撮像装置及び撮像方法
【課題】簡素な構成、構造を有し、1台の撮像装置によって被写体を立体画像として撮像し得る撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、第1偏光手段30;レンズ系20;第2偏光手段50を有する撮像素子アレイ40を具備し、第1偏光手段30は第1領域31及び第2領域32を有し、第2偏光手段50は複数の第3領域51及び第4領域52を有し、第3領域51を通過した光は偏光状態にあり、第4領域52を通過した光は非偏光状態にあり、第3領域51を構成する第2偏光手段50の部分には、第1の方向に対して傾いたワイヤグリッド偏光子が設けられており、第1領域通過光は第3領域51を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域52を通過して撮像素子に到達し、第1領域の重心点BC1と第1偏光手段30の重心点BC0との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する。
【解決手段】撮像装置は、第1偏光手段30;レンズ系20;第2偏光手段50を有する撮像素子アレイ40を具備し、第1偏光手段30は第1領域31及び第2領域32を有し、第2偏光手段50は複数の第3領域51及び第4領域52を有し、第3領域51を通過した光は偏光状態にあり、第4領域52を通過した光は非偏光状態にあり、第3領域51を構成する第2偏光手段50の部分には、第1の方向に対して傾いたワイヤグリッド偏光子が設けられており、第1領域通過光は第3領域51を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域52を通過して撮像素子に到達し、第1領域の重心点BC1と第1偏光手段30の重心点BC0との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置及び撮像方法に関し、より具体的には、被写体を立体画像として撮像する撮像装置及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共通の被写体を左右に配置した2台のビデオカメラによって同時に撮像し、得られた2種類の画像(右眼用画像及び左眼用画像)を同時に出力することによって立体画像を表示するシステムが提案されている。しかしながら、このような2台のビデオカメラを用いた場合、装置が大型化してしまい、実用的ではない。また、2台のビデオカメラの間の基線長(ベースライン)、即ち、立体カメラとしての両眼間距離は、レンズのズーム比に拘わらず、人間の両眼の距離に相当する65mm程度とされることが多い。そして、このような場合、ズームアップされた画像においては両眼視差が大きくなってしまい、観察者の視覚系に日常と異なる情報処理を強制することになり、視覚疲労の原因となる。また、移動する被写体を2台のビデオカメラで撮像することは、2台のビデオカメラの精密な同期制御を必要とし、非常に困難であるし、輻輳角の正確な制御もまた、非常に困難である。
【0003】
立体撮影を行うためのレンズ系の調整を容易にするために、互いに直交関係となるように偏光させる偏光フィルタを組み合わせることによって、光学系を共通化させる立体撮影装置が提案されている(例えば、特公平6−054991号公報参照)。
【0004】
また、2つのレンズと1つの撮像手段から構成された撮像装置で立体撮影を行う方式が提案されている(例えば、特開2004−309868参照)。この特許公開公報に開示された撮像装置は、
所定数の走査線の整数倍に相当する画素が撮像面に設けられた撮像手段と、
被写体からの第1の映像光における水平成分だけを透過する第1の水平成分偏光手段と、
上記第1の水平成分偏光手段とは所定距離だけ離隔された位置に配置され、上記被写体からの第2の映像光における垂直成分だけを透過する第1の垂直成分偏光手段、
とを具え、
上記第1の水平成分偏光手段により透過した上記水平成分を上記撮像面における所定範囲の画素に集光させ、
上記第1の垂直成分偏光手段によって透過された上記垂直成分を上記所定範囲を除く残余範囲の画素に集光させる。具体的には、CCDの撮像面に対して所定距離だけ離れた位置に、人間の視差に応じた間隔だけ離間して配置された水平成分偏光フィルタ及び垂直成分偏光フィルタが、2つのレンズと共に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−054991号公報
【特許文献2】特開2004−309868
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特公平6−054991号に開示された技術にあっては、2つの偏光フィルタの出力を重ねて光路を一系統とすることによって、レンズ系を共通化させている。しかしながら、後段で右眼用画像及び左眼用画像を抽出するために更に偏光フィルタを設け、光路自体を再度分けて別々の偏光フィルタに入光させなければならず、レンズ系において光の損失が発生し、また、装置の小型化が困難であるなどの問題がある。特開2004−309868に開示された技術にあっては、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要とし、装置の複雑化、大型化が免れない。また、これらの撮像装置を用いて、立体画像を撮影するだけでなく、通常の2次元画像を撮影することは、装置が複雑になり、現実的ではない。
【0007】
従って、本開示の目的は、簡素な構成、構造を有し、1台の撮像装置によって被写体を立体画像として撮像し得る撮像装置、及び、係る撮像装置を用いた撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の撮像装置は、
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第4領域を通過した第4領域通過光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する。
【0009】
上記の目的を達成するための本開示の撮像方法は、上記の本開示の撮像装置を用いた撮像方法であって、
第3領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
第4領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光及び第2領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか他方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
これらの電気信号を出力する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の撮像装置あるいは撮像方法においては、1組の第1偏光手段及び第2偏光手段並びに1つのレンズ系から撮像装置が構成されているので、単眼で、簡素な構成、構造を有する、小型の撮像装置を提供することができる。また、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要としないので、ズーム、絞り部、フォーカス、輻輳角等にズレや差異が生じることもない。しかも、両眼視差の基線長さが比較的短いので、自然な立体感を得ることができる。更には、容易に2次元画像及び3次元画像を得ることができる。
【0011】
加えて、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であるが故に、ワイヤの長さは撮像素子の第1の方向に沿った長さX1よりも長く、ワイヤグリッド偏光子の消光比を大きくすることができるし、ワイヤグリッド偏光子の製造時、ワイヤグリッド偏光子に損傷が発生し難く、しかも、ワイヤグリッド偏光子による偏光状態の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例1の撮像装置の概念図、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1の撮像装置において、第1偏光手段における第1領域及び第2偏光手段における第3領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図、及び、第1偏光手段における第1領域及び第2領域並びに第2偏光手段における第4領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図であり、図2の(C)及び(D)は、図2の(A)及び(B)に示した光によって撮像素子アレイに結像した画像を模式的に示す図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1の撮像装置におけるワイヤグリッド偏光子を有する撮像素子の模式的な一部断面図、及び、ワイヤグリッド偏光子の配列状態を模式的に示す図である。
【図4】図4は、実施例1の撮像装置におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図5】図5の(A)及び(B)は、それぞれ、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの長さと消光比との関係、及び、ワイヤの長さとエッチングマスク層の倒れ易さとの関係を求めたグラフである。
【図6】図6は、画像に発生した縞模様を示す図である。
【図7】図7は、第2の方向に沿った撮像素子の長さと、ワイヤグリッド偏光子の製造時の損傷発生及び消光比との関係を、角度θをパラメータとしてグラフ化した図である。
【図8】図8の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例2の撮像装置において、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図9】図9は、実施例2の撮像装置におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図10】図10は、実施例3の撮像装置における画像処理手段の概念図である。
【図11】図11の(A)及び(B)は、それぞれ、撮像素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【図12】図12の(A)、(B)及び(C)は、実施例1におけるワイヤグリッド偏光子の製造方法を説明するための、第2平坦化膜等の模式的な一部端面図である。
【図13】図13の(A)、(B)及び(C)は、図12の(C)に引き続き、実施例1におけるワイヤグリッド偏光子の製造方法を説明するための、第2平坦化膜等の模式的な一部端面図である。
【図14】図14は、比較例1Aにおけるワイヤグリッド偏光子の配列状態を模式的に示す図である。
【図15】図は、比較例1Bにおけるワイヤグリッド偏光子の配列状態を模式的に示す図である。
【図16】図16は、ワイヤグリッド偏光子を通過する光等を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の撮像装置及び撮像方法、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の撮像装置及び撮像方法)
3.実施例2(実施例1の変形)、その他
4.実施例3(実施例1〜実施例2における画像処理手段の説明)、その他
【0014】
[本開示の撮像装置及び撮像方法、全般に関する説明]
本開示の撮像装置あるいは本開示の撮像方法での使用に適した撮像装置においては、第2の方向に沿って連続するM個の撮像素子(但し、M=2mであり、mは2乃至5の自然数)に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する形態とすることができる。そして、この場合、
複数の撮像素子ユニットが、第1の方向及び第2の方向に2次元マトリクス状に配列されており、
1つの撮像素子ユニットは、4つの撮像素子がベイヤ配列されて成り、
第3領域は、第2の方向に沿って連続した2個の撮像素子に対応して配されており、
第4領域は、第2の方向に沿って連続した残りの撮像素子に対応して配されている形態とすることができる。そして、更には、第3領域は、第1の方向に沿った全ての撮像素子に対応して配されている形態とすることができ、あるいは又、θ1≦θ≦θ2を満足することが好ましい。但し、第2の方向に沿った撮像素子の長さをX2としたとき、θ1は、
f1(X2)=arcsin(X2/12.4) (A)
から求められた値を切り捨てた整数値であり、θ2は、
f2(X2)=arcsin(X2/10.0) (B)
から求められた値を切り上げた整数値である。更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像装置あるいは本開示の撮像方法での使用に適した撮像装置にあっては、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤには切れ目が存在しないことが好ましい。
【0015】
上述したとおり、1つの撮像素子ユニットは、4つの撮像素子がベイヤ配列されて成ることが好ましいが、これに限定するものではなく、その他、インターライン配列、GストライプRB市松配列、GストライプRB完全市松配列、市松補色配列、ストライプ配列、斜めストライプ配列、原色色差配列、フィールド色差順次配列、フレーム色差順次配列、MOS型配列、改良MOS型配列、フレームインターリーブ配列、フィールドインターリーブ配列を挙げることができる。また、上記のとおり、第3領域は、第1の方向に沿った全ての撮像素子に対応して配されている形態とすることが好ましいが、これに限定するものではなく、第1の方向に沿ってN個の撮像素子(但し、N=2nであり、nは2乃至5の自然数)に対して1つの第3領域を配する形態としてもよい。即ち、第1の方向に沿って第3領域が不連続に設けられており、第3領域の不連続部分を通過した光は非偏光状態である形態とすることもできる。
【0016】
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤは、限定するものではないが、アルミニウム(Al)あるいはアルミニウム合金から成り、
ワイヤの幅W0とワイヤのピッチP0との比[(ワイヤの幅W0)/(ワイヤのピッチP0)]の値は0.33以上であり、
ワイヤの高さは5×10-8m以上であり、
1つの撮像素子当たりワイヤは10本以上である構成とすることが好ましい。
【0017】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像装置あるいは本開示の撮像方法での使用に適した撮像装置(以下、これらを総称して、『本開示の撮像装置等』と呼ぶ場合がある)において、第1偏光手段はレンズ系の絞り部近傍に配置されている形態とすることが好ましい。あるいは又、レンズ系に入射した光が、一旦、平行光とされ、最終的に撮像素子上に集光(結像)されるとき、平行光の状態にあるレンズ系の部分に第1偏光手段を配置する形態とすることが好ましい。これらの形態にあっては、一般に、レンズ系の光学系を新たに設計し直す必要はなく、既存のレンズ系に第1偏光手段を、固定して、あるいは又、脱着自在に取り付けられるように、機械的(物理的)な設計変更を施せばよい。また、レンズ系に第1偏光手段を脱着自在に取り付ける構成とすることもできる。そして、この場合には、例えば、第1偏光手段をレンズの絞り羽根に類似した構成、構造とし、レンズ系内に配置すればよい。あるいは又、レンズ系において、第1偏光手段と開口部とが併設された部材を、レンズ系の光軸と平行な回動軸を中心として回動可能にこの回動軸に取り付け、係る部材を回動軸を中心として回動させることで、レンズ系を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、第1偏光手段を通過する構成、構造を挙げることができる。あるいは又、レンズ系において、第1偏光手段と開口部とが併設された部材を、例えばレンズ系の光軸と直交する方向に滑動自在にレンズ系に取り付け、係る部材を滑動させることで、レンズ系を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、第1偏光手段を通過する構成、構造を挙げることができ、この場合、第1偏光手段と開口部とが併設された部材は、1つの部材から構成されていてもよいし、複数の部材片から構成されていてもよい。
【0018】
あるいは又、レンズ系を、1つの単焦点レンズ、及び、単焦点レンズの前面あるいは前方(物体側)に配置された絞り部から構成し、即ち、前絞り型の単焦点レンズから構成し、第1偏光手段はレンズ系の絞り部近傍に配置されている形態とすることが好ましい。そして、第1偏光手段は、上述したとおり、レンズ系に脱着自在に取り付けられていることが望ましい。また、1つの単焦点レンズは、例えば、撮像レンズ群から成る構成とすることができるし、1つの単焦点レンズは、全体として撮像素子アレイに対して前後に移動可能であり、これによってオートフォーカス機能を発現するものであることが望ましい。更には、第1偏光手段と1つの単焦点レンズとの間の最短距離は0.6mm以下、好ましくは、0.05mm乃至0.6mmであることが望ましい。
【0019】
上記の好ましい形態を含む本開示の撮像装置等にあっては、第1偏光手段において、第1領域と第2領域との間に中央領域が設けられており、中央領域を通過した中央領域通過光の偏光状態は、中央領域入射前と変化しない形態とすることができる。即ち、中央領域は、偏光に関して素通し状態とすることができる。第1偏光手段の中央領域にあっては、光強度が強いが、視差量は少ない。従って、このような形態とすることで、撮像素子アレイが受ける光強度を大きくしながら、十分な長さの両眼視差の基線長さを確保することが可能となる。第1偏光手段の外形形状を円形としたとき、中央領域を円形とし、第1領域及び第2領域を、中央領域を囲む中心角180度の扇形とすることができるし、中央領域を正方形や菱形とし、第1領域及び第2領域を、中央領域を囲む中心角180度の扇形に類似した形状とすることができる。あるいは又、第1領域、中央領域及び第2領域を、第2の方向に沿って延びる帯状の形状とすることができる。
【0020】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像装置等において、第1領域及び第2領域は偏光子から成り、第1領域通過光の電場の向きと第2領域通過光の電場の向きとは直交している構成とすることができる。そして、このような構成を含む本開示の撮像装置等において、第1領域通過光の電場の向きは第2の方向と平行である構成とすることができるし、あるいは又、第1領域通過光の電場の向きは第1の方向と平行である構成とすることができるし、あるいは又、第1領域通過光の電場の向きは第2の方向とθの角度を成す構成とすることができるし、あるいは又、第1領域通過光の電場の向きは第2の方向と任意の角度αを成す構成とすることができる。
【0021】
本開示の撮像装置等において、偏光子の消光比は、3以上、好ましくは10以上であることが望ましい。
【0022】
ここで、『偏光状態』とは、電場及び磁場が特定の方向にのみ振動する光の状態を指し、『非偏光状態』とは、光の偏光に規則性が無く、直交している電場成分の位相関係が無秩序な光の状態を指す。また、『偏光子』とは、自然光(非偏光)や円偏光から直線偏光を作り出すものを指し、第1領域及び第2領域を構成する偏光子、それ自体は、周知の構成、構造の偏光子(偏光板)とすればよい。また、例えば、第1領域通過光及び第2領域通過光の一方の偏光成分を主としてS波(TE波)とし、第1領域通過光及び第2領域通過光の他方の偏光成分を主としてP波(TM波)とすればよい。第1領域通過光及び第2領域通過光の偏光状態は、直線偏光であってもよいし、円偏光(但し、回転方向が相互に逆の関係にある)であってもよい。一般に、振動方向が或る特定の向きだけの横波を偏光した波と呼び、この振動方向を偏光方向あるいは偏光軸と呼ぶ。光の電場の向きは偏光方向と一致する。消光比とは、第1領域通過光の電場の向きが、例えば、第2の方向と平行である構成とする場合、第1領域にあっては、第1領域を通過する光に含まれる、電場の向きが第2の方向である光の成分と電場の向きが第1の方向である光の成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域を通過する光に含まれる、電場の向きが第1の方向である光の成分と電場の向きが第2の方向である光の成分の割合である。また、第1領域通過光の電場の向きが第2の方向とθあるいはαの角度を成す構成とする場合、第1領域にあっては、第1領域を通過する光に含まれる、電場の向きが第2の方向とθあるいはαの角度を成す光の成分と(θ+90度)あるいは(α+90度)の角度を成す光の成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域を通過する光に含まれる、電場の向きが第1の方向と(θ+90度)あるいは(α+90度)の角度を成す光の成分とθあるいはαの角度を成す光の成分の割合である。あるいは又、例えば、第1領域通過光の偏光成分が主としてS波であり、第2領域通過光の偏光成分が主としてP波である場合、第1領域にあっては、第1領域通過光に含まれるS偏光成分とP偏光成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域通過光に含まれるP偏光成分とS偏光成分の割合である。
【0023】
本開示の撮像装置等において、ワイヤグリッド偏光子を有する撮像素子は、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、カラーフィルタ、オンチップレンズ、及び、ワイヤグリッド偏光子が積層されて成り、ワイヤグリッド偏光子が第3領域を構成する形態とすることができる。あるいは又、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、ワイヤグリッド偏光子、カラーフィルタ、及び、オンチップレンズが積層されて成り、ワイヤグリッド偏光子が第3領域を構成する形態とすることができる。あるいは又、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、オンチップレンズ、カラーフィルタ、及び、ワイヤグリッド偏光子が積層されて成り、ワイヤグリッド偏光子が第3領域を構成する形態とすることができる。但し、オンチップレンズ、カラーフィルタ、及び、ワイヤグリッド偏光子の積層順は、適宜、変更することができる。
【0024】
一般に、ワイヤグリッド偏光子は、導体材料から成る1次元若しくは2次元の格子状構造を有する。図16に概念図を示すように、ワイヤの形成ピッチP0が入射する電磁波の波長よりも有意に小さい場合、ワイヤの延在方向に平行な平面で振動する電磁波は、選択的にワイヤにて反射・吸収される。そのため、図16に示すように、ワイヤグリッド偏光子に到達する電磁波には縦偏光成分と横偏光成分が含まれるが、ワイヤグリッド偏光子を通過した電磁波は縦偏光成分が支配的な直線偏光となる。ここで、可視光波長帯に着目して考えた場合、ワイヤの形成ピッチP0がワイヤグリッド偏光子へ入射する電磁波の波長と同程度以下である場合、ワイヤの延在方向に平行な面に偏った偏光成分はワイヤの表面で反射若しくは吸収される。一方、ワイヤの延在方向に垂直な面に偏った偏光成分を有する電磁波がワイヤに入射すると、ワイヤの表面を伝播した電場がワイヤの裏面から入射波長と同じ波長、同じ偏光方位のまま透過する。即ち、ワイヤの延びる方向がワイヤグリッド偏光子における光吸収軸となり、ワイヤの延びる方向と直交する方向がワイヤグリッド偏光子における光透過軸となる。
【0025】
本開示の撮像方法にあっては、第3領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像を得るための電気信号(便宜上、『第1電気信号』と呼ぶ場合がある)を撮像素子において生成し、第4領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光及び第2領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか他方の画像を得るための電気信号(便宜上、『第2電気信号』と呼ぶ場合がある)を撮像素子において生成するが、撮像装置にあっては、第1電気信号及び第2電気信号に基づき得られた、右眼用及び左眼用の画像データ(あるいは、左眼用及び右眼用の画像データ)において輝度調整を行い、右眼用画像の輝度と左眼用画像の輝度を最適化することが望ましい。
【0026】
そして、本開示の撮像方法にあっては、第3領域を通過した第1領域通過光によって得られる電気信号、及び、第4領域を通過した第1領域通過光及び第2領域通過光によって得られる電気信号から生成されたデプスマップ(奥行き情報)、並びに、撮像素子アレイを構成する全撮像素子からの電気信号に基づき、右眼用画像を得るための画像データ(右眼用画像データ)、及び、左眼用画像を得るための画像データ(左眼用画像データ)を得る構成とすることができる。
【0027】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像装置あるいは本開示の撮像方法(以下、これらを総称して、単に、『本開示』と呼ぶ場合がある)において、第1の方向を水平方向、第2の方向を垂直方向とすることができる。あるいは又、第2の方向を水平方向、第1の方向を垂直方向とすることができる。レンズ系は、単焦点レンズとしてもよいし、所謂ズームレンズとしてもよく、レンズやレンズ系の構成、構造は、レンズ系に要求される仕様に基づき決定すればよい。撮像素子として、CCDセンサー、CMOSセンサー、CMD(Charge Modulation Device)型の信号増幅型イメージセンサーを挙げることができる。また、撮像装置として、表面照射型の固体撮像装置あるいは裏面照射型の固体撮像装置を挙げることができる。更には、本開示の撮像装置から、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダ、所謂カメラ付きの携帯電話を構成することができる。
【0028】
本開示の撮像装置等において、第1領域の重心点とは、第1領域の外形形状に基づき求められた重心点を指し、第1偏光手段の重心点とは、第1偏光手段の外形形状(入射瞳径)に基づき求められた重心点を指す。第1偏光手段の外形形状(入射瞳径)を半径rの円形とし、第1領域及び第2領域を、それぞれ、第1偏光手段の半分を占める半月状としたとき、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離は、簡単な計算から、[(4r)/(3π)]で求めることができる。
【実施例1】
【0029】
実施例1は、本開示の撮像装置及び撮像方法に関し、より具体的には、被写体を立体画像として撮像する撮像装置及び撮像方法に関する。実施例1の撮像装置の概念図を図1の(A)に示し、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に図1の(B)及び(C)に示す。また、レンズ系、第1偏光手段における第1領域及び第2偏光手段における第3領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図を図2の(A)に示し、第1偏光手段における第1領域及び第2領域並びに第2偏光手段における第4領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図を図2の(B)に示し、図2の(A)及び(B)に示した光によって撮像素子アレイに結像した画像を模式的に図2の(C)及び(D)に示す。尚、実施例1の説明において、光の進行方向をZ軸方向、第1の方向を水平方向(X軸方向)、第2の方向を垂直方向(Y軸方向)とする。また、第3領域に対応して位置するワイヤグリッド偏光子を有する撮像素子を『撮像素子41A』と呼び、第4領域に対応して位置するワイヤグリッド偏光子を有していない撮像素子を『撮像素子41B』と呼び、撮像素子41A及び撮像素子41Bを総称して撮像素子41と呼ぶ。
【0030】
実施例1の撮像装置10は、
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段30、
(B)第1偏光手段30からの光を集光するレンズ系20、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子41が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段50を有し、レンズ系20によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ40、
を具備している。
【0031】
そして、第1偏光手段30は、第1の方向に沿って配列された第1領域31及び第2領域32を有し、
第1領域31を通過した第1領域通過光L1の偏光状態と、第2領域32を通過した第2領域通過光L2の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段50は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域51及び第4領域52を有し、
第3領域51を通過した第3領域通過光L3は偏光状態にあり、第4領域52を通過した第4領域通過光L4は非偏光状態にある。即ち、第1領域通過光L1及び第2領域通過光L2が混合された状態にある。
【0032】
そして、
第3領域51を構成する第2偏光手段50の部分には、ワイヤグリッド偏光子66が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子66を構成するワイヤ67の延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、即ち、0(度)<θ<90(度)であり、
第1領域通過光L1は第3領域51を通過して撮像素子41Aに到達し、第1領域通過光L1及び第2領域通過光L2は第4領域52を通過して撮像素子41Bに到達し、以て、第1領域31の重心点BC1と第1偏光手段30の重心点BC0との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する。
【0033】
ここで、実施例1あるいは後述する実施例2の撮像装置において、レンズ系20は、例えば、撮影レンズ21、絞り部22及び結像レンズ23を備えており、ズームレンズとして機能する。撮影レンズ21は、被写体からの入射光を集光するためのレンズである。撮影レンズ21は、焦点を合わせるためのフォーカスレンズや、被写体を拡大するためのズームレンズ等を含み、一般に、色収差等を補正するために複数枚のレンズの組合せによって実現されている。絞り部22は、集光された光の量を調整するために絞り込む機能を有するものであり、一般に、複数枚の板状の羽根を組み合わせて構成されている。少なくとも絞り部22の位置において、被写体の1点からの光は平行光となる。結像レンズ23は、第1偏光手段30を通過した光を撮像素子アレイ40上に結像する。撮像素子アレイ40は、カメラ本体部11の内部に配置されている。以上の構成において、入射瞳は、結像レンズ23よりもカメラ本体部側に位置する。撮像装置から、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダが構成される。
【0034】
カメラ本体部11は、撮像素子アレイ40の他に、例えば、画像処理手段12及び画像記憶部13を備えている。そして、撮像素子アレイ40によって変換された電気信号に基づき右眼用画像データ及び左眼用画像データが形成される。撮像素子アレイ40は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサー等によって実現される。画像処理手段12は、撮像素子アレイ40から出力された電気信号を、右眼用画像データ及び左眼用画像データに変換して、画像記憶部13に記録する。
【0035】
第1偏光手段30は、レンズ系20の絞り部22の近傍に配置されている。具体的には、第1偏光手段30は、絞り部22の作動に支障を来さない限り、出来るだけ絞り部22に近い位置に配置されている。尚、第1偏光手段30は、上述したとおり、レンズ系20に入射した光が、一旦、平行光とされ、最終的に撮像素子41上に集光(結像)されるとき、平行光の状態にあるレンズ系20の部分に配置されている。
【0036】
実施例1の撮像装置10において、第1偏光手段30は、上述したとおり、第1領域31及び第2領域32から構成されている。具体的には、第1偏光手段30の外形形状は円形であり、第1領域31及び第2領域32は、それぞれ、第1偏光手段30の半分を占める半月状の外形形状を有する。第1領域31と第2領域32との境界線は、第2の方向に沿って延びている。即ち、第1領域31と第2領域32との境界線はY軸に平行である。2つの偏光子(偏光フィルタ)の組合せから成る第1偏光手段30は、入射した光を2つの異なる偏光状態に分離する。第1偏光手段30は、左右対称の偏光子から構成されており、カメラの正立状態に対する左右2つの位置において、互いに直交する直線方向の偏光、又は、互いに逆方向となる回転方向の偏光を生成する。第1領域31は、被写体を右眼で見るであろう像(右眼が受けるであろう光)に対して偏光を施すフィルタである。また、第1領域31及び第2領域32は、被写体を左眼で見るであろう像(左眼が受けるであろう光)に対して偏光を施すフィルタである。
【0037】
実施例1の撮像装置10において、第1領域通過光L1の電場の向き(白抜きの矢印で示す)と第2領域通過光L2の電場の向き(白抜きの矢印で示す)とは直交している(図1の(B)参照)。ここで、実施例1において、第1領域通過光L1の電場の向きは第2の方向と平行である。具体的には、例えば、第1領域通過光L1は主としてP波(TM波)を偏光成分として有し、第2領域通過光L2は主としてS波(TE波)を偏光成分として有する。更には、第1領域通過光L1の電場の向きと第3領域通過光L3の電場の向きとは0度(又は90度)の角度を成す。また、各偏光子の消光比は、3以上、より具体的には10以上である。尚、図1の(C)及び図8の(B)において、第3領域51に付した黒色の矢印は、ワイヤグリッド偏光子66のワイヤ67の延びる方向を模式的に表している。
【0038】
実施例1の撮像装置10にあっては、第1偏光手段30の外形形状を半径r=10mmの円形とした。そして、第1領域31及び第2領域32を、第1偏光手段30の半分を占める半月状とした。従って、第1領域31の重心点BC1と第2領域32の重心点BC2との間の距離は、[(4r)/(3π)]=4.2mmである。
【0039】
また、第3領域51を通過した第3領域通過光L3は偏光状態にあり、第1領域通過光L1の電場の向きと第3領域通過光L3の電場の向きとは0度又は90度の角度を成す。第3領域51は、ワイヤグリッド偏光子から成り、ワイヤの延びる方向は第1の方向と角度θを成す。従って、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの長さは、第2の方向に沿った撮像素子の長さをX2としたとき、[X2/sin(θ)]である。一方、第4領域52には、ワイヤグリッド偏光子は配されていない。そして、第3領域51と第4領域52とは、上述したとおり、第2の方向に沿って交互に配置されており、第3領域51及び第4領域52は全体として第1の方向に延びている。具体的には、例えば、
X2=1.2μm
θ =45度
である。
【0040】
模式的な一部断面図を図3の(A)に示し、ワイヤグリッド偏光子66の配列状態を模式的に図3の(B)に示すように、ワイヤグリッド偏光子66を有する撮像素子41Aは、例えば、シリコン半導体基板60に設けられた光電変換素子61、並びに、その上に、第1平坦化膜62、カラーフィルタ63、オンチップレンズ64、第2平坦化膜65、及び、ワイヤグリッド偏光子66が積層されて成る。そして、ワイヤグリッド偏光子66が、第3領域51を構成する。尚、参照番号68は配線層を示し、参照番号69は遮光層を示す。図3の(B)においては、撮像素子の境界領域を実線で示した。ワイヤ67の延びる方向がワイヤグリッド偏光子66における光吸収軸となり、ワイヤ67の延びる方向と直交する方向がワイヤグリッド偏光子66における光透過軸となる(図16参照)。ワイヤグリッド偏光子66を備えていない撮像素子41Bの構成、構造は、ワイヤグリッド偏光子66を除き、撮像素子41Aと同じ構成、構造を有する。
【0041】
撮像素子アレイ40は、第1の方向に沿ってN0、第2の方向に沿ってM0個の撮像素子41から成り、第2の方向に沿って連続するM個の撮像素子41(但し、M=2mであり、mは2乃至5の自然数。実施例1にあってはm=4)に対して1つの第3領域51及び1つの第4領域52を配する。そして、複数の撮像素子ユニットが、第1の方向及び第2の方向に2次元マトリクス状に配列されており、1つの撮像素子ユニット(画素)は、図4に概念図を示すように、4つの撮像素子41がベイヤ配列されて成り、1つの撮像素子ユニット(画素)は4つの撮像素子(赤色を受光する1つの赤色撮像素子R、青色を受光する1つの青色撮像素子B、及び、緑色を受光する2つの緑色撮像素子G)から構成されている。そして、第3領域51は、第2の方向に沿って連続した2個の撮像素子41A(1つの撮像素子ユニット)に対応して配されており、第4領域52は、第2の方向に沿って連続した残りの撮像素子41B(14個の撮像素子41Bであり、7の撮像素子ユニット)に対応して配されている。そして、更には、第3領域51は、第1の方向に沿った全ての(N0個の)撮像素子41に対応して配されている。即ち、第1の方向に延びる1行の撮像素子ユニット群(画素群)に対して1つの第3領域51が配置されている。尚、図4あるいは図9において、第3領域51の内部に斜線を付しているが、これらは、ワイヤグリッド偏光子66のワイヤ67を模式的に表している。
【0042】
また、詳細は後に説明するが、角度θは、θ1≦θ≦θ2を満足している。ここで、第2の方向に沿った撮像素子41の長さをX2としたとき、θ1は、
f1(X2)=arcsin(X2/12.4)
から求められた値を切り捨てた整数値であり、θ2は、
f2(X2)=arcsin(X2/10.0)
から求められた値を切り上げた整数値である。
【0043】
そして、実施例1の撮像方法にあっては、第3領域51を通過して撮像素子41Aに到達した第1領域通過光L1によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像(実施例1にあっては、具体的には、右眼用画像。右眼用画像データ)を得るための電気信号(第1電気信号)を撮像素子41Aにおいて生成する。また、第4領域52を通過して撮像素子41Bに到達した第1領域通過光L1及び第2領域通過光L2によって、右眼用及び左眼用の両方の画像を得るための電気信号(第2電気信号)を撮像素子41Bにおいて生成する。そして、これらの電気信号(第1電気信号及び第2電気信号)を、同時に、又は、時系列に交互に、出力する。出力された電気信号(撮像素子アレイ40から出力された右眼用画像データ及び左眼用画像データを得るための電気信号)に対して、画像処理手段12によって画像処理が施され、右眼用画像データ及び左眼用画像データとして画像記憶部13に記録される。尚、右眼用画像データと左眼用画像データとを処理(例えば、混合)すれば、立体画像ではない、通常の2次元(平面)画像を得ることができる。
【0044】
図2の(A)及び(B)に模式的に示すように、四角い形状の物体Aにレンズ系20のピントが合っているとする。また、丸い形状の物体Bが、物体Aよりもレンズ系20に近く位置しているとする。四角い物体Aの像が、ピントが合った状態で撮像素子アレイ40上に結像する。また、丸い物体B像は、ピントが合っていない状態で撮像素子アレイ40上に結像する。そして、図2の(A)に示す例にあっては、撮像素子アレイ40上では、物体Bは、物体Aの右手側に距離(+ΔX)だけ離れた位置に像を結ぶ。一方、図2の(B)に示す例にあっては、撮像素子アレイ40上では、物体Bは、物体Aと同じ位置に像を結ぶ。従って、距離(ΔX)が物体Bの奥行きに関する情報となる。即ち、物体Aよりも撮像装置に近い側に位置する物体のボケ量及びボケ方向は、撮像装置に遠い側に位置する物体のボケ量及びボケ方向と異なるし、物体Aと物体Bとの距離によって物体Bのボケ量は異なる。そして、第1偏光手段30における第1領域31及び第2領域32の形状の重心位置の間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得ることができる。即ち、このようにして得られた右眼用画像(図2の(C)の模式図参照)及び左眼用画像(図2の(D)の模式図参照)から、周知の方法に基づき立体画像を得ることができる。尚、右眼用画像データと左眼用画像データとを処理(例えば、混合)すれば、立体画像ではない、通常の2次元(平面)画像を得ることができる。
【0045】
右眼用画像データ及び左眼用画像データのための電気信号は、上述したとおり、第2の方向に沿って、一種、歯抜け状態となって生成される。そこで、画像処理手段12は、右眼用画像データ及び左眼用画像データ作成のために、電気信号に対してデモザイク処理を施すと共に、例えば、補間処理を行うことにより、最終的に右眼用画像データ及び左眼用画像データを生成、作成する。補間の手法としては、近傍の値の加算平均値を利用する方法等、周知の方法を挙げることができる。尚、この補間処理は、デモザイク処理と並行して行ってもよい。第1の方向においては画質は完全に保持されているので、画像全体の解像度低下等の画質劣化は比較的少ない。また、例えば、左眼用画像データと右眼用画像データからステレオマッチングによりデイスパリティ・マップ(Disparity Map)を作成するといった視差検出技術、及び、デイスパリティ・マップを基に視差を制御する視差制御技術により、視差を強調したり、適切化を図ることもできる。
【0046】
以下、第2平坦化膜65等の模式的な一部端面図である図12の(A)、(B)、(C)、図12の(A)、(B)、(C)を参照して、実施例1のワイヤグリッド偏光子の製造方法を説明する。尚、これらの図においては、第2平坦化膜65より下方に形成された各種構成要素の図示を省略している。これらの一部端面図は、ワイヤの延びる方向に対して垂直な仮想平面で切断したときの図である。形成すべきワイヤのピッチをP0(例えば、150nm)、ワイヤの幅(厚さ)をW0(例えば、50nm)とする。ワイヤとワイヤとの間のスペースは(P0−W0)である。
【0047】
[工程−100]
先ず、第2平坦化膜65の上にアルミニウムから成るワイヤ材料層71を周知の方法で形成する。次いで、第1の方向に延びるストライプ状のレジスト層72を、リソグラフィ技術に基づき、第3領域を形成すべきワイヤ材料層71の部分の上に形成する。併せて、図示しないが、第4領域を形成すべきワイヤ材料層71の部分の上にもレジスト層72を形成する。尚、ストライプ状のレジスト層72の形成ピッチを2×P0とし、ストライプ状のレジスト層72の幅を(P0−W0)とする(図12の(A)参照)。レジスト層72は、例えば、フォトレジスト材料から成る。尚、露光波長248nmのKrF露光が望ましい。
【0048】
[工程−110]
次いで、レジスト層72の側壁における厚さがW0(=50nm)であるエッチングマスク層(ハードマスク材料層)73をレジスト層72の側壁に形成する。具体的には、CVD法に基づき、TEOS等から成るエッチングマスク層73を(全面に)コンフォーマルに形成した後(図12の(B)参照)、レジスト層72の頂面の上、及び、ワイヤ材料層71の一部の上のエッチングマスク層73を、周知のRIE法に基づき除去する(図12の(C)参照)。
【0049】
[工程−120]
次いで、露出したレジスト層72をアッシング技術に基づき除去する(図13の(A)参照)。エッチングマスク層73の形成ピッチP0は150nmであり、第2の方向に沿った幅W0は50nmである。その後、エッチングマスク層73をエッチング用マスクとしてワイヤ材料層71をエッチングした後(図13の(B)参照)、エッチングマスク層73を除去する。こうして、図13の(C)に示す構造を得ることができる。その後、必要に応じて、SiO2あるいはSiON、SiNから成り、例えば厚さ数百nmの保護膜を、全面にコンフォーマルに形成してもよい。
【0050】
このような実施例1のワイヤグリッド偏光子の製造方法にあっては、形成ピッチが2×P0、幅が(P0−W0)であるレジスト層を形成し、次いで、レジスト層の側壁における厚さがW0であるエッチングマスク層をレジスト層の側壁に形成した後、エッチングマスク層をドライエッチング用マスクとして、ワイヤ材料層をエッチングするといった、スペーサ方式とも呼ばれる方式を採用している。それ故、ワイヤの長さを適切に選択すれば、[工程−120]において、第2の方向に沿った形成ピッチがP0、幅がW0のワイヤを得ることができるし、幅50nmのエッチングマスク層(ハードマスク材料層)が倒壊する虞もない。
【0051】
しかしながら、ワイヤの長さが長すぎると、ワイヤ材料層71をエッチングするとき、エッチングマスク層73とエッチングマスク層73との間の隙間、及び、エッチングによってストライプ状にワイヤ材料層71が加工されているときのワイヤ材料層71とワイヤ材料層71との間の隙間に、毛細管現象によって侵入したエッチング液の張力に起因して、エッチングマスク層73が倒れてしまい、ワイヤの形成ができなくなり、ワイヤグリッド偏光子に損傷が発生する場合がある。尚、このような現象を、便宜上、『倒れ現象』と呼ぶ。
【0052】
こうして、ワイヤグリッド偏光子を得ることができるが、消光比と視差の関係を調べた。即ち、左右分離した画像が混ざりあった場合、どこまで混ざれば視差がなくなるか、即ち、立体視できなくなるかを、消光比=∞(0%クロストークであり、完全に、左眼用画像と右眼用画像が分離された状態)から、消光比=1(50%クロストークであり、左眼用画像と右眼用画像とが完全に混ざり合った状態であり、左眼用画像と右眼用画像とは同じ画像である)まで、消光比を変えて合成画像シミュレーションを行った。その結果、消光比=∞の場合から、消光比=10(10%クロストーク)、消光比=3(25%クロストーク)となるに従い、左眼用画像と右眼用画像の相違が少なくなり、消光比=1にあっては左眼用画像と右眼用画像とでは同じとなった。そして、試験の結果から、偏光子の消光比は3以上であることが望ましいことが判った。
【0053】
また、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの長さと、消光比の関係を調べた。その結果を図5の(A)に示すが、ワイヤの長さが長くなるに従い、消光比の値が大きくなることが判る。尚、図5の(A)において、「R」は、赤色光が撮像装置に入射したときの消光比であり、「G」は、緑色光が撮像装置に入射したときの消光比であり、「B」は、青色光が撮像装置に入射したときの消光比である。また、幅50nmのワイヤを、2本、スペース100nmにて平行に配置したときに、ワイヤ間にエッチング液が侵入し、エッチング液の張力によってワイヤが相互に引き寄せられる量をシミュレーションにて求め、
歪み量=(ワイヤが相互に引き寄せられる量/ワイヤ長さ)
として規格化し、図5の(B)に示すように、歪み量とワイヤ長さの関係をグラフ化した。ワイヤの長さが長くなるに従い、歪み量が大きくなることが判る。尚、各種の試験の結果、ワイヤの長さが12.4μmを超えると、倒れ現象が発生し易くなることが判った。但し、この結果は一例であり、ワイヤグリッド偏光子の構造が変わると、倒れ現象が発生し易くなるワイヤの長さも変わる。
【0054】
このような倒れ現象が発生しない、撮像素子の第2の方向に沿った長さX2と、ワイヤの長さとの関係を有限要素法シミュレーションにより求めた。尚、ワイヤの長さを角度θに置き換えている。その結果を、以下の表1に示すが、ワイヤの長さを角度θに置き換えた値を『倒れに関するθ(度)』と表記している。また、撮像素子の第2の方向に沿った長さX2と、左眼用画像と右眼用画像の相違が十分に生じる消光比(具体的には、消光比=10)との関係を、消光比の異なる画像を複数の人が観察し、官能評価調査により十分に立体に見える消光比を決定するといった方法に基づき求めた。尚、ワイヤの長さを角度θに置き換えている。その結果を、以下の表1に示すが、ワイヤの長さを角度θに置き換えた値を『消光比に関するθ(度)』と表記している。また、表1の結果を図7のグラフに纏めた。即ち、図7は、第2の方向に沿った撮像素子の長さと、ワイヤグリッド偏光子の製造時の損傷発生及び消光比との関係を、角度θをパラメータとしてグラフ化したものである。尚、図7において、三角印は、第2の方向に沿った撮像素子の長さと消光比との関係をプロットしたものであり、菱形印は、第2の方向に沿った撮像素子の長さとワイヤグリッド偏光子の製造時の損傷発生との関係をプロットしたものである。
【0055】
[表1]
X2(μm) 消光比に関するθ(度) 倒れに関するθ(度)
1.0 5.7 4.6
2.0 11.5 9.2
3.0 17.4 14.0
4.0 23.5 18.8
5.0 30.0 23.7
6.0 36.8 28.9
7.0 44.4 34.3
8.0 53.1 40.1
9.0 64.1 46.5
【0056】
尚、X2(μm)をパラメータとした関数で『消光比に関するθ(度)』を表すと、前述した式(B)となる。一方、X2(μm)をパラメータとした関数で『倒れに関するθ(度)』を表すと、前述した式(A)となる。
【0057】
比較のために、ワイヤグリッド偏光子の配列状態を図14に模式的に示すように、ワイヤが第1の方向と平行に延び、しかも、ワイヤの長さを、1つの撮像素子の第1の方向に沿った長さと略等しくしたもの(比較例1A)、ワイヤグリッド偏光子の配列状態を図15に模式的に示すように、ワイヤが第1の方向と平行に延び、しかも、ワイヤの長さを、1つの撮像素子ユニット(2つの撮像素子)の第1の方向に沿った長さと略等しくしたもの(比較例1B)、図示しないが、ワイヤが第1の方向と平行に延び、しかも、ワイヤの長さを、第1の方向に沿った全ての撮像素子ユニットの長さと等しくしたもの(比較例1C)を作製した。得られた撮像素子アレイの評価を纏めると以下の表2のとおりである。
【0058】
尚、表2中、『倒れ現象の有/無』とは、倒れ現象の発生の有り/無しの評価結果である。また、『消光比良/不良』とは、消光比の値の大小によって左眼用画像と右眼用画像の相違が十分に生じるか否かの評価であり、良好とは、左眼用画像と右眼用画像の相違が十分に生じることを意味する。更には、『縞模様発生有/無』とは、得られた画像に縞模様が発生するか否かの評価であり、複数の連続する撮像素子に対してワイヤの切れ目が1つしか存在しない場合、得られた画像に縞模様が発生する(図6参照)。
【0059】
[表2]
倒れ現象の有/無 消光比良/不良 縞模様発生有/無
実施例1 無し 良好 無し
比較例1A 無し 不良 無し
比較例1B 無し 良好 有り
比較例1C 有り 良好 無し
【0060】
実施例1においては、1組の第1偏光手段30及び第2偏光手段50並びに1つのレンズ系20から撮像装置10が構成されているので、例えば左右に分離された2つの異なる画像を同時に生成させることができ、単眼で、簡素な構成、構造を有し、構成部品の少ない、小型の撮像装置を提供することができる。また、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要としないので、ズーム、絞り部、フォーカス、輻輳角等にズレや差異が生じることもない。しかも、両眼視差の基線長さが比較的短いので、自然な立体感を得ることができる。更には、第1偏光手段30を脱着させ得る構造とすれば、あるいは又、電気信号の処理によって、容易に、2次元画像及び3次元画像を得ることができる。
【0061】
しかも、実施例1にあっては、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であるが故に、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの長さを適度に長くすることができる結果、消光比の値を大きくすることができ、左眼用画像と右眼用画像の高い分離能を達成することが可能となるし、ワイヤグリッド偏光子の製造時、ワイヤグリッド偏光子に損傷が発生し難い。しかも、ワイヤグリッド偏光子による偏光状態の均一化を図ることができ、得られた画像に縞模様が発生することもない。
【実施例2】
【0062】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例1にあっては、第1の方向を水平方向(X軸方向)、第2の方向を垂直方向(Y軸方向)とした。一方、実施例2においては、第1の方向を垂直方向(Y軸方向)、第2の方向を水平方向(X軸方向)とする。第1偏光手段30及び第2偏光手段50における偏光の状態を図8の(A)及び(B)に模式的に示し、ベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を図9に示す。以上の点を除き、実施例2の撮像装置の構成、構造は、実施例1の撮像装置の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0063】
実施例3においては、実施例1あるいは実施例2における画像処理手段12について説明する。図10に概念図を示すように、画像処理手段12は、例えば、偏光画素分離部101、非偏光画素補間処理部102、デモザイク処理部103、視差検出用左眼画像生成部104、視差検出用右眼画像生成部105、視差検出部106、視差画像生成部107、及び、画像出力部108から構成されている。
【0064】
撮像素子41(41A,41B)から出力された電気信号に対して、偏光画素分離部101において、撮像素子41Aからの電気信号(『偏光電気信号』と呼ぶ)と、撮像素子41Bからの電気信号(『非偏光電気信号』と呼ぶ)の分離処理が行われる。
【0065】
そして、偏光画素分離部101において分離された非偏光電気信号は、非偏光画素補間処理部102に送出され、非偏光画素補間処理部102において、非偏光電気信号から欠落した画素、即ち、撮像素子41Aに対応する画素に対する補間処理が行われる。具体的には、例えば、撮像素子41Aからの電気信号に対して、第2の方向に沿って撮像素子41Aに隣接する撮像素子41Bからの電気信号に基づき補間処理を行う。補間処理として、色毎に線形補間処理を行う方法や、色信号から生成した輝度の勾配に応じて補間方向を選択する方向選択型の補間処理を挙げることができる。非偏光画素補間処理部102からの電気信号に基づく画像は、撮像素子41(撮像素子41A,41B)の全てにおける非偏光電気信号に基づく画像に相当する。即ち、この画像は、2次元画像に相当する。そして、非偏光画素補間処理部102からデモザイク処理部103に送出された電気信号に対して、デモザイク処理部103ではデモザイク処理及びその他のカメラ信号処理が行われ、通常の2次元画像が得られる。デモザイク処理部103からの電気信号は、視差画像生成部107に送出される。
【0066】
一方、偏光画素分離部101において分離された偏光電気信号は、視差検出用右眼画像生成部(偏光画素ゲイン調整部)105に送出される。視差検出用右眼画像生成部105では、偏光電気信号の輝度と、非偏光電気信号の輝度とが調整される。即ち、撮像素子41Aに対応する画素の輝度と、撮像素子41Bに対応する画素の輝度とが、ほぼ同一の平均値及び分布(標準偏差)となるように輝度調整される。こうして、視差検出用右眼画像生成部105では、右眼画像用の電気信号を得ることができる。
【0067】
そして、視差検出用右眼画像生成部105からの電気信号は、視差検出用左眼画像生成部104に送出される。視差検出用左眼画像生成部104には、非偏光画素補間処理部102からの電気信号も送出される。視差検出用左眼画像生成部104においては、非偏光画素補間処理部102からの電気信号と、視差検出用右眼画像生成部105からの電気信号の差分に基づき、左眼画像用の電気信号を得ることができる。
【0068】
そして、視差検出用右眼画像生成部105及び視差検出用左眼画像生成部104からの電気信号は、視差検出部106に送出される。視差検出部106においては、右眼画像用の電気信号及び左眼画像用の電気信号に対して、例えばブロックマッチング処理等を行い、視差情報としての被写体距離を検出する。即ち、例えばブロックマッチング処理によって、左眼用画像と右眼用画像との間のずれを検出し、ずれ量に応じた被写体距離を算出する。そして、視差検出部106においてはデプスマップを生成して、視差画像生成部107に出力する。デプスマップは、画像の構成画素各々についての被写体距離情報を持つデータである。視差画像生成部107は、デモザイク処理部103からの出力、及び、デプスマップを用いて、右眼用の画像及び左眼用の画像を得るための電気信号を生成する。そして、得られた電気信号は、画像出力部108を介して出力され、画像記憶部13に記録される。また、画像表示部(図示せず)にも供給され、画像データに基づいて、例えば、液晶表示装置等の表示装置に表示される。
【0069】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した撮像装置、撮像素子、画像処理手段の構成、構造は例示であり、適宜、変更することができる。例えば、図11の(A)に模式的な一部断面図を図示するように、撮像素子41を、シリコン半導体基板60に設けられた光電変換素子61、並びに、その上に、第1平坦化膜62、ワイヤグリッド偏光子66、第2平坦化膜65、カラーフィルタ63、及び、オンチップレンズ64が積層されて成る構成とすることもできる。あるいは又、図11の(B)に模式的な一部断面図を図示するように、撮像素子41を、シリコン半導体基板60に設けられた光電変換素子61、並びに、その上に、第1平坦化膜62、オンチップレンズ64、第2平坦化膜65、カラーフィルタ63、及び、ワイヤグリッド偏光子66が積層されて成る構成とすることもできる。また、撮像素子を、図示したような表面照射型としてもよいし、図示しないが、裏面照射型としてもよい。
【0070】
右眼用画像データ及び左眼用画像データに基づき立体画像を表示するが、係る表示方式として、例えば、2台のプロジェクタに円偏光又は直線偏光フィルタを取り付けて左右眼用の画像をそれぞれ表示し、表示に対応した円偏光又は直線偏光眼鏡で画像を観察する方式、レンチキュラーレンズ方式、パララックスバリア方式を挙げることができる。尚、円偏光又は直線偏光眼鏡を使用することなく画像を観察すると、通常の2次元(平面)画像を観察することができる。また、以上に説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラムあるいはプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標)等を用いることができる。
【0071】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[1]《撮像装置》
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第4領域を通過した第4領域通過光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置。
[2]第2の方向に沿って連続するM個の撮像素子(但し、M=2mであり、mは2乃至5の自然数)に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する[1]に記載の撮像装置。
[3]複数の撮像素子ユニットが、第1の方向及び第2の方向に2次元マトリクス状に配列されており、
1つの撮像素子ユニットは、4つの撮像素子がベイヤ配列されて成り、
第3領域は、第2の方向に沿って連続した2個の撮像素子に対応して配されており、
第4領域は、第2の方向に沿って連続した残りの撮像素子に対応して配されている[2]に記載の撮像装置。
[4]第3領域は、第1の方向に沿った全ての撮像素子に対応して配されている[3]に記載の撮像装置。
[5]θ1≦θ≦θ2を満足する[3]に記載の撮像装置。
但し、第2の方向に沿った撮像素子の長さをX2としたとき、θ1は、
f1(X2)=arcsin(X2/12.4)
から求められた値を切り捨てた整数値であり、θ2は、
f2(X2)=arcsin(X2/10.0)
から求められた値を切り上げた整数値である。
[6]ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤには切れ目が存在しない[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[7]第1偏光手段はレンズ系の絞り部近傍に配置されている[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[8]第1領域及び第2領域は偏光子から成り、
第1領域通過光の電場の向きと第2領域通過光の電場の向きとは直交している[1]乃至[7]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[9]第1領域通過光の電場の向きは第2の方向と平行である[8]に記載の撮像装置。
[10]第1領域通過光の電場の向きと第3領域通過光の電場の向きとは0度又は90度の角度を成す[1]乃至[9]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[11]撮像素子は、カラーフィルタ、オンチップレンズ、及び、ワイヤグリッド偏光子が積層されて成る[1]乃至[10]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[12]撮像素子は、ワイヤグリッド偏光子、カラーフィルタ、及び、オンチップレンズが積層されて成る[1]乃至[10]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[13]第1偏光手段はレンズ系に脱着自在に取り付けられている[1]乃至[12]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[14]《撮像方法》
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第4領域を通過した第4領域通過光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置を用いた撮像方法であって、
第3領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
第4領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光及び第2領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか他方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
これらの電気信号を出力する撮像方法。
[15]第3領域を通過した第1領域通過光によって得られる電気信号、及び、第4領域を通過した第1領域通過光及び第2領域通過光によって得られる電気信号から生成されたデプスマップ、並びに、撮像素子アレイを構成する全撮像素子からの電気信号に基づき、右眼用画像を得るための画像データ、及び、左眼用画像を得るための画像データを得る[14]に記載の撮像方法。
【0072】
尚、上記[1]に記載の本開示の撮像装置、及び、上記[14]に記載の本開示の撮像方法は、以下のようにも表現することができる。即ち、
[1’]《撮像装置》
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って離間して配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第2偏光手段において第3領域以外の領域を通過した光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は、第2偏光手段において第3領域以外の領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置。
[14’]《撮像方法》
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って離間して配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第2偏光手段において第3領域以外の領域を通過した光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は、第2偏光手段において第3領域以外の領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置を用いた撮像方法であって、
第3領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
第2偏光手段において第3領域以外の領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光及び第2領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか他方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
これらの電気信号を出力する撮像方法。
【符号の説明】
【0073】
10・・・撮像装置、11・・・カメラ本体部、12・・・画像処理手段、13・・・画像記憶部、20・・・レンズ系、21・・・撮影レンズ、22・・・絞り部、23・・・結像レンズ、30・・・第1偏光手段、31・・・第1領域、32・・・第2領域、40・・・撮像素子アレイ、41,41A,41B・・・撮像素子、50・・・第2偏光手段(偏光手段)、51・・・第3領域、52・・・第4領域、60・・・シリコン半導体基板、61・・・光電変換素子、62・・・第1平坦化膜、63・・・カラーフィルタ、64・・・オンチップレンズ、65・・・第2平坦化膜、66・・・ワイヤグリッド偏光子、67・・・ワイヤ、68・・・配線層、69・・・遮光層、71・・・ワイヤ材料層、72・・・レジスト層、73・・・エッチングマスク層(ハードマスク材料層)、101・・・偏光画素分離部、102・・・非偏光画素補間処理部、103・・・デモザイク処理部、104・・・視差検出用左眼画像生成部、105・・・視差検出用右眼画像生成部、106・・・視差検出部、107・・・視差画像生成部、108・・・画像出力部
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置及び撮像方法に関し、より具体的には、被写体を立体画像として撮像する撮像装置及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共通の被写体を左右に配置した2台のビデオカメラによって同時に撮像し、得られた2種類の画像(右眼用画像及び左眼用画像)を同時に出力することによって立体画像を表示するシステムが提案されている。しかしながら、このような2台のビデオカメラを用いた場合、装置が大型化してしまい、実用的ではない。また、2台のビデオカメラの間の基線長(ベースライン)、即ち、立体カメラとしての両眼間距離は、レンズのズーム比に拘わらず、人間の両眼の距離に相当する65mm程度とされることが多い。そして、このような場合、ズームアップされた画像においては両眼視差が大きくなってしまい、観察者の視覚系に日常と異なる情報処理を強制することになり、視覚疲労の原因となる。また、移動する被写体を2台のビデオカメラで撮像することは、2台のビデオカメラの精密な同期制御を必要とし、非常に困難であるし、輻輳角の正確な制御もまた、非常に困難である。
【0003】
立体撮影を行うためのレンズ系の調整を容易にするために、互いに直交関係となるように偏光させる偏光フィルタを組み合わせることによって、光学系を共通化させる立体撮影装置が提案されている(例えば、特公平6−054991号公報参照)。
【0004】
また、2つのレンズと1つの撮像手段から構成された撮像装置で立体撮影を行う方式が提案されている(例えば、特開2004−309868参照)。この特許公開公報に開示された撮像装置は、
所定数の走査線の整数倍に相当する画素が撮像面に設けられた撮像手段と、
被写体からの第1の映像光における水平成分だけを透過する第1の水平成分偏光手段と、
上記第1の水平成分偏光手段とは所定距離だけ離隔された位置に配置され、上記被写体からの第2の映像光における垂直成分だけを透過する第1の垂直成分偏光手段、
とを具え、
上記第1の水平成分偏光手段により透過した上記水平成分を上記撮像面における所定範囲の画素に集光させ、
上記第1の垂直成分偏光手段によって透過された上記垂直成分を上記所定範囲を除く残余範囲の画素に集光させる。具体的には、CCDの撮像面に対して所定距離だけ離れた位置に、人間の視差に応じた間隔だけ離間して配置された水平成分偏光フィルタ及び垂直成分偏光フィルタが、2つのレンズと共に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−054991号公報
【特許文献2】特開2004−309868
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特公平6−054991号に開示された技術にあっては、2つの偏光フィルタの出力を重ねて光路を一系統とすることによって、レンズ系を共通化させている。しかしながら、後段で右眼用画像及び左眼用画像を抽出するために更に偏光フィルタを設け、光路自体を再度分けて別々の偏光フィルタに入光させなければならず、レンズ系において光の損失が発生し、また、装置の小型化が困難であるなどの問題がある。特開2004−309868に開示された技術にあっては、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要とし、装置の複雑化、大型化が免れない。また、これらの撮像装置を用いて、立体画像を撮影するだけでなく、通常の2次元画像を撮影することは、装置が複雑になり、現実的ではない。
【0007】
従って、本開示の目的は、簡素な構成、構造を有し、1台の撮像装置によって被写体を立体画像として撮像し得る撮像装置、及び、係る撮像装置を用いた撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の撮像装置は、
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第4領域を通過した第4領域通過光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する。
【0009】
上記の目的を達成するための本開示の撮像方法は、上記の本開示の撮像装置を用いた撮像方法であって、
第3領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
第4領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光及び第2領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか他方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
これらの電気信号を出力する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の撮像装置あるいは撮像方法においては、1組の第1偏光手段及び第2偏光手段並びに1つのレンズ系から撮像装置が構成されているので、単眼で、簡素な構成、構造を有する、小型の撮像装置を提供することができる。また、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要としないので、ズーム、絞り部、フォーカス、輻輳角等にズレや差異が生じることもない。しかも、両眼視差の基線長さが比較的短いので、自然な立体感を得ることができる。更には、容易に2次元画像及び3次元画像を得ることができる。
【0011】
加えて、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であるが故に、ワイヤの長さは撮像素子の第1の方向に沿った長さX1よりも長く、ワイヤグリッド偏光子の消光比を大きくすることができるし、ワイヤグリッド偏光子の製造時、ワイヤグリッド偏光子に損傷が発生し難く、しかも、ワイヤグリッド偏光子による偏光状態の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例1の撮像装置の概念図、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1の撮像装置において、第1偏光手段における第1領域及び第2偏光手段における第3領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図、及び、第1偏光手段における第1領域及び第2領域並びに第2偏光手段における第4領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図であり、図2の(C)及び(D)は、図2の(A)及び(B)に示した光によって撮像素子アレイに結像した画像を模式的に示す図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1の撮像装置におけるワイヤグリッド偏光子を有する撮像素子の模式的な一部断面図、及び、ワイヤグリッド偏光子の配列状態を模式的に示す図である。
【図4】図4は、実施例1の撮像装置におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図5】図5の(A)及び(B)は、それぞれ、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの長さと消光比との関係、及び、ワイヤの長さとエッチングマスク層の倒れ易さとの関係を求めたグラフである。
【図6】図6は、画像に発生した縞模様を示す図である。
【図7】図7は、第2の方向に沿った撮像素子の長さと、ワイヤグリッド偏光子の製造時の損傷発生及び消光比との関係を、角度θをパラメータとしてグラフ化した図である。
【図8】図8の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例2の撮像装置において、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図9】図9は、実施例2の撮像装置におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図10】図10は、実施例3の撮像装置における画像処理手段の概念図である。
【図11】図11の(A)及び(B)は、それぞれ、撮像素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【図12】図12の(A)、(B)及び(C)は、実施例1におけるワイヤグリッド偏光子の製造方法を説明するための、第2平坦化膜等の模式的な一部端面図である。
【図13】図13の(A)、(B)及び(C)は、図12の(C)に引き続き、実施例1におけるワイヤグリッド偏光子の製造方法を説明するための、第2平坦化膜等の模式的な一部端面図である。
【図14】図14は、比較例1Aにおけるワイヤグリッド偏光子の配列状態を模式的に示す図である。
【図15】図は、比較例1Bにおけるワイヤグリッド偏光子の配列状態を模式的に示す図である。
【図16】図16は、ワイヤグリッド偏光子を通過する光等を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の撮像装置及び撮像方法、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の撮像装置及び撮像方法)
3.実施例2(実施例1の変形)、その他
4.実施例3(実施例1〜実施例2における画像処理手段の説明)、その他
【0014】
[本開示の撮像装置及び撮像方法、全般に関する説明]
本開示の撮像装置あるいは本開示の撮像方法での使用に適した撮像装置においては、第2の方向に沿って連続するM個の撮像素子(但し、M=2mであり、mは2乃至5の自然数)に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する形態とすることができる。そして、この場合、
複数の撮像素子ユニットが、第1の方向及び第2の方向に2次元マトリクス状に配列されており、
1つの撮像素子ユニットは、4つの撮像素子がベイヤ配列されて成り、
第3領域は、第2の方向に沿って連続した2個の撮像素子に対応して配されており、
第4領域は、第2の方向に沿って連続した残りの撮像素子に対応して配されている形態とすることができる。そして、更には、第3領域は、第1の方向に沿った全ての撮像素子に対応して配されている形態とすることができ、あるいは又、θ1≦θ≦θ2を満足することが好ましい。但し、第2の方向に沿った撮像素子の長さをX2としたとき、θ1は、
f1(X2)=arcsin(X2/12.4) (A)
から求められた値を切り捨てた整数値であり、θ2は、
f2(X2)=arcsin(X2/10.0) (B)
から求められた値を切り上げた整数値である。更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像装置あるいは本開示の撮像方法での使用に適した撮像装置にあっては、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤには切れ目が存在しないことが好ましい。
【0015】
上述したとおり、1つの撮像素子ユニットは、4つの撮像素子がベイヤ配列されて成ることが好ましいが、これに限定するものではなく、その他、インターライン配列、GストライプRB市松配列、GストライプRB完全市松配列、市松補色配列、ストライプ配列、斜めストライプ配列、原色色差配列、フィールド色差順次配列、フレーム色差順次配列、MOS型配列、改良MOS型配列、フレームインターリーブ配列、フィールドインターリーブ配列を挙げることができる。また、上記のとおり、第3領域は、第1の方向に沿った全ての撮像素子に対応して配されている形態とすることが好ましいが、これに限定するものではなく、第1の方向に沿ってN個の撮像素子(但し、N=2nであり、nは2乃至5の自然数)に対して1つの第3領域を配する形態としてもよい。即ち、第1の方向に沿って第3領域が不連続に設けられており、第3領域の不連続部分を通過した光は非偏光状態である形態とすることもできる。
【0016】
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤは、限定するものではないが、アルミニウム(Al)あるいはアルミニウム合金から成り、
ワイヤの幅W0とワイヤのピッチP0との比[(ワイヤの幅W0)/(ワイヤのピッチP0)]の値は0.33以上であり、
ワイヤの高さは5×10-8m以上であり、
1つの撮像素子当たりワイヤは10本以上である構成とすることが好ましい。
【0017】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像装置あるいは本開示の撮像方法での使用に適した撮像装置(以下、これらを総称して、『本開示の撮像装置等』と呼ぶ場合がある)において、第1偏光手段はレンズ系の絞り部近傍に配置されている形態とすることが好ましい。あるいは又、レンズ系に入射した光が、一旦、平行光とされ、最終的に撮像素子上に集光(結像)されるとき、平行光の状態にあるレンズ系の部分に第1偏光手段を配置する形態とすることが好ましい。これらの形態にあっては、一般に、レンズ系の光学系を新たに設計し直す必要はなく、既存のレンズ系に第1偏光手段を、固定して、あるいは又、脱着自在に取り付けられるように、機械的(物理的)な設計変更を施せばよい。また、レンズ系に第1偏光手段を脱着自在に取り付ける構成とすることもできる。そして、この場合には、例えば、第1偏光手段をレンズの絞り羽根に類似した構成、構造とし、レンズ系内に配置すればよい。あるいは又、レンズ系において、第1偏光手段と開口部とが併設された部材を、レンズ系の光軸と平行な回動軸を中心として回動可能にこの回動軸に取り付け、係る部材を回動軸を中心として回動させることで、レンズ系を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、第1偏光手段を通過する構成、構造を挙げることができる。あるいは又、レンズ系において、第1偏光手段と開口部とが併設された部材を、例えばレンズ系の光軸と直交する方向に滑動自在にレンズ系に取り付け、係る部材を滑動させることで、レンズ系を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、第1偏光手段を通過する構成、構造を挙げることができ、この場合、第1偏光手段と開口部とが併設された部材は、1つの部材から構成されていてもよいし、複数の部材片から構成されていてもよい。
【0018】
あるいは又、レンズ系を、1つの単焦点レンズ、及び、単焦点レンズの前面あるいは前方(物体側)に配置された絞り部から構成し、即ち、前絞り型の単焦点レンズから構成し、第1偏光手段はレンズ系の絞り部近傍に配置されている形態とすることが好ましい。そして、第1偏光手段は、上述したとおり、レンズ系に脱着自在に取り付けられていることが望ましい。また、1つの単焦点レンズは、例えば、撮像レンズ群から成る構成とすることができるし、1つの単焦点レンズは、全体として撮像素子アレイに対して前後に移動可能であり、これによってオートフォーカス機能を発現するものであることが望ましい。更には、第1偏光手段と1つの単焦点レンズとの間の最短距離は0.6mm以下、好ましくは、0.05mm乃至0.6mmであることが望ましい。
【0019】
上記の好ましい形態を含む本開示の撮像装置等にあっては、第1偏光手段において、第1領域と第2領域との間に中央領域が設けられており、中央領域を通過した中央領域通過光の偏光状態は、中央領域入射前と変化しない形態とすることができる。即ち、中央領域は、偏光に関して素通し状態とすることができる。第1偏光手段の中央領域にあっては、光強度が強いが、視差量は少ない。従って、このような形態とすることで、撮像素子アレイが受ける光強度を大きくしながら、十分な長さの両眼視差の基線長さを確保することが可能となる。第1偏光手段の外形形状を円形としたとき、中央領域を円形とし、第1領域及び第2領域を、中央領域を囲む中心角180度の扇形とすることができるし、中央領域を正方形や菱形とし、第1領域及び第2領域を、中央領域を囲む中心角180度の扇形に類似した形状とすることができる。あるいは又、第1領域、中央領域及び第2領域を、第2の方向に沿って延びる帯状の形状とすることができる。
【0020】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像装置等において、第1領域及び第2領域は偏光子から成り、第1領域通過光の電場の向きと第2領域通過光の電場の向きとは直交している構成とすることができる。そして、このような構成を含む本開示の撮像装置等において、第1領域通過光の電場の向きは第2の方向と平行である構成とすることができるし、あるいは又、第1領域通過光の電場の向きは第1の方向と平行である構成とすることができるし、あるいは又、第1領域通過光の電場の向きは第2の方向とθの角度を成す構成とすることができるし、あるいは又、第1領域通過光の電場の向きは第2の方向と任意の角度αを成す構成とすることができる。
【0021】
本開示の撮像装置等において、偏光子の消光比は、3以上、好ましくは10以上であることが望ましい。
【0022】
ここで、『偏光状態』とは、電場及び磁場が特定の方向にのみ振動する光の状態を指し、『非偏光状態』とは、光の偏光に規則性が無く、直交している電場成分の位相関係が無秩序な光の状態を指す。また、『偏光子』とは、自然光(非偏光)や円偏光から直線偏光を作り出すものを指し、第1領域及び第2領域を構成する偏光子、それ自体は、周知の構成、構造の偏光子(偏光板)とすればよい。また、例えば、第1領域通過光及び第2領域通過光の一方の偏光成分を主としてS波(TE波)とし、第1領域通過光及び第2領域通過光の他方の偏光成分を主としてP波(TM波)とすればよい。第1領域通過光及び第2領域通過光の偏光状態は、直線偏光であってもよいし、円偏光(但し、回転方向が相互に逆の関係にある)であってもよい。一般に、振動方向が或る特定の向きだけの横波を偏光した波と呼び、この振動方向を偏光方向あるいは偏光軸と呼ぶ。光の電場の向きは偏光方向と一致する。消光比とは、第1領域通過光の電場の向きが、例えば、第2の方向と平行である構成とする場合、第1領域にあっては、第1領域を通過する光に含まれる、電場の向きが第2の方向である光の成分と電場の向きが第1の方向である光の成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域を通過する光に含まれる、電場の向きが第1の方向である光の成分と電場の向きが第2の方向である光の成分の割合である。また、第1領域通過光の電場の向きが第2の方向とθあるいはαの角度を成す構成とする場合、第1領域にあっては、第1領域を通過する光に含まれる、電場の向きが第2の方向とθあるいはαの角度を成す光の成分と(θ+90度)あるいは(α+90度)の角度を成す光の成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域を通過する光に含まれる、電場の向きが第1の方向と(θ+90度)あるいは(α+90度)の角度を成す光の成分とθあるいはαの角度を成す光の成分の割合である。あるいは又、例えば、第1領域通過光の偏光成分が主としてS波であり、第2領域通過光の偏光成分が主としてP波である場合、第1領域にあっては、第1領域通過光に含まれるS偏光成分とP偏光成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域通過光に含まれるP偏光成分とS偏光成分の割合である。
【0023】
本開示の撮像装置等において、ワイヤグリッド偏光子を有する撮像素子は、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、カラーフィルタ、オンチップレンズ、及び、ワイヤグリッド偏光子が積層されて成り、ワイヤグリッド偏光子が第3領域を構成する形態とすることができる。あるいは又、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、ワイヤグリッド偏光子、カラーフィルタ、及び、オンチップレンズが積層されて成り、ワイヤグリッド偏光子が第3領域を構成する形態とすることができる。あるいは又、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、オンチップレンズ、カラーフィルタ、及び、ワイヤグリッド偏光子が積層されて成り、ワイヤグリッド偏光子が第3領域を構成する形態とすることができる。但し、オンチップレンズ、カラーフィルタ、及び、ワイヤグリッド偏光子の積層順は、適宜、変更することができる。
【0024】
一般に、ワイヤグリッド偏光子は、導体材料から成る1次元若しくは2次元の格子状構造を有する。図16に概念図を示すように、ワイヤの形成ピッチP0が入射する電磁波の波長よりも有意に小さい場合、ワイヤの延在方向に平行な平面で振動する電磁波は、選択的にワイヤにて反射・吸収される。そのため、図16に示すように、ワイヤグリッド偏光子に到達する電磁波には縦偏光成分と横偏光成分が含まれるが、ワイヤグリッド偏光子を通過した電磁波は縦偏光成分が支配的な直線偏光となる。ここで、可視光波長帯に着目して考えた場合、ワイヤの形成ピッチP0がワイヤグリッド偏光子へ入射する電磁波の波長と同程度以下である場合、ワイヤの延在方向に平行な面に偏った偏光成分はワイヤの表面で反射若しくは吸収される。一方、ワイヤの延在方向に垂直な面に偏った偏光成分を有する電磁波がワイヤに入射すると、ワイヤの表面を伝播した電場がワイヤの裏面から入射波長と同じ波長、同じ偏光方位のまま透過する。即ち、ワイヤの延びる方向がワイヤグリッド偏光子における光吸収軸となり、ワイヤの延びる方向と直交する方向がワイヤグリッド偏光子における光透過軸となる。
【0025】
本開示の撮像方法にあっては、第3領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像を得るための電気信号(便宜上、『第1電気信号』と呼ぶ場合がある)を撮像素子において生成し、第4領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光及び第2領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか他方の画像を得るための電気信号(便宜上、『第2電気信号』と呼ぶ場合がある)を撮像素子において生成するが、撮像装置にあっては、第1電気信号及び第2電気信号に基づき得られた、右眼用及び左眼用の画像データ(あるいは、左眼用及び右眼用の画像データ)において輝度調整を行い、右眼用画像の輝度と左眼用画像の輝度を最適化することが望ましい。
【0026】
そして、本開示の撮像方法にあっては、第3領域を通過した第1領域通過光によって得られる電気信号、及び、第4領域を通過した第1領域通過光及び第2領域通過光によって得られる電気信号から生成されたデプスマップ(奥行き情報)、並びに、撮像素子アレイを構成する全撮像素子からの電気信号に基づき、右眼用画像を得るための画像データ(右眼用画像データ)、及び、左眼用画像を得るための画像データ(左眼用画像データ)を得る構成とすることができる。
【0027】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像装置あるいは本開示の撮像方法(以下、これらを総称して、単に、『本開示』と呼ぶ場合がある)において、第1の方向を水平方向、第2の方向を垂直方向とすることができる。あるいは又、第2の方向を水平方向、第1の方向を垂直方向とすることができる。レンズ系は、単焦点レンズとしてもよいし、所謂ズームレンズとしてもよく、レンズやレンズ系の構成、構造は、レンズ系に要求される仕様に基づき決定すればよい。撮像素子として、CCDセンサー、CMOSセンサー、CMD(Charge Modulation Device)型の信号増幅型イメージセンサーを挙げることができる。また、撮像装置として、表面照射型の固体撮像装置あるいは裏面照射型の固体撮像装置を挙げることができる。更には、本開示の撮像装置から、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダ、所謂カメラ付きの携帯電話を構成することができる。
【0028】
本開示の撮像装置等において、第1領域の重心点とは、第1領域の外形形状に基づき求められた重心点を指し、第1偏光手段の重心点とは、第1偏光手段の外形形状(入射瞳径)に基づき求められた重心点を指す。第1偏光手段の外形形状(入射瞳径)を半径rの円形とし、第1領域及び第2領域を、それぞれ、第1偏光手段の半分を占める半月状としたとき、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離は、簡単な計算から、[(4r)/(3π)]で求めることができる。
【実施例1】
【0029】
実施例1は、本開示の撮像装置及び撮像方法に関し、より具体的には、被写体を立体画像として撮像する撮像装置及び撮像方法に関する。実施例1の撮像装置の概念図を図1の(A)に示し、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に図1の(B)及び(C)に示す。また、レンズ系、第1偏光手段における第1領域及び第2偏光手段における第3領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図を図2の(A)に示し、第1偏光手段における第1領域及び第2領域並びに第2偏光手段における第4領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図を図2の(B)に示し、図2の(A)及び(B)に示した光によって撮像素子アレイに結像した画像を模式的に図2の(C)及び(D)に示す。尚、実施例1の説明において、光の進行方向をZ軸方向、第1の方向を水平方向(X軸方向)、第2の方向を垂直方向(Y軸方向)とする。また、第3領域に対応して位置するワイヤグリッド偏光子を有する撮像素子を『撮像素子41A』と呼び、第4領域に対応して位置するワイヤグリッド偏光子を有していない撮像素子を『撮像素子41B』と呼び、撮像素子41A及び撮像素子41Bを総称して撮像素子41と呼ぶ。
【0030】
実施例1の撮像装置10は、
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段30、
(B)第1偏光手段30からの光を集光するレンズ系20、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子41が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段50を有し、レンズ系20によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ40、
を具備している。
【0031】
そして、第1偏光手段30は、第1の方向に沿って配列された第1領域31及び第2領域32を有し、
第1領域31を通過した第1領域通過光L1の偏光状態と、第2領域32を通過した第2領域通過光L2の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段50は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域51及び第4領域52を有し、
第3領域51を通過した第3領域通過光L3は偏光状態にあり、第4領域52を通過した第4領域通過光L4は非偏光状態にある。即ち、第1領域通過光L1及び第2領域通過光L2が混合された状態にある。
【0032】
そして、
第3領域51を構成する第2偏光手段50の部分には、ワイヤグリッド偏光子66が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子66を構成するワイヤ67の延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、即ち、0(度)<θ<90(度)であり、
第1領域通過光L1は第3領域51を通過して撮像素子41Aに到達し、第1領域通過光L1及び第2領域通過光L2は第4領域52を通過して撮像素子41Bに到達し、以て、第1領域31の重心点BC1と第1偏光手段30の重心点BC0との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する。
【0033】
ここで、実施例1あるいは後述する実施例2の撮像装置において、レンズ系20は、例えば、撮影レンズ21、絞り部22及び結像レンズ23を備えており、ズームレンズとして機能する。撮影レンズ21は、被写体からの入射光を集光するためのレンズである。撮影レンズ21は、焦点を合わせるためのフォーカスレンズや、被写体を拡大するためのズームレンズ等を含み、一般に、色収差等を補正するために複数枚のレンズの組合せによって実現されている。絞り部22は、集光された光の量を調整するために絞り込む機能を有するものであり、一般に、複数枚の板状の羽根を組み合わせて構成されている。少なくとも絞り部22の位置において、被写体の1点からの光は平行光となる。結像レンズ23は、第1偏光手段30を通過した光を撮像素子アレイ40上に結像する。撮像素子アレイ40は、カメラ本体部11の内部に配置されている。以上の構成において、入射瞳は、結像レンズ23よりもカメラ本体部側に位置する。撮像装置から、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダが構成される。
【0034】
カメラ本体部11は、撮像素子アレイ40の他に、例えば、画像処理手段12及び画像記憶部13を備えている。そして、撮像素子アレイ40によって変換された電気信号に基づき右眼用画像データ及び左眼用画像データが形成される。撮像素子アレイ40は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサー等によって実現される。画像処理手段12は、撮像素子アレイ40から出力された電気信号を、右眼用画像データ及び左眼用画像データに変換して、画像記憶部13に記録する。
【0035】
第1偏光手段30は、レンズ系20の絞り部22の近傍に配置されている。具体的には、第1偏光手段30は、絞り部22の作動に支障を来さない限り、出来るだけ絞り部22に近い位置に配置されている。尚、第1偏光手段30は、上述したとおり、レンズ系20に入射した光が、一旦、平行光とされ、最終的に撮像素子41上に集光(結像)されるとき、平行光の状態にあるレンズ系20の部分に配置されている。
【0036】
実施例1の撮像装置10において、第1偏光手段30は、上述したとおり、第1領域31及び第2領域32から構成されている。具体的には、第1偏光手段30の外形形状は円形であり、第1領域31及び第2領域32は、それぞれ、第1偏光手段30の半分を占める半月状の外形形状を有する。第1領域31と第2領域32との境界線は、第2の方向に沿って延びている。即ち、第1領域31と第2領域32との境界線はY軸に平行である。2つの偏光子(偏光フィルタ)の組合せから成る第1偏光手段30は、入射した光を2つの異なる偏光状態に分離する。第1偏光手段30は、左右対称の偏光子から構成されており、カメラの正立状態に対する左右2つの位置において、互いに直交する直線方向の偏光、又は、互いに逆方向となる回転方向の偏光を生成する。第1領域31は、被写体を右眼で見るであろう像(右眼が受けるであろう光)に対して偏光を施すフィルタである。また、第1領域31及び第2領域32は、被写体を左眼で見るであろう像(左眼が受けるであろう光)に対して偏光を施すフィルタである。
【0037】
実施例1の撮像装置10において、第1領域通過光L1の電場の向き(白抜きの矢印で示す)と第2領域通過光L2の電場の向き(白抜きの矢印で示す)とは直交している(図1の(B)参照)。ここで、実施例1において、第1領域通過光L1の電場の向きは第2の方向と平行である。具体的には、例えば、第1領域通過光L1は主としてP波(TM波)を偏光成分として有し、第2領域通過光L2は主としてS波(TE波)を偏光成分として有する。更には、第1領域通過光L1の電場の向きと第3領域通過光L3の電場の向きとは0度(又は90度)の角度を成す。また、各偏光子の消光比は、3以上、より具体的には10以上である。尚、図1の(C)及び図8の(B)において、第3領域51に付した黒色の矢印は、ワイヤグリッド偏光子66のワイヤ67の延びる方向を模式的に表している。
【0038】
実施例1の撮像装置10にあっては、第1偏光手段30の外形形状を半径r=10mmの円形とした。そして、第1領域31及び第2領域32を、第1偏光手段30の半分を占める半月状とした。従って、第1領域31の重心点BC1と第2領域32の重心点BC2との間の距離は、[(4r)/(3π)]=4.2mmである。
【0039】
また、第3領域51を通過した第3領域通過光L3は偏光状態にあり、第1領域通過光L1の電場の向きと第3領域通過光L3の電場の向きとは0度又は90度の角度を成す。第3領域51は、ワイヤグリッド偏光子から成り、ワイヤの延びる方向は第1の方向と角度θを成す。従って、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの長さは、第2の方向に沿った撮像素子の長さをX2としたとき、[X2/sin(θ)]である。一方、第4領域52には、ワイヤグリッド偏光子は配されていない。そして、第3領域51と第4領域52とは、上述したとおり、第2の方向に沿って交互に配置されており、第3領域51及び第4領域52は全体として第1の方向に延びている。具体的には、例えば、
X2=1.2μm
θ =45度
である。
【0040】
模式的な一部断面図を図3の(A)に示し、ワイヤグリッド偏光子66の配列状態を模式的に図3の(B)に示すように、ワイヤグリッド偏光子66を有する撮像素子41Aは、例えば、シリコン半導体基板60に設けられた光電変換素子61、並びに、その上に、第1平坦化膜62、カラーフィルタ63、オンチップレンズ64、第2平坦化膜65、及び、ワイヤグリッド偏光子66が積層されて成る。そして、ワイヤグリッド偏光子66が、第3領域51を構成する。尚、参照番号68は配線層を示し、参照番号69は遮光層を示す。図3の(B)においては、撮像素子の境界領域を実線で示した。ワイヤ67の延びる方向がワイヤグリッド偏光子66における光吸収軸となり、ワイヤ67の延びる方向と直交する方向がワイヤグリッド偏光子66における光透過軸となる(図16参照)。ワイヤグリッド偏光子66を備えていない撮像素子41Bの構成、構造は、ワイヤグリッド偏光子66を除き、撮像素子41Aと同じ構成、構造を有する。
【0041】
撮像素子アレイ40は、第1の方向に沿ってN0、第2の方向に沿ってM0個の撮像素子41から成り、第2の方向に沿って連続するM個の撮像素子41(但し、M=2mであり、mは2乃至5の自然数。実施例1にあってはm=4)に対して1つの第3領域51及び1つの第4領域52を配する。そして、複数の撮像素子ユニットが、第1の方向及び第2の方向に2次元マトリクス状に配列されており、1つの撮像素子ユニット(画素)は、図4に概念図を示すように、4つの撮像素子41がベイヤ配列されて成り、1つの撮像素子ユニット(画素)は4つの撮像素子(赤色を受光する1つの赤色撮像素子R、青色を受光する1つの青色撮像素子B、及び、緑色を受光する2つの緑色撮像素子G)から構成されている。そして、第3領域51は、第2の方向に沿って連続した2個の撮像素子41A(1つの撮像素子ユニット)に対応して配されており、第4領域52は、第2の方向に沿って連続した残りの撮像素子41B(14個の撮像素子41Bであり、7の撮像素子ユニット)に対応して配されている。そして、更には、第3領域51は、第1の方向に沿った全ての(N0個の)撮像素子41に対応して配されている。即ち、第1の方向に延びる1行の撮像素子ユニット群(画素群)に対して1つの第3領域51が配置されている。尚、図4あるいは図9において、第3領域51の内部に斜線を付しているが、これらは、ワイヤグリッド偏光子66のワイヤ67を模式的に表している。
【0042】
また、詳細は後に説明するが、角度θは、θ1≦θ≦θ2を満足している。ここで、第2の方向に沿った撮像素子41の長さをX2としたとき、θ1は、
f1(X2)=arcsin(X2/12.4)
から求められた値を切り捨てた整数値であり、θ2は、
f2(X2)=arcsin(X2/10.0)
から求められた値を切り上げた整数値である。
【0043】
そして、実施例1の撮像方法にあっては、第3領域51を通過して撮像素子41Aに到達した第1領域通過光L1によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像(実施例1にあっては、具体的には、右眼用画像。右眼用画像データ)を得るための電気信号(第1電気信号)を撮像素子41Aにおいて生成する。また、第4領域52を通過して撮像素子41Bに到達した第1領域通過光L1及び第2領域通過光L2によって、右眼用及び左眼用の両方の画像を得るための電気信号(第2電気信号)を撮像素子41Bにおいて生成する。そして、これらの電気信号(第1電気信号及び第2電気信号)を、同時に、又は、時系列に交互に、出力する。出力された電気信号(撮像素子アレイ40から出力された右眼用画像データ及び左眼用画像データを得るための電気信号)に対して、画像処理手段12によって画像処理が施され、右眼用画像データ及び左眼用画像データとして画像記憶部13に記録される。尚、右眼用画像データと左眼用画像データとを処理(例えば、混合)すれば、立体画像ではない、通常の2次元(平面)画像を得ることができる。
【0044】
図2の(A)及び(B)に模式的に示すように、四角い形状の物体Aにレンズ系20のピントが合っているとする。また、丸い形状の物体Bが、物体Aよりもレンズ系20に近く位置しているとする。四角い物体Aの像が、ピントが合った状態で撮像素子アレイ40上に結像する。また、丸い物体B像は、ピントが合っていない状態で撮像素子アレイ40上に結像する。そして、図2の(A)に示す例にあっては、撮像素子アレイ40上では、物体Bは、物体Aの右手側に距離(+ΔX)だけ離れた位置に像を結ぶ。一方、図2の(B)に示す例にあっては、撮像素子アレイ40上では、物体Bは、物体Aと同じ位置に像を結ぶ。従って、距離(ΔX)が物体Bの奥行きに関する情報となる。即ち、物体Aよりも撮像装置に近い側に位置する物体のボケ量及びボケ方向は、撮像装置に遠い側に位置する物体のボケ量及びボケ方向と異なるし、物体Aと物体Bとの距離によって物体Bのボケ量は異なる。そして、第1偏光手段30における第1領域31及び第2領域32の形状の重心位置の間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得ることができる。即ち、このようにして得られた右眼用画像(図2の(C)の模式図参照)及び左眼用画像(図2の(D)の模式図参照)から、周知の方法に基づき立体画像を得ることができる。尚、右眼用画像データと左眼用画像データとを処理(例えば、混合)すれば、立体画像ではない、通常の2次元(平面)画像を得ることができる。
【0045】
右眼用画像データ及び左眼用画像データのための電気信号は、上述したとおり、第2の方向に沿って、一種、歯抜け状態となって生成される。そこで、画像処理手段12は、右眼用画像データ及び左眼用画像データ作成のために、電気信号に対してデモザイク処理を施すと共に、例えば、補間処理を行うことにより、最終的に右眼用画像データ及び左眼用画像データを生成、作成する。補間の手法としては、近傍の値の加算平均値を利用する方法等、周知の方法を挙げることができる。尚、この補間処理は、デモザイク処理と並行して行ってもよい。第1の方向においては画質は完全に保持されているので、画像全体の解像度低下等の画質劣化は比較的少ない。また、例えば、左眼用画像データと右眼用画像データからステレオマッチングによりデイスパリティ・マップ(Disparity Map)を作成するといった視差検出技術、及び、デイスパリティ・マップを基に視差を制御する視差制御技術により、視差を強調したり、適切化を図ることもできる。
【0046】
以下、第2平坦化膜65等の模式的な一部端面図である図12の(A)、(B)、(C)、図12の(A)、(B)、(C)を参照して、実施例1のワイヤグリッド偏光子の製造方法を説明する。尚、これらの図においては、第2平坦化膜65より下方に形成された各種構成要素の図示を省略している。これらの一部端面図は、ワイヤの延びる方向に対して垂直な仮想平面で切断したときの図である。形成すべきワイヤのピッチをP0(例えば、150nm)、ワイヤの幅(厚さ)をW0(例えば、50nm)とする。ワイヤとワイヤとの間のスペースは(P0−W0)である。
【0047】
[工程−100]
先ず、第2平坦化膜65の上にアルミニウムから成るワイヤ材料層71を周知の方法で形成する。次いで、第1の方向に延びるストライプ状のレジスト層72を、リソグラフィ技術に基づき、第3領域を形成すべきワイヤ材料層71の部分の上に形成する。併せて、図示しないが、第4領域を形成すべきワイヤ材料層71の部分の上にもレジスト層72を形成する。尚、ストライプ状のレジスト層72の形成ピッチを2×P0とし、ストライプ状のレジスト層72の幅を(P0−W0)とする(図12の(A)参照)。レジスト層72は、例えば、フォトレジスト材料から成る。尚、露光波長248nmのKrF露光が望ましい。
【0048】
[工程−110]
次いで、レジスト層72の側壁における厚さがW0(=50nm)であるエッチングマスク層(ハードマスク材料層)73をレジスト層72の側壁に形成する。具体的には、CVD法に基づき、TEOS等から成るエッチングマスク層73を(全面に)コンフォーマルに形成した後(図12の(B)参照)、レジスト層72の頂面の上、及び、ワイヤ材料層71の一部の上のエッチングマスク層73を、周知のRIE法に基づき除去する(図12の(C)参照)。
【0049】
[工程−120]
次いで、露出したレジスト層72をアッシング技術に基づき除去する(図13の(A)参照)。エッチングマスク層73の形成ピッチP0は150nmであり、第2の方向に沿った幅W0は50nmである。その後、エッチングマスク層73をエッチング用マスクとしてワイヤ材料層71をエッチングした後(図13の(B)参照)、エッチングマスク層73を除去する。こうして、図13の(C)に示す構造を得ることができる。その後、必要に応じて、SiO2あるいはSiON、SiNから成り、例えば厚さ数百nmの保護膜を、全面にコンフォーマルに形成してもよい。
【0050】
このような実施例1のワイヤグリッド偏光子の製造方法にあっては、形成ピッチが2×P0、幅が(P0−W0)であるレジスト層を形成し、次いで、レジスト層の側壁における厚さがW0であるエッチングマスク層をレジスト層の側壁に形成した後、エッチングマスク層をドライエッチング用マスクとして、ワイヤ材料層をエッチングするといった、スペーサ方式とも呼ばれる方式を採用している。それ故、ワイヤの長さを適切に選択すれば、[工程−120]において、第2の方向に沿った形成ピッチがP0、幅がW0のワイヤを得ることができるし、幅50nmのエッチングマスク層(ハードマスク材料層)が倒壊する虞もない。
【0051】
しかしながら、ワイヤの長さが長すぎると、ワイヤ材料層71をエッチングするとき、エッチングマスク層73とエッチングマスク層73との間の隙間、及び、エッチングによってストライプ状にワイヤ材料層71が加工されているときのワイヤ材料層71とワイヤ材料層71との間の隙間に、毛細管現象によって侵入したエッチング液の張力に起因して、エッチングマスク層73が倒れてしまい、ワイヤの形成ができなくなり、ワイヤグリッド偏光子に損傷が発生する場合がある。尚、このような現象を、便宜上、『倒れ現象』と呼ぶ。
【0052】
こうして、ワイヤグリッド偏光子を得ることができるが、消光比と視差の関係を調べた。即ち、左右分離した画像が混ざりあった場合、どこまで混ざれば視差がなくなるか、即ち、立体視できなくなるかを、消光比=∞(0%クロストークであり、完全に、左眼用画像と右眼用画像が分離された状態)から、消光比=1(50%クロストークであり、左眼用画像と右眼用画像とが完全に混ざり合った状態であり、左眼用画像と右眼用画像とは同じ画像である)まで、消光比を変えて合成画像シミュレーションを行った。その結果、消光比=∞の場合から、消光比=10(10%クロストーク)、消光比=3(25%クロストーク)となるに従い、左眼用画像と右眼用画像の相違が少なくなり、消光比=1にあっては左眼用画像と右眼用画像とでは同じとなった。そして、試験の結果から、偏光子の消光比は3以上であることが望ましいことが判った。
【0053】
また、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの長さと、消光比の関係を調べた。その結果を図5の(A)に示すが、ワイヤの長さが長くなるに従い、消光比の値が大きくなることが判る。尚、図5の(A)において、「R」は、赤色光が撮像装置に入射したときの消光比であり、「G」は、緑色光が撮像装置に入射したときの消光比であり、「B」は、青色光が撮像装置に入射したときの消光比である。また、幅50nmのワイヤを、2本、スペース100nmにて平行に配置したときに、ワイヤ間にエッチング液が侵入し、エッチング液の張力によってワイヤが相互に引き寄せられる量をシミュレーションにて求め、
歪み量=(ワイヤが相互に引き寄せられる量/ワイヤ長さ)
として規格化し、図5の(B)に示すように、歪み量とワイヤ長さの関係をグラフ化した。ワイヤの長さが長くなるに従い、歪み量が大きくなることが判る。尚、各種の試験の結果、ワイヤの長さが12.4μmを超えると、倒れ現象が発生し易くなることが判った。但し、この結果は一例であり、ワイヤグリッド偏光子の構造が変わると、倒れ現象が発生し易くなるワイヤの長さも変わる。
【0054】
このような倒れ現象が発生しない、撮像素子の第2の方向に沿った長さX2と、ワイヤの長さとの関係を有限要素法シミュレーションにより求めた。尚、ワイヤの長さを角度θに置き換えている。その結果を、以下の表1に示すが、ワイヤの長さを角度θに置き換えた値を『倒れに関するθ(度)』と表記している。また、撮像素子の第2の方向に沿った長さX2と、左眼用画像と右眼用画像の相違が十分に生じる消光比(具体的には、消光比=10)との関係を、消光比の異なる画像を複数の人が観察し、官能評価調査により十分に立体に見える消光比を決定するといった方法に基づき求めた。尚、ワイヤの長さを角度θに置き換えている。その結果を、以下の表1に示すが、ワイヤの長さを角度θに置き換えた値を『消光比に関するθ(度)』と表記している。また、表1の結果を図7のグラフに纏めた。即ち、図7は、第2の方向に沿った撮像素子の長さと、ワイヤグリッド偏光子の製造時の損傷発生及び消光比との関係を、角度θをパラメータとしてグラフ化したものである。尚、図7において、三角印は、第2の方向に沿った撮像素子の長さと消光比との関係をプロットしたものであり、菱形印は、第2の方向に沿った撮像素子の長さとワイヤグリッド偏光子の製造時の損傷発生との関係をプロットしたものである。
【0055】
[表1]
X2(μm) 消光比に関するθ(度) 倒れに関するθ(度)
1.0 5.7 4.6
2.0 11.5 9.2
3.0 17.4 14.0
4.0 23.5 18.8
5.0 30.0 23.7
6.0 36.8 28.9
7.0 44.4 34.3
8.0 53.1 40.1
9.0 64.1 46.5
【0056】
尚、X2(μm)をパラメータとした関数で『消光比に関するθ(度)』を表すと、前述した式(B)となる。一方、X2(μm)をパラメータとした関数で『倒れに関するθ(度)』を表すと、前述した式(A)となる。
【0057】
比較のために、ワイヤグリッド偏光子の配列状態を図14に模式的に示すように、ワイヤが第1の方向と平行に延び、しかも、ワイヤの長さを、1つの撮像素子の第1の方向に沿った長さと略等しくしたもの(比較例1A)、ワイヤグリッド偏光子の配列状態を図15に模式的に示すように、ワイヤが第1の方向と平行に延び、しかも、ワイヤの長さを、1つの撮像素子ユニット(2つの撮像素子)の第1の方向に沿った長さと略等しくしたもの(比較例1B)、図示しないが、ワイヤが第1の方向と平行に延び、しかも、ワイヤの長さを、第1の方向に沿った全ての撮像素子ユニットの長さと等しくしたもの(比較例1C)を作製した。得られた撮像素子アレイの評価を纏めると以下の表2のとおりである。
【0058】
尚、表2中、『倒れ現象の有/無』とは、倒れ現象の発生の有り/無しの評価結果である。また、『消光比良/不良』とは、消光比の値の大小によって左眼用画像と右眼用画像の相違が十分に生じるか否かの評価であり、良好とは、左眼用画像と右眼用画像の相違が十分に生じることを意味する。更には、『縞模様発生有/無』とは、得られた画像に縞模様が発生するか否かの評価であり、複数の連続する撮像素子に対してワイヤの切れ目が1つしか存在しない場合、得られた画像に縞模様が発生する(図6参照)。
【0059】
[表2]
倒れ現象の有/無 消光比良/不良 縞模様発生有/無
実施例1 無し 良好 無し
比較例1A 無し 不良 無し
比較例1B 無し 良好 有り
比較例1C 有り 良好 無し
【0060】
実施例1においては、1組の第1偏光手段30及び第2偏光手段50並びに1つのレンズ系20から撮像装置10が構成されているので、例えば左右に分離された2つの異なる画像を同時に生成させることができ、単眼で、簡素な構成、構造を有し、構成部品の少ない、小型の撮像装置を提供することができる。また、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要としないので、ズーム、絞り部、フォーカス、輻輳角等にズレや差異が生じることもない。しかも、両眼視差の基線長さが比較的短いので、自然な立体感を得ることができる。更には、第1偏光手段30を脱着させ得る構造とすれば、あるいは又、電気信号の処理によって、容易に、2次元画像及び3次元画像を得ることができる。
【0061】
しかも、実施例1にあっては、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であるが故に、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの長さを適度に長くすることができる結果、消光比の値を大きくすることができ、左眼用画像と右眼用画像の高い分離能を達成することが可能となるし、ワイヤグリッド偏光子の製造時、ワイヤグリッド偏光子に損傷が発生し難い。しかも、ワイヤグリッド偏光子による偏光状態の均一化を図ることができ、得られた画像に縞模様が発生することもない。
【実施例2】
【0062】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例1にあっては、第1の方向を水平方向(X軸方向)、第2の方向を垂直方向(Y軸方向)とした。一方、実施例2においては、第1の方向を垂直方向(Y軸方向)、第2の方向を水平方向(X軸方向)とする。第1偏光手段30及び第2偏光手段50における偏光の状態を図8の(A)及び(B)に模式的に示し、ベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を図9に示す。以上の点を除き、実施例2の撮像装置の構成、構造は、実施例1の撮像装置の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0063】
実施例3においては、実施例1あるいは実施例2における画像処理手段12について説明する。図10に概念図を示すように、画像処理手段12は、例えば、偏光画素分離部101、非偏光画素補間処理部102、デモザイク処理部103、視差検出用左眼画像生成部104、視差検出用右眼画像生成部105、視差検出部106、視差画像生成部107、及び、画像出力部108から構成されている。
【0064】
撮像素子41(41A,41B)から出力された電気信号に対して、偏光画素分離部101において、撮像素子41Aからの電気信号(『偏光電気信号』と呼ぶ)と、撮像素子41Bからの電気信号(『非偏光電気信号』と呼ぶ)の分離処理が行われる。
【0065】
そして、偏光画素分離部101において分離された非偏光電気信号は、非偏光画素補間処理部102に送出され、非偏光画素補間処理部102において、非偏光電気信号から欠落した画素、即ち、撮像素子41Aに対応する画素に対する補間処理が行われる。具体的には、例えば、撮像素子41Aからの電気信号に対して、第2の方向に沿って撮像素子41Aに隣接する撮像素子41Bからの電気信号に基づき補間処理を行う。補間処理として、色毎に線形補間処理を行う方法や、色信号から生成した輝度の勾配に応じて補間方向を選択する方向選択型の補間処理を挙げることができる。非偏光画素補間処理部102からの電気信号に基づく画像は、撮像素子41(撮像素子41A,41B)の全てにおける非偏光電気信号に基づく画像に相当する。即ち、この画像は、2次元画像に相当する。そして、非偏光画素補間処理部102からデモザイク処理部103に送出された電気信号に対して、デモザイク処理部103ではデモザイク処理及びその他のカメラ信号処理が行われ、通常の2次元画像が得られる。デモザイク処理部103からの電気信号は、視差画像生成部107に送出される。
【0066】
一方、偏光画素分離部101において分離された偏光電気信号は、視差検出用右眼画像生成部(偏光画素ゲイン調整部)105に送出される。視差検出用右眼画像生成部105では、偏光電気信号の輝度と、非偏光電気信号の輝度とが調整される。即ち、撮像素子41Aに対応する画素の輝度と、撮像素子41Bに対応する画素の輝度とが、ほぼ同一の平均値及び分布(標準偏差)となるように輝度調整される。こうして、視差検出用右眼画像生成部105では、右眼画像用の電気信号を得ることができる。
【0067】
そして、視差検出用右眼画像生成部105からの電気信号は、視差検出用左眼画像生成部104に送出される。視差検出用左眼画像生成部104には、非偏光画素補間処理部102からの電気信号も送出される。視差検出用左眼画像生成部104においては、非偏光画素補間処理部102からの電気信号と、視差検出用右眼画像生成部105からの電気信号の差分に基づき、左眼画像用の電気信号を得ることができる。
【0068】
そして、視差検出用右眼画像生成部105及び視差検出用左眼画像生成部104からの電気信号は、視差検出部106に送出される。視差検出部106においては、右眼画像用の電気信号及び左眼画像用の電気信号に対して、例えばブロックマッチング処理等を行い、視差情報としての被写体距離を検出する。即ち、例えばブロックマッチング処理によって、左眼用画像と右眼用画像との間のずれを検出し、ずれ量に応じた被写体距離を算出する。そして、視差検出部106においてはデプスマップを生成して、視差画像生成部107に出力する。デプスマップは、画像の構成画素各々についての被写体距離情報を持つデータである。視差画像生成部107は、デモザイク処理部103からの出力、及び、デプスマップを用いて、右眼用の画像及び左眼用の画像を得るための電気信号を生成する。そして、得られた電気信号は、画像出力部108を介して出力され、画像記憶部13に記録される。また、画像表示部(図示せず)にも供給され、画像データに基づいて、例えば、液晶表示装置等の表示装置に表示される。
【0069】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した撮像装置、撮像素子、画像処理手段の構成、構造は例示であり、適宜、変更することができる。例えば、図11の(A)に模式的な一部断面図を図示するように、撮像素子41を、シリコン半導体基板60に設けられた光電変換素子61、並びに、その上に、第1平坦化膜62、ワイヤグリッド偏光子66、第2平坦化膜65、カラーフィルタ63、及び、オンチップレンズ64が積層されて成る構成とすることもできる。あるいは又、図11の(B)に模式的な一部断面図を図示するように、撮像素子41を、シリコン半導体基板60に設けられた光電変換素子61、並びに、その上に、第1平坦化膜62、オンチップレンズ64、第2平坦化膜65、カラーフィルタ63、及び、ワイヤグリッド偏光子66が積層されて成る構成とすることもできる。また、撮像素子を、図示したような表面照射型としてもよいし、図示しないが、裏面照射型としてもよい。
【0070】
右眼用画像データ及び左眼用画像データに基づき立体画像を表示するが、係る表示方式として、例えば、2台のプロジェクタに円偏光又は直線偏光フィルタを取り付けて左右眼用の画像をそれぞれ表示し、表示に対応した円偏光又は直線偏光眼鏡で画像を観察する方式、レンチキュラーレンズ方式、パララックスバリア方式を挙げることができる。尚、円偏光又は直線偏光眼鏡を使用することなく画像を観察すると、通常の2次元(平面)画像を観察することができる。また、以上に説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラムあるいはプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標)等を用いることができる。
【0071】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[1]《撮像装置》
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第4領域を通過した第4領域通過光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置。
[2]第2の方向に沿って連続するM個の撮像素子(但し、M=2mであり、mは2乃至5の自然数)に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する[1]に記載の撮像装置。
[3]複数の撮像素子ユニットが、第1の方向及び第2の方向に2次元マトリクス状に配列されており、
1つの撮像素子ユニットは、4つの撮像素子がベイヤ配列されて成り、
第3領域は、第2の方向に沿って連続した2個の撮像素子に対応して配されており、
第4領域は、第2の方向に沿って連続した残りの撮像素子に対応して配されている[2]に記載の撮像装置。
[4]第3領域は、第1の方向に沿った全ての撮像素子に対応して配されている[3]に記載の撮像装置。
[5]θ1≦θ≦θ2を満足する[3]に記載の撮像装置。
但し、第2の方向に沿った撮像素子の長さをX2としたとき、θ1は、
f1(X2)=arcsin(X2/12.4)
から求められた値を切り捨てた整数値であり、θ2は、
f2(X2)=arcsin(X2/10.0)
から求められた値を切り上げた整数値である。
[6]ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤには切れ目が存在しない[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[7]第1偏光手段はレンズ系の絞り部近傍に配置されている[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[8]第1領域及び第2領域は偏光子から成り、
第1領域通過光の電場の向きと第2領域通過光の電場の向きとは直交している[1]乃至[7]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[9]第1領域通過光の電場の向きは第2の方向と平行である[8]に記載の撮像装置。
[10]第1領域通過光の電場の向きと第3領域通過光の電場の向きとは0度又は90度の角度を成す[1]乃至[9]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[11]撮像素子は、カラーフィルタ、オンチップレンズ、及び、ワイヤグリッド偏光子が積層されて成る[1]乃至[10]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[12]撮像素子は、ワイヤグリッド偏光子、カラーフィルタ、及び、オンチップレンズが積層されて成る[1]乃至[10]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[13]第1偏光手段はレンズ系に脱着自在に取り付けられている[1]乃至[12]のいずれか1項に記載の撮像装置。
[14]《撮像方法》
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第4領域を通過した第4領域通過光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置を用いた撮像方法であって、
第3領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
第4領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光及び第2領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか他方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
これらの電気信号を出力する撮像方法。
[15]第3領域を通過した第1領域通過光によって得られる電気信号、及び、第4領域を通過した第1領域通過光及び第2領域通過光によって得られる電気信号から生成されたデプスマップ、並びに、撮像素子アレイを構成する全撮像素子からの電気信号に基づき、右眼用画像を得るための画像データ、及び、左眼用画像を得るための画像データを得る[14]に記載の撮像方法。
【0072】
尚、上記[1]に記載の本開示の撮像装置、及び、上記[14]に記載の本開示の撮像方法は、以下のようにも表現することができる。即ち、
[1’]《撮像装置》
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って離間して配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第2偏光手段において第3領域以外の領域を通過した光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は、第2偏光手段において第3領域以外の領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置。
[14’]《撮像方法》
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って離間して配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第2偏光手段において第3領域以外の領域を通過した光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は、第2偏光手段において第3領域以外の領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置を用いた撮像方法であって、
第3領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
第2偏光手段において第3領域以外の領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光及び第2領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか他方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
これらの電気信号を出力する撮像方法。
【符号の説明】
【0073】
10・・・撮像装置、11・・・カメラ本体部、12・・・画像処理手段、13・・・画像記憶部、20・・・レンズ系、21・・・撮影レンズ、22・・・絞り部、23・・・結像レンズ、30・・・第1偏光手段、31・・・第1領域、32・・・第2領域、40・・・撮像素子アレイ、41,41A,41B・・・撮像素子、50・・・第2偏光手段(偏光手段)、51・・・第3領域、52・・・第4領域、60・・・シリコン半導体基板、61・・・光電変換素子、62・・・第1平坦化膜、63・・・カラーフィルタ、64・・・オンチップレンズ、65・・・第2平坦化膜、66・・・ワイヤグリッド偏光子、67・・・ワイヤ、68・・・配線層、69・・・遮光層、71・・・ワイヤ材料層、72・・・レジスト層、73・・・エッチングマスク層(ハードマスク材料層)、101・・・偏光画素分離部、102・・・非偏光画素補間処理部、103・・・デモザイク処理部、104・・・視差検出用左眼画像生成部、105・・・視差検出用右眼画像生成部、106・・・視差検出部、107・・・視差画像生成部、108・・・画像出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第4領域を通過した第4領域通過光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置。
【請求項2】
第2の方向に沿って連続するM個の撮像素子(但し、M=2mであり、mは2乃至5の自然数)に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
複数の撮像素子ユニットが、第1の方向及び第2の方向に2次元マトリクス状に配列されており、
1つの撮像素子ユニットは、4つの撮像素子がベイヤ配列されて成り、
第3領域は、第2の方向に沿って連続した2個の撮像素子に対応して配されており、
第4領域は、第2の方向に沿って連続した残りの撮像素子に対応して配されている請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
第3領域は、第1の方向に沿った全ての撮像素子に対応して配されている請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
θ1≦θ≦θ2を満足する請求項3に記載の撮像装置。
但し、第2の方向に沿った撮像素子の長さをX2としたとき、θ1は、
f1(X2)=arcsin(X2/12.4)
から求められた値を切り捨てた整数値であり、θ2は、
f2(X2)=arcsin(X2/10.0)
から求められた値を切り上げた整数値である。
【請求項6】
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤには切れ目が存在しない請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第4領域を通過した第4領域通過光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置を用いた撮像方法であって、
第3領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
第4領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光及び第2領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか他方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
これらの電気信号を出力する撮像方法。
【請求項1】
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第4領域を通過した第4領域通過光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置。
【請求項2】
第2の方向に沿って連続するM個の撮像素子(但し、M=2mであり、mは2乃至5の自然数)に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
複数の撮像素子ユニットが、第1の方向及び第2の方向に2次元マトリクス状に配列されており、
1つの撮像素子ユニットは、4つの撮像素子がベイヤ配列されて成り、
第3領域は、第2の方向に沿って連続した2個の撮像素子に対応して配されており、
第4領域は、第2の方向に沿って連続した残りの撮像素子に対応して配されている請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
第3領域は、第1の方向に沿った全ての撮像素子に対応して配されている請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
θ1≦θ≦θ2を満足する請求項3に記載の撮像装置。
但し、第2の方向に沿った撮像素子の長さをX2としたとき、θ1は、
f1(X2)=arcsin(X2/12.4)
から求められた値を切り捨てた整数値であり、θ2は、
f2(X2)=arcsin(X2/10.0)
から求められた値を切り上げた整数値である。
【請求項6】
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤには切れ目が存在しない請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)第1の方向、及び、第1の方向と直交する第2の方向に2次元マトリクス状に撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、第1の方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、第2の方向に沿って交互に配置され、第1の方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光は偏光状態にあり、第4領域を通過した第4領域通過光は非偏光状態にあり、
第3領域を構成する第2偏光手段の部分には、ワイヤグリッド偏光子が設けられており、
ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤの延びる方向と第1の方向との成す角度θは、0度を超え、90度未満であり、
第1領域通過光は第3領域を通過して撮像素子に到達し、第1領域通過光及び第2領域通過光は第4領域を通過して撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第1偏光手段の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する撮像装置を用いた撮像方法であって、
第3領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか一方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
第4領域を通過して撮像素子に到達した第1領域通過光及び第2領域通過光によって、右眼用及び左眼用のいずれか他方の画像を得るための電気信号を撮像素子において生成し、
これらの電気信号を出力する撮像方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−102322(P2013−102322A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244313(P2011−244313)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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