説明

撮像装置

【課題】 撮影者の発する音声を低減する。
【解決手段】 撮像手段により得られた画像を表示する表示部の表示面の方向を検出し、その方向から到来した音声と判定された音声に対応する音声信号の音量を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動画像をCCD等の撮像素子により撮影し、周囲の音声をマイク等により集音し、同期させて記録することができる撮像装置が知られている。これらの撮像装置において、表示部としてLCDモニタを備え、撮像中の画像を表示部に表示できる撮像装置が一般的に知られている。また、近年においては、撮像装置に搭載された表示部の方向を自由に変えることができる、いわゆる「バリアングルモニタ」を搭載した撮像装置も登場している。
【0003】
従来、このような撮像装置を撮影者が手に持って撮影する場合、撮像装置と被写体までの距離に比べて、撮像装置と撮影者の距離の方が近く、撮影者の発する音声が大きく記録されてしまい、被写体の発する音声が聞き取りにくくなってしまうという問題があった。
【0004】
このような問題に対し、例えば、特許文献1では、撮像装置の前部(被写体方向)と後部(撮影者方向)にマイクを搭載し、後部からの音声入力を低減するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−133198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1は、撮影者が常にカメラの後部にいるという前提で発案されたものであり、実際、前述したような「バリアングルモニタ」を搭載した場合には、撮影者がカメラの後部にいなくなる可能性もある。例えば、カメラに対して、モニタを下方向にむけている場合には下方向に撮影者がいる場合もあるし、モニタを横に向けている場合には、横方向に撮影者がいる場合もある。
【0007】
この場合には、特許文献1のように、カメラの後方向の音声を低減するだけでは撮影者の発する音声を低減することができなくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、撮影者の方向を推定して、撮影者の発する音声を低減することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の撮像装置は、撮像手段と、撮像手段により得られた画像を表示する、表示面の方向を変更可能な表示手段と、前記表示手段の表示面の方向である表示方向を検出する検出手段と、複数の集音手段と、前記検出手段により検出された前記表示方向から到来した音声に対応する、前記複数の集音手段により得られた音声信号の音量を低減する音量制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示部の表示面の方向である表示方向に基づいて、表示方向から到来する音声に対応する音声信号の音量を低減することにより、撮影者の方向と推定される方向から到来する音声の音量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の撮像装置のブロック構成図である。
【図2】本実施形態の撮像装置の使用例を説明する図である。
【図3】音声マイク4の配置構成図である。
【図4】音声マイク4と音声信号処理回路5のブロック構成図である。
【図5】音声の到来方向検出方法を説明する図である。
【図6】音声の到来方向検出方法を説明する図である。
【図7】第2の実施形態の音声マイク4の配置構成図である。
【図8】第2の実施形態の音声マイク4と音声信号処理回路5のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を、図を用いて説明するが、本発明の実施形態は、以下の実施例に限られるものではない。
【0013】
[第1の実施形態]
本実施形態の撮像装置は、被写体の光学像を撮像し、撮像により得られた画像を表示部に表示することができる。表示部については、撮像装置本体に対して、3軸に自由な回転ができるように装着されている。すなわち、表示部の表示面の向いている方向(表示方向)を変更可能に装着されている。そして、表示部の表示面の向いている方向(表示方向)を検出するために、3軸角度センサにより表示部の角度を検出できるようになっている。さらに、マイクユニットを有し、マイクユニットに備えられた複数のマイクに入力された音声信号に基づいて、音声の到来方向を判定することができる音声信号処理部を有する。音声信号処理御部には、表示面の向いている方向を3軸角度センサの出力から表示面の方向を検出し、表示面の方向から到来する音声信号の音量を低減している。そして、音声信号制御部により得られた音声信号を、撮像部により得られた画像信号から生成した動画信号とともに記録媒体に記録する。以下、この紆余な撮像装置について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の撮像装置のブロック構成図である。
【0015】
光学レンズ1は、撮像対象(不図示)の光像を撮像部2に集光する。撮像部2はCCDやCMOSセンサなどで構成され、集光された光を電気信号に変換する光電変換素子である。変換された電気信号は映像信号処理回路3で映像信号処理される。一方、音声は、音声マイク4で集音され電気信号に変換され、変換された音声信号は、音声信号処理回路5で音量などを制御する処理が施される。映像信号処理回路3の出力の映像信号と音声信号処理回路5の出力の音声信号は、MPEGエンコード部7で圧縮されてMPEG動画像にエンコードされ、Disk記録部8で記録媒体9に記録される。また、映像信号処理回路3の出力の映像信号は、映像再生回路6を経由してLCDモニタ10で表示される。すなわち、LCDモニタ10には、撮像部2で撮像中の画像が表示される。なお、本実施例では、記録媒体としてどのような記録媒体を用いても構わない、すなわち、光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなど、どのようなものを用いても構わない。
【0016】
LCDモニタ10は3次元方向に角度が変えられる構造になっている。すなわち、LCDモニタ10の表示面の方向を変更可能な構造になっている。そして、角度検出部11はLCDモニタ10の表示面の向いている角度を検出する。角度検出部11で検出されたLCDモニタ10の角度情報(θx、θy、θz)は、音声信号処理回路5に送られる。
【0017】
次に、音声信号処理回路5の動作について説明する前に、本実施形態の撮像装置の使用状況に関して説明する。
【0018】
図2(A)は、撮影者がカムコーダを正面にかざして、撮影対象を記録している様子を示している。撮影者はカムコーダの後ろに位置していて、LCDモニタ10の表示が撮影者に見えるように、LCDモニタ10の表示面が後方に向けられている。一方、図2(B)では、撮影者はカムコーダを上方にかざして、撮影対象を記録している様子を示している。例えば、このような使用状況は、運動会等で撮影者の正面に人だかりがあり、撮影者はやむなくカムコーダを上方にかざして、撮影をする場合などに発生する。その際、撮影者は、LCDモニタ10を下斜め方向に傾けて、撮影中の画像を確認している。このように撮影中に、撮影者はLCDモニタ10の表示を確認しているので、LCDモニタ10の正面方向に撮影者が位置している。
【0019】
次に音声マイク4の構成について説明する。音声マイク4は、複数のマイクからなる。すなわち、音声マイク4は、図3のように、上マイク25、下マイク26、左マイク24、右マイク23、前マイク21、後マイク22の6個のマイクで構成されている。上マイク25と下マイク26で集音された音声の位相差検出により上下方向の音声の到来方向が検出分離され、左マイク24と右マイク23で集音された音声の位相差検出により左右方向の音声の到来方向が検出分離され、左マイク24と右マイク23で集音された音声の位相差検出により左右方向の音声の到来方向が検出分離され、前マイク21と後マイク22での音声の位相差検出により前後方向の音声の到来方向が検出され分離される。
【0020】
位相差検出による音声の到来方向の検出と分離に関して説明する。例えば図5のように、左マイク24と右マイク23の右斜め方向から音声が到来した場合、左マイク24と右マイク23に到来する音声の時間差をΔT、マイク間距離をd、到来方向をθとすると、以下の関係式から、音声の到来方向θを演算して判定することができる。
(数式1)
ΔT=dx sinθ
【0021】
図6(A)は左マイク24の音声入力の様子を示した図であり、図6(B)は右マイク23の音声入力の様子を示した図である。左マイク24では時刻t2において音声群Aと音声群Bが検知され、右マイク23では時刻t1で音声群Aと音声群Bが検知されている。この場合は、音声群Aの到来方向は、左マイク24と右マイク23とに同時刻に音声が到来していることから垂直方向つまり正面方向であると判定することができる。音声群Bの到来方向は、以下の関係式で示される。
(数式2)
(t2−t1)=dx sinθ
【0022】
すなわち、今回の場合は、右斜め方向θと演算により判定することができる。このようにして、任意の方向θから到来する音声を検知し分離することが出来る。
同様に、上マイク25と下マイク26から上下方向の音声の分離を行い、前マイク21と後マイク22から、前後方向の音声の分離が行える。
【0023】
次に、音声信号処理回路5について説明する。図4は音声マイク4と音声信号処理回路5のブロック図である。
【0024】
前マイク21で集音された音声はFFT27で周波数および位相差解析され、方向フィルタ33に送られる。後マイク22で検知された音声はFFT28で周波数および位相差解析され、同様に方向フィルタ33に送られる。方向フィルタ33は、図6で説明したように、相関のある音声(周波数スペクトル)群を抽出し、音声入力の入力時刻の差から音声の到来方向を判定する。または、位相差を検出してもよい。角度検出器11で検出されたLCDモニタ10の向いている角度のY軸成分θyは方向フィルタ33に入力される。方向フィルタ33は、θy方向から到来した音声に対応する音声群の音声信号の音量を低減し、加算回路36に音声信号を送出する。
【0025】
右マイク23で検知された音声はFFT29で周波数および位相差解析され、方向フィルタ34に送られる。左マイク24で検知された音声はFFT30で周波数および位相差解析され、同様に方向フィルタ34に送られる。方向フィルタ34は、図6で説明したように、相関のある音声(周波数スペクトル)群を抽出し、位相差を検出する。角度検出器11で検出されたLCDモニタ10の向いている角度のX軸成分θyは方向フィルタ34に入力される。方向フィルタ34は、θx方向から到来する音声に対応する音声信号の音量を低減し、加算回路36に音声信号を送出する。
【0026】
上マイク25で検知された音声はFFT31で周波数および位相差解析され、方向フィルタ35に送られる。下マイク26で検知された音声はFFT32で周波数および位相差解析され、同様に方向フィルタ35に送られる。方向フィルタ35は、図6で説明したように、相関のある音声(周波数スペクトル)群を抽出し、位相差を検出する。角度検出器11で検出されたLCDモニタ10の向いている角度のZ軸成分θzは方向フィルタ35に入力される。方向フィルタ35は、θz方向から到来する音声に対応する音声信号の音量を低減し、加算回路36に音声信号を送出する。
【0027】
加算回路で、xyz軸成分の音声が加算され音声信号としてMPEGエンコード7でMPEGの音声フォーマットに圧縮され、映像信号とともにDisk記録部8で記録媒体9に記録される。
【0028】
このような構成により、本実施形態の撮像装置は、撮像手段により得られた画像を表示する表示部の表示面の方向を検出し、その方向から到来した音声と判定された音声に対応する音声信号の音量を低減することができる。すなわち、表示面の方向にいると推定される撮影者の発する音声を低減することができるのである。
【0029】
なお、撮影者自身の自己撮影を行う場合は、LCDモニタをレンズ方向に向けて撮影を行う場合が一般的である。つまり撮影者が撮影対象となる。したがって、LCD面をレンズ方向に向けた場合には、本機能を自動的に無効にする(表示面の方向から到来する音声に対応する音声信号の音量の低減は行わない)機能を設けても良い。また、本機能の有効/無効を操作者が指示するようにしても良い。
【0030】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では音声マイク4は6個のマイク(上下左右前後))で構成されていたが、図7のように4個のマイク(左マイク24、右マイク23、下マイク26、後マイク22)で構成してもよい。なお、音声マイク4、音声信号処理回路5以外の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0031】
図8は図7のような構成の音声マイク4に対応する、音声信号処理回路5のブロック構成図である。右マイク23の出力と左マイク24の出力を加算器50で加算しFFT51で周波数および位相差解析する。方向フィルタ33でFFT51とFFT28の出力から前後方向(Y軸)の音量フィルタリングを行う。方向フィルタ35ではFFT51とFFT26の出力から上下方向(Z軸)の音量フィルタリングを行う。方向フィルタ34ではFFT29とFFT30の出力から左右方向(X軸)方向の音量フィルタリングを行うのは図4、5で説明した内容と同一である。
【0032】
このような構成により、本実施形態の撮像装置は、撮像手段により得られた画像を表示する表示部の表示面の方向を検出し、その方向から到来した音声と判定された音声に対応する音声信号の音量を低減することができる。すなわち、表示面の方向にいると推定される撮影者の発する音声を低減することができるのである。
【0033】
なお、撮影者自身の自己撮影を行う場合は、LCDモニタをレンズ方向に向けて撮影を行う場合が一般的である。つまり撮影者が撮影対象となる。したがって、LCD面をレンズ方向に向けた場合には、本機能を自動的に無効にする(表示面の方向から到来する音声に対応する音声信号の音量の低減は行わない)機能を設けても良い。また、本機能の有効/無効を操作者が指示するようにしても良い。
【0034】
[その他の実施形態]
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0035】
また、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線/無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含む。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮像する撮像手段と、
撮像中の画像を表示する表示手段と、
表示手段の向いている方向を検出する検出手段と、
音声入力手段と、
音声入力手段に入力された音声の音量を制御する音声信号処理手段とを有し、
前記音声信号処理手段は、前記検出手段で検出した方向から到来する音声の音量を低減することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記音声信号処理手段により音量の低減された音声を記録媒体に記録することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
撮像手段と、
撮像手段により得られた画像を表示する、表示面の方向を変更可能な表示手段と、
前記表示手段の表示面の方向である表示方向を検出する検出手段と、
複数の集音手段と、
前記検出手段により検出された前記表示方向から到来した音声に対応する、前記複数の集音手段により得られた音声信号の音量を低減する音声信号処理手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
前記音声信号処理手段は、前記複数の集音手段により得られた音声信号に基づいて、音声の到来方向を判定し、前記判定された到来方向からの音声に対応する前記音声信号の音量を低減することを特徴とする請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記音声信号処理手段により音量の低減された音声信号を記録媒体に記録することを特徴とする請求項3または4記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−70235(P2013−70235A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207326(P2011−207326)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】