説明

撮影用照明装置

【課題】車室内でのカメラ撮影に必要な光量の照明光を安価に得ることができる撮影用照明装置を提供する。
【解決手段】車室内には、乗員等を撮影するためのカメラ11を備えた撮像装置1が設置され、更に、撮影用の補助光(照明光)を得るために照明装置2が設けられている。照明装置2は、カメラ11の補助光として、例えば可視光に近い880nmを発光する第1のランプ21、補助光として、例えば950nmを発光する第2のランプ22、第1,第2のランプ21,22の投光面にハイパスまたはバンドパス機能を有する光学フィルタ23、及び第1,第2のランプ21,22の点・消灯を制御するランプ点灯制御部24を備える。第1のランプ21は視野範囲が明るいときに点灯され、第2のランプ22は視野範囲が暗いときに点灯される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影用照明装置に関し、特に、車室内に設置されたカメラの撮影範囲へ投光する照明光に用いられる撮影用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、例えば、車室内の乗員をカメラで撮影し、その撮影画像から画像処理によって乗員の特定部分を抽出し、その抽出結果に基づいて各種の制御を行わせることが考えられている。
【0003】
例えば、赤外線による照明光を補助光にしながらマップランプに設置したカメラで乗員の頭部を撮影して赤外線画像を取得し、この赤外線画像に画像処理を施して乗員の状態を検知し、この検知結果に基づいてエアバックを作動させるか否かを決定し、エアバックの動作に伴う安全性を向上させるようにした乗員検知システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この乗員検知システムでは、昼間には太陽光が、夜間には対向車のヘッドライトや街路灯の光が画像内に入り込むなどして明るさに激しい変化が生じても、明るさの安定した撮影画像が得られるように、波長700〜1000nmの近赤外光を投光する補助光発光装置を用いると共に、上記波長域以外の光をカットする可視光カットフィルタをカメラの撮影光路上に設置している。
【特許文献1】特開2004−144512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の乗員検知システムによると、可視光カットフィルタは、急峻な特性を有する必要があるため、コストアップを招くことになる。また、補助光発光装置(照明装置)は、光量によるS/N比の確保のために多数のLEDを用いねばならず、これにより消費電力の増大及びコストアップを招くことになる。
【0006】
従って、本発明の目的は、車室内でのカメラ撮影に必要な光量の照明光を安価に得ることができる撮影用照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、以下の撮影用照明装置を提供する。
【0008】
[1]車室内の所定領域を撮影するカメラの補助光として可視光に近い赤外光を前記カメラの視野範囲へ投光可能な第1のランプと、前記第1のランプよりも長い波長の赤外光を前記補助光として前記カメラの視野範囲へ投光可能な第2のランプと、前記カメラの露光時における前記視野範囲が所定の明るさのときには前記第1のランプを点灯し、前記視野範囲が前記所定の明るさよりも暗いときには前記第2のランプを点灯するランプ点灯制御部と、を備えることを特徴とする車両室内灯の制御装置。
【0009】
[2]前記第1及び第2のランプは、投光面に光学フィルタが設置されていることを特徴とする前記[1]に記載の車両室内灯の制御装置。
【0010】
[3]前記ランプ点灯制御部は、前記車室内または前記視野範囲の照度値が予め設定した閾値以上であるときに前記第1のランプを点灯し、その他のときに前記第2のランプを点灯することを特徴とする前記[1]に記載の車両室内灯の制御装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の撮影用照明装置によれば、車室内でのカメラ撮影に必要な光量の照明光を安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る撮像システムを示すブロック図である。
【0013】
(撮像システムの構成)
撮像システム100は、例えば助手席の乗員の所定部分を被写体として撮影する撮像装置1と、撮像装置1による撮影の際、曇天、トンネル内、夜間等に発光しても運転者を眩惑させない発光波長の補助光を被写体に向けて投光する照明装置2とを備えて構成されている。なお、図1においては、撮像装置1及び照明装置2に電源供給を行うための電源及び電源回路の図示を省略している。
【0014】
撮像装置1は、例えば、助手席の乗員が被写体になるようにして車室内の天井等に設置されたカメラ11と、カメラ11による撮影画像を保存する画像メモリ12と、撮影範囲(視野範囲)または車室内の照度を検出する照度センサ13と、カメラ11、画像メモリ12及び照度センサ13に接続されてそれぞれを制御する制御部14とを備えて構成されている。なお、画像メモリ12及び制御部14は、必ずしも上記位置に設置されている必要はなく、他の場所に設置されていてもよい。
【0015】
カメラ11は、光学レンズ、CCD(電荷結合素子)等の撮像デバイス、信号処理回路、及び露出計等を備えて構成されている。
【0016】
照度センサ13は、例えば、受光量に応じて抵抗が変化するCdS(硫化カドミウムセル)を用いることができる。また、照度センサ13は、撮像装置1による撮影画像の輝度値や露出計の露出値を利用する構成であってもよい。
【0017】
制御部14は、画像メモリ12から画像データを読み出し、後述するCPU14aにより画像データを処理する。制御部14は、例えば、画像中の助手席の乗員の頭部を認識(抽出)し、頭部と車両のエアバック放出領域との位置関係を検出し、その検知結果を図示しないECU(電子制御ユニット)へ出力する。
【0018】
また、制御部14は、撮像装置1の全体を制御するCPU14a、プログラムが格納されたROM14b、データを一時的に格納するRAM14c、照度センサ13及び外部との接続を司るインターフェース回路(I/F)14d等を備えて構成されており、ROM14bに格納されたプログラムに従ってカメラ11が撮影した画像データをCPU14aで処理して助手席の乗員の頭部を認識し、頭部がどの位置にあるか等を検知する処理機能、及びカメラ11の撮影タイミング(または、撮影インターバル)や露光時間を決定するカメラ制御機能を備えている。また、ROM14bは、助手席の乗員の頭部の形状を様々にパターン化した複数のテンプレートを登録(保存)している。
【0019】
照明装置2は、可視光領域に近い波長の近赤外光を発光する第1のランプ21と、第1のランプ21より長い波長の近赤外光を発光する第2のランプ22と、第1,第2のランプ21、22の発光面に面して配置された光学フィルタ23と、第1,第2のランプ21,22の点・消灯を制御するランプ点灯制御部24とを備えて構成されている。この第1,第2のランプ21,22は、カメラ11の近傍または被写体を照明可能な位置に設置される。
【0020】
図2は、ランプの発光特性及び各種の光感度特性を示し、(a)は第1,第2のランプの発光特性及び人の目の光感度特性を示し特性図、(b)はカメラの光感度特性を示す特性図である。
【0021】
図2(a)に示すように、第1のランプ21は、可視光に近い波長880nmを発光中心とした特性aの近赤外光を発光するLEDランプであり、第2のランプ22は、波長950nmを発光中心とした特性bの近赤外光を発光するLEDランプである。このような特性を有する第1,第2のランプ21,22に対し、人の目の光感度特性cは、可視領域(約350〜800nm)にある。また、カメラ11の光感度特性は、図2(b)に示すように、可視領域から赤外領域の広範囲に及んでいる。なお、領域dは、第1のランプ21と目の光感度特性cとがオーバーラップする部分である。
【0022】
また、第1のランプ21は、例えばGaAlAs等からなるLEDランプであり、第2のランプ22は、例えばGaAs等からなるLEDランプである。
【0023】
光学フィルタ23は、例えば、高周波イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、スパッタリング等により石英板の表面に光学薄膜を形成したものであり、可視光をカットし、近赤外光を透過する特性を有したハイパスフィルタ(例えば、非透光域が300nm〜780nm)又はバンドパスフィルタ(例えば、透光域が780nm〜1000nm)である。
【0024】
なお、ハイパスフィルタ及びバンドパスフィルタの遮断特性は、急峻である必要はなく、従って光学フィルタ23は安価なもので済ませることができる。また、光学フィルタ23は、第1,第2のランプ21,22による可視光領域の光量が少ない場合には、設けないことも可能である。
【0025】
ランプ点灯制御部24は、制御部14からの制御信号Scに基づいて、撮影時に第1のランプ21または第2のランプ22を点灯させる半導体素子やリレーを含む回路を有している。
【0026】
(撮像システムの動作)
図3は、撮像システムの動作を示すフローチャートである。図1〜図3を参照し、以下に撮像システム100の動作を説明する。
【0027】
撮像装置1の制御部14は、所定周期または車両に搭載の加速度センサ(図示せず)の出力等に基づいて撮影モードを設定する(S201)。次に、制御部14は、予め設定されると共にROM14bに格納されている閾値(Threshold)Thと、照度センサ13が検出した照度値Lxとを比較する(S202)。制御部14は、Lx≧Thの場合(S202:Yes)、昼間等で周囲が明るいものと判断し、第1のランプ21を点灯させるようにランプ点灯制御部24へ制御信号Scを出力する。ランプ点灯制御部24は、第1のランプ21を点灯する(S203)。昼間は、運転者の瞳孔が小さく、光学フィルタ23表面での周囲光の反射が大きいので、可視光が照明装置から多少漏れても、光学フィルタ23の背面にある第1のランプ21は運転者から見えることはない。
【0028】
カメラ11の光感度は、図2(b)から明らかなように、赤外光領域では低いので、カメラ11の受光量は小さい。しかし、昼間は太陽等の外乱光の強度が大きいものの、第1のランプ21によるカメラ11の受光量が大きいため、S/N比(外乱光に対する照明光の比)が大になる。一般に、画像処理用の照明では、外乱光の変化に対して撮像画像の輝度が変化しにくいことが望まれるが、図1の構成による照明装置2は、昼夜を問わず照明光のS/N比が高いため、安定した画像を得ることができる。
【0029】
また、Lx<Thの場合(S202:No)、制御部14は、夜間等により周囲が暗いものと判断し、第2のランプ22が点灯するようにランプ点灯制御部24へ制御信号Scを出力する。周りが暗い時(例えば、夜間)は、ドライバの瞳孔が大きく、光学フィルタ23の表面での周囲光の反射が小さいので、第1のランプ21を点灯させた場合、図2(a)の領域dの可視光が光学フィルタ23を透過し、第1のランプ21が運転者から光源として見えることになる。そこで、夜間は、波長が第1のランプ21より中赤外線寄りの波長950nmの第2のランプ22に切り替えて点灯する(S204)。
【0030】
第1のランプ21または第2のランプ22を点灯後、制御部14は、カメラ11に撮影を開始させる。カメラ11は、内蔵の露出計に従ってシャッター時間及び絞り値を設定し、助手席の乗員を被写体として撮影する(S205)。カメラ11の撮影が完了すると(S206)、制御部14は、ランプ点灯制御部24を介して第1,第2のランプ21,22を消灯する(S207)。その画像データは画像メモリ12へ送られ、画像メモリ12に格納される(S208)。
【0031】
制御部14は、CPU14aにより画像データを画像メモリ12から読み出し、画像データを処理する(S209)。画像メモリ12は、カメラ11からの画像データに対し、エッジ処理、2値化処理等を施して得た輪郭画像と、画像メモリ12に登録されているテンプレートとのマッチングを行い、助手席の乗員の頭部の輪郭を抽出する。
【0032】
制御部14は、抽出した乗員の頭部の画像が助手席のエアバッグの開口部の近傍に存在するとき、上記頭部が上記エアバッグの開口部に近接する位置にあると判定し、それ以外の位置にあるときには正常な姿勢で着席しているものと判定する。
【0033】
また、制御部14は、抽出結果に基づいて、乗員が助手席に有ることの判定、頭部の大きさが予め設定した大きさ以下であるか否かにより、乗員が大人か子供か等の判定を実施する。
【0034】
以上のようにして得られた乗員に関する判定出力Sjは、制御部14から図示しないエアバッグ放出制御装置やECUに送られる。
【0035】
エアバッグ放出制御装置は、判定出力Sjに基づいて、エアバッグの放出方法を決定し、エアバッグの放出制御を行う。例えば、「乗員無し」及び「乗員の頭部が危険領域内にある」場合、エアバッグを非放出にし、エアバッグ放出時に乗員の頭部に強い衝撃が加わるのを回避する。更に、「乗員が子供」である場合、エアバッグを弱放出にする。また、判定出力Sjがその他の判定内容の場合、エアバッグを強放出にする。
【0036】
その後、所定時間、即ち、次の撮影を実行するインターバルが到来したか否かを判定し(S210)、所定時間になったとき、処理をステップS201に戻し、撮影モードを判定し、以降の処理を繰り返し実行する。
【0037】
(実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)撮像装置1の被写体に対する照明が第1,第2のランプ21,22を切替えることによって行われるため、照明光がドライバ等の乗員に認知されにくい。
(2)光学フィルタ23は、急峻な特性を有する必要がないため、フィルタの設計が容易になると共にコストダウンを図ることができる。
(3)光量によるS/Nの確保のためにランプに多数のLEDを用いる必要がないため、消費電力の抑制及びコストダウンを図ることができる。
【0038】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、各実施の形態間の構成要素の組合せは任意に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る撮像システムを示すブロック図である。
【図2】図2は、ランプの発光特性及び各種の光感度特性を示し、(a)は第1,第2のランプの発光特性及び人の目の光感度特性を示し特性図、(b)はカメラの光感度特性を示す特性図である。
【図3】図3は、撮像システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 撮像装置
2 照明装置
11 カメラ
12 画像メモリ
13 照度センサ
14 制御部
14a CPU
14b ROM
14c RAM
14d インターフェース回路(I/F)
21 第1のランプ
22 第2のランプ
23 光学フィルタ
24 ランプ点灯制御部
100 撮像システム
Sc 制御信号
Sj 判定出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の所定領域を撮影するカメラの補助光として可視光に近い赤外光を前記カメラの視野範囲へ投光可能な第1のランプと、
前記第1のランプよりも長い波長の赤外光を前記補助光として前記カメラの視野範囲へ投光可能な第2のランプと、
前記カメラの露光時における前記視野範囲が所定の明るさのときには前記第1のランプを点灯し、前記視野範囲が前記所定の明るさよりも暗いときには前記第2のランプを点灯するランプ点灯制御部と、
を備えることを特徴とする車両室内灯の制御装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のランプは、投光面に光学フィルタが設置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両室内灯の制御装置。
【請求項3】
前記ランプ点灯制御部は、前記車室内または前記視野範囲の照度値が予め設定した閾値以上であるときに前記第1のランプを点灯し、その他のときに前記第2のランプを点灯することを特徴とする請求項1に記載の車両室内灯の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−120008(P2009−120008A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295600(P2007−295600)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】