撮像装置および撮像装置の制御プログラム
【課題】撮影画像の一部を切り出した画像のボケ具合と、この切り出した画像と同じ範囲を焦点距離の長いレンズを使用して撮影した画像のボケ具合とは異なる。
【解決手段】撮像装置は、複数の画素が2次元的に配列された撮像素子と、複数の画素から、生成する画像データに対応する画素の範囲を選択画素範囲として選択する選択部と、選択部によって選択された選択画素範囲に基づいて、撮像時における露出値を規定するプログラム線図をシフトする制御部とを備える。
【解決手段】撮像装置は、複数の画素が2次元的に配列された撮像素子と、複数の画素から、生成する画像データに対応する画素の範囲を選択画素範囲として選択する選択部と、選択部によって選択された選択画素範囲に基づいて、撮像時における露出値を規定するプログラム線図をシフトする制御部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および撮像装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラは、撮影画像をそのまま記録するだけでなく、撮影画像の一部を切り出して記録する機能を有する。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開平10−177637
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
撮影画像の一部を切り出した画像は、撮影画像そのものに比べ画角が狭くなり、焦点距離の長いレンズを使用した場合と同様の画像を得ることができる。しかしながら、同じ絞り値で撮影した場合には、撮影画像の一部を切り出した画像のボケ具合と、この切り出した画像と同じ画角となるように焦点距離の長いレンズを使用して撮影した画像のボケ具合とは異なる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様における撮像装置は、複数の画素が2次元的に配列された撮像素子と、複数の画素から、生成する画像データに対応する画素の範囲を選択画素範囲として選択する選択部と、選択部によって選択された選択画素範囲に基づいて、撮像時における露出値を規定するプログラム線図をシフトする制御部とを備える。
【0005】
また、本発明の第2の態様における撮像装置の制御プログラムは、複数の画素が2次元的に配列された撮像素子を備える撮像装置の制御プログラムであって、複数の画素から、生成する画像データに対応する画素の範囲を選択画素範囲として選択する選択ステップと、選択ステップによって選択された選択画素範囲に基づいて、撮像時における露出値を規定するプログラム線図をシフトする制御ステップとをコンピュータに実行させる。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る交換レンズとカメラ本体の外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係るカメラ本体の背面図である。
【図3】本実施形態に係る一眼レフカメラのシステム構成図である。
【図4】撮像素子の撮像範囲を説明する図である。
【図5】被写界深度を説明する図である。
【図6】撮影距離L=3000mmの場合の被写界深度の一例を示す図である。
【図7】プログラムモードにおけるプログラム線図を示す。
【図8】ポートレートモードにおけるプログラム線図を示す。
【図9】スポーツモードにおけるプログラム線図を示す。
【図10】風景モードにおけるプログラム線図を示す。
【図11】本実施形態の撮影処理フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る一眼レフカメラ10の交換レンズ20とカメラ本体30の外観斜視図である。交換レンズ20は、レンズマウント21を備え、カメラ本体30は、カメラマウント31を備える。レンズマウント21とカメラマウント31が係合して交換レンズ20とカメラ本体30が一体化されると、交換レンズ20とカメラ本体30は一眼レフカメラ10として機能する。
【0010】
光軸11と平行な矢印12に沿って、レンズマウント21をカメラマウント31へ接近させ、レンズ指標22とボディ指標32が対向するように両者を接触させる。更に、レンズマウント21のマウント面とカメラマウント31のマウント面の接触を保ったまま、交換レンズ20を矢印13の方向へ回転させる。すると、ロックピン33によるロック機構が作動し、交換レンズ20はカメラ本体30に固定される。この状態において、交換レンズ20側の通信端子とカメラ本体30側の通信端子は接続が確立され、互いに制御信号等の通信を行うことができる。
【0011】
交換レンズ20をカメラ本体30から分離するときには、ユーザは、着脱ボタン34を押し下げることにより、着脱ボタン34に連動するロックピン33をカメラマウント31のマウント面から退避させてロックを解除する。そして、装着と逆の手順で交換レンズ20を回転させてから引き離す。
【0012】
交換レンズ20は、被写体光束をカメラ本体30に配設された撮像素子の受光面に結像させる。交換レンズ20は、撮像素子の受光面におけるイメージサークルの大きさ、焦点距離、開放F値などが異なる様々な仕様の製品として、複数用意されている。これらの交換レンズ20は、いずれもカメラマウント31と係合するレンズマウント21を備えており、カメラマウント31が採用されたカメラ本体30であれば、異なるカメラ本体30であっても装着することができる。
【0013】
また、カメラ本体30はレリーズボタン35を備える。レリーズボタン35は、押下げ方向に2段階に検知できる押しボタンで構成されている。ユーザはレリーズボタン35を押し下げることにより、被写体を撮影することができる。
【0014】
図2は、本実施形態に係るカメラ本体30の背面図である。図2に示すように、表示部36の近傍には操作部材としての十字キー37が設けられている。ユーザは十字キー37を操作することにより、表示部36に表示されたメニュー項目の選択範囲を上下左右に移動させることができる。また、十字キー37の中央には決定ボタン38が設けられている。ユーザは決定ボタン38を押下げることにより十字キー37による選択を確定させる。
【0015】
例えば、図2のように撮像範囲設定のメニュー画面が表示されている状態で、ユーザは、十字キー37を上下に操作することにより、アクティブフレーム39をメニュー項目中で移動させることができる。メニュー項目として、複数の画素範囲が選択可能に提示されている。そして、ユーザは、意図する場所にアクティブフレーム39を移動させたら決定ボタン38を押し下げて選択したメニュー項目の設定を指示する。決定ボタン38の押し下げに伴ってラジオボタン40がオンとなり、ユーザは自らの選択を視認することができる。
【0016】
また、図2に示すように、十字キー37の近傍には操作部材としてのシーソースイッチ41が設けられている。ユーザはシーソースイッチ41を操作することにより、ズームを指示することができる。ズーム処理については後述する。
【0017】
図3は、本実施形態に係る一眼レフカメラのシステム構成図である。被写体像は、光軸11に沿って光学系を透過し、撮像素子133の受光面に結像する。光学系は、フォーカスレンズ23、ズームレンズ24、絞り25等を含む。光学系は、レンズシステム制御部120によって制御される。例えば、レンズシステム制御部120は、モータ駆動回路122を介してフォーカスレンズ23を移動させるモータおよびズームレンズ24を移動させるモータを制御する。また、レンズシステム制御部120は、絞り駆動回路123を介して絞り25を駆動する。
【0018】
レンズシステム制御部120は、レンズマウント接点121およびカメラマウント接点131を介してカメラシステム制御部130と接続され、相互に通信を実行しつつ協働して交換レンズ20とカメラ本体30を制御する。なお、レンズマウント接点121およびカメラマウント接点131は、それぞれ上述の交換レンズ20側の通信端子およびカメラ本体30側の通信端子を含む。
【0019】
撮像素子133は、光学系を透過して入射する被写体像である光学像を光電変換する素子であり、例えば、CCD、CMOSセンサが用いられる。シャッタ134は、撮像素子133に対して撮影時のみ光が入射するように、撮影時の露光時間中のみ開き、それ以外の時は光をさえぎる。撮像素子133で光電変換された被写体像は、A/D変換器135でアナログ信号からデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された被写体像は、画像データとして順次処理される。
【0020】
A/D変換器135によりデジタル信号に変換された画像データは、画像処理部136へ引き渡される。画像処理部136は、設定されている撮影モード、ユーザからの指示に従って、画像データを規格化された画像フォーマットの画像データに変換する。例えば、静止画像としてJPEGファイルを生成する場合、色変換処理、ガンマ処理、ホワイトバランス処理等の画像処理を行った後に適応離散コサイン変換等を施して圧縮処理を行う。また、動画像としてMPEGファイルを生成する場合、生成された連続する静止画としてのフレーム画像に対して、フレーム内符号化、フレーム間符号化を施して圧縮処理を行う。
【0021】
A/D変換器135から画像処理部136へ入力される画像データ量が、画像処理部136の処理能力を上回る場合は、未処理の画像データは、メモリ制御部137の制御により一旦内部メモリ138へ記憶される。つまり、内部メモリ138は、連写撮影、動画撮影において高速に連続して画像データが生成される場合に、画像処理の順番を待つバッファメモリとしての役割を担う。内部メモリ138は、高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリであり、例えばDRAM、SRAMなどが用いられる。また、内部メモリ138は、画像処理部136が行う画像処理、圧縮処理において、ワークメモリとしての役割も担う。内部メモリ138は、これらの役割を担うに相当する十分なメモリ容量を備える。メモリ制御部137は、いかなる作業にどれくらいのメモリ容量を割り当てるかを制御する。
【0022】
画像処理部136によって処理された静止画像データ、動画像データは、メモリ制御部137の制御により、内部メモリ138から外部機器IF140を介して、記録媒体の記録部141に記録される。記録媒体は、フラッシュメモリ等により構成される、カメラ本体30に対して着脱可能な不揮発性メモリである。また、画素数、圧縮モード、カメラ本体30の機種名、レンズ情報、撮影モード、絞り値、シャッタ速度等の撮影情報を画像データと関連付けて記録部141に記録される。
【0023】
画像処理部136で処理された画像データは、記録用に処理される画像データに並行して、表示用の画像データを生成する。生成された表示用の画像データは、表示制御部139の制御に従って、表示部36に表示される。記録の有無に関わらず、逐次表示用の画像データを生成して表示部36に表示すれば、電子ファインダ機能としてライブビューを実現できる。また、画像の表示と共に、もしくは画像を表示することなく、一眼レフカメラ10の各種設定に関する様々なメニュー項目も、表示制御部139の制御により表示部36に表示することができる。
【0024】
一眼レフカメラ10は、上記の画像処理における各々の要素も含めて、カメラシステム制御部130により直接的または間接的に制御される。カメラシステム制御部130は、システムメモリ132を備える。システムメモリ132は、電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリであり、例えばEEPROM(登録商標)等により構成される。システムメモリ132は、一眼レフカメラ10の動作時に必要な定数、変数、プログラム等を、一眼レフカメラ10の非動作時にも失われないように記録している。また、システムメモリ132は、撮影時における露出値を規定するプログラム線図を撮影モードごとに記録する。カメラシステム制御部130は、定数、変数、プログラム等を適宜内部メモリ138に展開して、一眼レフカメラ10の制御に利用する。
【0025】
カメラ本体30は、ユーザからの操作を受け付けるレリーズボタン35、十字キー37等の操作部材を複数備えているが、操作検出部144は、これら操作部材が操作されたことを検知してカメラシステム制御部130へ検出結果を出力する。カメラシステム制御部130は、検出された操作に応じた動作を実行する。
【0026】
カメラシステム制御部130は、レリーズボタン35の1段階目の押下げであるSW1のオンを検知することにより撮影準備動作であるAF、AE等を実行する。そして、カメラシステム制御部130は、レリーズボタン35の2段階目の押下げであるSW2のオンを検知することにより撮像素子133による被写体像の取得動作を実行する。
【0027】
カメラ本体30は、電源143から電力供給を受ける。電源制御部142は、電源143と通信して残電力の検出、電力供給の監視、給電を行う。電源143は、2次電池、家庭用AC電源等により構成される。また、交換レンズ20への給電は、レンズマウント接点121、カメラマウント接点131を介して行われる。
【0028】
測光センサ145は、ファインダ近傍に設けられ、被写体の明るさを検知する。露出制御部146は、測光センサ145が検知した測光データを解析して露出値を算出する。露出制御部146は、算出した露出値に従って、カメラシステム制御部130を介してレンズシステム制御部120へ絞り25の制御信号を出力する。また、露出制御部146は、露出値に従ってISO感度に対応する読み出しゲインを設定する制御信号を撮像素子133へ出力する。さらに、露出制御部146は、シャッタ速度を設定する制御信号をシャッタ134へ出力する。
【0029】
露出制御部146は、ユーザが選択した撮影モードに応じて、システムメモリ132から後述するプログラム線図を取得する。そして、露出制御部146は、プログラム線図を参照して露出値を算出する。
【0030】
フォーカス制御部147は、ユーザの設定により、位相差AF方式またはコントラストAF方式を切り替えてオートフォーカスの制御を実行し、カメラシステム制御部130を介してレンズシステム制御部120へフォーカスレンズ23の駆動制御信号を出力する。
【0031】
ズーム制御部148は、ユーザによるシーソースイッチ41の操作に応じて、ズーム処理を実行する。具体的には、ユーザがシーソースイッチ41を操作してズーム指示をすると、ズーム制御部148は、ズームレンズ24の駆動制御信号をレンズシステム制御部120へ出力し、ズームレンズ24の駆動による光学ズームを実行する。また、ズーム制御部148は、光学ズームが最大倍率になった状態でさらにユーザがシーソースイッチ41を操作してズーム指示をすると、ズームレンズ24の駆動を停止し、画像処理部136と協働して画像処理による電子ズームを実行する。
【0032】
図4は、撮像素子の撮像範囲を説明する図であり、カメラマウント31側から光軸11に沿って撮像素子133を臨む図である。撮像範囲は、撮像素子133の複数の画素のうち撮像すべき画素の範囲である。本実施形態において、撮像範囲として3つの画素範囲が予め規定されている。
【0033】
第1の撮像範囲は、撮像素子133の有効画素領域の画素範囲である。本実施形態において、撮像素子133の有効画素領域の画素範囲は、35mm版フィルムのサイズと同程度の36mm×24mm、対角線長約43mmである。この有効画素領域の画素範囲をFXサイズと表す。
【0034】
第2の撮像範囲は、FXサイズより小さいAPS版フィルムのCサイズと同程度の24mm×16mm、対角線長約29mmで構成される第1画素範囲151である。この第1画素範囲151をDXサイズと表す。第3の撮像範囲は、DXサイズより小さい17.3m×13mm、対角線長約21.6mmで構成される第2画素範囲152である。この第2画素範囲152をBXサイズと表す。
【0035】
ユーザは、第1の撮像範囲、第2の撮像範囲および第3の撮像範囲のうちから、画像処理部136が生成する画像データに対応する撮像素子133の画素の範囲を決定することができる。本実施形態において、ユーザが決定した撮像範囲に対応する撮像素子133の画素の範囲を選択画素範囲という。具体的には、カメラシステム制御部130は、図2の撮像範囲設定のメニュー画面でラジオボタン40をオンにした撮像範囲を選択画素範囲として選択する。
【0036】
撮像素子133が選択画素範囲の被写体像を光電変換することにより、画像処理部136は選択画素範囲に対応する画像データを生成することができる。また、画像処理部136は、A/D変換器135が出力した画像データのうち選択画素範囲に対応する画像データをクロップするようにしてもよい。
【0037】
次に、選択画素範囲と撮影画像のボケ具合の関係について説明する。図5は、被写界深度を説明する図である。被写界深度とは、観察される撮影画像においてピントが合っているように判断される被写体の奥行きの範囲である。被写界深度Tは、前方被写界深度Tfおよび後方被写界深度Trを用いて以下の式で表される。Tf=δFL2/(f2+δFL)・・・[1]、Tr=δFL2/(f2−δFL)・・・[2]、T=Tf+Tr=δFL2/(f2+δFL)+δFL2/(f2−δFL)・・・[3]。なお、δ:許容錯乱円径、F:絞り値、L:撮影距離、f:焦点距離である。
【0038】
被写界深度Tの範囲内の点光源から放射された光は、撮像素子133の受光面では許容錯乱円径δ以内の直径を持つ円として結像する。許容錯乱円径δは、撮影画像として観察されたときに点と視認されうる、受光面上における最大の大きさを持つ錯乱円の直径である。許容錯乱円径δは、一般的には選択画素範囲の対角線長Dを定数1000〜1500で割った値が用いられる。したがって、許容錯乱円径δは選択画素範囲の対角線長Dに比例する。
【0039】
同じ画角で撮影する場合、焦点距離fは選択画素範囲の対角線長Dに比例する。例えば、選択画素範囲がDXサイズであって焦点距離f=50mmである場合の画角は、選択画素範囲がFXサイズであって焦点距離f=50mm×(DXサイズに対するFXサイズの対角線長比1.5)=75mmである場合の画角と同等である。
【0040】
このように許容錯乱円径δおよび焦点距離fは、選択画素範囲の対角線長Dに比例する。この比例関係をδ=aD、f=bDで表し上述の式[3]に代入すると、被写界深度Tは以下の式で表される。T=aFL2/(b2D+aFL)+aFL2/(b2D−aFL)・・・[4]。
【0041】
したがって、絞り値Fおよび撮影距離Lを一定にして同等の画角で撮影する場合、被写界深度Tは、選択画素範囲の対角線長Dが短い、すなわち選択画素範囲が小さいほど深くなる。被写界深度Tが深くなるとピントが合っているように観察される奥行きの範囲が広がりボケが少なくなる。そのため、絞り値Fおよび撮影距離Lを一定にし且つ画角が同等となるように焦点距離fを調整して撮影する場合、選択画素範囲が小さい撮影画像は、選択画素範囲が大きい撮影画像と比べてボケが少ない。
【0042】
ここで、絞り値Fを、許容錯乱円径δおよび焦点距離fと同様に、選択画素範囲の対角線長Dに比例させる。この比例関係をF=cDで表し上述の式[4]に代入すると、被写界深度Tは以下の式で表される。T=acL2/(b2+acL)+acL2/(b2−acL)・・・[5]。
【0043】
式[5]からわかるように、被写界深度Tは、撮影距離Lが一定であれば選択画素範囲の対角線長比Dが変わっても一定となる。したがって、撮影距離Lを一定にして絞り値Fを対角線長Dに比例させ且つ画角が同等となるように焦点距離fを調整して撮影すれば、選択画素範囲が小さい撮影画像と選択画素範囲が大きい撮影画像とは同等のボケ具合となる。
【0044】
図6は、撮影距離L=3000mmの場合の被写界深度の一例を示す図である。上述の許容錯乱円径δの定数1000〜1500を満たす値を用いて、FXサイズの許容錯乱円径δを0.03mm、DXサイズの許容錯乱円径δを0.02mm、BXサイズの許容錯乱円径δを0.015mmとする。
【0045】
図6の表において、選択画素範囲がFXサイズである場合における3つの状態を第1列161、第2列162および第3列163で示す。第1列161の下端の値は、焦点距離f=50mm、絞り値F=5.6である場合の被写界深度Tを示す。第2列162の下端の値は、焦点距離f=75mm、絞り値F=5.6である場合の被写界深度Tを示す。第3列163の下端の値は、焦点距離f=100mm、絞り値F=5.6である場合の被写界深度Tを示す。
【0046】
また、図6の表において、選択画素範囲がDXサイズである場合における2つの状態を第4列164および第5列165で示す。第4列164の下端の値は、焦点距離f=50mm、絞り値F=5.6である場合の被写界深度Tを示す。第5列165の下端の値は、焦点距離f=50mm、絞り値F=3.8である場合の被写界深度Tを示す。
【0047】
さらに、図6の表において、選択画素範囲がBXサイズである場合における2つの状態を第6列166および第7列167で示す。第6列166の下端の値は、焦点距離f=50mm、絞り値F=5.6である場合の被写界深度Tを示す。第7列167の下端の値は、焦点距離f=50mm、絞り値F=2.8である場合の被写界深度Tを示す。
【0048】
ここで、第2列162の状態での撮影画像と第4列164の状態での撮影画像とを比較する。上述のように、選択画素範囲がDXサイズであって焦点距離f=50mmである場合の画角は、選択画素範囲がFXサイズであって焦点距離f=75mmである場合の画角と同等である。そのため、第2列162の状態での撮影範囲は第4列164の状態での撮影範囲と同等である。第2列162の状態での絞り値Fおよび第4列164の状態での絞り値Fは共に5.6であることから、第4列164の状態での被写界深度Tは第2列162の状態での被写界深度Tよりも深い。したがって、第4列164の状態で撮影した画像は、第2列162の状態で撮影した画像と比べると、撮影範囲は同等であるがボケが少ない。
【0049】
次に、第4列164の状態での絞り値F=5.6をFXサイズに対するDXサイズの対角線長比0.67を掛けた3.8を絞り値Fとした第5列165の状態での撮影画像と第2列162の状態での撮影画像とを比較する。上述のように、選択画素範囲がDXサイズであって焦点距離f=50mmである場合の画角は、選択画素範囲がFXサイズであって焦点距離f=75mmである場合の画角と同等である。そのため、第2列162の状態での撮影範囲は第5列165の状態での撮影範囲と同等である。絞り値Fを対角線長に比例させたことにより、第2列162の状態での被写界深度Tと第5列165の状態での被写界深度Tは同等となる。したがって、第5列165の状態で撮影した画像は、第2列162の状態で撮影した画像と比べると、撮影範囲もボケ具合も同等となる。
【0050】
第2列162の状態での被写界深度Tおよび第5列165の被写界深度Tのように両方の撮影画像の被写界深度が完全に一致していない場合、被写界深度の差が予め定められた許容範囲に収まっていれば、両方の撮影画像のボケ具体が同等であるとしてもよい。許容範囲は、例えば基準となる一方の撮影画像の被写界深度の5パーセントに規定してもよい。
【0051】
選択画素範囲がBXサイズである場合も同様である。第3列163の状態での撮影画像と第6列166の状態での撮影画像とを比較する。選択画素範囲がBXサイズであって焦点距離f=50mmである場合の画角は、選択画素範囲がFXサイズであって焦点距離f=50mm×BXサイズに対するFXサイズの対角線長比2=100mmである場合の画角と同等である。そのため、第3列163の状態での撮影範囲は第6列166の状態での撮影範囲と同等である。第3列163の状態での絞り値Fおよび第6列166の状態での絞り値Fは共に5.6であることから、第6列166の状態での被写界深度Tは第3列163の状態での被写界深度Tよりも深い。したがって、第6列166の状態で撮影した画像は、第3列163の状態で撮影した画像と比べると、撮影範囲は同等であるがボケが少ない。
【0052】
次に、第6列166の状態での絞り値F=5.6をFXサイズに対するBXサイズの対角線長比0.5を掛けた2.8を絞り値Fとした第7列167の状態での撮影画像と第3列163の状態での撮影画像とを比較する。上述のように、選択画素範囲がBXサイズであって焦点距離f=50mmである場合の画角は、選択画素範囲がFXサイズであって焦点距離f=100mmである場合の画角と同等である。そのため、第3列163の状態での撮影範囲は第7列167の状態での撮影範囲と同等である。絞り値Fを対角線長に比例させたことにより、第3列163の状態での被写界深度Tと第7列167の状態での被写界深度Tは同等となる。したがって、第7列167の状態で撮影した画像は、第3列163の状態で撮影した画像と比べると、撮影範囲もボケ具合も同等となる。
【0053】
本実施形態における露出制御について説明する。図7はプログラムモードのプログラム線図を示す。プログラム線図は、撮影モードに応じて撮影時の露出値を規定する。露出値は、絞り値とシャッタ速度とISO感度との組み合わせで規定される。なお、本実施形態におけるプログラム線図はISO100の場合である。プログラムモードは、絞り値Fとシャッタ速度を自動的に設定する撮影モードである。
【0054】
図7のグラフにおいて、縦軸は絞り値F、横軸はシャッタ速度、斜線は被写体の明るさを示す値であるEVを指す。本実施形態に係る一眼レフカメラ10の絞り値Fの下限値は1.4、上限値は16である。また、本実施形態に係る一眼レフカメラ10のシャッタ速度の上限値は1/8000秒、下限値は30秒である。図7の実線で示される線図は、撮像素子133の有効画素領域の画素範囲であるFXサイズに応じて予め規定された基準プログラム線図である。基準プログラム線図はシステムメモリ132に記録されている。
【0055】
プログラムモードが撮影モードとして選択されている場合、まず、露出制御部146は、この基準プログラム線図をシステムメモリ132から読み出す。次に、露出制御部146は、測光センサ145が検知した測光データを解析してEVを算出し、図7のグラフにおいて算出したEVと基準プログラム線図との交点の絞り値およびシャッタ速度を抽出する。そして、露出制御部146は、抽出した絞り値およびシャッタ速度で絞り25およびシャッタ134をそれぞれ動作させる制御信号を出力して露出制御を実行する。
【0056】
例えば、EVが12の場合、図7のグラフにおいてEVが12であることを示す斜線と基準プログラム線図との交点の絞り値F=5.6、シャッタ速度1/125秒が選択される。そして、露出制御部146は、絞り25の絞り値を5.6に設定する制御信号およびシャッタ134のシャッタ速度を1/125秒に設定する制御信号を出力する。
【0057】
普段FXサイズを選択画素範囲として選択してプログラムモードで撮影するユーザは、上述の基準プログラム線図に応じた露出値で撮影されたFXサイズの撮影画像のボケ具合を認識している。このユーザが望遠効果を狙って、選択画素範囲をFXサイズからDXサイズに変更してプログラムモードで撮影する場面を想定する。選択画素範囲に関わらず基準プログラム線図を用いると、選択画素範囲がFXサイズからDXサイズに変更してもEVが同じ値であれば絞り値Fも同じ値になる。例えば、図7に示すように、EVが12であれば絞り値FはFXサイズであってもDXサイズであっても5.6である。
【0058】
そのため、図5および図6を用いて説明したように、DXサイズの撮影画像の被写界深度は、このDXサイズの撮影画像と同等の画角となるFXサイズの撮影画像の被写界深度より深くなる。したがって、普段FXサイズを選択画素範囲として選択してプログラムモードで撮影するユーザは、このDXサイズの撮影画像のボケ具合は自身が意図していたものと違っているように感じる。
【0059】
そこで、DXサイズが選択画素範囲として選択されている場合、露出制御部146は、基準プログラム線図をシフトし、シフトしたプログラム線図を用いる。具体的には、露出制御部146は、絞り値FがFXサイズに対するDXサイズの対角線長比0.67を掛けた値になるように基準プログラム線図をシフトする。図7の破線で示された線図は、DXサイズが選択画素範囲として選択されている場合に用いられるプログラム線図である。DXサイズが選択画素範囲として選択されている場合に用いられるプログラム線図をDXプログラム線図と称する。
【0060】
選択画素範囲がFXサイズの場合に上述の基準プログラム線図を用い、選択画素範囲がDXサイズの場合に上述のDXプログラム線図を用いると、EVが同じ値の場合に絞り値Fは選択画素範囲の対角線長Dに比例した値となる。また、プログラム線図に応じて、絞り値Fに対応するシャッタ速度が選択される。例えば、図7に示すように、EVが12の場合、選択画素範囲がFXサイズであれば絞り値F=5.6、シャッタ速度=1/125秒が選択され、選択画素範囲がDXサイズであれば絞り値F=5.6×0.67=3.8、シャッタ速度=1/300秒が選択される。なお、絞り値が離散的に規定されている場合において、プログラム線図に応じて選択された絞り値Fが離散的な規定値と一致しないときには、選択された絞り値Fの近傍に存在する離散的な規定値が絞り値Fとして代わりに用いられる。
【0061】
そのため、図5および図6を用いて説明したとおり、DXサイズの撮影画像の被写界深度は、このDXサイズの撮影画像と同等の画角となるFXサイズの撮影画像の被写界深度と同等となる。したがって、普段FXサイズを選択画素範囲として選択してプログラムモードで撮影するユーザは、このDXサイズの撮影画像のボケ具合は自身が意図していたものと同等であり違和感を覚えない。
【0062】
同様に、BXサイズが選択画素範囲として選択されている場合、露出制御部146は、絞り値FがFXサイズとBXサイズの対角線長比0.5を掛けた値になるように基準プログラム線図をシフトする。図7の点線で示されたプログラム線図が、BXサイズが選択画素範囲として選択されている場合に用いられるプログラム線図である。BXサイズが選択画素範囲として選択されている場合に用いられるプログラム線図をBXプログラム線図と称する。
【0063】
選択画素範囲がFXサイズの場合に上述の基準プログラム線図を用い、選択画素範囲がBXサイズの場合に上述のBXプログラム線図を用いることにより、上述のDXサイズの場合と同様に、BXサイズの撮影画像の被写界深度は、このBXサイズの撮影画像と同等の画角となるFXサイズの撮影画像の被写界深度と同等となる。したがって、普段FXサイズを選択画素範囲として選択してプログラムモードで撮影するユーザは、このBXサイズの撮影画像のボケ具合は自身が意図していたものと同等であり違和感を覚えない。
【0064】
選択画素範囲がFXサイズの場合に上述の基準プログラム線図を用い、選択画素範囲がBXサイズの場合に上述のBXプログラム線図を用いると、EVが同じ値の場合に絞り値Fは選択画素範囲の対角線長Dに比例した値となる。また、プログラム線図に応じて、絞り値Fに対応するシャッタ速度が選択される。例えば、図7に示すように、EVが12の場合、選択画素範囲がFXサイズであれば絞り値F=5.6、シャッタ速度=1/125秒が選択され、選択画素範囲がBXサイズであれば絞り値F=5.6×0.5=2.8、シャッタ速度=1/500秒が選択される。
【0065】
なお、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトすると絞り値Fの下限値1.4を下回る箇所が存在する場合には、当該箇所を下限値1.4に規定する。図7のDXプログラム線図においてEVが約6.7以下の箇所およびBXプログラム線図においてEVが8以下の箇所が下限値1.4に規定される。また、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトするとシャッタ速度の上限値1/8000秒を超える箇所が存在する場合には、当該箇所を上限値1/8000秒に規定する。図7のBXプログラム線図においてEVが20以上の箇所が上限値1/8000秒に規定される。
【0066】
上述の図7の実施例において、露出制御部146は、ISO感度を一定にし、プログラム線図の絞り値Fのシフトに伴いシャッタ速度をシフトさせたが、ISO感度を変更することもできる。具体的には、露出制御部146は、シャッタ速度を一定にし、絞り値Fのシフトに伴いISO感度をシフトさせる。例えば、露出制御部146は、シャッタ速度を1/125秒にし、絞り値Fを5.6から4にシフトさせるのに伴い、ISO感度を100から50にシフトさせる。
【0067】
また、露出制御部146は、プログラム線図の絞り値Fのシフトに伴いシャッタ速度およびISO感度の双方をシフトさせることもできる。例えば、露出制御部146は、絞り値Fを5.6から4にシフトさせるのに伴い、シャッタ速度を1/125秒から1/60秒にシフトするとともにISO感度を100から25にシフトさせる。
【0068】
図8は、ポートレートモードにおけるプログラム線図を示す。ポートレートモードは、背景をぼかして被写体を引き立たせるように、絞り値Fを小さく設定する撮影モードである。上述の図7の実施例と同様に、実線で示される基準プログラム線図をシフトして破線で示されるDXプログラム線図および点線で示されるBXプログラム線図が規定される。なお、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトするとシャッタ速度の上限値1/8000秒を超える箇所が存在する場合には、当該箇所を上限値1/8000秒にする。図8のDXプログラム線図においてEVが約14.7以上の箇所およびBXプログラム線図においてEVが14以上の箇所が上限値1/8000秒に規定される。
【0069】
図9は、スポーツモードにおけるプログラム線図を示す。スポーツモードは、動いている被写体でもブレにくいように、シャッタ速度を高速寄りに設定する撮影モードである。上述の図7の実施例と同様に、実線で示される基準プログラム線図をシフトして破線で示されるDXプログラム線図および点線で示されるBXプログラム線図が規定される。なお、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトすると絞り値Fの下限値1.4を下回る箇所が存在する場合には、当該箇所を下限値1.4に規定する。図9のDXプログラム線図においてEVが約11.4以下の箇所およびBXプログラム線図においてEVが約12.4以下の箇所が下限値1.4に規定される。
【0070】
また、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトするとシャッタ速度の上限値1/8000秒を超える箇所が存在する場合には、当該箇所を上限値1/8000秒にする。図9のDXプログラム線図においてEVが約19.2以上の箇所およびBXプログラム線図においてEVが17以上の箇所が上限値1/8000秒に規定される。
【0071】
図10は、風景モードにおけるプログラム線図を示す。風景モードは、近くから遠くまでピントが合うように、絞り値Fを大きく設定する撮影モードである。上述の図7の実施例と同様に、実線で示される基準プログラム線図をシフトして破線で示されるDXプログラム線図および点線で示されるBXプログラム線図が規定される。なお、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトするとシャッタ速度の上限値1/8000秒を超える箇所が存在する場合には、当該箇所を上限値1/8000秒にする。図10のDXプログラム線図においてEVが約19.6以上の箇所およびBXプログラム線図においてEVが18.6以上の箇所が上限値1/8000秒に規定される。
【0072】
図11は、本実施形態の撮影処理フローを示す。本フローは、例えば、カメラ本体30の電源がオンにされたときに開始される。本実施形態において、露出制御部146がカメラシステム制御部130と協働して本フローの処理を実行する。
【0073】
ステップS101では、露出制御部146は、ユーザが選択した撮影モードの情報を取得する。撮影モードは上述のプログラムモード、ポートレートモード、スポーツモード、風景モード等である。カメラシステム制御部130は、ユーザが選択した撮影モードを検知し、撮影モードの情報をシステムメモリ132に格納する。そして、露出制御部146はシステムメモリ132から撮影モードの情報を取得する。ステップS102では、露出制御部146は、撮影モードに対応するプログラム線図をシステムメモリ132から取得する。例えば、露出制御部146は、プログラムモードが撮影モードとして選択されている場合に、図7を用いて説明した基準プログラム線図を取得する。
【0074】
ステップS103では、露出制御部146は、ユーザが選択した撮影モードがプログラム線図のシフトを禁止するモードであるか否かを判断する。具体的には、露出制御部146は、ユーザが絞り値Fを手動で決定するマニュアル露出モードおよび絞り優先モードをプログラム線図のシフトを禁止するモードと判断する。撮影モードがプログラム線図のシフトを禁止するモードである場合にはステップS108に移行し、プログラム線図のシフトを禁止するモードでない場合にはステップS104に移行する。
【0075】
ステップS104では、カメラシステム制御部130は、ユーザの操作に従って、画像処理部136が生成する画像データに対応する撮像素子133の画素の範囲を選択画素範囲として選択する。例えば、カメラシステム制御部130は、図2の撮像範囲設定のメニュー画面でユーザがラジオボタン40をオンにした撮像範囲を選択画素範囲として選択する。
【0076】
ステップS105において、露出制御部146は、選択画素範囲が基準画素範囲であるか否かを判断する。基準画素範囲は、ステップS102で取得したプログラム線図に対応する画素範囲である。例えば、図7を用いて説明した基準プログラム線図が取得された場合には、FXサイズが基準画素範囲となる。選択画素範囲が基準画素範囲である場合にはステップS108へ移行し、選択画素範囲が基準画素範囲でない場合にはステップS106に移行する。
【0077】
ステップS106では、露出制御部146は、ステップS102で取得したプログラム線図のシフト量を算出する。例えば、図7を用いて説明したように、露出制御部146は、基準画素範囲に対する選択画素範囲の対角線長比を算出する。そして、ステップS107では、露出制御部146は、ステップS106で算出したシフト量を用いてステップS102で取得したプログラム線図をシフトさせる。例えば、図7で説明したように、露出制御部146は、基準画素範囲に対する選択画素範囲の対角線長比を絞り値Fに掛けて基準プログラム線図をシフトさせる。
【0078】
ステップS108では、カメラシステム制御部130は、レリーズボタン35の1段階目の押下げであるSW1がオンになったか否かを検知する。SW1がオンになるまでステップS108で待機し、SW1のオンを検知した場合、ステップS109に移行する。
【0079】
ステップS109では、露出制御部146は、測光センサ145が検知した測光データを取得する。そして、ステップS110では、露出制御部146は、測光データおよびプログラム線図に応じて撮影時の露出値を決定する。この場合、露出制御部146は、ステップS107でプログラム線図がシフトされた場合にはシフト後のプログラム線図を用いる。露出値の決定処理の詳細は図7で説明したとおりである。
【0080】
ステップS111では、カメラシステム制御部130は、レリーズボタン35の2段階目の押下げであるSW2がオンになったか否かを検知する。SW2のオンを検知した場合、ステップS109に移行する。SW1のオンを検知してから一定時間内、例えば数秒以内にSW2のオンを検知しなかった場合にはステップS114に移行する。
【0081】
ステップS112では、露出制御部146は、ステップS110で決定した露出値に応じて露出制御を実行する。露出制御処理の詳細は図7を用いて説明したとおりである。ステップS113では、画像処理部136は、撮像素子133の出力をA/D変換器135を介して取得し、規格化された画像フォーマットの画像データに変換する。そして、画像処理部136で処理された画像データは記録部141に記録される。
【0082】
ステップS114では、カメラシステム制御部130は、ユーザが撮影モードを変更したか否かを判断する。例えば、カメラシステム制御部130は、ユーザが撮影モードのメニュー画面で別の撮影モードを選択したか否かを判断する。ユーザが撮影モードを変更した場合にはステップS102に移行し、ユーザが撮影モードを変更していない場合にはステップS115に移行する。ステップS115では、カメラシステム制御部130は、カメラ本体30の電源がオフになったか否かを判断する。カメラ本体30の電源がオンのままである場合にはステップS104に移行し、カメラ本体30の電源がオフになった場合には本フローを終了する。
【0083】
上記の実施形態において、FXサイズ、DXサイズおよびBXサイズの3つの撮像範囲のうちから画像処理部136が生成する画像データに対応する撮像素子133の画素の範囲を選択するがこれに限らない。ユーザが撮像素子133の有効画素領域における任意の画素範囲を上述の選択画素範囲として指定できるようにしてもよい。この場合、露出制御部146は、ユーザが指定した画素範囲の対角線長Dを算出し、上述のように露出値を決定する。
【0084】
また、カメラシステム制御部130は、電子ズームで切り取った画像データに対応する撮像素子133の画素の範囲を上述の選択画素範囲として選択してもよい。具体的には、ユーザによるシーソースイッチ41のズーム指示に応じて、ズーム制御部148は、カメラシステム制御部130を介してズームレンズ24を駆動して光学ズームを実行する。そして、ズーム制御部148は、光学ズームが最大倍率になった状態でさらにシーソースイッチ41のズーム指示がなされると、ズームレンズ24の駆動を停止して電子ズームを開始する。
【0085】
電子ズームは、撮像素子133の中央部の画素に対応する画像データを切り取って補間拡大する。カメラシステム制御部130は、ユーザの電子ズームの指示が完了した場合に、電子ズームで切り取られた画像領域に対応する撮像素子133の画素の範囲を上述の選択画素範囲として選択する。そして、露出制御部146は、この画素範囲の対角線長Dを算出し、上述のように露出値を決定する。
【0086】
また、上記の実施形態において、ユーザがDXサイズまたはBXサイズを選択画素範囲として選択して撮影した場合、カメラシステム制御部130は、プログラム線図のシフトに関する情報を撮影画像データに関連付けて記録部141に記録してもよい。例えば、上述した図6の第5列165の状態で撮影した場合、「FX換算:焦点距離f=75mm、絞り値F=5.6相当」の情報が撮影画像データに関連付けられる。なお、プログラム線図のシフトに関する情報は、記録部141に記録される撮影情報に含まれていてもよく、また撮影情報とは別のフォーマットで記録部141に記録されてもよい。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0088】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0089】
10 一眼レフカメラ、11 光軸、12、13 矢印、20 交換レンズ、21 レンズマウント、22 レンズ指標、23 フォーカスレンズ、24 ズームレンズ、25 絞り、30 カメラ本体、31 カメラマウント、32 ボディ指標、33 ロックピン、34 着脱ボタン、35 レリーズボタン、36 表示部、37 十字キー、38 決定ボタン、39 アクティブフレーム、40 ラジオボタン、41 シーソースイッチ、120 レンズシステム制御部、121 レンズマウント接点、122 モータ駆動回路、123 絞り駆動回路、130 カメラシステム制御部、131 カメラマウント接点、132 システムメモリ、133 撮像素子、134 シャッタ、135 A/D変換器、136 画像処理部、137 メモリ制御部、138 内部メモリ、139 表示制御部、140 外部機器IF、141 記録部、142 電源制御部、143 電源、144 操作検出部、145 測光センサ、146 露出制御部、147 フォーカス制御部、148 ズーム制御部、151 第1画素範囲、152 第2画素範囲、161 第1列、162 第2列、163 第3列、164 第4列、165 第5列、166 第6列、167 第7列
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および撮像装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラは、撮影画像をそのまま記録するだけでなく、撮影画像の一部を切り出して記録する機能を有する。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開平10−177637
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
撮影画像の一部を切り出した画像は、撮影画像そのものに比べ画角が狭くなり、焦点距離の長いレンズを使用した場合と同様の画像を得ることができる。しかしながら、同じ絞り値で撮影した場合には、撮影画像の一部を切り出した画像のボケ具合と、この切り出した画像と同じ画角となるように焦点距離の長いレンズを使用して撮影した画像のボケ具合とは異なる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様における撮像装置は、複数の画素が2次元的に配列された撮像素子と、複数の画素から、生成する画像データに対応する画素の範囲を選択画素範囲として選択する選択部と、選択部によって選択された選択画素範囲に基づいて、撮像時における露出値を規定するプログラム線図をシフトする制御部とを備える。
【0005】
また、本発明の第2の態様における撮像装置の制御プログラムは、複数の画素が2次元的に配列された撮像素子を備える撮像装置の制御プログラムであって、複数の画素から、生成する画像データに対応する画素の範囲を選択画素範囲として選択する選択ステップと、選択ステップによって選択された選択画素範囲に基づいて、撮像時における露出値を規定するプログラム線図をシフトする制御ステップとをコンピュータに実行させる。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る交換レンズとカメラ本体の外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係るカメラ本体の背面図である。
【図3】本実施形態に係る一眼レフカメラのシステム構成図である。
【図4】撮像素子の撮像範囲を説明する図である。
【図5】被写界深度を説明する図である。
【図6】撮影距離L=3000mmの場合の被写界深度の一例を示す図である。
【図7】プログラムモードにおけるプログラム線図を示す。
【図8】ポートレートモードにおけるプログラム線図を示す。
【図9】スポーツモードにおけるプログラム線図を示す。
【図10】風景モードにおけるプログラム線図を示す。
【図11】本実施形態の撮影処理フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る一眼レフカメラ10の交換レンズ20とカメラ本体30の外観斜視図である。交換レンズ20は、レンズマウント21を備え、カメラ本体30は、カメラマウント31を備える。レンズマウント21とカメラマウント31が係合して交換レンズ20とカメラ本体30が一体化されると、交換レンズ20とカメラ本体30は一眼レフカメラ10として機能する。
【0010】
光軸11と平行な矢印12に沿って、レンズマウント21をカメラマウント31へ接近させ、レンズ指標22とボディ指標32が対向するように両者を接触させる。更に、レンズマウント21のマウント面とカメラマウント31のマウント面の接触を保ったまま、交換レンズ20を矢印13の方向へ回転させる。すると、ロックピン33によるロック機構が作動し、交換レンズ20はカメラ本体30に固定される。この状態において、交換レンズ20側の通信端子とカメラ本体30側の通信端子は接続が確立され、互いに制御信号等の通信を行うことができる。
【0011】
交換レンズ20をカメラ本体30から分離するときには、ユーザは、着脱ボタン34を押し下げることにより、着脱ボタン34に連動するロックピン33をカメラマウント31のマウント面から退避させてロックを解除する。そして、装着と逆の手順で交換レンズ20を回転させてから引き離す。
【0012】
交換レンズ20は、被写体光束をカメラ本体30に配設された撮像素子の受光面に結像させる。交換レンズ20は、撮像素子の受光面におけるイメージサークルの大きさ、焦点距離、開放F値などが異なる様々な仕様の製品として、複数用意されている。これらの交換レンズ20は、いずれもカメラマウント31と係合するレンズマウント21を備えており、カメラマウント31が採用されたカメラ本体30であれば、異なるカメラ本体30であっても装着することができる。
【0013】
また、カメラ本体30はレリーズボタン35を備える。レリーズボタン35は、押下げ方向に2段階に検知できる押しボタンで構成されている。ユーザはレリーズボタン35を押し下げることにより、被写体を撮影することができる。
【0014】
図2は、本実施形態に係るカメラ本体30の背面図である。図2に示すように、表示部36の近傍には操作部材としての十字キー37が設けられている。ユーザは十字キー37を操作することにより、表示部36に表示されたメニュー項目の選択範囲を上下左右に移動させることができる。また、十字キー37の中央には決定ボタン38が設けられている。ユーザは決定ボタン38を押下げることにより十字キー37による選択を確定させる。
【0015】
例えば、図2のように撮像範囲設定のメニュー画面が表示されている状態で、ユーザは、十字キー37を上下に操作することにより、アクティブフレーム39をメニュー項目中で移動させることができる。メニュー項目として、複数の画素範囲が選択可能に提示されている。そして、ユーザは、意図する場所にアクティブフレーム39を移動させたら決定ボタン38を押し下げて選択したメニュー項目の設定を指示する。決定ボタン38の押し下げに伴ってラジオボタン40がオンとなり、ユーザは自らの選択を視認することができる。
【0016】
また、図2に示すように、十字キー37の近傍には操作部材としてのシーソースイッチ41が設けられている。ユーザはシーソースイッチ41を操作することにより、ズームを指示することができる。ズーム処理については後述する。
【0017】
図3は、本実施形態に係る一眼レフカメラのシステム構成図である。被写体像は、光軸11に沿って光学系を透過し、撮像素子133の受光面に結像する。光学系は、フォーカスレンズ23、ズームレンズ24、絞り25等を含む。光学系は、レンズシステム制御部120によって制御される。例えば、レンズシステム制御部120は、モータ駆動回路122を介してフォーカスレンズ23を移動させるモータおよびズームレンズ24を移動させるモータを制御する。また、レンズシステム制御部120は、絞り駆動回路123を介して絞り25を駆動する。
【0018】
レンズシステム制御部120は、レンズマウント接点121およびカメラマウント接点131を介してカメラシステム制御部130と接続され、相互に通信を実行しつつ協働して交換レンズ20とカメラ本体30を制御する。なお、レンズマウント接点121およびカメラマウント接点131は、それぞれ上述の交換レンズ20側の通信端子およびカメラ本体30側の通信端子を含む。
【0019】
撮像素子133は、光学系を透過して入射する被写体像である光学像を光電変換する素子であり、例えば、CCD、CMOSセンサが用いられる。シャッタ134は、撮像素子133に対して撮影時のみ光が入射するように、撮影時の露光時間中のみ開き、それ以外の時は光をさえぎる。撮像素子133で光電変換された被写体像は、A/D変換器135でアナログ信号からデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された被写体像は、画像データとして順次処理される。
【0020】
A/D変換器135によりデジタル信号に変換された画像データは、画像処理部136へ引き渡される。画像処理部136は、設定されている撮影モード、ユーザからの指示に従って、画像データを規格化された画像フォーマットの画像データに変換する。例えば、静止画像としてJPEGファイルを生成する場合、色変換処理、ガンマ処理、ホワイトバランス処理等の画像処理を行った後に適応離散コサイン変換等を施して圧縮処理を行う。また、動画像としてMPEGファイルを生成する場合、生成された連続する静止画としてのフレーム画像に対して、フレーム内符号化、フレーム間符号化を施して圧縮処理を行う。
【0021】
A/D変換器135から画像処理部136へ入力される画像データ量が、画像処理部136の処理能力を上回る場合は、未処理の画像データは、メモリ制御部137の制御により一旦内部メモリ138へ記憶される。つまり、内部メモリ138は、連写撮影、動画撮影において高速に連続して画像データが生成される場合に、画像処理の順番を待つバッファメモリとしての役割を担う。内部メモリ138は、高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリであり、例えばDRAM、SRAMなどが用いられる。また、内部メモリ138は、画像処理部136が行う画像処理、圧縮処理において、ワークメモリとしての役割も担う。内部メモリ138は、これらの役割を担うに相当する十分なメモリ容量を備える。メモリ制御部137は、いかなる作業にどれくらいのメモリ容量を割り当てるかを制御する。
【0022】
画像処理部136によって処理された静止画像データ、動画像データは、メモリ制御部137の制御により、内部メモリ138から外部機器IF140を介して、記録媒体の記録部141に記録される。記録媒体は、フラッシュメモリ等により構成される、カメラ本体30に対して着脱可能な不揮発性メモリである。また、画素数、圧縮モード、カメラ本体30の機種名、レンズ情報、撮影モード、絞り値、シャッタ速度等の撮影情報を画像データと関連付けて記録部141に記録される。
【0023】
画像処理部136で処理された画像データは、記録用に処理される画像データに並行して、表示用の画像データを生成する。生成された表示用の画像データは、表示制御部139の制御に従って、表示部36に表示される。記録の有無に関わらず、逐次表示用の画像データを生成して表示部36に表示すれば、電子ファインダ機能としてライブビューを実現できる。また、画像の表示と共に、もしくは画像を表示することなく、一眼レフカメラ10の各種設定に関する様々なメニュー項目も、表示制御部139の制御により表示部36に表示することができる。
【0024】
一眼レフカメラ10は、上記の画像処理における各々の要素も含めて、カメラシステム制御部130により直接的または間接的に制御される。カメラシステム制御部130は、システムメモリ132を備える。システムメモリ132は、電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリであり、例えばEEPROM(登録商標)等により構成される。システムメモリ132は、一眼レフカメラ10の動作時に必要な定数、変数、プログラム等を、一眼レフカメラ10の非動作時にも失われないように記録している。また、システムメモリ132は、撮影時における露出値を規定するプログラム線図を撮影モードごとに記録する。カメラシステム制御部130は、定数、変数、プログラム等を適宜内部メモリ138に展開して、一眼レフカメラ10の制御に利用する。
【0025】
カメラ本体30は、ユーザからの操作を受け付けるレリーズボタン35、十字キー37等の操作部材を複数備えているが、操作検出部144は、これら操作部材が操作されたことを検知してカメラシステム制御部130へ検出結果を出力する。カメラシステム制御部130は、検出された操作に応じた動作を実行する。
【0026】
カメラシステム制御部130は、レリーズボタン35の1段階目の押下げであるSW1のオンを検知することにより撮影準備動作であるAF、AE等を実行する。そして、カメラシステム制御部130は、レリーズボタン35の2段階目の押下げであるSW2のオンを検知することにより撮像素子133による被写体像の取得動作を実行する。
【0027】
カメラ本体30は、電源143から電力供給を受ける。電源制御部142は、電源143と通信して残電力の検出、電力供給の監視、給電を行う。電源143は、2次電池、家庭用AC電源等により構成される。また、交換レンズ20への給電は、レンズマウント接点121、カメラマウント接点131を介して行われる。
【0028】
測光センサ145は、ファインダ近傍に設けられ、被写体の明るさを検知する。露出制御部146は、測光センサ145が検知した測光データを解析して露出値を算出する。露出制御部146は、算出した露出値に従って、カメラシステム制御部130を介してレンズシステム制御部120へ絞り25の制御信号を出力する。また、露出制御部146は、露出値に従ってISO感度に対応する読み出しゲインを設定する制御信号を撮像素子133へ出力する。さらに、露出制御部146は、シャッタ速度を設定する制御信号をシャッタ134へ出力する。
【0029】
露出制御部146は、ユーザが選択した撮影モードに応じて、システムメモリ132から後述するプログラム線図を取得する。そして、露出制御部146は、プログラム線図を参照して露出値を算出する。
【0030】
フォーカス制御部147は、ユーザの設定により、位相差AF方式またはコントラストAF方式を切り替えてオートフォーカスの制御を実行し、カメラシステム制御部130を介してレンズシステム制御部120へフォーカスレンズ23の駆動制御信号を出力する。
【0031】
ズーム制御部148は、ユーザによるシーソースイッチ41の操作に応じて、ズーム処理を実行する。具体的には、ユーザがシーソースイッチ41を操作してズーム指示をすると、ズーム制御部148は、ズームレンズ24の駆動制御信号をレンズシステム制御部120へ出力し、ズームレンズ24の駆動による光学ズームを実行する。また、ズーム制御部148は、光学ズームが最大倍率になった状態でさらにユーザがシーソースイッチ41を操作してズーム指示をすると、ズームレンズ24の駆動を停止し、画像処理部136と協働して画像処理による電子ズームを実行する。
【0032】
図4は、撮像素子の撮像範囲を説明する図であり、カメラマウント31側から光軸11に沿って撮像素子133を臨む図である。撮像範囲は、撮像素子133の複数の画素のうち撮像すべき画素の範囲である。本実施形態において、撮像範囲として3つの画素範囲が予め規定されている。
【0033】
第1の撮像範囲は、撮像素子133の有効画素領域の画素範囲である。本実施形態において、撮像素子133の有効画素領域の画素範囲は、35mm版フィルムのサイズと同程度の36mm×24mm、対角線長約43mmである。この有効画素領域の画素範囲をFXサイズと表す。
【0034】
第2の撮像範囲は、FXサイズより小さいAPS版フィルムのCサイズと同程度の24mm×16mm、対角線長約29mmで構成される第1画素範囲151である。この第1画素範囲151をDXサイズと表す。第3の撮像範囲は、DXサイズより小さい17.3m×13mm、対角線長約21.6mmで構成される第2画素範囲152である。この第2画素範囲152をBXサイズと表す。
【0035】
ユーザは、第1の撮像範囲、第2の撮像範囲および第3の撮像範囲のうちから、画像処理部136が生成する画像データに対応する撮像素子133の画素の範囲を決定することができる。本実施形態において、ユーザが決定した撮像範囲に対応する撮像素子133の画素の範囲を選択画素範囲という。具体的には、カメラシステム制御部130は、図2の撮像範囲設定のメニュー画面でラジオボタン40をオンにした撮像範囲を選択画素範囲として選択する。
【0036】
撮像素子133が選択画素範囲の被写体像を光電変換することにより、画像処理部136は選択画素範囲に対応する画像データを生成することができる。また、画像処理部136は、A/D変換器135が出力した画像データのうち選択画素範囲に対応する画像データをクロップするようにしてもよい。
【0037】
次に、選択画素範囲と撮影画像のボケ具合の関係について説明する。図5は、被写界深度を説明する図である。被写界深度とは、観察される撮影画像においてピントが合っているように判断される被写体の奥行きの範囲である。被写界深度Tは、前方被写界深度Tfおよび後方被写界深度Trを用いて以下の式で表される。Tf=δFL2/(f2+δFL)・・・[1]、Tr=δFL2/(f2−δFL)・・・[2]、T=Tf+Tr=δFL2/(f2+δFL)+δFL2/(f2−δFL)・・・[3]。なお、δ:許容錯乱円径、F:絞り値、L:撮影距離、f:焦点距離である。
【0038】
被写界深度Tの範囲内の点光源から放射された光は、撮像素子133の受光面では許容錯乱円径δ以内の直径を持つ円として結像する。許容錯乱円径δは、撮影画像として観察されたときに点と視認されうる、受光面上における最大の大きさを持つ錯乱円の直径である。許容錯乱円径δは、一般的には選択画素範囲の対角線長Dを定数1000〜1500で割った値が用いられる。したがって、許容錯乱円径δは選択画素範囲の対角線長Dに比例する。
【0039】
同じ画角で撮影する場合、焦点距離fは選択画素範囲の対角線長Dに比例する。例えば、選択画素範囲がDXサイズであって焦点距離f=50mmである場合の画角は、選択画素範囲がFXサイズであって焦点距離f=50mm×(DXサイズに対するFXサイズの対角線長比1.5)=75mmである場合の画角と同等である。
【0040】
このように許容錯乱円径δおよび焦点距離fは、選択画素範囲の対角線長Dに比例する。この比例関係をδ=aD、f=bDで表し上述の式[3]に代入すると、被写界深度Tは以下の式で表される。T=aFL2/(b2D+aFL)+aFL2/(b2D−aFL)・・・[4]。
【0041】
したがって、絞り値Fおよび撮影距離Lを一定にして同等の画角で撮影する場合、被写界深度Tは、選択画素範囲の対角線長Dが短い、すなわち選択画素範囲が小さいほど深くなる。被写界深度Tが深くなるとピントが合っているように観察される奥行きの範囲が広がりボケが少なくなる。そのため、絞り値Fおよび撮影距離Lを一定にし且つ画角が同等となるように焦点距離fを調整して撮影する場合、選択画素範囲が小さい撮影画像は、選択画素範囲が大きい撮影画像と比べてボケが少ない。
【0042】
ここで、絞り値Fを、許容錯乱円径δおよび焦点距離fと同様に、選択画素範囲の対角線長Dに比例させる。この比例関係をF=cDで表し上述の式[4]に代入すると、被写界深度Tは以下の式で表される。T=acL2/(b2+acL)+acL2/(b2−acL)・・・[5]。
【0043】
式[5]からわかるように、被写界深度Tは、撮影距離Lが一定であれば選択画素範囲の対角線長比Dが変わっても一定となる。したがって、撮影距離Lを一定にして絞り値Fを対角線長Dに比例させ且つ画角が同等となるように焦点距離fを調整して撮影すれば、選択画素範囲が小さい撮影画像と選択画素範囲が大きい撮影画像とは同等のボケ具合となる。
【0044】
図6は、撮影距離L=3000mmの場合の被写界深度の一例を示す図である。上述の許容錯乱円径δの定数1000〜1500を満たす値を用いて、FXサイズの許容錯乱円径δを0.03mm、DXサイズの許容錯乱円径δを0.02mm、BXサイズの許容錯乱円径δを0.015mmとする。
【0045】
図6の表において、選択画素範囲がFXサイズである場合における3つの状態を第1列161、第2列162および第3列163で示す。第1列161の下端の値は、焦点距離f=50mm、絞り値F=5.6である場合の被写界深度Tを示す。第2列162の下端の値は、焦点距離f=75mm、絞り値F=5.6である場合の被写界深度Tを示す。第3列163の下端の値は、焦点距離f=100mm、絞り値F=5.6である場合の被写界深度Tを示す。
【0046】
また、図6の表において、選択画素範囲がDXサイズである場合における2つの状態を第4列164および第5列165で示す。第4列164の下端の値は、焦点距離f=50mm、絞り値F=5.6である場合の被写界深度Tを示す。第5列165の下端の値は、焦点距離f=50mm、絞り値F=3.8である場合の被写界深度Tを示す。
【0047】
さらに、図6の表において、選択画素範囲がBXサイズである場合における2つの状態を第6列166および第7列167で示す。第6列166の下端の値は、焦点距離f=50mm、絞り値F=5.6である場合の被写界深度Tを示す。第7列167の下端の値は、焦点距離f=50mm、絞り値F=2.8である場合の被写界深度Tを示す。
【0048】
ここで、第2列162の状態での撮影画像と第4列164の状態での撮影画像とを比較する。上述のように、選択画素範囲がDXサイズであって焦点距離f=50mmである場合の画角は、選択画素範囲がFXサイズであって焦点距離f=75mmである場合の画角と同等である。そのため、第2列162の状態での撮影範囲は第4列164の状態での撮影範囲と同等である。第2列162の状態での絞り値Fおよび第4列164の状態での絞り値Fは共に5.6であることから、第4列164の状態での被写界深度Tは第2列162の状態での被写界深度Tよりも深い。したがって、第4列164の状態で撮影した画像は、第2列162の状態で撮影した画像と比べると、撮影範囲は同等であるがボケが少ない。
【0049】
次に、第4列164の状態での絞り値F=5.6をFXサイズに対するDXサイズの対角線長比0.67を掛けた3.8を絞り値Fとした第5列165の状態での撮影画像と第2列162の状態での撮影画像とを比較する。上述のように、選択画素範囲がDXサイズであって焦点距離f=50mmである場合の画角は、選択画素範囲がFXサイズであって焦点距離f=75mmである場合の画角と同等である。そのため、第2列162の状態での撮影範囲は第5列165の状態での撮影範囲と同等である。絞り値Fを対角線長に比例させたことにより、第2列162の状態での被写界深度Tと第5列165の状態での被写界深度Tは同等となる。したがって、第5列165の状態で撮影した画像は、第2列162の状態で撮影した画像と比べると、撮影範囲もボケ具合も同等となる。
【0050】
第2列162の状態での被写界深度Tおよび第5列165の被写界深度Tのように両方の撮影画像の被写界深度が完全に一致していない場合、被写界深度の差が予め定められた許容範囲に収まっていれば、両方の撮影画像のボケ具体が同等であるとしてもよい。許容範囲は、例えば基準となる一方の撮影画像の被写界深度の5パーセントに規定してもよい。
【0051】
選択画素範囲がBXサイズである場合も同様である。第3列163の状態での撮影画像と第6列166の状態での撮影画像とを比較する。選択画素範囲がBXサイズであって焦点距離f=50mmである場合の画角は、選択画素範囲がFXサイズであって焦点距離f=50mm×BXサイズに対するFXサイズの対角線長比2=100mmである場合の画角と同等である。そのため、第3列163の状態での撮影範囲は第6列166の状態での撮影範囲と同等である。第3列163の状態での絞り値Fおよび第6列166の状態での絞り値Fは共に5.6であることから、第6列166の状態での被写界深度Tは第3列163の状態での被写界深度Tよりも深い。したがって、第6列166の状態で撮影した画像は、第3列163の状態で撮影した画像と比べると、撮影範囲は同等であるがボケが少ない。
【0052】
次に、第6列166の状態での絞り値F=5.6をFXサイズに対するBXサイズの対角線長比0.5を掛けた2.8を絞り値Fとした第7列167の状態での撮影画像と第3列163の状態での撮影画像とを比較する。上述のように、選択画素範囲がBXサイズであって焦点距離f=50mmである場合の画角は、選択画素範囲がFXサイズであって焦点距離f=100mmである場合の画角と同等である。そのため、第3列163の状態での撮影範囲は第7列167の状態での撮影範囲と同等である。絞り値Fを対角線長に比例させたことにより、第3列163の状態での被写界深度Tと第7列167の状態での被写界深度Tは同等となる。したがって、第7列167の状態で撮影した画像は、第3列163の状態で撮影した画像と比べると、撮影範囲もボケ具合も同等となる。
【0053】
本実施形態における露出制御について説明する。図7はプログラムモードのプログラム線図を示す。プログラム線図は、撮影モードに応じて撮影時の露出値を規定する。露出値は、絞り値とシャッタ速度とISO感度との組み合わせで規定される。なお、本実施形態におけるプログラム線図はISO100の場合である。プログラムモードは、絞り値Fとシャッタ速度を自動的に設定する撮影モードである。
【0054】
図7のグラフにおいて、縦軸は絞り値F、横軸はシャッタ速度、斜線は被写体の明るさを示す値であるEVを指す。本実施形態に係る一眼レフカメラ10の絞り値Fの下限値は1.4、上限値は16である。また、本実施形態に係る一眼レフカメラ10のシャッタ速度の上限値は1/8000秒、下限値は30秒である。図7の実線で示される線図は、撮像素子133の有効画素領域の画素範囲であるFXサイズに応じて予め規定された基準プログラム線図である。基準プログラム線図はシステムメモリ132に記録されている。
【0055】
プログラムモードが撮影モードとして選択されている場合、まず、露出制御部146は、この基準プログラム線図をシステムメモリ132から読み出す。次に、露出制御部146は、測光センサ145が検知した測光データを解析してEVを算出し、図7のグラフにおいて算出したEVと基準プログラム線図との交点の絞り値およびシャッタ速度を抽出する。そして、露出制御部146は、抽出した絞り値およびシャッタ速度で絞り25およびシャッタ134をそれぞれ動作させる制御信号を出力して露出制御を実行する。
【0056】
例えば、EVが12の場合、図7のグラフにおいてEVが12であることを示す斜線と基準プログラム線図との交点の絞り値F=5.6、シャッタ速度1/125秒が選択される。そして、露出制御部146は、絞り25の絞り値を5.6に設定する制御信号およびシャッタ134のシャッタ速度を1/125秒に設定する制御信号を出力する。
【0057】
普段FXサイズを選択画素範囲として選択してプログラムモードで撮影するユーザは、上述の基準プログラム線図に応じた露出値で撮影されたFXサイズの撮影画像のボケ具合を認識している。このユーザが望遠効果を狙って、選択画素範囲をFXサイズからDXサイズに変更してプログラムモードで撮影する場面を想定する。選択画素範囲に関わらず基準プログラム線図を用いると、選択画素範囲がFXサイズからDXサイズに変更してもEVが同じ値であれば絞り値Fも同じ値になる。例えば、図7に示すように、EVが12であれば絞り値FはFXサイズであってもDXサイズであっても5.6である。
【0058】
そのため、図5および図6を用いて説明したように、DXサイズの撮影画像の被写界深度は、このDXサイズの撮影画像と同等の画角となるFXサイズの撮影画像の被写界深度より深くなる。したがって、普段FXサイズを選択画素範囲として選択してプログラムモードで撮影するユーザは、このDXサイズの撮影画像のボケ具合は自身が意図していたものと違っているように感じる。
【0059】
そこで、DXサイズが選択画素範囲として選択されている場合、露出制御部146は、基準プログラム線図をシフトし、シフトしたプログラム線図を用いる。具体的には、露出制御部146は、絞り値FがFXサイズに対するDXサイズの対角線長比0.67を掛けた値になるように基準プログラム線図をシフトする。図7の破線で示された線図は、DXサイズが選択画素範囲として選択されている場合に用いられるプログラム線図である。DXサイズが選択画素範囲として選択されている場合に用いられるプログラム線図をDXプログラム線図と称する。
【0060】
選択画素範囲がFXサイズの場合に上述の基準プログラム線図を用い、選択画素範囲がDXサイズの場合に上述のDXプログラム線図を用いると、EVが同じ値の場合に絞り値Fは選択画素範囲の対角線長Dに比例した値となる。また、プログラム線図に応じて、絞り値Fに対応するシャッタ速度が選択される。例えば、図7に示すように、EVが12の場合、選択画素範囲がFXサイズであれば絞り値F=5.6、シャッタ速度=1/125秒が選択され、選択画素範囲がDXサイズであれば絞り値F=5.6×0.67=3.8、シャッタ速度=1/300秒が選択される。なお、絞り値が離散的に規定されている場合において、プログラム線図に応じて選択された絞り値Fが離散的な規定値と一致しないときには、選択された絞り値Fの近傍に存在する離散的な規定値が絞り値Fとして代わりに用いられる。
【0061】
そのため、図5および図6を用いて説明したとおり、DXサイズの撮影画像の被写界深度は、このDXサイズの撮影画像と同等の画角となるFXサイズの撮影画像の被写界深度と同等となる。したがって、普段FXサイズを選択画素範囲として選択してプログラムモードで撮影するユーザは、このDXサイズの撮影画像のボケ具合は自身が意図していたものと同等であり違和感を覚えない。
【0062】
同様に、BXサイズが選択画素範囲として選択されている場合、露出制御部146は、絞り値FがFXサイズとBXサイズの対角線長比0.5を掛けた値になるように基準プログラム線図をシフトする。図7の点線で示されたプログラム線図が、BXサイズが選択画素範囲として選択されている場合に用いられるプログラム線図である。BXサイズが選択画素範囲として選択されている場合に用いられるプログラム線図をBXプログラム線図と称する。
【0063】
選択画素範囲がFXサイズの場合に上述の基準プログラム線図を用い、選択画素範囲がBXサイズの場合に上述のBXプログラム線図を用いることにより、上述のDXサイズの場合と同様に、BXサイズの撮影画像の被写界深度は、このBXサイズの撮影画像と同等の画角となるFXサイズの撮影画像の被写界深度と同等となる。したがって、普段FXサイズを選択画素範囲として選択してプログラムモードで撮影するユーザは、このBXサイズの撮影画像のボケ具合は自身が意図していたものと同等であり違和感を覚えない。
【0064】
選択画素範囲がFXサイズの場合に上述の基準プログラム線図を用い、選択画素範囲がBXサイズの場合に上述のBXプログラム線図を用いると、EVが同じ値の場合に絞り値Fは選択画素範囲の対角線長Dに比例した値となる。また、プログラム線図に応じて、絞り値Fに対応するシャッタ速度が選択される。例えば、図7に示すように、EVが12の場合、選択画素範囲がFXサイズであれば絞り値F=5.6、シャッタ速度=1/125秒が選択され、選択画素範囲がBXサイズであれば絞り値F=5.6×0.5=2.8、シャッタ速度=1/500秒が選択される。
【0065】
なお、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトすると絞り値Fの下限値1.4を下回る箇所が存在する場合には、当該箇所を下限値1.4に規定する。図7のDXプログラム線図においてEVが約6.7以下の箇所およびBXプログラム線図においてEVが8以下の箇所が下限値1.4に規定される。また、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトするとシャッタ速度の上限値1/8000秒を超える箇所が存在する場合には、当該箇所を上限値1/8000秒に規定する。図7のBXプログラム線図においてEVが20以上の箇所が上限値1/8000秒に規定される。
【0066】
上述の図7の実施例において、露出制御部146は、ISO感度を一定にし、プログラム線図の絞り値Fのシフトに伴いシャッタ速度をシフトさせたが、ISO感度を変更することもできる。具体的には、露出制御部146は、シャッタ速度を一定にし、絞り値Fのシフトに伴いISO感度をシフトさせる。例えば、露出制御部146は、シャッタ速度を1/125秒にし、絞り値Fを5.6から4にシフトさせるのに伴い、ISO感度を100から50にシフトさせる。
【0067】
また、露出制御部146は、プログラム線図の絞り値Fのシフトに伴いシャッタ速度およびISO感度の双方をシフトさせることもできる。例えば、露出制御部146は、絞り値Fを5.6から4にシフトさせるのに伴い、シャッタ速度を1/125秒から1/60秒にシフトするとともにISO感度を100から25にシフトさせる。
【0068】
図8は、ポートレートモードにおけるプログラム線図を示す。ポートレートモードは、背景をぼかして被写体を引き立たせるように、絞り値Fを小さく設定する撮影モードである。上述の図7の実施例と同様に、実線で示される基準プログラム線図をシフトして破線で示されるDXプログラム線図および点線で示されるBXプログラム線図が規定される。なお、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトするとシャッタ速度の上限値1/8000秒を超える箇所が存在する場合には、当該箇所を上限値1/8000秒にする。図8のDXプログラム線図においてEVが約14.7以上の箇所およびBXプログラム線図においてEVが14以上の箇所が上限値1/8000秒に規定される。
【0069】
図9は、スポーツモードにおけるプログラム線図を示す。スポーツモードは、動いている被写体でもブレにくいように、シャッタ速度を高速寄りに設定する撮影モードである。上述の図7の実施例と同様に、実線で示される基準プログラム線図をシフトして破線で示されるDXプログラム線図および点線で示されるBXプログラム線図が規定される。なお、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトすると絞り値Fの下限値1.4を下回る箇所が存在する場合には、当該箇所を下限値1.4に規定する。図9のDXプログラム線図においてEVが約11.4以下の箇所およびBXプログラム線図においてEVが約12.4以下の箇所が下限値1.4に規定される。
【0070】
また、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトするとシャッタ速度の上限値1/8000秒を超える箇所が存在する場合には、当該箇所を上限値1/8000秒にする。図9のDXプログラム線図においてEVが約19.2以上の箇所およびBXプログラム線図においてEVが17以上の箇所が上限値1/8000秒に規定される。
【0071】
図10は、風景モードにおけるプログラム線図を示す。風景モードは、近くから遠くまでピントが合うように、絞り値Fを大きく設定する撮影モードである。上述の図7の実施例と同様に、実線で示される基準プログラム線図をシフトして破線で示されるDXプログラム線図および点線で示されるBXプログラム線図が規定される。なお、露出制御部146は、基準プログラム線図をそのままシフトするとシャッタ速度の上限値1/8000秒を超える箇所が存在する場合には、当該箇所を上限値1/8000秒にする。図10のDXプログラム線図においてEVが約19.6以上の箇所およびBXプログラム線図においてEVが18.6以上の箇所が上限値1/8000秒に規定される。
【0072】
図11は、本実施形態の撮影処理フローを示す。本フローは、例えば、カメラ本体30の電源がオンにされたときに開始される。本実施形態において、露出制御部146がカメラシステム制御部130と協働して本フローの処理を実行する。
【0073】
ステップS101では、露出制御部146は、ユーザが選択した撮影モードの情報を取得する。撮影モードは上述のプログラムモード、ポートレートモード、スポーツモード、風景モード等である。カメラシステム制御部130は、ユーザが選択した撮影モードを検知し、撮影モードの情報をシステムメモリ132に格納する。そして、露出制御部146はシステムメモリ132から撮影モードの情報を取得する。ステップS102では、露出制御部146は、撮影モードに対応するプログラム線図をシステムメモリ132から取得する。例えば、露出制御部146は、プログラムモードが撮影モードとして選択されている場合に、図7を用いて説明した基準プログラム線図を取得する。
【0074】
ステップS103では、露出制御部146は、ユーザが選択した撮影モードがプログラム線図のシフトを禁止するモードであるか否かを判断する。具体的には、露出制御部146は、ユーザが絞り値Fを手動で決定するマニュアル露出モードおよび絞り優先モードをプログラム線図のシフトを禁止するモードと判断する。撮影モードがプログラム線図のシフトを禁止するモードである場合にはステップS108に移行し、プログラム線図のシフトを禁止するモードでない場合にはステップS104に移行する。
【0075】
ステップS104では、カメラシステム制御部130は、ユーザの操作に従って、画像処理部136が生成する画像データに対応する撮像素子133の画素の範囲を選択画素範囲として選択する。例えば、カメラシステム制御部130は、図2の撮像範囲設定のメニュー画面でユーザがラジオボタン40をオンにした撮像範囲を選択画素範囲として選択する。
【0076】
ステップS105において、露出制御部146は、選択画素範囲が基準画素範囲であるか否かを判断する。基準画素範囲は、ステップS102で取得したプログラム線図に対応する画素範囲である。例えば、図7を用いて説明した基準プログラム線図が取得された場合には、FXサイズが基準画素範囲となる。選択画素範囲が基準画素範囲である場合にはステップS108へ移行し、選択画素範囲が基準画素範囲でない場合にはステップS106に移行する。
【0077】
ステップS106では、露出制御部146は、ステップS102で取得したプログラム線図のシフト量を算出する。例えば、図7を用いて説明したように、露出制御部146は、基準画素範囲に対する選択画素範囲の対角線長比を算出する。そして、ステップS107では、露出制御部146は、ステップS106で算出したシフト量を用いてステップS102で取得したプログラム線図をシフトさせる。例えば、図7で説明したように、露出制御部146は、基準画素範囲に対する選択画素範囲の対角線長比を絞り値Fに掛けて基準プログラム線図をシフトさせる。
【0078】
ステップS108では、カメラシステム制御部130は、レリーズボタン35の1段階目の押下げであるSW1がオンになったか否かを検知する。SW1がオンになるまでステップS108で待機し、SW1のオンを検知した場合、ステップS109に移行する。
【0079】
ステップS109では、露出制御部146は、測光センサ145が検知した測光データを取得する。そして、ステップS110では、露出制御部146は、測光データおよびプログラム線図に応じて撮影時の露出値を決定する。この場合、露出制御部146は、ステップS107でプログラム線図がシフトされた場合にはシフト後のプログラム線図を用いる。露出値の決定処理の詳細は図7で説明したとおりである。
【0080】
ステップS111では、カメラシステム制御部130は、レリーズボタン35の2段階目の押下げであるSW2がオンになったか否かを検知する。SW2のオンを検知した場合、ステップS109に移行する。SW1のオンを検知してから一定時間内、例えば数秒以内にSW2のオンを検知しなかった場合にはステップS114に移行する。
【0081】
ステップS112では、露出制御部146は、ステップS110で決定した露出値に応じて露出制御を実行する。露出制御処理の詳細は図7を用いて説明したとおりである。ステップS113では、画像処理部136は、撮像素子133の出力をA/D変換器135を介して取得し、規格化された画像フォーマットの画像データに変換する。そして、画像処理部136で処理された画像データは記録部141に記録される。
【0082】
ステップS114では、カメラシステム制御部130は、ユーザが撮影モードを変更したか否かを判断する。例えば、カメラシステム制御部130は、ユーザが撮影モードのメニュー画面で別の撮影モードを選択したか否かを判断する。ユーザが撮影モードを変更した場合にはステップS102に移行し、ユーザが撮影モードを変更していない場合にはステップS115に移行する。ステップS115では、カメラシステム制御部130は、カメラ本体30の電源がオフになったか否かを判断する。カメラ本体30の電源がオンのままである場合にはステップS104に移行し、カメラ本体30の電源がオフになった場合には本フローを終了する。
【0083】
上記の実施形態において、FXサイズ、DXサイズおよびBXサイズの3つの撮像範囲のうちから画像処理部136が生成する画像データに対応する撮像素子133の画素の範囲を選択するがこれに限らない。ユーザが撮像素子133の有効画素領域における任意の画素範囲を上述の選択画素範囲として指定できるようにしてもよい。この場合、露出制御部146は、ユーザが指定した画素範囲の対角線長Dを算出し、上述のように露出値を決定する。
【0084】
また、カメラシステム制御部130は、電子ズームで切り取った画像データに対応する撮像素子133の画素の範囲を上述の選択画素範囲として選択してもよい。具体的には、ユーザによるシーソースイッチ41のズーム指示に応じて、ズーム制御部148は、カメラシステム制御部130を介してズームレンズ24を駆動して光学ズームを実行する。そして、ズーム制御部148は、光学ズームが最大倍率になった状態でさらにシーソースイッチ41のズーム指示がなされると、ズームレンズ24の駆動を停止して電子ズームを開始する。
【0085】
電子ズームは、撮像素子133の中央部の画素に対応する画像データを切り取って補間拡大する。カメラシステム制御部130は、ユーザの電子ズームの指示が完了した場合に、電子ズームで切り取られた画像領域に対応する撮像素子133の画素の範囲を上述の選択画素範囲として選択する。そして、露出制御部146は、この画素範囲の対角線長Dを算出し、上述のように露出値を決定する。
【0086】
また、上記の実施形態において、ユーザがDXサイズまたはBXサイズを選択画素範囲として選択して撮影した場合、カメラシステム制御部130は、プログラム線図のシフトに関する情報を撮影画像データに関連付けて記録部141に記録してもよい。例えば、上述した図6の第5列165の状態で撮影した場合、「FX換算:焦点距離f=75mm、絞り値F=5.6相当」の情報が撮影画像データに関連付けられる。なお、プログラム線図のシフトに関する情報は、記録部141に記録される撮影情報に含まれていてもよく、また撮影情報とは別のフォーマットで記録部141に記録されてもよい。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0088】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0089】
10 一眼レフカメラ、11 光軸、12、13 矢印、20 交換レンズ、21 レンズマウント、22 レンズ指標、23 フォーカスレンズ、24 ズームレンズ、25 絞り、30 カメラ本体、31 カメラマウント、32 ボディ指標、33 ロックピン、34 着脱ボタン、35 レリーズボタン、36 表示部、37 十字キー、38 決定ボタン、39 アクティブフレーム、40 ラジオボタン、41 シーソースイッチ、120 レンズシステム制御部、121 レンズマウント接点、122 モータ駆動回路、123 絞り駆動回路、130 カメラシステム制御部、131 カメラマウント接点、132 システムメモリ、133 撮像素子、134 シャッタ、135 A/D変換器、136 画像処理部、137 メモリ制御部、138 内部メモリ、139 表示制御部、140 外部機器IF、141 記録部、142 電源制御部、143 電源、144 操作検出部、145 測光センサ、146 露出制御部、147 フォーカス制御部、148 ズーム制御部、151 第1画素範囲、152 第2画素範囲、161 第1列、162 第2列、163 第3列、164 第4列、165 第5列、166 第6列、167 第7列
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が2次元的に配列された撮像素子と、
前記複数の画素から、生成する画像データに対応する画素の範囲を選択画素範囲として選択する選択部と、
前記選択部によって選択された当該選択画素範囲に基づいて、撮像時における露出値を規定するプログラム線図をシフトする制御部と
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の画素における基準画素範囲に応じて規定されている前記プログラム線図を、前記基準画素範囲と前記選択画素範囲の対角線長比に基づいてシフトする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、同一画角に換算したときに、前記基準画素範囲で撮影した場合の被写界深度と、前記選択画素範囲で撮影した場合の被写界深度との差が、予め定められた許容範囲に収まるように絞り値を決定する請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記プログラム線図における絞り値のシフトに伴って、シャッタ速度およびISO感度の少なくとも一方をシフトさせる請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、設定されている撮影モードに基づいて、前記プログラム線図をシフトするか否かを決定する請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記選択部は、ユーザによるズーム指示に基づいて前記選択画素範囲を選択する請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記プログラム線図のシフトに関する情報を、生成する前記画像データに関連付ける情報付与部を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
複数の画素が2次元的に配列された撮像素子を備える撮像装置の制御プログラムであって、
前記複数の画素から、生成する画像データに対応する画素の範囲を選択画素範囲として選択する選択ステップと、
前記選択ステップによって選択された当該選択画素範囲に基づいて、撮像時における露出値を規定するプログラム線図をシフトする制御ステップと
をコンピュータに実行させる撮像装置の制御プログラム。
【請求項1】
複数の画素が2次元的に配列された撮像素子と、
前記複数の画素から、生成する画像データに対応する画素の範囲を選択画素範囲として選択する選択部と、
前記選択部によって選択された当該選択画素範囲に基づいて、撮像時における露出値を規定するプログラム線図をシフトする制御部と
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の画素における基準画素範囲に応じて規定されている前記プログラム線図を、前記基準画素範囲と前記選択画素範囲の対角線長比に基づいてシフトする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、同一画角に換算したときに、前記基準画素範囲で撮影した場合の被写界深度と、前記選択画素範囲で撮影した場合の被写界深度との差が、予め定められた許容範囲に収まるように絞り値を決定する請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記プログラム線図における絞り値のシフトに伴って、シャッタ速度およびISO感度の少なくとも一方をシフトさせる請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、設定されている撮影モードに基づいて、前記プログラム線図をシフトするか否かを決定する請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記選択部は、ユーザによるズーム指示に基づいて前記選択画素範囲を選択する請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記プログラム線図のシフトに関する情報を、生成する前記画像データに関連付ける情報付与部を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
複数の画素が2次元的に配列された撮像素子を備える撮像装置の制御プログラムであって、
前記複数の画素から、生成する画像データに対応する画素の範囲を選択画素範囲として選択する選択ステップと、
前記選択ステップによって選択された当該選択画素範囲に基づいて、撮像時における露出値を規定するプログラム線図をシフトする制御ステップと
をコンピュータに実行させる撮像装置の制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−90146(P2013−90146A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229009(P2011−229009)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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