説明

撮影レンズおよびカメラ

【課題】 高画素に対応した小型で廉価な撮影レンズを提案すること。
【解決手段】 被写体側から順に、開口絞り(S1)、第一レンズ(L11)、第二レンズ(L21)、第三レンズ(L31)の順に構成される撮影レンズである。前記第一レンズ(L1)は物体側に凸面を向けた正のパワーをもつメニスカスレンズであり、 前記第二レンズ(L21)は像側に凸面を向けた負のパワーをもつメニスカスレンズであり、 前記第三レンズ(L31)は物体側に凸面を向けた正または負のパワーをもつメニスカスレンズである。前記第一レンズ(L11)、前記第二レンズ(L21)および前記第三レンズ(L31)における両面は非球面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCDやCMOS等の受光素子を用いたデジタルカメラ、携帯電話搭載カメラ、車載用カメラ、監視用カメラ等に使用される小型で軽量な撮影レンズおよびそれを用いたカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOS等の受光素子を用いた監視用カメラやデジタルカメラ等に組み込まれている撮影レンズは、忠実な被写体の再現性を備えていることが望ましい。
最近では、CCD自体やCCDカメラが小型化されてきており、これに伴って、これらに組み込まれる撮影レンズも必然的に小型化、コンパクト化の要求が高まってきている。
さらに、CCD等の受光素子は、CCDの小型化とは裏腹にメガオーダーの高画素化となってきている。これを用いたカメラに使用される撮影レンズも必然的に高い光学性能を発揮できるものでなければならなくなってきた。
一般的に、たとえば、特許文献1に記載されている技術では、高い光学性能を発揮させるために、多くのレンズ枚数を用いて収差補正を行っている。
【0003】
CCDやCMOS等の受光素子の特徴として、各画素に取り込まれる光線角度に制約がある。
これを無視するような光学系が組み込まれたカメラでは周辺光量が減少し、所謂、周辺部の暗いカメラとなってしまう。従来では、これらに対応するため、電気的補正回路を設ける方法、受光素子と一対をなすマイクロレンズを配置するなどして素子面への受光角を拡大するなどの技術が採用されていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−219982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯電話に搭載されるデジタルカメラや薄型のデジタルカメラにおいては、コンパクト化が必須である一方、メガオーダーに高画素に対応することは困難だった。
本発明の課題は、メガオーダーの高画素に対応できるように収差補正が可能であり、且つ軽量コンパクト化を図った撮影レンズおよびそれを用いたカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)
請求項1記載の発明は、 被写体側から順に、開口絞り(S1)、第一レンズ(L11)、第二レンズ(L21)、第三レンズ(L31)の順に構成される撮影レンズである。
前記第一レンズ(L11)は物体側に凸面を向けた正のパワーをもつメニスカスレンズであり、 前記第二レンズ(L21)は像側に凸面を向けた負のパワーをもつメニスカスレンズであり、 前記第三レンズ(L31)は物体側に凸面を向けた正または負のパワーをもつメニスカスレンズである。
そして、前記第一レンズ(L11)、前記第二レンズ(L21)および前記第三レンズ(L31)における両面は非球面であることを特徴とする。
【0007】
(作用)
以上のような構成の撮影レンズによって、メガオーダーの高画素に対応できるように収差補正が可能であり、且つ軽量コンパクト化が実現できる。
【0008】
(請求項2)
請求項2記載の発明は、 被写体側から第一レンズ(L21)、開口絞り(S2)、第二レンズ(L22)、第三レンズ(L32)の順に構成される撮影レンズである。
前記第一レンズ(L21)は、物体側に凸面を向けた正のパワーをもつメニスカスレンズであり、 前記第二レンズ(L22)は像側に凸面を向けた負のパワーをもつメニスカスレンズであり、 前記第三レンズ(L32)は物体側に凸面を向けた正または負のパワーをもつメニスカスレンズである。
そして、前記第一レンズ(L21)、前記第二レンズ(L22)および前記第三レンズ(L32)における両面が非球面であることを特徴とする。
【0009】
(作用)
以上のような構成の撮影レンズによっても、メガオーダーの高画素に対応できるように収差補正が可能であり、且つ軽量コンパクト化が実現できる。
【0010】
(請求項3)
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の撮影レンズを限定したものである。
すなわち、前記第一レンズ(L11,L21)の物体側面から結像面までの距離をΣd、前記第一レンズの焦点距離をf1、合成焦点距離をfとしたとき、
1.3<Σd/f1<1.5 および 1.0<Σd/f <1.4 ←追加
を満たす撮像レンズであることを特徴とする。
【0011】
上記の条件を上回ると、メガオーダーの高画素に対応しようとした場合にコンパクト化が困難である。
また、上記の条件を下回ると、諸性能が低下し、要求される高性能化に対応できない。
【0012】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の撮影レンズを限定したものである。
すなわち、前記第一レンズ(L11,L21)と前記第二レンズ(L21,L22)との距離をd2、前記第一レンズ(L11,L21)の焦点距離をf1としたとき、
0.2<d2/f1<0.25
を満たすように形成したことを特徴とする。
【0013】
上記の範囲を外れると、像面湾曲などの収差によって適切なバランスが得られないためである。
【0014】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の撮像レンズを限定したものである。 すなわち、前記第三レンズ(L31,L32)は、撮像素子に対する主光線入射角度が最大25度以下となるように形成したことを特徴とする。
【0015】
(作用)
CCDやCMOS等の受光素子には、各画素に取り込まれる光線角度に制約がある。そのため、第三レンズの像側面の両端が像面に凸面を向けた非球面レンズである必要がある。たとえば、画面周辺部に生じるシェーディングを防ぐ必要があるからである。
撮像素子に対する主光線入射角度が最大25度以下となるように形成すれば、第三レンズの外径寸法を抑えることができ、撮像レンズ全体をコンパクトにすることができる。
【0016】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載の撮影レンズを限定したものであり、
画角が45度から75度の間であるように形成したことを特徴とする。
【0017】
画角が45度から75度の間であるように形成することで、撮像レンズ全体をコンパクトにすることができる。
【0018】
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の撮影レンズを限定したものである。
すなわち、レンズ系の明るさを決めるFnoナンバーにおいては、
2.6<Fno<3.5
を満たすように形成したことを特徴とする。
【0019】
Fnoナンバーが3.5を上回ると、撮像性能が安定するものの、レンズの明るさが不足し、カメラとしての性能は低いとして扱われることとなる。
Fnoナンバーが2.6を下回ると、レンズの明るさとしては十分でありカメラとしての性能は高いが、撮像性能が不安定となる。
【0020】
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の撮影レンズを限定したものである。
すなわち、前記第二レンズ(L21,L22)のアッベ数をνd2としたとき、
25<νd2<60
を満たすようにプラスチックにて形成したことを特徴とする。
【0021】
色収差の補正には、アッベ数25〜50のプラスチック材料を用いるのが合理的だからである。また、レンズの加工性を重視する場合には、アッベ数50〜60のプラスチック材料を用いることが合理的だからである。
【0022】
(請求項9)
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の撮影レンズを採用したカメラに係る。
カメラとしては、デジタルカメラ、携帯電話搭載カメラ、車載用カメラ、監視用カメラなどである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1から請求項8によれば、メガオーダーの高画素に対応できるように収差補正が可能であり、且つ軽量コンパクトな撮影レンズを提供することができた。
請求項9によれば、メガオーダーの高画素に対応できるように収差補正が可能であり、且つ軽量コンパクトなカメラを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、図1および図2を参照して、本発明を適用した3群3枚構成の撮影レンズに係る実施形態を説明する。
【0025】
図1は、第一の実施形態に係る撮影レンズの断面を示している。
第一の実施形態は、撮影レンズの主要部を示したものであり、被写体側から順に、開口絞りS1、第一レンズL11、第二レンズL21、第三レンズL31、カバーガラス4の順に構成される撮影レンズである。
第一レンズL11は被写体側に凸面を向けた正のパワーをもつメニスカスレンズである。また、第二レンズL21は結像面5側に凸面を向けた負のパワーをもつメニスカスレンズである。更に、第三レンズL31は物体側に凸面を向けた正または負のパワーをもつメニスカスレンズである。
そして、前記第一レンズL11、前記第二レンズL21および前記第三レンズL31における両面が非球面である両面非球面レンズである。
【0026】
第一レンズL11の物体側面から結像面までの距離をΣd、前記第一レンズの焦点距離をf1、合成焦点距離をfとしたとき、
1.3<Σd/f1<1.5 および 1.0<Σd/f <1.4 ←追加
を満たす撮像レンズである。
F1が1.5を上回ると、メガオーダーの高画素に対応しようとした場合にコンパクト化が困難だからであり、F1が1.3を下回ると、諸性能が低下して要求される高性能化に対応できないからである。
【0027】
第一レンズL11と第二レンズL21との距離をd2、前記第一レンズの焦点距離をf1としたとき、
0.2<d2/f1<0.25
を満たすように形成している。上記の範囲を外れると、像面湾曲などの収差によって適切なバランスが得られないためである。
【0028】
第三レンズL31は、撮像素子に対する主光線入射角度が最大25度以下となるように形成している。
撮像素子に対する主光線入射角度が最大25度以下となるように形成すれば、第三レンズL31の外径寸法を抑えることができ、撮像レンズ全体をコンパクトにすることができるからである。
本実施形態の撮像レンズの画角は、45度から75度の間であるように形成している画角が45度から75度の間であるように形成することで、撮像レンズ全体をコンパクトにすることができるからである。
【0029】
本実施形態の撮像レンズの明るさを決めるFnoナンバーにおいては、
2.6<Fno<3.5
を満たすように形成する。 Fnoナンバーが3.5を上回ると、撮像性能が安定するものの、レンズの明るさが不足し、カメラとしての性能は低いとして扱われる。また、Fnoナンバーが2.6を下回ると、レンズの明るさとしては十分でありカメラとしての性能は高いが、撮像性能が不安定となるからである。
【0030】
第二レンズL21のアッベ数をνd2としたとき、
25<νd2<60
を満たすようにプラスチックにて形成する。 色収差の補正には、アッベ数25〜50のプラスチック材料を用いるのが合理的だからである。また、レンズの加工性を重視する場合には、アッベ数50〜60のプラスチック材料を用いることが合理的だからである。
【0031】
図2に基づいて、第二の実施形態について、説明する。
第二の実施形態もまた、撮影レンズの主要部を示したものであり、被写体側から順に、被写体側から第一レンズL21、開口絞りS2、第二レンズL22、第三レンズL32、カバーガラス4、結像面5の順に構成される撮影レンズである。
第一レンズL21は、物体側に凸面を向けた正のパワーをもつメニスカスレンズである。第二レンズL22は結像面5側に凸面を向けた負のパワーをもつメニスカスレンズである。 前記第三レンズL32は被写体側に凸面を向けた正または負のパワーをもつメニスカスレンズである。
そして、前記第一レンズL21、前記第二レンズL22および前記第三レンズL32における両面は非球面であるような非球面レンズとしている。
【0032】
第一レンズL21もまた、その物体側面から結像面までの距離をΣd、前記第一レンズの焦点距離をf1、合成焦点距離をfとしたとき、
1.3<Σd/f1<1.5 および 1.0<Σd/f <1.4 ←追加
を満たす撮像レンズである。
【0033】
また、第一レンズL21と第二レンズL22との距離をd2、前記第一レンズの焦点距離をf1としたとき、
0.2<d2/f1<0.25
を満たすように形成している。
【0034】
第三レンズL31は、撮像素子に対する主光線入射角度が最大25度以下となるように形成する。また、撮像レンズの画角は、45度から75度の間であるように形成している画角が45度から75度の間であるように形成する。
【0035】
本実施形態の撮像レンズの明るさを決めるFnoナンバーについても、
2.6<Fno<3.5
を満たすように形成する。
【0036】
第二レンズL22は、そのアッベ数をνd2としたときには、
25<νd2<60
を満たすようにプラスチックにて形成する。
【0037】
第一の実施形態に係る撮影レンズ、または第二の実施形態に係る撮影レンズを用いて、デジタルカメラ、携帯電話搭載カメラ、車載用カメラ、監視用カメラなどを形成すると、以下のような効果がある。
第一に、メガオーダーの高画素に対応できるように収差補正が可能である。第二に、軽量コンパクトであり、比較的安価に製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願発明は、デジタルカメラや携帯電話などの携帯情報機器の製造業、車載カメラなどの自動車産業、監視用カメラなどの製造業などにおいて、利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第一の実施形態に係る撮影レンズの構成図である。
【図2】第一の実施形態に係る撮影レンズの構成図である。
【符号の説明】
【0040】
S1 開口絞り S2 開口絞り
L11 第一レンズ L21 第一レンズ
L21 第二レンズ L22 第二レンズ
L31 第三レンズ L32 第三レンズ
4 カバーガラス
5 結像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体側から開口絞り、第一レンズ、第二レンズ、第三レンズの順に構成され、
前記第一レンズは物体側に凸面を向けた正のパワーをもつメニスカスレンズであり、
前記第二レンズは像側に凸面を向けた負のパワーをもつメニスカスレンズであり、
前記第三レンズは物体側に凸面を向けた正または負のパワーをもつメニスカスレンズであり、
前記第一レンズ、前記第二レンズおよび前記第三レンズにおける両面は非球面であることを特徴とする撮影レンズ。
【請求項2】
被写体側から第一レンズ、開口絞り、第二レンズ、第三レンズの順に構成され、
前記第一レンズは、物体側に凸面を向けた正のパワーをもつメニスカスレンズであり、
前記第二レンズは像側に凸面を向けた負のパワーをもつメニスカスレンズであり、
前記第三レンズは物体側に凸面を向けた正または負のパワーをもつメニスカスレンズであり、
前記第一レンズ、前記第二レンズおよび前記第三レンズにおける両面は非球面であることを特徴とする撮影レンズ。
【請求項3】
前記第一レンズの物体側面から結像面までの距離をΣd、前記第一レンズの焦点距離をf1、合成焦点距離をfとしたとき、
1.3<Σd/f1<1.5 および 1.0<Σd/f <1.4
を満たす撮像レンズであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の撮影レンズ。
【請求項4】
前記第一レンズと前記第二レンズとの距離をd2、前記第一レンズの焦点距離をf1としたとき、
0.2<d2/f1<0.25
を満たすように形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の撮影レンズ。
【請求項5】
前記第三レンズは、撮像素子に対する主光線入射角度が最大25度以下となるように形成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の撮像レンズ。
【請求項6】
画角が45度から75度の間であるように形成したことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の撮影レンズ。
【請求項7】
レンズ系の明るさを決めるFnoナンバーにおいては、
2.6<Fno<3.5
を満たすように形成したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の撮影レンズ。
【請求項8】
前記第二レンズのアッベ数をνd2としたとき、
25<νd2<60
を満たすようにプラスチックにて形成したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の撮影レンズ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の撮影レンズを用いたことを特徴とするカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−89856(P2008−89856A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269391(P2006−269391)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(392034746)吉川化成株式会社 (22)
【Fターム(参考)】