説明

撮像素子の位置調整装置

【課題】位置調整対象の撮像素子からの画像信号を使用することに起因する課題を解決し、結像レンズや調整用電気治具を使用しないで済む撮像素子位置調整装置を提供する。
【解決手段】撮像素子位置調整装置を、撮像素子が接合されるプリズムを取り付けるプリズムベースと、撮像素子の撮像面の画像を拡大する拡大光学系と、前記拡大光学系により拡大された撮像素子の撮像面の画像を取得する画像取得用カメラと、撮像素子の撮像面に光を当てるための照明光導入部とを備え、前記照明光導入部からの光が撮像素子の撮像面に投射され、該光が投射された撮像素子の撮像面の画像が前記拡大光学系により拡大され、該拡大された撮像素子の撮像面の画像を前記画像取得用カメラにより取得し、該取得した撮像素子の撮像面の画像に基づき、撮像素子の位置を調整するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子の位置調整装置に関し、例えば、テレビジョン放送用カメラに用いるCCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)等の固体撮像素子の位置を調整するための、撮像素子の位置調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば3板構成のCCDビデオカメラ、ディジタルカメラ機器等の生産工程では、各色の撮像素子を光学的に位置決めするため、手動位置合わせや、自動位置合わせが行われている。
従来技術を、3CCDカメラの例を用いて説明する。図2は、撮像装置のプリズムと撮像素子の配置を示す側面図である。図2において、1はプリズム、2は撮像素子、3はレンズ(不図示)の光軸、51は入射光である。プリズム1は、1R、1B、1Gから構成されており、入射光51をRGB(赤、緑、青)の各色に分解する。撮像素子2は、2R、2B、2Gから構成されており、プリズム1で各色に分解された光を受光して、電気信号である映像信号に変換する。例えば、撮像素子2Gは、光軸3の方向に厚さtを有する直方体であり、撮像素子2R、2Bも同様である。
上記のように、従来のビデオカメラ等においては、高画質(特に色再現性)の要求性能を満たすため、図2に示すように、レンズ(図示略)を通して入射した光をプリズム1で3色に分解して、分解された光を各色に対応した撮像素子2で受光し、映像信号に変換することが行われている。
【0003】
この場合、プリズム1に対する撮像素子2の位置調整が必要となる。図3に、撮像装置における撮像素子2の調整方向を示す模式図を示す。図3では、撮像素子2の厚さtは、図示を省略している。例えば、図2のプリズム1Gに対する撮像素子2Gの位置調整を行う場合、図3において、撮像素子2Gの水平方向(X軸)、垂直方向(Y軸)、前後方向(Z軸)、及び各軸に対する回転方向(θx軸、θy軸、θz軸)の6軸全てに対して、位置調整が行われる。
【0004】
この位置調整には、サブミクロン単位の精度が求められている。この位置調整が正確に行われていないと、レンズ光軸に対する画像中心の位置ずれ(X、Y)、カメラ底面などのカメラ基準面に対する画像のローテーションずれ(θz)、同一色の画像面内での、上端と下端、右端と左端などでのフォーカスの不一致(θx、θy)、3色の重ね合わせであるレジストレーションのずれ(X、Y、θz)による色のにじみ、レンズに対するフォーカスの不一致(Z)、R・G・B3色の各色間でのフォーカスの不一致(Z)、などの問題が生じるためである。
このように、プリズム1と撮像素子2との位置関係が、ビデオカメラ等のカメラにおける重要な要素となっているため、その調整には、専用の位置調整装置を使用し、極めて高精度な作業を必要としていた。
【0005】
従来の代表的な位置調整装置の構成を、図7を用いて説明する。図7は、従来のチャート分離式の撮像素子位置調整装置の概略図である。プリズム1はプリズムベース21に取り付けられており、プリズム1の入射側には結像レンズ14が設置され、その前方の所定の位置には、調整方式により決まるパターンが印刷された反射型チャート15が設置される。反射型チャート15は、結像レンズ14の光軸3に対し垂直に、かつ、結像レンズ14の光軸3が反射型チャート15の中心を通るように調整されている。また、反射型チャート15を照らす照明装置18が複数設置される。
【0006】
各撮像素子2(2R、2B、2G)は、それぞれ、図3に示す全6軸方向に高精度調整が可能な6軸調整機構12(12R、12B、12G)の先端に保持されており、この6軸調整機構12は、手動で駆動するマイクロメータやガイドなどにより構成されている。また各撮像素子2には、各撮像素子2の駆動、受光信号を処理するための調整用電気治具16が接続され、調整用電気治具16には、外部電源17により電源が供給される。
調整用電気治具16は、波形モニタやオシロスコープなどの計測装置19や、表示装置20などに接続される。キャプチャボードを搭載したパソコン11に接続されるようにしてもよい。
【0007】
次に、図7の装置における、撮像素子位置調整作業の流れについて説明する。撮像素子の位置調整作業は、図10のフローチャートに沿って行われる。図10は、従来の撮像素子位置調整作業のフローチャートである。最初に、撮像素子2を組み付けるプリズム1をプリズムベース21に取り付ける(ステップS101)。次に、各色の撮像素子2(2R、2B、2G)を調整用電気治具16に接続し(ステップS102)、各色の撮像素子2は、調整用電気治具16に接続された状態で、それぞれ、6軸調整機構12(12R、12B、12G)の先端に取り付けられる(ステップS103)。この取付には、吸着、磁着、把持などの手法が採られている。
【0008】
その後、調整用電気治具16に外部電源17から電源を供給し、各撮像素子2を動作させる(ステップS104)。反射型チャート15のパターン像は、結像レンズ14の作用によって、カメラマウント毎に規格化された所定の位置に結像される。この結像位置は、プリズム1の分光作用によってRGBの各色毎に分割された位置となり、各結像位置に各色の撮像素子2(2R、2B、2G)を、6軸調整機構12(12R、12B、12G)の動作にて、高精度に位置調整を実施する(ステップS105)。
このとき、照明装置18の照度調整により反射型チャート15の明るさを制御したり、結像レンズ14のレンズの絞りを制御するなどして、反射型チャート15のパターン像の明るさを、最適値に制御する。明るさの調整では、調整用電気治具16によってシャッタースピードなどの調整も行われている。Z方向やθx、θy方向の調整においては、焦点深度の影響を最も小さくするため、結像レンズ14の絞りは最開放端にて行われる。
この位置調整では、撮像素子2が受光した光を調整用電気治具16にて処理を行い、その信号を元に、計測装置19、表示装置20、もしくはパソコン11などを使用して、鮮明なパターン像が得られるように、目視等により最適位置の判定が行われている。
このようにして撮像素子2の位置調整が完了すると、次に、撮像素子2をプリズム1に接合する作業を行う(ステップS106)。この接合には、はんだ接合、接着剤による接合などが用いられることが多い。
接合が完了した後、接合後の撮像素子2の位置を最終確認し(ステップS107)、問題なければ、調整用電気治具16への電源供給を外部電源17にて遮断し、調整用電気治具16との接続を取り外し(ステップS108)、撮像素子2が接合されたプリズム1をプリズムベース21から取り外して本作業が完了となる(ステップS109)。
【0009】
次に、図7の装置から一部を変更した図8の装置について説明する。図8は、図7の従来装置において、6軸調整機構12を電動制御の6軸マニピュレータ22とし、画像信号に基づき、撮像素子2の位置調整を自動調整で行うようにしたものである。
本装置構成では、6軸マニピュレータ22は1台のみを設置し、R・G・Bの各撮像素子2(2R、2B、2G)を1色ずつ位置調整し、終了後に6軸マニピュレータ22を旋回動作させて、他の色の調整を行うこととしている。また6軸マニピュレータ22を制御するための6軸コントローラ23、撮像素子2の位置判定、及び、6軸コントローラ23に動作命令を実施するためのパソコン11を備えている。
図8の撮像素子位置調整装置では、撮像素子2の位置判定、位置調整が自動で行われるため、図7の装置に比べ、位置精度の向上・安定化、調整時間の短縮、作業者への精度依存低減、などの効果が挙げられる。
以上説明した、図7、図8の装置では、結像レンズ14と離れた位置に反射型チャート15を設置しているため、装置全体サイズの大型化や、結像レンズ14と反射型チャート15の相対位置の調整が困難であること、反射型チャート15面内での照度ムラなどの課題がある。また、撮像素子位置調整装置用に製作した結像レンズ14を用いているが、レンズ特有の収差により、各色の撮像素子2の位置に微小な誤差が発生する要因ともなっている。
【0010】
次に、図9の撮像素子位置調整装置について説明する。図9は、上述したレンズ収差を極めて高精度に補正したマスタプロジェクタタイプの撮像素子位置調整装置の概略図である。
本図の装置は、上述した図7の装置における、結像レンズ14、反射型チャート15、照明装置18を、マスタプロジェクタ24として一体で構成したものである。それによって、撮像素子位置調整用に最適な収差の光学系の構築、照度ムラのない照明系の構築を図っている。このようなマスタプロジェクタ24では、チャートは高精度ガラスにパターンを蒸着した透過型チャートが用いられることが多い。この装置を使用した撮像素子位置調整では、収差の影響を抑えた高精度な位置調整が可能となる。しかし、この装置では、マスタプロジェクタ24自体の価格が高価であり、また、異なるプリズム1毎に最適な収差とした装置を導入することは生産投資上、困難な場合が多い。
【0011】
また、これまで説明した従来の位置調整方法では、いずれの方法においても撮像素子2を動作させ、信号処理を行うための調整用電気治具16が必要となる。新しい撮像素子を採用するカメラの開発時などは、撮像素子駆動部の回路ができていないため、調整用電気治具16も完成していない。そのためプリズム1に撮像素子2を適当に接合した試作機を先行して製作し、その試作機を使用して調整用電気治具16を開発する必要がある。また多機種のカメラを製作する場合、異なる撮像素子2の使用、異なる撮像素子2駆動基板の使用などのため、調整用電気治具16をカメラ毎に専用化して製作する必要がでてくる。そのため、多種の調整用電気治具16を保有しなければならず、製作するカメラの変更時にその都度、入れ替え作業などが必要となってくる。
また、撮像素子2と調整用電気治具16間の距離は、6軸の調整のため、製品より長くなることが多く、調整用画像が、接続ケーブルの延長によるノイズで悪化するなど、位置調整精度低下の要因ともなりうる。
【0012】
下記の特許文献1(特開2000-333189号公報)には、3板式カラーカメラにおいて、水平位置合わせ用被写体を用いて、各色CCDからの画像信号に基づき、各色CCDの水平方向の光学的位置を合わせるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000-333189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来の撮像素子位置調整装置における課題の解決、すなわち、位置調整対象の撮像素子からの画像信号を使用することに起因する課題を解決するものであり、(1)結像レンズの収差の影響低減、(2)撮像素子位置調整装置自体の価格低減と精度向上、(3)調整用電気治具を使用しない位置調整の実現による位置精度の向上と設備の効率化のうち、少なくとも1つが可能な撮像素子位置調整装置や、撮像素子位置調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した前記課題を解決するため、本発明に係る撮像素子位置調整においては、位置調整対象の撮像素子からの画像信号を使用せず、撮像素子位置調整装置で使用する撮像装置にて、位置調整対象の撮像素子を撮影し、その撮影画像をもって位置調整を実施するものである。
本発明の撮像素子位置調整装置の代表的な構成は、次のとおりである。
撮像素子が接合されるプリズムを取り付けるプリズムベースと、
撮像素子の撮像面の画像を拡大する拡大光学系と、
前記拡大光学系により拡大された撮像素子の撮像面の画像を取得する画像取得用カメラと、
撮像素子の撮像面に光を当てるための照明光導入部とを備え、
前記照明光導入部からの光が撮像素子の撮像面に投射され、該光が投射された撮像素子の撮像面の画像が前記拡大光学系により拡大され、該拡大された撮像素子の撮像面の画像を前記画像取得用カメラにより取得し、該取得した撮像素子の撮像面の画像に基づき、撮像素子の位置を調整することを特徴とする撮像素子位置調整装置。
【0016】
また、本発明の撮像素子位置調整方法の代表的な構成は、次のとおりである。
光を撮像素子の撮像面に投射するステップと、
該光が投射された撮像素子の撮像面の画像を拡大するステップと、
前記拡大された撮像素子の撮像面の画像を取得するステップと、
前記取得した撮像面の画像に基づき、撮像素子の位置を調整するステップと、
を備えることを特徴とする撮像素子位置調整方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、位置調整対象の撮像素子からの画像信号を使用せずに、撮像素子位置調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態における撮像素子位置調整装置の概略図である。
【図2】本発明を適用する撮像装置のプリズムと撮像素子の配置を示す側面図である。
【図3】本発明を適用する撮像装置における撮像素子の調整方向を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態における撮像素子位置調整作業のフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態における撮像素子調整時の位置判定方法を示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態における撮像素子調整時の位置判定方法を示す概略図である。
【図7】従来の、撮像素子位置調整装置の概略図(チャート分離式の実施例)である。
【図8】従来の、撮像素子位置調整装置の概略図(自動調整を適用した実施例)である。
【図9】従来の、撮像素子位置調整装置の概略図(マスタプロジェクタを適用した実施例)である。
【図10】従来の撮像素子位置調整作業のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態における撮像素子位置調整装置の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態における撮像素子位置調整装置(以下、本装置。)の概略図である。
図1において、本装置には、撮像素子2(2R、2G、2B)を先端に保持し、6軸方向に高精度調整が可能な6軸調整機構12(12R、12G、12B)が、従来装置と同様に設置される。また、プリズム1を取り付けるプリズムベース13が設置される。ただし、プリズムベース13には、従来装置で取り付けられる結像レンズは付いていない。
プリズム1の前方(撮像素子2がある側と反対の側)には、プリズム1を通して撮像素子2の撮像面を観察可能な拡大光学系4が設置されている。拡大光学系4は、撮像素子2の撮像面の画像を拡大するもので、レンズ等から構成される。拡大光学系4の一方の端(プリズム1に近い側)には、対物レンズ25が設けられている。拡大光学系4の他方の端には、拡大光学系4で拡大した撮像素子2の撮像面の画像を取得する(映し出す)ための画像取得用カメラ7が設けられている。このとき、撮像素子2の位置調整後の状態において、拡大光学系4の対物レンズ25の焦点位置26が、撮像素子2の撮像面27が設置されるべき位置となるよう、拡大光学系4とプリズムベース13の位置関係が設定され、固定されている(図5(a)参照)。
この対物レンズ25から撮像素子2の撮像面までの距離に関しては、カメラのレンズを取り付けるマウント方式によって規格化された数値があるため、調整するカメラのタイプによって多くの位置調整装置を保有する必要はない。具体的には、バヨネットタイプのカメラでは48mm、Cマウントタイプのカメラでは17.526mm、CSマウントタイプのカメラでは12.5mmなど、数パターンの数値のみとなる。
【0020】
図1において、拡大光学系4の上方からは、撮像素子2の撮像面を照らす照明6の光が導入される。照明6の光は、白色光であり、グラスファイバー等により照明光導入部41に導入される。照明光導入部41は、拡大光学系4に取り付けられており、照明光の光軸42は、拡大光学系4の光軸3と交差するように設定される。図1においては、光軸42と光軸3とが垂直に交差しているが、必ずしも垂直でなくてもよい。照明が導入される照明光導入部41の一部には、照明をあてる撮像素子2(2R、2G、2B)を選択するためのカラーフィルタ8が設置されるカラーフィルタ設置部43が設けられている。カラーフィルタ設置部43に隣接して、カラーフィルタ設置部43内のカラーフィルタを切り替えるためのカラーフィルタ格納部44が設けられている。例えば、カラーフィルタ設置部43内のカラーフィルタがGの場合は、カラーフィルタ格納部44にはR・Bのカラーフィルタが格納されている。カラーフィルタ設置部43内のカラーフィルタ8を、R・G・B間で切り替えることで、画像取得用カメラ7で撮影する撮像素子2の色を選択できるようになっている。
拡大光学系4内には、ハーフミラー5が内蔵されている。ハーフミラー5は、光軸42と光軸3とが交差する点に設けられている。ハーフミラー5により、導入された照明6の光を撮像素子2側に入射させて、撮像素子2の撮像面27を照らし、また、照らされた撮像素子2の撮像面27を画像取得用カメラ7で撮影可能となっている。
【0021】
この拡大光学系4は、高精度な動作が可能なXYステージ9上に構築されている。図1において、X方向は図1の紙面の表裏面を貫く方向であり、Y方向は図1の上下方向である。このXYステージ9をXY方向に動作させることにより、拡大光学系4や照明光導入部41などがXY方向に移動し、撮像素子2の撮像面全面を観察することができる。XYステージ9の制御は、パソコン11に接続したXYステージコントローラ10からの命令にて実施する。
画像取得用カメラ7の映像は、キャプチャボードを搭載したパソコン(パーソナルコンピュータ)11に取り込まれ、パソコン11のモニタ画面にて、撮像素子2の撮像面27を観察することが可能であるとともに、パソコン11に内蔵したソフトウエアにより、撮像素子2の位置が許容範囲内か否かが判定される。
なお、パソコン11やXYステージコントローラ10を用いず、画像取得用カメラ7の映像を目視しながら、手動でXYステージ9を移動させ、撮像素子2の位置調整を手動で行うことも可能である。
【0022】
次に、本実施形態における撮像素子2の位置調整作業の流れについて説明する。撮像素子の位置調整作業は、図4のフローチャートに沿って行われる。図4は、本発明の実施形態における撮像素子位置調整作業のフローチャートである。最初に、撮像素子2を組み付けるプリズム1をプリズムベース13に取り付ける(ステップS1)。次に、各色の撮像素子2(2R、2G、2B)を、それぞれ、6軸調整機構12(12R、12G、12B)の先端に取り付ける(ステップS2)。従来手法と同様、この取付には吸着、磁着、把持などの手法が採られるが、従来手法の調整用電気治具を使用しないため、撮像素子2へは信号線や電源線が供給されていない。
【0023】
続いて、照明6から光を導入する(ステップS3)。このとき、カラーフィルタ8として、最初の色(例えばG:緑)を照明6からの光路に設置しておく(ステップS4)ことで、導入された光はハーフミラー5の作用によりプリズム1側に導かれた後、プリズム1にて分光されGの撮像素子2Gにのみ導かれる。ここで、画像取得用カメラ7にて撮像素子2の撮像面27を観察する。このとき、照明6の光はGの撮像素子2Gにのみ照射されているので、観察できる撮像素子2は2Gのみとなる。
【0024】
次に、以下に述べるように、撮像素子2の位置調整を行う(ステップS5)。撮像素子2の位置判定では、拡大光学系4の焦点位置26は、撮像素子2の撮像面27を設定すべき距離の位置であるため、撮像素子2の撮像面27が最も明瞭に撮影できる位置に、撮像素子2のZ方向(図1における横方向)を、6軸調整機構12Gにより調整する(図5(a)参照)。具体的には、このとき対物レンズ25で観察しているのは、撮像素子2の撮像面27に配置されている個々の素子を拡大して観察しており、Z方向が所定の位置からずれていると、対物レンズ25の焦点位置26から外れるためボケた映像が得られ、最も明瞭な映像が観察できる点が、撮像素子2の正規のZ方向位置であると判定できる。
【0025】
θx方向に関しては、XYステージ9を上下動作(Y方向動作)させながら、撮像素子2の撮像面27内での上下端で、共に最も明瞭に撮影できる状態となるように、撮像素子2の方向を6軸調整機構12にて調整する。また、θy方向に関しては、XYステージ9を水平動作(X方向動作)させながら、撮像素子2の撮像面27内での左右端で、共に最も明瞭に撮影できる状態となるように、撮像素子2の方向を6軸調整機構12にて調整する。具体的には、図5(b)や図5(c)に示すように、θxが正規の位置であれば、撮像面27の上端(図5(b))及び下端(図5(b))で共に最も明瞭に撮像素子の拡大像が得られるが、正規の位置にない場合は、例えば、図5(d)や図5(e)に示すように、撮像面27の上端(図5(d))で明瞭な画像が得られるにも関わらず、下端(図5(e))ではボケた映像が得られるようになる。このように、XYステージ9を上下、左右に動作させながら、θx、θyの調整を行う。
【0026】
X、Y及びθz方向に関しては、予め撮像素子2に基準となるマーク28を描いておくことで、基準マーク28位置とXYステージ9の位置をマッチングさせる(合わせる)ことにより調整する。
本調整の一実施例について以下に説明する。図6(a)に基準マーク28の例を示す。本マークは,撮像素子2の撮像エリア29から外れた位置に、撮像エリア中心30と所定の距離31で、且つその距離31を極めて高い精度で描いておく。
位置調整時は、XYステージ9を所定の距離31分だけ、プリズム1の光軸中心から動作させる。XYステージ9は、XYステージコントローラ10にて制御される高精度なステージで構築してあるため、この動作は高い位置再現性で実施される。
図6(b)に示すように、このXYステージ9動作後の対物レンズ25で撮影される画像32において、撮像素子2に設けられた基準マーク28の撮影像34を、対物レンズ25に設けられた中心線33に一致させるように、X、Y、θzを6軸調整機構12にて調整を行う。
この例では、十字型の基準マーク28を用いているが、他の形状でも構わない。また基準マーク28を複数設け、複数個所にて位置の確認を実施してもよい。
【0027】
1つの撮像素子2の調整が終了したら、カラーフィルタ8を他の色に変更し(ステップS4)、上記と同様に位置調整を行う(ステップS5)。各色の相対位置に関しては、XYステージ9を同位置に設置したままカラーフィルタ8を順次切り替えることで、最終的な確認が可能となる。
位置調整が完了した後、従来同様にプリズム1と撮像素子2の接合作業を行い(ステップS6)、接合後の撮像素子2の位置を最終確認し(ステップS7)、問題なければ、撮像素子2が接合されたプリズム1をプリズムベース13から取り外して本作業が完了となる(ステップS8)。
【0028】
以上述べた本発明の撮像素子位置調整方法では、調整対象の撮像素子による撮像画像を使用しないため、調整用電気治具を使用することなく、撮像素子の位置調整が可能である。
また調整対象の撮像素子による撮像画像を使用しないため、プリズムに合わせた結像レンズは必要なく、そこで発生するレンズ収差等の影響を受けることなく、撮像素子の位置調整を実施できる。
【0029】
本発明により、調整対象の撮像素子による撮像画像を必要としない位置調整が可能となり、撮像素子の駆動回路が存在しない開発時より、高精度な位置調整を実施することができる。
また、従来必要であった調整用電気治具も、カメラの種類毎に保有する必要はない。また結像レンズにて発生していた収差の影響もなくなることで、位置調整精度の向上も期待できる。
【0030】
なお、本発明は、本発明に係る処理を実行する装置としてだけでなく、システム、方法として、或いは、このような方法やシステムを実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
【0031】
本明細書には、次の発明が含まれる。すなわち、第1の発明は、
撮像素子が接合されるプリズムを取り付けるプリズムベースと、
撮像素子の撮像面の画像を拡大する拡大光学系と、
前記拡大光学系により拡大された撮像素子の撮像面の画像を取得する画像取得用カメラと、
撮像素子の撮像面に光を当てるための照明光導入部とを備え、
前記照明光導入部からの光が撮像素子の撮像面に投射され、該光が投射された撮像素子の撮像面の画像が前記拡大光学系により拡大され、該拡大された撮像素子の撮像面の画像を前記画像取得用カメラにより取得し、該取得した撮像素子の撮像面の画像に基づき、撮像素子の位置を調整することを特徴とする撮像素子位置調整装置。
このような構成にすると、調整対象の撮像素子からの撮像画像を使用しないで、撮像素子の位置調整をすることができる。
【0032】
第2の発明は、
前記第1の発明の撮像素子位置調整装置において、前記拡大光学系、前記画像取得用カメラ、および前記照明光導入部を一体的に移動させるXYステージを備え、
前記XYステージを移動させることにより、撮像素子の撮像面の全面に亘り撮像素子の位置を調整することを特徴とする撮像素子位置調整装置。
このような構成にすると、撮像素子の撮像面の全面に亘り、位置調整を容易に行うことができる。
【0033】
第3の発明は、
光を撮像素子の撮像面に投射するステップと、
該光が投射された撮像素子の撮像面の画像を拡大するステップと、
前記拡大された撮像素子の撮像面の画像を取得するステップと、
前記取得した撮像面の画像に基づき、撮像素子の位置を調整するステップと、
を備えることを特徴とする撮像素子位置調整方法。
このような構成にすると、調整対象の撮像素子からの撮像画像を使用しないで、撮像素子の位置調整をすることができる。
【0034】
第4の発明は、
前記第3の発明の撮像素子位置調整方法において、
予め撮像素子の撮像面に位置調整基準マークを設けるステップを備え、
前記撮像素子の位置を調整するステップにおいて、前記位置調整基準マークに基づき、撮像素子の位置を調整することを特徴とする撮像素子位置調整方法。
このような構成にすると、レンズ光軸に垂直な平面上の位置調整(X軸、Y軸及びθz方向)を、容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
1:プリズム、2:撮像素子、3:レンズ光軸、4:拡大光学系、5:ハーフミラー、6:照明、7:画像取得用カメラ、8:カラーフィルタ、9:XYステージ、10:XYステージコントローラ、11:パソコン、12:6軸調整機構、13:プリズムベース、14:結像レンズ、15:反射型チャート、16:調整用電気治具、17:外部電源、18:照明装置、19:計測装置、20:表示装置、21:プリズムベース、22:6軸マニピュレータ、23:6軸コントローラ、24:マスタプロジェクタ、25:拡大光学系の対物レンズ、26:拡大光学系対物レンズの焦点位置、27:撮像素子の撮像面、28:撮像素子に設けた基準マーク、29:撮像素子の撮像エリア、30:撮像素子の撮像中心、31:撮像素子の撮像中心と基準マークとの距離、32:調整時の対物レンズで得られる画像、33:対物レンズに設けられた中心線、34:調整時の対物レンズで得られる基準マーク画像、41:照明光導入部、42:照明光軸、43:カラーフィルタ設置部、44:カラーフィルタ格納部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子が接合されるプリズムを取り付けるプリズムベースと、
撮像素子の撮像面の画像を拡大する拡大光学系と、
前記拡大光学系により拡大された撮像素子の撮像面の画像を取得する画像取得用カメラと、
撮像素子の撮像面に光を当てるための照明光導入部とを備え、
前記照明光導入部からの光が撮像素子の撮像面に投射され、該光が投射された撮像素子の撮像面の画像が前記拡大光学系により拡大され、該拡大された撮像素子の撮像面の画像を前記画像取得用カメラにより取得し、該取得した撮像素子の撮像面の画像に基づき、撮像素子の位置を調整することを特徴とする撮像素子位置調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−250366(P2011−250366A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124281(P2010−124281)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】