説明

操作・表示装置

【課題】
所定の操作キー領域に属する複数の上下可動部材のみを操作キーとして顕在化させる。
【解決手段】
複数の上下可動部材の挿着穴が設けられた固定基板11と、複数の挿着穴にそれぞれ適合して設けられた上下可動部材12と、所定の操作キー領域に含まれるときにアクティブとなり、前記操作キー領域に属する上下可動部材が押し下げられたときは、前記押し下げ力に対する反発力を生成するマイクロアクチュエータ13と、上下可動部材の押し下げを検出する押し下げ検出器141とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の操作キー領域に属する複数の上下可動部材のみを操作キーとして顕在化させることができるに操作・表示装置関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば現金自動預払機端末機(ATM)や駅の発券機等の操作・表示装置として、タッチパネルを備えているものが知られている。この種のタッチパネルをでは、操作者が表示された操作ピンヘッド分にタッチした場合にその操作を指先の接触または極めて小さな指先の押圧力で検出するメンブレムスイッチが採用されており、表示されたメニューに対応して複数の操作キーが配列される。操作者が、タッチパネルの操作ピンヘッド分にタッチする(すなわち入力操作する)と、これにより発生した操作位置信号が、ATMや発券機の制御装置に取り込まれる。制御装置では、その操作位置信号により入力操作された操作キーを判別する。
【0003】
上記のタッチパネル装置においては、タッチするだけで操作ができる反面、操作したという操作感に乏しく(すなわち、クリック感がなく)、操作者は、操作感から入力操作が正常に行われたかを知ることができない。
【0004】
そこで、このような不都合を解消するために、操作キー部分を振動させることにより、押圧した指先に操作感を与える振動式の装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、上記のタッチパネル装置においては、軽く押圧するだけで操作キーが動作するため、誤って操作しても操作キーが動作したことに気づかない場合もある。さらに、クリック感がないために、操作キーを操作感で区別することが困難であり、意図する操作キー以外を操作しても気づかないことがあった。このような不都合を解決するために、操作者が意図しない入力であると思われるケースを判別し、当該ケースが発生したときは、音や表示による警告を発し、操作者に注意を促す方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
加えて、特許文献1,2の技術では、操作キーを1回だけ押したつもりでも、チャタリングにより2度押しとして検出されることがある。
【特許文献1】特開2003−122507号
【特許文献2】特開平5−266343号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の不都合を回避するためには、多くの操作者は、表示画面を見ながら、ATM、券売機等が入力を意図どおりに処理しているかどうかをその都度確認しなくてはならない。この結果、操作者にとっては、必要以上に注意深く入力操作をしなければならず、操作技術的な負担のみならず精神的な負担も大きくなる。
【0008】
また、タッチパネルは、その表面に凹凸がないため、使い慣れていない操作者には、どの部分が操作キーであるかを判別が必ずしも容易でない。
【0009】
本発明の目的は、所定の操作キー領域に属する複数の上下可動部材のみを操作キーとして顕在化させ、かつ操作入力を指先の感触で確かめることができる操作・表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の操作・表示装置は(1)から(8)を要旨とする。
(1)「複数の上下可動部材の挿着穴が設けられた固定基板と、
前記複数の挿着穴にそれぞれ適合して設けられた前記上下可動部材と、
所定の操作キー領域に含まれるときにアクティブとなり、前記操作キー領域に属する上下可動部材が押し下げられたときは、前記押し下げ力に対する反発力を生成するマイクロアクチュエータと、
前記上下可動部材の押し下げを検出する押し下げ検出器と、
を備えたことを特徴とする操作・表示装置。」
(2)「前記上下可動部材は上面に表示部を備え、当該表示部により前記操作キー領域を顕在化することを特徴とする(1)に記載の操作・表示装置。」
(3)「 前記表示部は、少なくとも1つの発光ダイオードを光源として構成されたことを特徴とする(2)に記載の操作・表示装置。」
(4)「 前記マイクロアクチュエータは、前記複数の上下可動部材のうち、操作キー領域に属する前記上下可動部材を、前記操作キー領域に属さない前記上下可動部材より突出するように駆動することを特徴とする(1)から(3)の何れかに記載の操作・表示装置。」
(5)「 前記マイクロアクチュエータは、キー入力検出がなされたときに、極大値を持つように前記反発力を生成することを特徴とする(1)から(4)の何れかに記載の操作・表示装置。」
(6)「 前記マイクロアクチュエータは、
前記上下可動部材を上方に押し上げるように当該上下可動部材の下部に張設されたワイヤーまたはベルトと、
前記ワイヤーまたはベルトに可変張力を付与するマイクロサーボモータと、
を備えたことを特徴とする(1)から(5)の何れかに記載の操作・表示装置。」
(7)「 前記マイクロアクチュエータは、電磁ソレノイドへの電圧印加により前記上下可動部材を上方に突出させる電磁ソレノイドを備えたことを特徴とする(1)から(5)の何れかに記載の操作・表示装置。」
(8)「 1つの前記操作キー領域に属する複数の上下可動部材を同時に動作させる制御部を備えたことを特徴とする(1)から(7)の何れかに記載の操作・表示装置。」
【発明の効果】
【0011】
本発明の操作・表示装置によれば、所定の操作キー領域に属する複数の上下可動部材のみを操作キーとして顕在化させることで視覚的に正しく認識することができ、かつ操作入力を指先の感触で確かめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態の操作・表示装置の構成を、図1の側断面を参照して説明する。
【0013】
図1において、操作・表示装置1は、固定基板11と、上下可動部材12と、マイクロアクチュエータ13と、アクチュエータ制御部14(押し下げ検出器としても機能する)と、表示部15と、上下可動部材保持材16と、発光ダイオード17とにより構成されている。
【0014】
固定基板11には、板状部材からなり、表面側には複数の上下可動部材12を挿着するための挿着穴が形成されている。
【0015】
上下可動部材12は、ピンヘッド121と軸部122とからなり、軸部122が固定基板11に形成された複数の挿着穴に挿通するように構成されている。ピンヘッド121は合成樹脂からなり、軸部122の下端にはマグネットが取り付けられている。本実施形態では上下可動部材12の下端には、スイッチSWが設けられている。ピンヘッド121は、上面に表示部15を備えることができ、表示部15により操作キー領域Rに属する上下可動部材12を顕在化する。表示部15は、図1に示すように少なくとも1つの発光ダイオード17を光源として構成することができる。
【0016】
マイクロアクチュエータ13は、本実施形態では、吸引・突出型の電磁ソレノイドアクチュエータであり、操作キー領域Rに属する複数の上下可動部材12が押し下げられたときに、押し下げ力に対する反発力を生成するように構成することができる。この反発力は、上下可動部材12を押し下げる過程で、極大値を持つように構成できる。マイクロアクチュエータ13は、上下可動部材12のうち、操作キー領域Rに属するものを、操作キー領域Rに属さないものより突出するように駆動する。
【0017】
アクチュエータ制御部14は、上下可動部材12の押し下げの開始を検出する押し下げ検出器(141)として機能するともに、アクチュエータ駆動装置としても機能する。
【0018】
すなわち、本実施形態では、マイクロアクチュエータ13に発生する逆起電力Eを検出したときは、アクチュエータ制御部14は、マイクロアクチュエータ13に駆動電流を流す駆動信号生成器(142)としても機能し、上下可動部材12の押し下げに対する反発力を発生する。この反発力は、電磁ソレノイドによるピンの突出力であるため、極大値を持つような反発力を生成できる。
【0019】
表示部15は、上下可動部材12の上面に備えられる。表示部15は、操作キー領域Rを顕在表示することができる。また、表示部15は、少なくとも1つの発光ダイオード(符号17参照)を光源として構成することもできるし、上下可動部材12の上端面の面積が大きいときは液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)により構成することもできる。
【0020】
合成樹脂製平板リング16は、合成ゴムやエラストマーからなり、上下可動部材12を上端位置または下端位置で安定させることができる。これにより、マイクロアクチュエータ13を、二位置で安定するように構成できる。図2(A),(B)に合成樹脂製平板リング16を例示する。
【0021】
以下、図1に示した操作・表示装置1の動作を詳細に説明する。図3に操作・表示装置1の制御回路2を示す。図3において、画面情報生成部21からの表示情報Fが、表示制御部22およびアクチュエータ制御部23(図1の符号14と同じもの)に与えられる。
【0022】
画面情報生成部21からの画面情報Fは、たとえば、テンキーのレイアウトである。この画面情報Fは、表示制御部22に操作キー領域Rとして与えられ、指定された上下可動部材12の発光ダイオード17を駆動し、上下可動部材12の上面に備えられた表示部15の表示を行う。図4(A)に画面情報Fにより指定された操作キー領域Rを斜線で示す。図4(B)に具体的な表示を示すように、操作キー領域Rの発光ダイオード17のうち駆動されるものと駆動されないものとを組み合わせることで、所定の数字キーや記号キーの表示が行われる。
【0023】
画面情報Fはアクチュエータ制御部23にも与えられ、アクチュエータ制御部23は、指定された上下可動部材12のマイクロアクチュエータ13を短時間駆動して上方側に安定させ、指定されていない上下可動部材12のアクチュエータ13を短時間駆動して下方側で安定させる。図5(A)に指定された上下可動部材12のマイクロアクチュエータ13を短時間駆動して上方側で安定している状態を拡大して示す。
【0024】
これにより、操作・表示装置1の操作キー領域Rのピンヘッド121が所定の数字を発光するとともに突出する。したがって、操作者にとって、表示画面のどの部分が操作キーであるかが明確になる。なお、上記実施形態では、1つの操作キー領域Rに複数の上下可動部材12が対応しているが、ピンヘッド121の表示部15の面積を大きくして、1つの操作キー領域Rに1つの上下可動部材12が対応するようにもできる。
【0025】
ピンヘッド121が押されると、押し下げ検出器231はマイクロアクチュエータ13からの起電力を検出し、駆動信号生成部232は該当するピンヘッド121に対応する上下可動部材12のマイクロアクチュエータ13に反発力を与える信号を送出する。そして、図5(B)に示すように、軸部122の下端がスイッチSWに達し、当該スイッチSWがオンされる。
【0026】
図6(A),(B)の部分側面図、(C)の部分平面図により、モータを用いたマイクロアクチュエータを使用した操作・表示装置の他の実施形態を示す。
【0027】
図6(A),(B)では、マイクロサーボモータ191がワイヤー193に可変張力を付与することで、上下可動部材12を上方に押し上げ、あるいはピンヘッド121の押し下げ力に対して反発力を付与するように構成されている。上下可動部材12の下部にプーリー192が設けられており、プーリー192を介してワイヤーの他端は固定基板11の一部に取り付けられている。
【0028】
図6の例でもピンヘッド121が押されると、押し下げ検出器(図3の押し下げ検出器231参照)はマイクロサーボモータ191からの起電力を検出し、駆動信号生成部(図3の駆動信号生成部232参照)は該当するピンヘッド121に対応する上下可動部材12のマイクロサーボモータ191に反発力を与える信号を送出する。そして、図6(B)に示すように、軸部122の下端がスイッチSWに達し、当該スイッチSWがオンされる。
【0029】
なお、マイクロアクチュエータは、小型に構成する必要があるり、成就通した電磁ソレノイドやマイクロサーボモータの他、磁歪型,形状記憶合金型等のマイクロアクチュエータを使用することができる。
【0030】
上記の実施形態では、表示部15を発光ダイオード17により表示する例を説明したが、図7に示すように表示部15をLCDや有機ELDにより構成することもできる。
【0031】
上記の実施形態では操作キー領域Rの上下可動部材12は、待機状態(押し下げされていない状態)で、上方に突出した場合を説明したが、操作キー領域Rは操作キー領域R以外のキーと同じ高さとする(すなわち突出させない)こともできるし、操作キー領域Rのキーを操作キー領域R以外のキーよりも低くする(すなわち陥没させる)こともできる。また、操作キー領域Rのキーを待機状態で、操作キー領域R以外のキーと同じ高さにした場合は、操作キー領域Rの表示部15の表示の状態を、操作キー領域R以外の表示部の表示の状態と異ならせることによって、操作キー領域Rのキーを操作キー領域R以外のキーから区別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の操作・表示装置の一実施形態を示す側断面である。
【図2】図1の合成樹脂製平板リングを例示する図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)の部分断面図である。
【図3】図1の操作・表示装置の制御回路を示す図である。
【図4】(A)は画面情報により指定された操作キー領域を示す図、(B)は具体的な表示例である。
【図5】(A)は上下可動部材が上方側に安定した状態を示す部分側面図、(B)はスイッチがオンされるときの様子を示す部分側面図である。
【図6】本発明の操作・表示装置の他の実施形態を示す側断面であり、(A)は上下可動部材が上方側に安定した状態を示す部分側面図、(B)はスイッチがオンされるときの様子を示す部分側面図、(C)は部分平面図である。
【図7】本発明の操作・表示装置において、表示部をLCDや有機ELDにより構成した例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 操作・表示装置
11 固定基板
12 上下可動部材
13 マイクロアクチュエータ
14 アクチュエータ制御部
15 表示部
16 上下可動部材保持材
17 発光ダイオード
21 画面情報生成部
22 表示制御部
23 アクチュエータ制御部
121 ピンヘッド
122 軸部122
141 押し下げ検出器
142 駆動信号生成器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の上下可動部材の挿着穴が設けられた固定基板と、
前記複数の挿着穴にそれぞれ適合して設けられた前記上下可動部材と、
所定の操作キー領域に含まれるときにアクティブとなり、前記操作キー領域に属する上下可動部材が押し下げられたときは、前記押し下げ力に対する反発力を生成するマイクロアクチュエータと、
前記上下可動部材の押し下げを検出する押し下げ検出器と、
を備えたことを特徴とする操作・表示装置。
【請求項2】
前記上下可動部材は上面に表示部を備え、当該表示部により前記操作キー領域を顕在化することを特徴とする請求項1に記載の操作・表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、少なくとも1つの発光ダイオードを光源として構成されたことを特徴とする請求項2に記載の操作・表示装置。
【請求項4】
前記マイクロアクチュエータは、前記複数の上下可動部材のうち、操作キー領域に属する前記上下可動部材を、前記操作キー領域に属さない前記上下可動部材より突出するように駆動することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の操作・表示装置。
【請求項5】
前記マイクロアクチュエータは、キー入力検出がなされたときに、極大値を持つように前記反発力を生成することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の操作・表示装置。
【請求項6】
前記マイクロアクチュエータは、
前記上下可動部材を上方に押し上げるように当該上下可動部材の下部に張設されたワイヤーまたはベルトと、
前記ワイヤーまたはベルトに可変張力を付与するマイクロサーボモータと、
を備えたことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の操作・表示装置。
【請求項7】
前記マイクロアクチュエータは、前記上下可動部材を上方に突出させる電磁ソレノイドを備えたことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の操作・表示装置。
【請求項8】
1つの前記操作キー領域に属する複数の上下可動部材を同時に動作させる制御部を備えたことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の操作・表示装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−310505(P2007−310505A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136980(P2006−136980)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】