【表8】
【0060】
各条件式の値を以下に示す。
(1)f/f12=0.964
(2)f/f34=−0.023
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.042
(4)f/fd=0.002
このように、実施例4に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0061】
図8は、本実施例4に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。図8に示されるように、実施例4に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【実施例5】
【0062】
基本的なレンズデータを以下の表9に示す。実施例5は、第1レンズL1の像側の面R2に回折光学面DOEが形成されている。
【0063】
【表9】
【0064】
以下に実施例5における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表10に示す。
【0065】
【表10】
【0066】
各条件式の値を以下に示す。
(1)f/f12=0.971
(2)f/f34=−0.039
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.042
(4)f/fd=0.022
このように、実施例5に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0067】
図10は、本実施例5に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。図10に示されるように、実施例5に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【実施例6】
【0068】
基本的なレンズデータを以下の表11に示す。実施例6は、第2レンズL2の像側の面R4に回折光学面DOEが形成されている。
【0069】
【表11】
【0070】
以下に実施例6における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表12に示す。
【0071】
【表12】
【0072】
各条件式の値を以下に示す。
f/f12=0.953
(2)f/f34=−0.024
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.047
(4)f/fd=0.045
このように、実施例6に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0073】
図12は、本実施例6に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。図12に示されるように、実施例6に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【0074】
したがって、上記の実施の形態に係る撮像レンズは、少ない構成枚数で色収差補正と他の諸収差補正の両立を図り、大口径比化と高性能化を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、より高画素の小型撮像素子に適用することができ、特に携帯電話機等の携帯情報端末に搭載される小型の撮像レンズの分野での効果が大きい。
【符号の説明】
【0076】
ST 開口絞り
R1 第1レンズの物体側の面
R2 第1レンズの像側の面
R3 第2レンズの物体側の面
R4 第2レンズの像側の面
R5 第3レンズの物体側の面
R6 第3レンズの像側の面
R7 第4レンズの物体側の面
R8 第4レンズの像側の面
R9、R10 カバーガラス面
d1〜d9 軸上面間隔
X 光軸
S 結像面
DOE 回折光学面が形成された面
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal
Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子上に被写体の像を形成する撮像レンズに係り、携帯電話機等の携帯情報端末(PDA:Personal Digital
Assistant)に搭載される小型の撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機の殆どにカメラ機能が搭載されるようになっている。最近ではデジタルスティルカメラに匹敵するような高解像度のカメラ機能を搭載した携帯電話機も登場している。また、このようなカメラ機能を実現する撮像装置は、携帯電話機の小型化や薄型化の要求に対応して益々小型化が進んでいる。撮像装置に組み込まれる撮像レンズも、必然的に小型化が強く要求されている。また、撮像素子の高画素化、高解像度化に十分適用が可能な高い光学性能を実現した撮像レンズも強く要求されている。
【0003】
撮像素子の小型化、高画素化に伴って、益々画素サイズは微細化され、高密度化されてきている。最近では画素ピッチが1.4ミクロンを下回るような撮像素子も提案されている。このような撮像素子に対応する撮像レンズに要求される性能は、収差が小さいというだけでは不十分になりつつある。十分な回折分解能を有する明るい光学系、即ちレンズの大口径比化が強く要求されるからである。従来、3枚構成の撮像レンズが多く提案されてきたが、上述のような撮像素子に適用するために、4枚構成や5枚構成の撮像レンズも提案されるようになってきている。
【0004】
例えば特許文献1に記載の撮像レンズは、物体側から順に、物体側の面が凸形状の正の第1レンズと、像面側に凹面を向けた負のメニスカス形状の第2レンズと、像面側に凸面を向けた正のメニスカス形状の第3レンズと、両面が非球面形状で光軸近傍において像面側の面が凹形状の正または負の第4レンズとから構成される。当構成において、第1レンズと第2レンズのアッべ数を好ましい範囲に設定することで、軸上色収差および倍率色収差の補正効果を得、第2レンズと第1レンズの焦点距離の比、及び第3レンズと第4レンズの焦点距離の比について好ましい範囲に設定することによって、テレセン性の確保と軸上色収差および倍率色収差の補正とを行いつつ、レンズ系全体の小型化を確保している。
また、特許文献2、特許文献3に記載の撮像レンズは、5枚構成にすることによって、4枚構成の問題点を解決し実用的なレンズを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−219079号公報
【特許文献2】特開2007−264180号公報
【特許文献3】特開2010−197665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、比較的良好な収差を得ることは可能である。しかし、上述したような小型化、高密度化された撮像素子に適用して十分な回折分解能を得るためにはF/2.4程度の大きな口径比が要求される。特許文献1では、光学全長が長いため、小型化には向かない。また、大口径比を確保しながら、良好な収差補正を実現するのは困難である。特許文献2、及び特許文献3は、4枚構成の課題を解決して実用的なレンズを提案するものであるが、構成枚数が多いため、低コスト化に不利である。また、製造公差に敏感なレンズを多く使用することになるため、製造コストの面からも不利となる。さらに、ガラス材料を多用していることも低コスト化に不利になる。また、特許文献2、及び特許文献3において低コスト化のためにプラスチックレンズを選択すると、材料の選択肢が極めて少ないことから色収差補正や他の収差補正の両立が困難になるという問題があった。
【0007】
本発明は上述した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、近年の携帯電話機の薄型化に対応した、小型で、効果的に色収差を補正し、他の諸収差をも良好に補正し、大口径比で高性能な撮像レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明では、物体側から順に第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズを配置して構成し、全てのレンズの両面を非球面で形成し、かつ第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面のうち、何れかの一つの面に色分散機能を発揮する回折光学面を形成し、全てのレンズをプラスチック材料で構成した。
【0009】
上記のような構成とすることで、各収差を良好に補正し、最適な面に回折光学面を形成することで色収差の良好な補正を実現している。
【0010】
回折光学面は、光路差関数で定義される光路差を発生させるレリーフによって構成されるものである。通常のガラス材料のe線におけるアッベ数は25から80なのに対して、回折光学面のe線のアッベ数は約−3.3と逆符号でおよそ一桁大きな分散を示す性質がある。色収差の補正のために、少なくとも2種類の分散の異なる材料を組み合わせることは周知であるが、さらに回折光学面を適切な面に形成することで、より効果的に色収差補正を実現することが可能になる。
【0011】
回折光学面を用いない一般のレンズ系においては、色収差補正用として高分散材料のレンズを開口絞りに近い位置に配置するのが一般的である。同様に、回折光学面も開口絞りに近い位置に配置することで、軸上および軸外の色収差の補正に有効である。
【0012】
本発明では、絞りに対してコンセントリックな面となる、第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面のうち、何れかの一つの面に回折光学面を形成している。
【0013】
本発明のレンズ構成は、色収差の補正効果を得るため、第2レンズの屈折力を負にするとともに、分散の大きい材料を採用している。しかし、材料の組み合わせだけでは、補正効果に限界があり、どうしても色収差が残存してしまう。そこで本発明は、この残存する色収差を効果的に低減するため、回折光学面をレンズ系の最適な位置に形成し、軸上および軸外色収差の良好な補正を可能にしている。
【0014】
また、本発明では、製造の容易性と低コスト化のために全てのレンズをプラスチック材料で構成している。周知のように、光学系において選択可能なプラスチック材料には制限がある。即ち、ガラス材料のような高屈折率低分散材料をプラスチック材料に求めることは出来ない。従来、全てのレンズをプラスチック材料にする場合、諸収差と像面湾曲と色収差の全てを同時に補正するのは困難であった。本発明では、回折光学面が好適に色収差の補正を担うことで、色収差以外の諸収差の補正を容易にしている。従って、全てのレンズにプラスチック材料を採用しても、収差が良好に補正された低コストの撮像レンズが実現可能となる。
【0015】
上記構成の撮像レンズは、第1レンズは両凸レンズであり、第2レンズは両凹レンズであり、第3レンズは物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズであり、第4レンズは両凹レンズであり、開口絞りを第1レンズの物体側の面に配置している。
【0016】
第1レンズを両凸レンズとすることの効果について説明する。第3レンズ、第4レンズは結像面近くに位置するため、光軸上に結像する光線の通過領域が狭く、軸上色収差補正への関与は小さい。従って、軸上色収差の補正は第1レンズと第2レンズとで行うことになり、必然的に第1レンズの屈折力を強く設定する必要がある。ここで、第1レンズによる球面収差の発生と公差感度を低く抑え、その他の収差をバランスよく補正するためには、第1レンズを両凸形状にするのが効果的である。
【0017】
また、第2レンズは両凹レンズであり、色収差補正を行うと同時に非点収差及びコマ収差の補正に大きな役割を果たしている。第2レンズの物体側の面は像側の面よりも大きな曲率半径とすることが望ましい。そうすることで、倍率の色収差や軸外の諸収差を有効に補正することが可能になる。しかし、一方で大口径比化や広画角化、光学全長短縮化に対しては、第2レンズの物体側の面を像側の面よりも大きな曲率半径に設定すると軸外収差が悪化する傾向になる。また、第2レンズの像側の面の負の屈折力が強くなり過ぎると公差感度が厳しくなる傾向になる。本発明ではこれらの問題を、適切な位置に回折光学面を形成することで解決している。
【0018】
また、第3レンズを物体側の面が凹面の正の屈折力を有するメニスカスレンズとし、第4レンズを負の屈折力を有する両凹レンズとすることで、全長の短縮化と軸外光線に関わる諸収差を良好に補正している。第3レンズを物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズにすることで、適切なバックフォーカスを維持しながら、光学全長の増大を抑制することが可能になる。また、第4レンズを両凹形状のレンズにすることによって、ディストーションの低減と撮像素子に入射する主光線角度のテレセントリック性を確保している。
【0019】
さらに、開口絞りを第1レンズの物体側の面に配置することで撮像素子へ入射する主光線角度を一定の範囲内に抑制出来るようにしている。
【0020】
また、上記構成の撮像レンズは、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(1)0.83<f/f12<1.04
(2)−0.05<f/f34<0.08
(3)−0.07<f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)<−0.03
(4)−0.01<f/fd<0.15
ただし、
f :全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f34:第3レンズと第4レンズの合成焦点距離
f2 :第2レンズの焦点距離
fd :回折光学面の焦点距離
V2:第2レンズ材質のe線のアッベ数
Vd:回折光学面のe線のアッベ数
【0021】
条件式(1)は第1レンズと第2レンズの合成の屈折力を、全系の屈折力に近い値にすることで球面収差を抑え、軸上色収差を補正するための条件である。条件式(1)の下限値「0.83」を下回ると諸収差の補正、大口径化、広画角化には有利になるが、光学全長が長くなるので小型化が困難になる。一方、上限値「1.04を超えると第1レンズと第2レンズの合成の屈折力が強くなり過ぎ、諸収差の補正、大口径化、広画角化が困難となる。
【0022】
条件式(2)は第3レンズと第4レンズの合成の屈折力をゼロに近い値にすることで、光学全長の短縮化、適切なバックフォーカスの確保、ディストーションの補正、撮像素子への主光線入射角度の制御を容易にするものである。条件式(2)の下限値「−0.05」を下回ると、光学全長の短縮化には有利になるがディストーションが正方向に大きくなると同時に主光線入射角度も大きくなるため、収差補正が困難になる。一方、上限値「0.08」を超えると光学全長が長くなったり、バックフォーカスの確保が困難になる。
【0023】
条件式(3)は第2レンズの屈折力と回折光学面の近軸の屈折力との関係を規定し、最適な色収差補正を実現するための条件である。条件式(3)の下限値「−0.07」を下回ると色収差を補正するための第2レンズ及び回折光学面の屈折力が過剰となり、色収差補正が困難となる。一方、上限値「−0.03」を上回ると逆に屈折力が不足するため、この場合も色収差補正が困難になる。
【0024】
ところで、2枚構成の薄肉レンズにおける色消し補正は次式によって与えられることが知られている。
V1・f1=−V2・f2
ただし、
V1:第1レンズのアッベ数
f1:第1レンズの焦点距離
V2:第2レンズのアッベ数
f2:第2レンズの焦点距離
例えば、全系の焦点距離を1.0、V1=56.7、V2=26.0とすれば、f1=0.5414、f2=−1.1808、1/(V2・f2)=−0.033が容易に得られる。同様に第2レンズを回折光学面としてV2=−3.326を与えると、f1=1.0588、f2=18.01、1/(V2・f2)=−0.017が得られる。本発明における第2レンズの位置は、開口絞りから最適に離れた距離に配されている。この場合、条件式(3)の値は上記2枚の薄肉レンズの値より大きな絶対値となるが、回折光学面と組み合わせることで、この値を変化させることが出来る。本発明において、開口絞りから最も遠くに位置する回折光学面は、第3レンズの物体側の面である。この面に光線が通過する領域は、レンズにより集光されるため、開口絞りを通過する光線領域の約50%になる。このような場合において、上記のような薄肉レンズと同程度の色収差補正を可能にするためには条件式(3)の下限値「−0.07」が限度となる。
【0025】
条件式(4)は回折光学面の近軸の屈折力の範囲を規定するもので、条件式(3)と相まって良好な色収差補正を実現するための条件である。条件式(4)の下限値「−0.01」を下回ると第2レンズの軸上色収差補正の負担が大きくなり収差補正が困難になる。一方、上限値「0.15」を超えると軸上色収差補正が過剰となり、軸上色収差と倍率の色収差のバランスが崩れ良好な色収差補正が困難になる。
【0026】
回折光学面の近軸の屈折力は、光路差関数が高次方程式で定義されることから、必ずしも実際の色収差補正の状態を直接表すものではない。しかし、回折光学素子を設置する位置と近軸の屈折力には一定の傾向が認められる。即ち、物体側に近い側に回折光学面を配置した場合、主に軸上色収差補正のために近軸の屈折力が大きくなる。これに対して、物体側から遠い面に配置される場合は主に倍率の色収差補正が必要になるため、必ずしも近軸の屈折力を大きくする必要なない。本発明の第3レンズ、第4レンズの構成の場合、軸外における収差補正量が多く、非球面の作用で倍率の色収差の変化が大きくなるため、回折光学面は近軸の屈折力が比較的小さな値をとり、光路差関数の高次項が大きな値をとるようになる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、4枚構成で回折光学面を最適な位置に配置することにより、従来よりも色収差が良好に補正され、かつ他の収差補正との両立を実現した小型で高性能な撮像レンズを提供することができる。
【0028】
また、全てのレンズにプラスチック材料を使用することによって低コスト化を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1に係る撮像レンズの断面図である。
【図2】同上、諸収差図である。
【図3】本発明の実施例2に係る撮像レンズの断面図である。
【図4】同上、諸収差図である。
【図5】本発明の実施例3に係る撮像レンズの断面図である。
【図6】同上、諸収差図である。
【図7】本発明の実施例4に係る撮像レンズの断面図である。
【図8】同上、諸収差図である。
【図9】本発明の実施例5に係る撮像レンズの断面図である。
【図10】同上、諸収差図である。
【図11】本発明の実施例6に係る撮像レンズの断面図である。
【図12】同上、諸収差図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1、図3、図5、図7、図9、図11はそれぞれ、本発明の実施形態の実施例1〜6に対応するレンズ断面図を示したものである。いずれの実施例も基本的なレンズ構成は同一であるため、ここでは実施例1のレンズ断面図を参照しながら、本実施の形態に係る撮像レンズのレンズ構成について説明する。
【0032】
図1に示すように、本発明の撮像レンズは、第1レンズL1は両凸レンズ、第2レンズL2は両凹レンズ、第3レンズL3は物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズ、第4レンズL4は両凹レンズで構成されている。また、全てのレンズの両面は非球面で形成され、全てのレンズはプラスチック材料で構成されている。
【0033】
なお、全ての実施例において、第1レンズL1の物体側の面R1の有効径の周縁が開口絞りSTの作用を兼ねている。また、第4レンズL4の像側の面R8と結像面Sとの間にR9、R10で構成されるカバーガラスが配置されている。断面図においてd1,d2,・・・,d10は面間隔を、Xは光軸を、DOEは回折光学面をそれぞれ表している。
【0034】
本実施の形態では、全てのレンズ面を非球面で形成している。これらレンズ面に採用する非球面形状は、光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをY、円錐係数をK、非球面係数をA2iとしたとき,数式1により表される。
【0035】
また、第1レンズL1の物体側の面R1から第3レンズL3の物体側の面R5のうち、何れか一つの面に、数式2で表される光路差関数としての回折光学面DOEが形成されている。
【数1】
【数2】
ただし、
P :光路差(単位:波長)
B2i :光路差関数係数(i=1〜5)
【0036】
次に、本実施の形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fはレンズ系全体の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角をそれぞれ示す。また、面番号は物体側から数えた番号を示し、Rは曲率半径を示し、dは光軸に沿ったレンズ面間の距離(面間隔)を示し、nはe線に対する屈折率を、vはe線に対するアッベ数をそれぞれ示す。
【実施例1】
【0037】
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。なお、回折光学面DOEは第3レンズL3の物体側の面R5に形成されている。
【0038】
【表1】
【0039】
次に実施例1における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
各条件式の値を以下に示す。
(1)f/f12=0.916
(2)f/f34=0.055
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.036
(4)f/fd=−0.002
このように、実施例1に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0042】
図2は、実施例1の撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。これらの収差図において、球面収差図にはF線(486.13nm)、e線(546.07nm)C線(656.27nm)の各波長に対する収差量を示し、非点収差図にはサジタル像面Sにおける収差量とメリジオナル像面Tにおける収差量とをそれぞれ示す(図4、6、8、10、12において同じ)。
【0043】
図2に示されるように、実施例1に係る撮像レンズによれば、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【実施例2】
【0044】
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。実施例2においても、実施例1と同様、回折光学面DOEは第3レンズL3の物体側の面R5に形成されている。
【0045】
【表3】
【0046】
以下に実施例2における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
各条件式の値を以下に示す
(1)f/f12=0.943
(2)f/f34=0.024
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.053
(4)f/fd=0.045
このように、実施例2に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0049】
図4は、本実施例2に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。図4に示されるように、本実施例2に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【実施例3】
【0050】
基本的なレンズデータを以下の表5に示す。実施例3は、第2レンズL2の物体側の面R3に回折光学面DOEが形成されている。
【0051】
【表5】
【0052】
以下に実施例3における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表6に示す。
【0053】
【表6】
【0054】
各条件式の値を以下に示す。
(1)f/f12=0.927
(2)f/f34=−0.029
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.049
(4)f/fd=0.086
このように、実施例3に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0055】
図6は、本実施例3に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。図6に示されるように、実施例3に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【実施例4】
【0056】
基本的なレンズデータを以下の表7に示す。実施例4は、第1レンズL1の物体側の面R1に回折光学面DOEが形成されている。
【0057】
【表7】
【0058】
以下に実施例4における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表8に示す。
【0059】
【表8】
【0060】
各条件式の値を以下に示す。
(1)f/f12=0.964
(2)f/f34=−0.023
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.042
(4)f/fd=0.002
このように、実施例4に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0061】
図8は、本実施例4に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。図8に示されるように、実施例4に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【実施例5】
【0062】
基本的なレンズデータを以下の表9に示す。実施例5は、第1レンズL1の像側の面R2に回折光学面DOEが形成されている。
【0063】
【表9】
【0064】
以下に実施例5における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表10に示す。
【0065】
【表10】
【0066】
各条件式の値を以下に示す。
(1)f/f12=0.971
(2)f/f34=−0.039
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.042
(4)f/fd=0.022
このように、実施例5に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0067】
図10は、本実施例5に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。図10に示されるように、実施例5に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【実施例6】
【0068】
基本的なレンズデータを以下の表11に示す。実施例6は、第2レンズL2の像側の面R4に回折光学面DOEが形成されている。
【0069】
【表11】
【0070】
以下に実施例6における非球面係数と回折光学面における光路差関数の各定数の値を以下の表12に示す。
【0071】
【表12】
【0072】
各条件式の値を以下に示す。
f/f12=0.953
(2)f/f34=−0.024
(3)f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)=−0.047
(4)f/fd=0.045
このように、実施例6に係る撮像レンズは条件式(1)〜(4)を満足する。
【0073】
図12は、本実施例6に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、およびディストーション(%)を示したものである。図12に示されるように、実施例6に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。
【0074】
したがって、上記の実施の形態に係る撮像レンズは、少ない構成枚数で色収差補正と他の諸収差補正の両立を図り、大口径比化と高性能化を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、より高画素の小型撮像素子に適用することができ、特に携帯電話機等の携帯情報端末に搭載される小型の撮像レンズの分野での効果が大きい。
【符号の説明】
【0076】
ST 開口絞り
R1 第1レンズの物体側の面
R2 第1レンズの像側の面
R3 第2レンズの物体側の面
R4 第2レンズの像側の面
R5 第3レンズの物体側の面
R6 第3レンズの像側の面
R7 第4レンズの物体側の面
R8 第4レンズの像側の面
R9、R10 カバーガラス面
d1〜d9 軸上面間隔
X 光軸
S 結像面
DOE 回折光学面が形成された面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子用の撮像レンズであって、物体側から順に第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズとを配置して構成され、全てのレンズの両面を非球面で形成し、かつ第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面のうち、何れか一つの面に色分散機能を発揮する回折光学面を形成し、全てのレンズをプラスチック材料で構成したことを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
前記第1レンズは両凸レンズであり、
前記第2レンズは両凹レンズであり、
前記第3レンズは物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズであり、
前記第4レンズは両凹レンズであり、
開口絞りを第1レンズの物体側の面に配置したことを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
【請求項3】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(1)0.83<f/f12<1.04
(2)−0.05<f/f34<0.08
(3)−0.07<f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)<−0.03
(4)−0.01<f/fd<0.15
ただし、
f :全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f34:第3レンズと第4レンズの合成焦点距離
f2 :第2レンズの焦点距離
fd :回折光学面の焦点距離
V2:第2レンズのe線のアッベ数
Vd:回折光学面のe線のアッベ数
【請求項1】
撮像素子用の撮像レンズであって、物体側から順に第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズとを配置して構成され、全てのレンズの両面を非球面で形成し、かつ第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面のうち、何れか一つの面に色分散機能を発揮する回折光学面を形成し、全てのレンズをプラスチック材料で構成したことを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
前記第1レンズは両凸レンズであり、
前記第2レンズは両凹レンズであり、
前記第3レンズは物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズであり、
前記第4レンズは両凹レンズであり、
開口絞りを第1レンズの物体側の面に配置したことを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
【請求項3】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(1)0.83<f/f12<1.04
(2)−0.05<f/f34<0.08
(3)−0.07<f/(V2・f2)+f/(Vd・fd)<−0.03
(4)−0.01<f/fd<0.15
ただし、
f :全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f34:第3レンズと第4レンズの合成焦点距離
f2 :第2レンズの焦点距離
fd :回折光学面の焦点距離
V2:第2レンズのe線のアッベ数
Vd:回折光学面のe線のアッベ数
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−15587(P2013−15587A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146649(P2011−146649)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(391014055)カンタツ株式会社 (84)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(391014055)カンタツ株式会社 (84)
【Fターム(参考)】
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