撮像装置及びカメラ
【課題】防塵機能と防振機能とを省スペースでかつ安価に実現することができる撮像装置、及びこのような撮像装置を利用したカメラを提供すること。
【解決手段】フィルタガラス22にX軸アクチュエータとY軸アクチュエータとしての機能を有する圧電体23と、弾性体24とを積層することにより、防塵フィルタ12を構成する。そして、防塵機能を利用する場合には圧電体23によりフィルタガラス22に定在波を発生させ、防振機能を利用する場合には圧電体23により弾性体24に進行波を発生させる。
【解決手段】フィルタガラス22にX軸アクチュエータとY軸アクチュエータとしての機能を有する圧電体23と、弾性体24とを積層することにより、防塵フィルタ12を構成する。そして、防塵機能を利用する場合には圧電体23によりフィルタガラス22に定在波を発生させ、防振機能を利用する場合には圧電体23により弾性体24に進行波を発生させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を有する撮像装置及び撮像装置を利用したカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタルカメラ、特にレンズ交換式のデジタルカメラにおいては、レンズ交換時等に塵埃がカメラ本体内に進入してカメラ本体内の撮像素子に付着することにより、撮像素子で取得される画像が劣化することがある。このような撮像素子への塵埃の付着による画質の劣化の問題を解決するために、撮像素子の前面に撮像素子への塵埃を防止するための防塵フィルタを配置しておき、この防塵フィルタを特許文献1において提案されているような超音波モータを利用して振動させることにより、撮像素子に付着した塵埃を払い落とす、所謂防塵機能を有するカメラが各種提案されている。
【0003】
一方、撮像素子を交換レンズの光軸に対して直交するXY平面上で移動させることにより、防振(手ブレ補正)を行うカメラも各種提案されている。
【特許文献1】特開2000−60154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した防塵フィルタを振動させることにより塵埃を払い落とす防塵技術と撮像素子を移動させることによる防振技術とを併せ持つカメラについては提案されていない。これは、これら2つの機能を単純に組み合わせて搭載してしまうと、2つの機能を実現するための機構を配置するためにそれぞれ独立のスペースが必要となってしまい、カメラが大型化し、かつコストも高くなってしまうからである。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、防塵機能と防振機能とを省スペースでかつ安価に実現することができる撮像装置、及びこのような撮像装置を利用したカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による撮像装置は、撮像素子を有する撮像装置において、圧電体が貼り付けられ、該圧電体の振動によって振動可能になされた弾性体からなる振動子と、上記撮像素子を保持すると共に、上記振動子の振動によって上記振動子に対して相対移動可能になされた可動子と、上記撮像素子の前面に配置され、かつ上記振動子に固定されてなり、上記振動子の振動によって振動可能になされた透明部材とを具備することを特徴とする。
【0007】
また、上記の目的を達成するために、本発明の第2の態様によるカメラは、撮像素子と、圧電体が貼り付けられ、該圧電体の振動によって振動可能になされた弾性体からなる振動子と、上記撮像素子を保持すると共に、上記振動子の振動によって上記振動子に対して相対移動可能になされた可動子と、上記撮像素子の前面に配置され、かつ上記振動子に固定されてなり、上記振動子の振動によって振動可能になされた透明部材とを具備することを特徴とする。
【0008】
これら第1及び第2の態様によれば、防塵機能を実現するための機構と防振機能を実現するための機構とを共用としたので、防塵機能と防振機能とを省スペースでかつ安価に実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防塵機能と防振機能とを省スペースでかつ安価に実現することができる撮像装置、及びこのような撮像装置を利用したカメラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成部材を示す分解斜視図である。図1に示すように、本撮像装置は、撮像素子1と、X枠2と、Y枠3と、地板4と、撮像素子基板5と、シールゴム6と、ローパスフィルタ蓋7と、シールゴム8と、ローパスフィルタ9と、ホルダ10と、シールゴム11と、防塵フィルタ12と、フィルタ押え13とから構成されている。
【0011】
図1において、撮像素子1はX枠2に取り付けられる。X枠2には図2に示すように溝部2aが形成されており、撮像素子1の取り付け時には、溝部2aを介して撮像素子1の端子部1aが突出するようになっている。
【0012】
また、図1に示すように、X枠2には凸状部2bが形成され、凸状部2bにはX枠ガイド棒2cと防塵フィルタ取り付け部2dとが形成されている。更に、Y枠3にはX枠受け部3aが形成され、このX枠受け部3aにはX枠ガイド穴3bが形成されている。このような構成において、X枠2は、X枠受け部3aの範囲内で図示X方向に移動可能なようにY枠3に取り付けられる。これらX枠2及びY枠3によって可動子が構成される。
【0013】
また、Y枠3には凸状部3cが形成され、この凸状部3cにはY枠ガイド棒3dと防塵フィルタ取り付け部3eとが形成されている。更に、地板4にはY枠受け部4aが形成され、このY枠受け部4aにはY枠ガイド穴4bが形成されている。このような構成において、Y枠3は、Y枠受け部4aの範囲内で図示Y方向に移動可能なように地板4に取り付けられる。
【0014】
更に、撮像素子1の端子部1aは、地板4の背面に配された撮像素子基板5に導電接続される。ここで、撮像素子基板5には図示しない撮像素子インターフェイス回路(詳細は後述する)が実装されており、この撮像素子インターフェイス回路により撮像素子1が駆動される。
【0015】
図3は、撮像素子1、X枠2、Y枠3、地板4、及び撮像素子基板5が組み立てられた状態の撮像装置の図である。このような状態において、X枠2及びY枠3はそれぞれX枠受け部3a、Y枠受け部4aの範囲内でX方向及びY方向に相対移動可能であり、この移動に伴って、撮像素子1を図示XY方向に移動させることが可能である。
【0016】
更に、撮像素子1には、シールゴム6が接着等の手法によって取り付けられる。そして、シールゴム6にはローパスフィルタ蓋7が当接され、このローパスフィルタ蓋7にシールゴム8を介してローパスフィルタ9が取り付けられる。この状態でホルダ10が地板4に取り付けられ、ホルダ10と地板4との間に、ローパスフィルタ蓋7、シールゴム8、及びローパスフィルタ9が保持される。図3に加えて、更にシールゴム6、ローパスフィルタ蓋7、シールゴム8、ローパスフィルタ9、及びホルダ10が組み立てられた状態の撮像装置を図4に示す。図4に示すように、ホルダ10には穴10a、穴10bが形成されており、これら穴10a、10bの範囲に、X枠2及びY枠3の移動範囲がそれぞれ規制される。
【0017】
また、ホルダ10には、シールゴム11を介して防塵フィルタ12が当て付けられ、この防塵フィルタ12を当て付け保持するようにフィルタ押え13がホルダ10に取り付けられる。図4に加えて、更にシールゴム11、防塵フィルタ12、フィルタ押え13が組み立てられた状態の撮像装置を図5に示す。図5に示すような構成により、撮像装置内への塵埃の侵入が防止される。また、防塵フィルタ12は、付着した塵埃を振動によって除去可能に構成されている。このため、防塵フィルタ12にはフレキシブルプリント基板21が接続され、フレキシブルプリント基板21はホルダ10に設けられた回路基板10cに接続される。そして、回路基板10cは、詳細は後で述べる防塵及び防振制御回路に接続される。また、図6は、図5の撮像装置におけるA−A線断面を示した図である。図6に示すように、防塵フィルタ12とフィルタ押え13との間には、防塵フィルタ12の振動の自由度を確保するために、微小な空隙が設けられている。
【0018】
以下、図1の防塵フィルタ12について更に説明する。図7は、防塵フィルタ12の斜視図である。図7に示すように、防塵フィルタ12は、透明部材としてのフィルタガラス22上に、円環状の圧電体23と、振動子としての円環状の弾性体24とが積層されて構成されている。ここで、図7に示すように、弾性体24は、2つの円環状の弾性体が同心円状に配置されて構成される。
【0019】
また、図7において、弾性体24には突起部24a及び24bが形成されている。これら突起部24aと突起部24bとは、それぞれフィルタガラス22の中心に対して略90°対称の位置に形成されている。図7のように突起部24a、24bを形成しておくことにより、防塵フィルタ12の取り付け時に、図8(a)に示すようにX枠2の防塵フィルタ取り付け部2dと突起部24aとが当接し、かつ図8(b)に示すようにY枠3の防塵フィルタ取り付け部3eと突起部24bとが当接するようになっている。なお、図8(a)及び8(b)においては、ローパスフィルタ9やホルダ10等の図示を省略している。
【0020】
また、図6に示すように、圧電体23は、フレキシブルプリント基板21に導電接続されている。上述したように、フレキシブルプリント基板21はホルダ10の回路基板10cを介して後述する防振及び防塵制御回路に接続されている。
【0021】
図9は圧電体23について示した図である。図9に示す圧電体23は、1枚の円環状圧電体に、2つの円環状の弾性体24に対応して2種類の円環状の分極パターン23a−1、23a−2が形成されている。ここで、内側の分極パターン23a−1はX枠2を駆動するためのX軸アクチュエータであり、設定次数が10次になるように分極パターンが形成されている。一方、外側の分極パターン23a−2はY枠3を駆動するためのY軸アクチュエータであり、設定次数が9次になるように分極パターンが形成されている。
【0022】
また、それぞれの分極パターン23a−1、23a−2はA相側とB相側に分かれており、A相側の分極パターンとB相側の分極パターンとには、それぞれ対応する電圧を印加できるように構成されている。
【0023】
つまり、図9に示すように、分極パターン23a−1のA相側の正の分極パターンXA+はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−1に、負の分極パターンXA−はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−2に導電接続されている。また、分極パターン23a−1のB相側の正の分極パターンXB+はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−3に、負の分極パターンXB−はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−4に導電接続されている。更に、分極パターン23a−2のA相側の正の分極パターンYA+はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−5に、負の分極パターンYA−はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−6に導電接続されている。また、分極パターン23a−2のB相側の正の分極パターンYB+はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−7に、負の分極パターンYB−はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−8に導電接続されている。
【0024】
更に、圧電体23にはGNDパターン23bが形成され、このGNDパターン23bはフレキシブルプリント基板21のGNDパターン21bに接続されている。また、圧電体23には、分極パターン23a−1を駆動する際の駆動周波数を調整するためのfαフィードバック用分極パターン23c−1と分極パターン23a−2を駆動する際の駆動周波数を調整するためのfβフィードバック用分極パターン23c−2とが形成され、これらはそれぞれフレキシブルプリント基板21の導電パターン21c−1、21c−2に接続されている。
【0025】
このような構成により、圧電体23を複数の異なる態様で振動させ、これによって、防振動作のために可動子としてのX枠2及びY枠3を移動させたり、防塵動作のために透明部材としてのフィルタガラス22を振動させたりすることが可能である。これについては、後で詳しく説明する。
【0026】
以下、上述したような構成を有する撮像装置が適用されたカメラを例にとり、本発明の一実施形態に係る撮像装置について更に説明する。図10は本発明の一実施形態の撮像装置が適用されたカメラの構成を示すブロック図である。ここで、図10のカメラは、レンズ交換式の一眼レフレックスカメラを想定しており、概略的には、交換レンズとしてのレンズユニット100と、カメラ本体としてのボディユニット200から主に構成されたカメラシステムである。図10のカメラシステムにおいては、ボディユニット200の前面に形成された図示しないマウント対して、所望の種類のレンズユニット100が着脱自在に構成されている。
【0027】
レンズユニット100の制御は、レンズユニット100に設けられているレンズ制御用マイクロコンピュータ(以下“Lμcom”と称する)101によって行われる。また、ボディユニット200の制御はボディ制御用マイクロコンピュータ(以下“Bμcom”と称する)201によって行われる。ここで、Lμcom101とBμcom201とは、レンズユニット100がボディユニット200に装着されたときに、通信コネクタ106を介して通信可能に接続される。この状態において、カメラシステムとして、Lμcom101がBμcom201に従属的に協働しながら稼動する。
【0028】
以下、図10の構成について更に詳しく説明する。
図10において、レンズユニット100内にはLμcom101のほかに、撮影レンズ102と絞り103とが設けられている。撮影レンズ102は、レンズ駆動機構104内にある図示しないDCモータによって駆動され、被写体光束をボディユニット200方向に入射させる。また、絞り103は絞り駆動機構105内にある図示しないステッピングモータによって駆動され、ボディユニット200への被写体光束の入射量を調節する。Lμcom101は、Bμcom201の指令に従ってレンズ駆動機構104と絞り駆動機構105の各モータの制御を行う。
【0029】
一方、ボディユニット200内には、クイックリターンミラー202と、ペンタプリズム203と、接眼レンズ204と、サブミラー205とから構成される一眼レフレックス方式の構成部材が設けられている。クイックリターンミラー202は、一部がハーフミラーで構成され、クイックリターンミラー202が図示した位置にあるときには、撮影レンズ102を介して入射した被写体光束の一部をペンタプリズム203の側へ反射させ、一部をサブミラー205側に透過させる。ペンタプリズム203は、クイックリターンミラー202で反射された被写体光束に基づく被写体像を反転させて、接眼レンズ204に入射させる。接眼レンズ204は、ペンタプリズム203から入射した被写体像を、接眼レンズ204を見ている撮影者の眼に結像させる。サブミラー205は、クイックリターンミラー202の背面に設置され、クイックリターンミラー202のハーフミラー部を透過した被写体光束をAFセンサユニット206側に反射させる。
【0030】
AFセンサユニット206には、例えば位相差方式のAFセンサが内蔵されており、サブミラー205で反射された被写体光束に基づいて自動測距を行う。AFセンサ駆動回路207は、AFセンサユニット206の動作制御を行うと共にAFセンサユニットで得られた結果をBμcom201に出力する。また、測光回路208は、クイックリターンミラー202が図示の位置にあるときに、ペンタプリズム203からの光束に基づき周知の測光処理を行い、測光処理の結果をBμcom201に出力する。
【0031】
フォーカルプレーン式のシャッタ209は、撮像装置210の前面かつ撮影レンズ102の光軸上に配置され、クイックリターンミラー202がミラー駆動機構211によって撮影レンズ102の光軸上から退避するように駆動されたときに撮影レンズ102を介して本発明の一実施形態に係る撮像装置である撮像装置210に入射する被写体光束の量(露光量)を、測光回路208の測光結果等の諸条件に基づいて調節する。シャッタチャージ機構212は、シャッタ209の先幕と後幕を駆動するばねをチャージする。シャッタ制御回路213は、シャッタ209の先幕と後幕の動きを制御する。また、防塵及び防振制御回路214は、撮像装置210の圧電体23の動きを制御する。更に、温度測定回路215は、防塵フィルタ12の近傍に設けられ、撮像装置210の周辺の温度を測定し、温度測定の結果をBμcom201に出力する。つまり、通常、温度はガラス製の物材の弾性係数に影響し、その固有振動数を変化させる要因の1つであるため、運用時にその温度を計測してその固有振動数の変化を考慮しなければならない。したがって、稼動中に温度上昇が激しい撮像素子1の前面を保護するために設けられた防塵フィルタ12の温度変化を測定してその時の固有振動数を予想するほうがよい。このため、温度測定回路215によって、撮像素子1の周辺温度を測定することが好ましい。なお、この場合、温度測定回路215に接続される図示しないセンサの温度測定ポイントは、防塵フィルタ12の振動面の極近傍に設定されるのが好ましい。
【0032】
ここで、上述したように、撮像素子1は、撮影レンズ102の光軸に垂直な平面上に規定された2軸(X軸、Y軸)上を移動可能に構成されている。このとき、圧電体23に防塵及び防振制御回路214から所定の駆動信号を加えることによって、圧電体23は以下に示す2つの機能を持つアクチュエータとして動作する。
1. 防塵フィルタ12に付着した塵埃を除去するために防塵フィルタ12を振動させる機能(第2の状態の機能 以下、防塵機能と称する)。
2. 防振動作のために撮像素子1をXYの2軸上で変移させる機能(第1の状態の機能 以下、防振機能と称する)。この機能によって本カメラシステムに発生したブレによる被写体像の変移を相殺するように撮像素子1を変移させる。
【0033】
撮像素子インターフェイス回路216は、撮像素子1の動作制御及び撮像素子1で得られた撮像信号の処理を行う。画像処理コントローラ217は、撮像素子インターフェイス回路216で得られた撮像信号に対して、ホワイトバランス補正や圧縮処理等の周知の画像処理を行う。液晶モニタ218は、画像処理コントローラ217で処理された画像が表示される。SDRAM219、FlashRom220は、画像処理コントローラ217で処理された画像を一時記憶するメモリである。記録メディア221には、画像処理コントローラ217で処理された画像が記録される。このようにして、本カメラシステムは、電子撮像機能と共に電子記録表示機能を提供できるように構成されている。
【0034】
また、不揮発性メモリ221aは、本カメラシステム制御に必要な所定の制御パラメーータを記憶するメモリであり、例えばEEPROM等から構成される。また、動作表示用LCD222は、当該カメラシステムの動作状態をユーザへ告知するための表示を行う。カメラ操作スイッチ(SW)223は、例えばレリーズスイッチ、モード変更スイッチ、及びパワースイッチなどの、本カメラシステムをユーザが操作するために必要な操作ボタンに応じて動作するスイッチ群である。電池224は、本カメラシステムの電源である。電源回路225は、電池224の電圧を、当該カメラシステムを構成する各回路ユニットが必要とする電圧に変換して供給する。
【0035】
次に、図11を参照して、防塵及び防振制御回路214について更に説明する。図11は防塵及び防振制御回路214の構成を示すブロック図である。
防塵及び防振制御回路214には、サブマイクロコンピュータ(以下“Sμcom”と称する)311が設けられている。このSμcom311は、Bμcom201の指令に従って防塵及び防振制御回路214内の各部の制御を行う。
【0036】
X軸駆動回路312は防塵フィルタ12に配置されたX軸アクチュエータ(つまり、図9の分極パターン23a−1)を駆動するための駆動信号を発生させる。
【0037】
防塵動作(塵除去)のためには、防塵フィルタ12に定在波を発生させる。この場合には、XA+及びXB+に印加する駆動信号とXA−及びXB−に印加する駆動信号との位相差を180°に設定する。更に、駆動信号の周波数は防塵フィルタ12の構成部材であるフィルタガラス22の共振周波数に設定する。
【0038】
一方、撮像素子1をX軸上に沿って移動させる際には、防塵フィルタ12に進行波を発生させる。この場合にはXA+及びXA−に印加する駆動信号とXB+とXB−に印加する駆動信号との位相差を90°に設定する。更に、駆動信号の周波数は、進行波の発生に適した周波数に設定する。この周波数については後述する。
【0039】
ここで、X軸駆動回路312に接続されるSμcom311の制御端子について説明する。制御端子P_PwContXは、XA+、XA−、XB+、XB−に印加する駆動信号のON又はOFFを制御するための制御端子である。制御端子P_ClkOutXは、駆動信号の基準となるクロック信号を制御するための制御端子である。制御端子D_NCntXはクロック信号を分周する分周回路の分周率を設定するための制御端子である。制御端子P_θContXとP_CcwCwXはX軸駆動回路312で作られる2つの駆動信号の位相を設定するための制御端子である。制御端子P_SelXはX軸駆動回路312で作られた2つの駆動信号を、XA+、XA−、XB+、XB−に分配する際の分配率を設定するための制御端子である。P_ADXはX軸アクチュエータとしての分極パターン23a−1を駆動する際に、駆動周波数が適切であるかを検出するために使用される制御端子である。
【0040】
なお、この制御端子P_ADXはSμcom311のADコンバータヘ接続された端子であり、分極パターン23a−1のモニタ電極であるfαフィードバック用分極パターン23c−1において発生する電圧が入力される。ここで、駆動周波数はアクチュエータの使用される条件(温度、負荷など)で変化するので、fαフィードバック用分極パターン23c−1の電圧に応じて駆動周波数を変化させることでアクチュータを効率よく駆動できる。
【0041】
また、図11のY軸駆動回路313はX軸駆動回路312と略同じ機能を有し、Y軸アクチュエータ(つまり、図9の分極パターン23a−2である)に対する駆動信号を発生する。なお、図11において、Y軸駆動回路313に接続される制御端子のうち、X軸駆動回路312と同じ名を持つ制御端子は同じ機能を有する。つまり、これら同じ名の制御端子の差は、末尾の“X”と“Y”の差のみであるので説明は省略する。
【0042】
図11のX軸ブレ検出回路314はX軸方向のカメラシステムのブレ量を検出する。Sμcom311はこのX軸方向のブレ量に応じて撮像素子1をX軸上で変移させる。この際の撮像素子1の変移量を検出するためにX軸変移量検出センサ315が設けられている。一方、Y軸ブレ検出回路316はY軸方向のカメラシステムのブレ量を検出する。Sμcom311はこのY軸方向のブレ量に応じて撮像素子1をY軸上で変移させる。この際の撮像素子1の変移量を検出するためにY軸変移量検出センサ317が設けられている。
【0043】
以下、図11のような構成を有する防塵及び防振制御回路214について更に説明する。なお、上述したようにX軸駆動回路312とY軸駆動回路313の構成は基本的に同じものである。そこでここではX軸駆動回路312の動作についてのみ説明する。
【0044】
図12は、図11で説明した構成のうち、特にX軸駆動回路312の内部の詳細な構成を示した図である。また、図13は、図12のX軸駆動回路312における各構成部材から出力される信号の信号形態を示すタイムチャートである。
【0045】
図12に示すように、Sμcom311の内部にはクロックジェネレータ311aが設けられている。このクロックジェネレータ311aは、A相の分極パターンXA+及びXA−、B相の分極パターンXB+及びXB−に印加すべき信号周波数よりも十分に高い周波数で、図13に示すパルス信号(基本クロック)Sig1を出力する。この基本クロック信号Sig1は、X軸駆動回路312のN進カウンタ401に入力される。N進カウンタ401は基本クロック信号Sig1をカウントし、このカウント数が所定値Nに達する毎にカウント終了パルス信号Sig2を出力する。即ち、基本クロック信号Sig1は図13のSig2で示すようにして1/Nで分周されることになる。
【0046】
ここで、分周されたパルス信号Sig2は、HighとLowのデューティー比が1:1ではないので、第1の1/2分周回路402−1を介してデューティー比を1:1に変換する。このときに周波数は半分になる(図13に示すSig3参照)。第1の1/2分周回路402−1からの出力信号Sig3は、第2の1/2分周回路402−2と第1の排他的論理和(ExOR)回路407−1へと出力される。第2の1/2分周回路402−2に入力されたパルス信号は、更に周波数が半分のパルス信号Sig4となって出力される。
【0047】
ここで、パルス信号Sig4がハイ(High)状態のときに、MOSトランジスタQ01(404b1)がオン(ON)状態となる。また、パルス信号Sig4は、第1のインバータ403−1を介してMOSトランジスタQ02(404c1)に印加される。したがって、パルス信号Sig4のロー(Low)状態のときにMOSトランジスタQ02(404c1)がオン(ON)状態となる。
【0048】
このようにしてトランスA(405−1)の1次側に接続された2つのMOSトランジスタQ01(404b1)及びQ02(404c1)が交互にオン状態になると、トランスA(404−1)の2次側には、図13のSig5で示すような信号が発生する。ここで、トランスA(405−1)の巻線比は、電源回路225の出力電圧と圧電体23を駆動させるのに必要な電圧とによって決定される。また、抵抗R00(406−1)は、トランスA(405−1)に過大な電流が流れることを制限するために配設されているものである。
【0049】
圧電体23を駆動させるに際しては、MOSトランジスタQ00(404a1)がオン(ON)状態にあり、かつ電源回路225からトランスA(405−1)のセンタータップに電圧が印加されている必要がある。ここで、MOSトランジスタQ00(404a1)のオン又はオフの制御は、Sμcom311の制御端子P_PwContXから行われるようになっている。
【0050】
また、N進カウンタ401の設定値Nは、Sμcom311の制御端子D_NCntXにおいて設定される。つまり、Sμcom311は、設定値Nを制御することによって、圧電体23の駆動周波数を任意に変更することができるようになっている。駆動周波数の算出は次に示す式(1)による。
fdrv=fpls/4N ……(1)
ここで、N:N進カウンタ401への設定値、fpls:クロックジェネレータ311aからの出力パルスの周波数、fdlv:圧電体23に印加される駆動信号の周波数である。この式(1)に従った電圧の駆動信号(Sig5)が圧電体23に印加される。
【0051】
一方、第1の1/2分周回路402−1の出力信号Sig3は、第1のExOR回路407−1を経由して、第3の1/2分周回路402−3へと出力される。
【0052】
ここで、仮にSμcom311の制御端子P_θContXがハイ(High)状態に設定されるとする。このとき、パルス信号Sig3は反転して、第3の1/2分周回路402−3へと出力される。また、仮に制御端子P_θContXがロー(Low)状態に設定されるとする。このとき、パルス信号Sig3は、そのままの状態で第3の1/2分周回路402−3へと出力される(図13に示すSig6参照。なお、図13のSig6はP_θContX=High時の様子を示す)。このパルス信号Sig6は、更に第3の1/2分周回路402−3によって周波数が半分のSig70となり、このSig70が第2の排他的論理和(ExOR)回路407−2へ出力される。
【0053】
ここで、第1、第2、第3の1/2分周回路402−1、402−2、402−3のいずれにおいても、入力されるパルス信号の立ち上がりエッジに反応して分周動作を行うようになっている。
【0054】
第2のExOR回路407−2へ入力されたパルス信号Sig70は、仮にP_CcwCwXがHigh状態に設定されているならば、反転されて出力される。また仮にP_CcwCwXがLow状態に設定されているならば、そのままの状態で出力される(図13のSig7参照。なお、図13のSig7はPCcwCwXがHigh時の様子を示す)。
【0055】
第2のExOR回路407−2の出力によって、第2のインバータ403−2、MOSトランジスタQ11(404b2)及びQ12(404c2)、トランスB(405−2)が駆動されて、圧電体23に所定の電圧の駆動信号Sig8が印加される。
【0056】
ここで、第2のインバータ403−2、MOSトランジスタQ11(404b2)及びQ12(404c2)、トランスB(405−2)、及び抵抗R10(406−2)のそれぞれの機能は、上述した第1のインバータ403−1、MOSトランジスタQ01(404b1)及びQ02(404c1)、トランスA(405−1)、及び抵抗R00(406−1)のそれぞれの機能と略同様となっている。
【0057】
つまり、図12の回路においては、第1のExOR回路407−1と第2のExOR回路407−2の作用によって、2つのトランスA(405−1)、B(405−2)から出力される駆動信号に位相差が発生する。図13に示した例では、Sig5とSig8の駆動信号の位相差は−90°となる。
【0058】
以下に2つの制御端子P_θContX及びP_CcwCwXと2つの駆動信号Sig5及びSig8との関係をまとめる。図14は、制御端子P_θContX、制御端子P_CcwCwXの設定状態と2つのトランスA(405−1)、B(405−2)から出力される駆動信号Sig5、Sig8の位相差の関係を示している。
【0059】
図14に示すように、制御端子P_θContXをHigh、制御端子P_CcwCwXをHighに設定すると、駆動信号Sig5と駆動信号Sig8とには−90°の位相差が発生する。この状態で所定の周波数を設定することにより圧電体23は弾性体24上に進行波を発生させる。この進行波を受けてX枠2はX軸上を所定方向(仮に、こちら側をプラス方向とする)に移動する。このような状態1は、手ブレ補正(防振動作)において使用される。
【0060】
また、図14に示すように、制御端子P_θContXをHigh、制御端子P_CcwCwXをLowに設定すると、駆動信号Sig5と駆動信号Sig8とには+90°の位相差が発生する。この状態で所定の周波数を設定することにより圧電体23は弾性体24上に状態1とは逆向きの進行波を発生させ、この進行波を受けてX枠2(撮像素子1)はX軸上を上記プラス方向とは逆方向(以下、マイナス方向とする)に移動する。このような状態2は、手ブレ補正(防振動作)において使用される。
【0061】
また、制御端子P_θContXをLow、制御端子P_CcwCwXをHighに設定すると、駆動信号Sig5と駆動信号Sig8とには180°の位相差が発生する。この状態で所定の周波数を設定することにより圧電体23はフィルタガラス22上に定在波を発生させる。このような状態3は塵除去動作(防塵動作)において使用される。
【0062】
また、制御端子P_θContXをLow、制御端子P_CcwCwXをLowに設定すると、駆動信号Sig5と駆動信号Sig8の位相は同相となる。この状態4は本一実施形態においては使用しない。
【0063】
以上のような状態1〜状態3で示す防塵動作と防振動作の実行には、2つの駆動信号Sig5、Sig8を4種類の分極パターンXA+、XA−、XB+、XB−に対して適切に分配しなければならない。駆動信号の分配はソリッドステートリレーSSR1、SSR2、SSR3、SSR4によってなされる。ここで、ソリッドステートリレー以外に利用可能な素子としては、フォトMOSリレーと機械式リレーが考えられる。また、SSR1、SSR2、SSR3、SSR4のON又はOFF制御は制御端子P_SelXによってなされる。
【0064】
図15は、制御端子P_SelXの状態と2つの駆動信号Sig5、Sig8の圧電体への分配の関係を示している。
【0065】
図15に示すように、制御端子P_SelXをHighに設定するとSSR1とSSR4とがON状態となる。また、制御端子P_SelXの出力は第3のインバータ403にも入力される。そして、第3のインバータ403において制御端子P_SelXの出力が反転され、この反転された出力がSSR2とSSR3とに印加される。つまり、SSR2とSSR3とにはLow信号が印加されるのでOFF状態となる。この設定では、駆動信号Sig5は分極パターンXA+とXA−に印加され、駆動信号Sig8は分極パターンXB+とXB−に印加される。この設定は防振動作を実行する際になされる。
【0066】
一方、制御端子P_SelXをLowに設定するとSSR2とSSR3とがON状態となり、SSR1とSSR3とがOFF状態となる。この設定では、駆動信号Sig5は分極パターンXA+とXB+に印加され、駆動信号Sig8はXA−とXB−に印加される。この設定は防塵動作を実行する際になされる。
【0067】
図16は、Sμcom311の動作を示すフローチャートである。
Sμcom311はBμcom201が出力する制御命令(コマンド)を受けて、コマンドに応じた動作を実行する。つまり、図16のS100において、Sμcom311はBμcom201からのコマンドを受信するまで待機している。Bμcom201からのコマンドを受信すると、Sμcom311は、s101において、受信したコマンドが“防塵動作”であるか否かを判定する。ここで、“防塵動作”であることを示すコマンドは、撮影の準備動作(例えば撮影前にクイックリターンミラー202を撮影光路上から対比させる動作)に連動してSμcom311に送信される。
【0068】
s101の判定において、コマンドが“防塵動作”である場合にはs101からs1010へ移行し、“防塵動作”でない場合にはs101からs110へ移行する。
【0069】
s1010において、Sμcom311は、制御端子P_SelXをLowに設定する。このようにして、防塵動作のために、X軸駆動回路312からの2つの駆動信号Sig5、Sig8は、図15で示したようにしてX軸アクチュエータを構成する分極パターンXA+、XA−、XB+、XB−に分配される。また、Sμcom311は、s1011において制御端子P_SelYをLowに設定する。この設定によってY軸駆動回路313からの駆動信号はY軸アクチュエータを構成する分極パターンYA+、YA−、YB+、YB−に分配される。
【0070】
s102において、Sμcom311は、防塵動作のためにX軸アクチュエータを構成する分極パターン23a−1の駆動を開始させる。ここで、図17にはX軸アクチェータを構成する分極パターン23a−1と、Y軸アクチェータを構成する分極パターン23a−2のそれぞれのインピーダンス特性を示している。
【0071】
図17に示す周波数fγは、フィルタガラス22上に定在波が発生する駆動周波数である。防塵動作のためには周波数fγで分極パターン23a−1及び23a−2を駆動させる必要がある。したがって、Sμcom311は、周波数fγに対応する分周率を制御端子D_CntXより出力する。更に、制御端子P_PwContXをHighに設定し、かつ制御端子P_θContXをLowに、制御端子P_CcwCwXをHighに設定する。これらの設定によって位相差が180°である駆動信号Sig5、Sig8が発生する(図14の状態3参照)。
【0072】
また、s103において、Y軸アクチェータもX軸アクチェータと同様に駆動するために、Sμcom311は、制御端子D_CntYに周波数fγに対応する分周率を設定すると共に、制御端子P_PwContXをHighに、制御端子P_θContYをHighに、制御端子P_CcwCwYをLowに設定する。
【0073】
s102、s103の後、Sμcom311は、s104においてBμcom201から防塵動作の停止コマンド信号を受信したか否かを判定し、防塵動作の停止コマンドを受信するまで待機する。s104の判定において、停止コマンドを受信すると、s104からs105に移行して、Sμcom311はX軸アクチュエータを構成する分極パターン23a−1の動作を止める。即ち、制御端子P_PwContXをLowに設定する。その後、s106において、Sμcom311は、制御端子P_PwContYをLowに設定してY軸アクチュエータを構成する分極パターン23a−2の駆動を止める。そしてs100に戻る。
【0074】
また、s101の判定において、コマンドが“防塵動作”でない場合、Sμcom311は、s110において、受信したコマンドが“防振動作”であるか否かを判定する。s110の判定において、コマンドが“防振動作”の時はs1101へ移行し、“防振動作”でない時はs120へ移行する。ここで、“防振動作”のコマンドは撮影動作に連動してSμcom311に送信される。
【0075】
s1101において、Sμcom311は、制御端子P_SelXをHighに設定する。このようにして、防振動作のために、X軸駆動回路312からの2つの駆動信号Sig5、Sig8は、図15で示したようにしてX軸アクチュエータを構成する分極パターンXA+、XA−、XB+、XB−に分配される。また、s1102において、Sμcom311は、制御端子P_SelYをHighに設定する。この設定によってY軸駆動回路313からの駆動信号はY軸アクチュエータを構成する分極パターンYA+、YA−、YB+、YB−に分配される。
【0076】
s111において、Sμcom311は、X軸ブレ検出回路314の出力に基づいてX軸方向に対するブレの方向とブレの角度とを検出し、これら2つの値から更にX軸方向の変移量を算出する。続くs112においては、Sμcom311は、X軸上で撮像素子1を駆動するための設定を行う。図17に示すように、X軸アクチュエータを構成する分極パターン23a−1に進行波を発生させるためには、駆動周波数をfαに設定しなければならない。そこで、Sμcom311は、周波数fαに対応する分周率を制御端子D_CntXより出力する。更に制御端子P_PwContXをHighに設定する。そして、制御端子P_θContXと制御端子P_CcwCwXとに移動方向(図14で説明したプラス又はマイナス方向)に応じた信号を設定する。
【0077】
このようにして分極パターン23a−1を駆動開始した後、Sμcom311は、s113において、s111で算出された変移量分だけ撮像素子1が移動されるまで待機する。撮像素子1がs111の変移量分だけ移動したことが検出されるとs114に移行する。ここで、撮像素子1のX軸方向の変移量はX軸変移量検出センサ315及びX軸ブレ検出回路314の出力から検出される。撮像素子1がs111で算出された変位量だけ移動したことが検出されると、s114において、Sμcom311は、制御端子P_PwContXをLowに設定して分極パターン23a−1の駆動を停止させる。
【0078】
次に、s115において、Sμcom311は、Y軸ブレ検出回路316の出力に基づいてY軸方向に対するブレの方向とブレの角度とを検出し、これら2つの値から更にY軸方向の変移量を算出する。続くs116において、Sμcom311はY軸上で撮像素子1を駆動するための設定を行う。図17に示すように、Y軸アクチェータを構成する分極パターン23a−2に進行波を発生させるためには、駆動周波数をfβに設定しなければならない。そこでSμcom311は周波数fβに対応する分周率を制御端子D_CntYより出力する。更にSμcom311は、制御端子P_PwContYをHighに設定する。そして、制御端子P_θContYとP_CcwCwYにそれぞれ移動方向に応じた信号を設定する。
【0079】
このようにして分極パターン23a−2を駆動開始した後、Sμcom311は、s117において、s115で算出された変移量分、撮像素子1が移動するまで待機する。ステップs117の判定において、s115で算出された変移量が検出されるとs118へ移行する。ここで、撮像素子1の変移量はY軸変移量検出センサ317及びY軸ブレ検出回路316の出力から検出される。撮像素子1がs115で算出された変位量だけ移動したことが検出されると、s118において、Sμcom311は、制御端子P_PwContYをLowに設定して分極パターン23a−2の駆動を停止させる。
【0080】
その後、s119において、Sμcom311は、Bμcom201から防振動作停止のコマンドが受信されたか否かを判定する。s119の判定において、防振動作停止のコマンドが受信された場合にはs100に移行する。一方、防振動作の停止コマンドが受信されていない場合には防振動作を継続するためにs111に戻る。ここで、防振動作の停止コマンドは、撮影動作の終了時にBμcom201からSμcom311に送信されるものである。
【0081】
なお、上記した防塵動作を行うためには、撮像素子1をX軸上とY軸上とでブレ量に応じて変移させなければならない。本一実施形態では、図9に示すようにX軸アクチェータを構成する分極パターン23a−1とY軸アクチェータを構成する分極パターン23a−2とが1つのフィルタガラス22上に積層されている。したがって、X軸方向に関する撮像素子1の変移動作とY軸方向に関する撮像素子1の変移動作とを同時に行うことは出来ない。これは、分極パターン23a−1と分極パターン23a−2とに同時に駆動信号を印加するとフィルタガラス22上に2つの進行波が生じて干渉を起こすためである。このため、実際には、図16のフローチャートにおいて、Sμcom311はX軸方向の防振動作(s111からs114)とY軸方向の防振動作(s115からs118)とを交互に実行するようにする。これら2つの動作を高速に交互に実行することで、2つの動作が同時に実行されることと実質的には等価となる。
【0082】
以上説明したように、本一実施形態によれば、防塵動作を行うためのアクチュエータと防振動作を行うためのアクチュエータとを1つの防塵フィルタ12の中に構成することができる。したがって、防塵機能と防振機能とを省スペースでかつ安価に実現することができる。
【0083】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。例えば、図9に示した圧電体23に形成される分極パターンの次数は9次と10次に限らず、4次と5次、6次と7次など弾性体の形状との組み合わせに応じて決定することができる。また、分極パターン23a−1と分極パターン23a−2は1つの圧電体を分割して形成しても良いし、2つの圧電体から構成しても良い。
【0084】
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述した課題が解決でき、上述した効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成部材を示す分解斜視図である。
【図2】X枠を背面から見た斜視図である。
【図3】撮像素子、X枠、Y枠、地板、及び撮像素子基板が組み立てられた状態の撮像装置の図である。
【図4】図3に加えて、更にシールゴム、ローパスフィルタ蓋、シールゴム、ローパスフィルタ、及びホルダが組み立てられた状態の撮像装置の図である。
【図5】図4に加えて、更にシールゴム、防塵フィルタ、フィルタ押えが組み立てられた状態の撮像装置の図である。
【図6】図5の撮像装置におけるA−A線断面を示した図である。
【図7】防塵フィルタの斜視図である。
【図8】図8(a)はX枠と防塵フィルタの斜視図であり、図8(b)はY枠と防塵フィルタの斜視図である。
【図9】圧電体について示した図である。
【図10】本発明の一実施形態の撮像装置が適用されたカメラの構成を示すブロック図である。
【図11】防塵及び防振制御回路の構成を示すブロック図である。
【図12】X軸駆動回路の内部の詳細な構成を示した図である。
【図13】X軸駆動回路における各構成部材から出力される各信号の信号形態を示すタイムチャートである。
【図14】制御端子P_θContX、P_CcwCwXの設定状態とトランスA及びBから出力される駆動信号Sig5、Sig8の位相差の関係を示した図である。
【図15】制御端子P_SelXの状態と2つの駆動信号Sig5、Sig8の圧電体への分配の関係を示した図である。
【図16】Sμcomの動作を示すフローチャートである。
【図17】X軸アクチュエータとY軸アクチュエータを構成する分極パターンにおけるインピーダンス特性を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1…撮像素子、2…X枠、3…Y枠、12…防塵フィルタ、22…フィルタガラス、23…圧電体、24…弾性体、100…レンズユニット、101…レンズ制御用マイクロコンピュータ(Lμcom)、102…撮影レンズ、104…レンズ駆動機構、105…絞り駆動機構、200…ボディユニット、201…ボディ制御用マイクロコンピュータ(Bμcom)、210…撮像装置、214…防塵及び防振制御回路、215…温度測定回路、216…撮像素子インターフェイス回路、225…電源回路、311…サブマイクロコンピュータ(Sμcom)、312…X軸駆動回路、313…Y軸駆動回路、314…X軸ブレ検出回路、315…X軸変移量検出センサ、316…Y軸ブレ検出回路、317…Y軸変移量検出センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を有する撮像装置及び撮像装置を利用したカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタルカメラ、特にレンズ交換式のデジタルカメラにおいては、レンズ交換時等に塵埃がカメラ本体内に進入してカメラ本体内の撮像素子に付着することにより、撮像素子で取得される画像が劣化することがある。このような撮像素子への塵埃の付着による画質の劣化の問題を解決するために、撮像素子の前面に撮像素子への塵埃を防止するための防塵フィルタを配置しておき、この防塵フィルタを特許文献1において提案されているような超音波モータを利用して振動させることにより、撮像素子に付着した塵埃を払い落とす、所謂防塵機能を有するカメラが各種提案されている。
【0003】
一方、撮像素子を交換レンズの光軸に対して直交するXY平面上で移動させることにより、防振(手ブレ補正)を行うカメラも各種提案されている。
【特許文献1】特開2000−60154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した防塵フィルタを振動させることにより塵埃を払い落とす防塵技術と撮像素子を移動させることによる防振技術とを併せ持つカメラについては提案されていない。これは、これら2つの機能を単純に組み合わせて搭載してしまうと、2つの機能を実現するための機構を配置するためにそれぞれ独立のスペースが必要となってしまい、カメラが大型化し、かつコストも高くなってしまうからである。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、防塵機能と防振機能とを省スペースでかつ安価に実現することができる撮像装置、及びこのような撮像装置を利用したカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による撮像装置は、撮像素子を有する撮像装置において、圧電体が貼り付けられ、該圧電体の振動によって振動可能になされた弾性体からなる振動子と、上記撮像素子を保持すると共に、上記振動子の振動によって上記振動子に対して相対移動可能になされた可動子と、上記撮像素子の前面に配置され、かつ上記振動子に固定されてなり、上記振動子の振動によって振動可能になされた透明部材とを具備することを特徴とする。
【0007】
また、上記の目的を達成するために、本発明の第2の態様によるカメラは、撮像素子と、圧電体が貼り付けられ、該圧電体の振動によって振動可能になされた弾性体からなる振動子と、上記撮像素子を保持すると共に、上記振動子の振動によって上記振動子に対して相対移動可能になされた可動子と、上記撮像素子の前面に配置され、かつ上記振動子に固定されてなり、上記振動子の振動によって振動可能になされた透明部材とを具備することを特徴とする。
【0008】
これら第1及び第2の態様によれば、防塵機能を実現するための機構と防振機能を実現するための機構とを共用としたので、防塵機能と防振機能とを省スペースでかつ安価に実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防塵機能と防振機能とを省スペースでかつ安価に実現することができる撮像装置、及びこのような撮像装置を利用したカメラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成部材を示す分解斜視図である。図1に示すように、本撮像装置は、撮像素子1と、X枠2と、Y枠3と、地板4と、撮像素子基板5と、シールゴム6と、ローパスフィルタ蓋7と、シールゴム8と、ローパスフィルタ9と、ホルダ10と、シールゴム11と、防塵フィルタ12と、フィルタ押え13とから構成されている。
【0011】
図1において、撮像素子1はX枠2に取り付けられる。X枠2には図2に示すように溝部2aが形成されており、撮像素子1の取り付け時には、溝部2aを介して撮像素子1の端子部1aが突出するようになっている。
【0012】
また、図1に示すように、X枠2には凸状部2bが形成され、凸状部2bにはX枠ガイド棒2cと防塵フィルタ取り付け部2dとが形成されている。更に、Y枠3にはX枠受け部3aが形成され、このX枠受け部3aにはX枠ガイド穴3bが形成されている。このような構成において、X枠2は、X枠受け部3aの範囲内で図示X方向に移動可能なようにY枠3に取り付けられる。これらX枠2及びY枠3によって可動子が構成される。
【0013】
また、Y枠3には凸状部3cが形成され、この凸状部3cにはY枠ガイド棒3dと防塵フィルタ取り付け部3eとが形成されている。更に、地板4にはY枠受け部4aが形成され、このY枠受け部4aにはY枠ガイド穴4bが形成されている。このような構成において、Y枠3は、Y枠受け部4aの範囲内で図示Y方向に移動可能なように地板4に取り付けられる。
【0014】
更に、撮像素子1の端子部1aは、地板4の背面に配された撮像素子基板5に導電接続される。ここで、撮像素子基板5には図示しない撮像素子インターフェイス回路(詳細は後述する)が実装されており、この撮像素子インターフェイス回路により撮像素子1が駆動される。
【0015】
図3は、撮像素子1、X枠2、Y枠3、地板4、及び撮像素子基板5が組み立てられた状態の撮像装置の図である。このような状態において、X枠2及びY枠3はそれぞれX枠受け部3a、Y枠受け部4aの範囲内でX方向及びY方向に相対移動可能であり、この移動に伴って、撮像素子1を図示XY方向に移動させることが可能である。
【0016】
更に、撮像素子1には、シールゴム6が接着等の手法によって取り付けられる。そして、シールゴム6にはローパスフィルタ蓋7が当接され、このローパスフィルタ蓋7にシールゴム8を介してローパスフィルタ9が取り付けられる。この状態でホルダ10が地板4に取り付けられ、ホルダ10と地板4との間に、ローパスフィルタ蓋7、シールゴム8、及びローパスフィルタ9が保持される。図3に加えて、更にシールゴム6、ローパスフィルタ蓋7、シールゴム8、ローパスフィルタ9、及びホルダ10が組み立てられた状態の撮像装置を図4に示す。図4に示すように、ホルダ10には穴10a、穴10bが形成されており、これら穴10a、10bの範囲に、X枠2及びY枠3の移動範囲がそれぞれ規制される。
【0017】
また、ホルダ10には、シールゴム11を介して防塵フィルタ12が当て付けられ、この防塵フィルタ12を当て付け保持するようにフィルタ押え13がホルダ10に取り付けられる。図4に加えて、更にシールゴム11、防塵フィルタ12、フィルタ押え13が組み立てられた状態の撮像装置を図5に示す。図5に示すような構成により、撮像装置内への塵埃の侵入が防止される。また、防塵フィルタ12は、付着した塵埃を振動によって除去可能に構成されている。このため、防塵フィルタ12にはフレキシブルプリント基板21が接続され、フレキシブルプリント基板21はホルダ10に設けられた回路基板10cに接続される。そして、回路基板10cは、詳細は後で述べる防塵及び防振制御回路に接続される。また、図6は、図5の撮像装置におけるA−A線断面を示した図である。図6に示すように、防塵フィルタ12とフィルタ押え13との間には、防塵フィルタ12の振動の自由度を確保するために、微小な空隙が設けられている。
【0018】
以下、図1の防塵フィルタ12について更に説明する。図7は、防塵フィルタ12の斜視図である。図7に示すように、防塵フィルタ12は、透明部材としてのフィルタガラス22上に、円環状の圧電体23と、振動子としての円環状の弾性体24とが積層されて構成されている。ここで、図7に示すように、弾性体24は、2つの円環状の弾性体が同心円状に配置されて構成される。
【0019】
また、図7において、弾性体24には突起部24a及び24bが形成されている。これら突起部24aと突起部24bとは、それぞれフィルタガラス22の中心に対して略90°対称の位置に形成されている。図7のように突起部24a、24bを形成しておくことにより、防塵フィルタ12の取り付け時に、図8(a)に示すようにX枠2の防塵フィルタ取り付け部2dと突起部24aとが当接し、かつ図8(b)に示すようにY枠3の防塵フィルタ取り付け部3eと突起部24bとが当接するようになっている。なお、図8(a)及び8(b)においては、ローパスフィルタ9やホルダ10等の図示を省略している。
【0020】
また、図6に示すように、圧電体23は、フレキシブルプリント基板21に導電接続されている。上述したように、フレキシブルプリント基板21はホルダ10の回路基板10cを介して後述する防振及び防塵制御回路に接続されている。
【0021】
図9は圧電体23について示した図である。図9に示す圧電体23は、1枚の円環状圧電体に、2つの円環状の弾性体24に対応して2種類の円環状の分極パターン23a−1、23a−2が形成されている。ここで、内側の分極パターン23a−1はX枠2を駆動するためのX軸アクチュエータであり、設定次数が10次になるように分極パターンが形成されている。一方、外側の分極パターン23a−2はY枠3を駆動するためのY軸アクチュエータであり、設定次数が9次になるように分極パターンが形成されている。
【0022】
また、それぞれの分極パターン23a−1、23a−2はA相側とB相側に分かれており、A相側の分極パターンとB相側の分極パターンとには、それぞれ対応する電圧を印加できるように構成されている。
【0023】
つまり、図9に示すように、分極パターン23a−1のA相側の正の分極パターンXA+はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−1に、負の分極パターンXA−はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−2に導電接続されている。また、分極パターン23a−1のB相側の正の分極パターンXB+はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−3に、負の分極パターンXB−はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−4に導電接続されている。更に、分極パターン23a−2のA相側の正の分極パターンYA+はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−5に、負の分極パターンYA−はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−6に導電接続されている。また、分極パターン23a−2のB相側の正の分極パターンYB+はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−7に、負の分極パターンYB−はフレキシブルプリント基板21の配線パターン21a−8に導電接続されている。
【0024】
更に、圧電体23にはGNDパターン23bが形成され、このGNDパターン23bはフレキシブルプリント基板21のGNDパターン21bに接続されている。また、圧電体23には、分極パターン23a−1を駆動する際の駆動周波数を調整するためのfαフィードバック用分極パターン23c−1と分極パターン23a−2を駆動する際の駆動周波数を調整するためのfβフィードバック用分極パターン23c−2とが形成され、これらはそれぞれフレキシブルプリント基板21の導電パターン21c−1、21c−2に接続されている。
【0025】
このような構成により、圧電体23を複数の異なる態様で振動させ、これによって、防振動作のために可動子としてのX枠2及びY枠3を移動させたり、防塵動作のために透明部材としてのフィルタガラス22を振動させたりすることが可能である。これについては、後で詳しく説明する。
【0026】
以下、上述したような構成を有する撮像装置が適用されたカメラを例にとり、本発明の一実施形態に係る撮像装置について更に説明する。図10は本発明の一実施形態の撮像装置が適用されたカメラの構成を示すブロック図である。ここで、図10のカメラは、レンズ交換式の一眼レフレックスカメラを想定しており、概略的には、交換レンズとしてのレンズユニット100と、カメラ本体としてのボディユニット200から主に構成されたカメラシステムである。図10のカメラシステムにおいては、ボディユニット200の前面に形成された図示しないマウント対して、所望の種類のレンズユニット100が着脱自在に構成されている。
【0027】
レンズユニット100の制御は、レンズユニット100に設けられているレンズ制御用マイクロコンピュータ(以下“Lμcom”と称する)101によって行われる。また、ボディユニット200の制御はボディ制御用マイクロコンピュータ(以下“Bμcom”と称する)201によって行われる。ここで、Lμcom101とBμcom201とは、レンズユニット100がボディユニット200に装着されたときに、通信コネクタ106を介して通信可能に接続される。この状態において、カメラシステムとして、Lμcom101がBμcom201に従属的に協働しながら稼動する。
【0028】
以下、図10の構成について更に詳しく説明する。
図10において、レンズユニット100内にはLμcom101のほかに、撮影レンズ102と絞り103とが設けられている。撮影レンズ102は、レンズ駆動機構104内にある図示しないDCモータによって駆動され、被写体光束をボディユニット200方向に入射させる。また、絞り103は絞り駆動機構105内にある図示しないステッピングモータによって駆動され、ボディユニット200への被写体光束の入射量を調節する。Lμcom101は、Bμcom201の指令に従ってレンズ駆動機構104と絞り駆動機構105の各モータの制御を行う。
【0029】
一方、ボディユニット200内には、クイックリターンミラー202と、ペンタプリズム203と、接眼レンズ204と、サブミラー205とから構成される一眼レフレックス方式の構成部材が設けられている。クイックリターンミラー202は、一部がハーフミラーで構成され、クイックリターンミラー202が図示した位置にあるときには、撮影レンズ102を介して入射した被写体光束の一部をペンタプリズム203の側へ反射させ、一部をサブミラー205側に透過させる。ペンタプリズム203は、クイックリターンミラー202で反射された被写体光束に基づく被写体像を反転させて、接眼レンズ204に入射させる。接眼レンズ204は、ペンタプリズム203から入射した被写体像を、接眼レンズ204を見ている撮影者の眼に結像させる。サブミラー205は、クイックリターンミラー202の背面に設置され、クイックリターンミラー202のハーフミラー部を透過した被写体光束をAFセンサユニット206側に反射させる。
【0030】
AFセンサユニット206には、例えば位相差方式のAFセンサが内蔵されており、サブミラー205で反射された被写体光束に基づいて自動測距を行う。AFセンサ駆動回路207は、AFセンサユニット206の動作制御を行うと共にAFセンサユニットで得られた結果をBμcom201に出力する。また、測光回路208は、クイックリターンミラー202が図示の位置にあるときに、ペンタプリズム203からの光束に基づき周知の測光処理を行い、測光処理の結果をBμcom201に出力する。
【0031】
フォーカルプレーン式のシャッタ209は、撮像装置210の前面かつ撮影レンズ102の光軸上に配置され、クイックリターンミラー202がミラー駆動機構211によって撮影レンズ102の光軸上から退避するように駆動されたときに撮影レンズ102を介して本発明の一実施形態に係る撮像装置である撮像装置210に入射する被写体光束の量(露光量)を、測光回路208の測光結果等の諸条件に基づいて調節する。シャッタチャージ機構212は、シャッタ209の先幕と後幕を駆動するばねをチャージする。シャッタ制御回路213は、シャッタ209の先幕と後幕の動きを制御する。また、防塵及び防振制御回路214は、撮像装置210の圧電体23の動きを制御する。更に、温度測定回路215は、防塵フィルタ12の近傍に設けられ、撮像装置210の周辺の温度を測定し、温度測定の結果をBμcom201に出力する。つまり、通常、温度はガラス製の物材の弾性係数に影響し、その固有振動数を変化させる要因の1つであるため、運用時にその温度を計測してその固有振動数の変化を考慮しなければならない。したがって、稼動中に温度上昇が激しい撮像素子1の前面を保護するために設けられた防塵フィルタ12の温度変化を測定してその時の固有振動数を予想するほうがよい。このため、温度測定回路215によって、撮像素子1の周辺温度を測定することが好ましい。なお、この場合、温度測定回路215に接続される図示しないセンサの温度測定ポイントは、防塵フィルタ12の振動面の極近傍に設定されるのが好ましい。
【0032】
ここで、上述したように、撮像素子1は、撮影レンズ102の光軸に垂直な平面上に規定された2軸(X軸、Y軸)上を移動可能に構成されている。このとき、圧電体23に防塵及び防振制御回路214から所定の駆動信号を加えることによって、圧電体23は以下に示す2つの機能を持つアクチュエータとして動作する。
1. 防塵フィルタ12に付着した塵埃を除去するために防塵フィルタ12を振動させる機能(第2の状態の機能 以下、防塵機能と称する)。
2. 防振動作のために撮像素子1をXYの2軸上で変移させる機能(第1の状態の機能 以下、防振機能と称する)。この機能によって本カメラシステムに発生したブレによる被写体像の変移を相殺するように撮像素子1を変移させる。
【0033】
撮像素子インターフェイス回路216は、撮像素子1の動作制御及び撮像素子1で得られた撮像信号の処理を行う。画像処理コントローラ217は、撮像素子インターフェイス回路216で得られた撮像信号に対して、ホワイトバランス補正や圧縮処理等の周知の画像処理を行う。液晶モニタ218は、画像処理コントローラ217で処理された画像が表示される。SDRAM219、FlashRom220は、画像処理コントローラ217で処理された画像を一時記憶するメモリである。記録メディア221には、画像処理コントローラ217で処理された画像が記録される。このようにして、本カメラシステムは、電子撮像機能と共に電子記録表示機能を提供できるように構成されている。
【0034】
また、不揮発性メモリ221aは、本カメラシステム制御に必要な所定の制御パラメーータを記憶するメモリであり、例えばEEPROM等から構成される。また、動作表示用LCD222は、当該カメラシステムの動作状態をユーザへ告知するための表示を行う。カメラ操作スイッチ(SW)223は、例えばレリーズスイッチ、モード変更スイッチ、及びパワースイッチなどの、本カメラシステムをユーザが操作するために必要な操作ボタンに応じて動作するスイッチ群である。電池224は、本カメラシステムの電源である。電源回路225は、電池224の電圧を、当該カメラシステムを構成する各回路ユニットが必要とする電圧に変換して供給する。
【0035】
次に、図11を参照して、防塵及び防振制御回路214について更に説明する。図11は防塵及び防振制御回路214の構成を示すブロック図である。
防塵及び防振制御回路214には、サブマイクロコンピュータ(以下“Sμcom”と称する)311が設けられている。このSμcom311は、Bμcom201の指令に従って防塵及び防振制御回路214内の各部の制御を行う。
【0036】
X軸駆動回路312は防塵フィルタ12に配置されたX軸アクチュエータ(つまり、図9の分極パターン23a−1)を駆動するための駆動信号を発生させる。
【0037】
防塵動作(塵除去)のためには、防塵フィルタ12に定在波を発生させる。この場合には、XA+及びXB+に印加する駆動信号とXA−及びXB−に印加する駆動信号との位相差を180°に設定する。更に、駆動信号の周波数は防塵フィルタ12の構成部材であるフィルタガラス22の共振周波数に設定する。
【0038】
一方、撮像素子1をX軸上に沿って移動させる際には、防塵フィルタ12に進行波を発生させる。この場合にはXA+及びXA−に印加する駆動信号とXB+とXB−に印加する駆動信号との位相差を90°に設定する。更に、駆動信号の周波数は、進行波の発生に適した周波数に設定する。この周波数については後述する。
【0039】
ここで、X軸駆動回路312に接続されるSμcom311の制御端子について説明する。制御端子P_PwContXは、XA+、XA−、XB+、XB−に印加する駆動信号のON又はOFFを制御するための制御端子である。制御端子P_ClkOutXは、駆動信号の基準となるクロック信号を制御するための制御端子である。制御端子D_NCntXはクロック信号を分周する分周回路の分周率を設定するための制御端子である。制御端子P_θContXとP_CcwCwXはX軸駆動回路312で作られる2つの駆動信号の位相を設定するための制御端子である。制御端子P_SelXはX軸駆動回路312で作られた2つの駆動信号を、XA+、XA−、XB+、XB−に分配する際の分配率を設定するための制御端子である。P_ADXはX軸アクチュエータとしての分極パターン23a−1を駆動する際に、駆動周波数が適切であるかを検出するために使用される制御端子である。
【0040】
なお、この制御端子P_ADXはSμcom311のADコンバータヘ接続された端子であり、分極パターン23a−1のモニタ電極であるfαフィードバック用分極パターン23c−1において発生する電圧が入力される。ここで、駆動周波数はアクチュエータの使用される条件(温度、負荷など)で変化するので、fαフィードバック用分極パターン23c−1の電圧に応じて駆動周波数を変化させることでアクチュータを効率よく駆動できる。
【0041】
また、図11のY軸駆動回路313はX軸駆動回路312と略同じ機能を有し、Y軸アクチュエータ(つまり、図9の分極パターン23a−2である)に対する駆動信号を発生する。なお、図11において、Y軸駆動回路313に接続される制御端子のうち、X軸駆動回路312と同じ名を持つ制御端子は同じ機能を有する。つまり、これら同じ名の制御端子の差は、末尾の“X”と“Y”の差のみであるので説明は省略する。
【0042】
図11のX軸ブレ検出回路314はX軸方向のカメラシステムのブレ量を検出する。Sμcom311はこのX軸方向のブレ量に応じて撮像素子1をX軸上で変移させる。この際の撮像素子1の変移量を検出するためにX軸変移量検出センサ315が設けられている。一方、Y軸ブレ検出回路316はY軸方向のカメラシステムのブレ量を検出する。Sμcom311はこのY軸方向のブレ量に応じて撮像素子1をY軸上で変移させる。この際の撮像素子1の変移量を検出するためにY軸変移量検出センサ317が設けられている。
【0043】
以下、図11のような構成を有する防塵及び防振制御回路214について更に説明する。なお、上述したようにX軸駆動回路312とY軸駆動回路313の構成は基本的に同じものである。そこでここではX軸駆動回路312の動作についてのみ説明する。
【0044】
図12は、図11で説明した構成のうち、特にX軸駆動回路312の内部の詳細な構成を示した図である。また、図13は、図12のX軸駆動回路312における各構成部材から出力される信号の信号形態を示すタイムチャートである。
【0045】
図12に示すように、Sμcom311の内部にはクロックジェネレータ311aが設けられている。このクロックジェネレータ311aは、A相の分極パターンXA+及びXA−、B相の分極パターンXB+及びXB−に印加すべき信号周波数よりも十分に高い周波数で、図13に示すパルス信号(基本クロック)Sig1を出力する。この基本クロック信号Sig1は、X軸駆動回路312のN進カウンタ401に入力される。N進カウンタ401は基本クロック信号Sig1をカウントし、このカウント数が所定値Nに達する毎にカウント終了パルス信号Sig2を出力する。即ち、基本クロック信号Sig1は図13のSig2で示すようにして1/Nで分周されることになる。
【0046】
ここで、分周されたパルス信号Sig2は、HighとLowのデューティー比が1:1ではないので、第1の1/2分周回路402−1を介してデューティー比を1:1に変換する。このときに周波数は半分になる(図13に示すSig3参照)。第1の1/2分周回路402−1からの出力信号Sig3は、第2の1/2分周回路402−2と第1の排他的論理和(ExOR)回路407−1へと出力される。第2の1/2分周回路402−2に入力されたパルス信号は、更に周波数が半分のパルス信号Sig4となって出力される。
【0047】
ここで、パルス信号Sig4がハイ(High)状態のときに、MOSトランジスタQ01(404b1)がオン(ON)状態となる。また、パルス信号Sig4は、第1のインバータ403−1を介してMOSトランジスタQ02(404c1)に印加される。したがって、パルス信号Sig4のロー(Low)状態のときにMOSトランジスタQ02(404c1)がオン(ON)状態となる。
【0048】
このようにしてトランスA(405−1)の1次側に接続された2つのMOSトランジスタQ01(404b1)及びQ02(404c1)が交互にオン状態になると、トランスA(404−1)の2次側には、図13のSig5で示すような信号が発生する。ここで、トランスA(405−1)の巻線比は、電源回路225の出力電圧と圧電体23を駆動させるのに必要な電圧とによって決定される。また、抵抗R00(406−1)は、トランスA(405−1)に過大な電流が流れることを制限するために配設されているものである。
【0049】
圧電体23を駆動させるに際しては、MOSトランジスタQ00(404a1)がオン(ON)状態にあり、かつ電源回路225からトランスA(405−1)のセンタータップに電圧が印加されている必要がある。ここで、MOSトランジスタQ00(404a1)のオン又はオフの制御は、Sμcom311の制御端子P_PwContXから行われるようになっている。
【0050】
また、N進カウンタ401の設定値Nは、Sμcom311の制御端子D_NCntXにおいて設定される。つまり、Sμcom311は、設定値Nを制御することによって、圧電体23の駆動周波数を任意に変更することができるようになっている。駆動周波数の算出は次に示す式(1)による。
fdrv=fpls/4N ……(1)
ここで、N:N進カウンタ401への設定値、fpls:クロックジェネレータ311aからの出力パルスの周波数、fdlv:圧電体23に印加される駆動信号の周波数である。この式(1)に従った電圧の駆動信号(Sig5)が圧電体23に印加される。
【0051】
一方、第1の1/2分周回路402−1の出力信号Sig3は、第1のExOR回路407−1を経由して、第3の1/2分周回路402−3へと出力される。
【0052】
ここで、仮にSμcom311の制御端子P_θContXがハイ(High)状態に設定されるとする。このとき、パルス信号Sig3は反転して、第3の1/2分周回路402−3へと出力される。また、仮に制御端子P_θContXがロー(Low)状態に設定されるとする。このとき、パルス信号Sig3は、そのままの状態で第3の1/2分周回路402−3へと出力される(図13に示すSig6参照。なお、図13のSig6はP_θContX=High時の様子を示す)。このパルス信号Sig6は、更に第3の1/2分周回路402−3によって周波数が半分のSig70となり、このSig70が第2の排他的論理和(ExOR)回路407−2へ出力される。
【0053】
ここで、第1、第2、第3の1/2分周回路402−1、402−2、402−3のいずれにおいても、入力されるパルス信号の立ち上がりエッジに反応して分周動作を行うようになっている。
【0054】
第2のExOR回路407−2へ入力されたパルス信号Sig70は、仮にP_CcwCwXがHigh状態に設定されているならば、反転されて出力される。また仮にP_CcwCwXがLow状態に設定されているならば、そのままの状態で出力される(図13のSig7参照。なお、図13のSig7はPCcwCwXがHigh時の様子を示す)。
【0055】
第2のExOR回路407−2の出力によって、第2のインバータ403−2、MOSトランジスタQ11(404b2)及びQ12(404c2)、トランスB(405−2)が駆動されて、圧電体23に所定の電圧の駆動信号Sig8が印加される。
【0056】
ここで、第2のインバータ403−2、MOSトランジスタQ11(404b2)及びQ12(404c2)、トランスB(405−2)、及び抵抗R10(406−2)のそれぞれの機能は、上述した第1のインバータ403−1、MOSトランジスタQ01(404b1)及びQ02(404c1)、トランスA(405−1)、及び抵抗R00(406−1)のそれぞれの機能と略同様となっている。
【0057】
つまり、図12の回路においては、第1のExOR回路407−1と第2のExOR回路407−2の作用によって、2つのトランスA(405−1)、B(405−2)から出力される駆動信号に位相差が発生する。図13に示した例では、Sig5とSig8の駆動信号の位相差は−90°となる。
【0058】
以下に2つの制御端子P_θContX及びP_CcwCwXと2つの駆動信号Sig5及びSig8との関係をまとめる。図14は、制御端子P_θContX、制御端子P_CcwCwXの設定状態と2つのトランスA(405−1)、B(405−2)から出力される駆動信号Sig5、Sig8の位相差の関係を示している。
【0059】
図14に示すように、制御端子P_θContXをHigh、制御端子P_CcwCwXをHighに設定すると、駆動信号Sig5と駆動信号Sig8とには−90°の位相差が発生する。この状態で所定の周波数を設定することにより圧電体23は弾性体24上に進行波を発生させる。この進行波を受けてX枠2はX軸上を所定方向(仮に、こちら側をプラス方向とする)に移動する。このような状態1は、手ブレ補正(防振動作)において使用される。
【0060】
また、図14に示すように、制御端子P_θContXをHigh、制御端子P_CcwCwXをLowに設定すると、駆動信号Sig5と駆動信号Sig8とには+90°の位相差が発生する。この状態で所定の周波数を設定することにより圧電体23は弾性体24上に状態1とは逆向きの進行波を発生させ、この進行波を受けてX枠2(撮像素子1)はX軸上を上記プラス方向とは逆方向(以下、マイナス方向とする)に移動する。このような状態2は、手ブレ補正(防振動作)において使用される。
【0061】
また、制御端子P_θContXをLow、制御端子P_CcwCwXをHighに設定すると、駆動信号Sig5と駆動信号Sig8とには180°の位相差が発生する。この状態で所定の周波数を設定することにより圧電体23はフィルタガラス22上に定在波を発生させる。このような状態3は塵除去動作(防塵動作)において使用される。
【0062】
また、制御端子P_θContXをLow、制御端子P_CcwCwXをLowに設定すると、駆動信号Sig5と駆動信号Sig8の位相は同相となる。この状態4は本一実施形態においては使用しない。
【0063】
以上のような状態1〜状態3で示す防塵動作と防振動作の実行には、2つの駆動信号Sig5、Sig8を4種類の分極パターンXA+、XA−、XB+、XB−に対して適切に分配しなければならない。駆動信号の分配はソリッドステートリレーSSR1、SSR2、SSR3、SSR4によってなされる。ここで、ソリッドステートリレー以外に利用可能な素子としては、フォトMOSリレーと機械式リレーが考えられる。また、SSR1、SSR2、SSR3、SSR4のON又はOFF制御は制御端子P_SelXによってなされる。
【0064】
図15は、制御端子P_SelXの状態と2つの駆動信号Sig5、Sig8の圧電体への分配の関係を示している。
【0065】
図15に示すように、制御端子P_SelXをHighに設定するとSSR1とSSR4とがON状態となる。また、制御端子P_SelXの出力は第3のインバータ403にも入力される。そして、第3のインバータ403において制御端子P_SelXの出力が反転され、この反転された出力がSSR2とSSR3とに印加される。つまり、SSR2とSSR3とにはLow信号が印加されるのでOFF状態となる。この設定では、駆動信号Sig5は分極パターンXA+とXA−に印加され、駆動信号Sig8は分極パターンXB+とXB−に印加される。この設定は防振動作を実行する際になされる。
【0066】
一方、制御端子P_SelXをLowに設定するとSSR2とSSR3とがON状態となり、SSR1とSSR3とがOFF状態となる。この設定では、駆動信号Sig5は分極パターンXA+とXB+に印加され、駆動信号Sig8はXA−とXB−に印加される。この設定は防塵動作を実行する際になされる。
【0067】
図16は、Sμcom311の動作を示すフローチャートである。
Sμcom311はBμcom201が出力する制御命令(コマンド)を受けて、コマンドに応じた動作を実行する。つまり、図16のS100において、Sμcom311はBμcom201からのコマンドを受信するまで待機している。Bμcom201からのコマンドを受信すると、Sμcom311は、s101において、受信したコマンドが“防塵動作”であるか否かを判定する。ここで、“防塵動作”であることを示すコマンドは、撮影の準備動作(例えば撮影前にクイックリターンミラー202を撮影光路上から対比させる動作)に連動してSμcom311に送信される。
【0068】
s101の判定において、コマンドが“防塵動作”である場合にはs101からs1010へ移行し、“防塵動作”でない場合にはs101からs110へ移行する。
【0069】
s1010において、Sμcom311は、制御端子P_SelXをLowに設定する。このようにして、防塵動作のために、X軸駆動回路312からの2つの駆動信号Sig5、Sig8は、図15で示したようにしてX軸アクチュエータを構成する分極パターンXA+、XA−、XB+、XB−に分配される。また、Sμcom311は、s1011において制御端子P_SelYをLowに設定する。この設定によってY軸駆動回路313からの駆動信号はY軸アクチュエータを構成する分極パターンYA+、YA−、YB+、YB−に分配される。
【0070】
s102において、Sμcom311は、防塵動作のためにX軸アクチュエータを構成する分極パターン23a−1の駆動を開始させる。ここで、図17にはX軸アクチェータを構成する分極パターン23a−1と、Y軸アクチェータを構成する分極パターン23a−2のそれぞれのインピーダンス特性を示している。
【0071】
図17に示す周波数fγは、フィルタガラス22上に定在波が発生する駆動周波数である。防塵動作のためには周波数fγで分極パターン23a−1及び23a−2を駆動させる必要がある。したがって、Sμcom311は、周波数fγに対応する分周率を制御端子D_CntXより出力する。更に、制御端子P_PwContXをHighに設定し、かつ制御端子P_θContXをLowに、制御端子P_CcwCwXをHighに設定する。これらの設定によって位相差が180°である駆動信号Sig5、Sig8が発生する(図14の状態3参照)。
【0072】
また、s103において、Y軸アクチェータもX軸アクチェータと同様に駆動するために、Sμcom311は、制御端子D_CntYに周波数fγに対応する分周率を設定すると共に、制御端子P_PwContXをHighに、制御端子P_θContYをHighに、制御端子P_CcwCwYをLowに設定する。
【0073】
s102、s103の後、Sμcom311は、s104においてBμcom201から防塵動作の停止コマンド信号を受信したか否かを判定し、防塵動作の停止コマンドを受信するまで待機する。s104の判定において、停止コマンドを受信すると、s104からs105に移行して、Sμcom311はX軸アクチュエータを構成する分極パターン23a−1の動作を止める。即ち、制御端子P_PwContXをLowに設定する。その後、s106において、Sμcom311は、制御端子P_PwContYをLowに設定してY軸アクチュエータを構成する分極パターン23a−2の駆動を止める。そしてs100に戻る。
【0074】
また、s101の判定において、コマンドが“防塵動作”でない場合、Sμcom311は、s110において、受信したコマンドが“防振動作”であるか否かを判定する。s110の判定において、コマンドが“防振動作”の時はs1101へ移行し、“防振動作”でない時はs120へ移行する。ここで、“防振動作”のコマンドは撮影動作に連動してSμcom311に送信される。
【0075】
s1101において、Sμcom311は、制御端子P_SelXをHighに設定する。このようにして、防振動作のために、X軸駆動回路312からの2つの駆動信号Sig5、Sig8は、図15で示したようにしてX軸アクチュエータを構成する分極パターンXA+、XA−、XB+、XB−に分配される。また、s1102において、Sμcom311は、制御端子P_SelYをHighに設定する。この設定によってY軸駆動回路313からの駆動信号はY軸アクチュエータを構成する分極パターンYA+、YA−、YB+、YB−に分配される。
【0076】
s111において、Sμcom311は、X軸ブレ検出回路314の出力に基づいてX軸方向に対するブレの方向とブレの角度とを検出し、これら2つの値から更にX軸方向の変移量を算出する。続くs112においては、Sμcom311は、X軸上で撮像素子1を駆動するための設定を行う。図17に示すように、X軸アクチュエータを構成する分極パターン23a−1に進行波を発生させるためには、駆動周波数をfαに設定しなければならない。そこで、Sμcom311は、周波数fαに対応する分周率を制御端子D_CntXより出力する。更に制御端子P_PwContXをHighに設定する。そして、制御端子P_θContXと制御端子P_CcwCwXとに移動方向(図14で説明したプラス又はマイナス方向)に応じた信号を設定する。
【0077】
このようにして分極パターン23a−1を駆動開始した後、Sμcom311は、s113において、s111で算出された変移量分だけ撮像素子1が移動されるまで待機する。撮像素子1がs111の変移量分だけ移動したことが検出されるとs114に移行する。ここで、撮像素子1のX軸方向の変移量はX軸変移量検出センサ315及びX軸ブレ検出回路314の出力から検出される。撮像素子1がs111で算出された変位量だけ移動したことが検出されると、s114において、Sμcom311は、制御端子P_PwContXをLowに設定して分極パターン23a−1の駆動を停止させる。
【0078】
次に、s115において、Sμcom311は、Y軸ブレ検出回路316の出力に基づいてY軸方向に対するブレの方向とブレの角度とを検出し、これら2つの値から更にY軸方向の変移量を算出する。続くs116において、Sμcom311はY軸上で撮像素子1を駆動するための設定を行う。図17に示すように、Y軸アクチェータを構成する分極パターン23a−2に進行波を発生させるためには、駆動周波数をfβに設定しなければならない。そこでSμcom311は周波数fβに対応する分周率を制御端子D_CntYより出力する。更にSμcom311は、制御端子P_PwContYをHighに設定する。そして、制御端子P_θContYとP_CcwCwYにそれぞれ移動方向に応じた信号を設定する。
【0079】
このようにして分極パターン23a−2を駆動開始した後、Sμcom311は、s117において、s115で算出された変移量分、撮像素子1が移動するまで待機する。ステップs117の判定において、s115で算出された変移量が検出されるとs118へ移行する。ここで、撮像素子1の変移量はY軸変移量検出センサ317及びY軸ブレ検出回路316の出力から検出される。撮像素子1がs115で算出された変位量だけ移動したことが検出されると、s118において、Sμcom311は、制御端子P_PwContYをLowに設定して分極パターン23a−2の駆動を停止させる。
【0080】
その後、s119において、Sμcom311は、Bμcom201から防振動作停止のコマンドが受信されたか否かを判定する。s119の判定において、防振動作停止のコマンドが受信された場合にはs100に移行する。一方、防振動作の停止コマンドが受信されていない場合には防振動作を継続するためにs111に戻る。ここで、防振動作の停止コマンドは、撮影動作の終了時にBμcom201からSμcom311に送信されるものである。
【0081】
なお、上記した防塵動作を行うためには、撮像素子1をX軸上とY軸上とでブレ量に応じて変移させなければならない。本一実施形態では、図9に示すようにX軸アクチェータを構成する分極パターン23a−1とY軸アクチェータを構成する分極パターン23a−2とが1つのフィルタガラス22上に積層されている。したがって、X軸方向に関する撮像素子1の変移動作とY軸方向に関する撮像素子1の変移動作とを同時に行うことは出来ない。これは、分極パターン23a−1と分極パターン23a−2とに同時に駆動信号を印加するとフィルタガラス22上に2つの進行波が生じて干渉を起こすためである。このため、実際には、図16のフローチャートにおいて、Sμcom311はX軸方向の防振動作(s111からs114)とY軸方向の防振動作(s115からs118)とを交互に実行するようにする。これら2つの動作を高速に交互に実行することで、2つの動作が同時に実行されることと実質的には等価となる。
【0082】
以上説明したように、本一実施形態によれば、防塵動作を行うためのアクチュエータと防振動作を行うためのアクチュエータとを1つの防塵フィルタ12の中に構成することができる。したがって、防塵機能と防振機能とを省スペースでかつ安価に実現することができる。
【0083】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。例えば、図9に示した圧電体23に形成される分極パターンの次数は9次と10次に限らず、4次と5次、6次と7次など弾性体の形状との組み合わせに応じて決定することができる。また、分極パターン23a−1と分極パターン23a−2は1つの圧電体を分割して形成しても良いし、2つの圧電体から構成しても良い。
【0084】
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述した課題が解決でき、上述した効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成部材を示す分解斜視図である。
【図2】X枠を背面から見た斜視図である。
【図3】撮像素子、X枠、Y枠、地板、及び撮像素子基板が組み立てられた状態の撮像装置の図である。
【図4】図3に加えて、更にシールゴム、ローパスフィルタ蓋、シールゴム、ローパスフィルタ、及びホルダが組み立てられた状態の撮像装置の図である。
【図5】図4に加えて、更にシールゴム、防塵フィルタ、フィルタ押えが組み立てられた状態の撮像装置の図である。
【図6】図5の撮像装置におけるA−A線断面を示した図である。
【図7】防塵フィルタの斜視図である。
【図8】図8(a)はX枠と防塵フィルタの斜視図であり、図8(b)はY枠と防塵フィルタの斜視図である。
【図9】圧電体について示した図である。
【図10】本発明の一実施形態の撮像装置が適用されたカメラの構成を示すブロック図である。
【図11】防塵及び防振制御回路の構成を示すブロック図である。
【図12】X軸駆動回路の内部の詳細な構成を示した図である。
【図13】X軸駆動回路における各構成部材から出力される各信号の信号形態を示すタイムチャートである。
【図14】制御端子P_θContX、P_CcwCwXの設定状態とトランスA及びBから出力される駆動信号Sig5、Sig8の位相差の関係を示した図である。
【図15】制御端子P_SelXの状態と2つの駆動信号Sig5、Sig8の圧電体への分配の関係を示した図である。
【図16】Sμcomの動作を示すフローチャートである。
【図17】X軸アクチュエータとY軸アクチュエータを構成する分極パターンにおけるインピーダンス特性を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1…撮像素子、2…X枠、3…Y枠、12…防塵フィルタ、22…フィルタガラス、23…圧電体、24…弾性体、100…レンズユニット、101…レンズ制御用マイクロコンピュータ(Lμcom)、102…撮影レンズ、104…レンズ駆動機構、105…絞り駆動機構、200…ボディユニット、201…ボディ制御用マイクロコンピュータ(Bμcom)、210…撮像装置、214…防塵及び防振制御回路、215…温度測定回路、216…撮像素子インターフェイス回路、225…電源回路、311…サブマイクロコンピュータ(Sμcom)、312…X軸駆動回路、313…Y軸駆動回路、314…X軸ブレ検出回路、315…X軸変移量検出センサ、316…Y軸ブレ検出回路、317…Y軸変移量検出センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を有する撮像装置において、
圧電体が貼り付けられ、該圧電体の振動によって振動可能になされた弾性体からなる振動子と、
上記撮像素子を保持すると共に、上記振動子の振動によって上記振動子に対して相対移動可能になされた可動子と、
上記撮像素子の前面に配置され、かつ上記振動子に固定されてなり、上記振動子の振動によって振動可能になされた透明部材と、
を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
上記弾性体は、複数の円環状弾性体が同心円状に配置されてなり、
上記圧電体は、上記複数の円環状弾性体にそれぞれ対応する複数の分極パターンを有してなることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
上記振動子に進行波を発生させるように上記圧電体を振動させて、上記可動子を相対移動させる第1の状態と、上記振動子に定在波を発生させるように上記圧電体を振動させて上記透明部材を振動させる第2の状態とを切り替え制御する制御回路を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
撮像素子と、
圧電体が貼り付けられ、該圧電体の振動によって振動可能になされた弾性体からなる振動子と、
上記撮像素子を保持すると共に、上記振動子の振動によって上記振動子に対して相対移動可能になされた可動子と、
上記撮像素子の前面に配置され、かつ上記振動子に固定されてなり、上記振動子の振動によって振動可能になされた透明部材と、
を具備することを特徴とするカメラ。
【請求項5】
上記弾性体は、複数の円環状弾性体が同心円状に配置されてなり、
上記圧電体は、上記複数の円環状弾性体にそれぞれ対応する複数の分極パターンを有してなることを特徴とする請求項4に記載のカメラ。
【請求項6】
上記振動子に進行波を発生させるように上記圧電体を振動させて、上記可動子を相対移動させる第1の状態と、上記振動子に定在波を発生させるように上記圧電体を振動させて上記透明部材を振動させる第2の状態とを切り替え制御する制御回路を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のカメラ。
【請求項1】
撮像素子を有する撮像装置において、
圧電体が貼り付けられ、該圧電体の振動によって振動可能になされた弾性体からなる振動子と、
上記撮像素子を保持すると共に、上記振動子の振動によって上記振動子に対して相対移動可能になされた可動子と、
上記撮像素子の前面に配置され、かつ上記振動子に固定されてなり、上記振動子の振動によって振動可能になされた透明部材と、
を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
上記弾性体は、複数の円環状弾性体が同心円状に配置されてなり、
上記圧電体は、上記複数の円環状弾性体にそれぞれ対応する複数の分極パターンを有してなることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
上記振動子に進行波を発生させるように上記圧電体を振動させて、上記可動子を相対移動させる第1の状態と、上記振動子に定在波を発生させるように上記圧電体を振動させて上記透明部材を振動させる第2の状態とを切り替え制御する制御回路を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
撮像素子と、
圧電体が貼り付けられ、該圧電体の振動によって振動可能になされた弾性体からなる振動子と、
上記撮像素子を保持すると共に、上記振動子の振動によって上記振動子に対して相対移動可能になされた可動子と、
上記撮像素子の前面に配置され、かつ上記振動子に固定されてなり、上記振動子の振動によって振動可能になされた透明部材と、
を具備することを特徴とするカメラ。
【請求項5】
上記弾性体は、複数の円環状弾性体が同心円状に配置されてなり、
上記圧電体は、上記複数の円環状弾性体にそれぞれ対応する複数の分極パターンを有してなることを特徴とする請求項4に記載のカメラ。
【請求項6】
上記振動子に進行波を発生させるように上記圧電体を振動させて、上記可動子を相対移動させる第1の状態と、上記振動子に定在波を発生させるように上記圧電体を振動させて上記透明部材を振動させる第2の状態とを切り替え制御する制御回路を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のカメラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−193126(P2007−193126A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11430(P2006−11430)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]