説明

撮像装置

【課題】例えば焦電素子を使用した赤外線撮像素子を備える撮像装置など、温度変化を検出して被写体画像を得るようにされた撮像装置に必要とされる上記撮像素子のシャッタ部のサイズを小型化して、撮像装置の小型化を図る。
【解決手段】撮像素子における一部の画素のみに電磁波が照射される一部画素選択状態が、上記一部の画素を逐次変更しながら時分割的に得られるように上記撮像素子に対する上記電磁波の照射/遮蔽を行うようにする。これにより、上記電磁波を遮蔽するための構成としては、時間経過と共に遮蔽する画素を変化させることのできるものであれば足るものとでき、例えば上記撮像素子に近い大きさの遮蔽材(シャッタ部材)や液晶シャッタ等、従来の光チョッパー101に比べて非常に小型なものを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関わり、赤外線等の電磁波から画像を得る場合に好適なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2004−317152号公報
【背景技術】
【0003】
従来から、例えば、赤外線を検出する画素で構成される赤外線センサを用いて物体を撮像し、撮像対象の物体の温度を測定する赤外線撮像装置(サーモグラフィ等)が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
この赤外線撮像装置は、レンズと撮像素子とから構成されているが、これら2つの構成要素に、それぞれ非常に高価なデバイスを使用している。レンズには、赤外線波長領域での透過率の良好な、Ge(ゲルマニウム)、ZnS(硫化亜鉛)、Si(シリコン)等の非常に高価なレンズ群を使用しなければならない。
例えば、Geレンズは一枚1万円〜5万円であり、レンズを2枚から5枚組にして使用している。そのため、必要な解像度にもよるが、レンズ群だけでトータル2万円〜25万円ものコストになってしまう。
現状のGeレンズに使用されるゲルマニウムは希少金属であり、市場流動量が非常に少ないために、材料単価が5万円〜18万円/kgと非常に高価である。
【0005】
レンズの代替材料として、例えば、より安価なZnS(硫化亜鉛)を使用することが考えられる。しかしながら、ZnSは、材料単価は安いが、加工生産性が悪いために加工コストがかさむことになる。その結果、レンズとしての価格がGeレンズとそれほど変わらなくなってしまう。
Siレンズは、Geレンズよりは廉価であるが、遠赤外領域(8〜14μm)での透過率が落ちるために、サーモグラフィには不向きである。
【0006】
従って、希少金属を使わずに、コストが安く透過率も落とさないレンズは、現在実現されていない。上述したように、遠赤外線サーモグラフィを代表としたテラヘルツ波全般用の撮像装置に於いて、安価なレンズが提案されていない。
【0007】
一方、撮像素子は、マイクロボロメータと呼ばれる、VOx(酸化バナジウム)で作られた画素を一つ一つ空中で支持する中空構造となっている。
この中空構造が必要とされる理由は、熱型の赤外線センサであり、かつVOx素子の感度が低いので、回路系の自己発熱等によるノイズレベルとのS/Nが悪く、熱絶縁のために中空構造にせざるを得ないからである。
【0008】
そのため、このマイクロボロメータは、生産性が非常に悪く、非常に高価なデバイスとなっていた。
VOxは、希少金属であり、さらに、中空構造を作るための製造工程数が多くなるために、製造コストがかさみ、マイクロボロメータが高価になる原因となっている。
【0009】
現状では、上述した高コストの構成であるために、赤外線撮像装置としての価格が低画素品で60万円、高画素品で900万円程となっている。このため、赤外線撮像装置は、業務用市場向けのみが製品化されており、民生用として市場を拡大するに至っていない。
【0010】
遠赤外線サーモグラフィ以外のテラヘルツ波撮像装置も、サーモグラフィと同様の状況であり、サーモグラフィと比較しても、更に高価なのもある。
【0011】
現状の遠赤外線サーモグラフィの用途としては、産業用の設備温度管理、防衛/保安上の物体温度検出、高級車用の夜間人体検出用ナイトビジョン、医療用の体温検出程度に限られており、全世界出荷量でも年間1万台〜2万台程度にとどまっている。
さらに、テラヘルツ波用の撮像装置に至っては、殆ど生産されていないのが実情である。
【0012】
従来の赤外線撮像装置(サーモグラフィ等)やテラヘルツ撮像装置等の撮像装置と比較して、安価に赤外線センサを構成するには、例えば、焦電素子を使用することが考えられる。 焦電素子を遠赤外線検出用途に使用した例としては、自動ドア、エアコン、TVの前に人が居ることを検出する人感センサ等が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、これまで提案されている、焦電素子を使用した赤外線センサは、単画素や4画素程度までの構成であり、それらも被写体をイメーイングするようなものではなく、人が横切るかどうかを検出するだけしか機能が無かった。
これは、焦電素子は温度変化に応じてその出力が変化するため、静定している対象物は検出できないからである。
【0014】
そのため、焦電素子を使用したイメージャで撮像するためには、チョッパー機能として、イメージャの全面を解放と遮光を繰り返す光チョッパーを用いなければならない。
例えば、図27に示すように、焦電素子を使用したイメージャ(撮像素子)103の前に、遮光材として、開口102を有する円形の光チョッパー101を配置する。そして、一点鎖線で示す中心線を回転軸として、光チョッパー101を回転させることにより、光Lがイメージャ103に照射されたり、遮光されてイメージャ103には照射されなくなったりする。これにより、入射する光Lに対して、イメージャ103の焦電素子から出力を得て、被写体の画像を得ることができる。
【0015】
しかし、この構成とした場合には、図27から明らかなように、光チョッパー101自体が大型なものとなり、また光チョッパー101を回転させるために、入射する撮像用の光Lの範囲に対して非常に大きなスペースが必要となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では上記の課題に鑑み、撮像装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の撮像装置は、複数個の画素を有する撮像素子と、上記撮像素子における一部の画素に対して電磁波が照射され且つ上記一部の画素以外の画素に対して上記電磁波が遮蔽される一部画素選択照射状態が、上記電磁波が照射される上記一部の画素を逐次変更しながら時分割的に得られるように、上記撮像素子に対する上記電磁波の照射/遮蔽を行う照射/遮蔽部とを備えるものである。
【0017】
上記のように本発明では、従来の光チョッパー101のように全画素を対象として照射/遮蔽を選択する構成とはせず、撮像素子における一部の画素のみに電磁波が照射される一部画素選択状態が、上記一部の画素を逐次変更しながら時分割的に得られるように上記撮像素子に対する上記電磁波の照射/遮蔽を行うものとしている。
このようにすることで、上記電磁波を遮蔽するための構成としては、時間経過と共に遮蔽する画素を変化させることのできるものであれば足るものとでき、例えば上記撮像素子に近い大きさの遮蔽材(シャッタ部材)や液晶シャッタ等、従来の光チョッパー101に比べて非常に小型なものを用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、静定している対象物を撮像するために必要とされるシャッタ部の大きさを従来よりも大幅に小型化することができる。
この結果、撮像装置の小型化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態における第1例としての撮像装置の概略構成図(斜視図)である。
【図2】図1の撮像装置のイメージャ及び遮蔽材の平面図である。
【図3】図1及び図2の遮蔽材を上下に駆動させたときの2つの状態の平面図である。
【図4】図1のイメージャの画素からの信号出力の波形を示す図である。
【図5】チョッパー周波数と焦電素子の電荷電圧変換後の出力電圧との関係を示す図である。
【図6】第1の実施の形態としての撮像装置の全体的な内部構成を示した図である。
【図7】第2例としての撮像装置の概略構成図(斜視図)である。
【図8】図7の撮像装置のイメージャ及び遮蔽材の平面図である。
【図9】図7及び図8の遮蔽材を上下に駆動させたときの2つの状態の平面図である。
【図10】第3例としての撮像装置の概略構成図である。
【図11】第4例としての撮像装置の概略構成図である。
【図12】隣り合う位置の画素で被写体が同一であるようにするための撮像レンズ最小スポット径と画素サイズとの関係について説明するための図である。
【図13】第2の実施の形態としての撮像装置の全体的な内部構成を示した図である。
【図14】遮蔽状態の画素の値を補完する手法について説明するための図である。
【図15】撮像素子と遮蔽材との間のギャップと画像ボケ領域との関係について説明するための図である。
【図16】第3の実施の形態の撮像装置が備えるイメージャと遮蔽材とを平面図により示している。
【図17】第3の実施の形態としての遮蔽材の駆動手法について説明するための図である。
【図18】第3の実施の形態としてのイメージャの読み出し手法について説明するための図である。
【図19】第3の実施の形態としての撮像装置の全体的な内部構成を示した図である。
【図20】第4の実施の形態の撮像装置が備えるイメージャと遮蔽材とを平面図により示している。
【図21】遮蔽材の駆動方向が反転する最に開口部が位置する画素と、それ以外の画素とで出力差が生じることについて説明するための図である。
【図22】第4の実施の形態としての遮蔽材の駆動手法について説明するための図である。
【図23】第4の実施の形態としての駆動手法により遮蔽材を駆動した場合における各画素の時間経過に伴う輝度の変化を模式的に示した図である。
【図24】第4の実施の形態としての撮像装置の全体的な内部構成を示した図である。
【図25】圧電素子アクチュエータを用いたシャッタ部の構成例を示した図である。
【図26】圧電素子アクチュエータによる遮蔽材の駆動態様を示した図である。
【図27】焦電素子からなるイメージャに従来の光チョッパーを設けた構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.第1の実施の形態(単純往復運動&単純出力)>
[1-1.第1例(市松状配列)]
[1-2.第2例(縞状配列)]
[1-3.第3例(クリアビット配列)]
[1-4.第4例(複数行単位配列)]
<2.第2の実施の形態(単純往復&差動出力)>
<3.第3の実施の形態(往復範囲可変:開口部境界付近の画像ボケ抑制)>
<4.第4の実施の形態(往復範囲可変:駆動方向反転時の出力差抑制)>
<5.変形例>
【0021】
<1.第1の実施の形態(単純往復運動&単純出力)>
[1-1.第1例(市松状配列)]

図1は、本発明の第1の実施の形態における第1例としての撮像装置の概略構成図(斜視図)を示している。
ここで、以下の説明においては、電磁波として赤外線を撮像の対象とする撮像装置に本発明が適用される場合を例示する。
【0022】
図1に示すように、本例の撮像装置には、イメージャ3と、イメージャ3に対して電磁波を照射/遮蔽するための構成としてのシャッタ部2とが設けられる。シャッタ部2は、イメージャ3に赤外線を照射するための後述する開口部(21A)が形成された遮蔽材21と、当該遮蔽材21を往復運動させるための構成(後述するコイル22やマグネット23等)とを含むものである。
【0023】
図1の撮像装置のイメージャ3及び遮蔽材21の平面図を、図2に示す。
イメージャ3は、焦電素子を用いた撮像素子によって構成され、矩形の画素が縦横に碁盤の目状に配置されている。ここでは、画素を、Aのグループの画素12とBのグループの画素13とに分けており、Aのグループの画素(以下、A画素とする)12及びBのグループの画素(以下、B画素とする)13が、交互に市松状に配置されている。
焦電素子の材料としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の自発分極を持つ材料を使用することができる。
焦電素子においては、光の入射により自発分極の変化に対応した電荷が得られるので、この電荷を電荷電圧変換して、電圧信号(輝度値)を得る。
【0024】
遮蔽材21は、電磁波を通過させる開口部21Aと、その他の開口ではない部分(電磁波を遮蔽する部分)とを有している。
本例の場合、開口部21Aのサイズは、イメージャ11の画素サイズとほぼ同じサイズ又はやや小さいサイズである。
遮蔽材21は、開口部21Aとそれ以外の部分とが、交互に市松状に配置されている。
【0025】
図1に戻り、シャッタ部2においては、遮蔽材21の上と下にそれぞれ接続してコイル22が設けられ、それぞれのコイル22の外側に対向して、マグネット23が配置されている。
これにより、コイル22に電流を流すことによって発生した電流磁場を利用して、マグネット23からの磁場との作用により、遮蔽材21を左の矢印に示すように、上下に駆動させることができる。即ち、コイル22及びマグネット23によって、VCM(ヴォイスコイルモータ)を構成している。
遮蔽材21の四隅には、それぞれ、ワイヤーサスペンション24の一端が接続されており、各ワイヤーサスペンション24の他端に板状のサスペンションホルダ25が接続されている。
4本のワイヤーサスペンション24のうち、少なくても一本は+電極となっており、別の少なくても一本は−電極となっており、これらの電極を通じて、コイル22へ通電を行うことができる。これにより、コイル22に対峙するマグネット23の磁界に対して、電磁誘導により、遮蔽材21の駆動を行うことができる。
【0026】
遮蔽材21を上下に駆動させたときの2つの状態の平面図を、図3(a)及び図3(b)に示す。
本例においては、遮蔽材21を上下に往復運動させる。このことにより、A画素12が開口部21Aに臨む第1の状態(図3(a))と、B画素13が開口部21Aに望む第2の状態とが繰り返し得られるものとなる。
第1の状態では、A画素12に電磁波が入射し、B画素13には電磁波が入射しない。また第2の状態では、B画素13に電磁波が入射し、A画素12には電磁波が入射しない。
【0027】
このとき、第1の状態と第2の状態との間の遷移での遮蔽材21の移動量は、図から明らかなように約1画素分である。
このように、遮蔽材21の移動量が約1画素分であるため、駆動する方向における遮蔽材21の大きさは、少なくともイメージャ11の大きさ+1画素分で済み、撮像装置を小型化できる。
確認のため述べておくと、この場合、遮蔽材21の駆動に必要なスペースは、遮蔽材21の大きさ+1画素分(=イメージャ11の大きさ+2画素分)で済み、この点でも省スペースが図られることになる。
【0028】
次に、イメージャ11の画素12,13からの信号出力の波形を、図4に示す。
図4の上側はA画素12の生出力を示し、下側はB画素13の生出力を示している。なお図4において、0Vは基準の電圧である。
【0029】
以下、状態の遷移を説明する。
先ず、期間P1は、開口部21AがB画素13上に位置した状態(つまりB画素13が照射状態)で遮蔽材21が静定している期間である。この期間P1としての静定状態では、被写体が動かない限り、電荷は出ず、電荷電圧変換後も0Vとなる。
【0030】
期間P2では、B画素13への照射状態からA画素12への照射状態へ遷移していく。これにより、A画素12には電磁波が徐々に高まって入るため、A画素12の出力は0Vから徐々に+方向に上昇し、開口部21Aが完全にA画素12上に位置したタイミング(完全に照射状態となったタイミング)でピーク値(正のピーク値)を迎える。
一方、B画素13は電磁波が徐々に低下していくため、その出力は0Vから徐々に−方向へ低下していき、遮蔽材21により完全に遮蔽されたタイミングでピーク値(負のピーク値)を迎える。
このとき、A画素12の入射光輝度は、「被写体の温度からの電磁波−遮蔽材21の温度からの電磁波」に相当する。また、B画素13の遮蔽時輝度は、「遮蔽材21の温度からの電磁波−被写体の温度からの電磁波」に相当するものである。
【0031】
なお、上記のようなA画素12、B画素13の+方向への出力と−方向への出力とは、撮像装置の構成(焦電素子の自発分極の方向や回路構成等)によっては、+と−とが逆になる場合もある。
【0032】
そして、前述した1画素分の往復運動により、次の期間P3では、A画素12への照射状態からB画素13への照射状態へ遷移していくことになる。
これによっては、期間P2とは逆に、A画素12の出力は徐々に低下していき遮蔽材21により当該A画素12が完全に遮蔽されたタイミングでピーク値(負のピーク値)を迎える。また、B画素13の出力は徐々に上昇していき、開口部21Aにより当該B画素13が完全な照射状態となったタイミングでピーク値(正のピーク値)を迎える。
【0033】
以降も同様に、A画素12が完全に照射状態となる期間P4,P6,P8ではA画素12の出力が徐々に上昇して正のピーク値が得られ、またB画素13の出力が徐々に低下して負のピーク値が得られるようになる。
また、B画素13が完全に照射状態となる期間P5,P7ではB画素13の出力が徐々に上昇して正のピーク値が得られ、またA画素12の出力が徐々に低下して負のピーク値が得られるようになる。
なお図4において、遮蔽材21の往復運動は期間P8までであり、期間P9においてはA画素12及びB画素13の出力が共に0Vとなることが示されている。
【0034】
第1の実施の形態では、遮蔽材21の往復運動によって得られるA画素12、B画素13のそれぞれのピーク値(完全照射状態となったタイミングでのピーク値)を用いて、イメージャ3の1フレーム分の撮像画像信号(全有効画素分の撮像画像信号)を得る。
具体的には、遮蔽材21の往復運動に伴い図4のように得られるA画素12、B画素13の出力電圧について、それぞれ、その正のピーク値の検出を行い、当該検出したA画素12、B画素13の正のピーク値を用いて撮像画像信号を得るものである。
【0035】
このとき、1フレーム分の撮像画像信号は、単純に、A画素12の正のピーク値とB画素13の正のピーク値とが得られたごとに、それらの値を順次出力することで得るようにもできる。すなわち、撮像のフレームレート(遮蔽材21を1往復させる周期:或る画素が完全照射状態から次の完全照射状態になる周期)と、出力のフレームレート(1フレーム分の撮像画像信号を出力する周期)とを一致させるものである。
しかしながら、撮像のフレームレートは、焦電センサとしてのイメージャ3の検出感度を大きく左右するものとなるので、実際に設定される出力のフレームレートとの関係によっては、撮像のフレームレート=出力のフレームレートとすることが困難となる場合もある。
【0036】
図5は、チョッパー周波数(遮蔽材21を1往復させる周期:撮像フレームレート)と焦電素子の電荷電圧変換後の出力電圧との関係を示している。
図5(a)に示すように、チョッパー周波数が高くなると、焦電素子の特性として、焦電素子の出力電圧も増大する。これにより、イメージャ3の感度も向上するため、更なる高感度化が実現される。
なお、図5(b)には、図5(a)よりもさらに広い範囲の周波数における、周波数と焦電素子の電荷電圧変換後の出力電圧との関係を示しているが、当該図5(b)を参照して分かるように、周波数が高くなることによる出力電圧の増大には限界があり、ピークを過ぎると出力電圧が減少していき、108Hz(=100MHz)以上では出力電圧がほとんど得られなくなる。104Hz(=10kHz)程度の周波数までは、25μV以上の大きい出力電圧が得られる。
【0037】
ここで、一般的な出力フレームレートとしては例えば30Hzや60Hzを挙げることができる。
図5(a)を参照すると、仮に、出力フレームレートを30Hzや60Hzとすべき場合には、前述のように撮像フレームレート=出力フレームレートとしてしまうと、感度の比較的低い領域でイメージャ3を使用することとなってしまう。
この点を考慮すると、撮像フレームレートとしては、例えば120Hz以上などの比較的高い周波数に設定しておき、30Hzや60Hzといった一般的な出力フレームレートに対応させるために、何らかの工夫を凝らすことが有効となる。
【0038】
この点に鑑み本実施の形態においては、出力フレームレートをF[Hz]、撮像フレームレートをn×F[Hz](nは2以上の整数)として、n回撮像して得られた輝度を積分又は平均化することにより、1フレーム分の撮像画像信号を得るようにするという手法を採る。
例えば、出力フレームレートF=30Hzであるとして、撮像フレームレートを120(4×F)Hzに設定し、4回分得られるA画素12の出力、B画素13の出力をそれぞれ積分又は平均化する。そして、当該積分又は平均化により得られた各画素の値で構成される撮像画像信号を、1フレーム分の画像信号として出力する。
【0039】
このような手法によれば、イメージャ3の感度を高く維持できる。なおかつ、上記積分又は平均化によって信号ノイズを低減でき、撮像画像信号のS/Nも向上できる。
【0040】
上記により説明したような第1の実施の形態としての撮像手法によれば、A画素12、B画素13を交互に照射状態に遷移させることで意図的に温度差を生じさせることができ、被写体が動かなくても、被写体の温度分布を撮像して画像を得ることができる。換言すれば、被写体の通過を検出するだけでなく、被写体を撮像することができる。
【0041】
また、第1の実施の形態の撮像手法によれば、イメージャ3として、焦電素子で構成されたものを用いることができる。
これにより、従来のマイクロボロメータを用いた場合と比較して、イメージャ3を安価で構成することができるので、撮像装置全体の価格も大幅に低減することができる。
このように撮像装置全体の価格を大幅に低減することができることにより、撮像装置の使用用途を、従来の限定的な研究及び産業用途から、様々なアプリケーションの民生用に普及させることが可能になる。そして、民生用途において、従来にないアプリケーションを実現することが可能になる。
【0042】
また、第1例においては、遮蔽材21における開口部21Aとそれ以外の部分との配置を市松状として、A画素12に電磁波が照射状態となる第1の状態とB画素13に電磁波が照射状態となる第2の状態とが時分割的に得られるように、イメージャ3に対する電磁波の照射/遮蔽を行うものとしている。
このようにすることで、遮蔽材21としてはイメージャ3に近い大きさのものとすることができ、従来の光チョッパー101を用いる場合より撮像装置を小型化できる。
【0043】
ここで、上記のように第1の実施の形態の手法によれば、被写体が静定していてもその温度分布を撮像した画像を得ることができるが、このとき検出される被写体の温度は、絶対的な温度ではなく、あくまで、遮蔽材21の温度を基準とした相対的な温度となる。
【0044】
本実施の形態では、被写体の温度分布として絶対的な温度分布が検出されるようにすべく、以下のような手法を採るものとしている。
すなわち、遮蔽材21の近傍に当該遮蔽材21の温度を検出するための温度センサやサーミスタを設け、その検出温度に基づき、イメージャ3により検出される上記相対的な温度を校正するというものである。
【0045】
図6は、上記により説明した第1の実施の形態としての撮像手法を実現するための撮像装置の全体的な内部構成を示している。
先ず、撮像装置には、撮像レンズ1が設けられる。
撮像レンズ1の材料は、対象とする電磁波を透過する材料であれば、特に限定されない。
本例のように対象とする電磁波が赤外線である場合、従来提案されているGeレンズやSiレンズの他に、これらのレンズより安価な材料からなり、赤外線を透過させることが可能なレンズを使用することもできる。また、今後開発される赤外線用のレンズ材料も使用することが可能である。
【0046】
被写体からの電磁波は、当該撮像レンズ1を介した後、シャッタ部2(開口部21A)を介してイメージャ3に照射される。
先の図1に示したように、シャッタ部2には遮蔽材21が設けられるが、当該遮蔽材21としては、撮像の対象とする電磁波を遮蔽する材料で構成されたものを用いる。
【0047】
シャッタ部2における遮蔽材21の駆動制御は、制御部8により行われる。具体的に本例の場合、シャッタ部2は、VCMにより遮蔽材21を駆動するように構成されており、制御部8は、シャッタ部2におけるコイル22(図1を参照)に与える駆動信号によって、遮蔽材21の往復運動を実行させる。
具体的に本例の場合、遮蔽材21の往復範囲は1画素分、往復周期はn×F(前述もしたようにFは出力フレームレート)=120Hzである。制御部8は、これら往復範囲及び往復周期による遮蔽材21の駆動が実現されるように設定された上記駆動信号を、シャッタ部2に対して供給する。
【0048】
上記遮蔽材21の往復運動に伴いイメージャ3の各画素で得られた電荷は電荷電圧変換されてサンプリング部5に供給される。
サンプリング部5は、上記各画素の電圧信号についてピーク検出(本例の場合は正のピーク値の検出)を行う。そして、検出した各画素のピーク値を平均化部6に出力する。
【0049】
平均化部6は、サンプリング部5よりn×F[Hz]の周期ごとにn回入力される各画素のピーク値を平均化する。つまり本例の場合、n×F=4×30=120Hzの周期内に4回入力される各画素のピーク値を平均化する。
そして、このような平均化により各画素ごとに得られた値を、1フレーム分の撮像画像信号として信号処理部7に出力する。
【0050】
信号処理部7は、例えば黒レベル補正、画素欠陥補完、収差補正、光学シェーディング補正、レンズディストーション補正、温度調整、距離変化量の算出、コーディング等を行う回路を包括的に示したものである。
信号処理部7からの出力は、図示しないがインターフェース等を介して、撮像装置の外部のディスプレイ(画像表示装置)等に送られる。
【0051】
また本例の場合、撮像装置には、温度センサ4が設けられる。この温度センサ4は、シャッタ部2における遮蔽材21の近傍に設けられて、当該遮蔽材21の温度を検出するようにされている。
図示するように温度センサ4による検出温度値は制御部8に供給される。
【0052】
制御部8は、温度センサ4により検出された遮蔽材21の温度値に基づき、撮像画像信号として、絶対的な温度分布を表す画像信号が得られるようにするための制御も行う。
具体的には、温度センサ4から供給された温度値を信号処理部7に与えることで、当該信号処理部7に各画素の値を絶対的な温度を表す値に調整させるものである。
【0053】
なお、図6では、n回撮像して得られた画素の値を平均化する構成を例示したが、もちろん積分する構成とすることもできる。積分する構成とした場合には、信号とノイズとを切り分けるカラムADC等のノイズキャンセルを効率良く実現できる。
【0054】
[1-2.第2例(縞状配列)]

ここで、上記により説明した第1例では、A画素12とB画素13とが市松状に配列されたものとするべく、遮蔽材21における開口部21Aを、当該開口部21Aと開口部21A以外の部分とが市松状に配置されるように形成するものとしたが、A画素12とB画素13の配列態様は、縞状の配列となるようにすることもできる。
【0055】
図7は、第2例としての撮像装置の概略構成図(斜視図)を示している。
なお、以下の説明において、既に説明済みとなった部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
図7に示すように、第2例としてのシャッタ部2には、第1例の場合のシャッタ部2が備えていた遮蔽材21に代えて、遮蔽材31が設けられる。
【0057】
図7の撮像装置のイメージャ3及び遮蔽材31の平面図を、図8に示す。
図示するように遮蔽材31は、電磁波を通過させるスリット状の開口部31Aと、その他の開口部31Aではない部分とを有している。
開口部31Aは、イメージャ3の画素の1行分のサイズと同じサイズ又はやや小さいサイズに設定されており、遮蔽材31においては、図のように開口部31Aとそれ以外の部分とが、1行毎に交互に縞状に配置されている。
このような遮蔽材31に対応しては、イメージャ3において、A画素12とB画素13とが1行ずつ交互に縞状に配列されるものとなる。
【0058】
図9は、遮蔽材31を上下に駆動させたときの2つの状態の平面図である。
この場合も、遮蔽材31を上下に往復駆動することにより、A画素12が開口部31Aにより照射状態となる第1の状態(図9(a))と、B画素13が開口部31Aにより照射状態となる第2の状態(図9(b))とが繰り返される。
この場合としても、第1の状態と第2の状態との間の遷移での、遮蔽材31の移動量は、図示するように約1画素分である。また、遮蔽材31の駆動に必要なスペースも、遮蔽材31の大きさ+1画素分(=イメージャ3の大きさ+2画素分)で済む。
従って本例によっても、撮像装置の小型化が図られる。
【0059】
なお、第2例においても、回路部や出力部等、その他の構成は、第1例の撮像装置と同様となるため改めての図示による説明は省略する。
【0060】
[1-3.第3例(クリアビット配列)]

図10は、第3例としての撮像装置の概略構成図を示している。
図10(a)は、第3例の撮像装置が備えるイメージャ33の平面図を示し、図10(b)はシャッタ部2が有する遮蔽材34の平面図を示している。
イメージャ33は、イメージャ3と同様に焦電素子を用いた撮像素子によって構成される。
図10(a)に示すように、イメージャ33においては、矩形の画素が斜め方向に並ぶように配置されている。いわゆるクリアビット配列と呼ばれるものである。
【0061】
図10(b)に示す遮蔽材34においては、開口部34Aが、イメージャ33の画素サイズと同じサイズ又はやや小さいサイズとされ、且つ、開口部34Aとそれ以外の部分とが交互に市松状に配置されている。
従ってこの場合も、A画素12とB画素13とは、交互に市松状に配置されることになる。
【0062】
この場合、遮蔽材34は、図10(b)に矢印で示すように、斜め方向に約1画素分駆動する。
その他の構成は、第1例の撮像装置と同様である。
【0063】
[1-4.第4例(複数行単位配列)]

また、遮蔽材における開口部は、先の第2例のように画素の1行だけでなく複数行に対応させることも可能である。
図11は、遮蔽材の開口部を2行以上とする第4例としての撮像装置の概略構成図を示している。
図11(a)はイメージャ3の平面図を示し、図11(b)は第4例としての撮像装置が備える遮蔽材の平面図を示している。
図11(a)に示すイメージャ3は、第1例や第2例の場合のイメージャ3と同様となるが、この場合は、所定の複数行ずつ、A画素12及びB画素13が交互に縞状に配置されることになる。具体的に本例においては、2行分の縞模様が得られるようにしている。
【0064】
つまり、この場合の遮蔽材35においては、イメージャ3の画素の2行分のサイズと同じサイズ又はやや小さいサイズの開口部35Aを形成するものとしており、当該開口部35Aと開口部56Aではない部分とが交互に、各2行分ずつ配置されるようにしている。
【0065】
この場合、遮蔽材35は、上下に約2画素分駆動する。
その他の構成は、第1例の撮像装置と同様である。
なお、遮蔽材35の開口部35Aとしては、最大で、イメージャ3の全画素行の半数行まで形成することもできる。つまり遮蔽材35としては、開口部35Aとそれ以外の部分とが、交互に、画素の2行以上全画素行の半数行以下ごとに、配置されたものであればよい。
【0066】
<2.第2の実施の形態(単純往復&差動出力)>

続いて、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、装置の自己発熱や環境温度変化に伴うイメージャ3の周囲温度の変化による撮像画像への影響の低減、及びS/Nの向上を図るものである。
なお、第2の実施の形態は、先の第1例、第2例、第3例のように遮蔽材において開口部とそれ以外の部分とが1画素間隔で配置される場合に特に好適なものとなるが、以下では一例として、第1例の遮蔽材21を用いる場合を例に説明する。
【0067】
図4を参照して、第2の実施の形態としての撮像手法について説明する。
この場合も、遮蔽材21の駆動は第1例の場合と同様に、1画素分の往復運動とする。このことから、遮蔽材21の駆動に伴うA画素12の出力とB画素13の出力の波形は図4に示すものと同様となる。
【0068】
先の第1の実施の形態では、遮蔽材21の往復に伴って得られる第1の状態(A画素12側が照射、B画素13側が遮蔽の状態:期間P2,P4,P6,P8)と第2の状態(B画素13側が照射、A画素12側が遮蔽の状態:期間P3,P5,P7)とについて、第1の状態で得られるA画素12のピーク値(正のピーク値)と第2の状態で得られるB画素13のピーク値(正のピーク値)とをサンプリングした結果に基づき、1フレーム分の撮像画像信号を得るものとした。
これに対し第2の実施の形態では、第1の状態及び第2の状態の双方において、A画素12のピーク値とB画素13のピーク値とを検出し、各状態ごとに、それらの差分を計算する。具体的に、第1の状態においてはA画素12のピーク値(正のピーク値)とB画素13のピーク値(負のピーク値)とをそれぞれ検出し、それら検出したピーク値の差分を計算する。また、第2の状態においてはA画素12のピーク値(負のピーク値)とB画素13のピーク値(正のピーク値)とをそれぞれ検出し、それらのピーク値の差分を計算する。
そして、このように第1の状態、第2の状態の各状態にて算出した差分値(つまりA画素12とB画素13の差動出力)に基づき、1フレーム分の撮像画像信号を得る。
【0069】
このとき、差分の計算は、隣り合う位置の画素ごとに行う。すなわち、隣接関係にあるA画素12とB画素13同士で、それらのピーク値の差分を計算する。
【0070】
ここで、先にも述べたように、遮蔽材21の往復運動に伴い照射状態とされる画素の出力(入射光輝度)は、「被写体の温度からの電磁波−遮蔽材21の温度からの電磁波」に相当するものである。また、遮蔽状態とされる画素側の出力(遮蔽時輝度)は、「遮蔽材21の温度からの電磁波−被写体の温度からの電磁波」に相当する。
このとき、遮蔽材21の温度は、環境温度と自己発熱とを含めたイメージャ3の周囲の温度に相当するものである。
これらの点を考慮して分かるように、上述のようにA画素12のピーク値とB画素13のピーク値との差分を計算する第2の実施の形態によっては、常に、イメージャ3の周囲温度を補正していることになる。
【0071】
また、上記のようにA画素12のピーク値とB画素13のピーク値の差分を計算することによっては、信号レベルはほぼ2倍とでき、なおかつ、ノイズレベルは低減することができる。つまりこの結果、S/Nの改善も図られることになる。
【0072】
このように第2の実施の形態の撮像手法によれば、環境温度変化や自己発熱に伴うイメージャ3の周囲温度を補正することができ、当該周囲温度変化により撮像画像に与えられる影響(出力の変動)を低減できる。なおかつ、S/Nの向上が図られる。
【0073】
なお、図4においては、照射状態の画素で正のピーク値(最大値)が到来するタイミングと、遮蔽状態の画素で負のピーク値(最小値)が到来するタイミングとが同タイミングとなる場合を例示したが、焦電素子の時定数として、照射状態→遮蔽状態となる側の時定数(+方向の時定数)と遮蔽状態→照射状態となる側の時定数(−方向の時定数)とが異なっている場合には、+方向と−方向とでピークがずれることもある。その場合には、異なる時刻のピーク同士で差動出力を得るか、同じ時刻(一方がピークである時か両方のピークの間がよい)で差動出力を得るか、どちらかに設定する。
【0074】
ここで、上記により説明した第2の実施の形態の差動出力について、隣り合う位置の画素は、それぞれが撮像する被写体が同一であれば、被写体の温度差が少ない分、温度差による影響が小さく、より精度良く補正を行うことができる。
このとき、隣り合う位置の画素で被写体が同一であるかどうかは、撮像レンズ系の分解能との関係になる。
【0075】
図12は、隣り合う位置の画素で被写体が同一であるようにするための撮像レンズ1による最小スポット径と画素サイズとの関係について説明するための図である。
図12(a)は、最小スポット径とイメージャ3の各画素のサイズとの関係を平面図と断面図とにより示し、図12(b)は遮蔽材21の開口部21Aのサイズとの関係を平面図により示している。
【0076】
ここで、撮像レンズ1による最小スポット径φは、対象とする電磁波の波長をλ、撮像レンズ1の開口数をNAとすると、

φ=1.22λ/NA

で表される。
第2の実施の形態では、このような最小スポット径内に、それぞれが隣接関係となる4つの画素(本例の場合は2つのA画素12と2つのB画素13)が収まるように、イメージャ3の各画素のサイズの設定や撮像光学系の設計を行っている。
【0077】
このように、撮像レンズ1による分解能が、隣接関係にある4つの画素に跨る程度の分解能であれば、これら4つの画素にはほぼ同一被写体から同一輝度の電磁波が入るので、上述した差動出力による温度補正を行うのに好ましい。
離れている画素では、当然違う被写体の温度を拾っているので、そこから電磁波を遮蔽して遮蔽材21の温度を検出したときに若干の誤差を生じることとなる。
【0078】
なお、本例では撮像する電磁波が赤外線であるが、撮像する電磁波が赤外線以外である場合でも、上記のような撮像レンズ1の解像度設定を行った上で、隣接関係となる2画素毎に補正(差動出力)を行うことが望ましい。隣り合う位置の画素は、それぞれが撮像する被写体の状態(温度、明るさ、色等)の違いが無い(或いは非常に少ない)ので、より精度良く補正を行うことができるからである。
【0079】
ところで、上記により説明した第2の実施の形態の撮像手法によると、被写体の温度分布を表す画像としては、A画素12側のみによる画像、B画素13側のみによる画像が交互に得られることになる。
このとき、被写体の温度を表す出力が得られる照射状態の画素は「選択画素」とも呼ぶことができ、遮光状態の画素は、選択画素の出力を補正するための「補正用画素」とも呼ぶことができる。
【0080】
このような第2の実施の形態としても、第1の実施の形態の場合と同様に、撮像フレームレート(チョッパー周波数)の1周期にA画素12側の画像とB画素13側の画像とをそれぞれ得ることができるので、撮像フレームレート=出力フレームレートとすることが可能である。
但し、この場合としても、イメージャ3の高感度化を図る上では、第1の実施の形態の場合と同様に出力フレームレート=Fに対し撮像フレームレート=n×Fとすることが有効となる。
【0081】
この点を踏まえ第2の実施の形態においても、出力フレームレートをF、撮像フレームレートをn×Fとし、n回得られるA画素12側の画像とB画素13側の画像とをそれぞれ画素ごとに積分又は平均化して、それら平均化又は積分した結果を1フレーム画像として出力する手法を採る。
なお確認のために述べておくと、この場合におけるA画素12側の画像とは、A画素12側が照射状態(選択画素)のときに、隣り合う位置関係となるA画素12とB画素13のピーク値の差分を計算して得られる画像となる。またB画素13側の画像とは、B画素13側が照射状態(選択画素)のときに、隣り合う位置関係となるB画素13とA画素12のピーク値の差分を計算して得られる画像となる。
【0082】
なお、第2の実施の形態としても、被写体の絶対的な温度分布が得られるようにすべく、第1の実施の形態の場合と同様にシャッタ部2の近傍にサーミスタや温度センサを設けて、その温度検出結果に基づき撮像画像の温度調整(校正)を行うものとしている。
【0083】
図13は、上記により説明した第2の実施の形態としての撮像手法を実現するための、第2の実施の形態としての撮像装置の全体的な内部構成を示している。
先の図6に示した第1の実施の形態の撮像装置と比較すると、この場合の撮像装置においては、サンプリング部5に代えてサンプリング部5’が設けられ、当該サンプリング部5’と平均化部6との間に差動出力部9が挿入された点が第1の実施の形態の場合とは異なる。
【0084】
サンプリング部5’は、第1の実施の形態の場合のようにA画素12とB画素13の正のピーク値のみを検出するのではなく、A画素12とB画素13の正/負双方のピーク値を検出するように構成される。
【0085】
差動出力部9は、サンプリング部5’から逐次供給されるA画素12のピーク値とB画素13のピーク値とについて、隣り合う位置にあるA画素12とB画素13の組ごとに、ピーク値の差分を計算する。
具体的に本例の場合は、撮像フレームレートの1/2に対応した周期で交互に、[A画素12の正のピーク値,B画素13の負のピーク値]の組と[B画素13の正のピーク値,A画素12の負のピーク値]の組とが供給される。
差動出力部9は、上記[A画素12の正のピーク値,B画素13の負のピーク値]が供給される期間では、隣り合う位置にあるA画素12とB画素13の組ごとに[A画素12の正のピーク値−B画素13の負のピーク値]による差分の計算を行い、その結果をA画素12側の画像信号として出力する。
また上記[B画素13の正のピーク値,A画素12の負のピーク値]が供給される期間では、隣り合う位置にあるA画素12とB画素13の組ごとに[B画素13の正のピーク値−A画素12の負のピーク値]による差分の計算を行い、その結果をB画素13側の画像信号として出力する。
【0086】
この場合の平均化部6には、上記差動出力部9より、出力側の1フレーム期間ごとにA画素12側の画像信号とB画素13側の画像信号とがそれぞれn回入力されることになる。
平均化部6は、このように出力側の1フレーム期間にn回入力されるA画素12側の画像信号とB画素13側の画像信号のそれぞれについて、画素ごとにその値を平均化する。そして、平均化されたA画素12側の画像信号とB画素13側の画像信号とを併せて、1フレーム分の画像信号として出力する。
【0087】
なお、制御部8や温度センサ4などの他の構成については既に説明済みであるので改めての説明は省略する。
【0088】
ところで、これまでで説明してきた第1及び第2の実施の形態においては、撮像フレームレートの1/2の周期(遮蔽材の往復周期の半周期)では、A画素12側の画像又はB画素13側の画像の一方のみが得られることになる。
ここで、仮に、撮像フレームレートの1/2の周期でA画素12側の画像とB画素13側の画像の双方を得るようにするといったときは、補間を行うことが有効である。
【0089】
図14は、遮蔽状態の画素の値を補間する手法について説明するための図である。
なおこの図14では、シャッタ部2の遮蔽材として遮蔽材21を用いる場合を想定している。
例えばこの図14に矢印で示すように、遮蔽状態にある画素(第2の実施の形態の場合には補正用画素となる)40に対して上下左右に隣接する照射状態の画素41,42,43,44で得られた情報を元に、中間値補間した値を、画素40の輝度として出力させる。
これにより、例えばA画素12のみが照射状態となる第1の状態においてもB画素13側の画像を得ることができる。
【0090】
なお、図14では第1例の市松状の遮蔽材21を想定しているため、上下左右の4画素の選択画素を利用している。遮蔽材の開口部形成パターンによっては、遮蔽状態にある画素40と補間用に用いる周囲の照射状態の画素との位置関係が図14とは異なる。
例えば、第2例の縞状の遮蔽材31の場合には、画素40の真上の画素(42)と斜め上の2画素、及び真下の画素(44)と斜め下の2画素の合計6画素を中間値補間に利用することもできる。
【0091】
<3.第3の実施の形態(往復範囲可変:開口部境界付近の画像ボケ抑制)>

第3の実施の形態は、撮像素子と遮蔽部との間のギャップに起因して遮蔽材の開口部とそれ以外の部分との境界付近で生じる、画像ボケの抑制を図るものである。
【0092】
図15は、撮像素子と遮蔽材との間のギャップ(Gap)と画像ボケ領域との関係とについて説明するための図である。
図15(a)は、撮像素子としてのイメージャ3と遮蔽材(21又は35)とのギャップが小である場合に生じる画像ボケの領域を、また図15(b)はイメージャ3と遮蔽材とのギャップが大である場合に生じる画像ボケの領域をそれぞれ示している。
なお、図から明らかなように、ギャップ(Gap)とは、電磁波の入射軸に平行な方向における遮蔽材とイメージャ3との間の間隔を意味する。
【0093】
これまでで説明してきたように開口部を有する遮蔽材を往復運動させて撮像画像を得る手法を採る場合には、イメージャ3上の領域のうち、遮蔽材がその上限位置又は下限位置に到達したタイミング(遮蔽材の駆動方向が反転するタイミング)において遮蔽材の開口部とそれ以外の部分との境界部分(以下、開口部の縁部分とも称する)に対して直近となる領域には、本来遮蔽部が無ければ照射される分の電磁波が照射されない、或いは本来開口が無ければ照射されなかった分の電磁波が照射されてしまう領域が形成されることになる。このような領域が、画像ボケ領域となる。
なお、画像ボケ領域は、光量のコントラストの低い領域と換言することもできる。
【0094】
図15を参照して分かるように、このようなイメージャ3上の画像ボケ領域は、遮蔽材とイメージャ3とのギャップが小であるほど小となり、逆にギャップが大であるほど大となる。
例えばギャップが大である場合には、開口部の縁部の直近に位置する2画素分(上側に直近となる画素と下側に直近となる画素との合計2画素)の領域に渡って画像ボケが生じてしまう場合もある。
【0095】
なお、先の第1例〜第3例のように、遮蔽材における開口部を1画素間隔で形成する場合には、ギャップが大であると、全ての画素が画像ボケ領域に該当してしまう虞がある。
この点からも理解されるように、第1例〜第3例の遮蔽材を用いる場合(遮蔽材を1画素分往復駆動する場合)には、ギャップとしては可能な限り小とすることが望ましい。
【0096】
但し、遮蔽材は可動部であるため、ギャップを小とすることはメカ的な精度として高い精度を要求され、結果として装置の製造コストの増加に繋がり兼ねない。
そこで、第3の実施の形態では、遮蔽材の駆動態様と画素の読み出しタイミングとを工夫することで、ギャップを大としても画像ボケの抑制された撮像画像信号を得ることが可能となるようにする。
【0097】
図16は、第3の実施の形態の撮像装置が備えるイメージャ3と遮蔽材51とを平面図により示している。
先ず、図16(a)に示すように、ここでは説明の便宜上、イメージャ3には12×12=144個の画素が形成されているものとする。
そして、この場合のシャッタ部2が備える遮蔽材51としては、画素3行分の幅を有する開口部51Aが、同じく画素3行分の開口部51Aでない部分を介して2箇所形成されているとする。図のように上側に形成される開口部51Aは開口部51A-1、下側に形成される開口部51Aは開口部51A-2とする。
【0098】
ここで、図16(a)では、遮蔽材51を単純に3画素分往復駆動したときのA画素12とB画素13とを示している。図のようにこの場合のA画素12、B画素13は、各3行ずつ交互に縞状に配列されていると捉えることができる。
【0099】
なお確認のために述べておくと、上記のように遮蔽材51を3画素分往復駆動するとしたときには、遮蔽材51における遮蔽領域として、開口部51A-1の上側の遮蔽領域は少なくとも3画素分以上、開口部51A-2の下側の遮蔽領域も少なくとも3画素分以上設けられる必要がある。
但し、後述するように本実施の形態では、遮蔽材51を上方向及び下方向に最大で4画素分駆動することになるため、これに伴い開口部51A-1の上側の遮蔽領域、及び開口部51A-2の下側の遮蔽領域としては、双方とも4画素分以上を設けるようにする。
【0100】
なおこのことからも理解されるように、本実施の形態としても、遮蔽材のサイズとしては従来の光チョッパー101よりも格段に小とすることができ、また駆動範囲も最大で4画素分と極めて小である。従って本実施の形態としても先の第1及び第2の実施の形態の場合と同様に装置の小型化が図られる。
【0101】
図17は、第3の実施の形態としての遮蔽材の駆動手法について説明するための図である。
先ず、図中の<1>の状態では、遮蔽材51は、上側の開口部51A-1の上端がイメージャ3の上端(有効画素範囲の上端)に一致する状態にある。
この<1>の状態から、先ずは遮蔽材51を下方向に3画素分駆動して、図中の<2>の状態とする。この<2>の状態では、遮蔽材51の下側の開口部51A-2の下端がイメージャ3の下端(有効画素範囲の下端)に一致している。
【0102】
そして、本実施の形態では、<2>の状態から駆動方向を反転させて遮蔽材51を上側に駆動するときに、その移動量を4画素分として、図中の<3>の状態とする。この<3>の状態では、上側の開口部51A-1の上端がイメージャ3の上端より1画素分上に位置することになる。
【0103】
さらに、<3>の状態から駆動方向を反転させて遮蔽材51を下側に駆動する際にも、その移動量を4画素分として、図中の<4>の状態を得る。<4>の状態では、下側の開口部51A-2の下端がイメージャ3の下端より1画素分下に位置することになる。
【0104】
<4>の状態とした後は、図示するように<1>の状態に戻す。すなわち、遮蔽材51を上側に3画素分に駆動する。
【0105】
以降、このような<1>→<2>→<3>→<4>→<1>・・・の状態が繰り返し得られるように、遮蔽材51を駆動する。
【0106】
図18は、第3の実施の形態としてのイメージャ3の読み出し手法について説明するための図である。
この図18においては、イメージャ3に配列されるA画素12とB画素13とについて、それぞれ上側から順にA1,A2,A3,A4,A5,A6、B1,B2,B3,B4,B5,B6と符号を付し、これらそれぞれの画素において先の図17の駆動が行われることに伴い得られる出力を模式的に示している。ここで、図中の上側に凸の部分は正のピーク値を意味し、下側に凸の部分は負のピーク値を意味する。
また、模様を付した凸部は画像ボケの発生を意味し、○印を付した凸部は本例の手法により画像ボケが抑制される部分を意味している。
【0107】
先ず、<1>→<2>の遷移期間は、単純な3画素分の駆動期間であるため、この期間内に照射状態に遷移する側の画素となるB画素13のうち、B1,B3及びB4,B6の画素で画像ボケが発生する。
なお確認のために述べておくと、画像ボケが生じ得る領域は、遮蔽材51がその上限位置又は下限位置に到達したタイミング(遮蔽材の駆動方向が反転するタイミング)において開口部51Aの縁部に対して直近となる領域である。従って、<1>→<2>の遷移区間のように遮蔽材51が下側に駆動される期間(B画素13側が照射状態に遷移する期間)において画像ボケが生じ得るのは、B1,B3,B4,B6の4画素となる。逆に、遮蔽材51が上側に駆動される期間(A画素12側が照射状態に遷移する期間)において画像ボケが生じ得るのはA1,A3,A4,A6の4画素となる。
【0108】
ここで、<1>→<2>の遷移期間において、B画素13のうち開口部51Aの縁部に直近とならないB2、B5の画素では、ボケの生じていない出力が得られる。従ってこれらB2、B5に該当する画素(B2の行の画素、B5の行の画素)については、当該<1>→<2>の遷移期間内で検出されるピーク値(正のピーク)を有効な輝度の値としてサンプリングしておく。
【0109】
続いて、<2>→<3>の遷移期間は、遮蔽材51を上側に1画素分オーバーランさせる期間となる。このため、この期間において画像ボケの生じ得る画素であるA1,A3,A4,A6のうち、開口部51Aがオーバーランする側に位置するA1,A4の画素における画像ボケが抑制される。
従って当該<2>→<3>の遷移期間内において検出されるA1,A4の画素のピーク値を、これらの画素の有効な輝度の値としてサンプリングする。
またこの期間では、A2,A5の画素のピーク値が検出されるので、これらのピーク値もサンプリングしておく。
【0110】
また、<3>→<4>の遷移期間は、遮蔽材51を下側に1画素分オーバーランさせる期間となる。
ここで、<3>の状態では、遮蔽材51の上側の開口部51A-1の上端がA1画素の1画素上に位置し、且つ下側の開口部51A-2の上端はA3画素の上端に位置しているので、当該<3>→<4>の遷移期間において画像ボケの生じ得るB1,B4の画素における画像ボケは抑制される。また、この期間では上記のように遮蔽材51が下側にオーバーランするので、B3,B6の画素の画像ボケも抑制されることになる。
従って当該<3>→<4>の遷移期間では、B1,B3,B4,B6の各画素で検出されるピーク値を、有効な輝度の値としてサンプリングしておく。
【0111】
また、<4>→<1>の遷移期間は、遮蔽材51を上側に3画素分駆動する期間となる。
<4>の状態では、遮蔽材51の上側の開口部51A-1の下端がB1画素の下端に位置し、且つ下側の開口部51A-2の下端はB3画素よりも1画素下側に位置しているので、当該<4>→<1>の遷移期間において画像ボケの生じ得るA3,A6の画素における画像ボケが抑制されることになる。
従って当該<4>→<1>の遷移期間では、A3,A6の各画素で検出されるピーク値を有効な輝度の値としてサンプリングする。
【0112】
上記により説明したような各期間ごとのピーク値のサンプリングを行うことで、<1>の状態から再度<1>の状態に戻るまでの1周期内に、単純往復駆動を行った場合には画像ボケが生じるA1,A3,A4,A6,B1,B3,B4,B6の各画素の画像ボケを抑制しつつ、イメージャ3における全画素分の画像を得ることができる。
【0113】
ここで、図17及び図18による説明からも理解されるように、第3の実施の形態としての目的を達成するにあたっては、少なくとも、遮蔽材51として3画素分以上の幅による開口部51Aを形成しておき、当該遮蔽材51を、
1)開口部51Aのうち最上部に形成された開口部51A-1の上端がイメージャ3の有効画素範囲の上端に位置する第1の駆動状態と、
2)開口部51Aのうち最下部に形成された開口部51A-2の下端が上記有効画素範囲の下端に位置する第2の駆動状態と、
3)上記開口部51A-1の上端が上記有効画素範囲の上端よりも上側に位置する第3の駆動状態と、
4)上記開口部51A-2の下端が上記有効画素範囲の下端よりも下側に位置する第4の駆動状態と
が得られるようにして遮蔽材51を往復運動させるものとすればよい。
このようにすることで、図18に示したように各期間で画像ボケの生じ得る画素の輝度の値として、ボケの抑制された有効な値が得られるようにでき、その結果、それらボケの低減されたタイミングでの画素の値をサンプリングすることによって、画像ボケの抑制された撮像画像信号を得ることができる。
【0114】
なお、先の図15により説明したように画像ボケの生じる領域はイメージャ3と遮蔽材51との間のギャップの大きさに応じたものとなるので、上記第3の駆動状態、上記第4の駆動状態として遮蔽材51をオーバーランさせる量は、当該ギャップの大きさに応じて適切に設定すればよい。
【0115】
ここで、上記により説明した第3の実施の形態の手法を採る場合には、出力フレームレートに対して、撮像フレームレート(チョッパー周波数)を少なくとも2倍以上に設定する(この場合は正確には<1>→<1>の周期を1/2した周期を2倍以上に設定する意となる)ことで、出力側の1フレーム期間内にイメージャ3の全有効画素分の画像を得るようにできる。
また、この場合も、撮像フレームレートを出力フレームレートの4倍以上として、出力側の1フレーム期間に各画素の輝度として2以上の値を得るようにし、それらを平均化又は積分する構成とすることにより高感度化及びS/Nの向上を図ることもできる。
【0116】
図19は、上記により説明した第3の実施の形態としての撮像手法を実現するための第3の実施の形態としての撮像装置の全体的な内部構成を示した図である。
なお、ここでは一例として、撮像フレームレートは出力フレームレートの4倍に設定されているとする。
【0117】
先の図6と比較して分かるように、この場合の撮像装置は、サンプリング部5に代えてサンプリング部52が、また制御部8に代えて制御部53が設けられた点が第1の実施の形態の撮像装置と異なる。
またこの場合のシャッタ部2には遮蔽材51が設けられる。
【0118】
制御部53は、遮蔽材51の駆動状態として前述した第1の駆動状態、第2の駆動状態、第3の駆動状態、第4の駆動状態が得られるように、シャッタ部2に対する駆動信号の供給を行う。具体的に本例の場合は、図17にて説明した<1>→<2>→<3>→<4>→<1>による駆動状態が繰り返し得られるように、シャッタ部2に対する駆動信号の供給を行う。
また制御部53は、サンプリング部52に対して、各画素のサンプリングタイミングを指示する。具体的には、各行ごとのサンプリングタイミングを指示する。先の図18の説明からも理解されるように、当該行ごとのサンプリングタイミングは、遮蔽材51の駆動手法が定まれば自ずと定まるので、遮蔽材51の駆動手法に応じて制御部53にプリセットしておくことができる。
なお、制御部53しても、先の制御部8と同様に、温度センサ4からの温度値に応じた画像の温度調整処理を信号処理部7に実行させるための制御を行う。
【0119】
サンプリング部52は、サンプリング部5と同様に各画素のピーク値(本例の場合は性のピーク値)の検出を行う。但しサンプリング部52は、検出したピーク値のうち、制御部53から行ごとに指示されるタイミングで各行の画素のピーク値を出力するように構成される点が、サンプリング部5の場合と異なる。
【0120】
<4.第4の実施の形態(往復範囲可変:駆動方向反転時の出力差抑制)>

第4の実施の形態は、遮蔽材の駆動方向が反転する際に開口部が位置する画素で生じる、他の画素との出力差の抑制を図るものである。
【0121】
図20は、第4の実施の形態の撮像装置が備えるイメージャ3と遮蔽材61とを平面図により示している。
図20(a)に示すように、ここでは説明の便宜上、イメージャ3には13×13=169個の画素が形成されているものとする。従ってこの場合のイメージャ3には、図のようにa〜mまでの13行が形成されていることになる。
【0122】
そして、この場合のシャッタ部2が備える遮蔽材61としては、画素1行分の幅を有する開口部61Aが、それぞれ画素4行分の開口部61Aでない部分を隔てて3箇所形成されているとする。
図のように最も上側に形成される開口部61Aは第1開口部61A-1、その下側に形成される開口部61Aは第2開口部61A-2、最も下側に形成される開口部61Aは第3開口部61A-3とする。
図20(b)では、第1開口部61A-1がイメージャ3の最も上部に形成された画素(a画素)上に位置している状態を示しているが、このときの開口部61Aの形成位置([]で表す)とイメージャ3のa〜mの各行との関係は、

[a]bcde[f]ghij[k]lm

となる。なおこのことからも理解されるように、この場合の開口部61Aは5行おきに形成されていると表現することもできる。
【0123】
ここで、この第4の実施の形態のように、遮蔽材に1行分の開口部を複数設け且つそれらの開口部の間に複数行分の間隔が空けられた構成とする場合には、遮蔽材の駆動方向が反転する最に開口部が位置する画素と、それ以外の画素とで、開口部が通過する際に要する時間長が異なることに起因した出力差が生じることとなる。
【0124】
図21はこの点について説明するための図である。
図21(a)に示すグラブは、遮蔽材61を正弦波による駆動信号で往復させた場合の開口部61Aの駆動位置の軌跡を表している。
また図21(b)は、遮蔽材61の駆動信号の1周期(チョッパー周波数)を18の区間に分割したときの、1〜18の各区間でのa〜mの各画素の輝度の遷移を表している。なおこの場合の輝度は4段階で表しており、黒色が輝度最低、濃灰色は輝度低、薄灰色は輝度中、白色は輝度高を意味する。
【0125】
ここで、この図21では、遮蔽材61を6画素分往復させた場合の例を示している。
なお、遮蔽材61を5画素分往復させることとしていない(つまり開口部形成位置間での往復としていない)のは、遮蔽材の駆動距離が長い場合にはその反転位置を正確にコントロールすることが困難となる虞がある点を考慮してのことである。
【0126】
先ず、図21(a)を参照して明らかなように、遮蔽材61を往復運動させる際には、上下の反転位置近傍において、開口部61Aが1行分移動するのに要する時間が比較的長くなる。具体的にこの場合、開口部61Aが上下の反転位置にある画素を照射状態とする時間長は、4区間分の時間長(行き2区間分+帰り2区間分)に及ぶものとなる。これに対し、反転位置近傍でない部分に関しては、1行分の移動に要する時間長は短く、およそ1区間分の時間長となる。
【0127】
このような開口部61Aの移動速度の差は、チョッパー周波数の差に相当するものとなり、従って上下の反転位置近傍に位置する画素とそれ以外の画素とには感度の差が生じてしまう(先の図5を参照)。具体的にこの場合、駆動信号の周波数が120Hzであるとすると、反転位置の画素以外の画素に対するチョッパー周波数はおよそ120Hzとなるのに対し、反転位置の画素に対するチョッパー周波数はおよそ30Hz程度となる。これは、図5(a)に示した感度の差で見ると、反転位置の画素=約18μV、反転位置の画素以外の画素=27μVの差となってしまう。
【0128】
また、感度やS/Nの向上を意図して積分を行うとした場合、ピーク値(正のピーク値)が積算される回数に差が生じてしまうという問題もある。
例えば、図21(b)におけるf画素とi画素とを比較した場合、1〜18の1周期内におけるピーク値の検出回数としては、f画素が「反転位置でのピーク値=1回(区間17)、非反転位置でのピーク値=2回(区間7と区間12)」の計3回となるのに対し、i画素は「非反転位置でのピーク値=2回(区間5と区間14)」の計2回となる。
従って例えばこれらf画素とi画素とでは、上述のチョッパー周波数の差に起因した出力差と共に、積算回数の差に起因した出力差も生じてしまうこととなる。
【0129】
なお、図21(b)は6画素分の駆動を行う場合を例示しているので上記のようなピーク値の積算回数の差が生じるが、5画素分の駆動とした場合には、1周期内におけるピーク値の検出回数はf画素が「反転位置でのピーク値=2回」、i画素は「非反転位置でのピーク値=2回」と、同一となる。
但しこの場合、積算回数の差は生じないが、前述のようなチョッパー周波数の際に起因した出力差が生じることは言うまでもない。
【0130】
ここで、このような行ごとに生じ得る出力差については、出荷時の温度補正によりある程度は校正することができる。なおここで言う温度補正とは、均一な輝度による電磁波を照射して撮像を行い、その際に得られた各画素の出力が均一となるように各画素についてのゲイン調整(補正係数の付与)を行うことを意味する。
【0131】
しかしながら、元の出力差が大きい場合には、このような出荷時の温度補正により完全に出力差を校正できる保証は無い。
このため第4の実施の形態では、遮蔽材61の駆動手法を工夫することで対策を行うこととした。
【0132】
図22は、第4の実施の形態としての遮蔽材61の駆動手法について説明するための図である。
なお図22では図示の都合上、遮蔽材61に形成される3つの開口部61Aのうち第2開口部61A-2の移動軌跡のみを示している。
【0133】
この図22を参照して分かるように、第4の実施の形態では、開口部61Aが往復する範囲の軌跡(図中の太枠で囲う範囲)が、とある周期で上下方向に一往復するように、遮蔽材61を駆動するものとしている。
換言すれば、遮蔽材61の上/下それぞれの反転位置を当該遮蔽材61の1往復の周期で徐々にシフトさせていき、所定の往復回数で、上/下それぞれの反転位置が元の位置に戻るように、遮蔽材61を駆動するものとしている。
【0134】
具体的にこの場合、反転位置のシフトは、上側へのシフトを行った後に下側へのシフトに切り替えるようにすることで、開口部61Aの往復範囲の軌跡が図のように上側に凸となるようにして行うものとしている。
このとき、遮蔽材61の1往復周期での反転位置のシフト量は、図のように1画素ずつとしている。
そして、この場合、遮蔽材61の初回の駆動量(初回の往路駆動量:基準駆動量とも呼ぶ)は、6画素分の駆動量としている。
さらに、反転位置の最大シフト量は4画素分と設定している。
これらの設定により、この場合は遮蔽材61の往復回数=8回で、上/下それぞれの反転位置が元の位置に戻ることになる。換言すれば、遮蔽材61が8往復する周期を1周期として、反転位置の上下方向への1往復(開口部61Aの往復範囲の上下方向への1往復)が為されるものである。
【0135】
図23は、上記による第4の実施の形態としての駆動手法により遮蔽材61を駆動した場合における各画素の時間経過に伴う輝度の変化を模式的に示している。
図中の最上部に示す1〜8の数値は、遮蔽材61の往復回数を表す。
また、この図においても輝度は、黒色=最低、濃灰色=低、薄灰色=中、白色=高により表している。
【0136】
この図23を参照して分かるように、第4の実施の形態の駆動手法によれば、遮蔽材61が8往復する周期を1ユニット周期としたとき、当該1ユニット周期内において各画素にほぼ均等に輝度分布が行き渡ることが分かる。
【0137】
第4の実施の形態では、上記による駆動手法によってこのように1ユニット周期内にほぼ均等に輝度分布を行き渡らせるようにした上で、当該1ユニット周期ごとに、各画素で検出されるピーク値(正のピーク値)を積分して出力するという手法を採る。
つまりこれにより、単純に6画素分の往復運動(或いは5画素分の往復運動)を行う場合に生じていた行ごとの出力差の抑制を図るものである。
【0138】
ここで、図23によると、この場合は特にd画素〜j画素の範囲で均等に輝度が行き渡ることが確認できる。
具体的に、これらの画素の1ユニット周期内でのピーク値の検出回数を、輝度高(白色)、輝度中(薄灰色)、輝度低(濃灰色)の別も含めて見てみると、

輝度高 輝度中 輝度低 合計
d画素・・・ 16回 4回 3回 23回
e画素・・・ 16回 4回 3回 23回
f画素・・・ 16回 3回 3回 22回
g画素・・・ 16回 2回 4回 22回
h画素・・・ 16回 3回 3回 22回
i画素・・・ 16回 4回 3回 23回
j画素・・・ 16回 4回 3回 22回

となる。
これは、単純に6画素分の往復運動を行った場合における同画素についてのピーク値検出回数

輝度高 輝度中 輝度低 合計
d画素・・・ 16回 0回 0回 16回
e画素・・・ 16回 0回 8回 24回
f画素・・・ 16回 8回 0回 24回
g画素・・・ 16回 8回 0回 24回
h画素・・・ 16回 0回 8回 24回
i画素・・・ 16回 0回 0回 16回
j画素・・・ 16回 0回 8回 24回

と比較すれば、各画素への輝度の分布の均等性が格段に増していることが分かる。
【0139】
また、5画素分の単純往復を行う場合には、f画素において「輝度中」によるピーク値しか得られないこととなるので、その場合との比較でも本実施の形態の方が輝度の均等性が増すことは言うまでもない。
【0140】
ここで、上端側に形成されるa画素〜c画素、下端側に形成されるk画素〜l画素では、中間位置に形成されるd画素〜j画素と比較して輝度分布の均等性が低下する。これは、例えばa画素〜c画素については第1開口部61A-1よりも上側の開口部61Aが無く、またk画素〜l画素については第3開口部61A-3よりも下側の開口部61Aが無いことに起因する。
【0141】
このとき留意すべき点は、イメージャ3としては、実際にはVGA(640×480)などの画像解像度を実現するために多数の画素を有して構成されるという点である。すなわち、この場合において遮蔽材61のように5行おきの開口部61Aを設けた構成とした場合には、殆どの画素がd画素〜j画素のような中間位置の画素となる。
【0142】
従って、上端側のa画素〜c画素、下端側のk画素〜l画素については、予め有効画素からは除外されたものとして、それらの画素の出力は使用しないものとすれば、画素ごとの出力差はさらに改善することができる。
或いは、遮蔽材61として、第1開口部61A-1の上側と第3開口部61A-3の下側にそれぞれ開口部61Aをさらに設けるものとすれば、a画素〜c画素及びk画素〜l画素についても、d画素〜j画素と同様の出力差の改善を図ることができる。
【0143】
上記のように第4の実施の形態によれば、図17のように開口部61Aの往復範囲を1ユニット周期で上下方向に一往復させるように遮蔽材61を駆動し、且つ、上記1ユニット周期ごとに各画素で検出されるピーク値を積分することで、単純に所定画素分の往復運動を行うとする場合よりも各画素の出力差を格段に抑制することができる。
【0144】
このとき、全画素分(全有効画素分)の画像が適正に得られるようにするためには、上記1ユニット周期の周波数は、最低でも出力フレームレートの周波数と一致させればよい。この場合において、出力フレームレート=30Hzであれば、図17に示すように、遮蔽材61の1往復周期はおよそ240Hz(平均して240Hz)となる。これは、図5によれば、焦電の出力が高まる範囲であり、従ってS/N的に有利となる。
【0145】
ここで、上記により説明した第4の実施の形態では、図20(b)に示す「[a]bcde[f]ghij[k]lm」の状態を遮蔽材61の基準位置としたとき、遮蔽材61を下方向に最大で6画素分駆動し、また上方向には最大で4画素分駆動することになる。このため、遮蔽材61における第1開口部61A-1の上側の遮蔽領域としては少なくとも6画素分、第3開口部61A-3の下側の遮蔽領域としては少なくとも4画素分を設ければよいことになる。
このことからも理解されるように、第4の実施の形態としても、遮蔽材のサイズとしては従来の光チョッパー101よりも格段に小とすることができ、また駆動範囲も最大で6画素分と極めて小である。従って、第4の実施の形態としても、先の第1の実施の形態等の場合と同様に装置の小型化が図られる点に変わりはない。
【0146】
図24は、上記により説明した第4の実施の形態としての撮像手法を実現する第4の実施の形態としての撮像装置の全体的な内部構成を示している。
先の図6と比較して分かるように、この場合の撮像装置は、平均化部6に代えて積分器62が設けられ、また制御部8に代えて制御部63が設けられた点が第1の実施の形態の撮像装置と異なる。
またこの場合のシャッタ部2には遮蔽材61が設けられる。
【0147】
制御部63は、図17にて説明した手法により遮蔽材61が駆動されるように、シャッタ部2に対する駆動信号の供給を行う。具体的に本例の場合は、遮蔽材61の初回の駆動量(初回の往路駆動量:基準駆動量とも呼ぶ)を下側への6画素分の駆動量として、以降、遮蔽材61の反転位置のシフトが、その最大シフト量を4画素分として、上側への1画素ずつのシフトが行われた後に下側への1画素ずつ行われるように、シャッタ部2に対する駆動信号の供給を行う。
これにより、前述したような8往復=1ユニット周期による遮蔽材61の駆動が行われる。
なお、制御部63しても、制御部8と同様に温度センサ4からの温度値に応じた画像の温度調整処理を信号処理部7に実行させるための制御を行う。
【0148】
積分器62は、上記のような遮蔽材61の駆動に伴ってサンプリング部5にて検出される各画素の輝度ピーク値を入力し、それらの輝度ピーク値を画素ごとに積分する。
このとき、積分器62は、制御部63から指示される1ユニット周期ごとのタイミングで各画素の積分値の出力及び0リセットを行う。つまりこれにより、1ユニット周期ごとに各画素の積分及び0リセットが繰り返される。換言すれば、前述した1ユニット周期=出力フレームレートの関係が実現されるものである。
【0149】
なお、前述のようにイメージャ3の上端部/下端部に形成される画素(行)の出力を使用しない場合には、積分器62又は信号処理部7が有効画素範囲内の画素についてのみ出力を行うように構成すればよい。
【0150】
なお、積分に代えて平均化を行うことも可能である。その場合、平均化部としては、1ユニット周期内にサンプリング部5から画素ごとに供給されるピーク値を、そのピーク値が供給された回数に応じて平均化して出力するように構成すればよい。
【0151】
<5.変形例>

以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な構成を取り得る。
【0152】
例えばこれまでの説明では、シャッタ部2が備える遮蔽材を上下方向に往復運動させる場合を例示したが、左右方向に往復させることも勿論可能である。左右方向に往復させる場合において、第2例や第4例のように縞状の開口を設ける際には、各開口部は行方向でなく列方向に配列させることは言うまでもない。また、第3,第4の実施の形態として遮蔽材の往復範囲をシフトさせる際は、先の説明における上下方向を左右方向に置き換えて考える点も言うまでもない。
また、第3例については、図10(b)に矢印で示した左上/右下の斜め方向ではなく、右上/左下の斜め方向に遮蔽材34を駆動することもできる。
【0153】
またこれまでの説明では、遮蔽材の駆動をVCMにより行う場合を例示したが、VCMに限らず、超音波モータ、DCモータ、ACモータ、ステッピングモータ、リニアモータ、分子モータ、静電モータ、圧電素子アクチュエータ、ポリマーアクチュエータにより遮蔽材を駆動することもできる。
【0154】
一例として、図25は、圧電素子アクチュエータを用いたシャッタ部の構成例を示している。なお、図25では圧電素子アクチュエータを用いたシャッタ部の構成を断面図により表している。
この図の例では、電極としての機能を兼ね備えた板状の可撓性部材72と可撓性部材73とにより、遮蔽材(21,31,34,35,51,61)を支持するようにしている。具体的に、可撓性部材72,73は、それぞれその一方の端部が遮蔽材の一方の側面、他方の側面にそれぞれ固着され、遮蔽材を支持している。可撓性部材72,73の他方の端部は、図のように基板71に固着されている。
【0155】
可撓性部材72には、これを挟み込むようにして圧電素子74,74が固着され、可撓性部材73に対してもこれを挟み込むようにして圧電素子75,75が固着されている。図のように一方の圧電素子74の表面(可撓性部材72と固着される面とは逆側の面)には電極76が、また他方の圧電素子74の表面には電極77が設けられる。同様に、一方の圧電素子75の表面(可撓性部材73と固着される面とは逆側の面)には電極78が、他方の圧電素子75の表面には電極79がそれぞれ設けられる。
【0156】
ここで、圧電素子74,75としては、分極状態のPZTなどを用いる。各圧電素子の分極状態(+/−)は、図のように各圧電素子で+と−の方向が揃うようにする。
その上で、例えば図のように表面側の電極76,77,78,79を駆動電圧源の+側、電極機能を有する可撓性部材72,73を駆動電圧源の−側に結線し、圧電素子74,75を駆動する。
【0157】
上記のように構成されるシャッタ部に対しては、例えば正弦波による駆動信号など、所定周期で+電圧/−電圧の印可を繰り返す駆動信号を与える。
上記の分極状態及び結線の態様によれば、駆動信号レベルが+側に徐々に上昇することに応じては、圧電素子74,75の形状変化に伴い、図26(a)に示すように可撓性部材72,73がそれぞれ紙面左方向に徐々に撓んでき、遮蔽材としても紙面左方向に徐々に変位することになる。
逆に、駆動信号レベルが徐々に低下することに応じては、図26(b)に示すように可撓性部材72,73はそれぞれ紙面右方向に徐々に撓んでき、遮蔽材としても紙面右方向に徐々に変位していくことになる。なお図26では図示の都合から遮蔽材、可撓性部材72,73、及び基板71のみを抽出して示している。
このようにして、圧電素子アクチュエータを用いたシャッタ部とする場合にも、遮蔽材を往復運動させることができ、また遮蔽材の変位量は駆動信号レベルで調整できる。
【0158】
また、これまでの説明では、シャッタ部2として、開口部を設けた遮蔽材を機械的に動かすことでイメージャ3に対する電磁波の照射/遮蔽を行うように構成されたものを例示したが、例えば液晶シャッタ等のように、電磁波を一部の画素に照射するための開口の位置を任意に設定可能な素子(開口位置可変素子)を用いることもできる。
例えば液晶シャッタを用いた場合、開口位置の設定は、DSP(Digital Signal Processor)やマイクロコンピュータ等によりプログラムを利用して行うことが可能である。
【0159】
なお、電磁波として赤外線を検出する撮像装置に対して液晶シャッタを適用する場合には、液晶層を挟むカバーガラスとして、赤外線を通さない通常の液晶用のカバーガラスの代わりに、赤外線を透過する材料によるカバーガラスを使用する。例えば、SiガラスやGeガラス、BaF2ガラス等の材料によってカバーガラスを形成する。
また、液晶シャッタを駆動するためには、ガラスの表面に電極膜が必要となるが、可視光の場合のITO(インジウム錫酸化物)の代わりに、赤外線の場合は赤外域での透過率の高いCrやTi等を電極膜に使用することが可能である。
【0160】
また、特に第2の実施の形態の場合、シャッタ部を液晶シャッタ等のように開口位置を任意に設定することが可能な素子で構成したときには、複数個の「選択画素」に対して、「補正用画素」を「選択画素」よりも少なくとも1個以上少ない画素数に設定することができる。
これにより、補正用画素が選択画素と同数である場合と比較して、選択画素の数を多くすることができるので、解像度を向上することや、被写体の実態により近い画像を得ることが可能になる。
【0161】
なお本発明において、遮蔽材を往復運動させるための駆動信号や液晶シャッタ等のシャッタ部を駆動するための駆動信号の波形形状は、正弦波形状に限定されるべきものではなく、台形波形状、その他の形状であってもよい。
【0162】
また、特に第1及び第2の実施の形態については、以下のような変形例も可能である。
すなわち、A画素12の輝度平均出力又は輝度合計出力を微分した微分値が0となる所と、B画素13の輝度平均出力又は輝度合計出力を微分した微分値が0となる所とで、遮蔽材が反転駆動するように構成するというものである。
或いは、第2の実施の形態にあっては、A画素12の輝度平均出力又は輝度合計出力と、B画素13の輝度平均出力又は輝度合計出力との、差動出力を微分した微分値が0となる所で、遮蔽材が反転駆動するように構成することもできる。
これにより、遮蔽材が所定位置で反転するようにチョッパー動作することとなり、その結果、遮蔽材の位置を検出するサーボ用のセンサを追加しなくても、安価に遮蔽材の反転位置制御を行うことが可能になる。
なおこの場合において、A画素12の輝度平均出力又は輝度合計出力と、B画素13の輝度平均出力又は輝度合計出力とは、それぞれ、A画素12及びB画素13の全画素について求めてもよく、A画素12及びB画素13の一部の画素について求めてもよい。
【0163】
また、特に第2の実施の形態について、遮蔽材の開口部を3行以上(又は3列以上)とした場合には、A画素12とB画素13とが必ずしも隣り合う位置にならない(周囲が全て同じA画素12であるA画素12が存在する)ので、直近のA画素12とB画素13の生出力同士を比較する。
【0164】
また、これまでの説明では、イメージャ3(或いは33)として焦電素子を用いたものを例示したが、本発明の撮像装置が備える撮像素子としては、焦電素子、強誘電体素子、マイクロボロメータ、メタマテリアル、アンテナ素子、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などにより構成することができる。
【0165】
なお、本発明の撮像装置は、カメラやカメラを利用した各種の装置に適用することができる。
カメラとしては、特に、ミリ波のうち波長が10mmより短い短波長側の領域を使用したミリ波撮像カメラ、テラヘルツ撮像カメラ、サーモグラフィカメラ、ガス検知カメラ、可視光カメラ、並びに、X線カメラ等が挙げられる。
また、カメラを利用した各種の装置としては、ユーザーインターフェース入力装置、夜間走行視野補助装置(ナイトビジョン)、セキュリティー装置、健康管理装置、温度差暗号伝送装置等が挙げられる。
【符号の説明】
【0166】
1 撮像レンズ、2 シャッタ部、3,33 イメージャ、4 温度センサ、5,5’,52, サンプリング部、6 平均化部、7 信号処理部、8,53,63 制御部、21,31,34,35,51,61 遮蔽材、21A,31A,34A,35A,51A,61A 開口部、22 コイル、23 マグネット、24 ワイヤーサスペンション、25 サスペンションホルダ、71 基板、72,73 可撓性部材、74,75 圧電素子、76,77,78,79 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の画素を有する撮像素子と、
上記撮像素子における一部の画素に対して電磁波が照射され且つ上記一部の画素以外の画素に対して上記電磁波が遮蔽される一部画素選択照射状態が、上記電磁波が照射される上記一部の画素を逐次変更しながら時分割的に得られるように、上記撮像素子に対する上記電磁波の照射/遮蔽を行う照射/遮蔽部と
を備える撮像装置。
【請求項2】
上記照射/遮蔽部は、開口部が形成された遮蔽材を往復運動させて上記撮像素子に対する上記電磁波の照射/遮蔽を行う
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
上記照射/遮蔽部により上記電磁波が照射状態とされた画素で得られる輝度の値を時分割的に取得し、それら取得した値に基づいて1フレーム分の撮像画像信号を得る画像信号取得部をさらに備える
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
上記撮像素子における上記複数の画素が少なくとも第1の画素と第2の画素との2種に分類されており、
上記画像信号取得部は、
上記照射/遮蔽部により上記第1の画素が照射状態となることに応じて得られる上記第1の画素の輝度のピーク値と、上記第2の画素が照射状態となることに応じて得られる上記第2の画素の輝度のピーク値とをそれぞれ取得し、これら取得した第1,第2の画素のそれぞれのピーク値に基づいて1フレーム分の撮像画像信号を得る
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
上記撮像素子における上記複数の画素が少なくとも第1の画素と第2の画素との2種に分類されており、
上記画像信号取得部は、
上記照射/遮蔽部により上記第1の画素が照射状態となり且つ上記第2の画素が遮蔽状態となったときの上記第1の画素の輝度のピーク値と上記第2の画素の輝度のピーク値との差分を第1差分値として計算し、且つ上記照射/遮蔽部により上記第1の画素が遮蔽状態となり且つ上記第2の画素が照射状態となったときの上記第1の画素の輝度のピーク値と上記第2の画素の輝度のピーク値との差分を第2差分値として計算する共に、上記第1差分値と上記第2差分値とに基づいて1フレーム分の撮像画像信号を得る
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
上記画像信号取得部は、隣り合った位置に配置された2つの画素毎に上記差分値を求める
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
上記画像信号取得部は、
遮蔽状態にある画素の周囲に配置される照射状態の画素から中間値補完を行って上記撮像画像信号を得る
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
上記遮蔽材において、上記開口部は、上記往復運動に伴い上記撮像素子の一部の行又は列に選択的に上記電磁波を照射可能に形成されており、
上記照射/遮蔽部は、
上記遮蔽材を往復させる範囲を逐次変更しながら上記撮像素子に対する上記電磁波の照射/遮蔽を行う
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項9】
上記照射/遮蔽部は、
上記遮蔽材における上記開口部のうち最上部又は最右部に形成された第1の開口部の上端又は右端が上記撮像素子の有効画素範囲の上端又は右端に位置する第1の駆動状態と、
上記開口部のうち最下部又は最左部に形成された第2の開口部の下端又は左端が上記有効画素範囲の下端又は左端に位置する第2の駆動状態と、
上記第1の開口部の上端又は右端が上記有効画素範囲の上端よりも上側又は右端よりも右側に位置する第3の駆動状態と、
上記第2の開口部の下端又は左端が上記有効画素範囲の下端よりも下側又は左端よりも左側に位置する第4の駆動状態と
が得られるようにして上記遮蔽材を往復運動させる
請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
上記照射/遮蔽部は、
所定の期間ごとに上記遮蔽材の往復範囲を上下方向又は左右方向に一往復させるように上記遮蔽材を往復運動させ、
上記所定の期間ごとに、各画素の輝度の値を積分又は平均化し、それら積分又は平均化した各輝度の値に基づいて1フレーム分の撮像画像信号を得る画像信号取得部をさらに備える
請求項8に記載の撮像装置。
【請求項11】
上記遮蔽材を往復運動させる駆動部が、超音波モータ、DCモータ、ACモータ、ステッピングモータ、リニアモータ、ヴォイスコイルモータ、分子モータ、静電モータ、圧電素子アクチュエータ、ポリマーアクチュエータの何れかにより構成されている
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項12】
上記照射/遮蔽部は、上記電磁波を照射するための開口の位置を任意に変更可能に構成された開口位置可変素子により上記撮像素子に対する上記電磁波の照射/遮蔽を行う
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項13】
上記開口位置可変素子が液晶素子で構成される請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
上記撮像素子は、焦電素子、強誘電体素子、マイクロボロメータ、メタマテリアル、アンテナ素子、CCD、CMOSの何れかにより構成されている
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項15】
上記遮蔽材の上記開口部と上記開口部ではない部分とが、交互に市松状に配置されている請求項2に記載の撮像装置。
【請求項16】
上記遮蔽材の上記開口部と上記開口部ではない部分とが、交互に、画素の2行以上全画素行の半数行以下ごとに、又は画素の2列以上全画素列の半数列以下ごとに、配置されている
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項17】
上記電磁波が照射される画素の輝度平均出力又は輝度合計出力の微分値の反転箇所と、上記電磁波が遮蔽される画素の輝度平均出力又は輝度合計出力の微分値の反転箇所とを検出することにより、上記遮蔽材の駆動の反転位置が制御される
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項18】
出力フレームレートをF[Hz]、撮像フレームレートをn×F[Hz](nは2以上の整数)として、n回撮像して得られた輝度を積分又は平均化することにより、1フレーム分の撮像画像信号が出力される
請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図22】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図18】
image rotate

【図21】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2011−176793(P2011−176793A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259709(P2010−259709)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】