説明

撮像装置およびその画像処理方法ならびに情報端末装置

【課題】2焦点レンズで撮像された画像に対し、大規模な処理を必要とせず、容易にかつ精度よく鮮明な画像を得る。
【解決手段】平面形状がそれぞれ半円形である近レンズ部23と遠レンズ部22とを有し、それぞれのレンズ部の直線部分が互いに接するように構成される2焦点レンズ210と、2焦点レンズ210により結像された画像を電気的信号に変換し、撮像信号として出力する撮像素子29と、撮像素子29からの撮像信号に対し、ブロックごとに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施す画像処理部30とを備え、撮像素子29の撮像面に結像される画像は、垂直方向を複数に分割するようにブロック区分され、画像処理部30は、各ブロックに対応した撮像信号に対して、それぞれに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子カメラなど被写体を電子的に撮像する撮像装置およびその画像処理方法に関し、特に、2つの焦点を有した2焦点レンズを利用して、通常のカメラと同様の遠点撮像とともに、バーコードなど近接の被写体を撮像する近点撮像をも行う撮像装置およびその画像処理方法、さらにはその撮像装置を備えた情報端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯電話で代表されるように、情報端末装置には、画像入力機能を備えることが一般的となっている。さらに、この画像入力機能を利用して人物や風景を撮影するようなカメラ機能とともに、バーコードなどの近接画像をも読み取り可能とすることで、このような情報端末装置の利便性をさらに向上させることができる。
【0003】
例えば、このようなバーコードを利用して、メールアドレス、ホームページアドレス、電話番号など多くの情報を表すことができるので、これらのバーコードを上記所望の画像と組み合わせて使用することにより、きわめて有用なコミュニケーションを実現できる。
【0004】
このように、近距離および遠距離の被写体双方に対して精度よく画像を取り込むような情報端末装置の実現が強く要望されつつある。
【0005】
このようななか、2焦点レンズのような多焦点光学系を使用して焦点深度の拡大を図り、バーコードのような被写体に対して、近距離とともにある程度離れた距離であっても精度よく読み取りを可能とした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図8は、このような多焦点光学系を使用して焦点深度の拡大を図った従来のバーコード読取装置の構成を示すブロック図である。
【0007】
図8に示す構成において、バーコードなど対象物の反射光は、従来のバーコード読取装置の先端部98を通して取り込まれ、レンズ91により撮像素子99上に結像される。また、レンズ91は、2焦点光学系として、長い焦点距離で集束する遠レンズ部92と、短い焦点距離で集束する近レンズ部93とで構成されている。図8に示すように、レンズ91は、正面から見たとき、平面形状が円形である遠レンズ部92が中心に配置され、平面形状が環状である近レンズ部93が遠レンズ部92の外縁部に配置されている。
【0008】
また、遠レンズ部92は、光軸10上に長い焦点距離である焦点11を形成し、近レンズ部93は、光軸10上に短い焦点距離である焦点13を形成している。さらに、バーコードの読み取り限界範囲を示す被写界深度(DOF)が焦点を中心に決定される。すなわち、遠レンズ部92は、図8に示すような被写界深度DOF1を有しており、近レンズ部93は、被写界深度DOF2を有している。
【0009】
また、撮像素子99上に結像された像は、撮像素子99の走査により結像に応じた電気信号に変換され、撮像素子99から撮像信号として出力される。さらに、撮像信号は、信号の直流成分を濾波し排除するハイパスフィルタ97に供給され、撮像信号から直流成分が除去された信号がハイパスフィルタ97から画像信号として出力される。この画像信号は、さらに図示しない信号処理部などにより文字情報などに復号される。このようにして、従来のバーコード読取装置によるバーコードの読み取りが実現される。
【0010】
このような従来のバーコード読取装置の構成において、レンズ91は、異なった位置に焦点を持つ2つのレンズ部により構成されるため、撮像素子99には、対象物が一方の被写界深度(DOF)内であっても、他方のレンズ部からボケた投射像が投射される。
【0011】
このため、他方のレンズ部からのボケた投射像は、撮像素子99上に投射される投射像全体を浮き上がらせる直流成分として作用する。ハイパスフィルタ97は、このような直流成分として作用する他方のレンズ部からのボケた投射像による画像成分を除去するために設けられている。
【0012】
例えば、対象物としてのバーコードがDOF1内にある場合、ハイパスフィルタ97は、近レンズ部93によるボケた投射像成分である直流成分を除去する。逆に、対象物としてのバーコードがDOF2内にある場合、ハイパスフィルタ97は、遠レンズ部92によるボケた投射像成分である直流成分を除去する。
【0013】
このように、ハイパスフィルタ97により、ボケた画像成分による直流成分を除去することで、バーコード画像の変調の深さを改善している。その結果、このバーコード読取装置の被写界深度は、図8に示す近距離のDOF2に加えて遠距離のDOF1をも有することとなり、焦点深度の拡大を図ることができ、これによりバーコードからある程度離れた距離であっても精度よい読み取りが可能となる。
【0014】
また、図9は、多焦点光学系として上記従来例とは異なった形状の2焦点レンズにおける光学結像系を示した図である。
【0015】
図9において、2焦点レンズ210は、正面から見たとき、それぞれのレンズ部が半円形であり、中心を通る直線を境界として、一方には長い焦点距離で集束する遠レンズ部22が、他方には遠レンズ部22よりも短い焦点距離で集束する近レンズ部23が配置される。
【0016】
なお、以下、両レンズ部が接する直線部分に直角かつ光軸に対しても直角な方向を垂直方向とし、両レンズ部が接する直線部分に平行かつ光軸に対して直角な方向を水平方向とし、また、両レンズ部が接する直線部分あるいは光軸から一方の垂直方向を上方向とし、両レンズ部が接する直線部分あるいは光軸から他方の垂直方向を下方向として説明する。
【0017】
図9では上方向である上部に遠レンズ部22を、下方向である下部に近レンズ部23を配置した2焦点レンズ210の一例を示している。
【0018】
図9(a)は、遠レンズ部22の焦点11に点光源を配置した場合の光学結像系を示している。
【0019】
図9(a)の場合、撮像素子29の撮像面には、正面から見ると図9(a)に示すような投射像290が得られる。すなわち、遠レンズ部22の焦点11に点光源を配置した場合、遠レンズ部22によるピントのあった点状の像p90を中心に、その外周部の上部半分には近レンズ部23により、半円形の像b90、すなわちピントのボケた像が投射される。
【0020】
一方、図9(b)は、近レンズ部23の焦点13に点光源を配置した場合の光学結像系を示している。
【0021】
図9(b)の場合にも、撮像素子29の撮像面には、図9(a)の場合と同様に、正面から見ると図9(b)に示すような投射像291が得られる。すなわち、近レンズ部23の焦点13に点光源を配置した場合においても、近レンズ部23によるピントのあった点状の像p91を中心に、その外周部の上部半分には遠レンズ部22により、半円形の像b91、すなわちピントのボケた像が投射される。
【0022】
このように、遠レンズ部22と近レンズ部23との正面形状のそれぞれが半円形状の2焦点レンズ210を用いて、それぞれの焦点に点光源を配置した場合、撮像素子29の撮像面には、投射像290と投射像291とのように、それぞれが同様の形状となるボケた像を含む像が投射される。より正確に言えば、このような2焦点レンズ210では、図9のように点光源を光軸上の焦点に配置した場合には、投射像290と投射像291との照射強度分布が類似し、遠レンズ部22の焦点11に対する点光源分布関数と、近レンズ部23の焦点13に対する点光源分布関数とが近似した関数となる。
【0023】
点光源分布関数は、レンズなどを含めた光学系の伝達特性を示す伝達関数であり、このような点光源分布関数は、ポイントスプレッド関数(Point Spread Function)、あるいは略してPSFと呼ばれている。
【0024】
また、このようなボケた画像を精度よく鮮明な画像に補正する手法として、PSFの逆関数となるようなインバースフィルタを利用して画像処理を行い、これによってボケた画像の修復を行うような手法が知られている。このようなインバースフィルタを用いた画像処理は、デジタルフィルタなどにより、PSFに対し、その伝達特性を補完するような処理を行うことで実現できる。
【0025】
よって、2焦点レンズ210を用いた光学系において、例えば、代表的なPSFを1つ定めておき、代表的なPSFに基づき生成したフィルタ係数列によるインバースフィルタを用いて画像処理することで、遠点撮像および近点撮像のそれぞれにおいて、ボケを補正した画像が精度よく得られることとなる。このため、例えば、上記従来例のようにバーコードなどの近接画像の取り込みとともに、人物や風景などの通常のカメラと同様の遠点撮像にも利用することができる。
【特許文献1】特開平5−217012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、上述した半円形状の遠レンズ部22と近レンズ部23とを組み合わせた2焦点レンズ210の場合、例えば光軸上での遠点と近点において、点光源に対するボケた像を含む投射像の照射強度分布、すなわちPSFはほぼ同じとなるが、光軸から垂直方向に離れた異なる2点において、それぞれの点光源に対する投射像を比較した場合、それぞれの像の照射強度分布、すなわちPSFが異なり、1種類のみのフィルタ係数列を用いたインバースフィルタにより精度よくボケを補正するには限界があった。
【0027】
図10は、2焦点レンズ210に対し、光軸から垂直方向の3つの異なった焦点位置に点光源を配置した場合のそれぞれの光学結像系、投射像および照射強度分布を示した図である。
【0028】
図10でも、図9と同様に、上部に遠レンズ部22を、下部に近レンズ部23を配置している。また、図10では、遠レンズ部22の焦点位置に、点光源p1、p2およびp3を配置した場合を示している。さらに、図10(a)は、遠レンズ部22のみによる場合、図10(b)は近レンズ部23のみによる場合、また図10(c)は遠レンズ部22と近レンズ部23とを組み合わせた2焦点レンズ210の場合を示している。
【0029】
まず、図10(a)では、遠レンズ部22のみによる光学結像系、投射像および照射強度分布を示すため、下部の近レンズ部23による光の透過を遮断した場合を示している。
【0030】
この場合、それぞれの点光源p1、p2およびp3は、遠レンズ部22の焦点位置に配置されているため、撮像素子29の撮像面には、例えば、点光源p1に対して投射像p1’のように、ピントのあった合焦成分の投射像p1’、p2’およびp3’が投射される。
【0031】
このとき、各点光源p1、p2およびp3の垂直位置が異なるため、遠レンズ部22への入射角が異なることとなり、その結果、ピントはあっているが照射強度が異なった投射像p1’、p2’およびp3’が投射されることとなる。
【0032】
すなわち、図10(a)に示すように、撮像素子29の撮像面において、近レンズ部23側から垂直方向に遠レンズ部22側に行くに従って照射強度が弱くなるような合焦成分が投射される。言い換えれば、図10(a)のように上部に遠レンズ部22を配置した場合には、遠点の被写体に対して、上から下方向へと行くに従ってコントラストが強くなるようなピントのあった投射像が投射される。
【0033】
次に、図10(b)では、近レンズ部23のみによる光学結像系、投射像および照射強度分布を示すため、上部の遠レンズ部22による光の透過を遮断した場合を示している。
【0034】
この場合、それぞれの点光源p1、p2およびp3は、遠レンズ部22の焦点位置に配置されているため、撮像素子29の撮像面には、例えば、点光源p1に対して投射像b1のように、半円形にボケたボケ成分の投射像b1、b2およびb3が投射される。
【0035】
このときも、各点光源p1、p2およびp3の垂直位置が異なるため、近レンズ部23への入射角が異なることとなり、その結果、ボケの形状は同じであるが照射強度が異なった投射像b1、b2およびb3が投射されることとなる。
【0036】
すなわち、近レンズ部23は遠レンズ部22とは反対方向に配置されているため、図10(b)に示すように、撮像素子29の撮像面において、遠レンズ部22側から垂直方向に近レンズ部23側に行くに従って照射強度が弱くなるようなボケ成分が投射される。言い換えれば、図10(b)のように下部に近レンズ部23を配置した場合には、遠点の被写体に対して、上から下方向へと行くに従ってコントラストが弱くなるようなボケた投射像が投射される。
【0037】
さらに、図10(c)では、遠レンズ部22と近レンズ部23とを組み合わせた場合、すなわち2焦点レンズ210による光学結像系、投射像および照射強度分布を示している。
【0038】
この場合、撮像素子29の撮像面には、例えば、点光源p1に対して、遠レンズ部22による投射像p1’と近レンズ部23による投射像b1とが合成された投射像が投射される。
【0039】
このとき、撮像素子29の撮像面において、遠レンズ部22による合焦成分は上から下方向へと行くに従って照射強度が強くなり、逆に近レンズ部23によるボケ成分は上から下方向へと行くに従って照射強度が弱くなるため、合焦成分とボケ成分とが合成された合成成分は、図10(c)で示すように、撮像素子29の撮像面の上部と下部とで異なった照射強度分布の形状となる。
【0040】
すなわち、2焦点レンズ210を用いて撮像した場合、撮像素子29の撮像面において、ボケた像を含む投射像としては同形状であるが、PSFは、撮像面の垂直方向に依存して異なった強度分布形状の関数となる。
【0041】
また、図10(c)に示すような撮像面の上部の投射像(p3’+b3)と下部の投射像(p1’+b1)との視覚的な比較では、上部の投射像は合焦成分に対してボケ成分の比率が大きく、下部の投射像は合焦成分に対してボケ成分の比率が小さいため、上部に行くほどボケたような像として認知される。
【0042】
また、以上、図10を用いて点光源を遠レンズ部22の焦点位置に配置した場合について説明したが、点光源を近レンズ部23の焦点位置に配置した場合には、点光源の垂直位置に応じて、近レンズ部23による合焦成分は下から上方向へと行くに従って照射強度が強くなり、逆に遠レンズ部22によるボケ成分は下から上方向へと行くに従って照射強度が弱くなる。
【0043】
すなわち、点光源を近レンズ部23の焦点位置に配置した場合には、図10(c)とは逆に、点光源の垂直位置に応じて、下部に行くほど合焦成分に対してボケ成分の比率が大きくなり、よりボケたような像となる。
【0044】
このように、半円形状の遠レンズ部と近レンズ部とを組み合わせた2焦点レンズを備えた撮像装置において、1種類のみのフィルタ係数のインバースフィルタでボケを補正する場合、画像の垂直位置に依存して異なったPSFとなるため、例えば、画像の上部や下部など垂直方向端部では精度よく画像を修復できなかった。
【0045】
また、精度よくボケを補正しようとすると、撮像素子の撮像面の位置に応じて異なったフィルタ係数列を備えることが必要となり、フィルタ係数列を備えるメモリ容量が大きくなるなど大規模、かつ複雑な処理が必要になるという課題があった。
【0046】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、半円形状の遠レンズ部と近レンズ部とを組み合わせた2焦点レンズで撮像された画像に対し、大規模な処理を必要とせず、標準的な距離にある通常の被写体、およびこれよりも近距離にある近接被写体のいずれについても容易にかつ精度よく鮮明な画像を得ることができる撮像装置およびその画像処理方法ならびに情報端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本発明の撮像装置は、平面形状がそれぞれ半円形または半楕円形であり、所定の焦点距離を持つ近レンズ部と所定の焦点距離よりも遠方の焦点距離を持つ遠レンズ部とを有し、それぞれのレンズ部の直線部分が互いに接するように一体化されて構成される2焦点レンズと、2焦点レンズにより結像された画像を電気的信号に変換し、撮像信号として出力する撮像素子と、撮像素子からの撮像信号に対し、ブロックごとに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施し、フィルタ処理により得られた画像信号を出力画像信号として出力する画像処理部とを備える。
【0048】
さらに、本発明の撮像装置は、撮像素子の撮像面において、それぞれのレンズ部が接する直線部分に対して平行な方向を水平方向とし、直角な方向を垂直方向とするとき、撮像素子の撮像面に結像される画像は、垂直方向を複数に分割するようにブロック区分され、画像処理部は、各ブロックに対応した撮像信号に対して、ブロックごとに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施す構成である。
【0049】
また、本発明の撮像装置は、ブロックごとに設定された補正関数を、近レンズ部側のブロックに対して、遠レンズ部側のブロックほど高周波信号成分を強調するような補正関数とした構成である。
【0050】
また、本発明の撮像装置は、補正関数を、2焦点レンズの光学系における所定の被写距離に対するポイントスプレッド関数に基づいた逆関数とし、ポイントスプレッド関数を、2焦点レンズの光軸上から垂直方向に、撮像素子の撮像面の各ブロックに対応した距離だけ離れた焦点面において、いずれかのレンズ部の焦点位置に対するポイントスプレッド関数とした構成である。
【0051】
また、本発明の撮像装置は、補正関数を、2焦点レンズの光学系における所定の被写距離に対するポイントスプレッド関数に基づいた逆関数とし、ポイントスプレッド関数を、2焦点レンズの光軸上から垂直方向に、撮像素子の撮像面の各ブロックに対応した距離だけ離れた焦点面において、遠レンズ部の焦点位置に対するポイントスプレッド関数と近レンズ部の焦点位置に対するポイントスプレッド関数とを所定の比率で合成したポイントスプレッド関数とした構成である。
【0052】
また、本発明の撮像装置は、撮像素子の撮像面に結像される画像を、垂直方向に加えて、水平方向をも複数に分割するようにブロック区分し、画像処理部が、各ブロックに対応した撮像信号に対して、それぞれに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施す構成である。
【0053】
また、本発明の撮像装置は、補正関数を、コマ収差補正および像倍率補正の少なくともいずれかをも含む補正関数とした構成である。
【0054】
また、本発明の撮像装置は、画像処理部が、撮像素子から供給される撮像信号をデジタル信号である撮像データに変換するAD変換部と、撮像データに対して、補正関数に基づくフィルタ係数列を用いてフィルタ処理を行うデジタルフィルタ部と、補正関数に基づくフィルタ係数列を、ブロックごとに記憶する係数記憶部と、係数記憶部から各ブロックに応じたフィルタ係数列を抽出し、抽出したフィルタ係数列をデジタルフィルタ部に供給する係数処理部とを備えた構成である。
【0055】
また、本発明の撮像装置は、さらに、高周波信号成分に対して、所定のコアリング量以下の微小振幅値の信号の値を0値に変換することでノイズ低減処理を施すコアリング処理部を備え、コアリング処理部が、デジタルフィルタ部によりフィルタ処理された信号の高周波信号成分に対して、ブロックごとに設定されたコアリング量に基づきノイズ低減処理を施す構成である。
【0056】
また、本発明の撮像装置は、画像処理部が、さらに、デジタルフィルタ部を制御するフィルタ制御部を備え、デジタルフィルタ部が画像の端部に対応した撮像データに対してフィルタ処理を行うとき、フィルタ制御部が、デジタルフィルタ部に所定のダミー値を供給し画面端処理を行う構成である。
【0057】
また、本発明の撮像装置は、上記ダミー値を、所定の固定値、画像の端部に対応した撮像データの値、または画像の端部から画像の垂直逆方向と水平逆方向との撮像データにそれぞれ対応した値とした構成である。
【0058】
また、本発明の情報端末装置は、上記撮像装置と、撮像装置の画像処理部により生成された画像データを記憶する記憶部と、画像データを表示する表示部とを備えた構成である。
【0059】
また、本発明の画像処理方法は、平面形状がそれぞれ半円形または半楕円形であり、所定の焦点距離を持つ近レンズ部と所定の焦点距離よりも遠方の焦点距離を持つ遠レンズ部とを有し、それぞれのレンズ部の直線部分が互いに接するように一体化されて構成される2焦点レンズと、2焦点レンズにより結像された画像を電気的信号に変換し、撮像信号として出力する撮像素子とを備えた撮像装置の画像処理方法であり、撮像素子の撮像面において、それぞれのレンズ部が接する直線部分に対して平行な方向を水平方向とし、直角な方向を垂直方向とするとき、撮像素子からの撮像信号を取り込むステップと、取り込んだ撮像信号に対し、撮像素子の撮像面に結像される画像が垂直方向を複数に分割するように区分されるブロックごとに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施すステップと、フィルタ処理により得られた画像信号を出力画像信号として出力するステップとを有する。
【発明の効果】
【0060】
本発明の撮像装置およびその画像処理方法ならびに情報端末装置は、垂直方向を区分するように設けた各ブロックごとに、それぞれに対応したフィルタ係数列で撮像素子の撮像面に投射されるボケた像の補正を行うため、画像の上部や下部であっても精度よくボケた像を補正でき、また、ブロックごとに設定したフィルタ係数列であるため、記憶するフィルタ係数列は少なくてすみ、係数を格納するメモリ容量の増加を抑制でき、かつ簡易な処理で精度よくボケた像を補正できる。このため、本発明の撮像装置およびその画像処理方法ならびに情報端末装置によれば、2焦点レンズで撮像された画像に対し、大規模な処理を必要とせず、標準的な距離にある通常の被写体、およびこれよりも近距離にある近接被写体のいずれについても容易にかつ精度よく鮮明な画像を得る撮像装置およびその画像処理方法ならびに情報端末装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0062】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態における撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0063】
図1に示すように、本実施の形態の撮像装置は、被写体を撮像するための光学系である撮像部20と、撮像部20からの撮像信号に対して画像処理を施し、画像処理を施した信号を出力画像信号として出力する画像処理部30とを備えている。
【0064】
さらに、撮像部20は、被写体を撮像する2焦点レンズ210と、この2焦点レンズ210により結像された像を取り込む撮像素子29とを含み構成される。2焦点レンズ210は、異なった焦点距離のレンズ部により構成されるレンズである。また、撮像素子29は、2焦点レンズ210により結像された画像を電気的信号に変換し、撮像信号として出力する。
【0065】
また、画像処理部30において、まず、撮像素子29からの撮像信号は、アナログフロントエンド(以下、AFEと呼ぶ)31に供給される。AFE31は、供給された撮像信号の増幅処理などを行い、増幅された撮像信号をAD変換部32に供給する。AD変換部32は、アナログ信号である撮像信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換された撮像データが、以下で説明するデジタルフィルタ部33およびコアリング処理部37に供給される。
【0066】
デジタルフィルタ部33は、2焦点レンズ210によるボケた画像成分の補正を行い、これによって本発明の特徴となる画像の改質処理を行う。すなわち、上述したように、このような複数の焦点を有するレンズの場合、投射像はピントのあった像にボケた像が重畳したようになる。デジタルフィルタ部33は、このようなボケた像もピントのあった像へと補正するために設けられている。
【0067】
係数記憶部34は、デジタルフィルタ部33がフィルタ処理を行うため、所定の補正関数に基づく複数種類のフィルタ係数列を記憶している。また、係数処理部35は、以下で説明する制御信号生成部391からのブロック切替信号に応じて、係数記憶部34が記憶する複数種類のフィルタ係数列から1つのフィルタ係数列を選択し、選択したフィルタ係数列をデジタルフィルタ部33に供給する。
【0068】
このような構成により、デジタルフィルタ部33は、供給された撮像データ列と係数処理部35から供給されたフィルタ係数列との荷重加算演算処理を実行する。また、フィルタ係数列を構成する各フィルタ係数は、2焦点レンズ210の光学系における所定の被写距離に対するポイントスプレッド関数(以下、PSFと呼ぶ)の逆関数に基づきあらかじめ求めた係数である。
【0069】
すなわち、デジタルフィルタ部33は、所定のPSFの逆関数となるフィルタ係数でフィルタ処理を行うインバースフィルタとして機能する。
【0070】
以上、デジタルフィルタ部33は、撮像素子29からの撮像信号に応じた撮像データに対し、ブロックごとに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施す。
【0071】
フィルタ制御部36は、デジタルフィルタ部33が画像の端部に対応した撮像データに対してフィルタ処理を行うとき、デジタルフィルタ部33に所定のダミー値を供給し、デジタルフィルタ部33が画面端処理を行うようにデジタルフィルタ部33を制御する。
【0072】
すなわち、デジタルフィルタ部33は、遅延データを出力する各タップごとのデータを用いてフィルタ演算を行うが、例えば画像フレームの先頭などフィルタ演算を開始するとき、その画像領域外の画像データは存在しないため未定のデータを含めて演算処理を行うこととなり、その結果、タップ数の期間に対応した幅だけ画像の上部や左部に乱れた画像などが現れることとなる。
【0073】
フィルタ制御部36は、このような不都合を防止するために設けられており、画像の端部においてタップから出力される未定のデータに代えて供給された所定のダミー値が出力されるようにデジタルフィルタ部33を制御する。所定のダミー値としては、所定の固定値、あるいは最初に供給された撮像データの値としてよく、また画像データを鏡像的に折り返しその折り返した各画素データ、すなわち、画像の端部から画像の垂直逆方向および水平逆方向の撮像データにそれぞれ対応した値をダミー値としてもよい。
【0074】
コアリング処理部37は、デジタルフィルタ部33により強調された高周波信号成分に対して、ノイズ低減処理を施す。
【0075】
すなわち、デジタルフィルタ部33は、2焦点レンズ210によりボケた画像成分の補正を行うために設けられたフィルタであるため、撮像信号の高周波信号成分を強調するような一種のハイパスフィルタである。このため、例えば、撮像素子29やAFE31で生じた高周波ノイズを強調することとなる。
【0076】
このように強調されたノイズを低減するため、本実施の形態では、ノイズ低減処理を施すためのコアリング処理部37を設けた一例を挙げている。
【0077】
また、コアリング処理部37にも、以下で説明する制御信号生成部391からのブロック切替信号が供給され、コアリング処理部37はこのブロック切替信号に応じたコアリング量でノイズ低減処理を実行する。
【0078】
コアリング処理部37によりノイズ低減処理された画像データは、出力画像信号として出力され、例えば、表示装置などに供給され、写真のような静止画像、あるいは動画像としてユーザに呈示される。
【0079】
また、制御部39は、例えば、マイクロコンピュータで実現され、各部の制御やそのための処理を行うとともに、制御信号生成部391に、画像信号の水平端を示す水平同期信号および垂直端を示す垂直同期信号を供給する。
【0080】
制御信号生成部391は、制御部39から供給された水平同期信号および垂直同期信号を利用してブロック切替信号および画面端信号を生成する。
【0081】
ブロック切替信号は、撮像した画像において、垂直方向を複数に分割するようにブロック区分したとき、デジタルフィルタ部33に供給されている撮像データがどのブロックに相当しているかを示す信号である。
【0082】
制御信号生成部391は、このようなブロック切替信号を係数処理部35およびコアリング処理部37に供給する。これにより、係数処理部35は、画像上における各ブロックの撮像データに対して、そのブロックに応じたフィルタ係数列をデジタルフィルタ部33に供給する。
【0083】
すなわち、撮像素子29の撮像面に結像される画像は、垂直方向を複数に分割するようにブロック区分され、デジタルフィルタ部33は、撮像素子29からの撮像信号に応じた撮像データに対し、係数処理部35から供給されるブロックごとに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施す。
【0084】
また、コアリング処理部37は、制御信号生成部391からのブロック切替信号を利用して、画像上における各ブロックの撮像データに対して、そのブロックに応じたコアリング処理を実行する。
【0085】
また、制御信号生成部391から出力される画面端信号は、水平同期信号および垂直同期信号に対応した信号であり、デジタルフィルタ部33に供給される撮像データが画面開始位置となる画面端のデータであることを示す信号である。
【0086】
制御信号生成部391は、このような画面端信号をフィルタ制御部36に供給する。フィルタ制御部36は、このような画面端信号を利用して、デジタルフィルタ部33が画面端処理を行うように制御する。
【0087】
図2は、本実施の形態における2焦点レンズ210の形状の詳細を示した図である。図2(a)は、2焦点レンズ210の側面図であり、図2(b)は、2焦点レンズ210の正面図である。
【0088】
図2に示すように、本2焦点レンズ210は、2焦点光学系として、長い焦点距離で集束する遠レンズ部22と、遠レンズ部22よりも短い焦点距離で集束する近レンズ部23とで構成されている。
【0089】
図2(b)に示すように、2焦点レンズ210は、正面から見たとき、それぞれのレンズ部の平面形状が半円形であり、中心を通る直線を境界として、上部には遠レンズ部22が、下部には近レンズ部23が配置され、それぞれが一体化されて構成される。
【0090】
なお、以下、本実施の形態では、半円形のレンズ部を2つ組み合わせた円形の2焦点レンズ210を例に挙げて説明するが、例えば、半楕円形、もしくは多角形のレンズ部を直線部分が互いに接するように配置し構成した2焦点レンズであってもよい。また、遠レンズ部22と近レンズ部23との上下関係を逆にしてもよく、その場合、それにあわせた画像処理を行えばよい。
【0091】
図3は、撮像した画像におけるブロックの分割例を示した図である。ここでは、ブロック分割として、撮像素子29の撮像面に結像される画像に対し、垂直方向を3つに分割するようにブロック区分した一例を示している。また、図3には、それぞれのブロックにおける代表的な投射像を示している。
【0092】
図3においても、図10(c)で説明したように、遠レンズ部22の焦点位置で、かつ各ブロックに対応した垂直位置に点光源を配置し、撮像素子29の撮像面に結像された投射像pb0、pb1およびpb2を示している。
【0093】
このような本実施の形態の場合も、図10(c)を用いて説明したように、点光源に対して2焦点レンズ210により撮像素子29上に投射される像は、点光源を上方から下方に移動させた場合、その移動に従って、撮像素子29に投影されるボケた像は、下方から上方へと移動しながら、その合焦成分は小さくなるとともにボケ成分は大きくなっていく。
【0094】
このため、各ブロックには、図3に示すようにボケた像の投射形状は類似しているものの、図10(c)で説明したようにその照射強度分布、すなわちPSFの関数形状が異なった像が投射される。
【0095】
以下、このように構成された本実施の形態の撮像装置の動作について説明する。
【0096】
一般に、2焦点レンズを含め光学系は、PSFにより結像系の特性が決定される。このPSFは、レンズの場合このレンズに対して、水平方向x、垂直方向y、およびレンズから被写体までの距離zに依存したスペースバリアントな関数である。
【0097】
ここで、2焦点レンズのPSFをhx,y,zとし、被写体をiとすると、撮像素子29の撮像面に投射される撮像画像pは、被写体iと多焦点レンズのPSFであるhx,y,zとのコンボリューションで表現できる。すなわち、コンボリューション演算を記号*で示すと、p[x,y]=i*hx,y,zとなる。
【0098】
また、空間座標軸で表現される2焦点レンズのPSFhx,y,zを、フーリエ変換やz変換により座標変換することにより2焦点レンズのPSFの伝達関数Hx,y,zを求めることができる。
【0099】
すなわち、撮像素子29に投影される撮像画像p[x,y]は、入力画像を被写体iとしたとき、伝達関数Hx,y,zの応答出力となる。ここで、上述したように、2焦点レンズを用いた場合、ボケた成分も含めて撮像素子29上に投影される。
【0100】
デジタルフィルタ部33は、このような伝達関数Hx,y,zに含まれるボケ成分の生成メカニズムを補正するために設けられたフィルタである。
【0101】
すなわち、デジタルフィルタ部33の伝達関数を2焦点レンズの伝達関数Hx,y,zの逆関数、すなわち1/Hx,y,zとなる補正関数とすることで、2焦点レンズ210とデジタルフィルタ部33との縦続接続による伝達特性は1となる。その結果、出力画像oは、被写体像iと等しくなり、2焦点レンズ210により生じたボケ成分を除去したことと等しくなる。
【0102】
本実施の形態の2焦点レンズ210の場合、図9で説明したように、光軸上で点光源位置を変えても撮像素子29上に投射されるボケた像の変化が少ないことにより、2焦点レンズ210のPSFはレンズから被写体までの距離zの依存度が低いと言える。
【0103】
一方、図10で説明したように、それぞれのレンズ部が接する直線部分に対して直角な方向で点光源位置を変えた場合、両レンズ部への入射角の違いにより、撮像素子29の撮像面に投射される像の照射強度分布が変化する。すなわち、2焦点レンズ210のPSFは、垂直方向yの依存度が高いと言える。
【0104】
このため、本実施の形態の撮像装置は、図3に示すように、撮像素子29に結像される画像に対し、垂直方向を複数に分割するようにブロック区分し、各ブロックに応じた代表的なPSFを求め、それぞれのPSFからその逆関数である補正関数を算出し、これによってブロックに応じたボケ成分の補正を行っている。
【0105】
すなわち、本実施の形態では、撮像素子29の撮像面に投射される画像の各ブロックにおいて、図3に示すような点光源に対する代表的な投射像から求めたPSFを1つずつ定め、それぞれのPSFに基づき算出したフィルタ係数列を係数記憶部34に格納している。
【0106】
なお、それぞれのPSFとしては、撮像素子29の撮像面の各ブロックに対応した距離だけ離れた垂直方向の焦点面において、いずれかのレンズ部の焦点位置に対するPSFとしてもよく、また、遠レンズ部22の焦点位置に対するPSFと近レンズ部23の焦点位置に対するPSFとを所定の比率で合成したPSFとしてもよい。
【0107】
特に、例えば、人物や風景などの通常のカメラと同様の遠点撮像とともに、バーコードなどの近接画像の取り込みにも利用するような場合、一般的に、遠点撮像はカメラ機能として利用するため画質が重視されるが、バーコードなどを読み込むような場合にはある程度ボケた画像であってもよい。このため、このような利用形態に対しては、代表的なPSFを決定するにあたって、遠レンズ部22の焦点位置に対するPSF、あるいは遠レンズ部22の焦点位置に対するPSFの比率を高くして合成したPSFとすることが好ましい。
【0108】
図4は、係数記憶部34に格納された各フィルタ係数列の一例を示した図である。図4に示すように、係数記憶部34には、各ブロックごとにフィルタ係数K00からKvhまでで構成されるフィルタ係数列が格納されている。
【0109】
すなわち、図4では、垂直方向に(v+1)個のタップ、水平方向に(h+1)個のタップを有した2次元のデジタルフィルタに対するフィルタ係数の一例を示している。
【0110】
図4に示すようなフィルタ係数を用いて、撮像素子29の撮像面に投射されるボケた像の補正を行うため、まず、制御信号生成部391は、デジタルフィルタ部33に供給されている撮像データがどのブロックに相当しているかを示すブロック切替信号を係数処理部35に通知する。
【0111】
係数処理部35は、制御信号生成部391からのブロック切替信号に応じて、係数記憶部34が記憶するブロックごとのフィルタ係数列から1つのフィルタ係数列を選択し、選択したフィルタ係数列をデジタルフィルタ部33に供給する。
【0112】
デジタルフィルタ部33は、供給されている撮像データ列に対して、係数処理部35から供給されたフィルタ係数列を用いて、垂直方向に(v+1)個のタップ、水平方向に(h+1)個のタップの2次元のデジタルフィルタ処理を実行する。
【0113】
このように、本実施の形態の撮像装置は、垂直方向に設けた各ブロックごとに、それぞれに対応したフィルタ係数列で撮像素子29上に投射されるボケた像の補正を行うため、例えば、画像の上部や下部であっても、精度よくボケた像を補正できる。
【0114】
すなわち、図10で説明したように、遠点の被写体に対しては、撮像素子29の撮像面上部の投射像は合焦成分に対してボケ成分の比率が大きく、下部の投射像は合焦成分に対してボケ成分の比率が小さくなるため、上部に行くほどボケたような像となる。
【0115】
このため、図3のブロック分割の場合、近レンズ部23側のブロック2に比べて遠レンズ部22側のブロック0では、より高周波信号成分を強調するようなフィルタ係数列が設定され、これによって、垂直方向にほぼ均等にボケ成分が補正された画像が得られることとなる。
【0116】
また、本実施の形態の撮像装置は、フィルタ係数列をブロックごとに設定しているため、それぞれの画素に対してフィルタ係数列を設定するような場合に比べて、記憶するフィルタ係数列は少なくてすみ、フィルタ係数を格納するメモリ容量の増加を抑制でき、かつ簡易な処理で精度よくボケた像を補正できる。
【0117】
なお、以上の説明では、ブロック分割として、画像の垂直方向を複数に分割するようにブロック区分した一例を挙げて説明したが、画像の垂直方向に加えて、水平方向をも複数に分割するようにブロック区分してもよい。
【0118】
図5は、このような、画像の垂直方向および水平方向を複数に分割した一例を示す図である。ブロック分割をこのような構成とし、例えば、補正関数にコマ収差補正、像倍率補正あるいはこれら両補正をも含めることにより、より精度よくボケた像を補正できる。
【0119】
また、図4に示すようなフィルタ係数において、フィルタ係数が水平方向あるいは垂直方向に対称となるような場合、デジタルフィルタ部33の構成において対象タップの加算演算を先に行い、その後、係数を掛けるような構成とすることで、係数記憶部34に格納する係数の数を減らすことができ、係数を格納するメモリの容量増加をさらに抑制できる。
【0120】
例えば、図4での係数K00からK0hにおいて、係数K03を中心に、K02とK04、K01とK05、K00とK0hとが等しくなるような場合、K00からK03までの係数のみを記憶しておけばよい。
【0121】
また、デジタルフィルタ部33の具体的な構成として、各タップのデータを供給するシフトレジスタやラインメモリを備え、さらに各タップからのデータに対して、乗算器、加算器、減算器などを用いて荷重加算演算処理をハードウエアで実行するような構成であってもよく、またマイクロコンピュータやシグナルプロセッサなどと処理プログラムを記憶したメモリとを備え、マイクロコンピュータやシグナルプロセッサなどがメモリに記憶した処理プログラムを実行することで荷重加算演算処理などをソフトウェア的に行うような構成であってもよい。
【0122】
すなわち、画像処理部30において、マイクロコンピュータやシグナルプロセッサなどが、撮像素子からの撮像信号を取り込むステップと、取り込んだ撮像信号に対し撮像素子の撮像面に結像される画像が垂直方向を複数に分割するように区分されるブロックごとに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施すステップと、フィルタ処理により得られた画像信号を出力画像信号として出力するステップとを含む画像処理方法の処理プログラムをメモリから読み込み、その処理プログラムを実行するような構成であってもよい。
【0123】
図6は、コアリング処理部37の詳細な構成を示したブロック図である。上述したように、デジタルフィルタ部33は、2焦点レンズ210によりボケた画像成分に対し、その補正を行うことができるが、その一方で、撮像素子29やAFE31で生じた高周波ノイズが強調されることとなる。コアリング処理部37は、このように強調されたノイズ成分を低減するため、高周波信号成分の微小振幅成分を除去するコアリング処理と呼ばれる処理を行う。
【0124】
図6に示すように、コアリング処理部37には、撮像データおよびデジタルフィルタ部33からの画像データが供給される。
【0125】
コアリング処理部37において、減算器371により、デジタルフィルタ部33からの画像データ値から撮像データ値が減算される。これによって、減算器371からは、デジタルフィルタ部33で強調された高周波信号成分のみを含む画像データが出力される。コアリング部370は、このような高周波信号成分のみを含む画像データに対してコアリング処理を実行する。
【0126】
コアリング部370は、供給された高周波信号成分を含む画像データの振幅値に対して非線形処理を行う。
【0127】
このような非線形処理の一例として、コアリング部370は、入力データの絶対値が所定の閾値(以下、適宜、コアリング量と呼ぶ)以下のデータ値を一律0値としたデータとして出力し、入力データの絶対値が所定の閾値以上の場合には、その絶対値を閾値だけ減じたデータ値のデータを出力する。
【0128】
コアリング部370において、このような処理が実行されることにより、供給された画像データの高周波信号成分に含まれる微小な振幅のデータはノイズとみなされて0値に変換、すなわち、ノイズ低減されることとなる。
【0129】
コアリング部370でノイズ低減されたデータは、乗算器373に供給される。乗算器373は、コアリング部370でデータ値が減少した分だけ、ゲイン設定部374からのゲイン値でゲイン補正を行う。
【0130】
乗算器373からのデータは加算器372により撮像データに加算される。すなわち、加算器372からは、デジタルフィルタ部33の出力と同様の周波数特性であるとともに、コアリング部370で高周波ノイズが低減された画像データが出力されることとなる。
【0131】
また、コアリング処理部37において、コアリング量設定部375には、ブロック切替信号が通知され、コアリング量設定部375は、ブロック切替信号に基づき、図3で示したような画像の各ブロックに対応したコアリング量をコアリング部370に設定する。
【0132】
すなわち、図3を用いて説明したような場合、遠点の被写体に対しては、上部に行くほどボケたような像となる。このため、デジタルフィルタ部33は、下から上に行くに従ってより強く補正し、高周波信号成分を強調することになり、その結果、コアリング処理をしない場合には、撮像面の上部ほどノイズが目立つこととなる。
【0133】
コアリング処理部37では、このような不都合を抑制するため、コアリング量設定部375が各ブロックに応じたコアリング量をコアリング部370に設定するような構成としている。
【0134】
すなわち、図3のブロック区分の場合、コアリング量設定部375は、ブロック2に比べてブロック1のほうが大きく、さらにブロック1に比べてブロック0のほうが大きくなるようなコアリング量をコアリング部370に設定し、撮像面の上部に行くほど強調されるノイズに対し、コアリング部370によるノイズ低減効果を高めている。
【0135】
このように、コアリング処理部37は、デジタルフィルタ部33で強調されたノイズ成分を低減するとともに、ブロックごとにノイズ量が異なるような画質劣化をも抑制し、これによって、精度よく鮮明な画像を得ることを可能としている。
【0136】
図7は、本実施の形態の撮像装置を利用したカメラ付き携帯電話などの情報端末装置の構成例を示したブロック図である。
【0137】
図7に示すように、本情報端末装置は、本実施の形態の撮像装置に加えて、ユーザからの指示に応じて画像処理された画像データの編集などを行うデータ処理部41、画像処理された画像データを記録する記録部42および出力画像信号を表示する表示部43をさらに備えた構成である。
【0138】
このような構成とする情報端末装置により、例えば、人物や風景などを撮像した画像データを電子的な写真として記録部42に記録したり、記録した画像データの編集処理などを行うことができる。
【0139】
また、バーコードなどを撮像した場合には、そのバーコードの画像データから文字情報などに復元するような処理も行うことができる。
【0140】
さらに、表示部43からは、写真のような静止画像、あるいは動画像としてユーザに呈示することもできる。
【0141】
このように、本情報端末装置によれば、近距離および遠距離の被写体双方に対して精度よく画像を取り込むことができるため、人物や風景を撮影するようなカメラ機能とともに、バーコードなどの近接画像をも読み取り可能であり、利便性を向上させた情報端末装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、大規模な処理を必要とせず、標準的な距離にある通常の被写体、およびこれよりも近距離にある近接被写体のいずれについても容易にかつ精度よく鮮明な画像を得ることができるため、撮像装置としてのカメラやビデオカメラとして利用できるとともに、撮像機能を有した携帯電話などの情報端末装置、その他にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の実施の形態における撮像装置の構成を示すブロック図
【図2】本実施の形態における2焦点レンズの形状の詳細を示す図
【図3】撮像した画像におけるブロックの分割例を示す図
【図4】係数記憶部に格納された各フィルタ係数列の一例を示す図
【図5】画像の垂直方向および水平方向を複数に分割した一例を示す図
【図6】コアリング処理部の詳細な構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態における撮像装置を利用した情報端末装置の構成例を示すブロック図
【図8】従来のバーコード読取装置の構成を示すブロック図
【図9】それぞれのレンズ部が半円形で構成される2焦点レンズの光学結像系を示す図
【図10】(a)遠レンズ部のみによる光学結像系、投射像および照射強度分布を示す図 (b)近レンズ部のみによる光学結像系、投射像および照射強度分布を示す図 (c)2焦点レンズによる光学結像系、投射像および照射強度分布を示す図
【符号の説明】
【0144】
20 撮像部
22,92 遠レンズ部
23,93 近レンズ部
29,99 撮像素子
30 画像処理部
31 アナログフロントエンド(AFE)
32 AD変換部
33 デジタルフィルタ部
34 係数記憶部
35 係数処理部
36 フィルタ制御部
37 コアリング処理部
39 制御部
41 データ処理部
42 記録部
43 表示部
91 レンズ
97 ハイパスフィルタ
98 先端部
210 2焦点レンズ
370 コアリング部
371 減算器
372 加算器
373 乗算器
374 ゲイン設定部
375 コアリング量設定部
391 制御信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状がそれぞれ半円形または半楕円形であり、所定の焦点距離を持つ近レンズ部と前記所定の焦点距離よりも遠方の焦点距離を持つ遠レンズ部とを有し、それぞれのレンズ部の直線部分が互いに接するように一体化されて構成される2焦点レンズと、前記2焦点レンズにより結像された画像を電気的信号に変換し、撮像信号として出力する撮像素子と、前記撮像素子からの撮像信号に対し、ブロックごとに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施し、前記フィルタ処理により得られた画像信号を出力画像信号として出力する画像処理部とを備え、前記撮像素子の撮像面において、前記それぞれのレンズ部が接する直線部分に対して平行な方向を水平方向とし、直角な方向を垂直方向とするとき、前記撮像素子の撮像面に結像される画像は、垂直方向を複数に分割するようにブロック区分され、前記画像処理部は、前記各ブロックに対応した撮像信号に対して、前記ブロックごとに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施すことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記ブロックごとに設定された補正関数は、前記近レンズ部側のブロックに対して、前記遠レンズ部側のブロックほど高周波信号成分を強調するような補正関数であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記補正関数は、前記2焦点レンズの光学系における所定の被写距離に対するポイントスプレッド関数に基づいた逆関数であり、前記ポイントスプレッド関数は、前記2焦点レンズの光軸上から垂直方向に、前記撮像素子の撮像面の各ブロックに対応した距離だけ離れた焦点面において、前記いずれかのレンズ部の焦点位置に対するポイントスプレッド関数であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記補正関数は、前記2焦点レンズの光学系における所定の被写距離に対するポイントスプレッド関数に基づいた逆関数であり、前記ポイントスプレッド関数は、前記2焦点レンズの光軸上から垂直方向に、前記撮像素子の撮像面の各ブロックに対応した距離だけ離れた焦点面において、前記遠レンズ部の焦点位置に対するポイントスプレッド関数と前記近レンズ部の焦点位置に対するポイントスプレッド関数とを、所定の比率で合成したポイントスプレッド関数であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像素子の撮像面に結像される画像は、垂直方向に加えて、水平方向をも複数に分割するようにブロック区分され、前記画像処理部は、前記各ブロックに対応した撮像信号に対して、それぞれに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施すことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記補正関数は、コマ収差補正および像倍率補正の少なくともいずれかをも含む補正関数であることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記撮像素子から供給される撮像信号をデジタル信号である撮像データに変換するAD変換部と、前記撮像データに対して、前記補正関数に基づくフィルタ係数列を用いてフィルタ処理を行い、画像データとして出力するデジタルフィルタ部と、前記補正関数に基づくフィルタ係数列を、前記ブロックごとに記憶する係数記憶部と、前記係数記憶部から前記各ブロックに応じたフィルタ係数列を抽出し、抽出したフィルタ係数列を前記デジタルフィルタ部に供給する係数処理部とを備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、さらに、高周波信号成分に対して、所定のコアリング量以下の微小振幅値の信号の値を0値に変換することでノイズ低減処理を施すコアリング処理部を備え、前記コアリング処理部は、前記デジタルフィルタ部によりフィルタ処理された信号の高周波信号成分に対して、ブロックごとに設定されたコアリング量に基づきノイズ低減処理を施し、画像データとして出力することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、さらに、前記デジタルフィルタ部を制御するフィルタ制御部を備え、前記フィルタ制御部は、前記デジタルフィルタ部が画像の端部に対応した撮像データに対してフィルタ処理を行うとき、デジタルフィルタ部に所定のダミー値を供給し画面端処理を行うことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記ダミー値は、所定の固定値、画像の端部に対応した撮像データの値、または画像の端部から画像の垂直逆方向と水平逆方向との撮像データにそれぞれ対応した値であることを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の撮像装置と、前記撮像装置の画像処理部により生成された画像データを記憶する記憶部と、前記画像データを表示する表示部とを備えたことを特徴とする情報端末装置。
【請求項12】
平面形状がそれぞれ半円形または半楕円形であり、所定の焦点距離を持つ近レンズ部と前記所定の焦点距離よりも遠方の焦点距離を持つ遠レンズ部とを有し、それぞれのレンズ部の直線部分が互いに接するように一体化されて構成される2焦点レンズと、前記2焦点レンズにより結像された画像を電気的信号に変換し、撮像信号として出力する撮像素子とを備えた撮像装置の画像処理方法であり、前記撮像素子の撮像面において、前記それぞれのレンズ部が接する直線部分に対して平行な方向を水平方向とし、直角な方向を垂直方向とするとき、前記撮像素子からの撮像信号を取り込むステップと、前記取り込んだ撮像信号に対し、前記撮像素子の撮像面に結像される画像が垂直方向を複数に分割するように区分されるブロックごとに設定された補正関数に基づくフィルタ係数列でフィルタ処理を施すステップと、前記フィルタ処理により得られた画像信号を出力画像信号として出力するステップとを有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−206967(P2007−206967A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24777(P2006−24777)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】