説明

操作スイッチ用カバー部材

【課題】確実な接触操作が可能であって、薄肉化し易いと共に十分な光を表面側から放射させ易い操作スイッチ用カバー部材を提供する。
【解決手段】接触操作可能な操作面15を表面側に有する表面操作部17を備えると共に、表面操作部17の背面側に表面操作部17に対する接触操作を静電容量の変化として検出可能な静電容量検出部21と、表面操作部17を背面側から照光可能な照光部19とを備え、照光部19からの放射された光が表面操作部17を透過して表面側に放射されるように構成されていて、表面操作部17と静電容量検出部21との間に照光部19が配置された状態で積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、接触操作可能な操作面を有すると共に、背面側から照光されて表面側から光を放射可能な操作スイッチ用カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、操作部を押圧することなく、指を接触させたり、摺動させる接触操作により、その操作が内部の回路に入力されて各種の処理が実行されるように構成された操作スイッチが多数存在する。このような操作スイッチには、接触操作が行われる同一の操作部を押圧することにより、その押圧操作で内部に設けられた接点の導通を行い、接触操作とは別の処理が実行されるように構成されたものが存在する。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、メンブレンスイッチの上方に可撓性を有するタッチパネルスイッチを配置し、タッチパネル上に指を接触させて摺動させることで接触操作による入力が行えると共に、タッチパネルスイッチを押圧することで、押圧操作による入力が行えるように構成された電子機器が提案されている。
【0004】
ここでは、タッチパネルスイッチが、互いに離間して対向された一対の絶縁基材と、各導電基板の対向面にそれぞれ積層された導電被膜とからなり、一方の絶縁基材を押圧して変形させることで、タッチパネルスイッチの接触操作による入力が行なえるようになっている。
【0005】
また、タッチパネルスイッチを支持する面に凹部が設けられ、この凹部に配線基板の接点部分が配置されており、タッチパネルスイッチの2枚の絶縁基板を押圧して変形させることで、押圧操作による入力が行えるようになっている。
【0006】
更に、この電子機器では、タッチパネルスイッチが光透過性部材で構成されており、背面側に配置された照光部により照光することで、光がタッチパネルスイッチを透過して表面側から放射されるようになっている。
【特許文献1】特開2001−76582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような装置では、タッチパネルスイッチが複数の絶縁基材及び導電被膜を離間して配置することで形成されており、接触操作を行わない間は導電被膜間を確実に離間させなければならず、薄型化し難かった。
【0008】
また、背面側から照光された光がタッチパネルスイッチの絶縁基材及び導電被膜等を多数透過して表面側から放射されるため、光が減衰され易い上、導電被膜間に設けられている間隙等で光が乱反射して減衰され易く、表面側に放射される光が不足し易かった。
【0009】
そこで、この発明は、確実な接触操作が可能であって、薄肉化し易いと共に十分な光を表面側から放射させ易い操作スイッチ用カバー部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、接触操作可能な操作面を表面側に有する表面操作部を備えると共に、該表面操作部の背面側に前記表面操作部に対する接触操作を静電容量の変化として検出可能な静電容量検出部と、前記表面操作部を背面側から照光可能な照光部とを備え、前記照光部からの放射された光が前記表面操作部を透過して表面側に放射されるように構成された操作スイッチ用カバー部材であって、前記表面操作部と前記静電容量検出部との間に前記照光部が配置された状態で積層されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記照光部は、コア層と、該コア層の表面を覆うクラッド層とを備えてシート状に形成され、光源からの光が前記クラッド層との界面で反射されつつ前記コア層の内部で面方向に導かれて放射部から放射されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記静電容量検出部は、金属からなる検出子、又は、樹脂に金属粉若しくはカーボン粒子を分散した導電性樹脂塗膜からなる検出子を有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記静電容量検出部と前記照光部との間に、実質的に導電性を有しない非導電遮光層を備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記表面操作部は、接触操作及び押圧操作可能な前記操作面を有し、前記静電容量検出部の背面側の前記操作面に対応する位置には、被押圧部を押圧可能な押圧部を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記押圧部は、前記静電容量検出部の背面側を被覆する被覆部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、表面操作部と静電容量検出部との間に照光部が配置された状態でこれらが積層されているので、表面操作部に照光部を近接配置できて、照光部から表面操作部側に放射された光が静電容量検出部により阻害されることがなく、操作スイッチ用カバー部材の表面側から十分な光を放射させ易い。また、表面操作部や静電容量検出部と照光部との間を離間させないため、操作スイッチ用カバー部材を薄肉化し易くて、静電容量検出部を操作面に近接配置できるため、検出精度を向上して確実な接触操作が可能である。
【0017】
請求項2に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、光源からの光がクラッド層との界面で反射されつつコア層の内部で面方向に導かれるように照光部が構成されているので、照光部に表面操作部や静電容量検出部を直接接触させて積層していても、コア層内で導かれる光がこれらとの接触部分で乱反射して減衰され難くでき、導光性能を確保しつつ、表面操作部や静電容量検出部を積層することが可能である。そのため、操作スイッチ用カバー部材の表面側からより十分な光を放射させ易いと共に、操作スイッチ用カバー部材の薄肉化を図り易い。
【0018】
請求項3に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、
静電容量検出部が金属からなる検出子、又は、樹脂に金属粉若しくはカーボン粒子を分散した導電性樹脂塗膜からなる検出子を有するので、検出子の電気抵抗を十分に小さく抑えることができ、接触操作の検出精度を向上することが可能である。しかも、検出子が不透明な金属又はカーボンであっても、照光部が静電容量検出部より表面操作部側に配置されているため、照光部から放射される光の透過は何ら阻害されることがなく、十分な光を放射させ易い。
【0019】
請求項4に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、静電容量検出部と照光部との間に、実質的に導電性を有しない非導電遮光層を備えているので、照光部から漏れた光や放射部で乱反射された光が静電容量検出部に到達することを阻止できる。そのため、これらの光が静電容量検出部で反射されることにより、静電容量検出部の形状が表面操作部の表面側から視認されるようなことを防止できる。
【0020】
請求項5に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、表面操作部が接触操作及び押圧操作可能な操作面を有し、静電容量検出部の背面側の操作面に対応する位置に被押圧部を押圧可能な押圧部を備えているので、静電容量検出部を押圧部や被押圧部より操作面に近接して配置することが可能で、接触操作と押圧操作とが同一位置で行えるように構成していても、静電容量検出部の検出精度を確保し易い。
【0021】
請求項6に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、押圧部が静電容量検出部の背面側を被覆する被覆部を備えているので、被覆部により静電容量検出部を背面側から補強でき、押圧操作により繰り返し操作スイッチ用カバー部材が弾性変形させられても、静電容量検出部の疲労による剥離や劣化を防止して耐久性を向上し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
【0023】
図1乃至図4は、この実施の形態1の操作スイッチ用カバー部材を用いた操作スイッチを示している。
【0024】
この実施の形態1の操作スイッチは、携帯電話機に使用されるもので、図1及び図2に示すように、開口部10aを有する筐体10と、筐体10の開口部10aに配置された操作スイッチ用シート部材としての操作パネル11と、筐体10の内部に操作パネル11と離間して対向配設された基体部12とを備えている。
【0025】
操作パネル11は、表面側に配置され表面シート13と、表面シート13の開口13aに配置されて接触操作及び押圧操作が可能な操作面15を有する表面操作部としての接触押圧操作部17と、表面シート13及び接触押圧操作部17の背面側である基体部12側に配置されてこれらを背面側から照光可能な照光部19と、照光部19の背面側に配置されて接触押圧操作部17に対する接触操作を静電容量の変化として検出可能な静電容量検出部21と、静電容量検出部21の背面側の略全面を被覆する被覆部23とを備えており、これらが積層一体化されている。ここでは、被覆部23の接触押圧操作部17に対応する部位が、接触押圧操作部17に対する押圧操作により、基体部12の所定位置を押圧可能な押圧部となっている。
【0026】
この操作パネル11では、詳細な図示は省略しているが、接触押圧操作部17以外の部位に押圧操作可能な多数の押圧操作部25が設けられており、静電容量検出部21を設けることなく、表面シート13の背面側に照光部19が積層されている。
【0027】
このような操作パネル11の表面シート13は、操作パネル11の形状を維持できる程度の強度を有すると共に、光を透過可能な硬質樹脂等から平板状に形成されている。この実施の形態1では、接触押圧操作部17以外の部位に押圧操作部25が設けられているため、表面シート13は弾性変形可能なポリカーボネート、アクリル、PET等の樹脂から形成されている。
【0028】
接触押圧操作部17は、互いに離間した中央キー27と複数の方向キー29からなり、図2に示すように、表面シート13の開口13aに配置されて照光部19の表面に接合されている。中央キー27及び方向キー29の各操作面15は、それぞれ独立に押圧操作可能であると共に、個々に又は複数連続して接触操作可能となっている。
【0029】
このような中央キー27及び方向キー29は、光を透過可能であって、操作面15に対する接触操作時に、静電容量の変化を静電容量検出部21により検出可能な材料から形成されており、この実施の形態1では、ポリカーボネート、アクリル、PET等の樹脂から形成されている。
【0030】
表面シート13及び接触押圧操作部17の背面側には遮光層31が設けられると共に、遮光層31の一部に文字、図形、記号等の各種のデザインで抜かれた抜き開口が設けられており、この開口により背面側からの光を操作パネル11の表面側から放射する透光表示部33が形成されている。これらの表面シート13及び接触押圧操作部17の遮光層31及び透光表示部33より表面側に他の加飾層71が外部から視認可能に設けられていてもよい。
【0031】
次に、操作パネル11の照光部19は、コア層35と、コア層35の両表面を覆うクラッド層37、39とを備えてシート状に形成され、光源41からの光がクラッド層37、39との界面で反射されつつコア層35の内部で面方向に導かれ、透光表示部33に対応する位置に設けられた放射部43から放射されるように構成されている。
【0032】
コア層35の材料は、光を面方向に透過可能な程度の透明性を有することが必要であり、透過率が高い程、導光される光の減衰を抑えることができて好適である。例えば、可視光領域の光の全光線透過率が80%以上であるとしてもよい。
【0033】
また、コア層35の材料は、屈折率が高いもの程好ましく、例えば1.3以上とするのが好適である。クラッド層37、39として使用可能な材料の選択の幅を広げられるからである。
【0034】
更に、コア層35の材料は、可撓性を有することが好ましい。表面シート13及び接触押圧操作部17と積層された状態で表面シート13及び接触押圧操作部17と共に押圧操作される際に変形し易くできるからである。
【0035】
このようなコア層35を構成する材料としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン、アクリル、PET、ポリカーボネート等の樹脂やエラストマーなどを使用することができる。
【0036】
このコア層35は、光源41から光が入射される部位を除いて一定の厚さでシート状に形成されている。ここでは、シート状とは、コア層35が独立してシート状の形状を呈していてもよく、他の部材の表面に付着された層であってもよい。
【0037】
コア層35の縁部側の一部には、図2に示すように、光源41からの光が入射するための入射部45が設けられている。この入射部45はコア層35の他の部位と同一の厚さに形成されていてもよいが、ここでは光源41側程厚肉となるようにテーパ形状に形成されている。
【0038】
この実施の形態1では、各光源41と入射部45の入射面との間は密着されるのが好ましく、光源41と入射部45の入射面との間に間隙が形成される場合には、その間にシリコーンゲルなどが充填されていてもよい。このようにすれば、光源41から発光された光を、空気層を経由することなくコア層35に入射させることができ、入射時に光が散乱されて減衰することを防止し易い。
【0039】
このコア層35の各入射部45を除く部位は略均一な厚さに形成されている。このコア層35の厚さは、放射部43において放射される光により所望の輝度が確保できる範囲で出来るだけ薄肉に形成されることが好ましく、例えば0.05〜0.5mm、好ましくは0.07〜0.3mmとしてもよい。
【0040】
また、コア層35の放射部43を除く部位の表面は鏡面に形成されていることが好ましい。鏡面であれば、導光される光がコア層35とクラッド層37、39との各界面で乱反射して、コア層35内で導かれる光が放射されることを抑制でき、導光性能を向上させることができるからである。
【0041】
この鏡面とは、表面粗さが小さく抑えられている状態である。鏡面は、例えば成形型を用いてコア層35を成形する場合には、型面の表面粗さを小さく抑えることにより作製することが可能である。この型面の表面粗さとしては、例えば、三次元形状測定装置等により測定される算術平均粗さ(Ra)が0.01〜0.8μmの範囲となるものが好適である。
【0042】
コア層35の放射部43は、それぞれコア層35内で導かれた光が到達することにより乱反射可能に構成されている。例えば、コア層35の透光表示部33に対応する位置の少なくとも一方の表面、好ましくは表面シート13側の表面を粗面にして微細な多数の凹凸を形成したものとしてもよい。
【0043】
一方、照光部19のクラッド層37、39は、コア層35の表面に接着剤等の他の層を介在させることなく直接密着した状態で積層一体化された層である。
【0044】
このクラッド層37、39は、コア層35内で導かれる光を界面においてコア層35側により多く反射させるための層であるため、コア層35の放射部43の部位に積層しない場合には、透明性を有しない材料から形成されていてもよい。コア層35の放射部43の部位に積層する場合には、コア層35から放射された光が透過可能な程度の透明性を有することが必要であり、出来るだけ透明度が高いものが好適である。
【0045】
また、このクラッド層37、39は、密着しているコア層35の屈折率より小さいことが必要であり、コア層35の屈折率に対して0.1%以上小さくなることが好ましく、特に、1%以上小さくすることが好適である。クラッド層37、39の屈折率が大きい程、コア層35内を導光される光の全反射の条件が狭くなり、導光性能が低下するからである。
【0046】
更に、このクラッド層37、39も可撓性を有することが好ましい。他の層と積層されて操作パネル11を構成した状態で、押圧操作される際に変形し易くできるからである。
【0047】
このようなクラッド層37、39を構成する材料としては、接着剤等の他の材料を介在させることなくコア層35と積層一体化できる材料であることが要求される。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂や他の樹脂、フッ化シリコーンゴム等のエラストマーなどを使用することができる。シリカ等のように多孔質空間内に空気を保持することで見かけの屈折率を小さくできる材料であってもよい。
【0048】
このクラッド層37、39は、出来るだけ薄肉に形成されることが好ましい。クラッド層37、39は、コア層35との界面においてコア層35内で導かれた光を反射させるために使用される層であるため、導光性能に対する厚さの影響が少ないからである。
【0049】
次に、操作パネル11の静電容量検出部21は、図3に示すように、多数の検出子としての検出部位21aと、各検出部位21aに接続されたリード線21bとを備えている。これらが照光部19のクラッド層39に各種の導電性被膜を直接付着することにより形成されていれば、静電容量検出部21の厚さを薄く形成し易くて好適である。
【0050】
この実施の形態1の静電容量検出部21では、複数の扇形の検出部位21aが、それぞれ中央キー27の略中心部から方向キー29の外周縁に至る大きさで放射方向に形成されており、各検出部位21aが互いに平面視において異なる位置に全体で円形となるように配置され、互いに非接続状態となっている。ここでは、各中央キー27及び方向キー29に対応する位置に、それぞれ複数の検出部位21aが配置されている。なお、リード線21bは各検出部位21aの弧状の端縁から延びており、全てのリード線21bが一箇所で集束されて、図示しない回路まで延長されて接続されている。
【0051】
検出部位21a及びリード線21bを構成する導電性被膜層は、接触操作時の検出精度を向上するため、十分な導電性を有するものが好ましい。この導電性被膜層では、静電容量検出部21が中央キー27及び方向キー29に近接して配置されているため、例えば、面抵抗4000Ω/□以下であっても使用可能である。その場合、面内の抵抗値ばらつき(距離と抵抗値のリニアリティー)が30%以下であることが望まれる。また、検出部位21aまでのリード線21bの面抵抗が100Ω/□とすることで高い感度の静電容量検出が可能となる。なお、導電性被膜層全ての面抵抗が100Ω/□以下、更に好ましくは10Ω/□以下であればより好適である。
【0052】
また、この導電性被膜層は、押圧操作時には繰返し局部的な変形を受けるため、変形に対する柔軟性を有するものが好ましい。
【0053】
このような導電性被膜としては、静電容量検出部は、各種の金属薄板、金属蒸着膜、金属箔等の金属に形成してもよく、樹脂に金属粉若しくはカーボン粒子を分散させた導電性樹脂塗膜により形成してもよく、カーボンインク、銀系インク等の導電性インク、酸化インジウム錫、導電性高分子等の透明インクなどにより形成してもよい。この導電性被膜は照光部19より基体部12側に設けられるものであるため、透光性は要求されないため、不透明な材料に形成することが可能である。この実施の形態1では、柔軟性を得易く抵抗値を十分に低減し易いという理由で、金属又は樹脂に金属粉若しくはカーボン粒子を分散させた導電性樹脂塗膜を用いるのが好ましい。導電性被膜を金属薄膜により形成する場合、例えば、照光部19の表面にシルクスクリーン等の印刷法や化学蒸着、スパッタリングまたはホットスタンプ等の転写により金属薄膜を形成し、場合によっては、所定の形状にエッチングするなどにより形成することが可能である。
【0054】
次に、操作パネル11の被覆部23は、静電容量検出部21の少なくとも接触押圧操作部17に対応する位置の基体部12側を検出部位21aを周囲の照光部19の表面と共に連続して被覆する層である。この被覆部23は、各接触押圧操作部17が繰り返し押圧操作された際、後述するプランジャ部59が検出部位21aと直接接触することで、各検出部位21aを構成する導電性被膜が劣化されることを防止するために設けられている。
【0055】
このような被覆部23を構成する材料としては、検出部位21aの表面及び照光部19の表面と密着した状態を維持可能な各種のインク、塗料等により形成することができる。特に、導電性被膜を銀系のインクを用いて形成した場合は、酸化又は硫化による劣化を防止するため、防湿性やガス透過性を低減する表面保護層を設けることが望ましい。例えばフッ素系のインクである。
なお、この被覆部23の導電性が高いと静電容量検出部21の検出精度を低下させ易いという理由で、導電性が低い材料を用いるのが好適である。
【0056】
次に、この操作スイッチの基体部12は、硬質樹脂製の板材からなる基板49と、弾性ドームシート51とを備えている。
【0057】
基板49は、この実施の形態1では、硬質樹脂等からなる板材からなり、中央キー27及び各方向キー29或いは押圧操作部25の押圧操作時に変形を防止できる構造となっている。この基板49には、図示しない回路が設けられ、静電容量検出部21のリード線21bが接続され、中央キー27及び方向キー29の接触操作により検出される静電容量の変化が入力されて処理可能に構成されると共に、中央キー27及び方向キー29の押圧操作による入力が処理可能に構成され、更に、押圧操作部25からの押圧操作による入力が処理可能に構成されている。
【0058】
このような基板49には、操作パネル11の接触押圧操作部17及び押圧操作部25に対応する各位置に、図示しない回路と接続されて互いに離間して配置された接点端子53が設けられている。また、操作パネル11の遮光層31に覆われる位置に、側面発光型のLED等からなる光源41が台座49aに固定された状態で設けられている。
【0059】
弾性ドームシート51は、シート状に形成されて基板49の表面に密着して固定されており、接触押圧操作部17及び押圧操作部25と対向する各位置には、弾性変形可能な中空立体形状を有するドーム部55が設けられている。ドーム部55の操作パネル11側には、中央キー27及び各方向キー29の操作面15と対応する位置並びに押圧操作部25と対応する位置にプランジャ部59が突設されており、このプランジャ部59及びドーム部55により、中央キー27及び各方向キー29並びに押圧操作部25が押圧操作された際、操作パネル11により押圧される被押圧部が構成されている。また、プランジャ部59の頂部が静電容量検出部21の背面に設けられた被覆部23に当接して配置されており、被覆部23のプランジャ部59の頂部が当接する部位により押圧部が構成されている。
【0060】
この弾性ドームシート51としては、PETなどの樹脂からなるものでもよいが、シリコーンゴム等のエラストマーからなるものであってもよい。
【0061】
ドーム部55の基板49側には、成形された金属ドーム、金属蒸着膜、カーボン印刷層等からなる導電層57が各ドーム部55毎に設けられている。この導電層57は周縁で一方の接点端子53に常時接触し、中央部で他方の接点端子53と離間した状態で配置されている。
【0062】
このような弾性ドームシート51では、接触押圧操作部17や押圧操作部25が押圧操作されると、プランジャ部59を介してドーム部55が押圧されて弾性変形し、導電層57により接点端子53間が接続され、また、解除されると復元するように構成されている。
【0063】
次に、このような構成を有する操作スイッチの使用方法について説明する。
【0064】
まず、光源41が発光しない間は、中央キー27及び方向キー29ではそれぞれ遮光層31や遮光層31より表面側に設けられた各種の加飾層71が外部から視認されている。このとき、操作スイッチ内部は、遮光層31により遮蔽されているため外部からは視認されない。
【0065】
また、光源41が発光すると、入射部45からコア層35内に光が入射し、クラッド層37、39により反射されつつ内部で面方向に導かれ、接触押圧操作部17、押圧操作部25等の透光表示部33に対応する位置に設けられた放射部43に到達する。この放射部43に到達した光が乱反射してコア層35から放射され、この光がクラッド層37と、表面シート13、中央キー27、又は方向キー29とを略厚さ方向に透過して、各透光表示部33において操作パネル11から外部に放射される。そのため、外部からは透光表示部33に対応した光が視認される。
【0066】
そして、接触押圧操作部17においてスイッチ操作を行うには、まず、指を中央キー27又は方向キー29の上に近接又は接触させることで瞬時の接触操作を行う。すると、静電容量検出部21において、静電容量の変化が検出される。次に、必要に応じ、指を中央キー27又は方向キー29上で移動することで更なる接触操作を行う。すると、その際の静電容量の変化が検出され、初期値との差から各種の選択或いは変化が実施される。
【0067】
また、指で中央キー27、方向キー29、或いは押圧操作部25を押圧することにより押圧操作を行うと、中央キー27又は方向キー29と共に、照光部19、静電容量検出部21、及び被覆部23が基板49側へ下降し、プランジャ部59によりドーム部55が弾性変形される。これにより、導電層57が接点端子53に接触し、クリック動作感が得られた状態で、接点端子53間が導通される。この押圧操作により、各種の処理や上述の接触操作と組み合わされた所望の処理が実行される。
【0068】
以上のような操作パネル11を有する携帯電話によれば、光源41からの光がクラッド層37、39との界面で反射されつつコア層35の内部で面方向に導かれて放射部43から放射されるように照光部19が構成されているので、照光部19に表面シート13、中央キー27、方向キー29、或いは遮光層31や静電容量検出部21を直接接触させて積層していても、コア層35内で導かれる光がこれらとの接触部分で乱反射され難い。そのため、照光部19の放射部43以外から光を放射し難くでき、照光部19の導光性能を確保しつつ、表面シート13、中央キー27、方向キー29、或いは静電容量検出部21を照光部19に積層することが可能である。
【0069】
その結果、操作パネル11の透光表示部33から十分な光を放射させ易いと共に、表面シート13、中央キー27、又は方向キー29と照光部19との間、及び、静電容量検出部21と照光部19との間に、間隙を設けて互いに離間させる必要がないため、操作パネル11を薄肉化し易い。しかも、静電容量検出部21を操作面15に近接配置することができるため、静電容量検出部21の検出精度を向上し易く、確実な接触操作を可能にできる。
【0070】
また、この操作パネル11によれば、静電容量検出部21が金属からなる検出部位21aを有するので、検出部位21aの電気抵抗を十分に小さく抑えることができ、接触操作の検出精度を向上することができる。
【0071】
しかも、このように検出部位21aを不透明な金属で形成していても、照光部19が静電容量検出部21より表面シート13側に配置されているため、照光部19から放射される光の透過は何ら阻害されることはない。同時に、金属からなる検出部位21aが照光部19に積層されていても、光が導かれるコア層35の表面がクラッド層37、39により被覆されているため、コア層35内で導かれる光が検出部位21aにより乱反射されて減衰されることを防止でき、照光部19の導光性能を確保することが可能である。
【0072】
更に、この操作パネル11によれば、中央キー27及び方向キー29が接触操作及び押圧操作可能な操作面15を有していて、静電容量検出部21の背面側の操作面15に対応する位置に設けられた被覆部23によりプランジャ部59及びドーム部55を押圧可能に構成されているので、静電容量検出部21をプランジャ部59及びドーム部55等より操作面15に近接して配置することが可能で、接触操作と押圧操作とが同一位置で行えるように構成していても、静電容量検出部21の検出精度を確保することができる。
【0073】
また、この操作パネル11によれば、静電容量検出部21の背面側を被覆する被覆部23を備えているので、被覆部23により静電容量検出部21を背面側から補強したり、照光部19との接合強度を向上することができ、押圧操作により繰り返し操作パネル11が弾性変形させられても、静電容量検出部21の疲労による剥離や劣化を防止することができて耐久性を向上し易い。
【0074】
なお、上記実施の形態1では、携帯電話の操作パネル11にこの発明を適用した例について説明したが、特に限定されるものではなく、各種のスイッチの表面に配置されるカバー部材に適宜適用することが可能である。
【0075】
また、上記実施の形態1では、操作面15が押圧操作及び接触操作可能な例について説明したが、接触操作のみ可能な面であってもよい。
【0076】
更に、上記では、静電容量検出部21を照光部19の表面に導電性被膜層を直接設けることにより形成した例について説明したが、他のシート部材等の表面に導電性被膜層を担持させ、その状態で照光部19と接合してもよい。更に、金属板等のそれ自体で形状保持可能な状態で形成することも可能である。
【0077】
また、上記では、入射部を照光部19の縁部に設けて、側面発光型の光源41により光をコア層35内に導入させる例について説明したが、特に限定されるものではなく、例えば上面発光型のLED等の光源をコア層35の周縁より内側に配置してコア層35の中間位置から光を導入することも可能である。
[実施の形態2]
【0078】
図4は、この実施の形態2の操作パネルを備えた携帯電話を示す。
【0079】
この実施の形態2の操作パネル11は、接触押圧操作部17及び押圧操作部25を一体に有する1枚のフィルムキー61を備え、フィルムキー61の基体部12側には照光部19及び静電容量検出部21が積層され、これらのフィルムキー61、照光部19及び静電容量検出部21が、立体形状に形成された弾性体シート63に一体に接合されて支持されている。
【0080】
フィルムキー61は、ポリカーボネート等により変形自在に形成された本体フィルムの基体部12側である背面側に、遮光層31及び透光表示部33を設けたものであり、透光表示部33により、文字、図形、記号等の各種のデザインと共に、図1の中央キー27及び方向キー29が線図により区画されて設けられており、これにより接触押圧操作部17が形成されている。
【0081】
操作パネル11の照光部19には、透光表示部33に対応する位置の基体部12側の面にコア層35の放射部43が設けられている。この放射部43は円柱状、円錐状、角柱状、角錐状等の各種の凹形状に凹ませて形成されており、底部に微細な凹凸が形成されている。ここでは、光源41からの距離に応じて、凹形状の大きさや深さ、底部の凹凸の密度等を変化させることで、各放射部43から均一な照光ができるように構成されている。更に、クラッド層39の放射部43に対応する位置が開口されており、放射部43の底部と非導電遮光層65の表面との間に微小な空気層73が設けられている。
【0082】
操作パネル11の弾性体シート63は、基板49に周縁部63aにおいて固定され、筐体10の開口部10aに対応する部位において静電容量検出部21の背面に接合されて被覆している。更に、中央キー27及び方向キー29に対応する位置の基体部12側に、弾性ドームシート51のドーム部55を押圧可能なプランジャ部59が突設されている。このような弾性体シート63は、シリコーンゴム、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー等の弾性を有する材料から形成されている。
【0083】
また、静電容量検出部21の検出部位21a及びリード線21bは、弾性体シート63の表面に直接付着して形成されている。
【0084】
更に、静電容量検出部21と照光部19との間には、実質的に導電性を有しない不透明な印刷層等の非導電遮光層65が設けられており、静電容量検出部21の検出部位21a及びリード線21bが被覆されている。ここで、実質的に導電性を有しないとは、非導電遮光層65が静電容量検出部21の複数の検出部位21a間に連続して接触していても、接触操作時に静電容量検出部21により静電容量が検出可能な程度に検出部位21a間を絶縁できる絶縁性を有することを意味する。
【0085】
その他は実施の形態1と同様である。
【0086】
このような構成を有する操作スイッチも実施の形態1の操作スイッチと同様に使用することができ、同様の作用効果を得ることが可能である。
【0087】
しかも、この実施の形態2の操作パネル11では、操作パネル11のドーム部55と対向する位置に、ドーム部55を押圧可能に突設したプランジャ部59を備えているが、このプランジャ部59より静電容量検出部21を操作面15に近接配置することができるため、静電容量検出部21の検出精度を確保することができる。
【0088】
また、この操作パネル11では、静電容量検出部21と照光部19との間に、実質的に導電性を有しない非導電遮光層65を備えているので、コア層35から漏れた光や放射部43で乱反射された光が、静電容量検出部21に到達することを阻止できる。そのため、これらの光が静電容量検出部21で反射されることにより、静電容量検出部21の形状がフィルムキー61の表面側から視認されるようなことを防止できる。
【0089】
更に、この操作パネル11では、放射部43の底部と非導電遮光層65の表面との間に微小な空気層73が設けられているので、空気層73がクラッド層となるため、屈折率の差がより大きくなり、導光された光が放射部43で効率よく反射され、表示部33がより明るく視認可能となる。
[実施の形態3]
【0090】
図5は、この実施の形態3の操作パネルを備えた携帯電話を示している。
【0091】
この実施の形態3では、照光部19がコア層35からなり、照光部19の外側表面に、フィルムキー61が接着剤等を介在させることなく、直接密着された状態で積層されている。
【0092】
また、フィルムキー61は透明な樹脂等の材料により形成されている。ここでは、コア層35の屈折率より小さい屈折率を有するものが好適である。より好ましくは、コア層35の屈折率に対して0.1%以上小さくすること、特に、1%以上小さくすることが好適である。フィルムキー61の屈折率がコア層35の屈折率より小さければ、フィルムキー61がクラッド層39と同様の作用を奏することが可能となり、他の実施の形態のクラッド層39と同様に、コア層35内で導かれる光をフィルムキー61との間の界面における全反射の条件を大きくしてコア層35の導光性能を向上できるからである。
【0093】
更に、フィルムキー61の外側表面、即ち、基体部12とは反対側の表面に、遮光層31が透光表示部33を形成するように設けられており、この遮光層31の表面と透光表示部33のフィルムキー61の表面とに、図示しない下地層を介して不連続錫蒸着等により絶縁性半透光性金属調層77が積層されており、この絶縁性半透光性金属調層77の表面全面に保護層79が積層されている。
【0094】
その他は、実施の形態2と同様である。
【0095】
このような操作パネル11であっても、実施の形態2と同様の作用効果を得ることが可能である。しかも、ここでは、照光部19がコア層35の単独層からなり、その表面にクラッド層を設けないため、操作パネル11の薄肉化をより図り易く、また、積層数を少なくすることが可能であるため、容易に製造し易くできる。
【0096】
また、絶縁性半透光性金属調層77が表面側に積層されているので、光源41の非点灯時には、操作パネル11の外側面全面が絶縁性半透光性金属調層77の金属調光沢を示し、透光表示部33が外部から視認されない。そして、光源41の点灯時には、透光表示部33を透過した光が絶縁性半透光性金属調層77を透過して外側に放射されることで、この光により透光表示部33の形状が外部から視認される。これにより、例えば、接触操作部15に一度接触することで光源41を点灯させて透光表示部33を表示することもできる。そのため、光源41の点灯時と消灯時とで外観を大きく変化させることができ、優れた意匠性が得られる。
【0097】
なお、上記実施の形態3では、フィルムキー61が透明材料からなり、その外側表面に遮光層31及び透光表示部33を設けた例について説明したが、コア層35内で光を導光可能である限り、フィルムキー61の照光部19側表面に遮光層31及び透光表示部33を設けることや、フィルムキー61を不透明材料により形成することも可能である。
【0098】
また、上記実施の形態2又は3では、静電容量検出部21と照光部19との間に非導電遮光層65を備えた例について説明したが、非導電遮光層65を設けることなく、直接静電容量検出部21と照光部19とを積層することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】この発明の実施の形態1の操作パネルを備えた携帯電話の一部の平面図である。
【図2】この発明の実施の形態1の操作パネルを備えた携帯電話を示す図1のA−A断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1の操作パネルの静電容量検出部を示す平面図である。
【図4】この発明の実施の形態2の操作パネルを備えた携帯電話を示す図1のA−A断面図相当図である。
【図5】この発明の実施の形態3の操作パネルを備えた携帯電話を示す図1のA−A断面図相当図である。
【符号の説明】
【0100】
10 筐体
11 操作パネル
12 基体部
13 表面シート
15 操作面
17 接触押圧操作部
19 照光部
21 静電容量検出部
23 被覆部
31 遮光層
33 透光表示部
35 コア層
37、39 クラッド層
41 光源
1 放射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触操作可能な操作面を表面側に有する表面操作部を備えると共に、該表面操作部の背面側に前記表面操作部に対する接触操作を静電容量の変化として検出可能な静電容量検出部と、前記表面操作部を背面側から照光可能な照光部とを備え、前記照光部からの放射された光が前記表面操作部を透過して表面側に放射されるように構成された操作スイッチ用カバー部材であって、
前記表面操作部と前記静電容量検出部との間に前記照光部が配置された状態で積層されていることを特徴とする操作スイッチ用カバー部材。
【請求項2】
前記照光部は、コア層と、該コア層の表面を覆うクラッド層とを備えてシート状に形成され、光源からの光が前記クラッド層との界面で反射されつつ前記コア層の内部で面方向に導かれて放射部から放射されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ用カバー部材。
【請求項3】
前記静電容量検出部は、金属からなる検出子、又は、樹脂に金属粉若しくはカーボン粒子を分散した導電性樹脂塗膜からなる検出子を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の操作スイッチ用カバー部材。
【請求項4】
前記静電容量検出部と前記照光部との間に、実質的に導電性を有しない非導電遮光層を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の操作スイッチ用カバー部材。
【請求項5】
前記表面操作部は、接触操作及び押圧操作可能な前記操作面を有し、前記静電容量検出部の背面側の前記操作面に対応する位置には、被押圧部を押圧可能な押圧部を備えていることを特徴とする1乃至4の何れか一つに記載の操作スイッチ用カバー部材。
【請求項6】
前記押圧部は、前記静電容量検出部の背面側を被覆する被覆部を備えていることを特徴とする請求項5に記載の操作スイッチ用カバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−146707(P2009−146707A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322406(P2007−322406)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】