説明

撮像装置およびその制御方法

【課題】 実際の撮影時の露出条件に応じて適切なダイナミックレンジ拡大処理を行うことができる。
【解決手段】 本露光時の露出条件が設定される前に、適正露出で撮像された画像データの所定領域の輝度と目標値との差に基づいてダイナミックレンジ拡大量を演算し、その後に設定された本露光時の露出条件に基づいてダイナミックレンジ拡大量を補正して、本露光時の画像データに対して補正されたダイナミックレンジ拡大量に応じた階調特性を設定してダイナミックレンジ拡大処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置のダイナミックレンジ拡大処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像装置には、画像の白とびを抑えるようにダイナミックレンジ拡大処理を行うものがある。例えば、特許文献1では、静止画撮影前(本露光前)にシーンの解析を行うことでシーンに応じたダイナミックレンジ拡大処理を適応的に行う撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2009−034392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように本露光前にダイナミックレンジ拡大量をシーン解析することによって決定する場合、実際の撮影条件によっては決定したダイナミックレンジ拡大量が適切ではなくなる場合も考えられる。例えば、シーン解析に用いた撮像データの輝度レベルと本露光画像の輝度レベルに差がある場合には、シーン解析画像と本露光画像の白とびの程度が異なるため、シーン解析によって決定したダイナミックレンジ拡大量が適切でなくなってしまう。
【0005】
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、実際の撮影時の露出条件に応じて適切なダイナミックレンジ拡大処理を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる撮像装置は、被写体を撮像して画像データを取得する撮像手段と、被写体の輝度を測定する測光手段と、本露光時の露出条件を設定する露出条件設定手段と、前記露出条件設定手段により本露光時の露出条件が設定される前に、第1の露出条件で撮像された画像データの所定領域の輝度と目標値との差に基づいて、ダイナミックレンジ拡大処理に伴う露出低下量を演算する演算手段と、前記露出条件設定手段により設定された本露光時の露出条件に基づいて前記露出低下量を補正する補正手段と、本露光時の画像データに対して前記補正手段により補正された露出低下量に応じた階調特性を設定する階調特性設定手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明にかかる撮像装置の制御方法は、本露光時の露出条件を設定する露出条件設定ステップと、前記露出条件設定ステップで本露光時の露出条件が設定される前に、第1の露出条件で撮像された画像データの所定領域の輝度と目標値との差に基づいて、ダイナミックレンジ拡大処理に伴う露出低下量を演算する演算ステップと、前記露出条件設定ステップで設定された本露光時の露出条件に基づいて前記露出低下量を補正する補正ステップと、本露光時の画像データに対して前記補正ステップで補正された露出低下量に応じた階調特性を設定する階調特性設定ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実際の撮影時の露出条件に応じて適切なダイナミックレンジ拡大処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に係る撮像装置のブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る静止画記録モード処理のフローチャート図。
【図3】本発明の実施例に係る非発光用静止画露出算出処理のフローチャート図。
【図4】本発明の実施例に係る発光用静止画露出算出処理のフローチャート図。
【図5】本発明の実施例に係る撮影処理のフローチャート図。
【図6】本発明の実施例に係るダイナミックレンジ拡大時のガンマパラメータを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施例に係る撮像装置の構成を示したブロック図である。レンズ10は複数のレンズ群からなるレンズユニットであって、レンズ駆動回路42にてレンズ位置を光軸に沿って前後に動かすことで焦点を調節したり、画角を調節することが可能である。さらに、ブレ量検知回路44で測定したカメラのブレ量に基づいて、手ブレ補正回路40にてレンズ10を駆動し、手ブレをキャンセルする方向に光軸を変化させることで光学的な手ブレ補正を行う構成とすることも可能である。ブレ量検知回路44には、ジャイロセンサーが含まれていて、本実施例では、レンズ10を駆動することで手ブレ補正を実現しているが、後述する撮像素子16を駆動することで同様に手ブレを補正することも可能である。
【0011】
レンズ10を通過した光は絞り14により、その光量を調節することができる。システム制御部60は、絞り制御情報を絞り駆動回路26に伝達することで、絞り14を制御することが可能である。絞り14は、複数枚の羽根から構成された虹彩絞りや、あらかじめ、板を様々な径で穴を打ち抜いた丸絞りがある。
【0012】
システム制御部60は、これらの絞り14と絞り駆動回路26を用い、被写体輝度が高い場合は絞りを絞って光量を落とすように制御し、被写体輝度が低い場合は絞りを開放にして光を多く取り込むように制御することが可能である。また、システム制御部60は、メカニカルシャッター制御情報をメカニカルシャッター駆動回路28に伝達することで、メカニカルシャッター12を制御することが可能である。静止画撮影時の露光時間は、メカニカルシャッター12の開閉時間により決定され、システム制御部60により制御される。レンズ10、メカニカルシャッター12、絞り14を通過した光は撮像素子16に受光される。
【0013】
システム制御部60は、撮像素子制御信号をTG(Timing Generator)24に伝達することで、撮像素子16を制御することができる。TG24は、システム制御部60から受信した制御情報をもとに撮像素子16を駆動する。撮像素子16は素子への露光と、露光した画像データの読み出し作業を周期的に行っており、この作業はTG24からの駆動信号を基準に行われる。またTG24は、撮像素子16の露光時間を制御することが可能である。任意のタイミングで、素子がチャージした電荷を開放するように、TG24から撮像素子16へ駆動信号を出すことでこれを可能としている。
【0014】
撮像素子16から読み出された画像データは、CDS(Correlated Double Sampler)回路18を通過する。CDS回路18は相関二重サンプリング方式により画像データのノイズ成分を除去することを主な役割とする。その後、画像データはPGA(Programmable Gain Amplifier)回路20により、画像データの信号レベルを減衰/増幅することができる。
【0015】
システム制御部60は、増幅レベルをPGA回路20に伝達することで、増幅量を制御することができる。通常、撮像素子16の露出を適正にするには、絞り14で撮像素子16への露光量を適切に設定すると共に、シャッターにより露光時間を適切に設定することで実現される。加えて、PGA回路20で画像データの信号レベルを減衰/増幅することで、擬似的に画像データの露出を変える役割を担うことができる。また、ストロボ制御部48を介してストロボ46を発光させることもできる。逆光状態や低照度時など、被写体が暗い場合にストロボ発光撮影することで、被写体を明るく撮影することが可能となる。すなわち、ストロボ制御部48はストロボ46の発光量を調節するなどの発光制御を行う。
【0016】
画像データはA/D(Analog/Digital Converter)回路22にてアナログ信号からデジタル信号へ変換される。デバイスにより、デジタル信号のビット幅は10ビット、12ビット、14ビットなどがあり、後段の画像処理回路50は、複数種類のビット幅に対応可能である。
【0017】
図1では、CDS回路18、PGA回路20、A/D回路22をそれぞれ別のブロックとして表現しているが、一つのICパッケージにこれらの機能を搭載したものを採用することも可能である。
【0018】
A/D回路22から出力されたデジタル化された画像データは画像処理回路50へ入力される。画像処理回路50は複数のブロックから構成され、さまざまな機能を実現している。
【0019】
撮像素子16は、カラーフィルターを通して各画素ごとに特定の色成分を抽出するのが一般的である。A/D回路22からの画像データは撮像素子16の画素及びカラーフィルター配置に対応したデータ形式になっており、輝度成分のみを評価して露出制御を行う自動露出制御(AE:AutoExposureControl)で使用するには適さない形式である。
【0020】
画像処理回路50では、画像データから色情報を排除し、輝度情報のみを抜き出す機能を備えている。逆に、色情報を抽出する機能も備え、被写体の光源を特定し、色を適切に調節するホワイトバランス処理に使用することができる。
【0021】
さらに、画像処理回路50では、撮像素子16から読み出された信号の周波数成分のみを抜き出す機能を備え、自動ピント合わせ制御(AF:AutoFocus)時に使用することができる。撮像素子16から読み出された画像データのどの領域の周波数成分を抽出するか、また、領域内を分割設定できる機能を備えている。
【0022】
さらに、画像処理回路50は、A/D回路22によりデジタル化された画像データの信号レベルの増減、画像の色効果などを操作する機能を備え、撮影画像の画質を調節するという役割も担っている。画像データの信号レベルに関しては、画像全体に一律の増幅率でレベルを増減させる機能や、元の信号レベルの大小に応じて異なる変換率で信号レベルを変換するトーンカーブ(ガンマ)機能など様々な信号レベル調節が可能である。その他にも、画面内の領域ごとの周波数成分に応じた増幅率でレベルを増減させる機能などが可能である。
【0023】
A/D回路22から出力されたデジタル化された画像データは画像処理回路50へ入力されると同時に、一時記憶メモリ30に記憶される。一旦、一時記憶メモリ30に記憶された画像データは再度読み出すことができ、システム制御部60から画像データを参照したり、読み出した画像データを画像処理回路50に入力することが可能である。さらに、画像処理回路50で画像処理した画像データを一時記憶メモリ30に書き戻したり、システム制御部60から任意のデータを書き込むことも可能である。
【0024】
画像処理回路50で適切に処理された画像データは、画像認識回路38に入力される。画像認識回路38は、入力された画像の明るさ状況、ピント合焦状況、色状況の認識に加え、人物の顔認識とその表情、文字がある場合はその文字情報を認識することが可能となっている。画像認識回路38には複数の画像を入力することが可能となっており、例えば2つの画像を入力し、その2つの画像の特徴を比較することで、同一の画像かどうかを判定することが可能となっている。画像認識回路38で画像を認識する方法に加え、システム制御部60でも画像認識処理を行うことができる。
【0025】
システム制御部60はCPU上であらかじめコーディングされたプログラムを実行することができるが、一時記憶メモリ30に記憶された画像データをシステム制御部60から読み出し、その画像データを解析してシーンの状況を認識することができる。
【0026】
画像をLCDなどの画像表示装置108に表示する場合、画像処理回路50で画像処理を行った画像データをVRAM34上に展開しておき、それをD/A回路36にてアナログデータに変換して画像表示装置108に表示する。撮像素子16から読み出される連続した画像を順次画像表示装置108に表示更新していくことで、画像表示装置108を電子ファインダーとして用いることが可能となる。
【0027】
画像表示装置108には、画像だけでなく任意の情報を単独、もしくは画像と共に表示することが可能である。カメラの状態表示や、ユーザーが選択あるいはカメラが決定したシャッター速度や絞り値、感度情報などの文字情報や、画像処理回路50にて測定した輝度分布のヒストグラムや、顔認識結果、シーン認識結果等も表示可能である。
【0028】
また、画像表示装置108には、記録媒体82に記録されている画像データを表示することも可能である。画像データが圧縮されている場合、圧縮伸張ブロック32にて伸張し、VRAM34に画像データを展開する。この画像データをD/A回路36にてアナログデータに変換して出力する。記録媒体82は不揮発性のものであり、主に撮影した画像データを記録することが可能である。
【0029】
操作部70には、システムの電源オン/オフを切り替えることのできる電源スイッチ102、撮影指示を行うためのシャッタースイッチSW1(104)、SW2(106)、モード切替スイッチ110、パラメータ選択スイッチ112などが含まれる。
【0030】
104はシャッタースイッチSW1で、不図示のシャッターボタンの操作途中でオンとなり、自動露出制御やピント制御等の撮影準備動作の開始を指示する。106はシャッタースイッチSW2で、不図示のシャッターボタンの操作完了でオンとなり、静止画撮影や画像認識の指示を行う操作が実現可能である。
【0031】
モード切替スイッチ110は、静止画撮影モード、動画撮影モード、再生モードなどのカメラ動作モードを切り替えることができる。
【0032】
パラメータ選択スイッチ112により、測距領域や測光モードをはじめとする撮影時の撮影条件の選択や、撮影画像再生時のページ送り、カメラの動作設定全般などをユーザーが選択することができる。さらに前述の電子ファインダーのオン/オフを選択することもできる。また、画像表示装置108は画像を表示すると共に、タッチパネルとして入力装置となる構成とすることもできる。
【0033】
次に、静止画記録モード処理を示すフローチャートを図2を用いて説明する。
【0034】
システム制御部60は、ステップS201でシャッタースイッチSW1がオンしているか否かを判断し、オフの場合はステップS201に戻り、オンの場合はステップS202に進む。
【0035】
ステップS202において、システム制御部60は、被写体輝度を求めるための測光処理を行う。測光処理では、撮像素子から読み出された画像データの信号レベルと適正レベルとの差分、測光時の露出条件などから被写体輝度Bv(アペックス値)を求め、測光値としてシステム制御部60の内部メモリ(不図示)に記憶する。
【0036】
ステップS203では、システム制御部60は、ステップS202で記憶した測光値に基づき、露出が適正になるよう絞り14、TG24、PGA回路20を制御する。そして、適正露出にした状態で画像データを取得する。
【0037】
次にステップS204にて、システム制御部60は適正露出で撮像した画像データを基にシーン判別処理を行う。輝度分布や色などの情報から撮影シーンを判別し、後段の処理でシーンに応じた制御を行うことが可能となる。例えば、輝度分布から逆光シーンを判別してストロボを発光することによって被写体を明るく撮影したり、色から青空シーンを判別して彩度をコントロールしたりすることができる。露出が適正でない状態では、撮像素子から読み出される信号が飽和している等の原因で精度良くシーン判別を行うことができない可能性が高いため、ステップS203で適正露出にした状態で取得した画像データに基づいてシーン判別処理を行っている。
【0038】
続いてステップS205で、システム制御部60は、ダイナミックレンジ拡大量(以下D+量)を求め、算出したD+量をシステム制御部60の内部メモリに記憶する。適正露出のままD+量を算出することで露出制御に要するタイムラグ無しで処理を進めることが可能である。D+量の決定方法としては例えば、画像データのある所定領域の輝度が目標値に比べて何段明るいかを計算すればよい。すなわち領域の輝度をY、目標値をYrefとしたとき、
D+log(Y/Yref)
とする。上述した式が示すように、D+量とは画像データのある所定領域の輝度を目標値とするために必要とする露出低下量に相当する。また、上述した所定領域は、例えば、画像認識回路38の顔検出の結果に基づいた被写体の顔領域や、輝度が所定値以上である白とび領域に設定する。また、別途ヒストグラムを用いるなどしてD+量を決定してもよい。また、適正露出(第1の露出条件)で撮像した画像データを用いてD+量を演算したが、ステップS203のシーン判別処理と同様の画像データを用いるのであれば、適正露出で撮像した画像データでなくてもよい。ダイナミックレンジ拡大処理については撮影処理を行うステップS214の説明に併せて後述する。
【0039】
ステップS206に進むと、システム制御部60は、ステップS202で記憶した測光値Bvに基づきAF処理に適した露出になるように絞り14、TG24、PGA回路20を制御する。そして、取得した画像データに基づいてステップS207でAF処理を行う。
【0040】
ステップS208では、システム制御部60は、ステップS202で記憶した測光値に基づき、非発光撮影用の静止画撮影用露出を算出する。この非発光用静止画露出算出処理については図3を用いて後述する。
【0041】
ステップS209では、システム制御部60は、静止画撮影時にストロボ発光するか否かの判定を行う。ストロボを発光させる条件としては、逆光時や低照度時などの被写体が暗い場合や被写体のコントラストが高い場合などがある。また、ストロボ非発光とする条件としては、ステップS206の測距処理の結果から被写体距離が近いと判断された場合などがある。被写体が暗い場合はストロボ光により被写体を明るく撮影できる。また、コントラストが高い被写体に対して陰部分にストロボ光を照射することでコントラストを低減することができる。逆に被写体距離が近い場合はストロボ発光することで被写体が白とびしてしまう可能性がある。なお、ストロボ発光設定(強制発光/強制非発光など)がパラメータ選択スイッチ112などで設定されている場合はその設定に従う。
【0042】
ステップS210では、システム制御部60はステップS209における発光判定結果に基づいて発光を行うか否かを判断し、ストロボ発光させると判断した場合はステップS211で発光撮影用の静止画撮影用露出を算出して、ステップS212に進む。この発光用静止画露出算出処理については図4を用いて後述する。ストロボ発光しないと判断した場合は、ステップS212に進む。
【0043】
ステップS212では、システム制御部60は、シャッタースイッチSW2がオンしているか否かを判断し、オフの場合はステップS213に進み、オンの場合はステップS214に進む。
【0044】
ステップS213では、システム制御部60はシャッタースイッチSW1がオンしているか否かを判断し、オンの場合はステップS212に戻り、オフの場合はステップS201に戻る。SW1がオンSW2がオフの間は、ステップS212〜S213が繰り返される。
【0045】
ステップS214に進むと静止画の撮影を行い、静止画の撮影が終了するとステップS201に戻る。この撮影処理は図5を用いて後述する。
【0046】
次に、図3を用いて、図2のステップS208で行う非発光用静止画露出算出処理のフローチャートを説明する。
【0047】
システム制御部60は、ステップS301で、ステップS202で記憶した測光値Bvに基づき、プログラム線図等からストロボ発光を行わない場合の静止画撮影時(本露光時)の露出条件を求める。以下、静止画撮影時の露出条件を(Av、Tv、Sv)で表す。なお、Avは絞り値、Tvは露光時間、Svは感度を示すアペックス値とする。ここでは、ステップS204のシーン判別処理の判別結果によって、異なるプログラム線図を用いることも可能である。また、パラメータ選択スイッチ112等によってユーザーによって露出補正値が設定されている場合には、設定された補正値分だけ適正からずれた露出になるように露出補正値を加味して露出計算を行う。さらに、例えば、被写体が非常に暗く、適正露出が露出制御範囲の限界を超える場合は、制御限界の露出を静止画露出とする。例えば、露出制御限界の露出条件を(MinAv、MinTv、MaxSv)とすると、Bv+MaxSv<MinAv+MinTvとなる場合には、Av=MinAv、Tv=MinTv、Sv=MaxSvとする。ここで求めた露出条件(Av、Tv、Sv)はシステム制御部60の内部メモリに記憶しておく。
【0048】
ステップS302では、ステップS301で求めた露出と、ステップS202で記憶した測光値に対する適正露出とを比較し、ステップS301で求めた露出が適正に対して露出アンダーか否かを判断する。露出アンダーでない場合は、非発光用静止画露出算出処理ステップS207を終了する。
【0049】
ステップS301で求めた静止画露出が適正に対してアンダーである場合は、ステップS303で、露出アンダー分に応じてステップS205で記憶したD+量を補正する。例えば、ステップS205で算出されたD+量がD+=1の場合、Bv+Sv=Av+Tv、すなわち適正露出であればD+量に対して補正は行わない。すなわち、D+量はD+=1のままとする。また、パラメータ選択スイッチ112によって露出補正が−1/3段に設定されていた場合はBv+Sv=Av+Tv−1/3となるようステップS301で露出を求めているため、D+量を1/3段小さくする。すなわち、D+=1−1/3=2/3と補正する。また、露出補正を行っていないが、露出制御限界でも適正にならない場合、例えばBv+MaxSv=MinAv+MinTv−1のときには1段アンダーとなるのでD+=1−1=0と補正する。これは、絞りを限界まで開き(MinAv)、露光時間を限界まで長くし(MinTv)、感度を限界まで上げても(MaxSv)、適正に対して1段アンダーになるほど被写体が暗い場合に相当する。以上のようにして、ステップS303でD+量を補正したら非発光用静止画露出算出処理を終了する。
【0050】
次に、図4を用いて、図2のステップ211で行う発光用静止画露出算出処理のフローチャートを説明する。
【0051】
システム制御部60は、ステップS401で、ストロボ発光撮影時に許可する最長露光時間MinTv_Flashを求める。例えば、画像認識回路38から出力される顔検出結果や、ブレ量検知回路44の出力結果などに基づいてMinTv_Flashを決定する。顔が検出されている場合は被写体ブレが、ブレ量検知回路44がブレを検出している場合は手ブレの可能性があるためMinTv_Flashをより高速側に設定することで、発光撮影時の被写体ブレおよび手ブレを軽減することが可能である。
【0052】
ステップS402では、ステップS401で決定したMinTv_Flashを用いて静止画撮影時の露光時間のクリップ処理を行う。すなわち、ステップS208で記憶したTvがMinTv_Flashよりも小さい(露光時間としては長い)場合は、撮影時の露光時間をMinTv_Flashに制限する。変更した露光時間Tvはシステム制御部60の内部メモリに記憶する。また、クリップ処理前のTvについてもステップS409で発光を取り止めた場合に参照できるようTv´として別途記憶しておく。
【0053】
次にステップS403において、システム制御部60は、ステップS402のクリップ処理におけるクリップ量に応じて内部メモリに記憶しているD+量を補正する。例えば、S208でTv=3、ステップS401でMinTv_Flash=5と決定したとすると、ステップS402におけるクリップ量が2段となるのでD+量を2段補正する。すなわち、ステップS401の段階でD+量が2段であったとすると、D+=2−2=0と補正する。なお、ステップS401の段階のD+量は、S205あるいはS303で決定されたものとなる。また、補正前のD+量についてもステップS409で発光を取り止めた場合に参照できるようD+´として別途記憶しておく。
【0054】
ステップS404では、記憶されているD+量を制御可能な範囲にクリップする。後述するように、D+量を大きくするほど画像処理によるゲインアップを行うことになるためノイズが増幅される傾向にある。そのため、D+量には制御範囲を設けており、ここでその範囲内に制限しておく。
【0055】
次にステップS405で、露出アンダー量Exp_Cmpを算出する。この時点で記憶されている静止画撮影露出で撮影した場合に適正露出に対してどれだけアンダーになるかを算出する。例えば以下のようにExp_Cmpを算出すればよい。
Exp_Cmp=Bv+Sv−(Av+Tv)
ここで、BvはステップS202で記憶した被写体輝度、Av、Tv、Svはこの時点で記憶されている発光用静止画撮影露出である。
【0056】
ステップS406では、ステップS405で算出した分だけアンダーにした静止画露出およびD+量をもって撮影した場合に白とびがどの程度生じるかを演算する。ある領域の白とび量ΔOverは例えば以下のように求めればよい。
ΔOver=log2(Y/Yref)−(D+)+Exp_Cmp
ここで、YおよびYreffはステップS205で参照した輝度および目標値、D+はステップS404で制御範囲内にクリップした後のD+量、Exp_CmpはステップS405で求めた露出アンダー量である。
【0057】
そして、以下では、演算した白とび量が第1の閾値以下である場合、第1の閾値より大きくて第2の閾値より小さい場合、第2の閾値以上である場合の3つの場合に分けてそれぞれ異なる処理を行う。ここでは、第1の閾値を0、第2の閾値を2として説明を行うが、第1の閾値よりも第2の閾値が大きければ例示した値でなくてもよい。演算した白とび量が第1の閾値以下である場合、すなわち、ΔOver≦0の場合は発光用静止画露出算出処理を終了する。
【0058】
ステップS406で演算した白とび量が第1の閾値より大きくて第2の閾値より小さい場合、すなわち、0<ΔOver<2の場合はステップS407へ移行する。、ステップS407では、白とび量演算によって求めた予測される白とび量ΔOverに基づいて調光補正量を算出する。これは、露出下げ(Exp_Cmp)、さらにダイナミックレンジ拡大処理(D+)を行っても白とびが抑えられない場合に発光を抑えることで白とびを軽減するためであり、白とび量ΔOverが大きいほど発光量を弱めるように補正を行う。ステップS407で調光補正を行ったら発光用静止画露出算出処理を終了する。
【0059】
ステップS406で演算した白とび量が第2の閾値以上である場合、すなわち、ΔOver≧2の場合はステップS408へ移行する。
【0060】
ステップS408では、白とび量ΔOverが大きいため調光補正を行っても白とびが抑えられないと判断し、発光撮影を取り止め非発光撮影に切り替える。この際、発光判定結果を非発光に修正してシステム制御部60の内部メモリに記憶する。ただしパラメータ選択スイッチ112等によってストロボ設定が強制発光に設定されている場合は非発光撮影への切替は行わず、そのまま発光撮影を行う。非発光撮影に切り替えた場合は、静止画露出およびD+量は非発光用静止画露出(Tv´)およびD+量(D+´)に戻しておく。
【0061】
ステップS409で発光取り止め処理を行ったら発光用静止画露出算出処理を終了する。
【0062】
以上のように、実際の撮影時の露出条件での白とび量を演算し、演算された白とび量に応じて発光制御を行うことで、発光撮影を行う場合であっても白とびを軽減することができる。
【0063】
次に、図5を用いて図2のステップS214で行う撮影処理のフローチャートを説明する。
【0064】
ステップS501で、システム制御部60は内部メモリに記憶されている静止画露出条件(Av、Tv、Sv)およびD+量を参照し、本露光時の露出条件設定を行う。なお、設定前にAv、Tv、Sv、D+量を制御可能な範囲にクリップ処理しておく。また、発光撮影する場合には調光動作を行い、本露光時の発光設定も行っておく。なお、ステップS407で調光補正量が設定されている場合は、調光動作によって決定される本発光時の発光量を補正する。
【0065】
ここで、ダイナミックレンジ拡大処理について説明する。本実施例では、静止画撮影時にD+量だけアンダーに補正した露出で本露光を行い、得られた画像データを後段の現像処理においてD+量に応じたガンマパラメータ(階調特性)の設定を行うことでダイナミックレンジを拡大する。現像処理における階調特性設定を変更することによって、補正前の露出において適正レベル付近の輝度であった領域を、D+量だけアンダーに補正した露出であっても同等の輝度となるように制御することが可能である。ダイナミックレンジ拡大処理におけるガンマパラメータの設定例を図6に示す。図6はD+量が0、1/3、2/3、1段の4段階である場合のガンマパラメータの設定例を示しており、D+量が4段階でない場合にも同様に設定すればよい。D+量が0すなわちダイナミックレンジ拡大処理を行わない場合に適正レベルY_REFの輝度が得られる被写体に対し、ダイナミックレンジ拡大する場合はD+量だけ露出を下げて撮影する。そのため、上述した被写体の輝度は
Y1=Y_REF−1/3,Y2=Y_REF−2/3,Y3=Y_REF−1
と暗くなる。しかしながら、図6に示すように、ダイナミックレンジ拡大時のY_REF、Y1、Y2、Y3に対する階調変換後の輝度が、D+量によらず同じ値になることを示している。このようなガンマパラメータの設定を行うことにより、D+量が変わっても適正レベル付近の輝度が同等となるよう制御することが可能である。一方、ダイナミックレンジ拡大処理を行わない場合には飽和するような撮像素子からの信号についても、D+量だけ露出を下げて露光することで飽和することなく階調が残るようになる。
【0066】
ステップS501では、ダイナミックレンジ拡大処理を行うため、D+量分だけ露出をアンダーに撮影するべく、感度としてはSv−D+となるようPGA回路20を設定する。PGA回路20の制御限界などで感度を下げきれない場合は絞り値(Av)や露光時間(Tv)を変更して露出を下げてもよい。
【0067】
露出設定が完了するとステップS502の露光動作に進む。露光して取得した画像データは一時記憶メモリ30に記憶される。
【0068】
次に取得した画像データの現像処理へと進む。現像処理に必要な各種パラメータを設定するが、特にステップS501、S502にてD+量分だけ露出を下げて本露光を行っているため、露出を下げることでアンダーになった明るさを補うように、ステップS503でガンマパラメータを設定する。
【0069】
上述したようなD+量に応じたガンマパラメータが設定されると、設定された各種パラメータに基づきステップS504で現像処理を行う。
【0070】
現像された画像データはステップS505で記録媒体82に記録され、撮影処理を終了する。
【0071】
以上のように、本実施例では、ステップS205で画像解析によりD+量を求めた後、ステップS303およびS403にて露出がアンダーになった分に応じてD+量を補正している。このような構成により、過度にダイナミックレンジ拡大処理を行うことなく、実際の撮影時の露出条件に応じて適切なダイナミックレンジ拡大処理を行うことができる。そのため、過度なダイナミックレンジ拡大処理に伴うノイズの増加やコントラストの低下を抑えることができ、良好な画像を得ることができる。具体的には、ステップS205で解析に用いる画像データを取得する際の露出に対して本露光の露出がアンダーとなる場合には、画像の白とび量が露出をアンダーにした分だけ軽減されるため、白とびを抑えるのに必要なD+量が小さくなる。この点を考慮してD+量を補正することで、撮影条件に最適なダイナミックレンジ拡大処理を行うことが可能となる。
【0072】
また、特にコントラストの高い被写体に対して発光撮影した場合にハイライト部の白とびが懸念されるが、ステップS406で実際の撮影時の露出条件での白とび量を演算し、それに応じて発光量を抑えることでハイライト部の白とびを軽減することができる。
【0073】
さらに、発光量を抑えても白とびしそうな場合に発光を取り止めることにより、白とび量が大きくならないようにすることができる。
【0074】
なお、本実施例では、D+量算出のための画像解析に用いる画像を取得する際の露出よりも本露光の露出がアンダーになる要因として、ユーザーによる露出補正、露出制御範囲の限界、ブレを考慮した露光時間制限を挙げたが、これらの要因に限られるものではない。例えば、撮影シーンや被写体の状況に応じて露出を補正して撮影する場合にも、本実施例と同様の制御を適用することが可能である。
【0075】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。また、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線/無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含む。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリでもよい。また、プログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバに本発明を形成するコンピュータプログラムを記憶し、接続のあったクライアントコンピュータはがコンピュータプログラムをダウンロードしてプログラムするような方法も考えられる。
【符号の説明】
【0076】
12 メカニカルシャッター
14 絞り
16 撮像素子
20 PGA回路
24 TG
26 絞り駆動回路
28 メカニカルシャッター駆動回路
38 画像認識回路
46 ストロボ
48 ストロボ制御部
50 画像処理回路
60 システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像データを取得する撮像手段と、
被写体の輝度を測定する測光手段と、
本露光時の露出条件を設定する露出条件設定手段と、
前記露出条件設定手段により本露光時の露出条件が設定される前に、第1の露出条件で撮像された画像データの所定領域の輝度と目標値との差に基づいて、ダイナミックレンジ拡大処理に伴う露出低下量を演算する演算手段と、
前記露出条件設定手段により設定された本露光時の露出条件に基づいて前記露出低下量を補正する補正手段と、
本露光時の画像データに対して前記補正手段により補正された露出低下量に応じた階調特性を設定する階調特性設定手段と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記所定領域は、前記第1の露出条件で撮像された画像における前記測光手段により測定された輝度が所定値以上の白とび領域であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
本露光時に被写体を照射する発光手段と、
本露光を行う前に、前記露出条件設定手段により設定された発光撮影用の露出条件で本露光を行った場合に取得される画像における白とび量を演算する白とび量演算手段と、
前記白とび量演算手段により演算された白とび量が大きいほど、本露光時の前記発光手段の発光量が小さくなるように発光制御を行う発光制御手段と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記白とび量演算手段により演算された白とび量が閾値より大きい場合、前記発光制御手段は本露光時に前記発光手段を発光させず、前記露出条件設定手段は本露光時の露出条件として非発光撮影用の露出条件を設定することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像手段により撮像された画像における被写体の顔領域を検出する顔検出手段を有し、
前記所定領域は、前記第1の露出条件で撮像された画像における前記顔検出手段により検出された顔領域であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1の露出条件は、適正露出となる露出条件であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記露出条件設定手段は、ユーザーにより設定された露出補正値を加味して本露光時の露出条件を設定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
本露光時の露出条件を設定する露出条件設定ステップと、
前記露出条件設定ステップで本露光時の露出条件が設定される前に、第1の露出条件で撮像された画像データの所定領域の輝度と目標値との差に基づいて、ダイナミックレンジ拡大処理に伴う露出低下量を演算する演算ステップと、
前記露出条件設定ステップで設定された本露光時の露出条件に基づいて前記露出低下量を補正する補正ステップと、
本露光時の画像データに対して前記補正ステップで補正された露出低下量に応じた階調特性を設定する階調特性設定ステップと、を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−119944(P2011−119944A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274962(P2009−274962)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】