説明

撹拌混合機能付肥料散布機。

【課題】 撹拌混合機能付肥料散布機において、ホッパ内回転部への作業者の巻き込まれ等の安全を確保するための汎用性のある安全機構を提供する。
【解決手段】 散布する肥料を貯留するホッパ6を有し、ホッパ6内に投入された複数種類の肥料を混合するための撹拌混合部4,5を有し、ホッパ底部より肥料を落下させ散布する肥料散布機において、ホッパ6の肥料投入口部に設けた上面カバー61を開くと、ホッパ内の撹拌混合部の動力が切断される撹拌混合機能付肥料散布機。また、前記肥料散布機の入力軸に動力が伝達されている状態において、上面カバー61が開かれて撹拌混合部4,5の動力が切断されると警報ブザー214が作動する。さらに、撹拌混合部4,5の動力伝達部回転数を検知し、ホッパ6内の肥料の撹拌混合が終了したことを作業者に知らせる報知機能を設けた撹拌混合機能付肥料散布機を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌混合機能付肥料散布機を使用する際の安全機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来知られた作業機の安全装置として、特開平11−62794号公報(従来技術1)が公知である。
【0003】
従来技術1の「除雪機のエンジン始動装置」は、安全カバーを開くとエンジンを停止させる安全スイッチを設けた構成において、除雪部のエンジン始動装置に設ける安全回路において、メンテナンス時に除雪部を外してもエンジンを始動できるように構成したものである。
【特許文献1】特開平11−62794号公報(従来技術1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の撹拌混合機能付肥料散布機は、ホッパに散布する複数の肥料を投入し、ホッパ内の撹拌混合部を一定時間作動させ肥料を混合した後、ホッパ底部に設けた落下孔の開度を開閉調節することで散布量を調節して散布していた。しかし、撹拌混合部を作動させ混合している時や、残量の確認時や肥料の補給時に撹拌混合部を作動させたまま上面カバーを開放する場合があり、不用意に撹拌混合部の回転部に接触し巻き込まれる等の危険がある。また、トラクタ等の走行車に装着して使用する場合、あらゆる種類のトラクタに対応できるように汎用性を有しエンジン停止回路を作業機側に設けることは困難である。
【0005】
このため、本発明の目的は作業者の巻き込まれ等の安全を確保するための汎用性のある構成を有する撹拌混合機能付肥料散布機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、散布する肥料を貯留するホッパを有し、該ホッパ内に投入された複数種類の肥料を混合するための撹拌混合部をホッパ内に有し、該ホッパ底部より肥料を落下させ散布する肥料散布機において、前記ホッパの肥料投入口部に設けた上面カバーを開くと、ホッパ内の前記撹拌混合部の動力が切断され停止することを特徴とした撹拌混合機能付肥料散布機を提案する。
【0007】
また、前記肥料散布機の入力軸に動力が伝達されている状態において、前記上面カバーが開かれて前記撹拌混合部の動力が切断されると警報ブザーが作動することを特徴とした0006欄記載の撹拌混合機能付肥料散布機を提案する。
【0008】
さらに、前記撹拌混合部の動力伝達部回転数を検知し、前記ホッパ内の肥料の撹拌混合が終了したことを作業者に知らせる報知機能を設けたことを特徴とした0006欄又は0007欄記載の撹拌混合機能付肥料散布機を提案する。
【発明の効果】
【0009】
前記のような構成にすることにより、ホッパの肥料投入口部に設けた上面カバーを開けると、ホッパ内の前記撹拌混合部の動力が切断され停止するため、不用意に作業者等が回転する部分に接触することが無いため、巻き込まれ等の事故を回避できる。
【0010】
また、肥料散布機の入力軸に動力が伝達されている状態において、前記上面カバーが開かれて前記撹拌混合部の動力が切断されるとともに警報ブザーが作動することで、上面カバーを開放した作業者に入力軸に動力が伝達されている状態であることの警告を発することで、入力軸から撹拌回転部までの間の動力切断部における不具合や電気回路上の不具合等で回転部が誤作動した場合の事故防止ができる。
【0011】
さらに、撹拌混合部の動力伝達部回転数を検知し、前記ホッパ内の肥料の撹拌混合が終了したことを作業者に知らせる報知機能を有したことにより、混合状態を確認するために上面カバーを開ける必要がないために、ホッパ内回転部から作業者の安全を確保できるとともに、運転席から離れずに確認ができるため作業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の平面断面図、図2は本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の一部断面した側面図、図3は本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機のホッパ部の断面を示す側面図、図4はホッパ底部の肥料落下量調整用シャッタの作動説明図、図5は本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の後面図、図6は制御部の説明図、図7は安全装置回路のフロー図、図8は混合終了報知制御回路のフロー図を示したものである。
【0013】
フレーム1前方下部には左右一対のロアリンクピン11が、フレーム1前方上部にはトップブラケット10を備え、図3に示すようにトラクタ8の三点リンク機構に装着できるように構成されている。フレーム1は左右方向に横長状の肥料を貯留するホッパ6を保持していて、ホッパ6上面には上面カバー61が前後方向開閉自在に設けられていて、散布する肥料は上面カバー61を開けてホッパ6内に投入される。
【0014】
ホッパ6内には、第1撹拌部4と第2撹拌部5で構成する撹拌混合部が設けてある。第1撹拌部4は、U字状の樋62に撹拌羽根43を有した左右方向の第1回転軸41を内設し、リボン状螺旋に形成された前記撹拌羽根43により一方方向へ肥料を移送するとともに撹拌する。移送方向末端には、掻き上げ材42が設けてあり隣接する樋に肥料を移動する。
【0015】
また、第1撹拌部4と平行に隣接した第2撹拌部5は、第1撹拌部と同じくU字状の樋620に撹拌羽根430を有した左右方向の第2回転軸51を内設し、リボン状螺旋に形成された前記撹拌羽根430により第1撹拌部と逆方向へ肥料を移送するとともに撹拌する。移送方向末端には、掻き揚げ材420が設けてあり隣接する第1撹拌部4の樋に肥料を移動する。これによりホッパ6内肥料は、図1に示す矢印Z方向に連続して循環されるとともに撹拌される。
【0016】
U字状の樋62,620底には、肥料を落下排出させるための排出口63,630がそれぞれ設けてあり、それぞれ回転移送の末端側に複数個配列され、樋幅の略2分の1の長さに亘って設けてある。
【0017】
樋底板外面には、排出口63,630の開度を調節するシャッタ板64,640が密着されて設けてあり、シャッタ板64,640をホッパ6幅方向にスライドさせ、シャッタ板64,640に設けた落下口65,650と排出口63,630を重合させ、重合した開口量により散布量を調節するように構成されている。シャッタ板64,640は、フレーム1前方部に設けたシャッタ開閉レバー71をトラクタ8に乗車した作業者が操作することでスライドする。
【0018】
シャッタ開閉レバー71は、フレーム1に左右水平方向の回動軸で前後方向に回動可能に設けてあり、レバーガイド70に表示された希望する散布量目盛り701に合わせて、シャッタ開閉レバー71を回動させると、シャッタ板64,640がスライドし排出口63,630が希望量開く構成となっている。
【0019】
シャッタ開閉レバー71を前方に回動すると、シャッタ開閉レバー71の操作部側と回動軸に対し反対側の下方端部には、第1シャッタ開閉ロッド77が回動自在に連結されていて、該第1シャッタ開閉ロッド77他端に回動自在に連結されたリンクアーム78が、図4に示す矢印方向に回動する。リンクアーム78は、回動軸780を中心に2本のアームをL字状に設けてあり、一方のアームには前記第1シャッタ開閉ロッド77が連結され他方のアームには第2シャッタ開閉ロッド72が回動自在に連結されている。該第2シャッタ開閉ロッド72の他端は、樋62,620の略中間部に垂直方向に設けた支持軸73に水平方向回動自在に設けた揺動板75の一端に回動自在に連結されていて、揺動板75はシャッタ板64,640にそれぞれ連結ロッド74,740を介して連結されて図4矢印方向に作動し、排出口63,630が開き肥料が落下し散布が行われる。
【0020】
シャッタ板64,640の落下口65,650下方には可撓性の案内筒641が設けてある。図5は、案内筒641の使用例を示したもので、案内筒641の先端部は、ホッパ6の下部に掛け渡した横支持材642の切欠き溝に取り付けた固定リング643に案内筒641を挿入し希望位置で固定可能で、A,B部のように複数本をまとめることや、C部のように単体で散布することも選択でき、D部のように延長横支持材を使用し、ホッパ6の幅より外側に散布することも可能である。また、案内筒641を使用しないで直接散布することも可能である。
【0021】
撹拌混合部は、フレーム1前方に突設させた入力軸20と、トラクタ8の図示していないPTO軸と図示していないユニバーサルジョイントで連結し動力を伝達され駆動される。入力軸20は、入力クラッチ21を介して入力ケース2内のベベルギヤ22と連結され、歯合するベベルギヤ22により入力軸20と直交する左右方向の一方に出力軸23により動力は伝達される。前記入力ケース2は、フレーム1に支持されていて、左右一側面はパイプ状のフレームで支持されていて、前記出力軸23はこのパイプ内に貫入されている。
【0022】
出力軸23の外側他端には駆動スプロケット30が固着されていて、動力はこれに巻着されたローラーチェーン33により、中間スプロケット31を経由し減速され、第1スプロケット34及び第2スプロケット35に伝達され、これらが固着されている第1回転軸41及び第2回転軸51を回転させる。該回転軸にはそれぞれリボン状螺旋に成形された撹拌羽根43,430と移送方向の末端には掻き上げ材42,420が設けてあり、図2に示すa,bの矢印方向に相互に隣接する内方に掬い上げるように回転する。32はテンションスプロケットで、取付け位置を移動させてローラーチェーン33の張り調整を行う。
【0023】
撹拌羽根43,430は、互いに内方に掻き上げるように逆回転し、第1撹拌部4と第2撹拌部5の肥料は互いに逆方向に移送される。また、移送方向の末端側のそれぞれの掻き上げ材42,420により、他方の樋62,620に肥料が掻き飛ばされ移動し、肥料が連続循環するとともに撹拌混合するように構成されている。散布作業の時は、撹拌混合部を作動させて散布するとブリッジ現象や偏り散布が解消され均一な散布ができる。
【0024】
フレーム1の両側面側には、スタンド12が設けてあり、ホッパ6に肥料を投入する際にホッパ6底部分を地面の接触等から保護するとともに、キャスター車輪13を付けると格納時等の移動に便利である。
【0025】
入力軸20部に設けた入力クラッチ21は、電動でON,OFFが行われ、ホッパ6上部に設けたフタスイチ213のON,OFFにより、動力の断続が行われる。フタスイッチ213は、ホッパ6上面の上面カバー61の開閉により作動する。入力軸20には、回転軸と直交する面を有する検知プレート212が固着されて一体に回転する。検知プレート212の外周部には孔が複数あけられていて、この孔を感知して回転を検知する回転センサー211が入力ケース2に取り付けられている。
【0026】
上面カバー61を開くとフタスイッチ213が作動し、入力クラッチ21の動力が切断され撹拌混合部の第1撹拌部と第2撹拌部の回転が停止する。これにより、作業者は不用意に回転部に接触することが無く安全である。また、この際入力軸20にトラクタ8から回転動力が伝達されている場合、入力クラッチ21やフタスイッチ213及び電気配線や回路の不具合による誤作動等で不意に撹拌混合部が作動する危険もあるため、警報用のブザー214を作動させ注意を促す。トラクタ8から回転動力が伝達されているか否かの判断は、入力軸20と一体に回転する検知プレート212の回転を回転センサー211が検知して制御部が判断する。
【0027】
回転センサー211の検知信号により入力軸の累積回転回数が検知可能であるため、連動している第1撹拌部4と第2撹拌部5の累積回転回数も割り出すことができる。これを利用して予め複数の肥料の最適混合累積回転回数を測定して措き、最適混合累積回転回数になるとブザーやランプ等により撹拌混合が終了したことを知らせる報知機能を設けることができる。これにより、作業者は上面カバー61を開けて混合状態を確認する必要がなく、ホッパ6内の回転部から作業者を保護できる。また、運転席から離れずに確認ができるため作業効率が向上する。
【0028】
上面カバー61の他に、ホッパ6上面に網状の安全カバーを設ける場合があるが、この場合フタスイッチ213を網状の安全カバーが開くと作動するように設けても良い。また、本例においては、トラクタ8に装着する肥料散布機について示したが、自走式の走行台車に装着した肥料散布機にも適用可能である。
【0029】
図6において電気回路を説明すると、制御部9にはフタスイッチ213と回転センサー211が接続されて電気信号が送られる。操作部91は運転席近傍に配置され撹拌混合報知操作等のスイッチ類が配置され制御部9をコントロールする。制御部9はさらにリレー92と接続されていて、制御部9の演算結果によりリレー92を作動させ、これと接続しているブザー214や入力クラッチ21を作動させる。
【0030】
図7において安全装置回路の作動フローを説明する。電源を入れ(S1)トラクタPTOのクラッチを入れると、入力軸20が回転する。この時上面カバー61の状態を検知するフタスイッチ213の状態を確認し(S2)、上面カバー61が閉じてフタスイッチ213が押されていると、入力クラッチ21がON(S3)となり撹拌混合部が回転する。また、上面カバー61が開いてフタスイッチ213が押されていないと、入力クラッチ21はOFF(S4)となり、入力軸20が回転しても撹拌混合部に動力は伝達されず作動しない。この時入力軸20の回転状態を回転センサー211が検知(S5)し、トラクタより動力が伝達され回転している場合はブザー214を作動(S6)させ警報を発する。
【0031】
図8において撹拌混合が終了したことを知らせる報知制御回路のフローを説明する。電源を入れ(S10)トラクタPTOのクラッチを入れると、入力軸20が回転する。続いて運転席近傍に配置された操作部91の混合開始スイッチをON(S11)にすると、入力クラッチ21の状態を確認(S12)し、入力クラッチ21がON状態で撹拌混合部が回転していると回転センサー211の信号により制御部9がカウントを開始(S14)し、OFFの場合カウントがされない。カウントされない場合は、警報やランプ等で作業者に認識させる(S13)と良い。カウントが開始され予め設定したカウント設定値に達すると(S15)、ブザー214が作動(S16)し肥料の混合が終了したことを作業者に知らせる。操作部91に設けたブザー214の作動解除スイッチを押すことで報知制御回路が次の工程の待機状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の平面断面図。
【図2】本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の一部断面した側面図。
【図3】本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機のホッパ部の断面を示す側面図。
【図4】ホッパ底部の肥料落下量調整用シャッタの作動説明図。
【図5】本発明を実施した撹拌混合機能付肥料散布機の後面図。
【図6】制御部の説明図。
【図7】安全装置回路のフロー図。
【図8】混合終了報知制御回路のフロー図。
【符号の説明】
【0033】
1 フレーム
10 トップブラケット
11 ロアリンクピン
12 スタンド
13 キャスター車輪
2 入力ケース
20 入力軸
21 入力クラッチ
211 回転センサー
212 検知プレート
213 フタスイッチ
214 ブザー
22 ベベルギヤ
23 出力軸
30 駆動スプロケット
31 中間スプロケット
32 テンションスプロケット
33 ローラーチェーン
34 第1スプロケット
35 第2スプロケット
4 第1撹拌部
41 第1回転軸
42,420 掻き上げ材
43,430 撹拌羽根
5 第2撹拌部
51 第2回転軸
6 ホッパ
61 上面カバー
62,620 樋
63,630 排出口
64,640 シャッタ板
641 案内筒
642 横支持材
643 固定リング
65,650 落下口
70 レバーガイド
71 シャッタ開閉レバー
72 第2シャッタ開閉ロッド
73 支持軸
74 連結ロッド
75 揺動板
77 第1シャッタ開閉ロッド
78 リンクアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布する肥料を貯留するホッパを有し、該ホッパ内に投入された複数種類の肥料を混合するための撹拌混合部をホッパ内に有し、該ホッパ底部より肥料を落下させ散布する肥料散布機において、前記ホッパの肥料投入口部に設けた上面カバーを開くと、ホッパ内の前記撹拌混合部の動力が切断され停止することを特徴とした撹拌混合機能付肥料散布機。
【請求項2】
前記肥料散布機の入力軸に動力が伝達されている状態において、前記上面カバーが開かれて前記撹拌混合部の動力が切断されると警報ブザーが作動することを特徴とした請求項1記載の撹拌混合機能付肥料散布機。
【請求項3】
前記撹拌混合部の動力伝達部回転回数を検知し、前記ホッパ内の肥料の撹拌混合が終了したことを作業者に知らせる報知機能を設けたことを特徴とした請求項1又は請求項2記載の撹拌混合機能付肥料散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−237090(P2008−237090A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81525(P2007−81525)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】