説明

撮像装置および撮像方法

【課題】撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出して画質の良好な画像を得る。
【解決手段】撮像装置10は、マトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子を備え、撮像素子に露光して被写体を撮像する撮像装置であって、被写体の撮像状態を検出する検出部202と、撮像素子を遮光するように走行する幕体の動作を制御する動作制御部206と、幕体の走行に先行して、撮像素子に蓄積された電荷を掃出すことにより撮像素子の露光開始走査を制御する走査制御部204と、を備え、走査制御部204は、被写体の撮像状態に応じて、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および撮像方法に関し、特に、マトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子を備える撮像装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の撮像素子を搭載した撮像装置において、シャッタ動作の先幕を電子シャッタで行い、後幕を機械式シャッタで行うことが開示されている(例えば、特許文献1)。また、電子シャッタと機械式シャッタを組み合わせる方式において、領域またはラインごとに電荷蓄積を開始するタイミングを変更して、レンズの種類や絞りの値、シャッタ速度の違いで発生する露光ムラを防ぐ技術も開示されている(例えば、特許文献2および3)。
【0003】
特許文献2および3では、従来のメカニカルな先幕を電子的なリセット機能に置き換えたことにより生じる画質的な不具合を補正することを目的としている。したがって、先幕となる電子シャッタの動作タイミングは、後幕となる機械式シャッタの後幕とほぼ同じ特性を有するように設定される。また、レンズの種類や絞りの値など、シャッタの特性を変化させる要因について、補正パラメータを盛り込んで動作タイミングが設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−41523号公報
【特許文献2】特開2007−159061号公報
【特許文献3】特開2007−53742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した電子シャッタは、撮像素子に蓄積された電荷を掃出すことにより撮像素子の露光を開始するシャッタの先幕として機能する。撮像素子に蓄積された電荷を完全に掃出すために必要な時間は、通常、各装置の仕様として電荷掃出しパルスの有効パルス幅が定められている。画素数が多くなり垂直方向のライン数が多くなった場合、電子シャッタの露光開始速度を機械式シャッタの後幕の走行速度に追従させるために、電荷掃出しパルスのパルス幅を狭くする必要がある。しかし、該パルス幅を狭くすると、撮像素子に蓄積された電荷を完全に掃出しきれず、残留電荷が発生し残像減少が生じてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、電子シャッタと機械式シャッタを併用する構成において、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出して画質の良好な画像を得ることが可能な、新規かつ改良された撮像装置および撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、マトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子を備え、撮像素子に露光して被写体を撮像する撮像装置であって、被写体の撮像状態を検出する検出部と、撮像素子を遮光するように走行する幕体の動作を制御する動作制御部と、幕体の走行に先行して、撮像素子に蓄積された電荷を掃出すことにより撮像素子の露光開始走査を制御する走査制御部と、を備え、走査制御部は、被写体の撮像状態に応じて、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出すことを特徴とする、撮像装置が提供される。
【0008】
かかる構成によれば、被写体の撮像状態を検出し、該撮像状態に応じて撮像素子に蓄積された電荷の掃出し回数を調整して撮像素子の露光が開始された後、幕体が撮像素子を遮光するように走行する。これにより、撮像状態に応じて撮像素子に蓄積された電荷の掃出し回数を調整して画質の良好な画像を得ることができる。
【0009】
また、走査制御部は、撮像素子の露光開始走査を、撮像素子に蓄積された電荷を掃出すことにより撮像素子の露光を開始するシャッタの先幕として機能させ、動作制御部は、撮像素子を遮光する幕体を、シャッタの後幕として機能させる。これにより、先幕としての電子シャッタと後幕としてのメカニカルシャッタを併用し、先幕となる電子シャッタの走行回数を制御して不要な電荷の蓄積による残像現象を防止することができる。
【0010】
また、走査制御部は、幕体の走行カーブに対応するように、撮像素子に蓄積された電荷を掃出すための掃出しパルスを発生させ、被写体の撮像状態に応じて、掃出しパルスを複数回発生させる。これにより、掃出しパルスを幕体の走行カーブに対応させて電子先幕の走査開始速度を制御するとともに、電荷の掃出し回数を撮像状態に応じて可変として不要な電荷の蓄積による残像現象を防止することができる。
【0011】
また、走査制御部は、撮像素子のライン単位で掃出しパルスを複数回発生させることが好ましい。これにより、ライン単位で掃出しパルスを複数回発生させて、不要な電荷の蓄積による残像現象を防止することができる。
【0012】
また、走査制御部は、被写体の残像が残る撮像状態である場合に、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出してもよい。また、走査制御部は、被写体の輝度が所定の基準値より高い場合に、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出してもよい。また、走査制御部は、被写体に高輝度の点光源が含まれている場合に、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出してもよい。
【0013】
また、走査制御部は、被写体の動きベクトルが所定の閾値以上であった場合に、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出してもよい。これにより、被写体の輝度が高かったり、被写体に高輝度の点光源が含まれていたり、動きベクトルが所定の閾値以上であり、被写体の残像が残る撮像状態である場合に、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出して画質の良好な画像を得ることができる。
【0014】
また、検出部は、撮像時の手ぶれの度合いを検出し、走査制御部は、検出部により検出された手ぶれの度合いが所定値以上であった場合に、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出してもよい。これにより、手ぶれにより残像が残る可能性が高い場合に、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出して画質の良好な画像を得ることができる。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、マトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子に露光して被写体を撮像する撮像方法であって、被写体の撮像状態を検出するステップと、被写体の撮像状態に応じて、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出して撮像素子の露光を開始させるステップと、撮像素子の露光開始後に撮像素子を遮光するように走行する幕体を動作させるステップと、を含むことを特徴とする、撮像方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、電子シャッタと機械式シャッタを併用する構成において、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出して画質の良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】残像の発生について説明する説明図である。
【図2】同実施形態にかかる撮像装置の概要について説明する説明図である。
【図3】同実施形態にかかる撮像装置の概要について説明する説明図である。
【図4】同実施形態にかかる撮像装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】同実施形態にかかるCPUの構成を示すブロック図である。
【図6】同実施形態にかかる撮像シーンの検出について説明する説明図である。
【図7】同実施形態にかかる撮像シーンの検出について説明する説明図である。
【図8】同実施形態にかかる撮像装置の動作の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
また、以下に示す順序に従って当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
〔1〕本実施形態の目的
〔2〕撮像装置の概要
〔3〕撮像装置の機能構成
〔4〕撮像装置の動作の詳細
【0020】
〔1〕本実施形態の目的
まず、本実施形態の目的について説明する。CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の撮像素子を搭載した撮像装置において、シャッタ動作の先幕を電子シャッタで行い、後幕を機械式シャッタで行うことが開示されている。また、電子シャッタと機械式シャッタを組み合わせる方式において、領域またはラインごとに電荷蓄積を開始するタイミングを変更して、レンズの種類や絞りの値、シャッタ速度の違いで発生する露光ムラを防ぐ技術も開示されている。
【0021】
上記技術では、従来のメカニカルな先幕を電子的なリセット機能に置き換えたことにより生じる画質的な不具合を補正することを目的としている。したがって、先幕となる電子シャッタの動作タイミングは、後幕となる機械式シャッタの後幕とほぼ同じ特性を有するように設定される。また、レンズの種類や絞りの値など、シャッタの特性を変化させる要因について、補正パラメータを盛り込んで動作タイミングが設定される。
【0022】
上記した電子シャッタは、撮像素子に蓄積された電荷を掃出すことにより撮像素子の露光を開始するシャッタの先幕として機能する。撮像素子に蓄積された電荷を完全に掃出すために必要な時間は、通常、各装置の仕様として電荷掃出しパルスの有効パルス幅が定められている。画素数が多くなり垂直方向のライン数が多くなった場合、電子シャッタの露光開始速度を機械式シャッタの後幕の走行速度に追従させるために、電荷掃出しパルスのパルス幅を狭くする必要がある。しかし、該パルス幅を狭くすると、撮像素子に蓄積された電荷を完全に掃出しきれず、残留電荷が発生し残像減少が生じてしまうという問題があった。
【0023】
そこで、上記のような事情を一着眼点として、本発明の実施形態にかかる撮像装置が創作されるに至った。本実施形態にかかる撮像装置10によれば、電子シャッタと機械式シャッタを併用する構成において、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出して画質の良好な画像を得ることが可能となる。
【0024】
〔2〕撮像装置の概要
次に、図1〜図3を参照して、本実施形態にかかる撮像装置10の概要について説明する。まず、図1を参照して、残像の発生について説明する。残像現象は、被写体の光がなくなっても数フレームの間信号が残る現象で、図1の画像例302に示したように、動く被写体に尾が引くように映る現象である。これは、撮像素子の露光を開始する際に、撮像素子に蓄積された電荷を完全に掃出すことができず、撮像素子に残留した電荷が次のフレーム以降に少しずつ読み出されてしまうことによる。
【0025】
上記したように、画素数が多くなり垂直方向のライン数が多くなると、電荷掃出しパルスのパルス幅を狭くしなければ、電子シャッタの露光開始速度を機械式シャッタの後幕の走行速度に追従させることができなくなってしまう。しかし、パルス幅を狭くすると、撮像素子に蓄積された電荷を完全に掃出すことができず、残留電荷が発生し、図1の画像例302に示したような残像現象が生じてしまう。
【0026】
一方、図1の画像例301では、撮像素子に蓄積された電荷が完全に掃出されて残像のない映像となっている。図1の画像例302のような残像現象を生じさせないために、全画素の電荷を一度に掃出す全画素リセットをすることも考えられる。例えば、図2に示したように、電子先幕シャッタの露光開始前に、全画素をリセットして、撮像素子に蓄積された電荷を掃出す。しかし、通常、デジタルカメラ等の撮像装置を用いて被写体を撮像する場合には、ライブビューモードからシャッタを押下して撮像する。ライブビューモードとは、シャッタがオープンの状態であり、常に光が撮像素子に照射されている状態である。
【0027】
図2に示したように、ライブビューモードから全画素リセットが行われると、撮像素子の表示画面が一端真っ暗になったり、シャッタの押下から露光開始までのタイムラグが生じたりする。したがって、ライブビューモードから連続して静止画を撮像することができず、スムーズな撮像の妨げとなってしまう。
【0028】
そこで、本実施形態にかかる撮像装置10では、電子先幕シャッタを複数回動作させることにより、ライブビューモードで撮像素子に蓄積された電荷を露光開始走査によりいったん掃出し、複数回目の電子先幕シャッタの露光開始走査を本露光開始としている。上記した全画素リセットにより撮像素子に蓄積された電荷を掃出した場合、全画素リセットのための時間が必要となるばかりでなく、画面の上下で残留電荷の量が異なり画像むらが生じてしまう。しかし、複数回電子先幕シャッタを動作させることにより、画面の上下で残留電荷の量が異なることがなく、画像むらを減少させることができる。
【0029】
例えば図3では、電子先幕シャッタを2回動作させている。図3に示したように、1回目、2回目の電子先幕シャッタの露光開始走査の走行カーブは、機械式シャッタの後幕の走行カーブと同様の走行カーブとしている。電子先幕シャッタと機械式シャッタの走行カーブを同様の走行カーブとすることで、画面の上部と下部で残留電荷の量を同等にして、よりむらの少ない画像を得ることが可能となる。
【0030】
図3に示したように、電子先幕シャッタの露光開始走査は、電荷掃出しパルスの発生により開始される。具体的には、電荷掃出しポインター(Pointer)により電荷が掃出されるラインアドレスが指定される。電荷掃出しパルスが「H」(H=High)となったときに、電荷掃出しポインターで指定されたラインの撮像素子がグランド(GND)に接続されて、当該画素に蓄積されていた電荷が掃出される。撮像素子に蓄積されていた電荷を掃出すことを、以降、電荷がリセットされるとも称する。
【0031】
上記したように、撮像装置10を用いた撮影は、ライブビューモードからの静止画撮影で使用される。したがって、電荷掃出しパルスが「H」となっている間にライブビューモードにおいて蓄積された電荷が掃出されることとなる。図3では、一度Line[0]からLine[N]を順次指定してパルスを発生させた後に、再度Line[0]からLine[N]を順次指定して2回目のパルスを発生させている。
【0032】
撮像装置10は、画面の領域ごとまたはラインごとの測光値をもとに、被写体の撮像シーン(撮像状態)を検出する。そして、検出した撮像シーンに応じて電子先幕シャッタとしての電荷掃出しパルス列を複数回出力する。
【0033】
撮像装置10は、検出した撮像シーンが残像の残る可能性の高い撮像シーンである場合に、電荷掃出しパルス列を複数回出力する。残像の残る可能性の高い撮像シーンとは、例えば、画面内に高輝度部分が多く含まれる場合や、夜景等の暗いシーンであって、かつ、高輝度の点光源がある場合などが挙げられる。また、画像内の動きベクトルのベクトル量が一定値以上であり、かつ、高輝度である場合も残像の残る可能性の高い撮像シーンである。さらに、手ぶれを検出した場合には手ぶれによる影響を軽減するために、電荷掃出しパルス列を複数回出力することもできる。このように、残像の残る可能性の高い撮像シーンを撮像する場合や、手ぶれが発生した場合に、撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出すことにより、残像による画像の画質劣化を軽減させることが可能となる。
【0034】
〔3〕撮像装置の機能構成
以上、撮像装置10の概要について説明した。次に、図4を参照して、撮像装置10の機能構成について説明する。図4は、撮像装置10の機能構成を示すブロック図である。図4に示したように、撮像装置10は、CMOS102、シャッタ104a、104b(以降、シャッタユニット104とも称する)、AFE(Analog Front End:アナログフロントエンド)106、TG(タイミングジェネレータ)108、撮像信号処理部110、メモリコントローラ112、メモリ114、メモリコントローラ116、AE/AF/AWB120、CPU122、LCD/Image Output(LCD/IO)124、LCD126、RAMテーブル130、シャッタドライバ132、レンズユニット15などを備える。
【0035】
CMOS102は、本発明のマトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子の一例であり、レンズユニット15から入射された光を電気信号に変換するための素子である。詳しくは、CMOS102は、レンズユニット15により結像された被写体の光像をR(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分のアナログの電気信号(画像信号)に変換し、R、G、B各色の画像信号として出力する。本実施形態においては、CMOS102の各画素に所定のタイミングでリセット信号を与えることで、CMOS102の露光動作を開始させて電子先幕シャッタとして機能させている。
【0036】
シャッタユニット104は、CMOS102の所定の画素ラインの垂直方向に移動する幕体を備え、CMOS102に露光される光の遮断動作を行う後幕として機能する。シャッタユニット104の動作は、シャッタドライバ132により制御される。
【0037】
AFE106は、アナログ前段回路であり、CMOS102から出力されたアナログの電気信号を撮像信号処理部110に提供する。TG(タイミングジェネレータ)108は、CMOS102におよびAFE106にタイミング信号を入力する機能を有する。TG108からのタイミング信号によりシャッタ速度が決定される。つまり、TG108からのタイミング信号によりCMOS102の駆動が制御され、CMOS102が駆動する時間内に被写体からの映像光を入射することで、画像データの基となる電気信号が生成される。
【0038】
撮像信号処理部110は、AFE106から出力されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換した画像の生データを生成する機能を有する。また、撮像信号処理部110は、CMOS102から得られる画像の生データに対して、光量のゲイン補正やホワイトバランスを調整する。メモリコントローラ112は、撮影した画像をメモリ114に一時的に記憶させたり、記憶された画像を読み出したりする機能を有する。メモリ114は、複数の画像を記憶だけるだけの記憶容量を有している。メモリ114としては、例えば、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)を用いてもよい。
【0039】
メモリカードコントローラ116は、メモリカード118に撮影された画像や合成された画像を記録させる機能を有する。メモリカード118は、フラッシュメモリにデータを記録するカード型の記憶装置である。
【0040】
AE/AF/AWB120は、撮像時における周辺光量(明るさ)や、焦点距離、絞り値(フォーカス)、色温度などを検知して、検知結果をCPU122に提供する機能を有する。CPU122は、CMOS102やTG108などに対して信号系の命令を行ったり、操作部150に対する操作系の命令を行ったりする。本実施形態では、信号系の命令と走査系の命令を1つのCPU122で行っているが、かかる例に限定されず、2つのCPUでそれぞれ実行するようにしてもよい。CPU122による電子シャッタによる先幕とメカニカルシャッタによる後幕の制御については後で詳細に説明する。
【0041】
LCD126は、撮影操作する前のライブビュー表示や、撮像装置10の各種設定画面や、撮像した画像を表示する機能を有する。また、TV128は、撮像した画像などをテレビジョン受像機の画面に表示する機能を有する。画像データ等のLCD126やTV128への表示は、LCD/IO(ImageOutput)124を介して表示される。
【0042】
RAMテーブル130は、本発明の走査テーブルを記憶しているテーブルである。RAMテーブル130には、予め複数の走査パターンを記憶しておき撮像シーンに応じた走査パターンを選択するようにしてもよい。また、基準となる走査パターンをRAMテーブル130に記憶させておき、撮像シーンの周辺光量等の値と基準値との差異に応じて走査パターンを変更させるようにしてもよい。走査パターンは、電子先幕シャッタによるリセットタイミング(露光開始タイミング)を出力するタイミングである。本実施形態では、電子先幕シャッタのリセット走査の走査カーブを、機械式の後幕シャッタの走行カーブとほぼ同じ形状としている。
【0043】
また、RAMテーブル130に、撮像画像の輝度などの撮像シーンに応じた電荷の掃出し回数を記憶してもよい。さらに、手ぶれの度合いに応じた電子シャッタの電荷の掃出し回数を記憶しておいてもよい。例えば、輝度値が所定値以上だったり、手ぶれの度合いが所定値以上だったりした場合に、電子シャッタの電荷の掃出しを複数回行うようにしてもよい。
【0044】
また、走査パターンを記憶するRAMテーブル130に代えて、関数発生回路(図示せず)を搭載してもよい。この場合、関数は、単純に2次関数で表現する方法や、1次関数で補間していく方法などが挙げられる。関数発生回路により走査タイミングを出力することにより、搭載回路を小さくすることができる。
【0045】
操作部150は、撮像装置10の操作を行ったり、撮像時の各種の設定を行ったりするための部材が配置されている。操作部150に配置される部材には、電源ボタン、撮影モードや撮影ドライブモードの選択および効果パラメータを設定する十字キーおよび選択ボタン、被写体の撮影動作を開始するシャッタボタン等を含んでいてもよい。
【0046】
次に、図5を参照して、CPU122による先幕と後幕の制御について説明する。図4は、CPU122の構成を示すブロック図である。図4に示したようにCPU122は、検出部202、走査制御部204、動作制御部206、ゲイン調整部208などを備える。
【0047】
検出部202は、被写体の撮像状態を検出する機能を有する。具体的には、検出部202は、AE/AF/AEBなどの各種センサ120により検知された周辺光量(明るさ)や、焦点距離、絞り値、色温度などから撮像状態(撮像シーン)を検出し、撮影シーンが画像を再現する際に適切なダイナミックレンジの範囲内となるか否かを検出する。例えば、露光過多で白飛びしてしまっていたり、露光不足で黒くつぶれてしまったりという、再現できない画像があるか否かを検出する。
【0048】
ここで、図6および図7を参照して、検出部202による撮像シーンの検出について説明する。図6および図7は、検出部202による撮像シーンの検出について説明する説明図である。図6は、画像の上部がいわゆる白飛びを起こし、青空が再現できていない画像である。検出部202は、画面71内で白飛びしている領域を求める。例えば、説明図72に示したように、画面71を所定の領域に分割して、白飛びしている領域を求めるようにしてもよい。この場合、画面71の上部4つの領域が白飛びしている領域、すなわちダイナミックレンジの上限を超えている領域であることを検出する。
【0049】
また、図7に示したヒストグラム73により画面内の白飛びしている領域を求めるようにしてもよい。ヒストグラム73では、右側に大きな山が現れている。すなわち、画面の一部に特に白飛びしている領域があることがわかる。画面内の白飛びしている部分が多い場合、すなわち、画面内に高輝度部分が多く含まれている場合には、撮像素子に蓄積された電荷が掃出しきらずに残像現象が生じる可能性が高い。撮像装置10では、残像現象が生じる可能性が高い場合に、後述する走査制御部204により撮像素子の露光走査回数を調整して画質の良好な画像を得ることが可能となる。
【0050】
また、検出部202は、ユーザが撮像装置10のシャッタボタンを押下した際の手ぶれの度合いを検出するようにしてもよい。例えば、検出部202は、撮像装置10にジャイロセンサが備えられている場合に、ジャイロセンサで検知される角速度を用いて手ぶれの度合いを検出する。
【0051】
図5に戻り、CPU122の構成についての説明を続ける。後述する動作制御部206による幕体の走行に先行して、CMOS102に蓄積された電荷を掃出すことによりCMOS102の露光を開始する。走査制御部204は、検出部202により検出された被写体の撮像状態に応じて、撮像素子に蓄積された電荷を掃出すための掃出し回数を調整する。走査制御部204は、走査パターン記憶部(RAMテーブル)130に記憶されている走査パターンに基づいてCMOS102に蓄積された電荷を掃出す。
【0052】
また、走査パターン記憶部130に輝度値や手ぶれの度合いに対応する電荷掃出し回数が記憶されている場合には、該電荷掃出し回数をもとに電荷掃出しパルスのパルス列を複数回出力する。
【0053】
図3に示したように、電子先幕シャッタの露光開始走査は、電荷掃出しパルスの発生により開始される。具体的には、電荷掃出しポインター(Pointer)により電荷が掃出されるラインアドレスが指定される。電荷掃出しパルスが「H」(H=High)となったときに、電荷掃出しポインターで指定されたラインの撮像素子がグランド(GND)に接続されて、当該画素に蓄積されていた電荷が掃出される。
【0054】
例えば、走査制御部204が撮像素子に蓄積された電荷を2回掃出す場合には、機械式シャッタの後幕開始信号に先行して、先幕開始信号1および先幕開始信号2を出力する。先幕開始信号1が出力されると、Line[0]からLine[N]までのラインアドレスが指定されて、1回目の電荷掃出しパルスのパルス列が出力される。そして、先幕開始信号1が出力された後に先幕開始信号2が出力され、1回目と同様に電荷掃出しパルスのパルス列が出力される。図3に示したように、電荷掃出しパルスは、1回目も2回目も、機械式シャッタの走査パターンと同様の走査パターンとなるようにライン単位で順次出力される。
【0055】
図4に戻り、動作制御部206は、CMOS102を遮光するように走行する幕体の動作を制御する機能を有する。動作制御部206は、シャッタドライバ132を介して幕体の動作を制御する。動作制御部206は、走査制御部204の制御により、CMOS102に露光動作を開始させた後、設定された露光時間の経過後に幕体を走行させることにより、機械的な遮光を行いCMOS102の露光動作を終了させる。
【0056】
上記したように、走査制御部204により、複数回電子先幕シャッタが動作される場合には、電子先幕シャッタの本露光となる最後の動作が行われた後に幕体を走行させる。上記したように、走査制御部204は、CMOS102の露光開始走査を、走査パターンに基づいてリセット信号を各画素に与えることによりCMOS102の露光を開始するシャッタの先幕として機能させる。
【0057】
そして、動作制御部206は、CMOS102を遮光する幕体をシャッタの後幕とて機能させる。また、走査制御部204は、撮像シーンや手ぶれに応じてリセット信号のパルスを複数回出力する。このように、走査制御部204が撮像シーンや手ぶれに応じたリセット信号の出力回数を調整し、動作制御部206がメカ後幕シャッタを制御することにより、残像による画像の画質劣化を軽減させることができる。
【0058】
ゲイン調整部208は、走査制御部204により、CMOS102の各画素の読み出し操作が制御された場合に、走査制御部204によるCMOS102の水平方向の画素の読み出しに同期させて所定の領域ごとにゲインを調整する機能を有する。ゲイン調整部208は、CMOS102の画素単位でゲインを調整し、CMOS102の水平方向の画素の読み出し位置に同期させてゲインの変化幅を示す所定の関数に基づいてゲインを調整する。
【0059】
例えば、ゲイン調整部208は、CMOS102内で水平方向に複数の領域、または画素単位の読み出し回路が搭載され、その各々に利得調整アンプが備わっている場合には、該アンプのゲインを領域毎に調整する。また、AFE106内にあるゲイン調整回路の利得を、水平方向の画素読み出しに同期させて変更させるようにしてもよい。
【0060】
この場合、水平位置に合わせてゲインを提示する回路は、AFE106内部にあってもよいし、外部の撮像信号処理部110やTG108にもたせるようにしてもよい。また、ゲイン調整部208は、撮像信号処理部110内にあるゲイン調整回路の利得を、水平方向の画素読み出しに同期させて変更させるようにしてもよい。この場合、水平方向の位置によるゲインの変化量を提供する回路を撮像信号処理部110にもたせる。
【0061】
本実施形態では、ゲイン調整部208により所定の領域または画素ごとにゲインを調整したが、かかる例に限定されず、領域単位でガンマカーブを変更するようにしてもよい。ガンマカーブは、入力される映像の信号レベルと出力される映像の明るさとの比率を表した特性曲線である。CPU122は、このガンマカーブを調整することにより画面の露出を調整してもよい。
【0062】
〔4〕撮像装置の動作の詳細
以上、撮像装置10の機能構成について説明した。次に、図8を参照して、撮像装置10の動作の詳細について説明する。図8は、撮像装置10の動作の詳細を示すフローチャートである。図8に示したように、まず、検出部202は、画面内の測光を開始する(S102)。
【0063】
そして、ステップS102において取得した測光データをもとに、ヒストグラムを算出する(S104)。ステップS104において算出されるヒストグラムは、例えば、図7に示したグラフを例示できる。そして、ステップS104において算出したヒストグラムから、画面内の輝度分布やコントラストを分析する(S106)。
【0064】
そして、ステップS106において行われた画面内の輝度分布やコントラストの分析をもとに、被写体(シーン)の撮像状態を認識する(S108)。ステップS108においては、AE情報だけでなく、AF/AWB情報を利用してもよいし、動きベクトルの情報を利用してもよい。
【0065】
そして、設定されているモードに応じて絞り値とシャッタスピードを決定する(S110)。そして、ステップS110において決定された絞り値とシャッタスピード、機械式後幕シャッタの走査パターンなどをもとに、電子先幕のプロファイル(特性カーブ)を設定する(S112)。
【0066】
次に、ステップS106〜ステップS110において検出された輝度値などをもとに、撮像シーンが、残像が発生するシーンか否かを判定する(S114)。ステップS114において、残像が発生するシーンとは、例えば、画面内の高輝度の部分が基準値を超えている場合や、暗いシーンにおいて高輝度の点光源が含まれている場合や、動きベクトル量が基準値を超えている場合などが挙げられる。
【0067】
画面内の高輝度の部分が基準値を超えている場合とは、例えば、白飛びしている部分が多い場合である。また、暗いシーンにおいて高輝度の点光源が含まれている場合とは、例えば夜景を撮影する場合である。また、動きベクトル量は、前のフレームの画像と比較して物体の動いている速さを検出した値であり、動きの速い物体を撮像する場合にベクトル量が基準値を超えることとなる。上記の場合には残像が残る可能性が高い撮像シーンであると判断される。
【0068】
ステップS114において、撮像シーンが、残像が発生するシーンではないと判定された場合には、通常通り本露光を開始する(S116)。すなわち、1回だけ電子先幕を動作させる。ステップS114において、撮像シーンが、残像が発生するシーンであると判定された場合には、電子先幕を複数回動作させる。図8では、電子先幕を2回動作させている。まず、1回目の電子先幕の露光を開始し(S120)、その後、2回目の電子先幕の露光を開始する(S122)。
【0069】
ステップS120およびステップS122において電子先幕の露光開始は、撮像素子のライン毎に順次電荷掃出しパルスを発生させて、撮像素子に蓄積されていた電荷を掃出すことにより行われる。図3に示したように、撮像素子の電荷掃出しパルスは、後幕となる機械式シャッタの後幕と同じ特性となるタイミングで出力される。
【0070】
図8に戻り、ステップS116において本露光が開始された後、手ぶれが発生しているか否かが判定される(S118)。ステップS118において、手ぶれが発生しているとは、ジャイロセンサの出力値が所定の基準値より大きい場合である。ステップS118において手ぶれが発生していると判定された場合には、ステップS120およびステップS122の処理を実行する。ステップS118において手ぶれが発生していないと判定された場合には、処理を終了する。
【0071】
ステップS118において手ぶれが発生しているか否かは、撮像装置のシャッタが押下される際に判定される。したがって、ステップS114において画面内の輝度や被写体の動きに応じて電荷の掃出し回数を調整している。そして、ステップS114において電子先幕を複数回走査させる必要がないと判定された場合でも、ステップS116において手ぶれを検出した場合には、電子先幕を複数回走査させることとなる。
【0072】
これにより、画面の輝度や被写体の動きだけでなく、手ぶれによって生じる残像現象を防止して、画質の良好な画像を得ることが可能となる。
【0073】
以上、撮像装置10の動作の詳細について説明した。撮像装置10によれば、被写体の撮像状態を検出し、該撮像状態に応じて撮像素子に蓄積された電荷の掃出し回数を調整して撮像素子の露光を開始した後、幕体が撮像素子を遮光するように走行する。これにより残像現象が生じやすい被写体を撮像する場合に、電子先幕シャッタを複数回走査させて、残像現象を低下させることが可能となる。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
上記では、画面内の輝度や被写体の動きなどに応じて残像現象を低下させるために、電子先幕を複数回走査させているが、本実施形態はかかる例に限定されない。例えば、敢えて残像を残した撮像を行う際に、所望の残像を残すように電子先幕の走査回数を調整するようにしてもよい。
【0076】
また、例えば、本明細書の撮像装置10の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。すなわち、撮像装置10の処理における各ステップは、異なる処理であっても並列的に実行されてもよい。
【0077】
また、撮像装置10などに内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した撮像装置10の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0078】
10 撮像装置
102 撮像素子(CMOS)
104a、104b シャッタ
202 検出部
204 走査制御部
206 動作制御部
208 ゲイン調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子を備え、前記撮像素子に露光して被写体を撮像する撮像装置であって、
被写体の撮像状態を検出する検出部と、
前記撮像素子を遮光するように走行する幕体の動作を制御する動作制御部と、
前記幕体の走行に先行して、前記撮像素子に蓄積された電荷を掃出すことにより前記撮像素子の露光開始走査を制御する走査制御部と、
を備え、
前記走査制御部は、前記被写体の撮像状態に応じて、前記撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出すことを特徴とする、撮像装置。
【請求項2】
前記走査制御部は、
前記撮像素子の露光開始走査を、前記撮像素子に蓄積された電荷を掃出すことにより前記撮像素子の露光を開始するシャッタの先幕として機能させ、
前記動作制御部は、前記撮像素子を遮光する前記幕体を、前記シャッタの後幕として機能させることを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記走査制御部は、
前記幕体の走行カーブに対応するように、前記撮像素子に蓄積された電荷を掃出すための掃出しパルスを発生させ、
前記被写体の撮像状態に応じて、前記掃出しパルスを複数回発生させることを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記走査制御部は、
前記撮像素子のライン単位で前記掃出しパルスを複数回発生させることを特徴とする、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記走査制御部は、
前記被写体の残像が残る撮像状態である場合に、前記撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出すことを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記走査制御部は、
被写体の輝度が所定の基準値より高い場合に、前記撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出すことを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記走査制御部は、
被写体に高輝度の点光源が含まれている場合に、前記撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出すことを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記走査制御部は、
被写体の動きベクトルが所定の閾値以上であった場合に、前記撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出すことを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記検出部は、撮像時の手ぶれの度合いを検出し、
前記走査制御部は、前記検出部により検出された手ぶれの度合いが所定値以上であった場合に、前記撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出すことを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
マトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子に露光して被写体を撮像する撮像方法であって、
被写体の撮像状態を検出するステップと、
前記被写体の撮像状態に応じて、前記撮像素子に蓄積された電荷を複数回掃出して前記撮像素子の露光を開始させるステップと、
前記撮像素子の露光開始後に前記撮像素子を遮光するように走行する幕体を動作させるステップと、
を含むことを特徴とする、撮像方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−135174(P2011−135174A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290777(P2009−290777)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】