説明

撮像装置、制御装置、制御方法および画像送信制御プログラム

【課題】 本発明の目的は、パン、チルト、ローテーション又はズームの動作によっても制限領域を確実に保護し、かつ演算装置の更なる高速処理化を必要としない撮像装置、画像送信制御装置、画像送信制御方法および画像送信制御プログラムを提供することである。
【解決手段】 撮像装置が撮像した画像の表示を制限する制限領域の制限位置情報を取得する取得部と、前記撮像装置の撮像領域を移動させる過程での前記撮像領域の軌跡上にある前記制限領域を移動前と移動後の前記撮像領域の撮像位置と前記制限位置情報とに基づいて検出する検出部と、前記検出部が検出した制限領域が含まれる画像を送信しないように制御する制御部とを有する画像送信制御装置により、前記画像の送信を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制限領域内の撮像画像の表示が制限されるように撮像画像の送信を制限することのできる撮像装置、制御装置、制御方法および画像送信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像した画像にマスク画像を重畳する領域(以下、「マスク領域」)を設定して、マスク領域内の撮像画像を監視者が閲覧できないようにする機能を備えたカメラ装置が知られている。このようなカメラ装置においては、まず、カメラ装置が撮像可能な撮像可能領域におけるマスク画像の重畳位置を示す情報(以下、「制限位置情報」)が設定される。カメラ装置は撮像した画像を表示装置に表示させる前に、制限位置情報を現在の撮像画像におけるマスク画像の重畳位置を指す重畳位置情報に変換する。重畳位置情報は、撮像可能領域における現在のカメラ装置の撮像位置と制限位置情報とに基づいて算出される。そして、カメラ装置はマスク画像用メモリ上でマスク画像を描画し、その後、撮像画像における重畳位置情報に基づく位置に、描画したマスク画像を重畳して表示装置に出力する。従って、上述のデータ変換や描画処理、そのためのデータの読み書きに時間がかかる。
【0003】
上述のカメラ装置では、マスク画像を撮像画像に重畳するための処理と同時にカメラ装置がパンやチルト等の動作を行う場合に、移動前の撮像位置に基づいて重畳位置情報が算出される。しかし、パン・チルト動作を行う場合、表示装置に表示される撮像画像の撮像位置は、重畳位置情報の算出を開始してからマスク画像を合成するまでにかかった時間分先の撮像位置に変わってしまう。すると、重畳位置情報を算出するために用いる撮像位置と、実際にマスク画像を重畳する撮像位置とが異なるため、マスク画像を重畳する領域とそのマスク画像でユーザーの閲覧を制限したいマスク領域との間にずれが発生する。パンやチルト、ズームの速度が速いときはこのずれが大きくなり、マスク領域が保護されずに一部が見えてしまう場合がある。
【0004】
このような課題に対処する方法として、例えば、特許文献1の監視カメラ装置は撮像画像の移動量に応じてマスク画像の位置および大きさを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−219414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にかかる監視カメラ装置はマスク画像の演算に際して補正を加える演算も行うために演算がより複雑になり、より高速処理可能なCPU(中央演算処理装置)が必要となる問題点がある。このような課題はマスク画像を重畳する場合に限られず、撮像した画像の表示を制限する制限領域にモザイク処理など他の方法により表示制限を行う場合などにも同様の課題がある。
【0007】
本発明の目的は、パン、チルト、ローテーション又はズームの動作によっても制限領域を確実に保護し、かつ演算装置の更なる高速処理化を必要としない監視カメラ装置、画像送信制御装置、画像送信制御方法および画像送信制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる制御装置は、撮像装置が撮像した画像の送信を制御する制御装置であって、前記撮像装置が撮像可能な撮像可能領域内において前記画像の表示を制限する制限領域の制限位置情報を取得する取得手段と、前記撮像装置の撮像領域を移動させる過程での前記撮像領域の軌跡上にある前記制限領域を移動前と移動後の前記撮像領域の撮像位置と前記制限位置情報とに基づいて検出する検出手段と、前記検出手段が検出した制限領域が含まれる画像を送信しないように制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、演算装置の更なる高速処理化を必要とせずに、パン、チルト、ローテーションやズームなどの撮像領域の移動がある場合にも制限領域を確実に保護しつつ、撮像した画像の送信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の監視カメラ装置の構成を示すブロック図。
【図2】撮像可能領域、撮像領域、及び、制限領域の関係を示すための図。
【図3】実施例1の検出部11の処理フローを示す図。
【図4】実施例1の撮像領域の移動軌跡を示す図。
【図5】実施例2の検出部11の処理フローを示す図。
【図6】実施例2の検出部11の機能ブロック図。
【図7】実施例3の検出部11の処理フローを示す図。
【図8】実施例3の監視カメラ装置において画像送信制御の可否を判定するために用いられるテーブルを示す図。
【図9】実施例4の監視カメラ装置の構成を示すブロック図。
【図10】実施例4の撮像領域の移動軌跡を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(実施例1)
本発明の第1の実施形態の監視カメラ装置を示したブロック構成図を図1(a)に示す。
【0013】
撮像部1はCMOSなどの撮像素子によって撮像された画像信号に信号処理等を施すことによってYUVなどのフォーマットによる画像を出力する。
【0014】
重畳部2はマスク画像用メモリを有し、マスク画像用メモリ上にマスク画像を描画することによりマスク画像を生成する。そして、重畳部2は撮像部1が撮像する撮像領域における制限領域にマスク画像を重畳する。ここで撮像領域と制限領域について図2(a)を用いて説明する。図2は監視カメラ装置から後述のネットワーク5を介して送信された画像を表示する表示装置上に表示された画像を示している。図2(a)において撮像領域21は任意のパン、チルト、ズーム位置において撮像部1が撮像している領域である。また、制限領域22は、撮像部1が撮像した画像の表示を制限する領域である。本実施例では画像の表示を制限する方法として、マスク画像を重畳する場合について説明するが、これに限られず、制限領域22に対してモザイク処理を行ってもよい。
【0015】
重畳部2がマスクを重畳する位置は後述の生成部12において生成される重畳位置情報によって特定される。ここで重畳位置情報とは、撮像領域21における制限領域22の位置についての情報のことをいう。例えば重畳位置情報とは、撮像部1が撮像している撮像領域21を座標平面とした場合における制限領域22の頂点の座標値である。図2(a)において、重畳位置情報とは、例えば撮像領域21の左下の頂点を原点とした座標平面における制限領域22の頂点座標(x1,y1)、(x1,y2)、(x2,y1)、(x2,y2)のことをいう。制限領域が矩形である場合は4点全ての頂点について全ての頂点座標を求める必要はなく、対角となる2頂点の座標を求めれば制限領域を特定することができる。また、座標の原点は撮像領域21の左下の頂点ではなく、撮像領域21上の任意の点とすることができる。さらに、重畳位置情報は制限領域22の頂点座標に限られるものではない。
【0016】
重畳部2は撮像部1が撮像する撮像領域21における制限領域22の位置を重畳位置情報によって特定し、撮像部1が撮像した画像上の制限領域22にマスク画像を重畳して符号化部3に出力する。
【0017】
符号化部3は重畳部2から入力された画像を帯域の制限されたネットワーク5へ送信するために、JPEGやMPEG−4、H.264といった符号化方式を使って画像の圧縮を行う。I/F部4は符号化部3で符号化された画像をネットワーク5へ送信する。ネットワーク5は符号化部3で符号化された画像を遠隔地へ配信する。ネットワーク5としてイーサネット(登録商標)や公衆電話回線といった通信回線を用いることができる。通信回線の種類については特に限定しない。
【0018】
雲台部6は撮像部1の向きをパン、チルト方向へ移動させるために用いられる。また、雲台部6は雲台位置を認識するためのホームポジションセンサーやパルスエンコーダーを有し、これらを用いて取得した雲台位置についての情報を指示部8に出力する。雲台位置についての情報とは、例えば、ホームポジションセンサーによって特定されるホームポジションから雲台位置がパルスエンコーダーが出力するパルス数で何パルス分移動したかを表す情報のことを指す。雲台部6はパルスエンコーダーを備えずに、後述の指示部8から後述の駆動部7へ指示されるモーターの駆動パルス数をカウントすることで雲台位置を認識することも可能である。
【0019】
駆動部7は後述の指示部8から駆動量や駆動の向きについての指示を受けて雲台部6のモーターを駆動する。
【0020】
指示部8は撮像部1が移動すべきパン、チルト位置(以下、目標位置)についてのデータを後述の設定部14から取得する。目標位置についてのデータとは、例えば、現在の雲台位置からパルスエンコーダーが出力するパルス数で何パルス分移動した位置に撮像部1を移動させるかというデータのことをいう。目標位置についてのデータを受けとると指示部8は駆動部7に雲台動作指示を出力する。また、指示部8は後述の読取部9へ雲台動作の指示状況を出力する。
【0021】
読取部9は指示部8から雲台動作の指示状況を受け、撮像部1が撮像しているパン、チルト位置を読み取る。パン、チルト位置は、例えば、ホームポジションからパン、チルト方向にそれぞれパルスエンコーダーが出力するパルス数で何パルス分移動した位置に雲台があるかによって特定される。また、読取部9は撮像部1からズーム情報を取得し、撮像部1の画角を読み取る。そして、読み取ったパン、チルト位置および撮像部1の画角から、撮像位置を算出する。ここで撮像位置とは、撮像部1がパン、チルト等の動作により撮像可能な撮像可能領域における撮像領域の位置のことをいう。
【0022】
撮像位置について図2(b)を用いて説明する。本実施例では、撮像位置は撮像部1が撮像可能な撮像可能領域20を座標平面としたときの撮像領域21の頂点の座標で表されるものとする。図2(b)において、撮像位置とは、例えば撮像可能領域20の左下の頂点を原点とした座標平面における制限領域22の頂点座標(X1,Y1)、(X1,Y2)、(X2,Y1)、(X2,Y2)のことをいう。撮像位置は指示部8から入力される雲台の位置情報と、撮像部1から入力される撮像領域の画角とを用いて公知の方法によって算出することができる。撮像領域21が矩形である場合は4点全ての頂点について全ての頂点座標を求める必要はなく、対角となる2頂点の座標を求めればよい。また、座標の原点は撮像可能領域20の左下の頂点ではなく、撮像可能領域20上の任意の点とすることができる。さらに、撮像位置の特定方法は撮像領域21の頂点座標を用いた方法に限られるものではない。
【0023】
読取部9は同様にして、指示部8から指示された指示に基づいて目標位置に雲台が移動した後の撮像部1の撮像位置を算出する。算出した移動前後及び現在の撮像位置の座標は後述の検出部11に出力される。
【0024】
取得部10は撮像部1が撮像可能な撮像可能領域20内において画像の表示を制限する制限領域22の制限位置情報を取得する。本実施例では、取得部10はネットワーク5に接続された不図示の操作端末によって予め設定された制限位置情報を取得する。制限位置情報の取得の方法はネットワークを介するものに限られず、入力装置から取得部10に対して直接制限位置情報の入力を受けることとしてもよい。あるいは、USBメモリなどの外部記憶装置から入力さてもよい。
【0025】
ここで制限位置情報について図2(b)を用いて説明する。制限位置情報とは、撮像部1がパン、チルト等の動作により撮像可能な撮像可能領域20における制限領域22の位置を特定するための情報のことをいう。本実施例では制限位置情報は撮像部1が撮像可能な撮像可能領域20を座標平面としたときの制限領域22の頂点の座標として説明する。図2(b)において、制限位置情報とは、例えば撮像可能領域20の左下の頂点を原点とした座標平面における制限領域22の頂点座標(X3,Y3)、(X3,Y4)、(X4,Y3)、(X4,Y4)のことをいう。制限領域22が矩形である場合は4点全ての頂点について全ての頂点座標を求める必要はなく、対角となる2頂点の座標を求めればよい。また、座標の原点は撮像可能領域20の左下の頂点ではなく、撮像可能領域20上の任意の点とすることができる。さらに、制限位置情報は制限領域22の頂点座標に限られるものではない。取得部10は取得した制限位置情報を検出部11と生成部12へ出力する。
【0026】
検出部11は、撮像部1の撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上にある制限領域を移動前と移動後の撮像領域の撮像位置と制限位置情報とに基づいて検出する。検出部11は移動前と移動後の撮像領域21の撮像位置情報を読取部9から取得する。また、検出部11は制限位置情報を取得部10から取得する。検出部11はCPU(Central Processing Unit)15、ROM(Read Only Memory)16、およびRAM(Random Access Memory)17を内蔵する。検出部11は内蔵するCPU15がROM16やRAM17に格納したプログラムを実行することにより上述の検出を行う。ROM16は、変更を必要としないプログラムやパラメタを格納する。RAM17は、外部から供給されるデータを一時記憶する。RAM17は読取部9から出力された現在の撮像位置および移動前後の撮像位置の座標を一時記憶する。また、RAM17は取得部10から出力される、撮像可能領域20における制限領域の制限位置情報を一時記憶する。ROM16に格納されるプログラムの詳細については後述する。
【0027】
検出部11の機能は図1(b)のブロック図に示したハードウエアによって実現してもよい。受信部110は重畳部2、指示部8、読取部9、取得部10から信号を受信する。受信部110は重畳部2からマスク画像の重畳が完了したことを示す信号を受信して送信制御指示部119に知らせる。また受信部110は、指示部8が駆動部7に対して移動指示を行ったことを示す信号を指示部8から受信して制限領域検出部112に知らせる。また受信部110は読取部9から、撮像部1の移動前後、および現在の撮像領域の撮像位置を受信して記憶部111に記憶させる。また受信部110は取得部10から制限位置情報を受信して制限領域検出部112に送信する。
【0028】
記憶部111は読取部9から受信した撮像位置についての情報を記憶する。また、記憶部111は制限領域検出部112が検出した制限領域の制限位置情報を記憶する。さらに、記憶部111はCPU15で実行するためのプログラムを格納する。
【0029】
制限領域検出部112は撮像部1の撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上にある制限領域を移動前と移動後の前記撮像領域の撮像位置と制限位置情報とに基づいて検出する。制限領域検出部112は撮像領域を移動させる過程での全ての撮像領域の軌跡上にある制限領域を検出する全範囲検出部113を有する。また、制限領域検出部112は撮像部1の移動後の撮像領域に含まれる制限領域を検出する移動後検出部114を有する。さらに、制限領域検出部112は撮像部1の移動前の撮像領域に含まれる制限領域を検出する移動前検出部115を有する。
【0030】
制限領域検出部112の移動後検出部114が移動後の撮像領域に制限領域を検出すると、生成指示部116は生成部12に対して重畳位置情報の生成開始を指示する。また、移動開始指示部117は制限領域検出部112の検出結果に基づいて、指示部8に対して撮像領域の移動を開始させるように指示する。移動開始指示部117が移動開始指示を行うタイミングについては後述する。
【0031】
また、判断部118は制限領域検出部112で検出された制限領域の制限位置情報と、受信部110が受信した現在の撮像位置情報とに基づいて、撮像領域がそれ以上移動すると制限領域を含むことになる境界位置まで移動したか判断する。判断方法については後述する。
【0032】
送信制御指示部119は制限領域検出部112の検出結果と受信部から送信されるマスク画像の重畳完了信号とに基づいて、制御部13に対して撮像画像の送信あるいは停止の制御を行うように指示する。
【0033】
以上の構成により、検出部11は撮像部1の撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上にある制限領域を移動前と移動後の前記撮像領域の撮像位置と制限位置情報とに基づいて検出する。
【0034】
生成部12は制限位置情報と撮像部1の撮像位置とから重畳位置情報を生成する。以下、生成部12における重畳位置情報の算出の例を図2(b)を用いて説明する。撮像領域21及び制限領域22はそれぞれ矩形であるものとする。前述の通り、図2(b)において、制限位置情報とは、例えば撮像可能領域20の左下の頂点を原点とした座標平面における制限領域22の頂点座標(X3,Y3)、(X3,Y4)、(X4,Y3)、(X4,Y4)のことをいう。また、撮像部1の撮像位置は、前述の通り、(X1,Y1)、(X1,Y2)、(X2,Y1)、(X2,Y2)として表される。ここで前述の通り、重畳位置情報とは、撮像領域21における制限領域22の位置についての情報のことをいう。重畳位置情報は、撮像領域21の左下の頂点を原点とした座標平面における制限領域22の頂点座標によって特定される。すなわち、重畳位置情報は制限位置情報と撮像位置の座標とを用いて、(X3−X1,Y3−Y1)、(X3−X1,Y4−Y1)、(X4−X1,Y3−Y1)、(X4−X1,Y4−Y1)と表すできる。このようにして、重畳位置情報が生成される。重畳位置情報の算出の方法はこの方法に限られず、他方法によって生成してもよい。生成部12は生成した重畳位置情報を重畳部2に出力する。
【0035】
制御部13は検出部11の判定結果に基づいて、検出部11が検出した制限領域が含まれる画像を送信しないように制御する。本実施例では制御部13は、検出部11が検出した制限領域が含まれる画像のネットワーク5への送信を停止させる停止制御をI/F部4に対して行う。また制御部13は、画像の送信を停止させた後、読取部9もしくは生成部12の出力に基づいて、撮像画像のネットワーク5への送信を再開させる再開制御をI/F部4に対して行う。
【0036】
設定部14は、目標位置についてのデータを保持し、指示部8へ出力する。また、設定部14は目標位置での画角についてのデータを保持し、撮像部1へ出力する。本実施例においては、設定部14は事前に設定された複数箇所の目標位置(以下、プリセットポジション)についてのデータを保持する。また、本実施例において設定部14は各プリセットポジションにおけるズーム位置についてのデータを保持する。設定部14に保持するデータはネットワーク5を通じて取得してもよいし、予め設定されていてもよい。
【0037】
設定部14は、雲台部6が一定の間隔をおいて、あるプリセットポジションから別のプリセットポジションへ順次移動・巡回するように、プリセットポジションについてのデータを指示部8へ出力する。設定部14において、パンチルトの移動スピードや各プリセットポジションでの撮像時間も保持して指示部8に対して出力できることとしてもよい。雲台部6の動作方法は上述のようにプリセットポジションへ順次移動・巡回するものに限られない。例えば、雲台部6の動作を指示するためのインタフェースにおいて、撮像部1が撮像している範囲が表示された表示装置の画面内の所望の位置をマウスでクリックすることでその位置を画面の中心に表示するように雲台を動作させてもよい。また、インターフェース上にパンチルト動作で監視カメラ装置が撮像可能な撮像可能領域20の画像を事前に準備しておき、その中の所望の位置をクリックすると、その位置を表示装置の画面の中心に表示させるように雲台を動作させてもよい。これらの動作を行う場合、設定部14はこれらのインターフェースを用いて入力された指示に基づいて目標位置を算出し、指示部8に入力する。
【0038】
次に、本実施例にかかる監視カメラ装置の動作について説明する。本実施例では、監視カメラ装置が、決められた順序でプリセットポジションを巡回して順次撮像を行う(以下、このような動作を「プリセット巡回」と呼ぶ)場合について説明する。プリセットポジションはユーザーによって設定部14に予め登録されているものとする。
【0039】
まず、監視カメラ装置が起動すると、雲台部6はホームポジションセンサーによってホームポジションを特定し、パン方向、チルト方向のそれぞれについて基準位置に撮像部1の向きを移動させる。
【0040】
次に、ユーザーによって設定部14に対してプリセット巡回を開始させる指示がなされた場合、設定部14は指示部8に対して、雲台部6が移動すべきプリセットポジション情報を所定の時間間隔で送信する。プリセットポジション情報は、次に雲台部6が移動すべき位置がホームポジションからパルスエンコーダーが出力するパルス数で何パルス分移動させた位置にあるかについての情報である。
【0041】
指示部8は設定部14からプリセットポジション情報を受信すると駆動部7に対して雲台部6の現在位置からパルスエンコーダーが出力するパルス数で何パルス分移動させればよいか判断して駆動部7に駆動命令を出す。指示部8は雲台部6のホームポジションセンサー及びパルスエンコーダーの出力に基づいて雲台部6の現在位置についての情報を認識する。また、指示部8はプリセットポジション情報を受信すると検出部11に対して、プリセットポジションへの移動指示があったことを知らせる。
【0042】
駆動部7は指示部8からの指示に応じて雲台部6を駆動させ、撮像部1の向きをプリセットポジションの方向に向ける。雲台部6はパルスエンコーダーが出力するパルス数で何パルス分駆動したかについての情報(以下、雲台動作情報)を指示部8に出力する。指示部8は雲台部6からの情報を受け取ると読取部9に雲台動作情報を出力する。
【0043】
読取部9は指示部8からの雲台動作情報に基づき、現在雲台部6がホームポジションからパルスエンコーダーが出力するパルス数で何パルス分移動させた位置にあるかを特定して現在の撮像領域のパン、チルト位置を特定する。また、読取部9は撮像部1から現在の撮像部1の画角情報を受信する。そして読取部9はパン、チルト情報と画角情報とに基づいて撮像位置を特定し、検出部11に出力する。読取部9は、同様にして、指示部8からの指示に基づいて撮像部1がパン、チルトされて撮像領域が移動した後の撮像領域の撮像位置情報を検出部11に出力する。
【0044】
検出部11は、撮像部1の撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上にある制限領域を移動前と移動後の撮像領域の撮像位置と制限位置情報とに基づいて検出する。また、本実施例において検出部11は、制限領域を検出した後、撮像領域を移動させる過程で撮像領域に制限領域が含まれる範囲を検出する。そして、検出部11は検出した制限領域が含まれる画像を送信しないように制御部13に対して画像送信の停止制御、再開制御を行うように指示を出す。
【0045】
検出部11の処理について図3を用いて説明する。検出部11がCPU15、ROM16、RAM17を内蔵する形態では、図3の処理フローは、図3に示される手順をCPU15に実行させるためのプログラムを示す。
【0046】
まず検出部11は、指示部8からの信号に基づいて、指示部8がプリセットポジションへの移動指示を受けたか判断する(S301)。指示部8は移動指示を受けると検出部11に移動指示があったことを知らせる。
【0047】
指示部8に対してプリセットポジションへの移動指示があった場合(S301でYESの場合)、検出部11は撮像領域を移動させる過程で撮像部1が撮像する撮像領域に含まれる制限領域を検出する(S302)。
【0048】
撮像領域を移動させる過程で撮像領域に含まれる制限領域の検出について、図4を用いて説明する。図4は撮像部1の撮像可能領域20における、撮像部1の撮像領域と制限領域を表している。撮像可能領域20の左下の頂点を原点として、撮像可能領域20を座標平面とした場合の座標値でそれぞれの領域を表す。図4において撮像部1の撮像可能領域20の左下の頂点を原点として、右方向にxの値が増加し、上方向にyの値が増加するものとする。
【0049】
撮像部1は撮像領域41(xaL,yaD)、(xaL,yaU)、(xaR,yaD)、(xaR,yaU)から撮像領域42(xbL,ybD)、(xbL,ybU)、(xbR,ybD)、(xbR,ybU)に移動する。撮像領域45(xcL,ycD)、(xcL,ycU)、(xcR,ycD)、(xcR,ycU)は撮像部1が移動前の撮像領域41から移動後の撮像領域42に撮像領域を移動させる過程における撮像部1の撮像領域である。撮像領域41、撮像領域42、撮像領域45の座標値はそれぞれの撮像位置として、読取部9から検出部11に出力される。図4に示した例では、移動前の撮像領域41から移動後の撮像領域42に移動させる過程での撮像領域の軌跡上には制限領域43および制限領域44が含まれている。制限領域の頂点座標を(xmL,ymD)、(xmL,ymU)、(xmR,xmD)、(xmR,xmU)で表す。制限領域の座標値は取得部10から検出部11へ出力される。検出部11は読取部9から取得した移動前、移動後及び現在撮像中の撮像領域の位置情報と、取得部10から出力された制限位置情報とに基づいて検出を行う。
【0050】
撮像領域の軌跡上に含まれる制限領域を検出するには、該軌跡上に制限領域の4隅の点がひとつでも含まれる制限領域を検出すればよい。図4における6点(xaR,yaD)、(xaL,yaD)、(xaL,yaU)、(xbL,ybU)、(xbR,ybU)、(xbR,ybD)で囲まれた領域内に、4点(xmL,ymD)、(xmL,ymU)、(xmR,ymU)、(xmR,ymD)のうちの1点でも含まれる場合、制限領域は撮像領域の軌跡上に含まれると判断する。検出部11は、制限領域の4隅のいずれかの点が下記の(式1)から(式5)の式をすべて満たす制限領域を、撮像領域の軌跡上に含まれる制限領域として検出する。
(式1)左端のx直線による必要条件
x>xLmin 但し、xLmin=min(xaL,xbL) :xはxaLとxbLの値のうち小さい方の値よりも大きい範囲
(式2)右端のx直線による必要条件
x<xRmin 但し、xRmax=max(xaR,xbR) :xはxaRとxbRの値のうち大きい方の値よりも小さい範囲
(式3)下端のy直線による必要条件
y>yDmin 但し、yDmin=min(yaD,ybD) :yはyaDとybDの値のうち小さい方の値よりも大きい範囲
(式4)上端のy直線による必要条件
y<yUmax 但し、yUmax=max(yaU,ybU) :yはyaUとybUの大きい方よりも小さい範囲
移動軌跡の一次直線による必要条件
(式5)if(ybD−yaD)/(xbL−xaL)>0 then :一次直線の傾きが正のとき(移動先が右上か左下)
y−yaU<(ybU−yaU)(x−xaL)/(xbL−xaL) :移動前撮像領域41の左上端を通る一次直線より小さい範囲
y−yaD>(ybD−yaD)(x−xaR)/(xbR−xaR) :移動前撮像領域41の右下端を通る一次直線より大きい範囲
if(ybD−yaD)/(xbL−xaL)<0 then :一次直線の傾きが負のとき(移動先が左上か右下)
y−yaU<(ybU−yaU)(x−xaR)/(xbR−xaR) :移動前撮像領域41の右上端を通る一次直線より小さい範囲
y−yaD>(ybD−yaD)(x−xaL)/(xbL−xaL) :移動前撮像領域41の左下端を通る一次直線より大きい範囲
【0051】
検出部11は(式1)から(式5)の式を全て満たす制限領域上の頂点の中からMax(xmR)、min(xmL)、Max(ymU)、min(ymD)を検出し、RAM17に保持する。Max(xmR)は撮像領域の軌跡上に含まれる全ての制限領域のうち、右端のx座標xmRが最大である制限領域のxmRの最大値とする。また、min(xmL)は撮像領域の軌跡上に含まれる全ての制限領域のうち、左端のx座標xmLが最小である制限領域のxmLの最小値とする。Max(ymU)は撮像領域の軌跡上に含まれる全ての制限領域のうち、上端のy座標ymUが最大である制限領域のymUの最大値とする。また、min(ymD)は撮像領域の軌跡上に含まれる全ての制限領域のうち、下端のy座標ymDが最小である制限領域のymDの最小値とする。
【0052】
図4ではパン方向、チルト方向を同時駆動して、撮像領域が直線移動したときの移動軌跡としているが、駆動方法はこれに限られない。パン方向駆動の後にチルト方向に駆動させたり、チルト方向駆動の後にパン方向に駆動させたり、あるいは45度同時駆動後に残った分のパン方向もしくはチルト方向に駆動する方法等種々の駆動方法がある。移動軌跡はそれらの駆動方法に合わせて求めればよく、検出方法は本実施例と同様にして、公知の方法で計算して判定することができる。また、検出を行う方法は上記のものに限られず、撮像部1の撮像領域を移動させる過程での撮像領域に含まれる制限領域を検出できるものであればよい。本実施例では、制限領域の頂点が撮像領域の軌跡上に含まれるか判断する例について説明したが、頂点に限られず、制限領域上の何れかの点が撮像領域の軌跡上に含まれるか判断してもよい。
【0053】
続いて検出部11は、撮像領域を移動させる過程で撮像領域に制限領域が含まれる範囲(以下、制限範囲)を検出する(S303)。本実施例では検出部11はステップS302においてRAM17に保持されたMax(xmR)、min(xmL)、Max(ymU)、min(ymD)を読み出し、以下の(式6)と(式7)の条件を両方満たす範囲である制限範囲46を制限範囲として検出する。
(式6)xcL<Max(xmR) かつ xcR>min(xmL)
(式7)ycD<Max(ymU) かつ ycU>min(ymD)
制限範囲の検出方法は上記の方法に限られない。撮像領域に制限領域が含まれる範囲を別の方法によって求めることとしても本発明の趣旨を逸脱するものではない。
【0054】
次に、検出部11はプリセットポジションへ移動する前に、移動後のプリセットポジションでの撮像領域内の制限領域の検出を行う(S304)。移動後のプリセットポジションでの撮像領域内の制限領域の検出は、読取部9から出力されるプリセットポジションの撮像位置情報と、取得部10から出力される制限位置情報とに基づいて行う。例えば検出部11は、まず撮像部1が撮像可能な撮像可能領域20における移動後のプリセットポジションでの撮像領域を、読取部9から出力され、RAM17に保持された撮像位置から特定する。そして、撮像部1が撮像可能な撮像可能領域20における制限領域の位置を表す制限位置情報と比較することにより検出を行う。制限位置情報が矩形の場合、制限領域の頂点が1つでも移動後のプリセットポジションでの撮像領域内にある場合には、移動後のプリセットポジションでの撮像領域内に制限領域が含まれると判定する。
【0055】
判定方法について、図2(b)を用いて説明する。例えば、制限領域22の左下の頂点である(X3,Y3)が撮像領域21に含まれるか判定するには、(式8)条件が満たされればよい。
(式8)X1<X3<X2かつY1<Y3<Y2
制限領域22のその他の頂点についても同様にして、撮像領域21に含まれるか判断することにより、移動後のプリセットポジションでの撮像領域21内に含まれる制限領域を検出することができる。移動後のプリセットポジションでの撮像領域内に制限領域が含まれるかどうかの判定はこれに限られず、公知の方法によって判定することができる。本実施例では制限領域の頂点が撮像領域21に含まれるか判定することとしたが、制限領域の頂点に限られず、頂点の替わりに制限領域上にある任意の点を用いることができる。
【0056】
検出部11は、移動後のプリセットポジションでの撮像領域内に制限領域が含まれている場合(S304でYESの場合)は生成部12に重畳位置情報の生成開始を指示する(S305)。
【0057】
生成部12に重畳位置情報の生成開始を指示すると、次に検出部11は移動前の撮像領域に含まれる制限領域を検出する。制限領域検出の方法はステップS304と同じなので説明を省略する。移動前の撮像領域に制限領域を検出した場合には検出部11はステップS308へ進む。ステップS308では検出部11が画像の送信を停止させる指示を制御部13に対して行う。そして、検出部11は指示部8に対してパン、チルト移動の開始を指示し(S309)、ステップS313へ進む。ステップS306において現在の撮像領域に制限領域を検出しなかった場合には検出部11はステップS310へ進み、指示部8に対してパン、チルト移動開始指示を行う(S310)。
【0058】
検出部11からのパン、チルト移動開始指示を受け取ると、指示部8は雲台部6に備えられたホームポジションセンサーとパルスエンコーダーの出力により現在の雲台位置を認識する。エンコーダーを備えないシステムにおいては、指示部8から駆動部7へ指示されるパルスエンコーダーが出力するパルス数をカウントすることで雲台位置を認識してもよい。そして、指示部8は雲台部6を移動させて、撮像部1がプリセットポジションで撮像できるように撮像領域の移動を開始させる。
【0059】
次に検出部11は、撮像部1の撮像領域が制限領域を含まない範囲を移動して、ステップS303において求めた制限範囲との境界まで移動したか判断する(S311)。図4において、撮像領域が制限領域との境界に位置する条件を(式9)で示す。
(式9)
(1)撮像領域が右方向に移動する(xbL−xaL>0である)場合。
xcR=min(xmL)
(2)撮像領域が上方向に移動する(ybD−yaD>0である)場合。
ycU=min(ymD)
(3)撮像領域が左方向に移動する(xbL−xaL<0である)場合。
xbL=Max(xmR)
(4)撮像領域が下方向に移動する(ybD−yaD<0である)場合。
ybD=Max(ymU)
但し、撮像領域が右上方向、右下方向、左上方向、左下方向に移動する場合は、それぞれ(1)又は(2)、(1)又は(4)、(2)又は(3)、(3)又は(4)の条件を満たせばよい。このとき、撮像領域の移動中に、条件を2つとも満たすことが可能である場合には条件を満たした時点が後の条件を満たしたときに、撮像領域が制限範囲との境界まで達すると判断する。
【0060】
図4の例では、撮像領域が右上方向に移動するので、(式9)の(1)又は(2)の条件を満たせばよい。但し、撮像領域を移動させる過程で(1)も(2)も満たすことが可能である場合には、(1)か(2)の条件のうち、時間的に後に満たされる条件が満たされる時点で、撮像領域は制限範囲との境界まで達すると判断する。
【0061】
検出部11は読取部9から出力される現在の撮像領域の撮像位置と上述の(式9)の条件とを用いて、撮像領域が制限範囲との境界まで移動したことを検出する。図4に示した例では、撮像領域の右端のx座標であるxcRの値が制限範囲46の左端のx座標の値と等しくなった場合に、撮像領域が制限範囲との境界まで移動したと判断する。検出部11は撮像領域が制限範囲との境界まで移動すると(S311でYESの場合)、画像の送信を停止する制御を行うように制御部13に指示させる(S312)。検出部11の指示を受けて制御部13が画像の送信を停止させることで、ネットワーク5上に接続されている表示装置上では画像が更新されない状態となる。
【0062】
雲台部6がプリセット位置まで移動し終えたことを読取部9で検知すると、読取部9はこれを検出部11へ伝える。検出部11は移動完了の検知信号を読取部9から受信すると、ステップS314へ進む(S313)。
【0063】
検出部11は生成部12において重畳位置情報の生成が完了し、生成された重畳位置情報を重畳部2が受信してマスク画像を生成し撮像領域における制限領域に重畳するまで撮像画像の送信再開を行わないようにする。すなわち検出部11は雲台部6の移動完了後、生成部12で重畳位置情報が生成され、重畳部2でマスク画像の重畳を完了したか判断する(S314)。図1(b)の受信部110が重畳部2から重畳完了通知を受け取ると、検出部11はマスク画像の重畳が完了したと判断する。そして検出部11は、重畳部2からの重畳完了通知を受けると(S314でYESの場合)、検出部11から制御部13に画像の送信を再開させる指示を出す(S315)。そして撮像部1が撮像した画像の送信再開後は通常制御に戻る。
【0064】
続いて、ステップS304でプリセットポジションでの撮像領域に制限領域が含まれない場合(S304でNOの場合)について説明する。プリセットポジションでの撮像領域に制限領域が含まれない場合、検出部11はステップS316にすすむ。
【0065】
ステップS316では検出部11は、撮像領域を移動させる過程での撮像領域に含まれる制限領域を検出する。撮像領域を移動させる過程での撮像領域に制限領域が含まれない場合(S316でNOの場合)、検出部11は制御部13に対してパン、チルト移動を開始させるように指示する(S317)。そして撮像部1が撮像した画像の送信再開後は通常制御に戻る。
【0066】
一方、撮像領域を移動させる過程での撮像領域に制限領域が含まれる場合(S316でYESの場合)、検出部11はステップS306からステップS312までに説明した動作と同一の動作を行って画像送信停止指示を行う(S318からS323)。
【0067】
画像送信停止指示を行った後、検出部11は撮像領域に制限領域が含まれなくなったか(すなわち、撮像領域が制限範囲を脱したか)判断する(S324)。判断の方法について、図4を用いて説明する。検出部11はステップS302でRAM17に記憶したMax(xmR)、Max(ymU)、min(xmL)、min(ymD)を用いて、(式10)の(1)から(5)のいずれかの条件を満たした場合に、撮像部1の撮像領域が制限領域を脱したと判断する。
(式10)
(1)撮像領域が右方向に移動する(xbL−xaL>0である)場合。
Max(xmR)≦xcL
(2)撮像領域が上方向に移動する(ybD−yaD>0である)場合。
Max(ymU)≦ycD
(3)撮像領域が左方向に移動する(xbL−xaL<0である)場合。
min(xmL)≧xcR
(4)撮像領域が下方向に移動する(ybD−yaD<0である)場合。
min(ymD)≧ycU
但し、撮像領域が右上方向、右下方向、左上方向、左下方向に移動する場合は、それぞれ(1)又は(2)、(1)又は(4)、(2)又は(3)、(3)又は(4)の条件を満たせばよい。このとき撮像領域の移動中に、条件を2つとも満たすことが可能である場合には条件を満たした時点が先の条件を満たしたときに、撮像領域が制限範囲を脱したと判断する。
【0068】
検出部11が、撮像領域が制限範囲を脱したと判定するための判定方法は上記の方法に限られない。ステップS309における検出部11の判定条件として説明した(式1)から(式5)を用いて、これから移動する範囲に(式1)から(式5)の条件をすべて満たす制限領域の頂点がなくなった場合に、撮像領域が制限範囲を脱したと判断してもよい。この場合には、検出部11は、読取部9から入力される現在の撮像領域の撮像位置情報(xcL,ycD)、(xcL,ycU)、(xcR,ycU)、(xcR,ycD)を、(式1)から(式5)において用いる移動前の撮像領域41の撮像位置情報(xaL,yaD)、(xaL,yaU)、(xaR,yaU)、(xaR,yaD)にそれぞれ代入して判定を行う。
【0069】
検出部11が、撮像領域が制限範囲を脱したと判断した場合には、検出部11は制御部13に対して撮像部1が撮像した画像の送信を再開するように指示する(S315)。
【0070】
制御部13は、撮像部1が撮像領域を移動する過程での撮像領域の軌跡上に制限領域が含まれていると検出部11が判定した場合に撮像した画像の送信を停止させる制御をI/F部4に対して行う。このとき、制御部13は予め制御部13内に記憶した所定の画像を撮像した画像に替えて送信するように制御してもよい。あるいは、制御部13は撮像部1が撮像した画像のうち、制限領域を含まない撮像領域の画像だけを画像送信のフレームレートを下げて送ることで、制限領域が含まれる撮像画像を送信しないように制御してもよい。制限領域を含まない撮像領域の画像は、例えば検出部11がパン、チルト移動開始指示を制御部13に対して行った後であって、画像送信停止指示を行うまでの間に撮像部1が撮像した画像を用いることができる。
【0071】
また制御部13は、撮像部1の撮像領域の軌跡上に制限領域が含まれなくなったと検出部11が判定した場合に、撮像部1が撮像した画像の送信を再開させる制御をI/F部4に対して行い、撮像した画像をネットワーク5に接続された表示装置に送信させる。このようにして制御部13は、検出部11が検出した制限領域が含まれる画像を送信しないように制御する。
【0072】
I/F部4は制御部13において撮像部1が撮像した画像を送信させる制御がなされると、生成部12において生成された重畳位置情報に基づいて重畳部2でマスク画像の重畳がなされ、符号化部で符号化された画像をネットワーク5に送出する。
【0073】
本実施例では雲台部6の動作をパン・チルトとしているが、撮像部1の光軸を中心として回転するローテーション動作をするものであってもよい。この場合、検出部11はステップS309、ステップS310、ステップS317、ステップS320、ステップS321において、パンチルト移動開始指示を行う替わりに、ローテーション動作開始指示を行う。また、検出部11はステップS313においてパンチルト動作が完了したか判断する替わりに、ローテーション動作が完了したか判断する。さらに、検出部11はステップS302、ステップS303においてローテーション動作に伴って撮像領域が移動する過程での撮像領域の軌跡上に含まれる制限領域を検出し、制限範囲を特定する。検出方法はパン、チルト動作において説明した方法と同様にして、公知の方法を用いて行うことができる。さらに、雲台部6の動作がパン、チルト、ローテーション動作を複合的に行うものである場合においても本発明を適用することができる。
【0074】
以上の構成による監視カメラ装置では、パン、チルトやローテーションなどの撮像領域の移動に対して、撮像領域を移動させる前にその移動過程での撮像領域の軌跡上に含まれる制限領域を検出する。そして、撮像領域の軌跡上に制限領域が含まれる場合は撮像部1で撮像した画像の送信を停止する、もしくは所定の画像を送り続ける、あるいは送信フレームレートを下げる。こうして、本実施例によれば、演算装置の更なる高速処理化を必要とせずに、パン、チルトやローテーションなどの撮像領域の移動がある場合にも制限領域を確実に保護しつつ、撮像した画像の送信を行うことができる。また、本実施例によれば制限領域を含む撮像領域の画像のみを送信しないようにすることができるので、撮像部1が撮像範囲を移動させている間であっても、制限範囲以外の撮像領域の映像をユーザーに確認させることができる。
【0075】
(実施例2)
続いて、本件発明の実施例2について説明する。実施例2において説明する監視カメラ装置は、撮像部の撮像領域の軌跡上にある制限領域を検出した場合に、撮像領域の移動を開始させる前に、画像の送信を停止させる停止制御を行う。また、移動後の撮像領域内に制限領域を検出しなかった場合には、撮像部の撮像領域を移動させる動作が完了した後に画像の送信を再開させる制御を行う。さらに、移動後の撮像領域内に制限領域を検出した場合には、撮像部の撮像領域を移動させる動作が完了し、移動後の撮像領域における制限領域にマスク画像の重畳を完了した後に画像の送信を再開させる再開制御を行う。
【0076】
実施例2にかかる監視カメラ装置の構成は、実施例1において図1(a)、図1(b)を用いて説明したものと同一の構成については説明を省略する。実施例2にかかる監視カメラ装置は図1(b)に示す判断部118を有しない。その他の点は、実施例1において図1(a)、図1(b)を用いて説明した構成と同一である。なお、実施例2における監視カメラ装置の各構成についての説明では、実施例1において各構成について用いた番号と同じ番号を用いて説明する。
【0077】
続いて、実施例2にかかる監視カメラ装置の動作について説明する。本実施例では、実施例1と同様に、監視カメラ装置がプリセット巡回を行う場合について説明する。プリセットポジションはユーザーによって設定部14に予め登録されているものとする。
【0078】
監視カメラ装置が起動してから、読取部9が移動前後および現在の撮像位置を検出部11に出力するまでの動作は実施例1において説明した動作と同じであるので説明を省略する。
【0079】
検出部11は撮像部1の撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上にある制限領域を移動前と移動後の撮像領域の撮像位置と制限位置情報とに基づいて検出する。本実施例では、検出部11はさらに、撮像領域の軌跡上に制限領域が含まれる場合、移動中に撮像した画像の送信を停止させる指示を制御部13に対して行う。こうして、検出部11が検出した制限領域が含まれる画像を送信しないように制御部13に対して指示する。
【0080】
検出部11の処理について図5を用いて説明する。検出部11がCPU15、ROM16、RAM17を内蔵する形態では、図5の処理フローは、図5に示される手順をCPU15に実行させるためのプログラムを示す。
【0081】
まず、検出部11においてMASKFLGに初期値“0”が入力される(S501)。MASKFLGは生成部12において重畳位置情報を生成し、重畳部2において撮像部1が撮像した画像に重畳部2が生成したマスク画像を重畳する必要があるときに“1”とし、マスクの重畳が完了したら“0”とするフラグである。MASKFLGはRAM17において保持され、制限領域検出部112がフラグの“0”と“1”を切替える。
【0082】
次に、検出部11は指示部8が設定部14からプリセットポジションへの移動指示を受けたか判断する(S502)。指示部8は移動指示を受けると検出部11に移動指示があったことを知らせる。移動指示がなされていない場合にはステップS514へ進む。
【0083】
指示部8に対してプリセットポジションへの移動指示があった場合には、検出部11はプリセットポジションへ移動する前に、プリセットポジションでの撮像領域内に含まれる制限領域を検出する(S503)。検出部11におけるプリセットポジションでの撮像領域内に含まれる制限領域検出は、読取部9から入力されるプリセットポジションの撮像位置情報と、取得部10から入力される制限位置情報とに基づいて行う。
【0084】
検出部11は、移動後のプリセットポジションでの撮像領域内に制限領域が含まれているとき(S503でYESの場合)は生成部12において移動後のプリセットポジションについての重畳位置情報を生成する演算を開始させる(S504)。生成部12において重畳位置情報の生成が開始されると、検出部11はMASKFLG=1とする(S505)。
【0085】
ステップS503で目標位置での撮像領域に制限領域が含まれない場合(S503でNOの場合)、検出部11はステップS506にすすむ。
【0086】
ステップS506では検出部11は撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上に含まれる制限領域を検出する。検出の方法については実施例1において(式1)から(式5)を用いて説明した方法と同じ方法が用いられるので説明を省略する。検出の方法は(式1)から(式5)を用いて行われるものに限られず、その他の公知の方法を用いて撮像領域の軌跡上に含まれる制限領域を検出してもよい。
【0087】
撮像部1の撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上に制限領域を検出しない場合(S506でNOの場合)は撮像した画像の送信を停止する制御の必要はなく、通常通りパンチルトの移動を行うように制御部13に指示する(S513)。そして、検出部11のRAM17においてMSKFLG=0とする(S514)。
【0088】
撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上に制限領域がある場合(S506でYESの場合)は、検出部11が制御部13に対して画像の送信停止を制御部13に指示する(S507)。
【0089】
検出部11の指示を受けて制御部13が画像の送信を停止させることで、ネットワーク5上に接続されている表示装置上では映像信号が更新されない状態となる。画像の送信を停止させる指示を出すと、次に検出部11は撮像画像送信を停止した状態で雲台を目標位置へと移動させる指示を指示部8に対して行う(S508)。
【0090】
検出部11からの指示を受け取ると、指示部8は実施例1のステップS313と同様にして現在の雲台位置を認識し、雲台部6を目標位置まで移動させる。雲台部6が目標位置まで移動し終えたことを読取部9で検知すると、読取部9はこれを検出部11へ伝える。検出部11は移動完了の検知信号を読取部9から受信すると、ステップS510へ進む(S509)。
【0091】
検出部11は生成部12において重畳位置情報の生成が完了し、重畳部2がマスク画像を生成して撮像領域における制限領域にマスク画像を重畳するまで撮像画像の送信再開を行わないようにする。即ち、ステップS505でMASKFLG=1とした場合(S510)には、重畳部2においてマスク画像の重畳を完了した後(S511)に、検出部11は制御部13に対して撮像画像の送信を再開させる指示を出す(S512)。そして撮像画像の送信再開後はMASKFLG=0として(S514)通常制御に戻る。
【0092】
制御部13は撮像部1が撮像した画像の表示装置への送信の停止及び再開を制御する。制御部13は、撮像領域の軌跡上にある制限領域を検出部11が検出した場合に撮像領域の移動を開始させる前に画像の送信を停止させる停止制御を行う。停止制御は、検出部11が制御部13に対して停止制御を行うように指示することにより行われる。検出部11は、図5のステップS503あるいはステップS506において制限領域が検出された場合に、停止制御指示を行う。このとき、制御部13は予め制御部13内に記憶した所定の画像を撮像した画像に替えて送信するように制御してもよい。あるいは、制御部13は撮像部1が撮像した画像のうち、制限領域を含まない撮像領域の画像だけを画像送信のフレームレートを下げて送ることで、制限領域が含まれる撮像画像を送信しないように制御してもよい。
【0093】
また制御部13は、移動後の撮像領域内に制限領域を検出部11が検出しなかった場合に、さらに、撮像領域の軌跡上にある制限領域を検出部11が検出した場合には、撮像部1の撮像領域を移動させる動作が完了した後に画像の送信を再開させる制御を行う。画像送信の再開制御は、検出部11が制御部13に対して再開制御を行うように指示することにより行われる。検出部11は、図5のステップS503において制限領域が検出されず、図5のステップS506において制限領域が検出された場合に、再開制御指示を行う。
【0094】
さらに、制御部13は移動後の撮像領域内に制限領域を検出部11が検出した場合には、撮像部1の撮像領域を移動させる動作が完了し、移動後の撮像領域における制限領域に重畳部2がマスク画像の重畳を完了した後に画像の送信を再開させる再開制御を行う。再開制御は、検出部11が制御部13に対して再開制御を行うように指示することにより行われる。検出部11は図5のステップS503において制限領域が検出された場合に、制限領域検出部112から指示を受けて、重畳部2がマスク画像の重畳を完了した後に画像の送信を再開させる再開制御を行う。
【0095】
I/F部4は制御部13において撮像部1が撮像した画像を送信させる制御がなされると、生成部12において生成された重畳位置情報に基づいて重畳部2でマスク画像の生成、重畳がなされ、符号化部で符号化された画像をネットワーク5に送出する。
【0096】
本実施例では雲台部6の動作をパン・チルトとしているが、撮像部1の光軸を中心として回転するローテーション動作をするものであってもよい。この場合、検出部11はステップS508、ステップS513において、パンチルト移動開始指示を行う替わりに、ローテーション動作開始指示を行う。また、検出部11はステップS509においてパンチルト動作が完了したか判断する替わりに、ローテーション動作が完了したか判断する。さらに、検出部11はステップS506においてローテーション動作に伴って撮像領域が移動する過程での撮像領域の軌跡上に含まれる制限領域を検出する。検出方法はパン、チルト動作において説明した方法と同様にして、公知の方法を用いて行うことができる。さらに、雲台部6の動作がパン、チルト、ローテーション動作を複合的に行うものである場合においても本発明を適用することができる。
【0097】
以上の構成による監視カメラ装置では、パン、チルトやローテーションなどの撮像領域の移動に対して、撮像領域を移動させる前にその移動過程での撮像領域の軌跡上に含まれる制限領域を検出する。そして、撮像領域の軌跡上に制限領域が含まれる場合は撮像部1で撮像した画像の送信を停止する、もしくは所定の画像を送り続ける、あるいは送信フレームレートを下げる。こうして、本実施例によれば、演算装置の更なる高速処理化を必要とせずに、パン、チルトやローテーションなどの撮像領域の移動がある場合にも制限領域を確実に保護しつつ、撮像した画像の送信を行うことができる。また、本実施例にかかる監視カメラ装置は実施例1の監視カメラ装置のように制限範囲の検出を行わない。従って、より演算装置の演算量を少なくして送信制御を行うことができる。
【0098】
(実施例3)
実施例1または実施例2の監視カメラ装置は、撮像部1の撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上に制限領域を検出した場合には、制限領域を含む撮像画像の送信を停止するようI/F部4へ指示を出す。しかし、撮像画像を送信する送信速度(以下、送信速度)が遅かったり、1つの撮像画面内の制限領域の数が少なく、あるいは総面積が小さくてマスク画像を表示するまでに時間がかからない場合は、撮像画像の送信停止制御を行う必要はない。ここで、送信速度とは例えばフレームレートのことである。そこで、実施例3では送信速度及び制限領域数を撮像画像送信停止の判定要素とする場合について説明する。
【0099】
実施例3にかかる監視カメラ装置の構成を図6(a)に示す。本実施例での監視カメラ装置は、検出部11が検出した制限領域の数と総面積の少なくとも一方と送信速度とを取得して、制御部13に画像送信停止制御を行うよう指示するか判断する判断部120を有する。
【0100】
判断部120の構成を図6(b)に示す。判断部120は検出部11が検出した制限領域の数と総面積の少なくとも一方を導出するための導出部121を有する。
【0101】
本実施例ではマスク描画までに要する時間に影響するものとして制限領域の数を用いるが、制限領域の数に限らず、制限領域の総面積や、両者の組み合わせなど、実際のマスク処理への負荷量に影響する要因を判定要素とすることができる。制限領域の総面積は検出部11の検出結果に基づいて導出部121が導出する。
【0102】
また、判断部120は撮像した送信速度を取得する速度取得部122を有する。送信速度は、設定部14から指示部8を介して検出部11へ出力され、さらに、判断部120内の速度取得部122に出力される。送信速度の取得方法は上記のものに限定されず、任意の方法によって送信速度の取得を行うこととしてよい。
【0103】
さらに、判断部120は、撮像画像の送信停止制御を制御部13に行わせるか否かを判定する判定部123を有する。判定部123は撮像領域の軌跡上に含まれる全ての制限領域に重畳部2がマスク画像を重畳して送信することが可能であるか判定する。そして、撮像領域の軌跡上に含まれる全ての制限領域に重畳部2がマスク画像を重畳して送信することが可能であると判定した場合には、判定部123は、制限領域が含まれる画像であっても、制限領域にマスク画像を重畳して撮像画像を送信させるように検出部11に指示する。判定部123は、導出部121のカウント数及び/又は速度取得部122が取得した送信速度に基づいて判定を行う。判定部123は、送信速度が所定の速度よりも遅い場合、または、撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上に含まれる制限領域の数が所定の数よりも少ない場合には、撮像画像の送信停止制御を行わせないように検出部11に指示する。送信停止制御を行わせるか否かの判定は、送信速度のみ、あるいは、制限領域数のみに基づいて判定してもよいし、それらを組合わせて判定を行ってもよい。送信速度および制限領域数を組み合わせた判定方法については後述する。判定部123は判定結果を検出部11に出力する。
【0104】
判断部120はハードウエア上に実装しても、あるいはソフトウエアで実装しても構わない。ソフトウエアにより判断部120を実装する場合には、判断部120内にある不図示のCPUが判断部120内にある不図示の記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより導出部121、速度取得部122、判定部123の機能を実現する。また、本実施例では判断部120を検出部11から独立した構成として説明するが、検出部11が判断部120の機能を実現することとしてもよい。検出部11において判断部120の機能を実現する場合には、ROM16に記憶され、図6(b)に示した各ブロックの機能をCPU15に実行させるプログラムをCPU15が実行することにより実現する。
【0105】
判断部120の機能を実現するためのプログラムは、判断部120内のCPUあるいはCPU15に対し、検出部11において制限領域が検出される度にカウントを増やして制限領域の数を導出させる。または、このプログラムは検出部11が検出した制限領域の総面積を判断部120内のCPUあるいはCPU15に導出させてもよい。また、このプログラムは判断部120内のCPUあるいはCPU15に対して、設定部14から指示部8を介して検出部11へ出力される送信速度の取得を行わせる。さらに、このプログラムは送信速度及び/又は制限領域の数に基づいて、撮像画像の送信停止制御を制御部13に行わせるか否かを判定する。判定方法については後述する。
【0106】
本実施例にかかる監視カメラ装置のその他の構成は実施例1において説明したものと同一であるので、説明を省略する。
【0107】
続いて、実施例3にかかる監視カメラ装置の動作について説明する。監視カメラ装置が起動してから、読取部9が移動前後および現在の撮像位置を検出部11に出力するまでの動作は実施例1において説明した動作と同じであるので説明を省略する。
【0108】
検出部11の処理について説明する。検出部11は撮像部1の撮像領域を移動させる過程での撮像領域の軌跡上にある制限領域を移動前と移動後の撮像領域の撮像位置と制限位置情報とに基づいて検出する。本実施例ではさらに、導出部121に、検出した制限領域の数を導出させる。
【0109】
検出部11の処理について図7を用いて説明する。検出部11がCPU15、ROM16、RAM17を内蔵する形態では、図7の処理フローは、図7に示される手順をCPU15に実行させるためのプログラムを示す。ステップS701からステップS706までの動作は実施例2において説明したステップS501からステップS506までの動作と同じなので説明を省略する。
【0110】
検出部11は、撮像領域の軌跡上に制限領域を検出した場合(ステップS706でYESの場合)、判断部120の判断結果を取得して(S715)、撮像画像送信停止制御命令を制御部13に対して出力するか判断する(S716)。判断部120は送信速度と撮像領域の軌跡上に含まれる制限領域の数から、検出部11に対し撮像画像を送信させる命令を出力させるか判断する。実施例1において説明したように、検出部11が移動前と移動後の撮像領域の撮像位置と制限位置情報とに基づいて、(式1)から(式5)により制限領域を検出する。判断部120内の導出部121は検出部11が検出した制限領域の数をカウントする。検出した制限領域の数のカウントは、導出部121において、検出部11が(式1)から(式5)の条件を満たす頂点を有する制限領域を検出する度に導出部121のカウントを増やしてゆけばよい。制限領域の数のカウント方法は特に限定しない。
【0111】
そして、判断部120は判定部123において撮像画像の送信を停止させるか判断する。送信速度と制限領域数を別々にカウントして判断を行ってもよいが、本実施例ではそれらを組合わせてテーブル化することでより柔軟な制御を行う場合について説明する。
【0112】
図8にテーブルの例を示す。この例では、最大送信速度が5、最大制限領域数が4つの場合を示す。また、図8のテーブルのYは撮像画像送信の停止制御を行わせることを意味し、Nは停止制御を行わないようにさせることを意味する。送信速度が1以下であれば制限領域数が4つあっても撮像画像送信停止制御は行わない。送信速度が2から3であれば制限領域数が1つまでなら撮像画像送信停止制御は行わない。送信速度が5でも制限領域数が0であれば撮像画像送信停止制御は行わない。
【0113】
図7のステップS716において、送信速度及び導出部121でカウントした制限領域数に対応するマスがNである場合にはステップS707の撮像画像送信停止指示を行わずにステップS713へ進む。一方、Yである場合には、実施例2と同様にS707において撮像画像送信停止指示を行った後、S708へ進む。
【0114】
以後のステップS708からS714までの動作は実施例2において説明したステップS508からステップS514までの動作と同一であるので、説明を省略する。
【0115】
本実施例では、実施例2で説明した監視カメラ装置において、制限領域の数及び送信速度を考慮した画像送信制御を行う場合について説明したが、実施例1で説明した監視カメラ装置においても同様にして画像送信制御を行うことができる。すなわち画像送信停止指示を行うステップS308、ステップS312、ステップS323、ステップS319の前に、ステップS715およびステップS716の処理を行うことにより、同様の画像送信制御を行うことができる。
【0116】
制御部13は、速度取得部122が取得した送信速度で画像を送信する場合に、撮像領域の軌跡上に含まれる全ての制限領域に重畳部2がマスク画像を重畳して送信することが可能であると判定部123が判断した場合には、制限領域が含まれる画像であっても、制限領域にマスク画像を重畳して画像を送信させる制御を行う。また、制御部13は、実施例1又は実施例2で説明した動作と同じ動作も行う。
【0117】
I/F部4の動作は実施例1又は実施例2で説明した動作と同一であるので説明を省略する。本実施例では雲台部6の動作をパン・チルトとしているが、実施例1、実施例2で説明したのと同様に、撮像部1の光軸を中心として回転するローテーション動作をするものであってもよい。
【0118】
実施例3の監視カメラ装置は、撮像装置1の撮像画像の画像の送信速度が遅い場合や、撮像画面内の制限領域数が少ない場合には、撮像画像の送信を停止しない。従って、送信速度が遅かったり1つの撮像画面内の制限領域数が少ないために制限領域がはみ出さないようにマスク画像が重畳可能である場合は、制限領域にマスク画像を重畳して撮像部1が撮像した映像を表示させることができる。従って、実施例3の監視カメラ装置は、実施例1又は実施例2の監視カメラ装置が有する効果に加えて、ユーザーが制限領域以外の撮像画像をより広い範囲について確認することができるという効果を有する。
【0119】
(実施例4)
実施例4ではズーム制御を行う際に制限領域を保護する監視カメラ装置について説明する。まず、実施例4にかかる監視カメラ装置の構成について図9を用いて説明する。説明において図1(a)と同じ構成については、同一の番号を付して説明する。
【0120】
実施例4にかかる監視カメラ装置はズームレンズ部91を有する。ズームレンズ部91は被写体の映像信号を光学的に拡大・縮小する。ズームレンズ部91は初期位置を検知するリセットセンサーを備え、初期位置情報を指示部93へ出力する。駆動部92は後述の指示部93の指示を受けてズームレンズ部のモーターを駆動する。
【0121】
指示部93は表示すべきズーム位置に向けてのズーム動作指示を駆動部7に出力する。また、指示部93は後述の読取部94へズーム動作指示状況を出力するとともに、検出部11へズーム目標位置を出力する。ズーム位置は実施例1と同様にして、ズームレンズ部91によって撮像可能な撮像可能領域を座標平面としたときの、ズームレンズ部91の撮像領域の座標値によって特定される。ただし、ズーム位置の特定方法はこれに限定されない。
【0122】
読取部94は指示部93からのズーム動作指示状況を受け、ズーム前後及び現在のズーム位置を読み取る。
【0123】
その他の構成は実施例3において説明したものと同一であるので説明を省略する。続いて実施例4にかかる監視カメラ装置の動作について説明する。
【0124】
本実施例にかかる監視カメラ装置は実施例3で説明した監視カメラ装置と同様にして動作する。ただし、駆動部92は図1(a)の雲台部6に替えてズームレンズ部91に対してズーム位置を移動させるための駆動を行う。また、本実施例にかかる監視カメラ装置は、撮像位置としてズーム位置を用いる。
【0125】
ズーム位置の移動について図10を使って詳しく説明する。図10では、撮像領域(xaL,yaD)、(xaL,yaU)、(xaR,yaU)、(xaR,yaD)から撮像領域(xbL,ybD)、(xbL,ybU)、(xbR,ybU)、(xbR,ybD)へズーム動作により撮像領域が移動する。また、図10では撮像領域の移動過程に制限領域(xmL,ymD)、(xmL,ymU)、(xmR,ymU)、(xmR,ymD)がある場合を示している。Wideのときは撮像領域は広がり、Teleのときは撮像領域は狭まる。
【0126】
以下、実施例3で説明した図7のフローを用いて実施例4にかかる監視カメラ装置の動作について説明する。実施例4では撮像位置の目標位置(プリセットポジション)をズーム動作後のズーム位置として説明する。ステップS701からステップS705までの動作は実施例2で説明したステップS501からステップS505までの動作と同じなので説明を省略する。
【0127】
ステップS706において撮像領域の移動過程に含まれる制限領域を検出する場合には、その移動過程で撮像された全領域の外枠で囲まれた領域内に、取得部10に保持されたマスクデータの4隅の点がひとつでも含まれているかどうかを判定する。即ち、Wideのときは、ズーム移動後の新しく広がった撮像領域内に制限領域の4点(xmL,ymD)、(xmL,ymU)、(xmR,ymU)、(xmR,ymD)のうちの一点でも含まれるかどうかを判定する。Wideの場合、Teleの場合について(式11)の(1)から(4)の式をすべて満たす点が一点以上あれば制限領域があると判断できる。
(式11)
Wideのとき
(1)x>xbL (2)x<xbR (3)y>ybD (4)y<ybU
Teleのとき
(1)x>xaL (2)x<xaR (3)y>yaD (4)y<yaU
検出を行う方法は上記のものに限られず、ズームレンズ部91のズーム位置を移動させる過程での撮像領域に含まれる制限領域を検出できるものであればよい。本実施例では、制限領域の頂点が撮像領域の軌跡上に含まれるか判断する例について説明したが、頂点に限られず、制限領域上の何れかの点が撮像領域の軌跡上に含まれるか判断してもよい。
【0128】
こうして検出部11はズームレンズ部91のズーム位置を移動させる過程での撮像領域の軌跡上にある制限領域を移動前と移動後の前記撮像領域のズーム位置と制限位置情報とに基づいて検出する。
【0129】
その他の動作については実施例3において説明した監視カメラ装置の動作と同一であるので説明を省略する。本実施例では実施例3の監視カメラ装置の動作に基づいて説明を行ったが、同様にして実施例1または実施例2の監視カメラ装置についても本実施例のズーム制御を適用することができる。
【0130】
本実施例にかかる監視カメラ装置によれば、演算装置の更なる高速処理化を必要とせずに、ズーム制御を行う際に制限領域を保護することができる。
【0131】
(その他の実施例)
監視カメラ装置の動作モードとして、例えば管理者モードとユーザーモードを備え、管理者モードでは本実施例において説明した画像送信制御を行わず、ユーザーモードでのみ本実施例の画像送信制御を行うようにしてもよい。このようにすることで、ユーザーに対しては制限領域の保護を優先し、管理者には制限領域の保護よりも映像信号の滑らかな動きを優先することができる。
【0132】
また、図1又は図9において説明した構成のうち、検出部11、制御部13を画像送信装置とし、その他の構成を撮像装置としてそれぞれ独立した装置を設けて本発明を実施することとしてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 撮像部
2 重畳部
10 取得部
11 検出部
13 制御部
123 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置が撮像した画像の送信を制御する制御装置であって、
前記撮像装置が撮像可能な撮像可能領域内において前記画像の表示を制限する制限領域の制限位置情報を取得する取得手段と、
前記撮像装置の撮像領域を移動させる過程での前記撮像領域の軌跡上にある前記制限領域を移動前と移動後の前記撮像領域の撮像位置と前記制限位置情報とに基づいて検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した制限領域が含まれる画像を送信しないように制御する制御手段とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記撮像領域における前記制限領域にマスク画像を重畳する重畳手段を更に有し、
前記制御手段が、前記移動後の撮像領域内に前記制限領域を前記検出手段が検出した場合に、前記画像の送信を再開させる制御を、前記撮像装置の撮像領域を移動させる動作が完了し、前記移動後の撮像領域における前記制限領域に前記重畳手段が前記マスク画像の重畳を完了した後に行うことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記撮像領域の軌跡上にある前記制限領域を前記検出手段が検出した場合に所定の画像を送信する制御を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記撮像領域の軌跡上に前記制限領域を前記検出手段が検出した場合に前記制限領域が含まれる画像を送信しないようにフレームレートを下げて前記撮像した画像を送信する制御を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記撮像領域における前記制限領域にマスク画像を重畳する重畳手段と、
前記検出手段が検出した前記制限領域の数と総面積の少なくとも一方を導出する導出手段と、
前記導出手段が導出した結果に基づいて前記撮像領域の軌跡上に含まれる全ての制限領域に前記重畳手段が前記マスク画像を重畳して送信することが可能であるか判定する判定手段とを有し、
前記撮像領域の軌跡上に含まれる全ての制限領域に前記重畳手段が前記マスク画像を重畳して送信することが可能であると前記判定手段が判定した場合には、前記制御手段は前記制限領域が含まれる画像であっても、前記制限領域にマスク画像を重畳して前記画像を送信させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
撮像装置が撮像した画像の送信を制御する制御装置であって、
前記撮像装置が撮像可能な撮像可能領域内において前記画像の表示を制限する制限領域の制限位置情報を取得する取得手段と、
前記撮像装置の撮像領域における前記制限領域にマスク画像を重畳する重畳手段と、
前記撮像装置の撮像領域を移動させる過程での前記撮像領域の軌跡上にある前記制限領域を移動前と移動後の前記撮像領域の撮像位置と前記制限位置情報とに基づいて検出する検出手段と、
前記撮像装置が撮像した画像の表示装置への送信の停止及び再開を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記撮像領域の軌跡上にある前記制限領域を前記検出手段が検出した場合に前記撮像領域の移動を開始させる前に前記画像の送信を停止させる停止制御と、
前記検出手段が前記撮像領域の軌跡上にある前記制限領域を検出した場合に、さらに、前記移動後の撮像領域内に前記制限領域を前記検出手段が検出しなかった場合には、前記撮像装置の撮像領域を移動させる動作が完了した後に前記画像の送信を再開させ、前記移動後の撮像領域内に前記制限領域を前記検出手段が検出した場合には、前記撮像装置の撮像領域を移動させる動作が完了し、前記移動後の撮像領域における前記制限領域に前記重畳手段が前記マスク画像の重畳を完了した後に前記画像の送信を再開させる再開制御とを行うことを特徴とする制御装置。
【請求項7】
被写体の撮像を行う撮像手段を有し、
前記撮像手段が撮像した画像の送信を制御する撮像装置であって、
前記撮像手段が撮像可能な撮像可能領域内において前記画像の表示を制限する制限領域の制限位置情報を取得する取得手段と、
前記撮像手段の撮像領域を移動させる過程での前記撮像領域の軌跡上にある前記制限領域を移動前と移動後の前記撮像領域の撮像位置と前記制限位置情報とに基づいて検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した制限領域が含まれる画像を送信しないように制御する制御手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
撮像装置が撮像した画像の送信を制御する画像送信制御方法であって、
取得手段が、前記撮像装置が撮像可能な撮像可能領域内において前記画像の表示を制限する制限領域の制限位置情報を取得する取得ステップと、
検出手段が、前記撮像装置の撮像領域を移動させる過程での前記撮像領域の軌跡上にある前記制限領域を移動前と移動後の前記撮像領域の撮像位置と前記制限位置情報とに基づいて検出する検出ステップと、
制御手段が、前記検出手段が検出した制限領域が含まれる画像を送信しないように制御する制御ステップとを有することを特徴とする画像送信制御方法。
【請求項9】
撮像装置が撮像した画像の送信を制御するコンピューターに、
前記撮像装置が撮像可能な撮像可能領域内において前記画像の表示を制限する制限領域の制限位置情報を取得する取得手順と、
前記撮像装置の撮像領域を移動させる過程での前記撮像領域の軌跡上にある前記制限領域を移動前と移動後の前記撮像領域の撮像位置と前記制限位置情報とに基づいて検出する検出手順と、
前記検出手順において検出した制限領域が含まれる画像を送信しないように制御する制御手順とを実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−19466(P2012−19466A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156923(P2010−156923)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】