説明

撮像装置

【課題】基準画像または比較画像の出力に対して遅れることなく、対象物までの距離を基準画像および比較画像からリアルタイムで求めることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】マッチング処理部40は、2つの各撮像部から順次入力される第1および第2の画素データ間の差分を合計した差分積算値を入力ラインごとに算出する第1の処理部440と、2つの各撮像部からnライン遅延して順次入力される第1および第2の画素データ間の差分を合計した差分積算値を入力ラインごとに算出する第2の処理部450と、第1のライン処理部440で求めた積算値を垂直方向に積算した値から第2のライン処理部450で求めた積算値を垂直方向に積算した値を引いたSADを求める差分絶対値和算出部460とを備え、SADに基づいて基準画像中の照合エリアに対応する対象エリアを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばステレオカメラにより互いに同期して撮像された2つの画像から、対象物までの距離を算出する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラから被写体までの距離情報を取得する方法として、ステレオ法が広く知られている。このステレオ法に基づいた距離取得の処理では、処理対象の基準となる画像(基準画像)と、処理を行う際に比較される画像(比較画像)の2つの画像を用いる。ステレオ法を採用した撮像装置では、カメラにより基準画像および比較画像を撮像した後に、基準画像の各画素が比較画像のどの位置に対応するかを解析して、この解析結果に基づいて両画像に映る像のずれ(視差)と、基準画像および比較画像を撮像したカメラの物理的な関係とに基づいて、カメラと被写体との間の距離を算出する。
【0003】
基準画像の各画素が比較画像のどの位置に対応するかの解析には、マッチング処理が一般的に用いられている。マッチング処理では、基準画像から所定画素数(例えばm×n画素、m:画素データの入力ライン方向の画素数、n:入力ライン方向に対して垂直方向の画素数)の画素ブロックを切り出すとともに、比較画像中の探索範囲内で切り出し位置をずらしながら、基準画像の画素ブロックと同じサイズ(m×n画素)の画素ブロックを比較画像から切り出して、基準画像および比較画像から切り出された両画素ブロック間のマッチング誤差を求め、マッチング誤差が最小となる画素ブロックの位置を対応点として関連付ける。このようなマッチング処理を適用したブロックマッチング装置が特許文献1に開示されている。また、同じようにマッチング処理を適用した視差ベクトル検出装置が特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2002−352241号公報
【特許文献2】特開2002−354503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等に記載された従来のマッチング処理では、基準画像の画像ブロックおよび比較画像の画像ブロックの間のマッチング誤差を算出するために、基準画像および比較画像のそれぞれから画素ブロックを切り出す必要がある。また、画像ブロックを切り出す際に基準画像および比較画像を一時的にメモリに記憶しておく必要があり、この記憶処理に時間がかかってしまう。このため、マッチング処理が、画像を撮像した時間から大きく遅れて行われることがあった。
【0005】
更に、比較画像から画像ブロックを切り出す際には、比較画像中の探索範囲内で切り出し位置をずらしながら行うため、比較画像を一時的に記憶するメモリへのアクセスが多くなり、このために画像ブロックの切り出しの処理時間が増大し、また、メモリバス帯域の圧迫などを招いてしまっていた。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、基準画像または比較画像の出力に対して遅れることなく、対象物までの距離を基準画像および比較画像からリアルタイムで求めることができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像装置は、被写体を撮像して、基準画像を生成する基準画像撮像部と、被写体を撮像して、前記基準画像と同期して比較画像を生成する比較画像撮像部と、前記基準画像撮像部により生成された前記基準画像中のm×n画素(mは画素データの入力ライン方向の画素数、nは入力ライン方向に対して垂直方向の画素数)からなる所定の照合エリアに対応する前記比較画像中のエリアを対応エリアとして求めるマッチング処理部と、前記マッチング処理部により求められた前記対応エリアと前記照合エリアとの位置関係に基づいて、前記照合エリアに映る対象物までの距離を算出する距離算出部とを有する撮像装置であって、前記マッチング処理部は、前記基準画像撮像部から入力される第1の画素データおよび前記比較画像撮像部から入力される第2の画像データを入力ラインごとに処理する処理部であって、前記基準画像撮像部から順次入力される第1の画像データのうちで前記照合エリアに対応する画素の画素データと、前記比較画像撮像部から順次入力される第2の画素データとの差分を求め、求めた差分を合計して前記入力ラインにおける差分積算値を算出する処理を、前記第1の画素データに対する前記第2の画素データの遅延量を変えて行い、該遅延量ごとに差分積算値を算出する第1のライン処理部と、前記基準画像撮像部からnライン遅延して入力される第1の画素データおよび前記比較画像撮像部からnライン遅延して入力される第2の画素データを入力ラインごとに処理する処理部であって、前記基準画像撮像部から順次入力される第1の画素データのうちで前記照合エリアに対応する画素の画素データと、前記比較画像撮像部から順次入力される第2の画素データとの差分を求め、求めた差分を合計して前記入力ラインにおける差分積算値を算出する処理を、前記第1の画素データに対する前記第2の画素データの遅延量を変えて行い、該遅延量ごとに差分積算値を算出する第2のライン処理部と、前記第1のライン処理部により算出された差分積算値を前記垂直方向に積算した積算値から前記第2のライン処理部により算出された差分積算値を前記垂直方向に積算した積算値を引いた差分絶対値和を算出する処理を前記遅延量ごとに行う差分絶対値和算出部と、を備え、前記差分絶対値和算出部により算出される前記差分絶対値和に基づいて前記比較画像の中から前記対応エリアを求める構成を有している。
【0008】
この構成により、第1のライン処理部にて、基準画像の照合エリアにおける一のライン上の画素と比較画像の同じライン上の画素との差分絶対値を求める処理を、比較画像の方を遅延させながら行うことにより、入力ラインにおける差分絶対値を、比較画像の遅延量に応じて複数求めることができる。第1のライン処理部にて求めた差分絶対値を第1〜第nラインまで足し合わせることにより、比較画像の遅延量ごとの照合エリアの差分絶対値和を求めることができる。第1のライン処理部における差分絶対値を第1〜第(n+1)ライン以上足し合わせると、照合エリア(m×n画素)を超えてしまう。本発明では、第2のライン処理部は、第1のライン処理部と同じ処理を、nライン遅延した信号について行う。これにより、例えば、第1のライン処理部にて第(n+1)ラインの差分絶対値を求めるタイミングで、第2のライン処理部では第1ラインの差分絶対値を求める。そして、差分絶対値和算出部は、第1のライン処理部により算出された差分積算値を積算した値から第2のライン処理部により算出された差分積算値を積算した値を引いた値を差分絶対値和として算出するので、常に、nライン分を合計した差分絶対値和を求めることができる。例えば、上記の例では、第1〜第(n+1)ラインの差分絶対値の積算値から、第1ラインの差分絶対値を引いた値を算出することにより、第2〜第(n+1)ラインの差分絶対値和が求まる。このように本発明では、第1および第2のライン処理部にて順次入力される第1の画素データおよび第2の画素データを処理することによって、例えば特許文献1等に記載の従来のマッチング処理のように、基準画像および比較画像から画像を切り出す処理を行う必要がなく、さらに切り出し処理のためのメモリを必要とすることなく、照合エリアに対応する対応エリアをリアルタイムに求めることができる。また、このようにして求めた対応エリアと照合エリアの位置関係に基づいて、照合エリアに映る対象物までの距離を算出するので、基準画像または比較画像を表示部などに出力する通常の画像処理と同じ速さで、第1の画素データと第2の画素データとを処理でき、これにより、通常の画像信号を処理する場合と同じ速度および分解能で距離情報を得ることができる。この結果、本発明では、基準画像または比較画像の出力に対して遅れることなく、対象物までの距離を基準画像および比較画像からリアルタイムで求めることができる。
【0009】
本発明に係る撮像装置において、基準画像撮像部および比較画像撮像部は、一のカメラの撮像領域を分割することにより構成されている。これにより、2つの撮像部を1つのカメラで構成することができ、撮像装置の構成を簡素とすることができ、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、第1および第2のライン処理部にて順次入力される第1の画素データおよび第2の画素データを処理することによって、基準画像または比較画像の出力に対して遅れることなく、対象物までの距離を基準画像および比較画像からリアルタイムで求めることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置1000について、図面を用いて説明する。
図1は撮像装置1000のマッチング処理部40の構成を詳細に示す図であり、図2は撮像装置1000の全体の構成を示す図である。以下の説明では、最初に撮像装置1000の全体構成を図2に基づいて説明し、次にマッチング処理部40の構成を図1に基づいて説明する。
【0012】
図2に示されるように、撮像装置1000は、撮像部10と、基準画像用信号処理部20と、比較画像用信号処理部30と、マッチング処理部40と、距離算出部50とを備えている。
【0013】
撮像部10は、一対の撮像素子として、基準画像用撮像素子11および比較画像用撮像素子12を備えており、これら2つの撮像素子11、12からなるステレオカメラを構成する。基準画像用撮像素子11および比較画像用撮像素子12は、所定の間隔を空けて設置されている。基準画像用撮像素子11および比較画像用撮像素子12は、被写体を同時に撮像することができるように構成されている。
【0014】
基準画像用撮像素子11は、被写体を撮像して、マッチング処理部40による処理の基準となる基準画像を生成する。比較画像用撮像素子12は、被写体を撮像して、基準画像と同期して、マッチング処理部40による処理で基準画像と比較するための比較画像を生成する。基準画像の画素データの入力ライン方向(走査方向)と比較画像の画素データの入力ライン方向(走査方向)は同じである。また、基準画像および比較画像は、例えば撮像装置1000の初期設定の際のテストパターンによる調整によって、垂直方向において互いに対応するように設定される。テストパターンによる調整は、例えば、後述の基準画像用信号処理部20または比較画像用信号処理部30により行われる。本発明の基準画像撮像部は基準画像用撮像素子11に相当し、本発明の比較画像撮像部は比較画像用撮像素子12に相当する。また、基準画像用撮像素子11は第1の画素データを順次出力し、比較画像用撮像素子12は第1の画素データの出力に同期して第2の画素データを順次出力する。
【0015】
基準画像用信号処理部20は、基準画像用撮像素子11により生成された基準画像に対して、例えばNTSC(National Television Standards Committee)などに対応した信号処理を行う。同様に、比較画像用信号処理部30は、比較画像用撮像素子12により生成された比較画像に対して、例えばNTSCなどに対応した信号処理を行う。
【0016】
マッチング処理部40は、後で詳細に説明するように、基準画像中の所定の照合エリアに相関の高い比較画像中のエリアを対応エリアとして求める。マッチング処理部40には、第1の画素データが基準画像用撮像素子11から基準画像用信号処理部20を介して順次入力され、第2の画素データが比較画像用撮像素子12から比較画像用信号処理部30を介して順次入力される。マッチング処理部40に画素データが順次入力され、マッチング処理部40にて下記の処理が行われることにより、結果として、上記所定の照合エリアは基準画像中を一定の間隔で順次移動し、最終的には照合エリアの移動範囲は基準画像の全領域に及ぶ。
【0017】
距離算出部50は、マッチング処理部40により求められる対応エリアと照合エリアとの位置関係に基づいて、対応エリアおよび照合エリアの間のずれ量を算出し、このずれ量と、基準画像用撮像素子11および比較画像用撮像素子12の物理的関係とを用いて、照合エリアに映る対象物までの距離を算出し、これを距離情報として出力する。このとき、距離算出部50は、基準画像中を順次移動する全ての照合エリアについて、対応エリアと照合エリアの間のずれ量を算出し、照合エリアの各々に映る対象物までの距離を算出する。
【0018】
撮像装置1000は、例えば、基準画像用信号処理部20により出力される画像信号に対して、距離算出部50により算出された距離に応じた処理を行い、この処理結果から得られる画像を表示部などに表示する。これにより、被写体中の対象物と撮像装置1000との間の距離に応じた画像を撮像装置1000の使用者に提供することができる。なお、撮像装置1000は、基準画像用信号処理部20ではなく比較画像用信号処理部30により出力される画像信号に対して、上記算出距離に応じた処理を行い、処理後の画像を表示部などに表示してもよい。
【0019】
次に、マッチング処理部40について説明するが、具体的な構成および動作を説明する前に、まず、図3に基づいて、基準画像および比較画像の構成を説明する。
【0020】
図3(a)および図3(b)は、マッチング処理部40にて比較される基準画像および比較画像の例を示す図である。マッチング処理部40は、基準画像700中の照合エリア710a(図3(a)参照)と、比較画像800中の複数の被照合エリア810a〜810S(図3(b)参照)との相関の高さとして、例えば差分絶対値和(Sum of Absolute:SADと称する)を求め、求めた結果に基づいて複数の被照合エリア810a〜810Sのうちの1つを対応エリアとして求める。なお、図3(a)および図3(b)は、マッチング処理部40にて行う処理を概念的に示したものであり、本実施の形態では、図3(a)および図3(b)に示す各エリアを基準画像あるいは比較画像から切り出す処理を行うわけではない。
【0021】
照合エリア710aは、基準画像700中の複数の画素から構成されている。被照合エリア810aは、比較画像800中の複数の画素から構成されており、照合エリア710aの形状に対応している。ここでは、照合エリア710aおよび被照合エリア810aの大きさをm×n画素(mは画素データの入力ライン方向(走査方向)の画素数、nは入力ライン方向に対して垂直方向の画素数)とする。また、上述の通り、撮像装置1000の初期設定の段階で、基準画像700および比較画像800は垂直方向において互いに対応するように調整されているので、照合エリア710aおよび被照合エリア810aも垂直方向において互いに対応している。
【0022】
複数の被照合エリア810a〜810Sの各々は、比較画像800の探索範囲をSとした場合の各被照合エリアの位置を示している。比較画像800の探索範囲Sは、第1の画素データに対する第2の画素データの最大遅延量に対応する。ここでは、被照合エリア810b〜810Sは、被照合エリア810aを入力ライン方向に1画素ずつ、順次遅延させた際の領域を示している。すなわち、被照合エリア810bは被照合エリア810aを入力ライン方向に1画素分遅延させた際の領域、被照合エリア810cは被照合エリア810aを入力ライン方向に2画素分遅延させた際の領域・・・、被照合エリアSは被照合エリア810aを入力ライン方向に(S−1)画素分遅延させた際の領域となる。
【0023】
なお、被照合エリア810b〜810Sは被照合エリア810aを1画素ずつ入力ライン方向に遅延させた領域であると説明したが、被照合エリア810b〜810Sは被照合エリア810aを1画素に限らず所定の画素ずつ入力ライン方向に遅延させた領域であってもよい。また、被照合エリア810b〜810Sは被照合エリア810aと同様に照合エリア710aと垂直方向で対応する。
【0024】
次に、マッチング処理部40の構成および動作について図に基づいて説明する。
図1に示されるように、マッチング処理部40は、画素遅延部410と、基準画像用ライン遅延部420と、比較画像用ライン遅延部430と、第1のライン処理部440と、第2のライン処理部450と、差分絶対値和算出部460とを備えている。
【0025】
画素遅延部410は、第1の画素データが第1のライン処理部440に入力するタイミングを、第2の画素データが第1のライン処理部440に入力するタイミングに対して、遅らせる処理を行う。
【0026】
基準画像用ライン遅延部420は、基準画像用信号処理部20にて信号処理された第1の画素データを垂直方向にnライン分遅らせる処理をする。同様に、比較画像用ライン遅延部430は、比較画像用信号処理部30にて信号処理された第2の画素データを垂直方向にnライン分遅らせる処理をする。基準画像用ライン遅延部420および比較画像用ライン遅延部430により処理がなされた各画素データは、第2のライン処理部450に順次入力される。なお、nラインは照合エリア710aおよび被照合エリア810a〜810Sの垂直方向の画素数nに対応している。
【0027】
次に、第1のライン処理部440、第2のライン処理部450および差分絶対値和算出部460の構成および動作について説明する。最初に、図4を用いて概略を説明し、概略説明後に図1を用いて具体的な回路構成を説明する。以下では、説明の便宜上、まず、図1に示す回路構成の囲み部分Aに対応する回路の機能について説明する。後で詳細に回路構成の説明をする通り、図1の囲み部分Aには、第1のライン処理部440の差分絶対値算出部4421、差分絶対値積算部4431が含まれ、第2のライン処理部450の差分絶対値算出部4521、差分絶対値積算部4531が含まれ、差分絶対値和算出部460の単位差分絶対値和算出部4601が含まれている。
【0028】
図4(a)および図4(b)は、差分絶対値和算出部460の機能および動作の概略を説明するための図である。図4(a)はnラインの画素が入力する以前、図4(b)は(n+x)ラインの画素が入力された後の照合エリアのSADを示している。
【0029】
差分絶対値算出部4421は、基準画像用撮像素子11から基準画像用信号処理部20を介して順次入力される第1の画素データと、比較画像用撮像素子12から比較画像用信号処理部30を介して順次入力される第2の画素データとの差分を、画素データが入力される都度計算する。そして、差分絶対値積算部4431は、照合エリアに対応する範囲についてm個分の差分データを加算し、照合エリアの1ラインにおける差分積算値を算出する。例えば、第1のラインの画素データが入力されたときには、差分絶対値積算部4431は、図4(a)における「1」で示す範囲にある各画素と、これらと同期して入力された比較画像の各画素との各差分データを加算して差分積算値をライン毎に算出する。
【0030】
差分絶対値算出部4521および差分絶対値積算部4531は、順次入力される第1の画素データおよび第2の画素データに対して、差分絶対値算出部4421および差分絶対値積算部4431と同じ処理を行い、差分積算値積算部4531は最終的に照合エリアの1ラインにおける差分積算値を算出する。ただし、差分絶対値算出部4521に入力される第1の画素データおよび第2の画素データは、差分絶対値算出部4421に入力される第1の画素データおよび第2の画素データに対してnライン分遅延した画素データである。従って、差分絶対値積算部4531は、差分絶対値積算部4431よりnライン分遅れた差分積算値をライン毎に求める。なお、図1に示されるように、差分絶対値積算部4431および差分絶対値積算部4531は、m個分の差分データをラッチして積算する機能を有する。差分絶対値積算部4431および差分絶対値算出部4531には、走査方向に従って順次画素データが入力されるので、結果的に、照合エリアを走査方向に移動させた際の差分積算値が順次算出される。
【0031】
単位差分絶対値和算出部4601は、差分絶対値積算部4431でライン毎に求めた差分積算値を垂直方向に積算した積算値から、差分絶対値積算部4531でライン毎に求めた差分積算値を垂直方向に積算した積算値を引いた値を、SADとして求める。nラインの画素が入力される以前には、差分絶対値積算部4531は、差分積算値の値を出力しないので、図4(a)に示すように、差分絶対値積算部4431でライン毎に求めた差分積算値が順次加算されていく。そして、第1ラインから第nラインまでの全ての差分積算値が加算されたときに、第1〜第nラインからなる照合エリアのSADが求められる。
【0032】
(n+1)ライン以降の画素が入力されるようになると、図4(b)に示すように、差分絶対値積算部4431は、第1ラインから第(n+x)ラインまでのライン毎の差分積算値をそれぞれ算出する。一方、差分絶対値算出部4521には、nライン遅れた画素が入力される。ここで、差分絶対値算出部4421に第(n+x)ラインまで画素データが入力されたときには、差分絶対値算出部4521には、第xラインまでの画素データが入力され、差分絶対値積算部4531は、第1〜第xラインまでのライン毎の差分積算値をそれぞれ算出する。そして、単位差分絶対値和算出部4601は、差分絶対値積算部4431で求めた第1ラインから第(n+x)ラインまでのライン毎の差分積算値を垂直方向に(n+x)ライン分積算した積算値から、差分絶対値積算部4531で求めた第1〜第xラインまでのライン毎の差分積算値を垂直方向にxライン分積算した積算値を引いた値をSADとして求める。従って、単位差分絶対値和算出部4601は、図4(b)に示すように、第(x+1)〜(n+x)ラインからなる照合エリアのSADを求めることができる。
【0033】
以上に説明した処理を行うことにより、結果として、図1に示す回路の囲み部分Aでは、照合エリアを垂直方向に順次移動させた際のSADを求めることになる。また、上述したとおり、両ライン処理部440、450が、加算するm個分の差分データを走査方向に移動させながら差分積算値を算出するので、結果的に、照合エリアを走査方向にも順次移動させた際のSADも求められる。以上の説明では、囲み部分Aについてだけ説明したが、囲み部分Aの右側にある各回路も上記と同じ処理を行う回路である。図1に見られるように、各回路において比較画像の画素データの入力側にラッチがある。各回路は、比較画像の画素データを少しずつ遅延させている。つまり、これらの各回路は、図3(b)に示すように比較画像をライン方向に遅延させて、上記と同じ処理を行うための回路である。これにより、比較画像をずらして、基準画像の照合エリアと比較画像とのSADを求める。以上、図1、図4を用いて、第1のライン処理部440、第2のライン処理部450および差分絶対値和算出部460の機能および動作の概略を説明した。
【0034】
マッチング処理部40は、差分絶対値和算出部460にて求めた複数のSADに基づいて、複数の被照合エリア810a〜810Sのうちの1つを対応エリアとして求める。例えば、マッチング処理部40は、複数のSADの中から最小値を求め、SADの最小値に対応するエリアを対応エリアとして求める。また、SADの最小値に対応するエリアと、これの前後に対応するエリアとの関係などから、最終的な対応エリアを求めてもよい。これにより、マッチング処理部40は、照合エリア710aに相関の高い被照合エリアを比較画像800の中から対応エリアとして特定して求めることができる。このとき、マッチング処理部40は、第1の画素データに対する第2の画素データの遅延量を求めて、求めた遅延量に基づいて、複数の被照合エリア810a〜810Sの中から対応エリアを求める。
【0035】
次に、図1に戻って、上述した第1のライン処理部440、第2のライン処理部450および差分絶対値和算出部460の機能および動作を実現するための詳細な構成について説明する。
【0036】
図1に示されるように、第1のライン処理部440は、画素保持部441と、差分絶対値算出部群442と、差分絶対値積算部群443とを備えている。画素保持部441は、比較画像の探索範囲Sとした場合において、(S−1)個のラッチ4411を備えている。各ラッチ4411には、比較画像用撮像素子12から比較画像用信号処理部30を介して入力される第2の画素データが順次保持される。
【0037】
差分絶対値算出部群442は、S個の差分絶対値算出部4421から構成される。各差分絶対値算出部4421は、減算器4421aと絶対値算出部(ABSと称する)4421bとから構成される。各差分絶対値算出部4421は、第1の画素データに対する第2の画素データの遅延量に応じて、画素遅延部410から順次入力される第1の画素データと、比較画像用撮像素子12から比較画像用信号処理部30を介して順次入力される第2の画素データとの間の差分絶対値を算出する。S個の差分絶対値算出部4421は、第1の画素データに対する第2の画素データの遅延量に対応して、それぞれ設けられている。
【0038】
各減算器4421aは、画素遅延部410から出力される第1の画素データと、比較画像用撮像素子12から比較画像用信号処理部30を介して入力される第2の画素データとの間の差分値を算出する。なお、図1の右から(S−1)番目までの各減算器4421aには、画素保持部441内の各ラッチ4411に保持された第2の画素データが入力される。各ABS4421bは、各減算器4421aにより算出された差分値の絶対値を算出する。
【0039】
差分絶対値積算部群443は、S個の差分絶対値積算部4431を備えている。各差分絶対値積算部4431は、mラッチ4431aと、減算器4431bと、加算器4431cと、ラッチ4431dを備えている。各差分絶対値積算部4431は、第1の画素データに対する第2の画素データの遅延量に応じて、各差分絶対値算出部4421により算出され順次入力される差分絶対値をm個分積算して順次出力する。
【0040】
mラッチ4431aは、ABS4421bから順次入力されるm個の差分絶対値を保持しつつ、差分絶対値の入力に伴って保持中の差分絶対値を順番に1つずつ出力する。減算器4431bは、ラッチ4431dの出力からmラッチ4431aの出力を差し引く。加算器4431cは、減算器4431bの出力と、ABS4421bから入力される差分絶対値とを加算する。ラッチ4431dには、加算器4431cの出力が保持される。
【0041】
各ラッチ4431dには、当該ラッチ4431dの出力からmラッチ4431aの出力を差し引いた差分値に、ABS4421dから入力される差分絶対値を加算した結果が照合エリアの1ラインにおける差分積算値として保持される。各差分絶対値積算部4431は、各ラッチ4431dに保持された差分積算値を差分絶対値和算出部460へ出力する。
【0042】
図1に示されるように、第2のライン処理部450は、画素保持部451と、差分絶対値算出部群452と、差分絶対値積算部群453とを備えている。第2のライン処理部450の各部の構成は、第1のライン処理部440の各部の構成と同一である。第2のライン処理部450の各部451、4511、452、4521a〜b、453、4531、4531a〜cは、第1のライン処理部440の各部441、4411、442、4421a〜b、443、4431、4431a〜cにそれぞれ対応する。
【0043】
画素保持部451の各ラッチ4511には、比較画像用ライン遅延部430により遅延処理が行われた第2の画素データが順次保持される。各差分絶対値算出部4521は、第1の画素データに対する第2の画素データの遅延量に応じて、基準画像用ライン遅延部420により遅延処理が行われた第1の画素データと、比較画像用ライン遅延部430により遅延処理が行われた第2の画素データとの間の差分絶対値を算出する。
【0044】
各差分絶対値積算部4531は、差分絶対値積算部4431と同様に、第1の画素データに対する第2の画素データの遅延量に応じて、各差分絶対値算出部4521により算出され順次入力される差分絶対値をm個分積算して、照合エリアの1ラインにおける差分積算値を算出し、差分絶対値和算出部460へ出力する。
【0045】
差分絶対値和算出部460は、S個の単位差分絶対値和算出部4601を備えている。各差分絶対値和算出部4601は、加算器4601aと、減算器4601bと、ラインメモリ4601cとを備えている。各差分絶対値和算出部4601は、第1の画素データに対する第2の画素データの遅延量に応じて、第1のライン処理部440でライン毎に求めた差分積算値を垂直方向に積算した積算値から、第2のライン処理部450でライン毎に求めた差分積算値を垂直方向に積算した積算値を引いた値を、SADとして算出する。
【0046】
加算器4601aは、第1のライン処理部440から入力される差分積算値と、減算器4601bの出力とを加算して、これをラインメモリ4601cに出力する。また、各加算器4601aの出力を各差分絶対値和算出部4601の出力とする。各減算器4601bは、ラインメモリ4601cの出力から、第2のライン処理部450から入力される差分積算値を差し引いた差分値を算出し、この差分値を加算器4601aに入力する。ラインメモリ4601cは、順次入力される加算器4601aの出力を加算して、この加算結果を記憶する。
【0047】
以上、第1のライン処理部440、第2のライン処理部450および差分絶対値和算出部460の機能および動作を実現するための詳細な構成について説明した。
【0048】
次に、本発明の第1の実施の形態の撮像装置1000の動作について、図に基づいて説明する。
図2において、まず、撮像部10の基準画像用撮像素子11により生成された基準画像が、基準画像用信号処理部20による信号処理を経て、マッチング処理部40に入力される。同様に、撮像部10の比較画像用撮像素子12により撮像された比較画像が、基準画像用信号処理部30による信号処理を経て、マッチング処理部40に入力される。このとき、基準画像と比較画像は、互いに同期し、垂直方向において互いに対応している。そして、マッチング処理部40には、基準画像用撮像素子11から第1の画素データが入力され、比較画像用撮像素子12から第2の画素データが入力される。
【0049】
次に、マッチング処理部40は、基準画像700中の所定の照合エリア710aに対応する比較画像800中のエリアを、複数の被照合エリア810a〜810Sの中から対応エリアとして求める。マッチング処理部40には、基準画像用撮像素子11から基準画像用信号処理部20を介して第1の画素データが順次入力され、比較画像用撮像素子12から比較画像用信号処理部30を介して第2の画素データが順次入力される。マッチング処理部40に第1の画素データが順次入力することにより、結果として、上記所定の照合エリアは基準画像中を一定の間隔で順次移動し、最終的には照合エリアの移動範囲は基準画像の全領域に及ぶ。以下、マッチング処理について詳しく説明する。
【0050】
図1において、画素遅延部410は、第1の画素データが第1のライン処理部440に入力するタイミングを、第2の画素データが第1のライン処理部440に入力するタイミングに対して、遅らせる処理を行う。画素遅延部410により処理がなされた第1の画素データは、第1のライン処理部440に順次入力されるとともに、基準画像用ライン遅延部420を介して第2のライン処理部450に入力される。
【0051】
基準画像用ライン遅延部420は、基準画像用信号処理部20にて信号処理された第1の画素データを垂直方向にnライン分遅らせる処理をする。同様に、比較画像用ライン遅延部430は比較画像用信号処理部30にて信号処理された第2の画素データを垂直方向にnライン分遅らせる処理をする。基準画像用ライン遅延部420および比較画像用ライン遅延部430により処理がなされた各画素データは、第2のライン処理部450に順次入力される。
【0052】
次に、第1のライン処理440は、基準画像用撮像素子11から順次入力される第1の画素データと、比較画像用撮像素子12から順次入力される第2の画素データとの差分を、画素データが入力される都度計算する。具体的には、第1のライン処理部440は、基準画像用撮像素子11から順次入力される第1の画素データのうちで照合エリア710aに対応する画素の画素データと、比較画像用撮像素子12から順次入力される第2の画素データとの差分を求め、この差分を合計して照合エリアの1ラインにおける差分積算値をライン毎に算出する。
【0053】
同様にして、第2のライン処理450は、基準画像用撮像素子11からnライン遅延して順次入力される第1の画素データと、比較画像用撮像素子12からnライン遅延して順次入力される第2の画素データとに対して、第1のライン処理部440と同様の処理を行い、照合エリアの1ラインにおける差分積算値をライン毎に算出する。この結果、第2のライン処理部450は、第1のライン処理部440よりnライン分遅れた差分積算値を算出する。
【0054】
次に、差分絶対値和算出部460は、S個の単位差分絶対値和算出部4601の各々にて、第1のライン処理部440から入力されるライン毎の差分積算値を垂直方向に積算した積算値から、第2のライン処理部450から入力されるライン毎の差分積算値を垂直方向に積算した積算値を引いた値を、SAD[1]、SAD[2]、・・・、SAD[S]として算出する。
【0055】
そして、マッチング処理部40は、複数のSADに基づいて、第1の画素データに対する第2の画素データの遅延量を算出し、算出された遅延量に基づいて、比較画像800中のS個の被照合エリア810a〜810Sの中から対応エリアを求める。
【0056】
次に、距離算出部50は、マッチング処理部40により求められる対応エリアと照合エリア710aとの位置関係に基づいて、照合エリア710aおよび対応エリアの間のずれ量を算出し、このずれ量と、基準画像用撮像素子11および比較画像用撮像素子12の物理的関係とを用いて、照合エリアに映る対象物までの距離を算出し、これを距離情報として出力する。
【0057】
以上のように、マッチング処理部40に画素データが順次入力することにより、結果として、所定の照合エリアは基準画像中を一定の間隔で順次移動し、最終的には照合エリアの移動範囲は基準画像の全領域に及ぶ。
【0058】
次に、撮像装置1000は、例えば、基準画像用信号処理部20により出力される画像信号に対して、距離算出部50により算出された距離に応じた処理を行い、この処理結果から得られる画像を表示部などに表示する。これにより、被写体中の対象物と撮像装置1000との間の距離に応じた画像を撮像装置1000の使用者に提供することができる。
【0059】
このようにして、第1のライン処理部440にて、基準画像の照合エリアにおける一のライン上の画素と比較画像の同じライン上の画素との差分絶対値を求める処理を、比較画像の方を遅延させながら行うことにより、入力ラインにおける差分積算値を、比較画像の遅延量に応じて複数求めることができる。第1のライン処理部440にて求めた差分積算値を第1〜第nラインまで足し合わせることにより、比較画像の遅延量ごとの照合エリアの差分絶対値和を求めることができる。第1のライン処理部440における差分積算値を第1〜第(n+1)まで足し合わせると、照合エリア(m×n画素)を超えてしまう。
【0060】
本発明では、第2のライン処理部450は、第1のライン処理部440と同じ処理を、nライン遅延した信号について行う。これにより、例えば、第1のライン処理部440にて第(n+1)ラインの差分積算値を求めるタイミングで、第2のライン処理部450では第1ラインの差分積算値を求める。そして、差分絶対値和算出部460は、第1のライン処理部440により算出された差分積算値を積算した値から、第2のライン処理部450により算出された差分積算値を積算した値を引いた値を算出するので、常に、nライン分を合計した差分絶対値和を求めることができる。
【0061】
以上の通り、本発明の第1の実施の形態の撮像装置1000によれば、第1および第2のライン処理部440、450にて順次入力される第1の画素データおよび第2の画素データを処理することによって、例えば特許文献1等に記載の従来のマッチング処理のように、基準画像および比較画像から画像を切り出す処理を行う必要がなく、さらに切り出し処理のためのメモリを必要とすることなく、照合エリアに対応する対応エリアをリアルタイムで求めることができる。
【0062】
また、このようにして求めた対応エリアと照合エリア710aの位置関係に基づいて、照合エリアに映る対象物までの距離を算出するので、基準画像700または比較画像800を表示部に出力する通常の画像処理と同じ速さで、第1の画素データと第2の画素データとを処理することができ、これにより、通常の画像信号を処理する場合と同じ速度および分解能で距離情報を得ることができる。
【0063】
この結果、本発明は、第1および第2のライン処理部440、450にて順次入力される第1の画素データおよび第2の画素データを処理することによって、基準画像700または比較画像800の出力に対して遅れることなく、対象物までの距離を基準画像700および比較画像800からリアルタイムで求めることができる。また、例えば特許文献1等に記載の従来のマッチング処理のように、基準画像および比較画像から画像を切り出す処理を行う必要がないので、切り出し処理のための特殊なメモリ操作に必要なハードウェアを無くすことができ、撮像装置1000をより簡単な構成とすることができる。
【0064】
また、本発明の第1の実施の形態の撮像装置1000によれば、撮像部10は、被写体を撮像する2つの撮像素子11、12を備え、2つの撮像素子11、12のうち、一方の撮像素子11が基準画像700を生成し、他方の撮像素子12が比較画像800を生成する構成を有している。このように、基準画像700および比較画像800を簡単に生成することができる。
【0065】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置1001について、図面を用いて説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態における撮像装置1001の構成を示すブロック図である。
【0066】
本発明の第1の実施の形態の撮像装置1000と第2の実施の形態の撮像装置1001とを図2および図5に基づいて比較する。第1の実施の形態の撮像装置1000では、撮像部10は2つの撮像素子11、12を備えているのに対して、第2の実施の形態の撮像装置1001では、撮像部10aが単体の撮像素子13により構成されている点で相違する。
【0067】
また、第1の実施の形態の撮像装置1000では、2つの撮像素子11、12に対応して、2つの信号処理部20、30を備えているのに対して、第2の実施の形態の撮像装置1001では、単体の撮像素子13に対応して、1つの信号処理部20aを備えている点で相違する。
【0068】
図5に示されるように、撮像装置1001は、撮像部10aと、信号処理部20aと、マッチング処理部40と、距離算出部50とを備えている。図5において、第1の実施の形態の撮像装置1000の各部と共通する構成については、同一の符号を付している。
【0069】
撮像部10aは、単体の撮像素子13により構成されている。撮像素子13の撮像面には、被写体を撮像するための画像領域が設けられている。この画像領域は、基準画像用撮像領域13aと比較画像用撮像領域13bの2つの画像領域に分割されている。また、この2つの撮像領域13a、13bに対向して2つのレンズ(不図示)が設置されている。撮像素子13は、被写体を撮像することにより、各レンズにより集光された被写体の像を基準画像用撮像領域13aおよび比較画像用撮像領域13bのそれぞれに結像する。なお、本発明のカメラは撮像素子13に相当する。また、本発明の基準画像用撮像部は、撮像素子13の基準画像用撮像領域13aに対応した部分に相当し、本発明の比較画像用撮像部は、撮像素子13の比較画像用撮像領域13bに対応した部分に相当する。
【0070】
撮像素子13は、基準画像用撮像領域13a内に結像された被写体の像から得られる被写体画像から基準画像を生成し、比較画像用撮像領域13b内に結像された被写体の像から得られる被写体画像から比較画像を生成する。なお、撮像素子13は基準画像および比較画像が結合した画像を信号処理部20aに入力する。第1の実施の形態と同様に、基準画像はマッチング処理部40による処理の基準となる画像であり、比較画像はマッチング処理部40による処理で基準画像と比較するための画像である。
【0071】
信号処理部20aは、撮像素子13から入力される結合画像に対して、例えばNTSCなどに対応した信号処理を行い、信号処理後に結合画像を基準画像と比較画像の2つに分割する処理を行う。なお、分割された基準画像および比較画像は、撮像素子13aにより同時に撮影されているので、互いに同期しており、走査方向も互いに等しい。また、撮像装置1001の初期設定時などにおいて、分割された基準画像および比較画像は、垂直方向で対応するように調整される。そして、マッチング処理部40には、撮像素子13の基準画像用撮像領域13aから第1の画素データが、撮像素子13の比較画像用撮像領域13bから第2の画素データが、それぞれ入力される。
【0072】
次に、本発明の第2の実施の形態の撮像装置1001全体の動作について、図に基づいて説明する。
図5において、まず、基準画像および比較画像の結合画像が撮像部13により撮像され、信号処理部20aに入力される。信号処理部20aは、結合画像に対して所定の信号処理を行い、基準画像と比較画像の2つに分割する。そして、マッチング処理部40には、撮像素子13の基準画像用撮像領域13aから第1の画素データが、撮像素子13の比較画像用撮像領域13bから第2の画素データが、それぞれ入力される。
【0073】
マッチング処理部40は、第1の実施の形態の説明と同様に、第1および第2のライン処理部440、450にて、第1の画素データおよび第2の画素データ間の差分を合計した差分積算値を入力ラインごとにそれぞれ求める。また、差分絶対値和算出部460にて、第1のライン処理部440によりライン毎に算出された差分積算値を垂直方向に積算した積算値から第2のライン処理部450によりライン毎に算出された差分積算値を垂直方向に積算した積算値を引いた値であるSADを、第1の画素データに対する第2の画素データの遅延量ごとに算出する。さらに、マッチング処理部40は、複数のSADに基づいて遅延量を求め、この遅延量に基づいて基準画像700の照合エリア710aに対応するエリアを比較画像の中から対応エリアとして特定して求める。距離算出部50も、第1の実施の形態の説明と同様に、マッチング処理部40により求められる対象エリアと照合エリア710aとの位置関係に基づいて、照合エリアに映る対象物までの距離を算出し、これを距離情報として出力する。
【0074】
このような本発明の第2の実施の形態の撮像装置1001によれば、基準画像撮像部および比較画像撮像部は、一の撮像素子13の撮像領域を基準画像用撮像領域13aと比較画像用撮像領域13bとに分割することにより構成されている。これにより、2つの撮像部を1つの撮像素子13で構成することができ、撮像装置1001の構成を簡素とすることができ、製造コストを低減することができる。また、基準画像700および比較画像800は、互いに同じ撮像素子13の撮像面で生成されるので、基準画像700および比較画像800の間で入力ラインの関係が共通する画像信号を簡単に得ることができる。このため、基準画像700および比較画像800の間で、画像信号の同期処理などの調整処理を簡略化することができ、更には製造コストやメンテナンスコストを低減することができる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明は、基準画像または比較画像の出力に対して遅れることなく、対象物までの距離を基準画像および比較画像からリアルタイムで求めることができるという効果を有し、例えばステレオカメラにより互いに同期して撮像された2つの画像から、対象物までの距離を算出する撮像装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施の形態における撮像装置のマッチング処理部の構成を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態における撮像装置の構成を示すブロック図
【図3】(a) マッチング処理に用いる基準画像の例を示す図 (b) マッチング処理に用いる比較画像の例を示す図
【図4】(a) 差分絶対値和算出部の機能および動作の概略を説明するための図 (b) 差分絶対値和算出部の機能および動作の概略を説明するための図
【図5】本発明の第2の実施の形態における撮像装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0078】
10、10a 撮像部
11 基準画像用撮像素子
12 比較画像用撮像素子
13 撮像素子
13a 基準画像用撮像領域
13b 比較画像用撮像領域
20 基準画像用信号処理部
20a 信号処理部
30 比較画像用信号処理部
40 マッチング処理部
410 画素遅延部
420 基準画像用ライン遅延部
430 比較画像用ライン遅延部
440 第1のライン処理部
441 画素保持部
442 差分絶対値算出部群
4421 差分絶対値算出部
443 差分絶対値積算部群
4431 差分絶対値積算部
450 第2のライン処理部
451 画素保持部
452 差分絶対値算出部群
4521 差分絶対値算出部
453 差分絶対値積算部群
4531 差分絶対値積算部
460 差分絶対値和算出部
4601 単位差分絶対値和算出部
50 距離算出部
1000、1001 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して、基準画像を生成する基準画像撮像部と、
被写体を撮像して、前記基準画像と同期して比較画像を生成する比較画像撮像部と、
前記基準画像撮像部により生成された前記基準画像中のm×n画素(mは画素データの入力ライン方向の画素数、nは入力ライン方向に対して垂直方向の画素数)からなる所定の照合エリアに対応する前記比較画像中のエリアを対応エリアとして求めるマッチング処理部と、
前記マッチング処理部により求められた前記対応エリアと前記照合エリアとの位置関係に基づいて、前記照合エリアに映る対象物までの距離を算出する距離算出部とを有する撮像装置であって、
前記マッチング処理部は、
前記基準画像撮像部から入力される第1の画素データおよび前記比較画像撮像部から入力される第2の画像データを入力ラインごとに処理する処理部であって、前記基準画像撮像部から順次入力される第1の画像データのうちで前記照合エリアに対応する画素の画素データと、前記比較画像撮像部から順次入力される第2の画素データとの差分を求め、求めた差分を合計して前記入力ラインにおける差分積算値を算出する処理を、前記第1の画素データに対する前記第2の画素データの遅延量を変えて行い、該遅延量ごとに差分積算値を算出する第1のライン処理部と、
前記基準画像撮像部からnライン遅延して入力される第1の画素データおよび前記比較画像撮像部からnライン遅延して入力される第2の画素データを入力ラインごとに処理する処理部であって、前記基準画像撮像部から順次入力される第1の画素データのうちで前記照合エリアに対応する画素の画素データと、前記比較画像撮像部から順次入力される第2の画素データとの差分を求め、求めた差分を合計して前記入力ラインにおける差分積算値を算出する処理を、前記第1の画素データに対する前記第2の画素データの遅延量を変えて行い、該遅延量ごとに差分積算値を算出する第2のライン処理部と、
前記第1のライン処理部により算出された差分積算値を前記垂直方向に積算した積算値から前記第2のライン処理部により算出された差分積算値を前記垂直方向に積算した積算値を引いた差分絶対値和を算出する処理を前記遅延量ごとに行う差分絶対値和算出部と、
を備え、
前記差分絶対値和算出部により算出される差分絶対値和に基づいて前記比較画像の中から前記対応エリアを求めることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記基準画像撮像部および前記比較画像撮像部は、一のカメラの撮像領域を分割することにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−130308(P2010−130308A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302469(P2008−302469)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】