説明

撮像装置

【課題】人の顔の肌領域の色が自然な肌色となる画像データを得ることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像部8と、投映部14と、前記撮像部から出力される撮像信号に基づいて事前画像データを取得する事前画像データ取得手段4と、前記事前画像データに含まれる顔の肌領域及び該肌領域の色を検出する検出部4と、目標となる肌色を記憶する記憶部11と、前記検出部により検出された前記肌領域の色及び前記目標となる肌色に基づいて前記顔の肌領域に照射する投映光の色を決定する決定部4と、前記決定部により決定された色の投映光を、前記投映部により前記顔の肌領域に照射する投映制御部36と、前記決定部により決定された色の投映光を照射しつつ前記撮像部により本撮影を行なう撮影制御部26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタ投映と撮影を同時に行うことができる携帯型情報機器が存在する(例えば、特許文献1参照)。この携帯型情報機器によれば、撮影画角内に均一な輝度の画像を投映することにより、投映光を撮影補助光とする他にフレーミングのアシストとして用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−93801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の携帯型情報機器において画像処理の色階調補正により、得られた画像データの中に存在する人の顔の肌領域の色の調整を行う場合に、補正しすぎるとノイズが増大することがあるため、顔の肌領域の色を自然な肌色とすることが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、人の顔の肌領域の色が自然な肌色となる画像データを得ることができる撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、撮像部と、投映部と、前記撮像部から出力される撮像信号に基づいて事前画像データを取得する事前画像データ取得手段と、前記事前画像データに含まれる顔の肌領域及び該肌領域の色を検出する検出部と、目標となる肌色を記憶する記憶部と、前記検出部により検出された前記肌領域の色及び前記目標となる肌色に基づいて前記顔の肌領域に照射する投映光の色を決定する決定部と、前記決定部により決定された色の投映光を、前記投映部により前記顔の肌領域に照射する投映制御部と、前記決定部により決定された色の投映光を照射しつつ前記撮像部により本撮影を行なう撮影制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人の顔の肌領域の色が自然な肌色となる画像データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係る撮像装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る撮像装置の撮影処理を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態に係る顔認識解析により検出された人の顔の肌領域を示す図である。
【図4】実施の形態に係るsRGBの色空間のxy座標を模式的に示す図である。
【図5】実施の形態に係る人の顔の肌領域に決定された色の投映光が照射されている状態を示す図である。
【図6】実施の形態に係るメイクパターンを示す図である。
【図7】実施の形態に係る人の顔の肌領域に決定された色及びメイクパターンの投映光が照射されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る撮像装置(以下、カメラという。)について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るカメラのシステム構成を示すブロック図である。図1に示すように、カメラ2は、カメラ2の各部を統括的に制御する制御部4を備えている。制御部4には、被写体を撮像する撮像部8、撮像部8から出力された撮像信号から生成された画像データを記憶するメモリ10、制御部4が実行する撮影処理、投映処理、投映光の色及び光量の決定処理等を実行するプログラムを記憶するプログラムメモリ11、撮影画像及び投映画像の画像データ等を記憶するメモリカード12、撮像部8による撮影画角内に投映光を照射する投映部14、カメラ2の背面部に配置され撮像部8により撮像された画像、スルー画及びカメラ2のモードを設定する画面等を表示するLCD表示部16及び操作部18が接続されている。
【0010】
ここで、撮像部8は、撮影レンズ20、イメージセンサ22、レンズ駆動回路24及び撮影制御回路26を備えている。イメージセンサ22は、CCDやCMOS等の撮像素子により構成される。撮影レンズ20は、イメージセンサ22の撮像面上に被写体像を結像させる。撮影制御回路26は、制御部4からの指令によりイメージセンサ22およびレンズ駆動回路24を駆動制御する。即ち、撮影制御回路26は、制御部4からの撮影開始指示に応じてイメージセンサ22に撮像を開始させ、イメージセンサ22から読出した撮像信号を制御部4へ送出する。レンズ駆動回路24は、撮影制御回路26から出力されるフォーカス調節信号に基づいて、撮影レンズ20を構成するフォーカスレンズ(不図示)を光軸方向に移動させる。また、レンズ駆動回路24は、撮影制御回路26から出力されるズーム調節信号に基づいて、撮影レンズ20を構成するズームレンズ(不図示)を光軸方向(テレ側もしくはワイド側)に移動させる。
【0011】
投映部14は、投映レンズ30、液晶パネル32、LED光源34及び投映制御回路36を備えている。投映部14は、投映レンズ30を介して液晶パネル32に表示された画像の投映を行う。投映制御回路36は、制御部4から出力される投映指令に応じてLED光源34及び液晶パネル32の制御を行う。
【0012】
操作部18は、電源スイッチ、レリーズボタン、ズームボタン、カメラ2のモードを設定するモード設定ボタン、十字ボタン及びOKボタン等を備えている。
【0013】
ここで、撮像部8及び投映部14は、撮像部8による撮影方向と投映部14による投映方向が同じ方向を向いて配置される。また、撮像部8及び投映部14は互いに近接して配置される。これにより、撮像部8による撮影画角内に対して、投映部14からの投映光を照射することが可能となる。
【0014】
次に、図2に示すフローチャートを参照して本発明の実施の形態に係るカメラ2の撮影処理について説明する。操作者が操作部18のモード設定ボタンを操作することによりカメラ2を撮影モードに移行させると、制御部4は、撮像部8により所定のフレームレートで被写体を撮像し、撮像部8から出力された撮像信号に基づいてLCD表示部16にスルー画を表示する。ここで、撮像部8から出力されたスルー画像の画像データは事前画像データとして取得され一時的にメモリ10に記憶される(ステップS10)。
【0015】
図3に示すように、カメラ2の撮像部8の撮影画角内に人50の顔が収まっている場合には、LCD表示部16には人50の顔が表示される。この場合制御部4は、顔認識解析によりメモリ10に一時的に記憶された事前画像データから人50の顔を検出する(ステップS12)。そして、検出された人50の顔の構成(目、鼻、唇等)を解析することにより人50の顔の肌領域52を検出し、更に検出された肌領域52の色を検出する(ステップS14)。即ち、図示しない映像信号処理回路により、メモリ10に一時的に記憶された事前画像データを構成するRGB信号に基づいて色差信号及び輝度信号を出力し、色差信号及び輝度信号に基づいて肌領域52の色及び輝度分布を検出する。
【0016】
制御部4は、プログラムメモリ11に記憶されている目標となる肌色のデータを読出し、検出された肌領域52の色及び読み出した目標となる肌色に基づいて、人50の顔の肌領域52に照射する投映光の色を決定する(ステップS16)。例えば、図4は、sRGBの色空間におけるxy座標(色座標)を模式的に示すものであり、この色空間においてはwで示される位置が白を表し、xの値が大きくなれば赤(R)成分が多く、yの値が大きくなれば緑(G)成分が多く、xとyの値が共に小さくなれば青(B)成分が多くなる。図4に示すように、検出された人50の顔の肌領域52における色が色座標において60の位置で示され、目標となる肌色が色座標において62で示される場合には、投映部14から照射される投映光の色が色座標において64で示される色に決定される。
【0017】
図5に示すように、投映制御回路36は制御部4からの指令により、液晶パネル32の各画素の反射率または透過率を制御して投映部14から、決定された色64の投映光66がステップS14で検出された光量分布で撮像部8による撮影画角内の人50の肌領域52に照射される(ステップS18)。従って、人50の顔の肌領域52の色は目標となる肌色62に近い色となり自然な肌色となる。
【0018】
制御部4は、レリーズボタンが押下されたか否かの判別を行い、レリーズボタンが押下されていない場合には(ステップS20、No)、決定された色64の投映光が人50の肌領域52に照射されている状態で、再度撮像部8により所定のフレームレートで撮像し、撮像部8から出力されるスルー画の画像データは事前画像データとして取得され一時的にメモリ10に記憶する(ステップS22)。また、顔認識解析により事前画像データの中から人50の顔の肌領域52の色を検出する(ステップS24)。そして、ステップS16に戻り、検出された人50の顔の肌領域52の色に基づいて投映光の色を再度決定し(ステップS16)、再度決定された色の投映光が人50の顔の肌領域52に照射される(ステップS18)。従って、ステップS16〜ステップS24を繰り返すことによって、人50の顔の肌領域52の色は目標となる肌色62により近い色となり自然な肌色となる。
【0019】
そして制御部4は、レリーズボタンが押下された場合には(ステップS20、Yes)、撮像部8により本撮影を行い(ステップS26)、撮影された画像の画像データをメモリカード12に記憶する。
【0020】
本発明の実施の形態に係るカメラによれば、撮影画角内に存在する人の顔の肌領域の色に基づいて投映部から人の顔の肌領域に照射する投映光の色を決定し、撮影画角内において投映部により、決定された色に基づく投映光が肌領域に照射された状態で撮像部により撮像するため、人の顔の肌領域の色が自然な肌色となる画像データを得ることができる。
【0021】
なお、上述の実施の形態においては、事前画像データとして撮像部8から出力された撮像信号に基づくスルー画の画像データを用いているが、プリ撮影で撮影された画像データを用いてもよい。
【0022】
また、上述の実施の形態において、プログラムメモリ11に目標となる肌色のデータが複数記憶されている場合には、操作者の操作により複数の中から撮影モードで使用する目標となる肌色のデータを予め選択するようにしてもよい。
【0023】
また、上述の実施の形態において、カメラ2をプリントシール機、照明写真機等に用いてもよい。この場合、プリントシール機、照明写真機等を使用することにより、自身の顔の肌領域の色が自然な肌色の状態で写されたプリントシール、証明写真等を容易に得ることができる。
【0024】
また、上述の実施の形態においては、投映部14により、決定された色64の投映光を人50の肌領域52に照射しているが、更にメイクパターンを形成する投映光を人50の顔の肌領域52に照射してもよい。即ち、図6に示すように、操作者の操作部18を用いた操作により、人の顔のどの領域にメイクパターンを照射するのか選択させる画面70をLCD表示部16に表示させ、操作者の操作部18を用いた操作により、撮影モードで使用するメイクパターンとして、例えば額72、頬74、鼻76、唇78、人中80及び顎82を予め選択させる。
【0025】
この場合には、制御部4は、顔認識解析により解析された人50の顔の構成に基づいて、人50の肌領域52において各メイクパターンを照射する領域を決定する。また、目標となる肌色62に基づいて各メイクパターンの予め設定されている色を調整し、各メイクパターンの投映光の色を決定する。図7に示すように、投映制御回路36は制御部4からの指令により、液晶パネル32の各画素の反射率または透過率を制御して投映部14から、決定された色64の投映光66と共に決定された色の各メイクパターンの投映光90が人50の顔の肌領域52に照射される。従って、人50の顔の肌領域52の色は目標となる肌色62に近い色(自然な肌色)となり、更に人50の顔に自然なメイクアップ効果を与えることができる。
【0026】
例えば、上述の実施の形態において、撮影モードで使用するメイクパターンとして、局所的に色味を調整する領域(例えば目元)が予め選択された場合には、決定された色64の投映光66と共にアイシャドウ効果を与えるための投映光を人50の目元に照射する。この場合アイシャドウ効果を与えるための投映光の色は、目標となる肌色62に基づいてシャドー効果を与える色に決定される。
【0027】
また、上述の実施の形態において、撮影モードで使用するメイクパターンとして目が選択された場合には、決定された色64の投映光66と共に目を輝かせるためのキャッチライトを人50の目に照射する。この場合キャッチライトを入れるための投映光の光量は、目標となる肌色62に基づいて人50の目の輝きを強調するように決定される。これにより、撮影時にフラッシュ、レフ板を用いることなく、キャッチライトが写された画像データを容易に得ることができる。
【0028】
また、上述の実施の形態において、LED光源34に代えてRGB LED光源やRGBレーザ光源を用いて、各色LEDや各色レーザの電流比率を制御することにより、RGB LED光源やRGBレーザ光源から照射する光の明るさを調整し、人50の肌領域52の色に基づき決定された色及び光量の投映光を照射するようにしてもよい。
【0029】
また、上述の実施の形態において、カメラ2の投映部14がDMD(デジタルミラーデバイス)を備える場合には、DMDの各ミラーの反射率を制御することにより、人50の肌領域52の色に基づき決定された色及び光量の投映光を照射するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
2…カメラ、4…制御部、8…撮像部、10…メモリ、11…プログラムメモリ、14…投映部、16…LCD表示部、18…操作部、26…撮影制御回路、36…投映制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、
投映部と、
前記撮像部から出力される撮像信号に基づいて事前画像データを取得する事前画像データ取得手段と、
前記事前画像データに含まれる顔の肌領域及び該肌領域の色を検出する検出部と、
目標となる肌色を記憶する記憶部と、
前記検出部により検出された前記肌領域の色及び前記目標となる肌色に基づいて前記顔の肌領域に照射する投映光の色を決定する決定部と、
前記決定部により決定された色の投映光を、前記投映部により前記顔の肌領域に照射する投映制御部と、
前記決定部により決定された色の投映光を照射しつつ前記撮像部により本撮影を行なう撮影制御部と
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記目標となる肌色を選択する選択部を更に備えることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像部により本撮影を行なう前に、
前記事前画像データ取得手段により、再度前記撮像部から出力される撮像信号に基づいて事前画像データを取得し、
前記検出部により、再度前記事前画像データに基づいて被写体に含まれる顔の肌領域の色を検出し、
前記決定部により、再度前記検出部により検出された肌領域の色及び前記目標となる肌色に基づいて前記顔の肌領域に照射する投映光の色を決定し、
前記投映制御部により、前記決定部により決定された色の投映光を前記投映部により前記顔の肌領域に照射することを特徴とする請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記検出部は、顔の構成を検出し、
前記決定部は、前記顔の構成に対応するメイクパターンの各領域の色を前記目標となる肌色を考慮して決定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記メイクパターンを選択するメイクパターン選択部を更に備えることを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記事前画像データは、スルー画の画像データまたはプリ撮影の画像データであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−105232(P2012−105232A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254463(P2010−254463)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】