説明

撮像装置

【課題】 CMOSセンサの横筋ノイズ除去のために水平ライン平均でのクランプ補正があるが、水平OB画素が十分に多くないと水平ラインクランプによる横引きノイズが無視できなくなる。経験的にOB画素は1ラインあたり64画素以上必要であるがCMOSセンサは多チャンネル出力が主流であるため、1ch当たりの水平OB画素を64画素以上確保することは読み出し速度及びデバイスサイズの観点から非常に困難である。
【解決手段】 OB領域の複数ラインの平均値を用いて有効画素をクランプするクランプ回路と、各水平ライン毎の平均値を演算して有効画素をクランプするクランプ回路と、OB領域を用いて横筋ノイズを検出する検出ブロックを有し、該検出ブロックで線キズが検出されたどうかで前記2種類のクランプ回路を切り替えることでライン平均クランプによる横引きノイズの影響を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置において、水平OBクランプを用いた横筋ノイズ補正に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラやディジタルカメラが普及してきており、固体撮像素子としてCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどが用いられてきている。特にCMOSセンサは構成上、横1ラインに一様のオフセット性ノイズ(以下横筋ノイズ)が発生する問題があり、従来の撮像装置ではイメージセンサからの遮光画素からのオプティカルブラック値(以下OB値)を用いて横筋ノイズ補正を行うものがあった。
【0003】
例えば、特許文献1には水平OBの1ライン毎の平均値で有効領域をクランプすることで横筋ノイズ補正を行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−288816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来例では水平OB画素が十分に多くないとクランプによる横引きノイズが無視できなくなる。経験的にOB画素は1ラインあたり64画素以上必要である。またCMOSセンサは多チャンネル出力が主流であるため、1ch当たりの水平OB画素を64画素以上確保することは読み出し速度及びデバイスサイズの観点から非常に困難である。
【0006】
本出願に係る第1の発明は、水平OBで横筋ノイズを検出して、横筋ノイズが検出されたラインのみ対応するOB画素ラインの平均値を用いてライン毎のクランプ(ラインクランプ)を行い、その他通常の横筋ノイズがない領域では複数ラインのOB平均値を用いてクランプ行うことによりラインクランプによる横引きノイズの悪化を最小限に留めて横筋補正を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
OB領域を備えた固体撮像素子と、読み出された画素信号をAD変換してディジタル信号に変換するAD変換器と、オプティカルブラック領域の複数ラインの平均値を用いて有効画素をクランプするクランプ回路と、各水平ライン毎の平均値を演算して有効画素をクランプするクランプ回路と、OB領域を用いて横筋ノイズを検出する検出ブロックを有し、該検出ブロックで線キズが検出されたどうかで前記2種類のクランプ回路を切り替えることによりラインクランプによる横引きノイズの悪化を最小限に留めて横筋ノイズ補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、水平OBで横筋ノイズを検出し、検出したラインのみ該当OBライン平均値で有効画素をクランプするラインクランプを用い、横筋ノイズがない通常領域では複数ラインのOB値の平均値でクランプすることで、ラインクランプによる横引きノイズの悪化を最小限に留めて横筋補正が可能となる。
【0009】
また上記発明は平易なデジタル回路で実現可能なため回路規模の増加を招くこともないのが特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態において、本発明を適用した撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】従来例の水平OBクランプ回路のブロック図とタイミングチャートである。
【図3】横筋ノイズの概念図を示した図である。
【図4】第1の実施形態のフローチャートを示したものである。
【図5】第1の実施の形態において、本発明を適用した撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図6】CMOSセンサの横スミアの概念図を示したものである。
【図7】横スミアによるクランプ出力値の変動を示したものである。
【図8】第2の実施形態のフローチャートを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について説明する。本発明の実施形態を説明する前に、一般的な水平OBクランプ回路の概略を図2を用いて説明する。101cの撮像素子から出力された信号は104cのADCでデジタル信号に変換される。105cはクランプイネーブルSWでCLP_EN信号214がHIの期間閉じられる。タイミングチャートを210〜214で示す。210は垂直同期信号VD、211は水平同期信号で水平同期信号211に同期してセンサ出力はOB領域(212)及び有効画素領域(213)を出力する。CLP_EN信号214は212のOB領域でHI出力(ON)となる信号である。
【0012】
CLP_ENがONの間、信号は106cのキズ除去回路に入力される。白キズ等のイレギュラーな画素はキズ除去回路で除去され、OBクランプには用いない構成をとるのが一般的である。次に108cディジタルフィルタでの平均化処理について説明する。平均化のディジタルフィルタにはいくつもの方式があるがIIRフィルタ形式
Yn=K*Xn+(1−K)*Yn−1, (K=1/64、1/128、1/256など)
が回路規模が少ないため、ここでは具体例として用いる。
【0013】
Ynはフィルタ出力、Yn−1はひとつ前のフィルタ出力値、Xnはフィルタ入力、Kは時定数を示す。このフィルタ構成が示すように水平画素数がKより小さい場合はフィルタの収束は1ラインでは終わらずに複数ラインに跨ってフィルタ出力値を演算する。すなわちOBクランプ値はライン毎の平均値を演算しているのではなく複数ラインに跨って平均値を計算していることがポイントである。208のDACでアナログ信号に変換して203のSUM回路で有効領域画素をOB領域の平均値でクランプする。以上が一般的な水平OBクランプ回路の説明である。
【0014】
次に本発明の実施の形態について説明する。図1は第1の実施形態における撮像装置を示すものである。撮像素子101aからの出力は104aのADCでデジタル信号に変換される。105aのCLP_EN信号のタイミングチャートは前述した図2と同様であるため説明を省略する。106aで所定レベルのキズを検出してキズを除去したデータを108aのディジタルフィルタに出力する。それと同時にキズの個数をカウントアップ回路107aでカウントアップする。107aカウントアップ回路はCLP_ENの立ちあがりでカウント値が0にリセットされる。109aのライン平均回路はCLP_ENがHIの期間の画素の平均値を演算する回路である。CLP_ENの立下り時にカウントアップカウンタ107aのカウント値とCLP_ENがHI期間の水平画素数が一致した場合、すなわち1ライン全てのOB画素がキズと判断した場合はセレクタ回路110aを109aと111aが接続される方向に切替て、ライン平均値で有効画素をクランプする。図3は横筋ノイズが発生時の概念図を示す。301が横筋ノイズ、302はOB領域、303は有効画素領域をしめす。
【0015】
上記動作で述べたように、OB領域が全てキズであった場合にそのラインは横筋ノイズと判断し、該当ラインのみ、ライン平均でクランプすることにより横筋ノイズを除去可能となる。
【0016】
図4に本実施形のフローチャートを示す。まずCLP_EN立ちあがりでクランプ動作がスタートする(S1001a)。S1003aのキズカウンタ及びS1004aのライン平均演算部はこのタイミングで0に初期化される。S1002aでキズ検出を行い、キズと判断した場合はS1003aでキズ個数をカウントアップする。
【0017】
キズを除去された信号は、S1005aのディジタルフィルタ演算部で平均化処理が行われる。S1004aではライン平均演算を実施する。S1006aのクランプEN終了(CLP_ENの立下り)を判定し、終了時であった場合にはS1007aで水平クランプ画素とキズカウント値が等しいか否かを判定する。ここで等しい場合にはそのラインは横筋ノイズと判定してS1004aのライン平均値を用いて有効画素をクランプする。水平クランプ画素とキズカウント値が等しくない場合はS1005aのディジタルフィルタの出力値を用いて有効画素をクランプする。
【0018】
<第2の実施形態>
図5は第2の実施形態を示すものである。第1の実施形態との違いは201ラインメモリ平均回路、202横スミア検出回路、203セレクタ回路である。実施例1では横筋ノイズを除去するために横筋ノイズを検出したラインは109ライン平均回路の出力値でクランプしていた。実施例1の形態でも効果は十分にあるがOB画素が少ない場合は低照度でゲインが非常に大きくかかったシーンではライン平均クランプによるSN劣化(横引きノイズ)が問題となる場合がある。そこで第二の実施形態では201のラインメモリ平均回路を用いてライン平均値を複数フレームに跨って平均することでSN劣化を抑制する。次に202横スミア検出回路を説明する前にまずCMOSセンサ特有の現象である横スミア現象を説明する。図6は横スミア発生時の概念図である。高輝度被写体601を撮影すると、602に示すように高輝度被写体の左右の黒レベルが若干であるが変動してしまう現象を横スミアと呼ぶ。横スミアの発生原理についてはいつくもの要因があるのでここでは割愛する。202横スミアの検出回路の検出方法は多数あるが、簡単な例としてはキズ検出回路でキズと判定したラインが垂直に連続してあるライン以上続いた場合は横スミアと判断とするなどを用いても良い。
【0019】
203のセレクタ回路は202横スミア検出回路で横スミアを検出した時に109bライン平均回路の出力を選択し、横スミアを検出しない時はラインメモリの出力を選択する。横スミアの有無により切り替える理由は、図7に示すようにラインメモリを用いて複数フレームで平均値を生成した場合に横スミア復帰時にクランプ値が瞬時に追従することができないことを防止するためである。図7(a)が横スミア発生時のラインメモリの出力値を示す。時間tで被写体から高輝度光源が消えて横スミアがなくなった場合に、出力値が直ぐに追従しない問題が発生する。図7(b)は横スミア発生時のライン平均の出力値を示す。フレーム間の平均はとっていない為、時間tで被写体から高輝度光源が消えて横スミアがなくなった場合に、フレーム単位での変化に直ぐに追従可能である。
【0020】
図8に本実施形のフローチャートを示す。S1001b〜S1009bは実施例1のフローチャート図4のS1001a〜S1009aと同等であるため説明を省略する。S2001で横スミアが発生しているか否かを判定し、横スミアが発生していない場合は該当ラインの複数フレーム平均値で有効画素をクランプする(S2002)。
【0021】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0022】
101‥‥撮像素子
102‥‥クランプ回路
103‥‥クランプ補正部
104‥‥ADコンバータ
105‥‥クランプイネーブルSW
106‥‥キズ検出回路
107‥‥カウントアップ回路
108‥‥ディジタルフィルタ
109‥‥ライン平均回路
110‥‥セレクタ回路
111‥‥DAコンバータ
112‥‥信号処理回路
210‥‥垂直同期信号VD
211‥‥水平同期信号HD
212‥‥OB画素領域
213‥‥有効画素領域
214‥‥クランプイネーブル信号
301‥‥横筋ノイズ
302‥‥OB画素領域
303‥‥有効画素領域
601‥‥高輝度被写体
602‥‥横スミア
603‥‥OB画素領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オプティカルブラック領域を備えた固体撮像素子と、読み出された画素信号をAD変換してディジタル信号に変換するAD変換器と、オプティカルブラック領域の複数ラインの平均値を用いて有効画素をクランプするクランプ回路と、各水平ライン毎の平均値を演算して有効画素をクランプするクランプ回路と、オプティカルブラック領域を用いて横筋ノイズを検出する検出ブロックを有し、該検出ブロックで線キズが検出されたどうかで前記2種類のクランプ回路を切り替えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
上記撮像装置において横筋と判断したラインのみ、複数のフレームを用いて平均化処理を行った値を用いて該当ラインをクランプし、該当ラインが横スミアが発生してない時に限り前記複数フレームクランプ処理に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−106186(P2013−106186A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248649(P2011−248649)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】