説明

撹拌装置

【課題】 原料の付着を抑制、更には防止でき、衛生的でしかも清掃が容易で、処理効率の良い抽出又は乳化に使用可能な撹拌装置を提供する。
【解決手段】 抽出又は乳化に使用可能な撹拌装置10であって、一端部に原料の流入口11〜14が他端部に原料の流出口15〜18がそれぞれ設けられた円筒状の中空短管19〜22を、直列、並列、又は直並列に接続した中空短管群を有し、しかも流入口11〜14が中空短管19〜22の内壁面34、37に対して実質接線方向に向けられ、使用にあっては、流入口11〜14から中空短管19〜22内へ流入する原料が、中空短管19〜22の内壁面34、37に沿って旋回して、中空短管19〜22内に原料の旋回流を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出又は乳化に使用可能な撹拌装置に係り、更に詳細には、例えば、動物性原料(例えば、鹿の角粉末)又は植物性原料(例えば、人参、クコ、ゴーヤ、又は葉緑素含有物)から、食品、化粧品、又は香料を製造するための抽出又は乳化に使用可能な撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロフィルとも呼ばれる葉緑素は、植物の緑葉細胞中の葉緑体の基質に、例えば、カロチン、ルテイン、及びキサントフィルと共に存在する緑色の色素である。葉緑素には、例えば、皮膚疾患及び火傷の回復作用、また悪臭を防ぐ作用があるため、この葉緑素を、飲料、粉末、又は錠剤に加工して健康食品にして使用している。
中でも、健康食品として飲用されている飲料は、従来、植物の葉及び茎を洗浄し、必要により例えば、ミキサー又はジューサーの機械的破砕手段を用いて細切りに破砕し、この破砕した植物の葉及び茎を搾ることで製造されていた。しかし、葉緑素は、植物の硬い細胞膜内に存在するため、この方法では多くの葉緑素を抽出できなかった。このため、この方法で製造した飲料中には、葉緑素が十分に入っておらず、飲料には前記した作用があまりなかった。
【0003】
そこで、特許文献1には、2つのタンクと、この2つのタンクの間に設けられた超音波加振機とを有し、抽出又は乳化に使用可能な撹拌装置(葉緑素を含む健康飲料の製造装置)が開示されている。
この撹拌装置は、油脂分を含む葉緑素と水とを、一方のタンクで撹拌羽根により撹拌混合し、配管による移送途中で超音波分散処理しながら他方のタンクへ移した後、このタンクで撹拌羽根により撹拌混合し、再度別の配管による移送途中で超音波分散処理しながら一方のタンクへ移すという操作を繰り返し行うことで、葉緑素と水とを分散混合して乳化処理する装置である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−57105号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の撹拌装置には未だ解決すべき以下のような問題があった。
前記した撹拌装置は、その装置構成が複雑であるため、例えば、タンク内、配管内、及び撹拌羽根に、葉緑素含有物(脂肪分)が滞留し易く、こびりつき除去しづらい。このため、こびりついたものが、水と接触することによって腐敗を起こし、撹拌装置で製造する製品を汚染する恐れがある。
また、こびりついたものは、例えば、市販の洗浄剤を使用してもなかなか取り除くことができない。このように、洗浄剤を使用した場合には、この洗浄剤がこびりついた葉緑素含有物に染み着き易く、製造した製品に匂いが付着する恐れがあるため、商品として使用できない恐れもある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、原料の滞留がなく、原料の付着を抑制、更には防止でき、衛生的でしかも清掃が容易で、処理効率の良い抽出又は乳化に使用可能な撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る撹拌装置は、抽出又は乳化に使用可能な撹拌装置であって、
一端部に原料の流入口が他端部に前記原料の流出口がそれぞれ設けられた円筒状の中空短管を、直列、並列、又は直並列に接続した中空短管群を有し、しかも前記流入口が該中空短管の内壁面に対して実質接線方向に向けられ、使用にあっては、前記流入口から前記中空短管内へ流入する前記原料が、該中空短管の内壁面に沿って旋回して、該中空短管内に前記原料の旋回流を発生させる。
ここで、内部に原料の旋回流を発生させる中空短管とは、従来使用されている内部に螺旋状となった案内部材を装入した管とは異なり、内部には何も装入されておらず、中空短管の接線方向から流入する原料の流れ(遠心力)によって、中空短管の内壁面に沿って原料を旋回移動させ、原料の旋回流を形成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の撹拌装置は、直列、並列、又は直並列に接続されて中空短管群を構成する円筒状の中空短管内に、その内壁面に対して実質接線方向に向けられた流入口から原料を流入させ、原料を中空短管の内壁面に沿って旋回させるので、従来のように内部に螺旋状となった案内部材を配置することなく、中空短管内に原料の旋回流を発生させることができる。このように、装置構成を簡単にでき、原料の滞留が無く、原料の付着を従来よりも抑制、更には防止でき、衛生的でしかも清掃が容易な撹拌装置を提供できる。
【0009】
ここで、中空短管群の液出口に、ポンプ及びこれに接続される連結配管を介して、中空短管群の液入口を連結した場合には、撹拌装置に原料の循環路が形成されるので、例えば、装置構成をコンパクトにでき、省スペースで経済的な装置を提供できる。
また、中空短管群に超音波加振機を設け、しかも超音波加振機を、中空短管内、隣り合う中空短管の間、及び連結配管のいずれか1又は2以上に設けた場合には、原料を滞留させることなく、常に一定の速度で連続的に原料に対して超音波を照射できるので、超音波処理の時間を短縮でき、製品の製造時間を短縮できる。
【0010】
中空短管内で旋回する原料が旋回しながら流出するように、流出口を中空短管の内壁面に対して実質接線方向に一致させた場合には、例えば、流出口が中空短管に対して垂直方向に設けられている場合と比較して、中空短管内からの原料の流出をスムーズに実施できる。これにより、原料の滞留箇所を更に削減できるので、原料の付着を従来よりも抑制、更には防止できる。
そして、中空短管群に加熱手段を設けた場合には、例えば、撹拌装置の清掃時に、この加熱手段で加熱された水を各中空短管内に流すことができるので、装置の滅菌処理が可能になり、衛生的で安定した品質の製品を製造できる。なお、例えば、熱水を別の場所から運んで撹拌装置内に供給する必要が無いので、撹拌装置の清掃時における作業性が良好である。
ここで、加熱手段が、熱水製造用容器と、その内部に設置されたヒーターとを有する場合には、簡単な構成で水を加熱できる。
【0011】
更に、各中空短管を隣り合う中空短管から着脱可能な構造とした場合には、例えば、撹拌装置の使用後に、各中空短管をそれぞれ取り外すことで、仮に中空短管内部に原料が残存付着していても、中空短管内部の清掃を容易かつ確実に実施でき、メンテナンスが非常に楽である。
原料を、蚕の糞及び蚕の粉砕物のいずれか一方又は双方を主体とする葉緑素含有物と抽出用溶媒とした場合には、葉緑素含有物中の葉緑素を抽出用溶媒に抽出できる。また、原料を、油脂分を含む葉緑素と水とした場合には、葉緑素と水とを乳化状態に混合できる。
これにより、有効な成分を多く含む葉緑素飲料を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る撹拌装置の説明図、図2(A)は同撹拌装置の最上段の中空短管の平面図、(B)は図1のa−a矢視断面図、(C)は図1のb−b矢視断面図、図3は本発明の第2の実施の形態に係る撹拌装置の説明図、図4(A)は同撹拌装置に使用する超音波加振機の説明図、(B)は同超音波加振機の取付け部品の正面図である。
【0013】
図1、図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る撹拌装置10は、上流側端部(一端部)に原料の流入口11〜14が、下流側端部(他端部)に原料の流出口15〜18がそれぞれ設けられた円筒状の中空短管19〜22を、複数段(ここでは、4段)直列に接続した中空短管群を有し、しかも各流入口11〜14が中空短管19〜22の内壁面に対して実質接線方向に向けられた装置であり、例えば、抽出処理又は乳化処理の使用に適した装置である。以下、詳しく説明する。
【0014】
各中空短管19〜22は、それぞれ流入口11〜14側を高く、流出口15〜18側を低く傾斜させて、上下方向にジグザグ状に配置され、中空短管19の流出口15と中空短管20の流入口12、中空短管20の流出口16と中空短管21の流入口13、及び中空短管21の流出口17と中空短管22の流入口14をそれぞれ形成する接続配管23〜25が、隣り合う中空短管19、20、中空短管20、21、及び中空短管21、22を接続している。なお、各中空短管19〜22は、それぞれ地上面に対して角度α、β、γ、及びδ(例えば、上限が20度、好ましくは10度、更に好ましくは5度、下限が0.5度、好ましくは1度の範囲内)に傾斜して配置されている。
【0015】
この各中空短管19〜22は、耐食性のあるステンレスで構成されており、例えば、その内径が10cm以上30cm以下、長さが1m以上2m以下(ここでは、内径が20cm、長さが1.5mで、その内容積が約47リットル)のものである。なお、各中空短管の内径は、その内部で原料が旋回可能であれば、上記した内径に限定されるものでなく、内径を大きくした場合には、原料の流速を上昇させることで対応できる。また、各中空短管の長さについても、その内部の清掃が可能な長さであれば、前記した長さに限定されるものではないが、旋回流の減衰を考慮すれば、必要以上に長くする必要はない。
【0016】
図2(A)に示すように、最上段に配置される中空短管19は、円筒状となってその両端部にフランジ部26、27が設けられた管本体28と、この各フランジ部26、27にそれぞれ当接するフランジ部29、30を備えた蓋材31、32とで構成されている。使用にあっては、管本体28の各フランジ部26、27と、各蓋材31、32のフランジ部29、30との間にシール材(図示しない)を配置し、フランジ部26、29同士、フランジ部27、30同士をボルト(図示しない)で締め付けることで、その密閉状態を維持している。ここで、各中空短管は、フランジ部を備えない管本体と、この管本体に、例えばねじによって着脱可能な蓋材とで構成することも可能である。
なお、他の中空短管20〜22についても、中空短管19と略同様の構成になっている。
【0017】
図1、図2(A)、(B)に示すように、中空短管19の上流側端部には、原料の流入口11を形成する第1の連結配管33の下流側端部が接続され、流入口11が中空短管19の内壁面34に対して、実質接線方向に向けられるようになっている。なお、中空短管19は中空短管群の最上流側に位置するので、その原料の流入口11は、中空短管群の液入口に相当する。
第1の連結配管33の下流側端部の軸心は、図2(A)に示すように、平面視して中空短管19の軸心mと垂直な方向に対し、角度ε(例えば、例えば、上限が20度、好ましくは10度、更に好ましくは5度、下限が0.5度、好ましくは1度の範囲内)だけ傾斜している。
【0018】
また、中空短管19の下流側端部には、原料の流出口15を形成する接続配管23が接続され、流出口15が中空短管19の内壁面34に対して、実質接線方向に一致するようになっている。これにより、図2(B)に示すように、第1の連結配管33から中空短管19内に流入し、中空短管19内で時計回りに旋回している原料を、その旋回方向を変えることなく、接続配管23から流出させることができる。なお、接続配管23の軸心は、地上面に対して略垂直になっているため、地上面に対して角度α傾斜した中空短管19の軸心と垂直な方向に対して、角度αだけ傾斜している。
【0019】
ここで、中空短管19の内壁面34と、第1の連結配管33の下流側端部の外側内壁面(原料接触面)35及び接続配管23の上流側端部の外側内壁面(原料接触面)36は、段差がない連続面を形成している。
これにより、第1の連結配管33から流入した原料は、中空配管19の流入口11近傍のみで旋回するだけでなく、中空配管19の上流側から下流側へかけて、その内壁面34に沿って旋回しながら旋回流を形成すると共に、滞留することなく流出口15を形成する接続配管23から流出する。
【0020】
図1、図2(C)に示すように、中空短管19に接続された接続配管23は、2段目の中空短管20の上流側端部に接続されている。この接続配管23は、2段目の中空短管20の原料の流入口12を形成するものであり、流入口12が中空短管20の上流側端部の内壁面37に対して実質接線方向に向くように、中空短管20に接続されている。また、中空短管20の下流側端部の内壁面37には、原料の流出口16を形成する接続配管24が接続されている。
この中空短管20においても、各接続配管23、24の軸心が、地上面に対して略垂直になっているため、地上面に対して角度β傾斜した中空短管20の軸心と垂直な方向に対して、角度βだけ傾斜している。
【0021】
これにより、最上段の中空短管19に接続された接続配管23から、2段目の中空短管20に流入した原料は、この中空配管20の流入口12近傍のみで旋回するだけでなく、中空配管20の上流側から下流側へかけて、その内壁面37に沿って旋回しながら旋回流を形成すると共に、滞留することなく3段目の中空短管21と接続される接続配管24から流出する。
なお、他の中空短管、即ち、3、4段目の中空短管21、22についても、各接続配管24、25の軸心、及び最下段の中空短管22では、原料の流出口18を形成する第2の連結配管38の上流側端部の軸心が、地上面に対して角度γ及びδ傾斜した中空短管21、22の軸心と垂直な方向に対して、角度γ及びδだけそれぞれ傾斜している。この中空短管22は中空短管群の最下流側に位置するので、その原料の流出口18は、中空短管群の液出口に相当する。
ここで、各中空短管19〜22は、第1の連結配管33、各接続配管23〜25、及び第2の連結配管38に対して、例えば、ねじ又はワンタッチ式によってそれぞれ着脱可能な構造となっている。
【0022】
図1に示すように、最上段に配置された中空短管19の第1の連結配管33の上流側端部と、最下段に配置された中空短管22の第2の連結配管38の下流側端部は、原料搬送用ポンプ39に接続され、原料を、例えば、0.1m3 /分以上0.5m3 /分(ここでは、0.3m3 /分)の流速で、中空短管群へ送ることが可能となっている。これにより、原料は、各中空短管19〜22内部を、例えば、5秒以上30秒以下(ここでは、約10秒)で通過できる。なお、原料の流速は、上記した数値範囲に限定されるものではなく、例えば、各中空短管の大きさ及び原料搬送用ポンプの作動出力を調整することによって、更に大きくすることもできる。
【0023】
第1の連結配管33と第2の連結配管38とは、原料搬送用ポンプ39を介して連結されて連結配管を構成し、各中空短管19〜22を直列に接続した中空短管群の液出口が、原料搬送用ポンプ39及び連結配管を介して中空短管群の流入口に連結されて、原料が同じ系内で循環するための流路40が形成される。これにより、従来のように、例えば、撹拌用タンク、及びその内部に設置される撹拌羽根を使用することなく、原料を循環させて処理できるので、装置構成をコンパクトにできる。
【0024】
なお、流路40は、外部に対して閉じられた系となっているため、最上段の中空短管19の上部には、空気抜き用バルブ41が設けられた配管42が取付けられ、撹拌装置10の内圧を調整可能としている。
また、最上段に配置された中空短管19の第1の連結配管33の原料搬送用ポンプ39側には、原料取出用バルブ43が設けられた原料取出用配管44が接続されている。また、最下段に配置された中空短管22に連結される第2の連結配管38には、原料の貯留槽45に接続され、原料供給用バルブ46を備える原料供給用配管47が設けられている。
【0025】
ここで、2段目の中空短管20の上流側端部には、中空短管20と第1の連結配管33とを接続し、原料流入用予備バルブ48、49が設けられた流入用配管50を設けることも可能である。このように構成することで、原料量が少ないときは、第1の連結配管33の下流側にある流路を開閉するバルブ59を閉じて、原料流入用予備バルブ48、49を開けることにより、原料(例えば、液)は最上段の中空短管19に流れ込むことなく、流入用配管50を介して2段目の中空短管20に流れ込む。
このような構成を、3、4段目の各中空短管21、22に適用することも可能である。
これにより、撹拌装置の原料の流路を、原料量に応じて変更できるので、原料の少量抽出又は乳化を効率良く実施できる。
【0026】
図1に示すように、最下段に配置された中空短管22と第2の連結配管38には、加熱手段52が接続されている。
加熱手段52は、内部にヒーター53が配置される耐熱用の熱水製造用容器54を有し、その上流側端部が中空短管22の下流側下部に、下流側端部が第2の連結配管38に、バルブ55、56を介して設けられた接続配管57、58を介して接続されている。
これにより、前記した原料供給用配管47を介して流路40内に流入させた水を、熱水製造用容器54に貯留してヒーター53で加熱し、例えば、85℃以上100℃以下の熱水を製造した後、原料搬送用ポンプ39を使用して、流路40内部に熱水を流し、高温殺菌処理を行うことができる。
また、各中空短管19〜22、連結配管、及び熱水製造用容器54全てに流入させた水を、原料搬送用ポンプ39で循環させ、例えば、85℃以上100℃以下の熱水を製造しながら、高温殺菌処理を行うこともできる。
ここで、熱水製造用容器54も、前記した中空短管19〜22と同様に、各接続配管57、58に対して着脱可能な仕組みになっているので、清掃が容易である。
なお、使用済みの熱水は、原料取出用配管44を介して、外部へ排出することができる。
【0027】
なお、撹拌装置10は、主として直線状の配管と継手(ユニオン)とで構成され、例えば、ねじ又はボルトによって互いに着脱可能な構造となっているので、必要に応じて撹拌装置10を分解し、各部材をそれぞれ洗浄することも可能であり、メンテナンスが非常に楽である。
また、このように、撹拌装置10は、市販品(規格品)の各部材を組み合わせて製造できるので、各部材を特別に製造する必要性がなく、安価に製造できる。
そして、例えば、従来使用されていたタンクを無くし、撹拌装置10を主として直線状の配管を使用して構成することで、常に全ての原料が撹拌装置10の流路40内を循環できるので、原料の滞留が無い。
【0028】
続いて、前記した撹拌装置10の使用方法について説明する。
まず、貯留層45に、例えば、スラリー状の原料を貯留した後、原料搬送用ポンプ39に接続された第1の連結配管33のバルブ59、第2の連結配管38の流路を開閉するバルブ60、空気抜き用バルブ41、及び原料供給用バルブ46を開状態とし、熱水製造用容器54に接続された各接続配管57、58のバルブ55、56、及び原料取出用バルブ43を閉状態として、原料搬送用ポンプ39を始動する。これにより、撹拌装置10内に原料が流入する。なお、例えば、粉砕物である固形物は、最上段の中空短管19の配管42から投入することも可能である。
このとき、撹拌装置10内に流入させる原料の量は、全中空短管19〜22の容積の例えば、50体積%以上100体積%以下程度とする。また、第1の連結配管33のバルブ59を閉じて、原料流入用予備バルブ48、49を開き、最上段の中空短管19を使用しない場合は、原料の量を各中空短管20〜22の容積の例えば、50体積%以上100体積%以下程度とする。
【0029】
撹拌装置10の流路40内に、所定量の原料を供給した後は、開状態であった空気抜き用バルブ41及び原料供給用バルブ46を閉状態とし、原料の流速が、前記した条件を満足する範囲になるように、原料搬送用ポンプ39を運転制御する。なお、最上段の中空短管19内を流れる原料は、中空短管19内で旋回するので、空気抜き用バルブ41を開状態に維持しても、原料の吹き出しはほとんどない。このとき、配管42から原料を供給することも可能であり、この場合、中空短管19内での吸引作用により、原料が中空短管19内へ引き込まれる。
ここで、原料の流速は、例えば、原料搬送用ポンプ39に接続された第1の連結配管33又は第2の連結配管38に流量計(図示しない)を設けることで確認できる。
【0030】
これにより、原料搬送用ポンプ39によって第1の連結配管33内を流れる原料は、最上段の中空短管19の上流側端部の内壁面34に沿って中空短管19内へ流れ込み、その流速によって得られる遠心力により、中空短管19の内壁面34に沿って旋回しながら接続配管23から排出される。
なお、第1の連結配管33のバルブ59を閉じて、原料流入用予備バルブ48、49を開き、最上段の中空短管19を使用しない場合は、原料搬送用ポンプ39によって第1の連結配管33内を流れる原料が、流入用配管50を介して2段目の中空短管20の上流側端部の内壁面37に沿って中空短管20内へ流れ込む。
【0031】
接続配管23へ排出された原料は、前記した中空短管19に直列接続された各中空短管20〜22内で、中空短管19と同様に旋回流を発生させながら撹拌され、最下段の中空短管22から第2の連結配管38へ排出される。この操作を、予め設定した所定時間複数回繰り返し行って、原料の撹拌を行う。
原料の撹拌処理が終了した後は、開状態となっていた原料搬送用ポンプ39に接続された第1の連結配管33のバルブ59を閉状態とし、閉状態となっていた空気抜き用バルブ41及び原料取出用バルブ43を開状態とする。そして、原料搬送用ポンプ39の運転により、撹拌装置10の流路40内の処理された原料を、原料取出用配管44から取り出した後、原料搬送用ポンプ39を停止する。
【0032】
なお、原料としては、例えば、蚕の糞及び蚕の粉砕物のいずれか一方又は双方を主体(例えば、80質量%以上、好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上)とする葉緑素含有物と、エチルアルコール(抽出用溶媒の一例)との混合物、また油脂分を含む葉緑素と水との混合物を使用できる。
この葉緑素は、油脂分を含んでおり、撹拌装置10の流路40内部にこびりつき易いものであるが、装置構成が単純である(各中空短管19〜22内部には、従来のように螺旋状になった案内部材が無い)ので、例えば、流路40内部での原料の滞留、付着、及び残存が生じにくい。
従って、撹拌装置10は、葉緑素含有物とエチルアルコールとの混合物を撹拌しながら搬送し、葉緑素含有物から葉緑素をエチルアルコール中に抽出する抽出処理、又は油脂分を含む葉緑素と水との混合物を撹拌しながら搬送し、葉緑素と水とを乳化状態に分散混合する乳化処理を行うことができる。
【0033】
また、原料としては他のもの、例えば、動物性原料(例えば、鹿の角粉末)又は植物性原料(例えば、人参、クコ、又はゴーヤ)を使用でき、抽出処理又は乳化処理を行うことで、食品、化粧品、又は香料を製造することも可能である。
ここで、例えば、鹿の角粉末については、この粉末とアルコールとの混合物を撹拌装置10にかけ、抽出処理を行うことで、エキス(有効成分)を製造できる。また、人参及びクコについては、アルコール又は水と共に撹拌装置10にかけて抽出処理を行うことで、エキスを製造できる。
特に、高麗人参を撹拌装置10にかけ、抽出処理を行うことで得られるエキスは、その一滴で、従来と同等の品質を備えた人参酒が製造できる程度の抽出液であることを確認できた。このように、撹拌装置10は、短時間で効率よくエキスを抽出可能な装置である。
【0034】
前記したように、処理した原料を撹拌装置10の流路40から取り出した後は、引き続き撹拌装置10の洗浄を行う。
まず、貯留槽45に洗浄水を貯留した後、原料搬送用ポンプ39に接続された第1の連結配管33のバルブ59、第2の連結配管38のバルブ60、空気抜き用バルブ41、原料供給用バルブ46、及び熱水製造用容器54に接続された各接続配管57、58のバルブ55、56を開状態とし、原料取出用バルブ43を閉状態として、原料搬送用ポンプ39を始動する。
これにより、撹拌装置10の流路40に洗浄水を流す。このとき、流路40を流れる洗浄水の量は、各中空短管19〜22、接続配管23〜25、第1の連結配管33、第2の連結配管38、熱水製造用容器54、及び各接続配管57、58の内容積の例えば、50体積%以上100体積%以下程度とする。なお、水道の蛇口に接続したホース(図示しない)を、原料供給用配管47に直接接続した後、水道のコックを開状態として、撹拌装置10内に洗浄水を供給することも可能である。
【0035】
撹拌装置10の流路40に、所定量の洗浄水を供給した後は、開状態であった空気抜き用バルブ41を開状態のまま、また開状態であった原料供給用バルブ46を閉状態とし、原料搬送用ポンプ39を作動させ、ヒーター53に通電して、熱水製造用容器54内に流入する(循環)洗浄水を熱水となるように加熱する。これにより、撹拌装置10内を高温殺菌処理できる。
なお、撹拌装置10内を流れる熱水は、その使用によって温度低下する。このため、熱水製造用容器54に接続された接続配管57、58の各バルブ55、56を開状態として、殺菌時においても、熱水を加熱することにより、熱水の温度低下を極力抑制することができる。
【0036】
殺菌処理が終了した後、開状態となっていた原料搬送用ポンプ39に接続された第1の連結配管33のバルブ59を閉状態とし、閉状態となっていた空気抜き用バルブ41及び原料取出用バルブ43を開状態とする。そして、原料搬送用ポンプ39の運転により、撹拌装置10内の処理された熱水を、原料取出用配管44から取り出した後、原料搬送用ポンプ39を停止する。
前記したように、撹拌装置10の装置構成は単純であるので、殺菌処理を容易に実施できる。
このようにして、撹拌装置10の殺菌処理を行う。なお、撹拌装置10内に熱水を流す前に、加熱前の洗浄水を使用して、撹拌装置10内の付着物を予め除去することも可能である。
【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る撹拌装置70について説明するが、この撹拌装置70は、前記した撹拌装置10の中空短管19〜22の一部(ここでは、3段目の中空短管21)を、それぞれ原料が直線的に流れる搬送管71〜73に取り替えたものである。従って、撹拌装置10に使用した部材と同一部材については同一番号を付す。
【0038】
各搬送管71〜73は、2段目の中空短管20と最下段の中空短管22との間に、高さ方向にジグザグ状に複数本(ここでは3本)配置されている。最上段に位置する搬送管71の下流側端部は、2段目に位置する搬送管72の上流側端部に接続される接続配管74に接続され、この搬送管72の下流側端部が、最下段に位置する搬送管73の上流側端部に接続される接続配管75に接続されている。
なお、最上段に位置する搬送管71の上流側端部は、2段目の中空短管20の流出口16を形成する接続配管76に接続され、最下段に位置する搬送管73の下流側端部は、最下段の中空短管22の流入口14を形成する接続配管77に接続されている。
【0039】
この各搬送管71〜73は、耐食性のあるステンレスで構成された中空円筒状のものであり、例えば、その内径が1cm以上5cm以下、長さが1m以上2m以下のものである。なお、各搬送管の内径及び長さは、上記した範囲に限定されるものではなく、撹拌装置70の規模(原料の処理量)に応じて、種々調整することが可能である。
各搬送管71〜73は、略平行に配置され、地上面に対して角度ζ(例えば、上限が20度、好ましくは10度、更に好ましくは5度、下限が0.5度、好ましくは1度の範囲内)に傾斜して配置されている。ここで、各搬送管71〜73は、直線状となった配管と、その両端部に取付け可能なL字状の継手とで構成され、配管に対して継手が着脱可能な構造となっている。
なお、各搬送管71〜73は、平行に配置することなく、上流側から下流側へかけて、地上面へ向かって傾斜して配置することも可能であり、また各搬送管71〜73の傾斜角度を、上記した範囲内で全て異なる角度に設定することも可能である。
【0040】
隣り合う搬送管71、72、搬送管72、73、及び搬送管73と中空短管22との接続部分には、超音波加振機が78がそれぞれ設けられている。
この超音波加振機78は、図4(A)に示すように、搬送管71(他の搬送管72、73についても同じ)の径よりも拡径した流体通路79と、流体通路79内に配置され、超音波を、搬送管71を流れてくる原料に対して照射可能な発振子80と、ホーン81とを有している。照射される超音波の周波数は、例えば、20kHz以上100kHz以下程度であるが、本発明はこの周波数に限定されない。
【0041】
図4(A)、(B)に示すように、発振子80は、円盤状となった固定板82の側面中央部に取付けられ、この固定板82を、流体通路79の端部に設けられたフランジ部83に当接させ、止め輪(スナップリング)84により流体通路79に取付ける構造となっている。なお、固定板82の周辺部と流体通路79のフランジ部83との間には、シール材(図示しない)が配置され、その密閉状態を維持している。
これにより、流体通路79に発振子80を、容易に着脱できる。
この場合、各搬送管71〜73と流体通路79とを、一体型の構成としても、各搬送管71〜73内の掃除を行うことは容易であるが、各搬送管と流体通路とを、例えば、ねじによって着脱自在の構成とすることも可能である。
【0042】
以上のように構成することで、各搬送管71〜73から流体通路79内を通過する原料は、各搬送管71〜73を上流側から下流側へ流れるときに、超音波が照射される。
このように、各搬送管71〜73で滞留することなく、常に一定の速度で流れる原料に対して超音波照射が可能なので、抽出処理及び乳化処理を、従来よりも短時間で実施でき、製品の生産性が良好になる。
なお、超音波加振機78は、隣り合う搬送管71、72、搬送管72、73、及び搬送管73と中空短管22との接続部分に設けたが、各中空短管19、20、22のいずれか1又は2以上の上流側側端部又は下流側端部に設けることも可能である。また、超音波加振機を、中空短管群の液出口と液入口とを連結する連結配管に設けることも可能である。
【0043】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の撹拌装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、各中空短管を、上下(縦)方向にジグザグ状に配置し、直列接続した場合について説明したが、原料の搬送にポンプを使用しているため、各中空短管の配置位置は、これに限定されるものではなく、撹拌装置の設置スペースに応じて、例えば、水平(横)方向又は斜め方向にジグザグ状に直列接続してもよく、また、ジグザグ状でなく、例えば、直線状又は円周状に配置することも可能である。
【0044】
そして、前記実施の形態においては、複数の中空短管を直列接続した場合について説明したが、複数の中空短管を並列に接続し、原料の撹拌処理を、各中空短管で並列的に実施することも可能である。この場合、並列に配置される中空短管は、1本ずつでもよく、また複数の中空短管を直列接続したものを、並列接続(直並列)することも可能である。なお、並列又は直並列に接続配置された複数の中空短管が中空短管群を構成するので、この中空短管群の上流側端部の液入口と、下流側端部の液出口とを連結することで、撹拌装置に原料が循環する流路を形成できる。
更に、前記実施の形態においては、第2の実施の形態に係る撹拌装置の装置構成に、超音波加振機を加えた場合について説明したが、第1の実施の形態に係る撹拌装置の中空短管内又は隣り合う中空短管の間に、1又は2以上の超音波加振機を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撹拌装置の説明図である。
【図2】(A)は同撹拌装置の最上段の中空短管の平面図、(B)は図1のa−a矢視断面図、(C)は図1のb−b矢視断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る撹拌装置の説明図である。
【図4】(A)は同撹拌装置に使用する超音波加振機の説明図、(B)は同超音波加振機の取付け部品の正面図である。
【符号の説明】
【0046】
10:撹拌装置、11〜14:流入口、15〜18:流出口、19〜22:中空短管、23〜25:接続配管、26、27:フランジ部、28:管本体、29、30:フランジ部、31、32:蓋材、33:第1の連結配管、34〜37:内壁面、38:第2の連結配管、39:原料搬送用ポンプ、40:流路、41:空気抜き用バルブ、42:配管、43:原料取出用バルブ、44:原料取出用配管、45:貯留槽、46:原料供給用バルブ、47:原料供給用配管、48、49:原料流入用予備バルブ、50:流入用配管、52:加熱手段、53:ヒーター、54:熱水製造用容器、55、56:バルブ、57、58:接続配管、59、60:バルブ、70:撹拌装置、71〜73:搬送管、74〜77:接続配管、78:超音波加振機、79:流体通路、80:発振子、81:ホーン、82:固定板、83:フランジ部、84:止め輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出又は乳化に使用可能な撹拌装置であって、
一端部に原料の流入口が他端部に前記原料の流出口がそれぞれ設けられた円筒状の中空短管を、直列、並列、又は直並列に接続した中空短管群を有し、しかも前記流入口が該中空短管の内壁面に対して実質接線方向に向けられ、使用にあっては、前記流入口から前記中空短管内へ流入する前記原料が、該中空短管の内壁面に沿って旋回して、該中空短管内に前記原料の旋回流を発生させることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
請求項1記載の撹拌装置において、前記中空短管群の液出口は、ポンプ及びこれに接続される連結配管を介して、前記中空短管群の液入口に連結されていることを特徴とする撹拌装置。
【請求項3】
請求項2記載の撹拌装置において、前記中空短管群には超音波加振機が設けられ、該超音波加振機は、前記中空短管内、隣り合う前記中空短管の間、及び前記連結配管のいずれか1又は2以上に設けられ、該超音波加振機により前記原料に超音波を照射することを特徴とする撹拌装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の撹拌装置において、前記流出口は、前記中空短管の内壁面に対して実質接線方向に一致し、該中空短管内に流入した前記原料が旋回しながら前記流出口から流出することを特徴とする撹拌装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の撹拌装置において、前記中空短管群には加熱手段が設けられ、該加熱手段で加熱された水を前記各中空短管内に流すことを特徴とする撹拌装置。
【請求項6】
請求項5記載の撹拌装置において、前記加熱手段は、熱水製造用容器と、該熱水製造用容器内部に配置されるヒーターとを有することを特徴とする撹拌装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の撹拌装置において、前記各中空短管は、隣り合う前記中空短管からそれぞれ着脱可能な構造となっていることを特徴とする撹拌装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の撹拌装置において、前記原料は、蚕の糞及び蚕の粉砕物のいずれか一方又は双方を主体とする葉緑素含有物と抽出用溶媒、又は油脂分を含む葉緑素と水であることを特徴とする撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−88060(P2006−88060A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277583(P2004−277583)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(501049856)
【Fターム(参考)】