説明

撮像装置及び撮像方法

【課題】シャッタタイムラグを発生することなく、また画像の画質劣化を招くことなく位相差焦点検出を行なう。
【解決手段】対象物からの光を所定の位置に結像する撮像光学系11と、撮像光学系11により結像された像を電気信号に変換する撮像素子15と、撮像光学系11により結像された像を分離して撮像素子15の一部の領域に再結像する分離再結像光学系13と、撮像光学系11で結像する撮像領域中の合焦位置に対応して分離再結像光学系13を撮像素子15上の任意の位置に移動させる分離再結像光学系移動部14とを備え、分離再結像光学系13で撮像素子15の一部の領域に再結像した像の変換出力により位相差焦点検出を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像と位相差焦点検出とを同じ撮像素子上で行なう撮像装置及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラで高速に焦点検出を行なう方法として、位相差焦点検出法が種々提案されている。この位相差焦点検出では、本来の結像面にコンデンサレンズとセパレータレンズとを配置して結像光束を分離結像させ、その分離幅に基づいて焦点位置を求める。
【0003】
また、撮像素子上に分離結像用の光学要素を配置することで、ひとつのイメージセンサで位相差焦点検出と撮像を行なう方法が以下の特許文献に開示されている。(特許文献1)
【特許文献1】特開2004−191893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に前述したような位相差焦点検出法では、分離結像のために光路長を長く取る必要があることに加え、焦点検出用のセンサが撮像素子とは別に必要なため、結果として撮像装置の大型化を招いていた。
【0005】
また、前記特許文献1に記載された方法では、1つの撮像素子で位相差検出と撮像が同時に行なえるが、フォーカスエリアを撮像領域から自由に設定するためには、撮像素子の広い範囲に渡って分離結像用の光学要素を配置する必要があり、出力画像の画質劣化が避けられない。
【0006】
それを回避する手段として同手法では、撮影時に前記光学要素を撮像素子上から退避させる手段を記載しているが、退避させる時間を確保するためにはシャッタタイムラグが大きくなってしまうという不具合があった。
【0007】
本発明は前記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、シャッタタイムラグを発生することなく、また画像の画質劣化を招くことなく位相差焦点検出を行なうことが可能な撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、対象物からの光を所定の位置に結像する撮像光学系と、前記撮像光学系により結像された像を電気信号に変換する光電変換素子と、前記撮像光学系により結像された像を分離して前記光電変換素子の一部の領域に再結像する分離再結像光学系と、前記分離再結像光学系で前記光電変換素子の一部の領域に再結像した像の変換出力により位相差焦点検出を行なう焦点検出手段と、前記撮像光学系で結像する撮像領域中の合焦位置に対応して前記分離再結像光学系を前記光電変換素子上の任意の位置に移動させる再結像光学系移動手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、小さな領域に対応する分離再結像光学系を上下左右に移動可能な透明フィルムなどの平面上に配置して位相差焦点検出を用いた撮影を行なうことによって、撮影される画像の画質劣化領域を最小限に抑えつつフォーカスエリアの設定自由度を高くすることができ、また撮影時のシャッタタイムラグも発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明を一眼レフタイプのデジタルカメラに適用した第1の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、同実施形態に係るデジタルカメラ10の主として光学系の機能構成を示す。同図に示すようにデジタルカメラ10は、撮像光学系11、ハーフミラー12、分離再結像光学系13、分離再結像光学系移動部14、撮像素子15、ファインダ光学系16、ファインダ17、ユーザインターフェース18を有する。
【0012】
撮像光学系11は、レンズ鏡筒を含み、レンズ光学系を構成する一部のフォーカスレンズの光軸方向に沿った移動により結像位置を可変する。
【0013】
ハーフミラー12は、前記撮像光学系11の撮影光軸に対して45°の角度をもって配置され、撮像光学系11からの光束L0の一部を反射、残る全てを透過させる。分離再結像光学系13は、分離再結像光学系移動部14の駆動により位置が移動され、ハーフミラー12を透過した光束L2の一部を透過させて撮像素子15に導く。撮像素子15は、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)等の固体撮像素子で構成され、入射された光像を電気信号に変換して出力する。
【0014】
ファインダ光学系16は、例えばペンタプリズム等で構成され、ハーフミラー12で反射された光束L1を正立像としてファインダ17に導く。
【0015】
ユーザインターフェース18は、例えば電子ビューファインダとしての液晶表示パネルと各種操作キーとで構成され、ユーザの操作により複数のフォーカスエリア中の任意の1箇所を指定することができる。
【0016】
この図1は、焦点検出時のデジタルカメラ10内部の状態を部分的に示しており、ユーザインターフェース18で複数のフォーカスエリアの中から1つを指定することで、指定位置に対応下撮像領域中の位置で焦点検出を行なうこととなる。
【0017】
撮像光学系11を通過した光束L0は、一定の透過率を有したハーフミラー12によって反射光L1と透過光L2とに分離され、反射光L1はファインダ光学系16を通過して(光学)ファインダ17上で正立像を結ぶ。
【0018】
一方の透過光L2は、その光束の一部が分離再結像光学系13を通過した後に撮像素子15で結像する。分離再結像光学系移動部14は、前記ユーザインターフェース18で指定されたフォーカスエリアの位置に従って分離再結像光学系13を撮像素子15上の対応する位置に移動させるもので、分離再結像光学系13を通過した後に撮像素子15上に結像した像情報を用いて位相差焦点検出を行なうことでフォーカスを合わせることになる。
【0019】
しかして、フォーカス動作が終了し、撮像光学系11中のフォーカスレンズが正しい合焦位置に移動された後に撮影動作を実行する。その撮影時には、ハーフミラー12が撮影光軸上から図中の位置P1まで退避し、撮像光学系11を通過した全ての光束を撮像素子15上で結像させて、電気信号に変換する。
【0020】
この電気信号の取扱いについては詳述しないが、得られた電気信号はAGC(自動利得制御)処理により適宜増幅され、さらにデジタル化された後にガンマ補正等の各種プロセス処理を経て原色系のカラー画像データから輝度色差系のカラー画像データに変換され、必要によりデータ圧縮等の処理が施されてから、ここでは図示しないメモリカード等の記録媒体に記録される。
【0021】
次に前記実施形態の動作について説明する。
図2及び図3により、分離再結像光学系移動部14を用いた位相差焦点検出方法について説明する。
【0022】
分離再結像光学系13は、撮像素子15上の2行2列の画素配列(a,b)に対応したセパレータレンズ21を格子状に並べ、さらにその上に2行2列の前記セパレータレンズ21に対応したコンデンサレンズ22を格子状に並べて構成する。
【0023】
分離再結像光学系13の大きさは、撮像素子15の任意の画素数に対応して設定する。コンデンサレンズ22のアレイ面を予定結像面とすると、撮像光学系からあるコンデンサレンズ22に入射する光線はセパレータレンズ21で分光され、例えば図2で示すように対応する画素a2,b3上にそれぞれ分離再結像する。
【0024】
図3では、前記図2で示した状態よりも予定結像面が撮像面側にずれた場合を示している。この場合、光線の分離幅が大きくなり、複数の画素a1,a2,b3,b4に結像している。ここで画素cは、各セパレータレンズ21からの光線のクロストークを受けるため使用しない。
【0025】
それぞれの画素値のピーク幅Bが広くなり(B1<B2)、ピーク値レベルも小さくなる。この画素値のピーク幅Bの違いから焦点位置を決定する。撮影時には、撮像素子15上の分離再結像領域の光像は、周辺の画素を用いて補間することで生成するものとする。
【0026】
次にフォーカスエリア位置に合わせて分離再結像光学系13を撮像素子15上の任意の対応する位置に移動させて配置する一手段について説明する。
【0027】
図4は、前記分離再結像光学系移動部14の具体的な一構成例を示すものである。同図で分離再結像光学系13は、透明なフィルム41上の中心位置に固定配置されており、フィルム41の縦横の長さはそれぞれ撮像素子15の2倍以上が望ましい。
【0028】
さらにフィルム41の左右には、フィルムを巻き取り左右のスペースを節約するための一対のフィルム巻取り部42,42を撮像素子の水平長以上の間隔で配置する。フィルム巻取り部42,42がフィルム41を図中に矢印IVで示すように左右に連動して巻き取ることにより、分離再結像光学系13は撮像素子15上を左右に移動することができる。
【0029】
さらにフィルム巻取り部42,42は支持部43上に連結されており、支持部43は一対の超音波アクチュエータ44,44上に接した状態で配置される。
【0030】
図5は、分離再結像光学系移動部14を撮影光軸と垂直となる側面方向から見た様子を示す。図5(A)は分離再結像光学系13が撮像素子15の撮像面の下端側に、図5(B)は分離再結像光学系13が撮像素子15の撮像面の上端側に移動している状態を示す。
【0031】
このように超音波アクチュエータ44,44は、図5(A)に示す状態から図中の矢印Vaに示すように図5(B)に示す状態となるまで、あるいは図5(B)に示す状態から図中の矢印Vbに示すように図5(A)に示す状態となるまで、支持部43を最大で撮像素子15の垂直長と同じ距離分だけ移動させることができ、その範囲内の任意の高さ位置で分離再結像光学系13を撮像素子15に対応して移動させることができる。
【0032】
以上に示した分離再結像光学系移動部14の機構により、本実施形態の分離再結像光学系移動部14は撮像素子15の全ての撮像領域に対応して分離再結像光学系13を任意に移動させることができる。
【0033】
ユーザインターフェース18では、ファインダ上に表示位置が可変なフレーム枠を用いてフォーカスエリアを表示する。
【0034】
このデジタルカメラ10のユーザは、同じくユーザインターフェース18の一部を構成するダイアルキーやボタンキー等の操作キーを用いてフォーカスエリアを任意の位置に移動させてから、撮影を指示するべくレリーズボタンを押下する。
【0035】
これら一連のユーザの操作に対し、分離再結像光学系移動部14が撮像素子15上の対応する位置に分離再結像光学系13を移動させて位相差焦点検出処理を開始し、撮像光学系11での合焦位置を制御した後、レリーズボタンの操作に応じて撮影動作を実行する。
【0036】
以上説明した如く本実施形態によれば、小さな領域に対応する分離再結像光学系13を上下左右に移動可能な透明フィルムなどの平面体上に配置した分離再結像光学系移動部14を設けるものとした。
【0037】
これにより、撮像素子15の撮像領域中の任意の位置での位相差焦点検出を用いた撮影を行なうことができ、撮影される画像の画質劣化領域を最小限に抑えつつ、フォーカスエリアの設定自由度を高くすることができ、また撮影時のシャッタタイムラグも発生しない。
【0038】
さらに前記実施形態では、分離再結像光学系13を例えば透明なフィルム41のような平面体上の任意の位置に固定して配置されたものとし、分離再結像光学系移動部14がフィルム41を例えば左右方向に移動させることにより、分離再結像光学系13を移動させるような構成を採るものとしたので、分離再結像光学系13のみを撮像素子15上の任意の位置に配置できる。
【0039】
同じく前記実施形態では、分離再結像光学系13を配設したフィルム41の両端にフィルム巻取り部42,42を備え、連動した巻き取り動作により分離再結像光学系13を撮像素子15に対して移動させ得るものとしたので、分離再結像光学系13の移動に必要な空間を削減できる。
【0040】
また、前記実施形態では、分離再結像光学系移動部14が超音波アクチュエータ44,44を備え、その振動を用いて分離再結像光学系13を配設したフィルム41を移動させるものとしたので、分離再結像光学系13の移動をより高精度に制御でき、フォーカスエリアの詳細な設定が可能となる。
【0041】
(第2の実施形態)
以下、本発明をコンパクトタイプのデジタルカメラに適用した第2の実施形態について図面を参照して説明する。
【0042】
図6は、同実施形態に係るデジタルカメラ10′の主として光学系の機能構成を示すもので、焦点検出機構の構成に関しては前記図1に示したものと基本的に同様であるため、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略するものとする。
【0043】
すなわちこのデジタルカメラ10′は、同図に示す如く分離再結像光学系13、分離再結像光学系移動部14、撮像素子15、及びユーザインターフェース18を有するものとし、前記図1で示したハーフミラー12、ファインダ光学系16、及びファインダ17の構成を省略するものとした。
【0044】
ユーザインターフェース18の一部を構成する電子ビューファインダでは、撮像素子15で得られる画像をそのままリアルタイムでモニタ表示し、且つその時点で指定されているフォーカスエリアを画像上に重畳表示するものとしている。
【0045】
したがって、これもユーザインターフェース18を構成する操作キー等の操作によりフォーカスエリアの移動等を指示することにより、その指示内容に応じて新たなフォーカスエリア位置が表示されることとなる。
【0046】
このようにコンパクトタイプのデジタルカメラ10′においても、前記図1に示した一眼レフタイプのデジタルカメラ10と同様に、充分小さな配置空間内で、小さな領域に対応する分離再結像光学系13を上下左右に移動可能な透明フィルムなどの平面体上に配置した分離再結像光学系移動部14を設けるものとしたことにより、撮像素子15の撮像領域中の任意の位置での位相差焦点検出を用いた撮影を行なうことができ、撮影される画像の画質劣化領域を最小限に抑えつつ、フォーカスエリアの設定自由度を高くすることができ、また撮影時のシャッタタイムラグも発生しない。
【0047】
なお、前記第1及び第2の実施形態はいずれも、本発明をデジタルカメラに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、スチルカメラ機能付きのデジタルムービーカメラ、カメラ機能付きの携帯電話端末機やPDA(Personal Digital Assistants:個人向け情報携帯端末)等にも同様に適用することが可能となる。
【0048】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件により適宜の組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る一眼レフタイプのデジタルカメラの一部機能構成を示す図。
【図2】同実施形態に係る合焦時の分離結像状態を例示する図。
【図3】同実施形態に係る非合焦時の分離結像状態を例示する図。
【図4】同実施形態に係る分離再結像光学系移動部の内部構成を示す図。
【図5】同実施形態に係る分離再結像光学系移動部での移動状態を例示する図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るコンパクトタイプのデジタルカメラの一部機能構成を示す図。
【符号の説明】
【0050】
10,10′…デジタルカメラ、11…撮像光学系、12…ハーフミラー、13…分離再結像光学系、14…分離再結像光学系移動部、15…撮像素子、16…ファインダ光学系、17…ファインダ、18…ユーザインターフェース、21…セパレータレンズ、22…コンデンサレンズ、41…フィルム、42…フィルム巻取り部、43…支持部、44…超音波アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物からの光を所定の位置に結像する撮像光学系と、
前記撮像光学系により結像された像を電気信号に変換する光電変換素子と、
前記撮像光学系により結像された像を分離して前記光電変換素子の一部の領域に再結像する分離再結像光学系と、
前記分離再結像光学系で前記光電変換素子の一部の領域に再結像した像の変換出力により位相差焦点検出を行なう焦点検出手段と、
前記撮像光学系で結像する撮像領域中の合焦位置に対応して前記分離再結像光学系を前記光電変換素子上の任意の位置に移動させる再結像光学系移動手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記分離再結像光学系は、透明な平面体上の任意の位置に固定され、
前記再結像光学系移動手段は、前記平面体を移動させることにより前記分離再結像光学系を移動させる
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記再結像光学系移動手段は、前期平面体の両端に平面巻取り部を備えることを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記再結像光学系移動手段は、超音波の駆動で振動する超音波アクチュエータを備え、前記超音波アクチュエータの振動を用いて前記分離再結像光学系を移動させる
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
対象物からの光を所定の位置に結像する撮像光学系、前記撮像光学系により結像された像を電気信号に変換する光電変換素子、前記撮像光学系により結像された像を分離して前記光電変換素子の一部の領域に再結像する分離再結像光学系、及び前記分離再結像光学系で前記光電変換素子の一部の領域に再結像した像の変換出力により位相差焦点検出を行なう焦点検出手段を備えた撮像装置での撮像方法であって、
前記撮像光学系で結像する撮像領域中の合焦位置に対応して前記分離再結像光学系を前記光電変換素子上の任意の位置に移動させることを特徴とする撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−25415(P2009−25415A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186223(P2007−186223)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】