説明

撮像装置及び撮像方法

【課題】複雑な画像合成回路等の構成を必要とせずに、撮影対象の全体について場面認識を行うことができるとともに、モニタに表示されるスルー画像の表示品質を損なうことのない撮像装置及び撮像方法を提供する。
【解決手段】撮像光学系と、撮像素子と、第1の露出制御と、第2の露出制御と、を交互に行うように構成された露出制御部と、スルー画像生成部と、所定周期ごとに前記スルー画像を更新してモニタに表示するスルー画像表示部と、第1及び第2スルー画像に基づいて撮像している場面の認識結果を出力する場面認識部と、を備え、前記場面認識部が、第1認識結果と、第2認識結果と、を組み合わせて場面の認識結果を出力するように構成されており、前記スルー画像表示部が、前記第1スルー画像のみ、又は、前記第2スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場面認識演算を行うことができる撮像装置及びその撮像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、被写体や場面を認識し、その認識結果に基づいて、ホワイトバランス、色再現処理、ノイズ処理等を変更する構成を有した撮像装置の研究開発が進められている。
【0003】
この場面認識演算はCPU等に相当の負荷のかかる演算であり、撮影時、特にシャッタが切られる直前等において場面認識演算を行うと、演算処理時間によってレリーズラグ等が発生し、シャッタチャンスを逃す場合がある。このため、例えばシャッタボタンが押される前等の撮影前の期間において、撮像装置に設けられたモニタに表示されるスルー画像を利用して場面認識が行われる。
【0004】
上述した場面認識は、画像のパターン、色情報、輝度情報等に基づいて解析を行うものであるため、ダイナミックレンジの不足により撮像素子からの画像信号が飽和してスルー画像中に白つぶれ(露出過多)や黒つぶれ(露出不足)が発生した領域が存在すると、その領域に関しては全く解析を行うことができない。
【0005】
このような問題に対して、スルー画像のダイナミックレンジを拡大して白つぶれや黒つぶれが存在しないものにし、画像全体での場面認識を可能にすることが考えられる。
【0006】
例えば、スルー画像のダイナミックレンジを拡大する構成としては、特許文献1に挙げられるような特別な回路を用いたものがある。より具体的には、特許文献1の撮像装置は、撮像素子の電荷蓄積期間を制御する電荷蓄積期間制御部と、前記撮像素子から出力された電荷蓄積期間の異なる2つの画像を合成して1つの画像とする合成部と、を備え、2つの露光量の異なる画像を合成して1つのワイドダイナミックレンジのスルー画像を出力して白つぶれ又は黒つぶれが存在しないようにしている。
【0007】
しかしながら、上述したような露光量の異なる2つの画像を合成して1つのスルー画像にするためには専用の処理回路が必要となってしまい、例えば汎用のデジタルカメラ等にこの構成を追加することは難しい。
【0008】
一方、場面認識を優先してスルー画像に白つぶれによる解析不能な領域がないように単純に露出制御を行うと、モニタに表示されるスルー画像全体が暗くなってしまい、ユーザによるフレーミング等に適した明るさでスルー画像をモニタに表示できなくなる恐れがある。すなわち、場面認識をスルー画像全体で行えるようにすると、スルー画像の本来の機能が損なわれる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−141229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上述したような問題点を鑑みてなされたものであり、露光量の異なる複数の画像を合成してスルー画像を生成するといった複雑な回路等の構成を必要とせずに、撮影対象の全体について場面認識を行うことができるとともに、モニタに表示されるスルー画像の表示品質を損なうことのない撮像装置及び撮像方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の撮像装置は、撮像光学系と、前記撮像光学系により形成される被写体像を画像信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子への露光量を制御するものであり、第1の露出制御と、当該第1の露出制御に比べて所定量だけ露光量を異ならせた第2の露出制御と、を交互に行うように構成された露出制御部と、前記画像信号からスルー画像を生成するスルー画像生成部と、所定周期ごとに前記スルー画像を更新してモニタに表示するスルー画像表示部と、前記スルー画像に基づいて場面認識演算を行い、前記撮像素子により撮像している場面の認識結果を出力する場面認識部と、を備え、前記場面認識部が、前記第1の露出制御中に出力される画像信号から生成される第1スルー画像に基づいた第1認識結果と、前記第2の露出制御中に出力される画像信号から生成される第2スルー画像に基づいた第2認識結果と、を組み合わせて場面の認識結果を出力するように構成されており、前記スルー画像表示部が、前記第1スルー画像のみ、又は、前記第2スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の撮像方法は、撮像光学系と、前記撮像光学系により形成される被写体像を画像信号に変換する撮像素子と、スルー画像が表示されるモニタと、を備えた撮像装置に用いられる撮像方法であって前記撮像素子の露光量を制御するものであり、第1の露出制御と、当該第1の露出制御に比べて所定量だけ露光量を抑えた第2の露出制御と、を交互に行うように構成された露出制御ステップと、前記画像信号からスルー画像を生成するスルー画像生成ステップと、所定周期ごとに前記スルー画像を更新して前記モニタに表示するスルー画像表示ステップと、前記スルー画像に基づいて場面認識演算を行い、前記撮像素子により撮像している場面の認識結果を出力させる場面認識ステップと、を備え、前記場面認識ステップにおいて、前記第1の露出制御中に出力される画像信号から生成される第1スルー画像に基づいた第1認識結果と、前記第2の露出制御中に出力される画像信号から生成される第2スルー画像に基づいた第2認識結果と、を組み合わせて場面の認識結果を出力させるようにし、前記スルー画像表示ステップにおいて、前記第1スルー画像のみ、又は、前記第2スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、第1の露出制御と第2の露出制御を交互に行うことにより2つの露光量が異なる第1スルー画像と第2スルー画像を生成し、前記第1スルー画像に基づいた第1認識結果と、前記第2スルー画像に基づいた第2認識結果と、を組み合わせて画像全体の場面認識を行うので、第1スルー画像と第2スルー画像を合成して1枚の画像にするための特別な処理回路等が必要とならない。しかも、第2スルー画像は第1スルー画像に比べて所定量だけ露光量を異ならせているので、例えば第1スルー画像において輝度が大きすぎるために飽和している領域があり、その領域に関しては場面認識が行えなかったとしても、第2スルー画像では対応する当該領域を飽和させず場面認識を行うことができる。従って、各スルー画像における認識結果を組み合わせることによってスルー画像全体の場面認識を行うことができる。逆に第2スルー画像において輝度が小さすぎるために場面認識を行えない領域があったとしても、第1スルー画像の方が露光量を大きく設定されているので、当該領域の場面認識を行うことができ、やはり画面全体での場面認識を行うことができる。
【0014】
さらに、前記スルー画像表示部が、前記第1スルー画像のみ、又は、前記第2スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けるように構成されているので、前記露出制御部が第1の露出制御と、第2の露出制御を交互に行っていても、前記モニタには、明るさが異なる画像が交互に表示されることにより、ユーザがスルー画像を見づらく感じたり、不快に感じたりすることがない。加えて、第1スルー画像及び第2スルー画像のうち、ユーザにとって見やすい方のする画像のみを表示させ続けることができ、通常のスルー画像とほとんど違いを感じることがないようにもできる。従って、場面認識用の露出制御を前記露出制御部で行ったとしても、スルー画像のモニタでの表示品質を保つことができ、ユーザがスルー画像を用いてフレーミング等をする際に好適に用いることができるようになる。
【0015】
前記モニタに表示されるスルー画像をユーザにとってより見やすいものにするには、前記露出制御部が、前記第1の露出制御において、前記第1スルー画像の全体の輝度平均値が飽和値の略半分の値となるように露光量を制御し、前記スルー画像表示部が、前記第1スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けるように構成されたものであればよい。
【0016】
前記モニタに表示されるスルー画像を特にフレーミングする際において好ましいものにするには、前記露出制御部が、前記モニタに表示されている前記第1スルー画像中の被写体が、ユーザが直接その被写体を見る態様と略同じになるように前記第1の露出制御における露光量を制御し、前記スルー画像表示部が、前記第1スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けるように構成されたものであればよい。
【0017】
ユーザにとって被写体を捉えやすく、見やすいスルー画像を前記モニタに表示させ続けるには、前記露出制御部が、前記第1スルー画像の少なくとも中央部の領域が適正露光量となるように前記第1の露出制御における露光量を制御し、前記スルー画像表示部が、前記第1スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けるように構成されたものであればよい。
【0018】
前記場面認識部がスルー画像全体において場面認識をするための具体的な露出制御の態様としては、前記露出制御部が、前記第2の露出制御において、前記第2スルー画像の全画素のうち飽和している画素の割合が、所定割合以下となるように露光量を制御するものであればよい。
【0019】
交互に露光量を変えて露出制御を行わなくても、スルー画像全体の場面認識を行える場合には、スルー画像の更新頻度をあげ、場面認識中でもよりなめらかに動くスルー画像を前記モニタに表示させることができるようにするには、前記露出制御部の露出制御方法を切り替える露出制御切替部を更に備え、前記露出制御切替部が、前記第1スルー画像の各画素のうち飽和しているものの割合が所定量以下の場合には、前記露出制御部が第1の露出制御のみを行い、前記第1スルー画像の各画素のうち飽和しているものの割合が所定量以上の場合には、前記露出制御部に第1の露出制御と、第2の露出制御とを交互に行うように露出制御方法を切り替えるように構成されたものであればよい。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明の撮像装置及び撮像方法によれば、第1の露出制御と第2の露出制御を交互に行うことにより、第1スルー画像と第2スルー画像の露光量を異ならせて、各スルー画像での場面認識結果を行い、その場面認識結果を組み合わせることでスルー画像全体の場面認識行うので、第1スルー画像と第2スルー画像とを1枚のスルー画像に合成するような複雑な処理回路を必要としない。しかも、交互に生成される第1スルー画像と第2スルー画像のうち一方を表示させつづけるので、明るさの異なる画像が交互に表示されて画面がちらついて見えづらくなることがなく、モニタに表示される画像の品質を略保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置を示す模式的前方斜視図。
【図2】同実施形態における撮像装置を示す模式的後方斜視図。
【図3】同実施形態における撮像装置全体の電気的構成を示す機能ブロック図。
【図4】同実施形態における表示装置に関する構成を示す機能ブロック図。
【図5】同実施形態におけるスルー画像表示に関連する動作のタイミングチャート。
【図6】同実施形態における場面認識部の動作を示す模式図。
【図7】同実施形態における場面認識を行う際の各部の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
<装置全体の構成に関する説明>
本実施形態の撮像装置100は、図1の前方斜視図に示すように、前面には電源オン時において撮像光学系1を保持する鏡筒が突出するように設けている他、ストロボ装置38等が設けてある。なお、これらの鏡筒は電源オフ時には内部に収容されるようにしてある。また、図2の後方斜視図に示すように背面には撮像されているスルー画像を見るためのモニタ35と、各種操作に用いられる操作キー53等が設けてある。そして上面には、シャッターレリーズ操作を行うために用いられるシャッタボタン51と、撮影モードを切り替えるためのモードダイヤル52が設けてある。
【0024】
図3は、本実施形態の撮像装置100の電気的な構成を機能ブロックとして示すものである。図3に示すように、撮像光学系1、撮像素子2、画像信号処理回路31、VRAM32、評価値算出回路33、表示画像処理回路34、モニタ35、圧縮処理回路36、記録メディア37、CPU41、メモリ42、43、等が協業して、いわゆるデジタルカメラとしての機能を発揮するように構成してある。以下に各部について説明する。
【0025】
前記撮像光学系1は、光軸14に沿って外側から順に、ズームレンズ11、絞り12、フォーカスレンズ13、シャッタ17の順で並べて構成してあり、前記フォーカスレンズ13の後ろ側に前記撮像素子2が設けてある。前記撮像素子2としては、例えばCCD型やCMOS型のイメージセンサが用いられる。
【0026】
前記絞り12にはアイリスモータが接続されており、AE(Auto Exposure)動作時に絞り12値を変化させて光束を制限して露出量を制御するために用いられる。また前記フォーカスレンズ13にはレンズモータが接続されており、AF(Auto Focus)動作時に当該フォーカスレンズ13を撮像光学系1の光軸14に沿って移動させることにより、撮像光学系1のフォーカス位置を制御してピント調整を行うように構成してある。
【0027】
前記撮像素子2は、前記撮像光学系1により結像された被写体像を画像信号に変化するものである。当該撮像素子2には、タイミングジェネレータ21(TG)が接続してあり、TG21により前記撮像素子2の光電荷蓄積、転送動作が制御される。この光電荷蓄積及び転送動作の時間を制御することによって、撮像素子2への露光量が制御できるようにしてある。なお、前記絞り12、前記フォーカスレンズ13、前記シャッタ17はドライバ15、16、18を介して、前記撮像素子2はタイミングジェネレータ21(TG)を介して、CPU41により制御される。
【0028】
前記撮像素子2から出力された画像信号は、相関二重サンプリング回路(CDS)及び増幅器(AMP)22、A/Dコンバータ(ADC)23、の順で入力され、アナログデータからデジタルデータへと変換される。デジタルデータに変換された画像信号は、画像コントローラ24が入出力をコントロールする。また、前記増幅器22のゲインを制御することにより露光量を制御できるようにもしてある。前記画像信号は、画像信号処理回路31に入力され、階調変換、ホワイトバランス補正、γ補正処理等が施され、前記モニタ35で表示されるスルー画像として、VRAM32の所定領域A、Bに一次的に記憶される。このVRAM32に記憶されている各画像は所定周期ごとに更新される。具体的には例えば前記タイミングジェネレータ21により撮像素子2が1/30秒(1フレーム)ごとに露光及び画像信号の出力が繰り返されるのに合わせて更新できるようにしてある。本実施形態では、前記スルー画像を1フレームごとに更新するか又は2フレーム毎に更新するかについても制御できるようにしてある。
【0029】
前記評価値算出回路33は、VRAM32に記憶された画像からAF評価値及びAE評価値等を算出するものである。AF評価値とは、例えばコントラスト評価値に相当するものである。またコントラスト評価値は、前記各画像の所定領域について、輝度値の高周波成分を積算することにより算出されたものである。すなわち、隣接する画素間のコントラスト(輝度差)を所定領域内について足し合わせたものである。また、AE評価値とは、各画像データの所定領域について輝度値を積算することで算出され、画像の明るさを表すものである。コントラスト評価値、AE評価値はそれぞれ後述するAF動作及びAE動作において用いられる。
【0030】
前記表示画像処理回路34は、VRAM32に記憶されている画像に基づいてLCDモニタ35においてスルー画像を表示するための処理を行うものである。
【0031】
前記圧縮処理回路36は、VRAM32に記憶された画像に対して、JPEG方式等の圧縮形式により圧縮処理を施すものである。メディアコントーラ371は、圧縮処理回路36によって圧縮処理された各画像をメモリカード等の記録メディア37に保存する。また、モードダイヤル52によりビューモードが選択されている場合には、この記録メディア37に保存されている画像に基づいて、前記表示画像処理回路34により生成された立体画像が前記モニタ35により表示される。
【0032】
前記CPU41は、撮像装置100の全体の動作を統括的に制御するものである。CPU41には、前述のシャッタボタン51、モードダイヤル52、各種操作キー53の他、不揮発性メモリ43が接続されている。
【0033】
前記シャッタボタン51は、2段押のスイッチ構造となっている。シャッタボタン51がユーザにより軽く押圧(半押し)されると、撮像準備動作が開始される。本実施形態では、後述するようにシャッタボタン51が半押しになった時点で全てのAF動作が開始される入力後モードと、シャッタボタン51が半押しとなる前に、AF動作の一部が既に開始されている入力前モードとがある。このモードの切り替えは例えば、モードダイヤル52等や設定画面で切り換えるようにしてある。シャッタボタン51が強く押圧(全押し)されると、撮影処理が行われ、1画面分の第1及び第2画像がVRAM32から記録メディア37に転送されて記憶される。また、この記録メディア37に記憶されている撮影された画像は、モードダイヤル52で再生モードが選択されている場合には、前記表示画像処理回路で所定の処理が行われた後に前記モニタ35に表示される。
【0034】
<場面認識及びモニタへのスルー画像の表示に関連する構成の説明>
前記前記不揮発性メモリ43には、各種制御用のプログラムや設定情報等が記憶されている。しかして、前記CPU41、SDRAM42、不揮発性メモリ43、各種回路等、記録メディア37等が協業してプログラムや設定情報に基づき、少なくとも、露出制御部61、露出制御切替部65、スルー画像生成部62、スルー画像表示部63、場面認識部64、としての機能を発揮するように構成してある。これらの各部を示す機能ブロック図は図4のようになる。
【0035】
前記露出制御部61は、前述した評価値算出回路から出力される前記AE評価値に基づいて、例えばスルー画像における各画素の輝度の平均値が予め定めてある目標値となるように、前記タイミングジェネレータ21、前記絞り12、前記増幅器22のゲイン等を変更して、前記撮像素子への露光量を制御するものである。そして第1の露出制御と第2の露出制御とを交互に行うように構成してある。なお、前記露出制御部61は、第1露出制御のみを連続して行うことができるようにも構成してある。以下の説明では、第1及び第2の露出制御中において生成されたスルー画像のことをそれぞれ第1スルー画像、第2スルー画像とよぶ。
【0036】
前記第1の露出制御前記モニタに表示されるスルー画像を、適切な明るさとするための露出制御であり、前記第1スルー画像の全体の輝度平均値が前記撮像素子の出力信号の飽和値の略半分の値となるように露光量を制御している。
【0037】
前記第2の露出制御は、前記第1の露出制御と比較して、撮像素子への露光量が小さくなるように露出を抑えた露出制御にしてある。より具体的には、第2の露出制御においては、前記第2スルー画像の全画素のうち飽和している画素の割合が、所定割合以下となるように露光量を制御している。ここで、所定割合とは例えば全画素の5%以下等が例として挙げられる。
【0038】
前記スルー画像生成部62は、前記撮像素子からの画像信号からスルー画像を生成するものであり、前記画像信号処理回路31に相当するものである。
【0039】
前記スルー画像表示部63は、前記露出制御部61により第1及び第2の露出制御が交互に行われているときには、前記第1スルー画像のみを前記モニタ35に表示するように構成してある。より具体的には、前記スルー画像表示部63は、前記スルー画像生成部62で生成された第1スルー画像を前記第1の露出制御が行われて第1スルー画像が生成されるごとに、VRAM32に形成される表示用バッファ(図示しない)に更新して格納し、格納されている画像を前記モニタ35に表示する。逆に言うと、第2の露出制御が行われているときに生成される第2スルー画像については前記表示用バッファに格納しないようにしてある。従って、図5のタイミングチャートに示されるように、第1及び第2の露出制御を交互に行っている場合には、新たなスルー画像を生成されてもモニタに表示される表示フレームは2フレームに1回の更新となる。
【0040】
前記場面認識部64は、前記第1の露出制御中に出力される画像信号から生成される第1スルー画像に基づいた第1認識結果と、前記第2の露出制御中に出力される画像信号から生成される第2スルー画像に基づいた第2認識結果と、を組み合わせて場面の認識結果である最終認識結果を出力するように構成してある。より具体的には、図6に示すようにスルー画像を水平方向に13、垂直方向に9の計13×9のブロックに分割し、それぞれのブロックの画素データから、輝度情報、色情報、パターン情報を用いて、予め用意してある被写体パターンのいずれに該当するかを判断するようにしてある。ここで、被写体パターンとは例えば撮影されている被写体が何であるかを示すものである。
【0041】
図6は、逆光で人物を取った際の画像を例としたものである。まず、第1の露出制御中に撮像された第1スルー画像は、中央部の人物像は鮮明に撮像できているものの、背景は飽和して白つぶれを起こしている。このため第1認識結果では、人物の映っているブロックについては場面認識に成功し、周囲の白つぶれの背景については判定ができない。次に第2の露出制御中に撮像された第2スルー画像では、第1スルー画像に比べて露光量を抑えているため、全体的に暗い画像となっている。このため、中央部の人物については黒つぶれを起こしかけているが、周囲の背景については鮮明に撮像できている。この第2スルー画像を用いた場面認識では、前記第1スルー画像で場面認識に成功したブロック以外の認識演算が行われる。その結果、背景が青空と雲であることの認識に成功し、これを第2認識結果として出力する。最後に第1認識結果と第2認識結果を組み合わせて最終認識結果として出力するように前記場面認識部64は構成してある。
【0042】
この場面認識結果は前記露出制御、コントラストAF等の合焦位置の調整、撮像された画像のホワイトバランス調整、色調整、各種画像処理に補助的に用いられるものであり、被写体の種類ごとに応じた補正等を可能にするものである。
【0043】
前記露出制御切替部65は、前記露出制御部61が、第1の露出制御が終わった時点で、続けて第1の露出制御を行うか、あるいは、第2の露出制御を行うかを条件に基づいて選択して、切り替えるものである。より具体的には、前記露出制御切替部65は、前記第1スルー画像の各画素のうち飽和しているものの割合が所定量以下の場合であり、前記第1認識結果のみで画像全体の場面認識が略行えている場合には、前記露出制御部61が第1の露出制御のみを行い、前記第1スルー画像の各画素のうち飽和しているものの割合が所定量以上の場合には、前記露出制御部61に第1の露出制御と、第2の露出制御とを交互に行うように露出制御方法を切り替えるように構成してある。
【0044】
このように構成した撮像装置の場面認識時の動作について図7のフローチャートを参照しながら説明する。なお、この動作は撮像装置100の電源が入れられ、ユーザによりシャッタボタン52が押されておらず、合焦動作等が開始されていない状態で行われる。また、場面認識を行っている間は、前記スルー画像表示において表示される画像は、第1スルー画像のみに設定してあり、新たに第1スルー画像が生成される度に更新される。
【0045】
まず、前記露出制御部61が第1の露出制御を開始する(ステップS1)。前記露出制御部61は、まず前記評価値算出部からAE評価値を取得し(ステップS2)、第1スルー画像の全体の輝度が予め設定してある輝度平均値となるように、タイミングジェネレータ21、絞り12、増幅器22のゲイン等に関する制御パラメータを演算して、各部を制御し所定の露光量に制御する(ステップS3)。各部の制御が完了した後に、前記場面認識部64は第1の露出制御中に生成される第1スルー画像に基づいて、場面認識演算を行う。この際、第1スルー画像で輝度が飽和している部分に関しては解析不能として場面認識演算を終了し、第1認識結果を出力する(ステップS4)。その後、前記露出制御切替部65は、前記第1スルー画像又は前記第1認識結果に基づいて、第1スルー画像において輝度が飽和しており、解析不能であった領域が予め定めてある割合、すなわち許容値よりも小さいかどうかを判別し(ステップS5)、第1スルー画像における飽和領域が許容値以下の割合であった場合には、第1認識結果を最終認識結果として(ステップS6)、再びステップS1からS5の動作を繰り返す。このように第1認識結果だけで、画像の略全体について場面認識を行えた場合には、後述する第2の露出制御動作を行わずに、第1の露出制御動作を繰り返すようにしてあるので、スルー画像の更新頻度を2フレームに1回から1フレームに1回にすることができ、モニタに表示されスルー画像の動きのなめらかさ等を向上させることができる。
【0046】
次に、第1認識結果だけでは、画像全体の場面認識が所定割合以上行えなかった場合には(ステップS5)、前記露出制御切替部65が、前記露出制御部61に行わせる露出制御を第1の露出制御から第2の露出制御へと切替させ、前記露出制御部61が第2の露出制御を開始する(ステップS7)。そして、前記露出制御部61は、前記評価値算出部からAE評価値を取得し(ステップS8)、第2スルー画像が予め定めてあるように第1のスルー画像よりも露光量が抑えられ、暗い画像となるように、タイミングジェネレータ21、絞り12、増幅器22のゲイン等に関する制御パラメータを演算して、各部を制御して所定の露光量に制御する(ステップS9)。各部の制御が完了した後に、前記場面認識部64は第2の露出制御中に生成される第2スルー画像に基づいて、場面認識演算を行う。この際、第1スルー画像で解析に成功したブロックについては演算を省略し、第1スルー画像では解析不能であったブロックに関して場面認識演算を行った結果である第2認識結果を出力する(ステップS10)。その後、前記場面認識部64は、第1認識結果と第2認識結果を組み合わせて画像全体の認識結果である最終認識結果とする(ステップS11)。最後にシャッタボタン52などが押圧されているかどうか等に基づいて、撮影直前であるかどうかの判断が行われ、場面認識演算を終了するか継続するかについての判断が行われる(ステップS12)。
【0047】
<本実施形態の効果> このように本実施形態の撮像装置によれば、明暗差の大きい被写体であっても第1の露出制御と第2の露出制御とを交互に行い、第1及び第2スルー画像を生成し、それぞれから第1認識結果と第2認識結果とを組み合わせて最終認識結果とすることで、画像全体の場面認識を行うことができる。しかも、第1及び第2スルー画像を合成してワイドダイナミックレンジの画像とする必要がないので、合成処理を行う複雑な回路等も設ける必要がなく、構成の複雑化を防ぐことができる。さらに、露光量がユーザにとって見やすい適正レベルに設定された第1スルー画像のみを前記スルー画像表示部63は、前記モニタに表示させ続けるので、第1及び第2の露出制御を交互に行っても表示品質には略変化がない。言い換えると、場面認識を画像全体に行うことができるとともに、スルー画像についても見やすく、略なめらかな画像をモニタに表示することができる。
【0048】
その他の実施形態について説明する。
【0049】
前記実施形態では、逆行時の場面認識に基づいて説明を行ったが、その他の明暗差の大きい被写体を取る際にも本発明の撮影装置及び撮像方法を適用することができる。例えば、通常の露光では、黒つぶれが発生するような被写体に対して場面認識を行う場合でも有効である。すなわち、前記露出制御部が、前記撮像素子への露光量を制御するものであり、第1の露出制御と、当該第1の露出制御に比べて所定量だけ露光量を異ならせた第2の露出制御と、を交互に行うように構成されているものであれば、2つの認識結果に基づいて黒つぶれの領域に関しても場面認識を行うことができる。この場合、例えば、第1の露出制御が通常の適正レベルの露光量に制御するものとした場合、第2の露出制御は露光量を所定量だけ大きくするように制御すればよい。また、被写体によっては、適正露光される第1の露光制御よりも、第2の露光制御による第2スルー画像の方が見やすい場合等には、前記スルー画像表示部が、第2スルー画像のみをモニタに表示し続けるように構成しても構わない。
【0050】
また、モニタに表示される画像に注目すると、前記露出制御部が、前記モニタに表示されている前記第1スルー画像中の被写体が、ユーザが直接その被写体を見る態様と略同じになるように前記第1の露出制御における露光量を制御するものであればよい。また、より好ましくは、前記露出制御部が、前記第1スルー画像の少なくとも中央部の領域が適正露光量となるように前記第1の露出制御における露光量を制御するものであればよい。
【0051】
さらに、前記実施形態では前記場面認識部は、第2スルー画像について第1スルー画像で場面認識できなかったブロックのみ場面認識を行うように構成していたが、例えば、認識できるブロックは全て場面認識を行うようにしても構わない。その場合、場面認識が重複したブロックにおいては第1認識結果を優先する等といった条件を決めておけばよい。
【0052】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0053】
100・・・撮像装置
1 ・・・撮像光学系
2 ・・・撮像素子
61 ・・・露出制御部
62 ・・・スルー画像生成部
63 ・・・スルー画像表示部
64 ・・・場面認識部
65 ・・・露出制御切替部
35 ・・・モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系と、
前記撮像光学系により形成される被写体像を画像信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子への露光量を制御するものであり、第1の露出制御と、当該第1の露出制御に比べて所定量だけ露光量を異ならせた第2の露出制御と、を交互に行うように構成された露出制御部と、
前記画像信号からスルー画像を生成するスルー画像生成部と、
所定周期ごとに前記スルー画像を更新してモニタに表示するスルー画像表示部と、
前記スルー画像に基づいて場面認識演算を行い、前記撮像素子により撮像している場面の認識結果を出力する場面認識部と、を備え、
前記場面認識部が、前記第1の露出制御中に出力される画像信号から生成される第1スルー画像に基づいた第1認識結果と、前記第2の露出制御中に出力される画像信号から生成される第2スルー画像に基づいた第2認識結果と、を組み合わせて場面の認識結果を出力するように構成されており、
前記スルー画像表示部が、前記第1スルー画像のみ、又は、前記第2スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けるように構成されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記露出制御部が、前記第1の露出制御において、前記第1スルー画像の全体の輝度平均値が飽和値の略半分の値となるように露光量を制御し、
前記スルー画像表示部が、前記第1スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けるように構成された請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記露出制御部が、前記モニタに表示されている前記第1スルー画像中の被写体が、ユーザが直接その被写体を見る態様と略同じになるように前記第1の露出制御における露光量を制御し、
前記スルー画像表示部が、前記第1スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けるように構成された請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記露出制御部が、前記第1スルー画像の少なくとも中央部の領域が適正露光量となるように前記第1の露出制御における露光量を制御し、
前記スルー画像表示部が、前記第1スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けるように構成された請求項1、2又は3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記露出制御部が、前記第2の露出制御において、前記第2スルー画像の全画素のうち飽和している画素の割合が、所定割合以下となるように露光量を制御する請求項1、2、3又は4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記露出制御部の露出制御方法を切り替える露出制御切替部を更に備え、
前記露出制御切替部が、前記第1スルー画像の各画素のうち飽和しているものの割合が所定量以下の場合には、前記露出制御部が第1の露出制御のみを行い、前記第1スルー画像の各画素のうち飽和しているものの割合が所定量以上の場合には、前記露出制御部に第1の露出制御と、第2の露出制御とを交互に行うように露出制御方法を切り替えるように構成された請求項1、2、3、4又は5記載の撮像装置。
【請求項7】
撮像光学系と、前記撮像光学系により形成される被写体像を画像信号に変換する撮像素子と、スルー画像が表示されるモニタと、を備えた撮像装置に用いられる撮像方法であって
前記撮像素子の露光量を制御するものであり、第1の露出制御と、当該第1の露出制御に比べて所定量だけ露光量を抑えた第2の露出制御と、を交互に行うように構成された露出制御ステップと、
前記画像信号からスルー画像を生成するスルー画像生成ステップと、
所定周期ごとに前記スルー画像を更新して前記モニタに表示するスルー画像表示ステップと、
前記スルー画像に基づいて場面認識演算を行い、前記撮像素子により撮像している場面の認識結果を出力させる場面認識ステップと、を備え、
前記場面認識ステップにおいて、前記第1の露出制御中に出力される画像信号から生成される第1スルー画像に基づいた第1認識結果と、前記第2の露出制御中に出力される画像信号から生成される第2スルー画像に基づいた第2認識結果と、を組み合わせて場面の認識結果を出力させるようにし、
前記スルー画像表示ステップにおいて、前記第1スルー画像のみ、又は、前記第2スルー画像のみを前記モニタに表示させ続けることを特徴とする撮像方法。
【請求項8】
前記露出制御ステップ中の前記第1の露出制御において、前記第1スルー画像の全体の輝度平均値が飽和値の略半分の値となるように露光量を制御し、
前記スルー画像表示ステップにおいて、前記第1スルー画像のみを前記モニタに表示させ続ける請求項7記載の撮像方法。
【請求項9】
前記露出制御ステップにおいて、前記モニタに表示されている前記第1スルー画像中の被写体が、ユーザが直接その被写体を見る態様と略同じになるように前記第1の露出制御における露光量を制御し、
前記スルー画像表示ステップにおいて、前記第1スルー画像のみを前記モニタに表示させ続ける請求項7又は8記載の撮像方法。
【請求項10】
前記露出制御ステップにおいて、前記第1スルー画像の少なくとも中央部の領域が適正露光量となるように前記第1の露出制御における露光量を制御し、
前記スルー画像表示ステップにおいて、前記第1スルー画像のみを前記モニタに表示させ続ける請求項7、8又は9記載の撮像方法。
【請求項11】
前記露出制御ステップ中の前記第2の露出制御において、前記第2スルー画像の各画素が飽和している割合が、前記第1スルー画像の各画素が飽和している割合に比べて小さくなるように露光量を制御する請求項7、8、9又は10記載の撮像方法。
【請求項12】
前記露出制御ステップの露出制御方法を切り替える露出制御切替ステップを更に備え、
前記露出制御切替ステップにおいて、前記第1スルー画像の各画素のうち飽和しているものの割合が所定量以下の場合には、前記露出制御部が第1の露出制御のみを行い、前記第1スルー画像の各画素のうち飽和しているものの割合が所定量以上の場合には、前記露出制御部に第1の露出制御と、第2の露出制御とを交互に行うように露出制御方法を切り替える請求項7、8、9、10又は11記載の撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−129900(P2012−129900A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281311(P2010−281311)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】