説明

撮像装置

【課題】撮像手段の移動に応じて、観察光学系における像の結像状態を補正することができる撮像装置を提供すること。
【解決手段】光学系210による像を撮像する撮像手段110と、前記光学系210による像を観察可能とする観察光学系131と、前記撮像手段110を前記光学系の光軸方向に駆動する駆動手段181と、前記駆動手段181による前記撮像手段110の移動に応じて前記観察光学系131による像の結像状態を変更する結像状態変更手段182と、を有することを特徴とする撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置においては、焦点調節レンズを移動させることにより、焦点調節が行われている。このような撮像装置において、焦点調節精度を高めるために、焦点調節レンズの移動に加えて、撮像素子の撮像面を移動させることにより、焦点調節する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−11021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一眼レフデジタルカメラのような光学ファインダ式カメラの場合には、撮像素子で撮像される像と、ファインダなどの観察光学系による像とが独立しているため、上記従来技術では、撮像素子の移動による焦点調節が行われた際の像の状態を、撮影者が確認することができないという問題があった。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、撮像手段を移動した場合の像の状態の変化を撮影者が確認することができる撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
請求項1に係る発明は、光学系(210)による像を撮像する撮像手段(110)と、前記光学系(210)による像を観察可能とする観察光学系(131)と、前記撮像手段(110)を前記光学系の光軸方向に駆動する駆動手段(181)と、前記駆動手段(181)による前記撮像手段(110)の移動に応じて前記観察光学系(131)による像の結像状態を変更する結像状態変更手段(182)と、を有することを特徴とする撮像装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の撮像装置において、前記観察光学系は前記光学系による像を結像する焦点板(131)を含み、前記結像状態変更手段(182)は前記焦点板(131)の前記光学系の光軸方向の位置を変えることを特徴とする撮像装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の撮像装置において、前記観察光学系は、前記光学系(210)による像を結像する焦点板(131)と、前記焦点板(131)に前記光学系(210)の像を結像する結像レンズ(134)とを含み、前記結像状態変更手段は前記結像レンズ(190)の光軸方向の位置を変えることを特徴とする撮像装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の撮像装置において、前記焦点板(131)の像の観察光学系による像の結像状態を変える視度調節手段(134)をさらに有し、前記視度調節手段(134)は、前記焦点板(131)の位置に応じて、前記観察光学系による像の結像状態を変化させることを特徴とする撮像装置である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮像装置において、前記光学系(210)を通る光束を検出して前記光学系(210)の焦点調節状態を検出する焦点検出手段(161)をさらに有し、前記焦点検出手段(161)で検出された焦点調節状態に応じて、前記撮像手段(110)の駆動量を決めることを特徴とする撮像装置である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の撮像装置において、前記光学系(210)を通る光束を検出して前記光学系(210)の焦点調節状態を検出する焦点検出手段(161)をさらに有し、前記焦点検出手段(161)で検出された焦点調節状態に応じて、前記焦点板(131)の駆動量を決めることを特徴とする撮像装置である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の撮像装置において、前記撮像手段(110)の移動量に応じて、前記焦点板(131)の駆動量を決めることを特徴とする撮像装置である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7に記載の撮像装置において、前記光学系(210)を通る光束を検出して前記光学系(210)の焦点調節状態を検出する焦点検出手段(161)をさらに有することを特徴とする撮像装置である。
【0015】
請求項9の発明は、請求項5,6,8のいずれか1項に記載の撮像装置において、前記焦点検出手段(161)で検出された前記光学系(210)の焦点調節状態に応じて前記光学系(210)を駆動した後に、前記撮像手段(110)を駆動することを特徴とする撮像装置である。
【0016】
請求項10の発明は、請求項5,6,8,9のいずれか1項に記載の撮像装置において、前記焦点検出手段(161)の起動に伴って、前記撮像手段(110)の位置および前記観察光学系(131)による像の結像状態を初期状態に戻すことを特徴とする撮像装置である。
【発明の効果】
【0017】
上記発明によれば、撮像手段を移動した場合の像の状態の変化を撮影者が確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下においては、上記発明を一眼レフデジタルカメラに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。ただし上記発明は、銀塩フィルムカメラなどのその他の撮像装置にも適用することができる。
【0019】
図1は、本実施形態に係る一眼レフデジタルカメラ1を示すブロック図であり、上記発明のレンズ鏡筒および撮像装置に関する構成以外のカメラの一般的構成については、その図示と説明を一部省略する。
【0020】
本実施形態の一眼レフデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とを備え、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とは着脱可能に結合されている。
【0021】
レンズ鏡筒200には、フォーカスレンズ211やズームレンズ212を含むレンズ群210や絞り装置220などからなる撮影光学系が内蔵されている。
【0022】
フォーカスレンズ211は、その光軸L1に沿って移動可能に設けられ、フォーカスレンズエンコーダ260によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ230によってその位置が調節される。そして、フォーカスレンズエンコーダ260で検出されたフォーカスレンズ211の位置情報は、レンズ制御部250を介して後述するレンズ駆動制御部165へ送信される。また、フォーカスレンズ駆動モータ230は、後述する焦点検出結果に基づいて演算されたレンズ駆動量Δd1に応じて、レンズ駆動制御部165からレンズ制御部250を介して送信される駆動信号により駆動する。
【0023】
絞り装置220は、上記撮影光学系を通過して撮像素子110に至る光束の光量を制限するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能とされている。絞り装置220による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された絞り値に応じた信号が、カメラ制御部170からレンズ制御部250を介して絞り駆動部240へ送信されることにより行われる。また、開口径の調節は、カメラボディ100に設けられた操作部150によるマニュアル操作により、設定された絞り値に応じた信号がカメラ制御部170からレンズ制御部250を介して絞り駆動部240へ送信されることによっても行われる。
【0024】
レンズ鏡筒200にはレンズ制御部250が設けられている。レンズ制御部250はマイクロプロセッサとメモリなどの周辺部品とから構成され、カメラ制御部170と電気的に接続され、このカメラ制御部170からデフォーカス量や絞り制御信号などの情報を受信するとともに、カメラ制御部170へレンズ情報を送信する。
【0025】
一方、カメラボディ100は、被写体からの光束を撮像素子110、ファインダ135、測光センサ137及び焦点検出モジュール161へ導くためのミラー系120を備える。このミラー系120は、回転軸123を中心にして被写体の観察位置と撮影位置との間で所定角度だけ回転するクイックリターンミラー121と、このクイックリターンミラー121に軸支されてクイックリターンミラー121の回動に合わせて回転するサブミラー122とを備える。図1においては、ミラー系120が被写体の観察位置にある状態を実線で示し、被写体の撮影位置にある状態を二点鎖線で示す。
【0026】
ミラー系120は、被写体の観察位置にある状態では光軸L1の光路上に挿入される一方で、被写体の撮影位置にある状態では光軸L1の光路から退避するように回転する。
【0027】
クイックリターンミラー121はハーフミラーで構成され、被写体の観察位置にある状態では、被写体からの光束(光軸L1)の一部の光束(光軸L2,L3)を当該クイックリターンミラー121で反射してファインダ135および測光センサ137へ導き、一部の光束(光軸L4)を透過させてサブミラー122へ導く。これに対して、サブミラー122は全反射ミラーで構成され、クイックリターンミラー121を透過した光束(光軸L4)を焦点検出モジュール161へ導く。
【0028】
したがって、ミラー系120が観察位置にある場合は、被写体からの光束(光軸L1)はファインダ135、測光センサ137および焦点検出モジュール161へ導かれ、撮影者により被写体が観察されるとともに、露出演算やフォーカスレンズ211の焦点調節状態の検出が実行される。そして、撮影者がレリーズボタンを全押しするとミラー系120が撮影位置に回動し、被写体からの光束(光軸L1)は全て撮像素子110へ導かれ、撮影した画像データを図示しないメモリに保存する。
【0029】
焦点検出モジュール161は、被写体光を用いた位相差検出方式による自動合焦制御を実行するための焦点検出素子であり、サブミラー122で反射した光束(光軸L4)の、撮像素子110が初期位置にある場合における撮像素子110の撮像面と光学的に等価な位置に固定されている。
【0030】
図2は、図1に示す焦点検出モジュール161の構成例を示す図である。
【0031】
本例の焦点検出モジュール161は、コンデンサレンズ161a、一対の開口が形成された絞りマスク161b、一対の再結像レンズ161cおよび一対のラインセンサ161dを有し、フォーカスレンズ211の射出瞳の異なる一対の領域を通る一対の光束をラインセンサ161dで受光して得られる一対の像信号の位相ずれを周知の相関演算によって求めることにより焦点調節状態を検出する。
【0032】
そして、図2に示すように被写体Pが撮像素子110の等価面(予定結像面)161eで結像すると合焦状態となるが、フォーカスレンズ211が光軸L1方向に移動することで、結像点が等価面161eより被写体側にずれたり(前ピンと称される)、カメラボディ100側にずれたりすると(後ピンと称される)、ピントずれの状態となる。
【0033】
なお、被写体Pの結像点が等価面161eより被写体側にずれると、一対のラインセンサ161dで検出される一対の像信号の間隔Wが、合焦状態の間隔Wに比べて短くなり、逆に被写体像Pの結像点がカメラボディ100側にずれると、一対のラインセンサ161dで検出される一対の像信号の間隔Wが、合焦状態の間隔Wに比べて長くなる。
【0034】
すなわち、合焦状態では一対のラインセンサ161dで検出される像信号がラインセンサの中心に対して重なるが、非合焦状態ではラインセンサの中心に対して各像信号がずれる、すなわち位相差が生じるので、この位相差(ずれ量)に応じた量だけフォーカスレンズ211および撮像素子110を移動させることでピントを合わせる。
【0035】
図1に戻り、AF−CCD制御部162は、オートフォーカスモードにおいて、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dのゲインや蓄積時間を制御するもので、焦点検出位置として選択された焦点検出エリアに関する情報をカメラ制御部170から受け、この焦点検出エリアに相当する一対のラインセンサ161dにて検出された一対の像信号を読み出し、デフォーカス演算部163へ出力する。
【0036】
デフォーカス演算部163は、AF−CCD制御部162から送られてきた一対の像信号のずれ量をデフォーカス量dfに変換し、これを駆動量演算部164へ出力する。
【0037】
駆動量演算部164は、デフォーカス演算部163から送られてきたデフォーカス量dfに基づいて、当該デフォーカス量dfに応じたレンズ駆動量Δd1および撮像素子駆動量Δd2を演算する。そして、レンズ駆動量Δd1をレンズ駆動制御部165へ出力し、撮像素子駆動量Δd2をカメラ制御部170へ出力する。なお、撮像素子駆動量Δd2は、追い込み調節量であり、レンズ駆動量Δd1および撮像素子駆動量Δd2を決定するに際しては、まず、フォーカスレンズ211の移動精度に基づき、レンズ駆動量Δd1が決定される。次いで、レンズ駆動量Δd1に応じて、撮像素子110の移動精度を考慮して、追い込み調節量である撮像素子駆動量Δd2が決定される。
【0038】
レンズ駆動制御部165は、駆動量演算部164から送られてきたレンズ駆動量Δd1に基づいてレンズ駆動モータ230へ駆動指令を送出し、レンズ駆動量Δd1だけフォーカスレンズ211を移動させる。
【0039】
撮像素子110は、カメラボディ100の、被写体からの光束の光軸L1上であって、レンズ群210を含む撮影光学系の予定焦点面となる位置に設けられ、その前面にシャッター111が設けられている。この撮像素子110は、複数の光電変換素子が二次元に配列されたものであって、二次元CCDイメージセンサ、MOSセンサまたはCIDなどで構成することができる。この撮像素子110で光電変換された電気画像信号は、カメラ制御部170で画像処理されたのち図示しないメモリに保存される。なお、撮影画像を格納するメモリは内蔵型メモリやカード型メモリなどで構成することができる。
【0040】
また、撮像素子110は、光軸L1に沿って移動可能となっており、撮像素子エンコーダ(図示省略)によってその位置が検出されつつ撮像素子駆動モータ181によってその位置が調節される。そして、撮像素子エンコーダで検出された撮像素子110の位置情報は、カメラ制御部170を介してデフォーカス演算部163へ送信される。また、撮像素子駆動モータ181は、上述の焦点検出結果に基づいて演算された撮像素子駆動量Δd2に応じて、カメラ制御部170から送信される駆動信号により駆動する。
【0041】
一方、クイックリターンミラー121で反射された被写体からの光束は、焦点板131に結像し、ペンタプリズム133と接眼レンズ134とを介して撮影者の眼球に導かれる。
【0042】
焦点板131は、焦点板駆動モータ182により、光軸L2、L3に沿って移動可能に設けられている。焦点板駆動モータ182は、カメラ制御部170から送信される焦点板駆動量Δd3に応じて駆動し、これにより焦点板131は、撮像素子110と光学的に等価な面に位置するように、撮像素子110の移動量に応じて、光軸L2、L3に沿って移動する。
【0043】
透過型液晶表示器132は、焦点板131上の被写体像に焦点検出エリアマークなどを重畳して表示するとともに、被写体像外のエリアにシャッター速度、絞り値、撮影枚数などの撮影に関する情報を表示する。これにより、撮影準備状態において、ファインダ135を通して被写体およびその背景ならびに撮影関連情報などを観察することができる。
【0044】
接眼レンズ134は、焦点板131上に結像された被写体像および透過型液晶表示器132に表示された撮影に関する情報を、撮影者の眼球に導くためのレンズであり、接眼レンズ駆動モータ183により、光軸L2に沿って移動可能に設けられている。接眼レンズ駆動モータ183は、カメラ制御部170から送信される接眼レンズ駆動量Δd4に応じて駆動し、これにより接眼レンズ134は、焦点板131の移動に応じて、視度を調整するために、光軸L2に沿って移動する。
【0045】
操作部150は、シャッターレリーズボタン、ズームボタン、および撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、自動露出モード/マニュアル露出モード、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換や、オートフォーカスモードの中でも、ワンショットモード/コンティニュアスモードの切換が行えるようになっている。
【0046】
また、シャッターレリーズボタンは全押ししたときにシャッターがONされるが、これ以外にも、オートフォーカスモードにおいて当該ボタンを半押しするとフォーカスレンズ211および撮像素子110による合焦動作がONとなり、ボタンを離すとOFFになる。また、単写/連写設定ボタンも含まれ、連写モードでレリーズボタンを全押しすると1秒間に所定枚数の画像を撮影することができる。
【0047】
カメラボディ100にはカメラ制御部170が設けられている。カメラ制御部170はマイクロプロセッサとメモリなどの周辺部品から構成され、レンズ制御部250と電気的に接続され、このレンズ制御部250からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部250へデフォーカス量や絞り制御信号などの情報を送信する。また、カメラ制御部170は、上述したように撮像素子110から画像情報を読み出すとともに、必要に応じて所定の情報処理を施し、図示しないメモリに出力する。さらにカメラ制御部170は、駆動量演算部164から出力された撮像素子駆動量Δd2に基づき、焦点板駆動量Δd3および接眼レンズ駆動量Δd4を演算する。そして、撮像素子駆動量Δd2、焦点板駆動量Δd3および接眼レンズ駆動量Δd4に応じて、それぞれ、撮像素子駆動モータ181、焦点板駆動モータ182および接眼レンズ駆動モータ183へ駆動信号を送信する。
また、カメラ制御部170は、これらに加えて、撮影画像情報の補正やレンズ鏡筒200の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
【0048】
接眼レンズ134の近傍には、測光用レンズ136と測光センサ137が設けられ、焦点板131に結像した被写体光の一部を受光する。
【0049】
本例の測光センサ137は、二次元カラーCCDイメージセンサなどで構成され、受光した光束の輝度に応じた測光信号を所定の画素群ごとにカメラ制御部170へ出力し、撮影の際の撮像素子110の露出値を演算する。また、測光センサ137による画素ごと又は所定の画素群ごとの測光信号は、カメラ制御部170へ出力されて、撮影シーンの解析や認識にも用いられ、輝度や色彩に基づいて焦点調節対象の位置を解析または認識したり、人物撮影や風景撮影などの撮影モードの選択をしたり、各種画像処理に用いられる。
【0050】
次に、本例のカメラ1の動作を説明する。
図3は、本例のカメラ1の動作例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、ステップS1では、オートフォーカスモードにおいて撮影者がレリーズボタンを半押しすると、焦点検出モジュール161が起動する。そして、焦点検出モジュール161の起動に伴い、撮像素子モータ181が駆動し、撮像素子110の光軸L1上の位置を初期位置に戻す。また、同様に、焦点板駆動モータ182および接眼レンズ駆動モータ183が駆動し、焦点板131の光軸L2、L3上の位置、および接眼レンズ134の光軸L2上の位置を初期位置に戻す。
【0052】
ステップS2では、焦点検出モジュール161、AF−CCD制御部162およびデフォーカス演算部163により、光学系の焦点調節状態を検出し、焦点調節状態から像信号のずれ量を算出し、像信号のずれ量からデフォーカス量dfを算出する。
【0053】
ステップS3では、駆動量演算部164が、デフォーカス量dfと所定値Th1とを比較する。その結果、df≦Th1である場合にはステップS5に進み、一方、df>Th1である場合にはステップS4に進む。なお、所定値Th1としては特に制限されず、フォーカスレンズ211の移動精度に応じて設定すれば良いが、通常、フォーカスレンズ211の最小移動可能距離(移動できる最小単位)、あるいは、最小移動可能距離よりも若干大きな値とする。
【0054】
ステップS4では、駆動量演算部164が、デフォーカス量dfからレンズ駆動量Δd1を演算し、レンズ駆動量Δd1をレンズ駆動制御部165へ出力する。そして、レンズ駆動制御部165はレンズ駆動量Δd1に基づいてレンズ駆動モータ230へ駆動指令を送出し、レンズ駆動量Δd1だけフォーカスレンズ211を移動させる。フォーカスレンズ211を移動させた後、ステップS2に戻り、デフォーカス量dfを再度算出する。
【0055】
ステップS5では、駆動量演算部164が、ステップS2で検出されたデフォーカス量dfから撮像素子駆動量Δd2を演算し、カメラ制御部170に出力する。そして、カメラ制御部170は、撮像素子駆動量Δd2に基づいて撮像素子駆動モータ181へ駆動指令を送出し、撮像素子駆動量Δd2だけ撮像素子110を光軸L1に沿って移動させ、撮像面位置を移動させる。
【0056】
ステップS6では、カメラ制御部170が、撮像素子駆動量Δd2に応じた焦点板駆動量Δd3を演算し、これを焦点板駆動モータ182に出力する。そして、焦点板駆動モータ182は焦点板駆動量Δd3に応じて駆動し、これにより、焦点板131を、撮像素子110と光学的に等価な面に位置するように、撮像素子110の移動量に応じて、光軸L2、L3に沿って移動させる。なお、焦点板駆動量Δd3は、焦点板131上の結像面が撮像素子110の撮像面と光学的に等価な面に位置するように、通常、撮像素子駆動量Δd2と同じとされる。また、カメラ制御部170により、焦点板駆動量Δd3を演算する際には、駆動量演算部164により演算された撮像素子駆動量Δd2に応じて演算する代わりに、撮像素子110に備えられた撮像素子エンコーダ(図示省略)により検出された撮像素子110の移動後の位置に基づいて、演算しても良い。
【0057】
ステップS7では、カメラ制御部170が、焦点板駆動量Δd3に応じた接眼レンズ駆動量Δd4を演算し、これを接眼レンズ駆動モータ183に出力する。そして、接眼レンズ駆動モータ183はレンズ駆動量Δd4に応じて駆動し、これにより、接眼レンズ134を、焦点板131の移動に応じて、視度を調整するために、焦点板131の移動量に応じて、光軸L2、L3に沿って移動させる。
【0058】
なお、撮像素子110の移動(ステップS5)、焦点板131の移動(ステップS6)、および接眼レンズ134(ステップS7)は、必ずしも上記順番で行う必要はなく、上記と異なる順番で行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0059】
ステップS8では、焦点検出モジュール161、AF−CCD制御部162およびデフォーカス演算部163により、光学系の焦点調節状態を検出し、焦点調節状態から像信号のずれ量を算出し、像信号のずれ量からデフォーカス量dfを算出する。なお、ステップS8では、デフォーカス演算部163によりデフォーカス量dfを演算する際には、デフォーカス演算部163は、撮像素子110に備えられた撮像素子エンコーダ(図示省略)により検出された撮像素子110の移動後の位置をカメラ制御部170を介して取得し、撮像素子110の移動後の位置を考慮して、デフォーカス量dfの演算を行う。
【0060】
ステップS9では、駆動量演算部164が、デフォーカス量dfと、所定値Th2(Th2<Th1の関係にある。)とを比較する。その結果、df≦Th2である場合には、合焦と判定し、オートフォーカスを終了する。一方、df>Th2である場合には、ステップS5に戻り、ステップS8で検出したデフォーカス量dfに基づき、撮像素子110、焦点板131および接眼レンズ134の移動を行う。なお、所定値Th2としては特に制限されず、撮像素子110の移動精度に応じて設定すれば良いが、通常、撮像素子110の最小移動可能距離(移動できる最小単位)、あるいは、最小移動可能距離よりも若干大きな値とする。
【0061】
以上のように、本例のカメラ1によれば、撮像素子110を移動させて、撮像面位置を変更して追い込み調節をする際に、撮像素子110の移動量に応じて、焦点板131を移動させるため、焦点調節精度の向上が可能となり、しかも、撮影者が、撮像面位置の変更による追い込み調節の効果(像の結像状態の変化)を接眼レンズ134を通して確認することが可能となる。
【0062】
なお、以上説明した実施形態は、上記発明の理解を容易にするために記載されたものであって、上記発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、上記発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0063】
なお、本例のカメラ1においては、焦点板131を移動可能とする代わりに、図1に点線で示した観察光学系用結像レンズ190を、焦点板131の前面に設け、これを駆動手段(図示省略)により、光軸L2、L3に沿って移動させることにより、焦点板131上に結像される像を調整するような構成としても良い。
【0064】
また、本例のカメラ1においては、焦点検出モジュール161を用いた焦点調節以外にも、撮像素子110を構成する画素の配列中に対となる焦点検出画素を設け、レンズ郡210の瞳の異なる領域を通過した一対の光束の結像位置の違いに基づいて合焦位置を検出する瞳分割位相差方式による自動焦点調節を用いることもできる。この場合においては、撮像素子110の光軸L1上の位置に関係なく、位相差を直接検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は本実施形態に係る一眼レフデジタルカメラを示す要部構成図である。
【図2】図1の焦点検出モジュールを示す図である。
【図3】図1のカメラの動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1…一眼レフデジタルカメラ
100…カメラボディ
110…撮像素子
131…焦点板
134…接眼レンズ
161…焦点検出モジュール
170…カメラ制御部
181…撮像素子駆動モータ
182…焦点板駆動モータ
183…接眼レンズ駆動モータ
200…レンズ鏡筒
210…レンズ群
220…絞り装置
230…フォーカスレンズ駆動モータ
240…絞り駆動装置
250…レンズ制御部
260…フォーカスレンズエンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系による像を撮像する撮像手段と、
前記光学系による像を観察可能とする観察光学系と、
前記撮像手段を前記光学系の光軸方向に駆動する駆動手段と、
前記駆動手段による前記撮像手段の移動に応じて前記観察光学系による像の結像状態を変更する結像状態変更手段と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記観察光学系は前記光学系による像を結像する焦点板を含み、
前記結像状態変更手段は前記焦点板の前記光学系の光軸方向の位置を変えることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記観察光学系は、前記光学系による像を結像する焦点板と、前記焦点板に前記光学系の像を結像する結像レンズとを含み、
前記結像状態変更手段は前記結像レンズの光軸方向の位置を変えることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の撮像装置において、
前記焦点板の像の観察光学系による像の結像状態を変える視度調節手段をさらに有し、
前記視度調節手段は、前記焦点板の位置に応じて、前記観察光学系による像の結像状態を変化させることを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮像装置において、
前記光学系を通る光束を検出して前記光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段をさらに有し、
前記焦点検出手段で検出された焦点調節状態に応じて、前記撮像手段の駆動量を決めることを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の撮像装置において、
前記光学系を通る光束を検出して前記光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段をさらに有し、
前記焦点検出手段で検出された焦点調節状態に応じて、前記焦点板の駆動量を決めることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の撮像装置において、
前記撮像手段の移動量に応じて、前記焦点板の駆動量を決めることを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の撮像装置において、
前記光学系を通る光束を検出して前記光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段をさらに有することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項5,6,8のいずれか1項に記載の撮像装置において、
前記焦点検出手段で検出された前記光学系の焦点調節状態に応じて前記光学系を駆動した後に、前記撮像手段を駆動することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項5,6,8,9のいずれか1項に記載の撮像装置において、
前記焦点検出手段の起動に伴って、前記撮像手段の位置および前記観察光学系による像の結像状態を初期状態に戻すことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−2472(P2010−2472A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159103(P2008−159103)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】