説明

撮像装置

【課題】コストを極力抑えた小型で取り扱い容易な照明手段を組込んだ撮像装置を内視鏡や小型カメラ等の広い分野で容易に使えるようにする。
【解決手段】
撮像装置の本体部にアクリルのような透明材質を使い、主たる形状を円錐状の穴部を持つ円錐台とし、円錐台の底面部に設けた撮像モジュール取り付けの穴部に対物レンズと固体撮像素子を含む撮像モジュールを装着し、円錐上面部には発光ダイオードを装着することで照明手段を持った撮像装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型カメラや機器内部や体腔内部等の観察に用いられる内視鏡等に適した撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体としての機器内部や体腔内を観察する目的の内視鏡は、披検体の像を観察する手段として対物レンズ+リレーレンズを用いた硬性内視鏡や、対物レンズ+ファイバーイメージガイドを用いたファイバースコープ、先端部に対物レンズ+CCDのような固体撮像素子を組み込んだ電子内視鏡等があり使用目的に応じて使い分けられているが、近年は固体撮像素子の小型化、高性能化に伴って電子内視鏡が広く使われてきている。本発明による撮像装置は電子内視鏡の先端部にそのまま装着可能であり、また一般的な観察で使われる小型カメラの場合にもそのまま利用できるので、主に内視鏡を例に説明する。
【0003】
前述したいずれの形態の内視鏡であっても挿入部の一端に対物レンズが装着された先端部、挿入部の他端に設けられた操作部(把持部と呼ぶこともある)から構成されており、対物レンズの周辺には披検体を照明する照明部材が設けられている。
【0004】
この照明部材としては、光学ファイバーを多数束にしたライトガイドを使用し外部に設けられた光源部からの照明光を先端部に伝達する構造のものが多いが、近年白色発光ダイオードのような固体発光素子(以下LEDと記す)の性能が著しく向上するに伴って、内視鏡内部にLEDを装着し先端部まで前記ライトガイドを使用して照明光を伝達する構造のものや、先端部の対物レンズの周辺に直接LEDを配置した構造を持った提案も見られる。
【0005】
本発明は特に電子内視鏡や小型電子カメラに適した、撮像モジュールと照明装置を一体化した撮像装置に関する。
【0006】
図1に電子内視鏡装置の基本的な構成を示す。図中101は電子内視鏡(本体)、102は信号処理回路を持ったカメラコントロールユニット(以下CCUと記す)、104は照明用の光源装置、103は映像表示手段としてのモニターを示している。
【0007】
上記内視鏡は披検体内部に挿入する挿入部105と内視鏡を手で保持、操作する操作部106から構成されており、挿入部の先端に装着された先端部107には対物レンズ108とCCDセンサーやCMOSセンサー等で代表される固体撮像素子109を含んだ撮像ユニット110が組み込まれており、先端部の端面には対物レンズの視野方向を照明するライトガイド111が照明手段として組み込まれている。固体撮像素子108からの映像信号はケーブル112によってCCU102に連接されており、ライトガイド111の他端面は光源装置104に連接されている。なお本発明と直接関係を持たない操作部の機構等は表記を省略して示してある。
【0008】
従来は前記撮像モジュール110からの映像信号を処理するCCU102は、その大部分は内視鏡外部に設けられており、先端部111や操作部106内には信号処理回路等の一部が組み込まれた構成が一般的であったが、近年信号処理回路デバイスの小型化が進み、信号処理回路を操作部106内、または先端の撮像モジュール110内に組み込まれるものも実用化されている。また小型の高効率のLEDが実用化されるに伴って、LEDを操作部106内に装着し、内視鏡の先端部に装着されたライトガイド111に連接するか、LEDをライトガイド111に代わってLEDを直接配置することも可能になって来た。この場合、光源部104は不要となりLEDの電源はCCUから供給することが可能となる。
【0009】
このように、固体撮像素子と対物レンズ系を含んだ撮像モジュールを挿入部の先端に組み込んだ電子内視鏡は種類も多く、機器の内部や、体腔内を観察する目的で産業、医療の分野で広く用いられているが、これまでの電子内視鏡は1個の固体撮像素子と1個の対物レンズ系からなる撮像モジュール110の周辺にライトガイド111またはLEDが直接組み込まれるものもあるが、形状を小型化するのに限界があるのが現状である。
【0010】
例えば、照明手段としてのライトガイドを撮像モジュールに一体として組み込む構造としては、図1に示すように撮像ユニット110と並列にライトガイド111の先端部を組み込む構造や、図2に示すように対物レンズ108、固体撮像素子109を含んだ撮像モジュール110の外周にライトガイド111をドーナッツ状の形状112で配置した構造がよく用いられる。
【0011】
この構造ではライトガイド111は、先端部前面は図2で示すようにドーナッツ形状を示しているが、ライトガイドの他の端面は図2113で示すように円筒状に形成し光源部に連接するのが一般的である。
【0012】
小型のLEDを先端部に一体として組み込む構造を考えた場合、図2のライトガイド111のaで示す結束部分を短くし、ライトガイド111の端面113に直接LEDの発光面を装着することが出来るが、ライトガイド111を構成する光学ファイバーは小さい曲率半径で急激に曲げることが出来ないので、a寸法をあまり小さく出来ず数十ミクロンの光学ファイバーを多数本組み込むためコストも高くなる。
【0013】
この様な寸法上、コスト上の障害を少なくする構造として、特開2004−29235で示されている撮像ユニットの外周をパイプ形状の導光部材で形成し、その端面にLEDを複数個配置する提案がなされているが、複数個のLEDを必要とすることと肉厚の薄いパイプ状の導光部材の断面よりLEDより発光される光を入射させるので、光の利用効率がよくない等の問題がある。
【0014】
本発明の目的は撮像、LEDの光の利用効率の高い安価な電子内視鏡や小型カメラに適した照明手段と一体となった撮像装置を提供することである。
【特許文献1】特開2004−29235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
内視鏡や小型カメラに使用する固体撮像素子やLEDが容易に利用できるようになってきたが、前述のような従来の構造をとると全体のコストを下げるのは容易ではない。
【0016】
特に最近は、固体撮像素子としてCMOS固体撮像素子を用い、対物レンズ、駆動回路、信号処理回路を一体化した小型の撮像モジュールが使用可能になってきている。一例としては1/10インチのCMOS固体撮像素子を用いたものが5×5mm厚さ3mm程度の形状で、UYVYのデジタル信号が得られるものもある。この様な撮像モジュールは安価であるが、内視鏡に使用しようとすると照明手段がコスト構成上の障害となってくる。
【0017】
本発明の目的は、対物レンズと固体撮像素子を含んだ撮像モジュールにコストを極力抑え小型で取扱の容易な照明手段を組み込んだ撮像装置を提供し、内視鏡や小型カメラの開発を容易することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、円錐台の形状部分を持つ透明な材質の筒状部材の底面部に、少なくとも対物レンズと固体撮像素子を含む撮像モジュールを収納する穴部を設け、該穴部の後方に、該円錐台の母線より傾斜の緩やかな母線を持った円錐状の穴を連続して設け、
該筒状部材の底面部に設けられた該撮像モジュールを収納する穴部に該撮像モジュールを装着し、該筒状部材の上面部に発光ダイオード(LED)を装着したことを特徴とする撮像装置で、LEDの選択も比較的自由で構造が簡単なため内視鏡や小型カメラに容易に適用できる。
【0019】
さらに詳細に説明すると、該筒状部分は円錐台の上面部分に装着したLEDからの照明光を、該筒状部分を形成する外側の側面部分と該穴部を形成する内側の側面部分を反射面とし、該筒状部分の前面に設けられた撮像モジュールを装着する穴部の外周に形成される円環状部分に伝達し、全体として照明部材を構成し、その穴部に撮像モジュールを装着することで照明手段を組み込んだ撮像装置を構成している。
【0020】
請求項2にかかわる発明は、対物レンズの前面に設けられた透明な入射窓を、対物レンズの撮像に必要な領域と照明に必要な領域に2分し、前記撮像に必要な領域と照明に必要な領域の境界面を光学的に遮断する構造としたことを特徴とする請求項1記載の撮像装置に関するもので、対物レンズの前面に設けられた透明な入射窓を、対物レンズの撮像に必要な領域と照明に必要な領域に2分し、前記撮像に必要な領域と照明に必要な領域の境界面を光学的に遮断することで照明光が迷光として対物レンズに入射するのを防止し、画質の向上を図った請求項1に記載の撮像装置を特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明による撮像装置は、撮像ユニットと照明手段を小型で単純な構造で一体化することが出来るので、電子内視鏡を具現化する場合には、内視鏡の挿入部の先端部に簡単に装着出来るのでその利用価値は非常に大きい。また小型カメラを具現化することが容易になることはいうまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお実施例の説明で使用する図面は本発明を容易に把握、理解出来るよう本発明と直接関係ない機構等の具体的な詳細は省略して示している。
【実施例1】
【0023】
図3は本発明の実施の一形態を示す撮像装置の概略構成図である。撮像モジュール110は、少なくとも対物レンズ108とCMOSのような固体撮像素子109を含めて構成されており、目的に応じて構成要素を変えることが出来る。
【0024】
例えば、極力内視鏡の先端部を細くしようとした場合の撮像モジュールは、対物レンズと固体撮像素子とプリアンプ等で構成し、固体撮像素子の駆動回路、信号処理回路等は撮像ユニットから離れた操作部等に配置することで小型化出来る。
【0025】
また形状はやや大きくなるが、対物レンズとCMOS固体撮像素子とその周辺回路を一体化し、UYVYのデジタル出力を取り出せる撮像ユニットが実用化されているのでこの様な撮像ユニットを装着することも可能である。
【0026】
図3に示すように本発明による撮像装置の本体部120はアクリルのような透明な樹脂材質を使用し、円錐台の形状を持った円錐台部分121と、円錐台の底部に設けられた、少なくとも対物レンズ108と固体撮像素子109を含んだ撮像モジュール110を装着する穴部123を持った筒状部122で構成されており、円錐台部分121には筒状部122に設けられた穴部123に連続して円錐状穴部124が設けられている。
【0027】
図3において、矢印a、矢印bで示すように撮像ユニット110を本体部120に設けられた穴部123に装着し、LED130の発光面131を本体部120を構成する円錐台120の上面125に対面して装着することで本発明による撮像装置を構成する。このような構造では、LEDの選択も比較的自由でLEDの放熱部材も容易に取り付けることができる。この状態の断面図を図4に示す。なお、図4にいて図3と共通する部位は図3と同じ符号を使用し、以下の説明は図4と図5を参照して進める。
【0028】
この場合、円錐台121の側面126と円錐状穴部の側面127は反射面として作用し、円錐台部分121に連接する円筒部122の外面132、内面133も反射面として作用する機能を持つので、円錐台121の上面125にLED130を装着することでLEDよりの射出光は円環状の筒状部前面134より照明光129として射出するので、本体部120はライトガイドとしての機能を発揮する。
【0029】
LEDからの光を効率よく前面134より射出させるには、円錐台121の外側の反射面126の母線と内側の反射面127の母線の中心軸140に対する傾斜の程度は、同程度か内側の反射面127の母線の中心軸140に対する傾斜が外側の反射面126の母線の中心軸140に対する傾斜より緩やかなことが必要である。
【0030】
図4において、LED130よりの射出光線の一部を点線129で示しているが、LED130よりの射出光線は円錐台の外側の反射面と内側の反射面の間で反射を繰り返しながら前方に進んでいく。この場合、外側の反射面126の母線の中心軸140に対する傾斜が内側の反射面127の母線の中心軸140に対する傾斜より緩やかになると、言い換えれば反射面の間隔が光の進む前方に向かって狭くなると、LEDからの射出光線の一部は前方に到達しなくなる割合が高くなる。なお、図中穴135は撮像モジュール110よりのケーブルを外部に引き出すものである。
【0031】
この様子を図5で説明する。図5は対面する反射面が相対的に異なった傾斜を持つ場合の光の進行状況を説明するためのもので反射面はアルミ等の金属膜を用いた全反射面を想定している。図5(a)は基準反射面142に対して対面する反射面143が光の進行方向に向かって間隔が狭くなるような角度で設定された場合を示し、図5(b)は基準反射面142に対して対面する反射面144が光の進行方向に向かって間隔が広くなるような角度で設定された場合を示している。この反射面にある角度を持って入射する光線145の進み具合を見ると、図5(a)の場合は、反射の回数を繰り返すにしたがって反射面に入射する入射角(反射面の法線とのなす角aで定義する)が小さくなり、やがて前方にすすまなくなる。これに対して図5(b)の場合は、反射の回数を繰り返すにしたがって反射面に入射する入射角(反射面の法線とのなす角bで定義する)が大きくなり容易に前方に進むことが出来る。
【0032】
このような理由から円錐台121の外側の反射面の傾斜と、内側の円錐状の穴による半斜面の傾きが設定されており、円錐台121に続く円筒部122の外面132、内面133も反射面として作用するので、この反射面も少なくとも光の進行方向に向かって間隔が狭くならないように設定することがこのましい。
【0033】
これまでに説明してきた本体部に設定された反射面は、光線の臨界角を利用した全反射面でも良いが反射面への入射角が臨界角を超えると外部に漏れるので、反射面は外側、内側すべてをアルミのような金属膜等の反射膜をつけることで全反射させ、外部に光が漏れないようにすることが実用上必要である。
【0034】
以上説明してきた本発明による撮像装置の本体部120は、透明な樹脂等でモールド品として成型でき、撮像ユニットやLCDの取り付けも簡単なのでコストの安い撮像装置を容易に提供できる。
【0035】
以上の説明は、撮像ユニットを外形が円筒状のものとして説明してきたが、撮像ユニットとしては方形状のものが装着可能になるよう、撮像モジュールを装着する穴部を方形状にすることは容易で本発明の範囲に含まれる。この場合撮像モジュールを装着する穴部と、この穴部に連接して設けられる円錐状の穴部の接続部分には形状的な段差が生じるが、光は全反射面での反射を繰り返し伝達されるので大きな支障は生じない。
【0036】
図6は本体部120の前面に窓ガラス150を装着した状態を示している。このように本体部120に窓ガラスをつけると撮像モジュール部分を外部に対して遮蔽することが出来気密構造をとる場合等に有効であるが、照明光の一部が窓ガラス150内で内面反射を起こし、迷光158として対物レンズ108に入射しフレアー等の原因となる場合がある。
【0037】
図7は本発明による撮像装置を、小型カメラの筐体、または内視鏡等の先端部に組込んだ状態を示している。図中150は窓ガラス、155は小型カメラ、または内視鏡先端部の筐体の一部を示している。156は撮像モジュールからのケーブルを示している。このように窓ガラスと本発明による撮像装置を一体に組込む場合には、本発明による撮像装置にはこれまで説明したように本体部に照明光のライトガイド機能を持たせているので、窓ガラス内で照明光が反射し、反射した光線が対物レンズに迷光として入射し画質の低下を招く恐れがある。
【0038】
この迷光を防止するために、請求項2に提案するように窓ガラス150を、対物レンズの撮像に必要な領域の窓ガラス152と照明に必要な領域の窓ガラス153に2分し、それぞれ別体の窓ガラス152、153として製造し、この境界面にクローム等を蒸着して光学的な遮蔽部154を形成させた上で窓ガラス152と窓ガラス153接着することで一体としている。このような構造の窓ガラス150を本体部120にあわせて用いることで本発明の撮像装置の画質を向上させ利用価値を高くすることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明による撮像装置は、対物レンズと固体撮像素子を含んだ撮像モジュールと照明手段を低いコストで小型に一体化することで、内視鏡や小型カメラの開発が容易となり、これまで大きさやコストの問題で使用を見合わせていた産業用分野で利用可能性も非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来の電子内視鏡の構造概念の説明図。
【図2】従来の電子内視鏡等でよく使用されている照明手段の説明図。
【図3】本発明による撮像装置の構造を説明する斜視図。
【図4】本発明による撮像装置の構造を説明する断面図。
【図5】対向する反射面内で光が進行する様子を示す説明図。
【図6】本発明による撮像装置に窓ガラスを設けた説明図。
【図7】本発明による撮像装置の画質を損なわない窓ガラスの構造説明図。
【符号の説明】
【0041】
101 電子内視鏡
102 カメラコントロールユニット
103 モニター
104 光源装置
108 対物レンズ
109 固体撮像素子
110 撮像モジュール
120 本体部
121 円錐台部
122 筒状部
124 円錐状穴部
126 円錐台の外側の反射面
127 円錐台の内側の反射面
130 発光ダイオード
150 窓ガラス
158 迷光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐台の形状部分を持つ透明な材質の筒状部材の底面部に、少なくとも対物レンズと固体撮像素子を含む撮像モジュールを装着する穴部を設け、該穴部の後方に、該円錐台の母線より傾斜の緩やかな母線を持った円錐状の穴を連続して設け、該筒状部材の底面部に設けられた該撮像モジュールを収納する穴部に該撮像モジュールを装着し、該筒状部材の上面部に発光ダイオードを装着したことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
対物レンズの前面に設けられた透明な窓ガラスを、対物レンズの撮像に必要な領域と照明に必要な領域の2分し、前記撮像に必要な領域と照明に必要な領域の境界面を光学的に遮断する構造としたことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−207578(P2009−207578A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51489(P2008−51489)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(502085628)有限会社 アイシステムズ (15)
【出願人】(597105153)株式会社メディア・テクノロジー (25)
【Fターム(参考)】