説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】広い視野及び広い撮像域をもつ撮像装置において、被写体中の検体の光軸方向の位置のばらつきに起因する画像のぼけを抑制し、高品質な画像を取得する。
【解決手段】撮像装置が、検体のZ位置のばらつきに応じて撮像領域の広さを適応的に制御する。具体的には、検体のZ位置のばらつきが小さい場合は撮像領域を広く、検体のZ位置のばらつきが大きい場合は撮像領域を狭くする。あるいは、検体のZ位置のばらつきが小さい場合は使用する撮像素子を多くし、検体のZ位置のばらつきが大きい場合は使用する撮像素子を少なくする。あるいは、検体のZ位置のばらつきが小さい場合は撮像域の広い撮像素子を使用し、検体のZ位置のばらつきが大きい場合は撮像域の狭い撮像素子を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮像してディジタル画像を生成する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体を分割して撮像し、得られた複数の部分画像をつなぎ合わせて被写体全体の合成画像を生成する撮像装置が知られている。例えば特許文献1には、撮影範囲の中央部のピントを被写体に合わせ、カメラの角度を変えながら順次撮像を行う方式の画像読み取り装置が開示されている。この方式では、カメラの光軸が平面である被写体に対し斜めの状態のときに、撮影範囲の端部においてピントが外れ、画像がぼけてしまうという問題がある。そこで特許文献1の画像読み取り装置では、カメラの角度ごとに撮影範囲の両端におけるカメラから被写体平面までの距離の差を求め、その差の半分が焦点深度より小さくなるように撮影範囲を分割する、という構成を採用している。また、特許文献2には、ディジタル顕微鏡装置において、分割して撮像した複数の画像をつなぎ合わせて広範囲の顕微鏡画像を生成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−196315号公報
【特許文献2】特開2009−104161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高解像及び広範囲のディジタル画像を生成する撮像装置においては、被写体の撮像及び画像生成に要する時間の短縮が課題となる。特に、ディジタル顕微鏡装置のように診断や分析に用いられる撮像装置にあっては、大量の被写体(プレパラート等)の撮像をバッチ的に処理する場合もあり、処理時間の短縮及びスループットの向上が強く望まれる。そこで本発明者は、撮像及び画像生成の高速化のために、広視野の光学系と広い撮像域を持つ撮像素子とを用いることによって、撮像回数(分割数)をできるだけ減らすことを企図している。撮像回数が減ることで、撮像処理に要する時間はもちろんのこと、画像合成等の画像処理に要する時間も短縮でき、全体的なスループットの向上を図ることが期待できる。しかしながら、光学系の視野及び撮像素子の撮像域を広くすると、以下に述べるような画像品質の低下(画像のぼけ)の問題が発生することが分かった。
【0005】
被写体上の検体は一つの平面上に存在することが理想であるが、実際には、プレパラートやカバーグラスのゆがみ等によって、検体の光軸方向(以降、Z軸方向とも記載する)の位置はばらついている。ただ、従来の撮像装置では、視野が狭いため、検体の光軸方向の位置が多少ばらついていたとしても、この狭い視野内で検体が被写界深度から外れることはほとんどない。特許文献2の段落0007にも、狭い視野の中では、プレパラートの厚さのばらつきは問題とならないことが記載されている。このように、従来は、検体の光軸方向の位置ばらつきを特に意識しなくても、十分な品質の画像を取得することができていた。
【0006】
これに対し、本発明者が研究開発している撮像装置は、従来装置に比べて視野及び撮像域が広い。そうすると、検体の光軸方向の位置ばらつきが大きなプレパラートを撮像する場合に、一部の検体が被写界深度から外れてしまい、画像の一部にぼけが発生してしまうのである。処理時間短縮のため撮像域の広い撮像素子を使用するほど、また検体の光軸方向の位置ばらつきが大きいほど、この問題は顕著となる。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、広い視野及び広い撮像域をもつ撮像装置において、被写体中の検体の光軸方向の位置のばらつきに起因する画像のぼけを抑制し、高品質な画像を取得するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様は、被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像装置であって、撮像素子と、前記被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、前記撮像素子が一回の撮像で画像データを取得する範囲である撮像領域の広さと、前記撮像領域を撮像するときの合焦位置とを制御する撮像制御手段と、を有し、前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、前記撮像制御手段は、検体のZ位置のばらつきが小さい場合の撮像領域に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合の撮像領域の方が狭くなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて撮像領域の広さを決定する撮像装置を提供するものである。
【0009】
本発明の第二態様は、被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像装置であって、複数の撮像素子と、前記被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、撮像制御手段と、を有し、前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、前記撮像制御手段は、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に使用する撮像素子の数に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合に使用する撮像素子の数の方が少なくなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて使用する撮像素子の数を変化させる撮像装置を提供するものである。
【0010】
本発明の第三態様は、被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像装置であって、撮像域が異なる複数の撮像素子と、前記被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、撮像制御手段と、を有し、前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、前記撮像制御手段は、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に使用する撮像素子の撮像域に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合に使用する撮像素子の撮像域の方が狭くなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて使用する撮像素子を切り替える撮像装置を提供するものである。
【0011】
本発明の第四態様は、撮像素子と、被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、を有する撮像装置の制御方法であって、前記撮像素子が一回の撮像で画像データを取得する範囲である撮像領域の広さと、前記撮像領域を撮像するときの合焦位置とを決定する決定ステップと、前記決定ステップにおいて決定された撮像領域の広さ及び合焦位置で被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像ステップと、を有し、前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、前記決定ステップでは、検体のZ位置のばらつきが小さい場合の撮像領域に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合の撮像領域の方が狭くなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて撮像領域の広さを決定する撮像装置の制御方法を提供するものである。
【0012】
本発明の第五態様は、複数の撮像素子と、被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、を有する撮像装置の制御方法であって、撮像に使用する撮像素子を決定する決定ステップと、前記決定ステップにおいて決定された撮像素子を使用して被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像ステップと、を有し、前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、前記決定ステップでは、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に使用する撮像素子の数に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合に使用する撮像素子の数の方が少なくなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて使用する撮像素子の数を変化させる撮像装置の制御方法を提供するものである。
【0013】
本発明の第六態様は、撮像域が異なる複数の撮像素子と、被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、を有する撮像装置の制御方法であって、撮像に使用する撮像素子を決定する決定ステップと、前記決定ステップにおいて決定された撮像素子を使用して被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像ステップと、を有し、前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、前記決定ステップでは、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に使用する撮像素子の撮像域に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合に使用する撮像素子の撮像域の方が狭くなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて使用する撮像素子を切り替える撮像装置の制御方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、広い視野及び広い撮像域をもつ撮像装置において、被写体中の検体の光軸方向の位置のばらつきに起因する画像のぼけを抑制し、高品質な画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の撮像装置における撮像領域と被写界深度の一例を示す図。
【図2】本発明の撮像装置における撮像領域の一例を模式的に示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図。
【図4】第1実施形態の撮像装置の動作を示すフローチャート。
【図5】検体のZ位置の近似曲面と各撮像領域の合焦位置の一例を示す図。
【図6】(a)は従来例、(b)(c)は第1実施形態の撮像領域の例を示す図。
【図7】ラインセンサの撮像領域(主走査の幅)の一例を示す図。
【図8】第2実施形態の撮像装置の動作を示すフローチャート。
【図9】第2実施形態の撮像領域の例を示す図。
【図10】第3実施形態の撮像装置の動作を示すフローチャート。
【図11】(a)は従来例、(b)〜(d)は第4実施形態の撮像領域の例を示す図。
【図12】エリアセンサの撮像領域の一例を示す図。
【図13】第5実施形態のラインセンサを有する撮像装置の構成を模式的に示す図。
【図14】図13の撮像装置における撮像領域の例を示す図。
【図15】第5実施形態のエリアセンサを有する撮像装置の構成を模式的に示す図。
【図16】複数のエリアセンサを有する撮像ユニットの構成を模式的に示す図。
【図17】図15の撮像装置における撮像領域の例を示す図。
【図18】第6実施形態の撮像装置を説明するための図。
【図19】第6実施形態の撮像装置を説明するための図。
【図20】第7実施形態の撮像装置を説明するための図。
【図21】第8実施形態の撮像装置の構成を模式的に示す図。
【図22】プレパラートの構造を示す模式的な断面図。
【図23】狭い撮像域の撮像素子を用いた場合の撮像領域を模式的に示す図。
【図24】撮像域が狭い場合の検体のZ位置と被写界深度を説明する図。
【図25】広い撮像域の撮像素子を用いた場合の撮像領域を模式的に示す図。
【図26】撮像域が広い場合の検体のZ位置と被写界深度を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る撮像装置の好適な実施の形態について説明する。本発明は、プレパラート等の被写体を撮像してディジタル画像を生成する撮像装置において、検体のZ位置(光軸方向の位置)のばらつきに起因する画像のぼけを抑制し、高品質な画像を取得するための技術に関する。検体のZ位置のばらつきは、高倍率であるほど、
また広視野であるほど問題となる。それゆえ、本発明は、高倍率の結像光学系を有する撮像装置、更には、撮像対象領域を複数回に分けて分割撮像し、得られた複数の分割画像を合成して広範囲の全体画像を生成する撮像装置に好ましく適用できる。本発明に係る撮像装置は、例えば、病理診断や試料分析に利用されるディジタル顕微鏡装置等に好ましく適用することができる。
【0017】
(検体のZ位置)
初めに、検体のZ位置について説明する。撮像装置の座標系は、結像光学系(対物レンズ)の光軸と平行にZ軸をとり、光軸と垂直な平面上にX軸及びY軸をとる。撮像装置の結像光学系(対物レンズ)と照明系の間には、XY平面に平行なステージが設けられ、このステージ上に被写体となるプレパラートが配置される。
【0018】
プレパラートの構造の模式的な断面図を図22(a)、図22(b)に示す。図22(a)、図22(b)において、図面上方向は撮像装置の対物レンズの方向、図面下方向は照明系の方向であり、100はプレパラート、101はスライドグラス、102はカバーグラス、103は封入剤であり、104は検体である。封入剤103には、例えば天然樹脂や、近年は合成樹脂等が使われている。被写体であるプレパラート100には複数の検体104が含まれている。検体104は、例えば細胞や細菌等であり、観察しやすくするために必要に応じて染色などが施される。検体104は、プレパラートの作成方法によって、例えば図22(a)のように、カバーグラス102近傍に集中したり、図22(b)に示すようにスライドグラス101近傍に集中したり、他の場所に分布したりする。本明細書では、観測者が注視したい(つまり、撮像したい)検体104のZ方向の座標を「検体のZ位置」と呼ぶ。点線105は、プレパラート100中に存在する複数の検体104のZ位置を結んだ面を示している。一般に、検体のZ位置である点線105(以降、単に「検体のZ位置105」とも記す)は、図22(a)、図22(b)に示したように、カバーグラス102またはスライドグラス101の表面の凹凸(うねり)に沿った形状の曲面になることが多い。
【0019】
また、検体のZ位置105のばらつき(以降、単に「検体のZ位置のばらつき」とも記す)は、プレパラート100のスライドグラス101、カバーグラス102、封入剤103の種類やプレパラートの作成方法(プロセス)に関係する。図22(a)、図22(b)に示した検体のZ位置105は一例であり、検体の種類や、プレパラートのプロセス等により検体のZ位置やそのばらつきは異なり得る。
本発明の実施形態では、被写体の一例として、細胞診で用いる複数の検体(細胞)が樹脂で封入されたプレパラートについて説明する。ただし、本発明が対象とする被写体は、このような複数の検体が各々Z位置の異なる状態で形成されたプレパラートに限るものではない。すなわち、組織診と言われる様な、患者から摘出した組織を薄くスライスして樹脂で封入し作成したプレパラートにも本発明を好適に適用できる。この場合、スライスの仕方により検体は1つあるいは複数になるが、以下の説明における「検体のZ位置」を「検体のサンプル位置」と読み替えて、同じ処理を行えばよい。すなわち「検体のZ位置」は「検体のサンプル位置」と読み替え、「検体のZ位置ばらつき」は「検体のサンプル位置ばらつき」と読み替えればよい。また、好適なサンプル位置の決定方法として、検体のZ位置の変化の周波数に対して高いサンプリング周波数となる様なサンプル位置を選ぶと良い。言い換えれば検体のZ位置の一周期の変化の1/2より短いピッチでサンプル位置を
決定すると良い。
【0020】
(被写界深度と検体のZ位置のばらつき)
次に、被写界深度と検体のZ位置のばらつきについて説明する。ディジタル顕微鏡のような撮像装置においても、他の光学機器同様に、NAと被写界深度の関係がある。もちろんNAが大きいほど被写界深度が浅くなる。
【0021】
従来のディジタル顕微鏡では、結像光学系の視野、及び撮像素子の撮像域は非常に小さい。そのため、解像度を十分得るためにNAを大きくした場合であっても、この小さな撮像域内で検体のZ位置のばらつきが被写界深度を超えることはなかった。例えば、特許文献2の段落0007にも、狭い視野の中では、プレパラートの厚さのばらつきは問題とならないことが明記されている。言い換えれば、従来のディジタル顕微鏡においては、被写界深度内に全ての検体のZ位置が収まるように、プレパラート100が作られていたとも言える。
【0022】
本発明者が研究・開発を行っている撮像装置は、プレパラート100と撮像素子の相対位置を変えながら複数回の撮像を行い、得られた複数の分割画像(部分画像)を合成して高解像かつ広範囲の合成画像(全体画像)を生成する機能を有する。そして、撮像処理及び画像合成処理に要する時間を短縮するため、本発明者は、撮像素子の撮像域を広くすることによって、撮像回数を少なくすることを考えている。しかしながら、撮像する領域を広くするほど、それに応じて検体のZ位置の最大値と最小値の差が大きくなり、一部の検体が被写界深度から外れてしまう可能性が高くなる。そうすると、従来は問題にならなかった検体のZ位置のばらつきが原因となって、画像の一部にぼけが発生するおそれがある。
【0023】
このような問題を避けるために、例えば、結像光学系のNAを小さくし被写界深度を深くするという方法も考えられる。しかしNAを小さくすると、解像度が低下する問題が生じる。高解像度で広範囲の合成画像を得るためには、NAを小さくする方法は不適である。したがって、本発明者は、NAを小さくすることなく、検体のZ位置のばらつきによる画像のぼけを回避する方法を提案する。
【0024】
(撮像素子の撮像領域とZ位置のばらつき)
次に、撮像素子の撮像領域とZ位置のばらつきの関係をさらに具体的に示す。
本発明では、撮像素子が有する受光面全体の範囲を「撮像域」と呼ぶことにする。一方、「撮像領域」は、撮像域の全体あるいはある一部分の、実際に画像データを処理する領域、すなわち画像データを取得する範囲と定義する。後述するように撮像領域は、画像処理(撮像域から必要な画像データを選択する処理)により実現しても良いし、撮像素子のタイミング信号を変え撮像素子が出力する画像データの範囲を制限(クロップ)し実現しても良い。
前述したように、撮像領域とは、撮像素子が一回の撮像で画像データを取得する範囲をいう。例えば、一次元撮像素子の場合は、スキャン(副走査)する長さと主走査の長さで決まる矩形の範囲が撮像領域に該当し、二次元撮像素子の場合は、撮像素子が一回のショットによりデータを取得する範囲が撮像領域に該当する。なお、本明細書では、「撮像領域」という用語を被写体側の物体面上の領域を意味する用語として用いる(ただし、説明の便宜から、被写体側の撮像領域に対応する撮像素子側の領域のことを撮像領域と呼ぶ場合もある。)。
【0025】
初めに、一次元撮像素子(ラインセンサ)を用いた、スキャン型(スキャナー方式ともいう)の撮像装置について説明する。この方式では、ラインセンサと直交する方向にプレパラート100を移動させながら撮像することにより、二次元画像が得られる。
【0026】
図23(a)は従来のラインセンサを用いた撮像装置のプレパラート側の撮像領域(この場合、撮像域と同じ範囲である)を模式的に示した図である。図23(a)において、1は模式的に示した結像光学系、100、101、102は前述したように、プレパラート、スライドグラス、カバーグラスであり、200は撮像素子であるラインセンサである。ラインセンサ200の画素は、図23(a)に示した矢印方向と直角に配置する。すな
わちラインセンサ200の主走査方向に対して、不図示のステージによりプレパラート100を矢印方向に移動(副走査)し、二次元画像を撮像する。便宜上、主走査方向をX方向、副走査方向をY方向と呼ぶこととする。
【0027】
図23(a)においてAからAのそれぞれは、一回の副走査により撮像されるプレパラート側の撮像領域を模式的に示している。この例では、g回のスキャンにより撮像したg個の撮像領域の画像を合成して、広範囲の合成画像が生成される。
【0028】
前述したように、従来の撮像装置では撮像素子の撮像領域(ラインセンサの長さ)が狭いため、スキャン毎の撮像領域A〜Aにおいて検体のZ位置が被写界深度から外れることはほとんどない。図24(a)、図24(b)にスキャン毎のプレパラート側の撮像領域の検体のZ位置105と被写界深度を模式的に示す。図24(a)、図24(b)において、1aは、結像光学系1の合焦位置、1bは、前方合焦位置、1cは後方合焦位置である。前方合焦位置1bと、後方合焦位置1cの間の距離が被写界深度である。図24(a)、図24(b)は、副走査方向(Y方向)に垂直な断面であり、主走査方向(X方向)は図面の左右方向となる。図24(a)は、1スキャン目の撮像領域の断面を模式的に示している。図24(a)を見てわかるように、被写界深度内に検体のZ位置105が収まっていることが分かる。図24(b)に2スキャン目の撮像領域の断面を示す。同様に、2スキャン目であっても被写界深度内に検体のZ位置105が収まっていることが分かる。図24(b)には、1スキャン目および2スキャン目以降の、合焦位置1a、前方合焦位置1b、後方合焦位置1cも図示した。
【0029】
次に、二次元撮像素子(エリアセンサ)を用いた撮像装置について説明する。一般に、この方式はディジタルカメラ型の撮像装置とも言われる。エリアセンサを用いた撮像装置では、プレパラート100上のある撮像領域(この場合、撮像域と同じ範囲である)を撮像したら、プレパラート100とエリアセンサの相対位置を変えて次の撮像領域を撮像する、という処理を繰り返すこと(ステップ&リピート)によって複数の二次元画像を取得する。そして、これらの画像を合成(つなぎ合わせ)して広範囲の合成画像を生成する。
【0030】
図23(b)は従来のエリアセンサを用いた撮像装置のプレパラート側の撮像領域を模式的に示した図である。図23(b)において、図23(a)で説明した符号については説明を省略する。図23(b)において300はエリアセンサである。図23(b)においてA1,1からAj,kのそれぞれは、エリアセンサ300が1回のショットで撮像するプレパラート側の撮像領域を模式的に示している。この例では、j×k回のステップ&リピートにより撮像された、j×k個の画像を合成することにより、撮像対象領域全体の広範囲の画像が生成される。
【0031】
前述したように、従来の撮像装置では撮像素子の撮像領域(エリアセンサの受光面積)が狭いため、ショット毎の撮像領域A1,1からAj,kにおいて検体のZ位置が被写界深度から外れることはほとんどない。
【0032】
(広い撮像域の撮像素子を用いた場合の問題点の詳細)
次に、撮像素子の撮像領域を広くした場合の問題点、すなわち撮像域の広い撮像素子を用いた場合の問題点を、図を用いて詳細に説明する。
図25(a)、図25(b)は撮像領域を広くした撮像装置における、プレパラート側の撮像領域を模式的に示した図である。図25(a)、図25(b)において、符号は図23(a)、図23(b)で説明したものと同じであるので、説明は省略する。
【0033】
図25(a)は、長いラインセンサ200を用いることで撮像領域を広くした場合の模式的な図である。図23(a)の撮像装置と比べると、スキャン回数がg回からh回と少
なくなることにより、撮像時間と合成画像の生成に要する時間を短縮できる。
【0034】
図26に、撮像領域を広くした場合の、スキャン毎のプレパラート側の撮像領域の検体のZ位置105と被写界深度を模式的に示す。図26において、図24(a)で説明した符号の説明は省く。図24(a)、図24(b)と比較すると分かるように、撮像領域が広くなったため、検体のZ位置105のばらつきが従来と同等であっても、検体の一部(円1dで示した部分)が被写界深度から外れてしまう。
【0035】
図25(b)は、受光面積の広いエリアセンサ300を用いることで撮像領域を広くした場合の模式的な図である。図23(b)の撮像装置と比べると、ショット回数がj×k回からm×n回と少なくなることにより、合成画像の生成に要する時間を短縮できる。ただし、この場合も、図26を用いて説明したのと同様に、検体の一部が被写界深度から外れる可能性がある。
【0036】
上述したように、高速化のために、結像光学系1の視野を大きくし撮像域の広い撮像素子を用い、より広い撮像領域で撮像を行うと、検体のZ位置のばらつきによっては、撮像領域内の検体の一部が被写界深度から外れるため、撮像した画像がぼけたものとなる重大な問題が発生する。もちろん、プレパラートの平面度が高く検体のZ位置のばらつきが十分小さければ、このような問題は発生しないが、平面度の高いプレパラートを作成するには時間及びコストがかかる問題がある。
【0037】
(本発明の要点)
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の要点について簡単に説明する。
本発明の要点は、予め検体のZ位置のばらつき(実測値でも理論値(統計的なデータ)でもよい)を取得し、そのばらつきの程度に応じて撮像素子の撮像領域を適応的に決定するというものである。より具体的には、検体のZ位置のばらつきが大きい場合、撮像素子の撮像領域を狭くし、検体のZ位置のばらつきが小さい場合、撮像領域を広くする。あるいは、検体のZ位置のばらつきが第1の値の場合の撮像領域よりも、検体のZ位置のばらつきが第1の値よりも大きな第2の値の場合の撮像領域の方が狭くなるように、撮像領域を決定する、と言うこともできる。これにより、検体のZ位置が被写界深度内に収まるように撮像領域を決定でき、ぼけた画像が撮像されることを防止することができる。
【0038】
図1を参照して、さらに詳しく撮像領域の決定方法を説明する。図1は、本発明の方法により決定した撮像領域と被写界深度の一例を示す図である。図1において、201は検体のZ位置のばらつきに応じて狭くしたラインセンサ200の撮像領域を示す。1eはラインセンサ200の撮像領域201に対応するプレパラート側の撮像領域を示す。
【0039】
図1に示したように検体のZ位置105のばらつきに従って撮像領域1eを狭くすることで、図26の符号1c、1dで示したように被写界深度から外れる検体はなくなり、画像がぼけることを防止することができる。図1では撮像素子としてラインセンサを用いた撮像装置について説明したが、もちろん撮像素子としてエリアセンサを用いた撮像装置についても同様に本発明を適用することができる。エリアセンサの場合は、検体のZ位置の二次元的なばらつきを考慮すればよい。
【0040】
上記方法によって決定した撮像領域の一例を図2(a)、図2(b)に示す。
図2(a)はラインセンサを用いた撮像装置に本発明の撮像領域の制御方法を適用した場合の、プレパラート側の撮像領域の一例を模式的に示した図である。例えば、Z位置のばらつきが小さい部分におけるスキャン(例えばA、A)については撮像領域を広くするために主走査の幅を広げる。Z位置のばらつきが大きい部分におけるスキャン(例えばA)については主走査の幅を狭め、撮像領域を狭くする。
【0041】
図2(b)はエリアセンサを用いた撮像装置に本発明の撮像領域の制御方法を適用した場合の、プレパラート側の撮像領域の一例を模式的に示した図である。Z位置のばらつきが小さい部分におけるショット(例えばA1,1)では撮像領域を広くする。Z位置のばらつきが大きい部分におけるショット(例えばAS,2)では撮像領域を狭くする。図2(b)の例では、Z位置のばらつきが大きい部分において撮像領域の面積を1/4に狭くしている。
【0042】
上記のように撮像領域の広さを適応的に変えることにより、検体のZ位置のばらつきが大きい部分においては画像のぼけの発生を防止することができる。また、検体のZ位置のばらつきが小さい部分では撮像領域を広くしているので、撮像回数を可能なかぎり少なくし、全体的な処理時間の短縮を図ることができる。
【0043】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態では、撮像素子としてラインセンサを用いた撮像装置に本発明を適用した例について説明する。全体の構成は図2(a)に示したように一つの結像光学系1に一つのラインセンサを配置した構成である。
【0044】
(撮像装置の構成)
図3は本発明の第1の実施形態の撮像装置を説明するためのブロック図である。撮像装置は、撮像素子であるラインセンサ200、画像処理部2、コントローラ部3、検体のZ位置のデータを記憶するメモリ4、作成された画像データを格納する画像データ格納部5、ラインセンサ200の動作タイミングを生成するタイミング回路6を有する。また、図示しないが、撮像装置は、プレパラートを支持するステージ、プレパラートを照明する照明系、プレパラート上の検体の光学像を拡大しラインセンサ200の像面に結像させる結像光学系、ステージを移動させる移動機構等を有する。
【0045】
図3においてタイミング回路6はラインセンサ200にタイミング信号を供給する。ラインセンサ200は主走査を行うタイミングに従って撮像を行い、画像データを出力する。出力された画像データは、コントローラ部3の制御に従って画像処理部2が処理する。このコントローラ部3と画像処理部2は、簡便にはマイクロコントローラチップ等のマイコンで実現すると良い。画像処理部2が処理した画像データは画像データ格納部5に格納される。画像データ格納部5はハードディスク装置のような不揮発性のデバイスが望ましい。画像データ格納部5に格納された画像データは、不図示のネットワーク等で接続されているパソコン等で、適宜参照することができる。
【0046】
(撮像装置の動作)
コントローラ部3と画像処理部2の具体的な動作を図4に示す。図4はコントローラ部3が実行する処理及びコントローラ部3の制御命令に従って画像処理部2が実行する処理を示すフローチャートである。コントローラ部3と画像処理部2は、後述するように、検体のZ位置のばらつきに応じて撮像条件(撮像領域の広さ、合焦位置)を適応的に制御する撮像制御手段としての機能も担う。
【0047】
図4において各動作ステップを順次説明する。初めにステップST101において、プレパラート上の検体のZ位置105を計測する。この計測には、専用の光学系を使用してもよいし、結像光学系1を使用してもよい。計測系の具体的な構成については後述する。このステップST101で検体のX,Y座標に対するZ位置が計測できる。計測された検体のZ位置はこのステップST101でメモリ4に記憶する。次にステップST102では、計測された検体のZ位置に対して例えば最小二乗法等(もちろん他の方法あってもかまわない)により近似曲面を求める。図5(a)に、検体のZ位置に対する最小二乗法に
より求めた近似曲面を模式的に示した。図5(a)において横軸は、例えばX軸(もちろんY軸であってもかまわない)、縦軸は検体のZ位置を示す。500は計測された検体のZ位置、501は最小二乗法等により求めた近似曲面である。
【0048】
ステップST103では、スキャン毎の撮像領域の合焦位置を算出する。図5(b)、図5(c)に検体のZ位置の近似曲面と各撮像領域の合焦位置の一例を図示する。図5(b)、図5(c)において、縦軸、横軸は図5(a)と同じであり、502はラインセンサ200に焦点を結ぶ合焦位置を示す。図5(b)は、ラインセンサ200の合焦位置502と撮像領域内の近似曲面501の差が最小になるように、スキャン毎の合焦位置502のZ座標を算出する例である。より簡便には、撮像領域内の近似曲面501の中心のZ座標を合焦位置502に選んでもよい。図5(c)は、合焦位置502のチルト(傾き)も制御する例である。この場合は、合焦位置502と撮像領域内の近似曲面501の差が最小となるように、スキャン毎の合焦位置502のZ座標及びチルト角を算出する。例えば、近似曲面501との差が最小になるように合焦位置502のZ座標を決定した後、合焦位置502を所定の範囲内で傾けて、近似曲面501との差をより小さくするチルト角を探索すればよい。図5(b)、図5(c)を比べて判るように、チルト制御も行うと、近似曲面501とラインセンサ200の合焦位置502の差がより小さくなる可能性が高い。
【0049】
次のステップST104では、ST103で求めた合焦位置502と撮像領域内の近似曲面501とから、当該撮像領域内の検体のZ位置のばらつき(「領域内Z位置ばらつき」と呼ぶ)を計算する。ここでは、撮像領域内の近似曲面501と合焦位置502の差のピークツーピーク値(pp値)、つまり撮像領域内の近似曲面501の最大値と最小値の差、を領域内Z位置ばらつきとして計算する。後述するように領域内Z位置ばらつきは他の方法で算出しても良い。なお、本実施形態では合焦位置502を決めた後に領域内Z位置ばらつきを算出したが、領域内Z位置ばらつきを最小とするように合焦位置502を決定することも好ましい。
【0050】
次のステップST105で、領域内Z位置ばらつきが結像光学系1の被写界深度以下かを判定する。もし、領域内Z位置ばらつきが被写界深度より大きければステップST106に進み、現在の撮像領域の広さが下限値か否かを判断する。もし撮像領域が下限値より広ければステップST107に進み、撮像領域を狭くし、ステップST103に戻る。ステップST103〜ST107のループを繰り返し、撮像領域を徐々に狭めていくことで、領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下になる様に、撮像領域の広さを決定することができる。ステップST107において撮像領域の狭小化を細かく行うほど、撮像領域を適切な広さに(つまり、できるだけ広い面積に)設定することができる。撮像領域の決定方法の具体例については後述する。
【0051】
ステップST106は、撮像領域の狭小化を制限する処理である。制限なく撮像領域を狭くできるようにすると、Z位置のばらつきが大きなプレパラート100の場合に、各撮像領域が非常に狭くなり、撮像領域の数(スキャン数)が多くなり、撮像時間が長大になってしまうおそれがある。ステップST106はこのような問題を防止するためのステップである。ただし、スキャン数や撮像時間が問題とならない場合は、このステップを省略してもよい。また、ステップST106で用いる下限値をユーザが用途に応じて変更できるようにすることも好ましい。例えば、画像品質を優先する場合は、下限値を小さく設定して、被写界深度から外れる検体をできるだけ少なくし、処理速度を優先する場合は、下限値を大きく設定して、スキャン数や分割画像数があまり多くならないようにする、ということもできる。
【0052】
ステップST105で領域内Z位置ばらつきが結像光学系1の被写界深度以下と判定さ
れれば、次のステップST109に進む。ステップST109では全てのスキャンの撮像領域(以降、単にスキャンとも記す)の広さ及び合焦位置の計算を完了したかを判定する。完了していなければ、ステップST110に進み、次のスキャンに座標が変更されステップST103に戻る。ここで各スキャンの撮像領域のサイズは適時変更されるのでスキャン間の撮像領域に隙間がないように考慮すると好適である。ただし、隙間や重複部分があっても、接続部分の画像はおかしいが他の部分はおかしな画像では無いので、用途によっては隙間や重複部分があってもかまわない。その場合、合成処理において、各スキャンで得られた分割画像の間に境界(黒枠等)を設けてもよいし、補間によって分割画像同士を滑らかに接続してもよい。
【0053】
ステップST109ですべての計算が終了したと判定されると、次のステップST111に進む。ステップST111では、前述の処理で決定された撮像領域(スキャン)の位置(X,Y座標)及び合焦位置(Z座標、チルト角)に応じて、ステージの移動やピント調整を行い、撮像領域毎に決定された広さで実際に撮像する。具体的には、画像慮理部2は、撮像素子200から撮像域の画像データを入力し、画像領域部分のデータを使用して処理すると好適である。そして画像データ格納部5に座標情報とともに画像データを記憶する。
【0054】
なお、スキャン毎の合焦位置の調整は、結像光学系1のピント調整や、ラインセンサ200の移動により行っても良いし、プレパラートを支持するステージ又はラインセンサ200を支持するステージの移動により実現しても良い。ステージの移動により合焦位置を調整する場合は、図5(b)に示す合焦位置502が結像光学系1の合焦位置に合うように、ステージをZ方向に平行移動させる。図5(c)に示す方法の場合は、ステージをZ方向に平行移動させるとともに、合焦位置502の傾斜が近似曲面501に倣うようにステージをチルトさせる。なお、ステージを平行移動あるいはチルトする機構については、公知の駆動機構を利用することができる。
【0055】
次のステップST112では全てのスキャンに対して撮像が終了したかの判断を行う。未終了であればステップST113に進み、次のスキャンにステージを移動してステップST111に戻り、撮像を行う。全スキャンの撮像が終了すると、ステップST114において、画像処理部2が画像データ格納部5に記憶されているスキャンされた全分割画像を読み出し合成画像を作成し、画像データ格納部5に合成画像を記憶する。この際、隣接する撮像領域の画像同士が一部重なるように、各スキャンにおいて広めの領域を撮像しておき、合成処理の際に、各画像をトリミングし、又は、画像同士をαブレンドすることによって撮像領域間に隙間がないように合成すると好適である。
【0056】
(撮像領域の決定方法)
次にステップST103〜ST107における撮像領域の決定方法をさらに具体的に説明する。
【0057】
前述したように、ラインセンサは主走査の幅(撮像に用いる画素の領域)を画像処理部2により変更することができる。したがって、主走査毎に主走査の幅と合焦位置とを調整すれば、検体のZ位置ばらつきを被写界領域内に確実に収めることができる(この場合の撮像領域はライン状の領域となる)。しかしながら、この場合、主走査毎に領域を可変にした場合、スキャン数(撮像領域数)が膨大になり、処理時間が長くなってしまう。そのため、主走査の幅を同じに保ったままある程度の副走査を行って、矩形の撮像領域を形成することが現実的である。
【0058】
第一の方法は、主走査ごとに主走査の幅を変えずに全範囲の副走査を行うが、副走査毎に(撮像領域毎に)主走査の幅を変えるという方法である。つまり、第一の方法は、主走
査の幅のみを撮像領域毎に制御する方法である。各副走査(各撮像領域)における主走査の幅は、図4のステップST103〜ST107のループにおいて、主走査の幅を最大値から徐々に小さくしていきながら、領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下かどうかを評価することで、決定することができる。
【0059】
図6(a)に従来方法による撮像領域の例、図6(b)に第一の方法による撮像領域の例を示す。図6(a)、図6(b)においてAからAはスキャン番号を示している。従来方法では、全ての撮像領域が同じ広さであった。これに対し、第一の方法では副走査毎に主走査の幅を適応的に変えている。つまり、Z位置のばらつきが大きな部分では、A,A,Aのように主走査の幅が狭くなるように撮像領域を決定し、Z位置のばらつきが小さい部分では、A,Aのように主走査の幅を広くする。よって、図6(a)の従来方法に比べてスキャン数が少なくなり、画像のぼけの抑制(画質の向上)と処理時間の短縮の両立を図ることが期待できる。この第一の方法では、画像の境界(繋ぐ部分)が副走査方向と平行な辺のみになるため、次に示す第二の方法に比べ、合成処理が簡便になるという利点がある。また副走査の途中でピントの調整を行う必要がないので、効率的な撮像処理が可能となる。
【0060】
第二の方法は、主走査の幅と副走査の幅の両方を制御する方法である。この場合は、狭小化の方向が二方向になるので、ステップST103〜ST107のループを若干変形する必要がある。例えば、主走査の幅と副走査の幅をそれぞれ変えて、取り得る全ての矩形領域について領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下かどうかを評価する。そして、領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下になる矩形領域の中で、最も面積の広いものを撮像領域として選べばよい。あるいは、主走査の幅を最大値で固定し副走査の幅だけを短くした場合の候補矩形と、副走査の幅を最大値で固定し主走査の幅だけを短くした場合の候補矩形とを計算し、両候補矩形のうちで面積が大きい方を撮像領域として選んでもよい。後者の方法のほうが候補の探索を単純化でき、計算処理の時間を短縮できるという利点がある。
【0061】
図6(c)は第二の方法による撮像領域の例である。Z位置のばらつきが大きな部分では、A〜Aのように主走査もしくは副走査、又はその両方の幅が短くなるように撮像領域を決定し、Z位置のばらつきが小さい部分では、A、Aのように主走査及び副走査の幅を長くする。よって、図6(a)の従来方法に比べてスキャン数が少なくなり、画像のぼけの抑制(画質の向上)と処理時間の短縮の両立を図ることが期待できる。第二の方法では、主走査の幅と副走査の幅で決まる矩形の撮像領域単位で、ステージのZ位置やZチルトを調整する。
【0062】
第三の方法は、副走査の幅のみを制御する方法である。各スキャンにおける副走査の幅は、図4のステップST103〜ST107のループにおいて、副走査の幅を最大値から徐々に小さくしていきながら、領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下かどうかを評価することで、決定することができる。主走査の幅については、例えば最大値で固定すればよい。
【0063】
以上第一から第三の方法を例示したが、撮像するプレパラートの検体のZ位置ばらつきの傾向に応じて適切な方法を選択するようにしてもよい。例えば、Z位置が主走査方向に沿って変化している場合は第一の方法、Z位置が副走査方向に沿って変化している場合は第三の方法、Z位置が二次元的に変化している場合は第二の方法を選択するとよい。また、検体を確実に被写界深度内に収めて、高品質な画像を得たい場合には、主走査ごとに合焦位置を調整する方法を行ってもよい。もちろんこの場合は、Z位置ばらつきの計算は主走査ごとに合焦位置を調整した後で行う。
【0064】
図7(a)、図7(b)、図7(c)は、主走査の幅とラインセンサ200の撮像領域との関係を示す図である。各図において上下方向は主走査方向であり、200aは撮像領域(画像データを取得する画素の範囲)、200bは非撮像領域(画像データを取得しない画素の範囲)を示している。図7(a)は撮像領域を制限しない場合(主走査の幅が最大の場合)の、ラインセンサ200の撮像領域200a(すなわち、撮像域)を示している。つまり、ラインセンサ200の全有効画素から画像が取り込まれる。図7(b)、図7(c)はいずれも主走査の幅を半分に制限した場合の、ラインセンサ200の撮像領域200aを示している。図7(b)は、ラインセンサ200の中央部の画素を用いる方法であり、図7(c)は、ラインセンサ200の上部(一方の端部)の画素を用いる方法である。いずれの方法を用いてもよいが、本実施形態では、図7(b)の方法を採用した。一般に結像光学系1の光学特性は周辺部よりも中央部のほうがよいため、ラインセンサ200の有効画素のうち結像光学系1の視野の中央部に位置する画素を利用したほうがより高品質な画像の取得が可能になるからである。
【0065】
また、撮像領域の広さを決定する際は、領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下になる範囲の中で、最大の大きさとなるように決定することが望ましい。これにより撮像回数を最も少なくでき、撮像処理に要する時間及び合成画像の生成に要する時間を短縮することができるからである。
【0066】
(検体のZ位置の計測)
ステップST101における検体のZ位置105の計測についてより詳細に説明する。プレパラート上の検体のZ位置105を計測する方法としては、大きく分けて、画像を利用して検体のZ位置を推定する方法と、反射光や干渉光を利用する各種の距離センサを利用してカバーグラスやスライドグラスの表面凹凸を計測する方法とがある。前者の方法は、カメラにおけるオートフォーカス技術を利用できる。例えば、プレパラート側のピント位置を変えながらラインセンサ200で画像を取り込み、画像信号の微分値が最大となるピント位置を、検体のZ位置とすることができる。また後者の方法としては、例えば特開平6−011341号公報に開示があるような三角測量法を応用した光学式距離測定方法や、特開2005−98833号公報に開示があるような共焦点光学系を用いてグラス境界面で反射するレーザ光の距離の差を測定する方法がある。
【0067】
検体のZ位置の計測は、撮像装置とは別体の計測装置で行ってもよいし、撮像装置と一体の計測装置で行ってもよい。撮像装置一体型では、Z位置計測用の光学系及び計測系を設けることが好ましいが、撮像用の結像光学系1をZ位置の計測に利用することもできる。その場合、結像光学系1にZ位置計測用の光学部品を追加してもよい。計測系(センサ)については、専用のセンサを用いてもよいし、撮像用の撮像素子(本実施形態ではラインセンサ200)を利用することもできる。
【0068】
(領域内Z位置ばらつき)
前述したステップST104では、領域内Z位置ばらつきを、撮像領域内の近似曲面501と撮像素子の合焦位置502の差のpp値と決めた。この方法によれば、検体のZ位置の近似曲面501は必ず被写界深度内に収まる。そのため、撮像領域内のほぼ全ての検体が被写界深度内に入ることになる。
【0069】
しかしながら、この方法のようにピーク値(最大値、最小値)だけで撮像領域の広さを決めると、ピーク値近傍のZ位置にほとんど検体が分布していないにもかかわらず、必要以上に撮像領域を狭めてしまう可能性がある。特に、Z位置の計測値にノイズが含まれていたり、或いは、Z位置が局所的に激しく変化していたりすると、その傾向が大きい。撮像領域を必要以上に狭めると、スキャン回数が増加し、撮像及び画像合成に要する処理時間が長くなるため好ましくない。
【0070】
本発明者が検討した結果、領域内Z位置ばらつきを以下のように決定すると、ほとんどの検体のZ位置を被写界深度内に収めつつ、且つ、撮像領域を広くすること(処理時間を短くすること)が可能となった。すなわち、撮像領域における近似曲面501と撮像素子の合焦位置502の差の標準偏差(σ)に基づいて、領域内Z位置ばらつきを決めるのである。例えば、標準偏差の6倍(3σ値の2倍)を領域内Z位置ばらつきと決めても良い。また、スキャン数をより少なくするためには、標準偏差(σ)の2倍程度を領域内Z位置ばらつきと決めても良い。速度及び画質のバランスから、標準偏差の1〜6倍の中の値を係数として設定すると良い。また標準偏差に掛ける係数や、領域内Z位置ばらつきの設定をユーザが選択できるようにすることも好ましい。例えば画質は多少悪くても短時間で合成画像を生成したい場合には、標準偏差の1倍を選択すると良いし、時間がかかっても高画質が要求されるような場合には、領域内Z位置ばらつきとして、標準偏差の6倍又はpp値を選択すると良い。
【0071】
なお、本実施形態では、複数の検体のZ位置から求めた近似曲面501と合焦位置502との差のばらつきを「検体のZ位置のばらつき」とみなしている。これは、近似曲面を用いることで、Z位置の計測点数を少なくすることができるとともに、検体のZ位置の計測ノイズを除去できるという利点があるからである。計測点数が十分な場合や、ノイズ等が問題とならない場合には、検体のZ位置(計測値)それ自体と合焦位置502の差のばらつきを「検体のZ位置のばらつき」としてもよい。
【0072】
以上述べたように、本発明の第1の実施形態は、一次元撮像素子(ラインセンサ)で走査することによりプレパラート100上の検体104の二次元画像を取得するタイプの撮像装置に本発明を適用したものである。本実施形態では、検体のZ位置のばらつきが小さい場合の撮像領域に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合の撮像領域の方が狭くなるように、検体のZ位置ばらつきに応じて撮像領域の広さを適応的に決定している。このような制御を行うことにより、検体のZ位置のばらつきが大きい場合であっても、撮像領域内の検体が被写界深度から外れる可能性を小さくすることができる。特に本実施形態では、検体のZ位置が被写界深度内に収まるように、撮像領域の広さと合焦位置(Z位置、チルト)を決めている。したがって、検体が被写界深度から外れることを可能な限り抑制し、従来に比べて、ピントの合った高品質な画像を取得することが可能となる。また本実施形態では、撮像領域内の検体のZ位置のばらつきの統計量である領域内Z位置ばらつき(pp値、標準偏差等)を計算し、この領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下か否かを評価している。このように統計量(代表値)を用いることで、評価アルゴリズムが単純化されるので、処理時間の短縮を図ることができる。
【0073】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では、プレパラートを実際に計測した結果から領域内Z位置ばらつきを計算したのに対し、第2の実施形態では、データベースから取得した統計的なデータから領域内Z位置ばらつきを決定するものである。
【0074】
第2の実施形態の構成は第1の実施形態と同じで、図3に示したとおりである。第2の実施形態の第1の実施形態との大きな違いは、処理手順である。本発明の第2の実施形態によるコントローラ部3と画像処理部2の具体的な動作を示すフローチャートを図8に示す。以下、図8の各動作ステップを順次説明する。
【0075】
初めにステップST201において、検体のZ位置のばらつき情報をデータベースから読み出す。データベースは撮像装置のメモリ4に設けられていてもよいし、ネットワーク上の他の記憶装置に設けられていてもよい。ここで「Z位置のばらつき情報」とは、検体
のZ位置が統計的にどの程度ばらついているかを示すデータである。例えば、多数のプレパラートを計測しそれらのZ位置のばらつきの平均を求めることで、Z位置のばらつき情報を生成することができる。Z位置のばらつき情報としては、単位領域(単位面積又は単位長さ)当たりの検体のZ位置のばらつき(例えば、単位領域当たりの検体のZ位置の近似曲線と合焦位置の差のpp値や標準偏差(σ)等)が有効である。
【0076】
一般に、検体のZ位置のばらつきは、プレパラート作成プロセス、検体の種類、作成者、カバーグラスやスライドグラスの種類などの条件によって異なる。そこで、データベースには条件別にZ位置のばらつき情報を用意しておき、ステップST201では、コントローラ部3が上記条件をもとにデータベースを参照し、撮像するプレパラートに適合するZ位置のばらつき情報を取得することが好ましい。これらの条件は、被写体の属性情報として、プレパラート又はプレパラートを収納する不図示のカートリッジ(収納体)等に付加しておくとよい。例えば、被写体の属性情報を記録した情報タグをプレパラート又はカートリッジに貼り付け、コントローラ部3が不図示のリーダを用いて情報タグから必要な情報を読み取るようにするとよい。情報タグとしては、バーコード、二次元コードのような印刷タグを用いることもできるし、メモリチップや磁気テープのように電気的磁気的に情報を記録するタグを用いることもできる。
【0077】
ステップST202では、データベースから得られたZ位置のばらつき情報から、現在の撮像領域の領域内Z位置ばらつきを計算する。例えば、Z位置のばらつき情報として、単位面積当たりのpp値又は標準偏差(σ)が得られた場合には、このpp値又は標準偏差に対して現在の撮像領域の面積を乗じた値を、領域内Z位置ばらつきとする。標準偏差の場合は、さらに1〜6倍の係数を乗じてもよい。第1の実施形態で述べたように、係数の値は、速度と画質のバランスにより1〜6倍の間から選択すると良い。
【0078】
上述したフローは、撮像領域の広さ(長さあるいは面積)が決まれば、統計的なデータであるZ位置のばらつき情報から、実際に撮像するプレパラートの領域内Z位置ばらつきが計算できることを意味している。第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、スキャン場所に応じて異なる領域内Z位置ばらつきの値を出すことはない。すなわち、プレパラート上の撮像領域は全て同じ広さになる。
【0079】
一般的に、ステージのZ位置のみ調整する場合に比べ、Z位置とZチルトの両方を調整する場合の方が、Z位置のばらつきを小さくすることができる。したがって、Z位置のみ調整する場合とZ位置とZチルトの両方を調整する場合とで、Z位置のばらつき情報が違う値をとることが望ましい。そこで、2種類のデータ(Z位置のばらつき情報)をデータベースに登録しておき、Zチルトを行うか否かによって(あるいは、撮像装置がチルト制御可能か否かによって)、用いるデータを切り替えるとよい。もし、Z位置のみ調整する場合のデータしかない場合には、そのデータから計算された領域内Z位置ばらつきに1より小さな係数を乗じた値を、Z位置とZチルトの両方を調整する場合の領域内Z位置ばらつきとして用いてもよい。
【0080】
次に、ステップST203では、ステップST202で計算された領域内Z位置ばらつきが結像光学系1の被写界深度以下か否かが判定され、被写界深度以上であれば、ステップST204に進む。ステップST204は、第1の実施形態のステップST106と同様、撮像領域の広さが小さくなりすぎないように(撮像領域の数が多くなりすぎないように)制限する処理である。ステップST205では、撮像領域の広さを狭小化する。領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下になるか、撮像領域の広さが下限値となるまで、ステップST202〜ST205の処理が繰り返される。以上の処理で撮像領域の広さが決定されたら、ステップST206にて各撮像領域の撮像が行われる。ステップST206〜ST209の処理は、第1の実施形態のステップST111〜ST114と同じである。
【0081】
図9(a)、図9(b)は、第2の実施形態の方法による撮像領域の例を示している。図9(a)は、主走査の幅のみを制御する例であり、図9(b)は、主走査の幅と副走査の幅の両方を制御する例である。第1の実施形態(図6(b)、図6(c))との相違は、第2の実施形態の方法では、全ての撮像領域が同じ面積になるという点である。従来の方法(図6(a))と比較すると、Z位置ばらつきが少ないプレパラートでは、撮像領域の数が少なくなっており、画像のぼけの抑制(画質の向上)と処理時間の短縮の両立が図られていることがわかる。
【0082】
このようにして、本発明の第2の実施形態においても、検体のZ位置のばらつきに応じて撮像領域の広さを適応的に変えるので、第1の実施形態と同様、検体が被写界深度から外れることを抑制し、画像のぼけを抑制することができる。第1の実施形態では実際のZ位置のばらつきに応じて各スキャンの広さを決定したが、第2の実施形態においてはZ位置のばらつきの統計的なデータから各スキャンの広さを決定する。第2の実施形態の方法は、撮像領域の広さが同じになり、ステージ制御や合成アルゴリズムが容易になる利点がある。また、第2の実施形態では、プレパラートのZ位置のばらつきをその都度計測する必要がないので、処理時間のさらなる短縮が可能になる。
【0083】
第2の実施形態ではデータベースからZ位置のばらつき情報を取得したが、計測装置を用いて、撮像するプレパラートの検体のZ位置を複数点計測し、それらの計測値から統計量(例えば平均)を計算して、Z位置のばらつき情報を得てもよい。この方法によれば、実際に撮像するプレパラートからZ位置のばらつき情報を得るので、データベースから取得される汎用データを用いるよりも、画像のぼけの抑制(画質の向上)が期待できる。また、第1の実施形態に比べ処理アルゴリズムが容易になる利点もある。
【0084】
<第3の実施形態>
次に本発明の第3の実施形態について説明する。第1の実施形態、第2の実施形態で説明した領域内Z位置ばらつきから撮像領域を決定するアルゴリズムに比べ、本発明の第3の実施形態は、より単純なアルゴリズムで撮像領域を決定するものである。
【0085】
第3の実施形態の撮像装置の構成は第1の実施形態、第2の実施形態と同じであり、図3に示した構成である。第3の実施形態と、第1の実施形態、第2の実施形態との大きな違いは、処理手順である。
【0086】
本発明の第3の実施形態の処理フローチャートを図10に示す。
図10において各動作ステップを順次説明する。初めにステップST301において、第1の実施形態のステップST101と同様に、撮像するプレパラートの検体のZ位置を計測する。このステップST301で検体のX,Y座標に対するZ位置が計測できる。
【0087】
次にステップST302では、計測された検体のZ位置から、またはそれらから求めた近似曲面から、Z位置のばらつきに対応する統計量(例えば、標準偏差(σ))を求める。本実施形態では、撮像するプレパラートの計測値から統計量を求めたが、第2の実施形態で示したように、検体のZ位置のばらつき情報をデータベース等から取得しても良い。
【0088】
次に、ステップST303において、ステップST302で求めたZ位置のばらつきに対応する統計量から直接、撮像領域を決定する。例えば、統計量と撮像領域の広さを対応付けた参照テーブルを予め用意し、この参照テーブルを用いて撮像領域を決定するのが簡便である。
【0089】
この参照テーブルは、Z位置のみ調整する場合の撮像領域の広さと、Z位置とZチルト
の両方を調整する場合の撮像領域の広さの2種類の情報を持つことが望ましい。一般的に、Z位置のみ調整する場合に比べ、Z位置とZチルトの両方を調整する場合の方が、Z位置のばらつきを小さくすることができる。すなわち、Z位置のみ調整する場合よりも、Z位置とZチルトの両方を調整する場合の方が、撮像領域を広くすることができる。処理時間の短縮の観点からは撮像領域の数を少なくする方が望ましいので、参照テーブルには、検体が被写界深度に収まる範囲の中で、最大の撮像領域を設定しておくことが好ましい。第3の実施形態では、第2の実施形態同様に、全ての撮像領域が同じ広さになる。
【0090】
以上の処理で撮像領域の広さが決定されたら、ステップST304にて各撮像領域の撮像が行われる。ステップST304〜ST307の処理は、第1の実施形態のステップST111〜ST114と同じである。
【0091】
ところで、図10のフローでは、プレパラート毎にZ位置の計測及びZ位置の統計量を計算しているが(ST301,ST302)、この処理を省略することもできる。例えば、同じロットの同種の検体のプレパラートを連続処理する場合、最初のプレパラートのみ計測及び統計量の計算を行い、以降のプレパラートでは同じ統計量を利用すればよい。これにより、ステップST301,ST302の処理が省略されるため、処理時間の短縮を図ることができる。
【0092】
以上述べた第3の実施形態の方法では、第1の実施形態、第2の実施形態に比べさらに簡便に撮像領域が決定でき、合成画像を生成することができる。また、処理をより単純化した例として、Z位置のばらつきを2種類に分類しても良い。例えば、Z位置のばらつきが大きな旧いプレパラートと、撮像領域を広げて撮像できるZ位置のばらつきの小さな新しいプレパラートに分けてプレパラートを管理することによって、撮像領域を決める処理が簡単になる。具体的には、旧いプレパラートの場合と新しいプレパラートの場合それぞれのZ位置のばらつき(又は撮像領域の広さ)が設定されたテーブルを用いる。撮像装置は、プレパラートの新旧を判定し、旧いプレパラートならば撮像領域を狭く、新しいプレパラートならば撮像領域を広くする。これにより、より簡便に本発明の効果が得られる。このような説明からわかるように、本発明で用いる「検体のZ位置のばらつき」は、撮像領域内の検体のZ位置のpp値や標準偏差のように、ばらつきを直接的に表す数値である必要はない。例えば、プレパラートの新旧、プレパラートの作成プロセス、検体の種類等のように検体のZ位置のばらつきを間接的に表す情報を用いることもできる。
【0093】
<第4の実施形態>
次に本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、撮像素子としてエリアセンサを用いた撮像装置に本発明を適用した例について説明する。全体の構成は図2(b)に示したように一つの結像光学系1に一つのエリアセンサを配置した構成である。撮像装置を説明するためのブロック図は、第1の実施形態のもの(図3)とほぼ同じであるが、撮像素子の種類がラインセンサ200からエリアセンサ300に置き換わっている点が異なる。
【0094】
コントローラ部3と画像処理部2の具体的な動作については、第1の実施形態から第3の実施形態で説明した処理フローを二次元に拡張したものであるので詳細な説明は省略する。第4の実施形態においても、第1の実施形態から第3の実施形態で説明した領域内Z位置ばらつきやZ位置のばらつきの統計量に基づき適応的に撮像領域の広さを決定する。
【0095】
第4の実施形態において、決定した撮像領域の一例を、図11(a)、図11(b)、図11(c)、図11(d)を用いて説明する。図11(a)、図11(b)、図11(c)、図11(d)はプレパラート上の撮像領域を模式的に示した図である。
【0096】
図11(a)は従来方法による撮像領域の例を模式的に示した図である。図11(a)に図示したように従来の撮像装置における撮像領域は狭いため、検体が被写界深度から外れるという問題はほとんど発生しなかった。逆の言い方をすれば、被写界深度を外れる検体が存在しないように、プレパラートが作製されていた。図11(b)から図11(d)は本発明の第4の実施形態の方法によるプレパラート上の撮像領域の例である。図11(b)、図11(c)は本発明の第2の実施形態あるいは第3の実施形態で示した、検体のZ位置のばらつきの統計量により決定した撮像領域の一例である。この場合は、全ての撮像領域は同じ面積となる。図11(d)は本発明の第1の実施形態で示した方法で撮像領域を決めたプレパラート上の撮像領域の一例である。検体のZ位置のばらつきが大きな部分では撮像領域が狭く、ばらつきが小さな部分では撮像領域が広くなっている。
【0097】
本発明の第4の実施形態では撮像素子としてエリアセンサを用いるため、撮像領域は二次元で決定する。そのため、撮像領域の隙間が生まれないように、基本領域(撮像領域の最小単位)を組み合わせて撮像領域を形成すると好適である。図11(d)の例では、A2,5等の正方形の領域が基本領域であり、撮像領域は、基本領域の1倍、2倍(A1,5等)、又は、4倍(A1,1等)で形成される。このように一つの基本領域で又は基本領域を複数組み合わせることで撮像領域を形成することにより、撮像領域間に隙間が生じないように撮像領域の形状及び大きさを決定することが容易になる。
【0098】
図12(a)から図12(d)はエリアセンサの撮像領域を模式的に示している。各図において、300aは撮像領域(画像データを取得する画素の範囲)を示しており、300bは非撮像領域(画像データを取得しない画素の範囲)を示している。図12(a)は撮像領域を制限しない場合(最大の撮像領域)の、エリアセンサ300の撮像領域300aを示している。この場合は、エリアセンサ300の全有効画素から画像が取り込まれる。すなわち、撮像領域は撮像域と同じである。図12(b)、図12(c)、図12(d)はエリアセンサ300の撮像領域を狭くした例である。図12(b)は1/2の面積、図12(c)は1/4の面積(各辺長さが1/2)、図12(d)は1/9の面積の撮像領域を示している。一般に結像光学系1の特性は周辺部よりも中央部のほうがよいため、撮像領域を狭くする場合は、エリアセンサ300の有効画素のうち結像光学系1の視野の中央部に位置する画素を利用するほうが良い。ここでは結像光学系1とエリアセンサ300の中心が一致しているため、図12(b)〜図12(d)に示すように、エリアセンサ300の中央部の画素が優先的に使われる。
【0099】
以上説明してきたように、本発明の第4の実施形態は、二次元撮像素子を用いたディジタルカメラ型の撮像装置に好適に適用できる。そして、この構成においても、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に撮像領域を広く、検体のZ位置のばらつきが大きい場合に撮像領域を狭く制御することで、上述した実施形態と同様、ピントの合った高品質な画像を取得することができる。
【0100】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。本発明の第5の実施形態と、第1から第4の実施形態との違いは、一つの結像光学系1に対して複数の撮像素子を実装した点である。
【0101】
(ラインセンサを用いた構成例)
図13は本発明の第5の実施形態である複数のラインセンサを用いた撮像装置の構成を模式的に示した図である。図13において、すでに説明を行った符号の説明は省略する。図13において210は撮像素子の配置される平面、210a、210bは撮像素子であるラインセンサ、A00はプレパラート側の撮像対象領域を示す。
【0102】
図14(a)は撮像領域を制限しない場合のラインセンサ210a、ラインセンサ210bの撮像域に対応するプレパラート側の撮像対象領域A00を模式的に示す図である。図14(a)においてAはラインセンサ210aに対応する撮像領域、Aはラインセンサ210bに対応する撮像領域である。少ないスキャン数で撮像対象領域A00全体をスキャン出来るように、ラインセンサの主走査方向の幅がセンサ取り付けピッチの整数分の1となるように、二つのラインセンサ210a、210bが取り付けられる。なお実際には、ラインセンサの主走査方向の幅(あるいは撮像域の幅)とセンサ取り付けピッチとの関係は、ラインセンサ側の像面上で考える必要があるが、説明の便宜のため、プレパラート側の物体面上に投影した図を用いて説明を行う。
【0103】
撮像領域A、Aは、副走査方向の1回の移動(スキャン)により、同時に撮像される。2回目の副走査方向のスキャンでは、ラインセンサ210aは撮像領域Aを、ラインセンサ210bは撮像領域Aをそれぞれ撮像する。このように本実施形態では、二つのラインセンサを一つの結像光学系に実装することによって、一つのラインセンサを用いる場合よりもスキャン回数を半分に少なくすることができ、合成画像の生成の高速化が行える。図13では二つのラインセンサの構成を一例として挙げたが、もっと多くのラインセンサを実装してもかまわない。
【0104】
図14(b)に、撮像領域を制限(狭小化)した場合のプレパラート側の撮像領域の一例を示す。図14(b)において、Aはラインセンサ210aに対応するプレパラート側の撮像領域、Aはラインセンサ210bに対応するプレパラート側の撮像領域である。図14(a)に比べて、いずれのラインセンサ210a、210bでも主走査方向の幅が制限されている。1回目のスキャンでは、撮像領域AとAが撮像され、2回目のスキャンでは、撮像領域A2とA5が撮像され、3回目のスキャンでは、撮像領域AとAが撮像される。その結果、3回のスキャンで撮像対象領域A00全体の画像データを取得することができる。この際、図14(b)に示したように、主走査方向の幅がセンサ取り付けピッチの整数分の1になるように、各ラインセンサの撮像領域を決定すると良い。言い換えると、主走査方向(第1の方向)に並べられた複数のラインセンサのそれぞれに対応する撮像領域の広さを、各撮像領域の主走査方向の幅がセンサ取り付けピッチを撮像領域上に投影した場合の長さの整数分の1となるように決定すると良い。これにより、撮像対象領域全体を無駄なくスキャンすることができる。
【0105】
本発明の第5の実施形態においても、第1から第4の実施形態で示した方法で、Z位置のばらつき情報や領域内Z位置ばらつきに基づいて、適応的に撮像領域の広さを決定する。これにより、検体が被写界深度から外れることによる画像のぼけを抑制することができる。
【0106】
例えば、第1の実施形態の方法を用いる場合は、図4のステップST107において、各ラインセンサの主走査の幅を、センサ取り付けピッチの1/2、1/3、1/4…と順に短くしていく。そして、全てのラインセンサの撮像領域における領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下になる様に、主走査の幅(撮像領域の広さ)を決定する。このとき、結像光学系のピント合わせはラインセンサ個別に行うことができないので、領域内Z位置ばらつきの計算及び被写界深度の判定は全てのラインセンサで共通に行う。
【0107】
また、第2の実施形態の方法を用いる場合は、図8のステップST205において、各ラインセンサの主走査の幅を、センサ取り付けピッチの1/2、1/3、1/4…と順に短くしていく。そして、全てのラインセンサの撮像領域における領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下になる様に、主走査の幅(撮像領域の広さ)を決定する。第2の実施形態の方法では、統計的なデータであるZ位置のばらつき情報を用いるので、プレパラートを計測したり、各ラインセンサの被写界深度の判定を行ったりする必要がない。
【0108】
第3の実施形態の方法を用いる場合は、図10のステップST303において、各ラインセンサの主走査の幅がセンサ取り付けピッチの整数分の1になるように、主走査の幅(撮像領域の広さ)を決定する。この処理は、例えば、Z位置ばらつきの統計量と撮像領域の広さ(主走査の幅)とを対応づける参照テーブルにおいて、主走査の幅がセンサ取り付けピッチの整数分の1になるように設定しておくだけで実現できる。
【0109】
(エリアセンサを用いた構成例)
次に、本発明の第5の実施形態の他の構成例を示す。前述した実施形態との違いは、撮像素子がエリアセンサである点である。図15は、複数のエリアセンサを用いた撮像装置の構成を模式的に示した図である。図15において、すでに説明を行った符号の説明は省略する。図15において310は撮像素子の配置される平面、310a、310b、310c、310dは撮像素子であるエリアセンサ、A00はプレパラート側の撮像対象領域を示す。また、エリアセンサ310a、310b、310c、310dをまとめて撮像ユニットとも呼ぶ。
【0110】
図16(a)は、複数のエリアセンサ310a、310b、310c、310dから構成される撮像ユニット3000の上面図である。撮像ユニット3000は、図16(a)に示したように、結像光学系1の視野F内に二次元的に配列している複数の撮像素子(エリアセンサ)310a、310b、310c、310dからなる撮像素子群を含み、一度に複数の画像を撮像する構成となっている。撮像素子としては、CCD(Charge Coupled
Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等を用いることができる。撮像ユニット3000に搭載されるエリアセンサの数は、結像光学系1の視野の面積に応じて適宜決定される。エリアセンサの配置も、結像光学系1の視野の形状やエリアセンサの形状・構成などによって適宜決定される。本実施形態では、説明を分かり易くするために、撮像素子群として2×2個のCMOSセンサが並んでいるものを用いる。
【0111】
一般的な撮像ユニット3000では、エリアセンサ310a、310b、310c、310dの撮像面(有効画素領域)の周囲に基板が存在するため、エリアセンサ310a、310b、310c、310dどうしを隙間なく隣接して配置することは不可能である。そのため、撮像ユニット3000での1回の撮影で得られる画像は、エリアセンサ310a、310b、310c、310dどうしの隙間に対応する部分が抜け落ちたものとなってしまう。そこで、このエリアセンサ310a、310b、310c、310dどうしの隙間を埋めるため、プレパラート100を保持するステージを移動してプレパラート100と撮像素子群との相対位置を変更しながら撮像を複数回行うことで、抜けのない撮像対象領域A00の画像を取得する構成としている。この動作を高速に行うことにより、撮像に要する時間を短縮しつつ、広い領域の撮像を行うことができる。なお、撮像ユニット3000もステージ上に配置されているので、プレパラート100を保持するステージを移動する代わりに、撮像ユニット3000を保持するステージを移動してもよい。
【0112】
さらに、撮像ユニット3000は、複数の駆動部を含む駆動機構を有する。複数の駆動部の夫々は、複数のエリアセンサ310a、310b、310c、310dの夫々の撮像面を駆動する。その具体的を図16(b)に基づいて説明する。図16(b)は、図16(a)のB−B断面図である。図16(b)に示したように、エリアセンサ310a、310b、310c、310dには、基板312、電気回路313、保持部材314、接続部材315、駆動部材(シリンダ)316が設けられている。また、駆動部材316は定盤356上に設けられている。なお、接続部材315と駆動部材316は、駆動部を構成する。接続部材315および駆動部材316は、エリアセンサ310a、310b、310c、310d毎に3つずつ設けられている(図16(b)では、そのうちの手前の2つ
のみを図示している)。接続部材315は、保持部材314に固定されており、駆動部材316との接続部を中心として回転可能に構成されている。したがって、駆動部は、エリアセンサ310a、310b、310c、310dの撮像面のZ方向の位置を変更できるとともに、その撮像面の傾き(チルト角)を変更できるように構成されている。なお、ここで述べた駆動機構は、他の実施形態の撮像素子(ラインセンサ含む)にも適用可能である。
【0113】
プレパラート100を保持するステージは、プレパラート100を保持する保持部と、保持部をXY方向に移動するXYステージと、保持部をZ方向に移動するZステージを含む。ここで、Z方向は、結像光学系の光軸方向に相当し、XY方向は、その光軸に垂直な方向に相当する。XYステージおよびZステージには、プレパラート100を照明する光を通過させるための開口が設けられている。
【0114】
撮像ユニット3000を保持するステージは、XYZ方向の夫々に移動可能に構成されており、撮像素子群の位置を調整できる。また、撮像ユニット3000を保持するステージは、XYZ軸の夫々に関して回転可能に構成されており、撮像素子群の傾きや回転を調整できる。
【0115】
図17(a)は撮像領域を制限しない場合のエリアセンサ310a、エリアセンサ310b、エリアセンサ310c、エリアセンサ310dに対応するプレパラート側の撮像領域(すなわち撮像域)と撮像対象領域A00の詳細を示す図である。図17(a)においてA1,1はエリアセンサ310aに対応する撮像対象領域、A3,1はエリアセンサ310bに対応する撮像領域、A1,3はエリアセンサ310cに対応する撮像領域、A3,3はエリアセンサ310dに対応する撮像領域である。
【0116】
少ないショットで撮像対象領域A00全体を撮像出来るように、エリアセンサの有効画素領域の(X、Y方向の)長さがセンサ取り付けピッチの整数分の1(この例では1/2)になるように4つのエリアセンサが取り付けられる。なお実際には、エリアセンサの有効画素領域(あるいは撮像領域)とセンサ取り付けピッチとの関係は、エリアセンサ側の像面上で考える必要があるが、説明の便宜のため、プレパラート側の物体面上に投影した図を用いて説明を行う。
【0117】
エリアセンサ310aは1回目のショットで、撮像領域A1,1を撮像する。このとき同時に、エリアセンサ310bが撮像領域A3,1を、エリアセンサ310cが撮像領域A1,3を、エリアセンサ310dが撮像領域A3,3を撮像する。その後ステージ(または結像光学系1)を移動させ、次のショットに移動する。2回目のショットでは、エリアセンサ310a〜310dが撮像領域A1,2、A3,2、A1,4、A3,4を撮像する。3回目のショットでは、エリアセンサ310a〜310dが撮像領域A2,1、A4,1、A2,3、A4,3を撮像し、4回目のショットでは、撮像領域A2,2、A4,2、A2,4、A4,4を撮像する。このように4回のショットで、撮像対象領域の全体を撮像することができる。本実施形態では、四つのエリアセンサを一つの結像光学系に実装することによって、一つのエリアセンサを用いる場合よりもショット回数を1/4に少なくすることができ、処理時間の短縮を図ることができる。図15では四つのエリアセンサの構成を一例として挙げたが、もっと多くのエリアセンサを実装してもかまわない。
【0118】
図17(b)に、撮像領域を制限(狭小化)した場合のプレパラート側の撮像領域の一例を示す。図17(b)の点線の四角形は、四つのエリアセンサの撮像域をプレパラート側の物体面上に投影したものであり、図17(a)で示した1回目のショットにおける撮像領域に対応している。図17(b)に示すように、各エリアセンサの撮像領域の幅は、センサ取り付けピッチの1/3に設定した。この場合は、9回のショットを行うことで撮
像対象領域全体を撮像できる。このように、撮像領域の幅(縦、横の辺の長さ)がセンサ取り付けピッチの整数分の1になるように、各エリアセンサの撮像領域を決定すると良い。言い換えると、縦方向(又は横方向)に並べられた二つの撮像素子のそれぞれに対応する撮像領域の広さを、各撮像領域の縦方向(又は横方向)の幅がセンサ取り付けピッチを撮像領域上に投影した場合の長さの整数分の1となるように決定すると良い。これにより、撮像対象領域全体の画像を無駄なく取り込むことが可能となる。
【0119】
エリアセンサを用いた構成においても、第1から第4の実施形態で示した方法で、Z位置のばらつき情報や領域内Z位置ばらつきに基づいて、適応的に撮像領域の広さを決定する。これにより、検体が被写界深度から外れることによる画像のぼけを抑制することができる。
【0120】
以上述べたように、本発明の第5の実施形態によれば、複数の撮像素子により同時に撮像を行うようにしたことで、より広範囲の撮像処理を高速に行うことができるようになる。また、本実施形態では、センサ取り付けピッチに基づいて撮像領域の幅を決定したことによって、無駄な画像データが取り込まれることを防ぎ、撮像処理及び画像合成処理の効率化ならびに処理時間の短縮を図ることができる。
【0121】
<第6の実施形態>
第5の実施形態で説明したように、一つの結像光学系に複数の撮像素子を実装した構成の撮像装置において、Z位置のばらつき情報や領域内Z位置ばらつきに応じて撮像領域の広さを適応的に変更することで、画像のぼけを抑制することができる。しかしながら、検体の状態によっては、第5の実施形態のように撮像領域の広さを調整するだけでは、画像のぼけを十分に防ぐことができない場合がある。第6の実施形態は、このような場合に有効な方法である。
【0122】
本発明の第6の実施形態を、図18(a)、図18(b)、図19(a)、図19(b)を用いて説明する。図18(a)、図18(b)、図19(a)、図19(b)は、一つの光学系に複数(二つ)のラインセンサを設けた撮像装置の例である。前述した符号については、説明は省略する。図中211a、211bは検体のZ位置のばらつきに応じて制限したラインセンサ210a、210bの撮像領域、1eはプレパラート上の撮像領域を示す。
【0123】
図18(a)では、検体のZ位置105のばらつきが小さいプレパラートを撮像する場合の例を示している。図18(a)を見てわかるように、検体のZ位置105のばらつきの小さなプレパラートでは、撮像領域を広くしても、被写界深度から検体のZ位置105が外れることはない。すなわち検体の画像がぼけることはない。図18(b)は検体のZ位置105のばらつきが大きなプレパラートを撮像する場合の例を示している。図18(b)に示した検体の場合は、撮像領域を狭めることで被写界深度内に検体のZ位置105を入れることができる。
【0124】
図19(a)も検体のZ位置のばらつき105が大きなプレパラートを撮像する場合の例を示している。図19(a)と図18(b)の検体のZ位置のばらつきはほぼ同程度であるにもかかわらず、図19(a)の検体の場合は、撮像領域を狭くしても被写界深度から検体が外れてしまう。この理由は、ラインセンサ210a、210bが同じ平面210に配置されているため、両方のラインセンサの合焦位置が同じ高さ(Z位置)になってしまうからである。図19(a)に示した検体の位置を撮像する場合、一方のラインセンサの撮像領域において検体にピントを合わせると、他方のラインセンサの撮像領域では、検体が被写界深度から外れてしまうのである。
【0125】
このような問題を解決するために、本発明の第6の実施形態では、図19(b)に示した様に、撮像素子であるラインセンサ210a、210bにそれぞれ前述した駆動部を設け、撮像素子毎に合焦位置を個別に調整できるようにする。駆動部としては、図16(b)で示したのと同様のものを用いることができる。図19(b)を見てわかるように、ラインセンサ210a、210bを駆動部でZ方向に各々移動することによって、それぞれの撮像領域内において、検体のZ位置105を被写界深度内に収めることが可能となる。駆動部は、撮像素子をZ方向に移動させるだけでなく、撮像素子のチルト(傾き)制御を行ってもよい。検体のZ位置のばらつきに応じて撮像素子のZ位置とチルトの両方を調整すれば、1回の撮像領域をより広くすることが可能となる。駆動部の駆動量は、例えば、第1の実施形態において合焦位置を求めたときと同様の計算をそれぞれのラインセンサ210a、210bについて個別に行うことで、求めることができる。
また、撮像素子が2つの場合は、特に、1つの撮像素子に前記調整機構を実装する実施形態でも好適である。すなわち、移動不可能な撮像素子に対してはプレパラートのステージを移動して合焦位置を合わせ、そのステージの状態で他方の撮像素子のZ位置とチルトの少なくとも一方を調整すれば、両方の撮像素子の合焦位置の調整が行える。
【0126】
以上の説明では、ラインセンサを用いた撮像装置を例に挙げたが、エリアセンサを用いた撮像装置に対して第6の実施形態で述べた方法(撮像素子毎に合焦位置を調整する方法)を適用してもよい。
【0127】
以上説明したように、本発明の第6の実施形態では、複数の撮像素子(ラインセンサ又はエリアセンサ)のそれぞれを個別に移動又は傾けることによって、撮像素子ごとに合焦位置のZ位置又は傾きを調整する駆動手段を設けている。これにより、複数の撮像素子で同時に撮像する複数の撮像領域のそれぞれで、検体のZ位置に合わせた適切な合焦位置(被写界深度)を設定できるため、より高品質な画像を取得することが可能となる。
【0128】
<第7の実施形態>
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。第6の実施形態では、一つの光学系に複数の撮像素子を実装した撮像装置において、撮像素子一つ一つに駆動部を設け、撮像領域内の検体のZ位置と合焦位置が合致するように各撮像素子をZ方向に移動させた。この構成によれば、複数の撮像素子からピントの合った画像データを同時に取得できるので、高品質な合成画像の生成を高速に行うことができるという利点がある。しかしながら、第6の実施形態の構成では、複数の駆動部が必要であるとともに、撮像素子の実装が複雑になるため、コストが上昇する可能性が高い。そこで、第7の実施形態では、この駆動部を設けずに、言い換えれば、撮像素子のZ位置を移動することなく、図19(a)で説明した問題を解決する構成を示す。
【0129】
第7の実施形態の要旨は、Z位置のばらつきが大きなプレパラートでは、使用する(処理する)撮像素子を減らすことによって、被写界深度から検体が外れること(ぼけた画像の撮像)を防止することにある。例えば、二つの撮像素子を有する撮像装置の場合であれば、Z位置のばらつきが予め定めた閾値より大きい場合は撮像素子を一つに減らし、それ以外の場合は二つの撮像素子を用いるというような切り替えを行うと、処理が簡便である。撮像素子の数が三つ以上の場合も同じように、Z位置のばらつきが大きくなるほど撮像素子の数を減らすような制御を行えばよい。あるいは、第1の実施形態のようにプレパラート上の各位置のZ位置のばらつきが分かっている場合には、検体のZ位置ばらつきが被写界深度以下か否かを撮像素子毎に評価することで、使用する撮像素子を決定することもできる。これらの撮像条件を決定し制御する撮像制御手段としての機能は、図3における画像処理部2及びコントローラ部3が担う。
【0130】
図20(a)、図20(b)を用いて、本発明の第7の実施形態の撮像素子の制御の一
例を説明する。既出の符号については、説明を省略する。図20(a)、図20(b)は、一つの結像光学系に二つのラインセンサを実装した撮像装置を示している。図20(a)は第1回目のスキャン、図20(b)は第2回目のスキャンを示している。図を見てわかるように、ラインセンサ210aのみ使用することによって、第1、第2スキャンのいずれでも検体のZ位置105が被写界深度内に入る。一方、ラインセンサ210bの撮像領域においては、被写界深度内に検体のZ位置105を収めることができないため、ラインセンサ210bの画像データの処理を禁止している。
【0131】
このように本発明の第7の実施形態では、検体のZ位置ばらつきが大きい場合に、使用する撮像素子の数を減らすという制御を行う。そのため、検体のZ位置ばらつきが大きい場合は、スキャン回数が増えることによって、合成画像を生成する時間が長くなる。しかしながら、検体が被写界深度から外れることを抑制できるため、ピントの合った高品質な合成画像を生成できるという利点がある。処理時間と画像品質はトレードオフの関係にあるため、ユーザにどちらを優先するかを選択させてもよい。例えば、撮像素子の数を減らす条件(閾値など)を、処理時間優先の場合は甘く、画像品質優先の場合は厳しくなるよう、調整すればよい。
【0132】
本実施形態の制御を、第5、第6の実施形態の制御と組み合わせても良好である。例えば、検体のZ位置105のばらつきが図20(a)、図20(b)に示すよりも大きければ、使用(駆動)する撮像素子を減らすだけでなく、さらに撮像領域を狭小化してもよい。あるいは、第6の実施形態において撮像領域の狭小化と撮像素子のZ移動を行っても、依然として被写界深度内に検体のZ位置ばらつきが収まらない場合に、処理する撮像素子を減らしてもよい。このように、検体のZ位置ばらつきに応じて、撮像素子の位置、撮像領域の広さ、処理する撮像素子の数などを適宜制御すれば、検体が被写界深度から外れることをより確実に防止できる。
【0133】
第7の実施形態でのZ位置のばらつきの評価は、離散的に配置された複数の撮像素子をいくつ(あるいはどれを)使用するかを決定するために行う。したがって、プレパラート上で離れた位置にある検体のZ位置のずれ量、すなわちZ位置のばらつき(空間分布)における空間周波数の低周波成分を評価すると良好である。
【0134】
また、本発明の第7の実施形態では、撮像素子の使用の可否、撮像領域の制限の処理を単純化するために、以下の方法が有効である。すなわち、従来の狭視野の撮像装置で使用されていた旧いプレパラートと、広視野での撮像に対応した新しいプレパラートの2種類のプレパラートを区別して管理する。旧いプレパラートは検体のZ位置ばらつきが大きい可能性があるのに対し、新しいプレパラートは広視野での撮像を可能にするため検体のZ位置の平面度が高くなるように作製されたものである。撮像装置は、撮像するプレパラートが旧いプレパラートか新しいプレパラートかを判別する。旧いプレパラートの場合は、撮像素子を1つに制限し、撮像領域を従来の撮像装置と同等に狭め、従来の撮像装置と同じ撮像回数で、すなわち、従来並みの速度で合成画像を生成する。新しいプレパラートの場合は、複数の撮像素子を用いて高速に合成画像を生成する。このような制御であれば、処理アルゴリズムが単純化され、また撮像素子の駆動部が必要ないので機構が単純化されるため、低コストで撮像装置を実現できる。また、Z位置ばらつきの計測及び評価、撮像領域の計算等の処理が必要ないので、高速な合成画像の生成を実現できる。
【0135】
以上説明したように、本発明の第7の実施形態によれば、一つの光学系に複数の撮像素子を設けた撮像装置において、Z位置のばらつきが大きければ使用する撮像素子の数を減らすことにより、前述した実施形態同様に、高品質な画像を取得することができる。またこの構成では、撮像素子のZ位置を調整する駆動部が必要ないので、構成が簡単化されコストを下げることができる。
【0136】
<第8の実施形態>
次に、本発明の第8の実施形態を示す。本発明の第8の実施形態は、撮像域が異なる複数の撮像素子を設け、Z位置ばらつきの大きさに応じて、使用する撮像素子を選択することで、撮像領域の広さを変化させるのと等価な効果を得ることを要旨とするものである。
【0137】
図21は本発明の第8の実施形態の撮像装置の構成を模式的に示した図である。一つの結像光学系1に対し、二つのラインセンサを設けた例である。図21において、220は複数のラインセンサを実装する平面、220aは撮像域の広いラインセンサ、220bは撮像域の狭いラインセンサである。S1(白色と両側の灰色の全体)は撮像域の広いラインセンサ220aに対応するプレパラート100上の撮像領域、S2(白色部分)は撮像域の狭いラインセンサ220bに対応する撮像領域である。
【0138】
この撮像装置では、Z位置のばらつきが大きい場合は、撮像領域を狭くするために撮像域の狭いラインセンサ220bを用いて撮像する。一方、Z位置のばらつきが小さい場合は、撮像領域を広くするために撮像域の広いラインセンサ220aを用いて撮像する。他の処理(Z位置ばらつきの評価、画像の合成等)は、他の実施形態と同じであるので、説明は省略する。図21において、ラインセンサ220aと220bの副走査方向の位置が違うが、この位置の違いは、スキャン開始位置(画像読み出しのタイミング)をずらすことによって補正すると良い。あるいは、画像データをメモリに保持し、メモリからの読み出し位置を変えることによって副走査方向の位置を補正しても良い。これらの撮像条件(使用する撮像素子、合焦位置、スキャン開始位置等)を決定し制御する撮像制御手段としての機能は、前述した図3における画像処理部2、コントローラ部3が担う。
【0139】
図21では撮像素子としてラインセンサを用いた例を示したが、撮像域の広さが異なる複数のエリアセンサを用いても同様の制御を実施可能である。エリアセンサの場合、センサを実装する平面に二つのセンサを実装しても良いが、結像光学系に広い視野が要求され、コストが高くなるので、ハーフミラーにより光路を分割し別々の平面に複数のエリアセンサを実装すると好適である。
【0140】
本発明の第6の実施形態によれば、撮像域の異なる複数の撮像素子を用意し、検体のZ位置のばらつきに応じて使用する撮像素子を切り替えるようにすることで、簡単な構成で、上記実施形態と同様、高品質な画像を取得することができる。
【0141】
<その他の実施形態>
(撮像領域の制限方法)
説明してきた実施形態では、画像処理部2が撮像領域の制限(狭小化)を行う例を示した。例えば、第1の実施形態では、ラインセンサ200から出力された全画像データが画像処理部2に入力され、画像処理部2が必要な領域の画像データを画像処理によって切り出している。この方法は、ラインセンサ200の動作タイミングを変更する必要がない、ラインセンサ200に特別な付加回路を設ける必要がない、撮像領域を任意の広さに制限することが容易である、等の利点がある。もちろん、画像処理部2が撮像領域の制限(狭小化)を行う場合、エリアセンサにも良好に適用することができる。
【0142】
撮像領域を制限する別の方法として、ラインセンサ200の動作タイミングを変更し、必要な領域の画像データのみラインセンサ200より出力させる方法がある。この方法は一般的にクロップと言われている方法である。この方法では、不要な(合成処理に利用しない)画像データが出力されないので、画像データの出力に要する転送時間が短くなる。そのため、高速にデータ処理できる利点がある。もちろん、クロップにより大まかに撮像領域を制限した後、画像処理部2で必要な画像データを正確に切り出すという方法も好適
である。なお、クロップによる撮像領域の制限方法は、エリアセンサにも良好に適用することができる。
【0143】
(合成処理の要否の制御)
上記実施形態では、プレパラートを複数回に分けて撮像し、得られた複数の画像を合成して全体画像を生成している。このような分割撮像及び合成処理は、プレパラート上の撮像対象領域よりも撮像素子の撮像領域(撮像域)のほうが大きい場合には、不要となる。以下、このような撮像装置に本発明を適用した例を説明する。
【0144】
この撮像装置は、一回の撮像によって被写体全体の画像を取得するモード(全体撮像モード)と、複数回の撮像によって得られた複数の撮像領域の画像をつなぎ合わせて被写体全体の画像を生成するモード(分割撮像モード)とを有している。いずれのモードを実行するかは、撮像制御手段として機能するコントローラ部3及び画像処理部2にて決定される。具体的には、Z位置ばらつきが小さい場合や、撮像対象領域の領域内Z位置ばらつきが被写界深度以下の場合には、全体撮像モードとなり、分割撮像及び合成処理は不要と判断し、撮像対象領域全体を一回で撮像する。一方、Z位置ばらつきが大きい場合や、撮像対象領域の領域内Z位置ばらつきが被写界深度を超える場合には、分割撮像モードとなり、撮像素子の撮像領域を制限(狭小化)して分割撮像を行い、それらを合成することで、ピントの合った全体画像(合成画像)を生成する。Z位置のばらつきの評価、撮像領域の制限方法、画像の合成等の処理は、前述した実施形態で述べたものと同じように行えばよい。このような制御を行うことで、検体のZ位置のばらつきが小さい場合は、分割撮像や合成処理を省略することで処理の高速化を図り、検体のZ位置のばらつきが大きい場合は、ぼけた画像が撮像されることを防止し、ピントの合った高品質な画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0145】
1:結像光学系、2:画像処理部、3:コントローラ部、100:プレパラート、104:検体、105:検体のZ位置、200:ラインセンサ、300:エリアセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像装置であって、
撮像素子と、
前記被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、
前記撮像素子が一回の撮像で画像データを取得する範囲である撮像領域の広さと、前記撮像領域を撮像するときの合焦位置とを制御する撮像制御手段と、
を有し、
前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、
前記撮像制御手段は、検体のZ位置のばらつきが小さい場合の撮像領域に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合の撮像領域の方が狭くなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて撮像領域の広さを決定する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像制御手段は、検体のZ位置が被写界深度内に収まるように、撮像領域の広さ及び合焦位置を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
複数回の撮像によって得られた複数の撮像領域の画像をつなぎ合わせて、前記被写体全体の合成画像を生成する画像処理手段をさらに有し、
前記撮像制御手段は、前記複数の撮像領域から得られた複数の画像の間に隙間が生じないように、前記複数の撮像領域それぞれの広さを決定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像制御手段は、
(a)撮像する被写体に含まれる検体のZ位置を実際に計測した結果から、検体のZ位置のばらつきを算出する、または
(b)検体のZ位置のばらつきの統計的な値を表すデータを予め記憶しているデータベースから、撮像する被写体に適合するデータを取得する、または
(c)被写体の属性情報を記録した情報タグから読み取られた、撮像する被写体の属性情報に基づいて、検体のZ位置のばらつきの統計的な値を表すデータを属性情報ごとに予め記憶しているデータベースから、当該撮像する被写体に適合するデータを取得する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
検体のZ位置のばらつきとは、各検体のZ位置、又は検体のZ位置から求めた近似曲面と、合焦位置との差のばらつきであり、
前記撮像制御手段は、検体のZ位置のばらつきがより小さくなるように、合焦位置の光軸方向の位置、又は合焦位置の光軸方向の位置と傾きを決定する
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮像素子は、一次元撮像素子であり、
前記撮像領域は、前記一次元撮像素子の主走査の幅と副走査の幅とで決まる矩形の領域であり、
前記撮像制御手段は、前記撮像領域内の検体のZ位置が被写界深度内に収まるように、副走査ごとに、前記一次元撮像素子の主走査の幅、副走査の幅、又は、その両方と合焦位置とを制御する
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像素子は、二次元撮像素子であり、
前記撮像領域は、前記二次元撮像素子の有効画素のうち画像データを取得する画素の範囲で決まる領域であり、
前記撮像制御手段は、前記撮像領域内の検体のZ位置が被写界深度内に収まるように、撮像ごとに、画像データを取得する画素の範囲と合焦位置とを制御する
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像制御手段は、前記撮像領域内の検体のZ位置のばらつきの統計量を計算し、前記統計量が被写界深度以下か否かを評価することにより、前記撮像領域内の検体のZ位置が被写界深度内に収まっているか否かを判断する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記統計量は、
前記撮像領域内の検体のZ位置の最大値と最小値の差、
前記撮像領域内の検体のZ位置の標準偏差に対し所定の係数を乗じた値、又は、
単位領域当たりの検体のZ位置のばらつきを表す値に対し前記撮像領域の面積を乗じた値である
ことを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
一つの結像光学系に対して一つの撮像素子が設けられており、
前記被写体と前記撮像素子の少なくともいずれかを移動又は傾けることによって、合焦位置の光軸方向の位置又は傾きを調整する駆動手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
一つの結像光学系に対して一つの撮像素子が設けられており、
撮像領域を狭くするために前記撮像素子の一部の画素のみを使用する場合に、前記撮像制御手段は、前記撮像素子の画素のうち前記結像光学系の視野の中央部に位置する画素を使用する
ことを特徴とする請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記撮像制御手段は、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に、一回の撮像によって前記被写体全体の画像を取得するモードが実行され、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合に、複数回の撮像によって得られた複数の撮像領域の画像をつなぎ合わせて前記被写体全体の画像を生成するモードが実行されるように、検体のZ位置のばらつきに応じてモードを切り替える
ことを特徴とする請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
一つの結像光学系に対して複数の撮像素子が設けられており、
少なくとも1つの撮像素子のそれぞれを移動及び/又は傾けることによって、合焦位置の光軸方向の位置及び/又は傾きを調整する駆動手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記撮像制御手段は、所定のピッチで第1の方向に並べられた複数の撮像素子のそれぞれに対応する撮像領域を、各撮像領域の前記第1の方向の幅が前記所定のピッチを前記撮像領域上に投影した場合の長さの整数分の1となるように、制御する
ことを特徴とする請求項13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記撮像制御手段は、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に使用する撮像素子の数に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合に使用する撮像素子の数の方が少なくなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて使用する撮像素子の数を変化させる
ことを特徴とする請求項13に記載の撮像装置。
【請求項16】
被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像装置であって、
複数の撮像素子と、
前記被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、
撮像制御手段と、
を有し、
前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、
前記撮像制御手段は、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に使用する撮像素子の数に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合に使用する撮像素子の数の方が少なくなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて使用する撮像素子の数を変化させる
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項17】
被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像装置であって、
撮像域が異なる複数の撮像素子と、
前記被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、
撮像制御手段と、
を有し、
前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、
前記撮像制御手段は、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に使用する撮像素子の撮像域に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合に使用する撮像素子の撮像域の方が狭くなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて使用する撮像素子を切り替える
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項18】
撮像素子と、被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、を有する撮像装置の制御方法であって、
前記撮像素子が一回の撮像で画像データを取得する範囲である撮像領域の広さと、前記撮像領域を撮像するときの合焦位置とを決定する決定ステップと、
前記決定ステップにおいて決定された撮像領域の広さ及び合焦位置で被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像ステップと、
を有し、
前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、
前記決定ステップでは、検体のZ位置のばらつきが小さい場合の撮像領域に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合の撮像領域の方が狭くなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて撮像領域の広さを決定する
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項19】
複数の撮像素子と、被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、を有する撮像装置の制御方法であって、
撮像に使用する撮像素子を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにおいて決定された撮像素子を使用して被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像ステップと、
を有し、
前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、
前記決定ステップでは、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に使用する撮像素子の数に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合に使用する撮像素子の数の方が少なくなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて使用する撮像素子の数を変化させる
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項20】
撮像域が異なる複数の撮像素子と、被写体の像を拡大して前記撮像素子に結像する結像光学系と、を有する撮像装置の制御方法であって、
撮像に使用する撮像素子を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにおいて決定された撮像素子を使用して被写体を撮像し、ディジタル画像を生成する撮像ステップと、
を有し、
前記被写体は、前記結像光学系の光軸方向の位置であるZ位置が異なる検体を含んでおり、
前記決定ステップでは、検体のZ位置のばらつきが小さい場合に使用する撮像素子の撮像域に比べ、検体のZ位置のばらつきが相対的に大きい場合に使用する撮像素子の撮像域の方が狭くなるように、検体のZ位置のばらつきに応じて使用する撮像素子を切り替えることを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−83925(P2013−83925A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152645(P2012−152645)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】