説明

操作軸の回転送り構造

【課題】部品点数の少ない簡素な構成で、部品精度が低くても部品寿命が低下することのない信頼性の高い操作軸の回転送り構造を提供すること。
【解決手段】クラッチ25とレバーベース26とで対をなす挟持面25c及びカム面28cと、これらの面の間に介在されるローラ30とを有し、クラッチ25とレバーベース26との相対的な回転動作に伴いカム面28cに沿って移動するローラ30を挟持面25cとの間で挟持することにより、これらクラッチ25とレバーベース26とを係合する係合機構と、操作レバー13が外力から解放された場合に、ローラ30によるクラッチ25とレバーベース26との係合を解除するロックベース27及び中立ばね35とを設けた。また、ローラ30を弾性的に支持する弾性支持手段にカム面28cを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの高さ調整装置等に使用される操作軸の回転送り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートの高さ調整装置において、操作レバーの回転操作に応じて、操作レバー側のロック部材を操作軸側の被ロック部材に係合させて操作軸を回転させることにより、リンク機構を介してシートクッションを昇降させるようにした操作軸の回転送り構造が知られている。
【0003】
このような操作軸の回転送り構造では、ロック部材がカム面を有し、このカム面と被ロック部材との間に複数対の転動体を介在させ、互いに対をなす二つの転動体は、コイルばね等のばね部材で互いに離反する方向に付勢されている。操作レバーを回転操作すると、対をなす二つの転動体がカム面を転動し、いずれか一方が被ロック部材に食い付くことで、操作軸は回転する(例えば、特許文献1あるいは2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−92718号公報
【特許文献2】特開2004−338426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1あるいは2に記載の操作軸の回転送り構造では、転動体の数が多いばかりでなく、互いに対をなす二つの転動体を付勢するばね部材が必要で、部品点数が多い。また、ロック部材、被ロック部材、転動体等の各部品の形状精度が低いと、これらの部品に加わる荷重が不均一になり、部品寿命が低下したり、操作軸の回転送りが不能となる場合があった。
【0006】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、部品点数の少ない簡素な構成で、部品精度が低くても部品寿命が低下することのない信頼性の高い操作軸の回転送り構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の発明は、操作軸を回転自在に軸支するフレームに対しレバー中立位置に付勢される操作レバーを一方向又は他方向に回転操作することにより、前記操作軸側の被ロック部材に対し前記操作レバー側のロック部材を係合させて前記操作軸をフレームに対し回転させる操作軸の回転送り構造であって、前記被ロック部材とロック部材とに互いに対向する挟持面及びカム面をそれぞれ形成するとともに、該挟持面及びカム面間に係合部材を介装し、前記被ロック部材とロック部材との相対的な回転動作に伴い前記カム面に沿って移動する前記係合部材を前記挟持面との間で挟持することにより、前記被ロック部材とロック部材とを係合する係合機構と、前記ロック部材に対し回転自在に支持されたロックベースと、該ロックベースを前記ロック部材に対しロック中立位置に付勢する付勢手段と、前記操作レバーが外力から解放された場合に、前記付勢手段の付勢力により前記ロック中立位置へ復帰するロックベースによって前記係合部材をカム面に対し予め設定された解除位置へ変位させて前記被ロック部材とロック部材との係合を解除する解除部材とを備え、前記係合部材を弾性的に支持する弾性支持手段に前記カム面を形成したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記ロック部材が前記カム面に沿って形成された長孔を有し、前記弾性支持手段が、前記長孔の径方向外方に形成された弾性支持部であることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記ロック部材が複数の凹部を有し、前記弾性支持手段が、前記複数の凹部の各々に収容されたばね部材であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記挟持面及び各カム面間に介装された前記係合部材が一つの転動体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、係合部材を弾性的に支持する弾性支持手段にカム面を形成したので、係合部材等の部品に加わる荷重が各部品の形状精度の影響を受けることがない。したがって、部品寿命が低下することがなく、操作軸の回転送りが不能となることもないので、信頼性の高い操作軸の回転送り構造を提供することができる。
【0012】
また、挟持面及び各カム面間に一つの転動体を介装したので、部品点数が少なく、構成が簡素である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るリフト装置を備えた車両用シート1を示す斜視図である。
【0015】
図1を参照して、シートクッション2は、左右一対のシートスライダー4で前後スライド自在に支持されているとともに、シートバッグ3は、シートクッション2の後部に設けられたリクライニング装置のリクライニング軸5回りに傾動自在に支持されている。
【0016】
各シートスライダー4とシートクッション2との間には、当該各シートスライダー4に対してシートクッション2を昇降自在に支持するリンク機構6が左右位置に介設されている。
【0017】
前記左右のシートスライダー4のアッパーレール4aの上部にはサイドフレーム8がそれぞれ立設されて、各サイドフレーム8の前後位置には連動ロッド9F、9Bがそれぞれ回動自在に支持されているとともに、これら連動ロッド9F、9Bにはリンク10F、10Bがそれぞれ固定され、各リンク10F、10Bの上端には、リンクピン11でクッションフレーム12が回動自在に支持されている。
【0018】
そして、サイドフレーム8とリンク10F、10Bとクッション支持フレーム12とで平行四辺形リンク機構6が構成されて、クッション支持フレーム12が後動しながら下動された状態(図1の状態)では、シートクッション2は下移動位置であって、クッション支持フレーム12が前動しながら上動された状態では、シートクッション2は上移動位置に移動されるようになる。
【0019】
前記各リンク10F、10Bのうち、図1において右前側(着座者から見て左前側)のリンク10Fにはセクターギヤ部10aが形成され、このセクターギヤ部10aは、サイドフレーム8の外側に設けられた操作レバー13のピニオン15に噛合されて、操作レバー13の操作軸14でピニオン15を回転させることにより、セクターギヤ部10aが回動されて、リンク機構6でシートクッション2が昇降されるようになる。
【0020】
図2は、図1のリフト装置を示す斜視図である。図3は、図2のブレーキドラムを示す分解斜視図である。
【0021】
各図を参照して、前記操作レバー13が位置するサイドフレーム8の外側には、ブレーキドラム17が固定されている。
【0022】
ブレーキドラム17は、図3に詳しく示すように、外筒18と内筒19とを備え、この外筒18のフランジ部18bがサイドフレーム8の外面にリベット等で固定され、外筒18と内筒19との間に一対のブレーキスプリング20A、20Bが介装されて、前記操作軸14の外軸部14aは外筒18の中心穴18aで支持されるとともに、内軸部14bはサイドフレーム8の穴(図示せず)で支持されている。この操作軸14の中間部には前記ピニオン15が回動可能に嵌合されている。上記操作軸14の外軸部14aは、内筒19の中心穴19aに貫通された状態で、この中心穴19aで内筒19が操作軸14に固定されている。
【0023】
前記ブレーキスプリング20Aは、一方の端部20aが内筒19の切り込み19cに係止され、他方の端部20dがピニオン15のスリット15aに係止される一方、ブレーキスプリング20Bは、一方の端部20cがピニオン15のスリット15aに係止され、他方の端部20bが内筒19の切り込み19dに係止されている。
【0024】
このように構成されたブレーキドラム17は、操作軸14を操作レバー13側から回動させるときは、各ブレーキスプリング20A、20Bの端部20b、20d(又は20c、20a)が縮径方向に作用して内筒19が回動可能になるとともに、ピニオン15側から回動させようとするときは、各ブレーキスプリング20A、20Bの端部20c、20a(又は20d、20b)が拡径方向に作用して外筒18の内周面に接触することで回動不可能になる公知の構成である(例えば、実開平7−19562号公報参照)。すなわち、シートクッション2側の荷重によって操作軸14が回動しないようにブレーキをかけるものである。
【0025】
図4は、図2のリフト装置における操作軸14側に装着される構成を分解して示す斜視図である。図5は、図2のリフト装置における操作レバー13側に装着される構成を分解して示す斜視図である。図6は、図5のレバーベース26とロックベース27とを分解して示す斜視図である。
【0026】
図2及び図4〜図6を参照して、前記ブレーキドラム17の外筒18には、ベースブラケット21が遊嵌され、このベースブラケット21のフランジ部21aが前記外筒18のフランジ部18bとともにサイドフレーム8の外面にリベット等で固定されている。
【0027】
また、ベースブラケット21には、その径方向外側へ延びるストッパ21bが形成され、このストッパ21bは、後述するロックベース27の回転操作の終端位置を規定するようになっている。
【0028】
前記外筒18とベースブラケット21との間には、前記操作レバー13をレバー中立位置に復帰させるレバースプリング22が介装されている。
【0029】
前記外筒から外方に突出する操作軸14の外軸部14aの外周には、ワッシャ23、スプリングワッシャ24、クラッチ(被ロック部材)25、レバーベース(ロック部材)26、ロックベース27、ウェーブワッシャ36(図2参照)及び前記操作レバー13が内側から外側に向かって嵌め込まれて、外軸部14aの端部に係止したリテイニング(図示せず)によって、外筒18との間で外軸部14aから抜けないように保持されている。
【0030】
前記ワッシャ23とスプリングワッシャ24とは、外筒18の中心穴18aの突出部分に嵌合されるとともに、前記クラッチ25の小判穴25aは、外軸部14aの小判部14cに回動不自在(共回動可能)に嵌合されている。
【0031】
前記クラッチ25は、挟持面25cによって取り囲まれた格納室S1を有する有底容器状に形成され、その底部25dに前記小判穴25aを中心として外側へ突出する円筒突起25bが形成されている。
【0032】
前記レバーベース26は、前記格納室S1に格納される格納部28と、この格納部28から外側へ屈曲された3本の取付片29とを有し、単一の金属板をプレス加工することにより形成されたものである。
【0033】
前記格納部28は、前記格納室S1に格納可能な大きさとされた外周面28aと、前記円筒突起25bが挿通される内周面28bとを有するドーナツ状に形成され、前記クラッチ25に対し回転自在に装着される。
【0034】
また、前記格納部28には、外周面28aの3箇所で平面視V字型に窪むカム面28cが形成され、各カム面28cに沿って同様に平面視V字型の長孔28gが形成されている。カム面28cは、操作軸14を中心とする同一円周上で当該円周を3等分する位置(前記各取付片29と互い違いになる位置)にクラッチ25の挟持面25cに対向するようにそれぞれ形成されており、前記格納部28が格納室S1に格納されることにより前記クラッチ25の挟持面25cとの間でくさび室S2(図7参照)を形成するようになっている。
【0035】
図7の(a)を参照して、くさび室S2には、それぞれローラ(係合部材)30が1つずつ収納されている。これらローラ30は、円柱状の金属部材で形成された転動体であり、その周面30aがカム面28cに対しそれぞれ転がり接触自在となるように、前記クラッチ25の底部25d上に載置されている。
【0036】
したがって、格納部28がクラッチ25に対し回転すると、各ローラ30がカム面28cに沿って移動して格納室S1の挟持面25cに押し付けられ、カム面28cと挟持面25cとの間で挟持される(挟持面25cに食い付く)ことになるので、この状態からさらに格納部28を回転させると、その後は格納部28(レバーベース26)とクラッチ25とが係合された状態で一体となって回転することになる。
【0037】
図2、図5及び図6を参照して、各取付片29は、格納部28から外側へ屈曲された直立部29aと、この直立部29aから直角に屈曲された取付部29bとをそれぞれ備え、図2に詳しく示すように、各取付部29bがそれぞれ3本のボルトB1によって操作レバー13に固定されている。
【0038】
一方、ロックベース27は、前記クラッチ25の開口部を閉塞するように配置される被覆部31と、この被覆部31から内側へ屈曲された舌部32と備え、単一の金属板をプレス加工することにより構成されている。
【0039】
被覆部31には、内側に屈曲する3つの解除爪33と、前記各取付片29を外側へ導出するスリット34がそれぞれ形成されている。
【0040】
各解除爪33は、操作軸14の回転方向について互いに離間する一対の爪本体33aをそれぞれ備え、これら爪本体33aが前記各くさび室S2内にそれぞれ挿入されている。
【0041】
具体的に、各爪本体33aは、図7の(b)に示すように、くさび室S2内のローラ30を操作軸14の回転方向の両側位置で挟み込むように配置されている。
【0042】
前記舌部32は、図2に詳しく示すように、レバースプリング22によって操作軸14の回転方向の両側から付勢されている。したがって、前記ロックベース27は、外力が付与されていない状態において、予め設定されたレバー中立位置へ復帰することになる。
【0043】
また、舌部32は、前記ベースブラケット21のストッパ21bと協働して、ロックベース27の回り止めとして機能するようになっている。すなわち、舌部32の一方の端面32aがストッパ21bに当接した回転位置と、舌部32の他方の端面32bがストッパ21bに当接した回転位置との間で、ベースブラケット21に対しロックベース27が回転自在とされている(ロックベース27は操作軸14回りの回転動作が所定の回転位置で規制されている)。
【0044】
そして、レバーベース26とロックベース27との間には、図5、図6及び図7の(b)に示すように、両ベース26及び27を予め設定されたロック中立位置へ付勢する中立ばね(付勢手段)35が設けられている。
【0045】
中立ばね35は、図6に詳しく示すように、前記ロックベース27の被覆部31の内側面に形成された窪み部31a内で保持されている。なお、図6では、説明の便宜上、レバーベース26及びロックベース27のそれぞれに中立ばね35が装着された状態を示している。
【0046】
また、中立ばね35の両端部35a及び35bは、それぞれ前記レバーベース26の格納部28に立設された突起28dと28eとの間、及び前記窪み部31aの内側面31bと31cとの間でそれぞれ挟持されている。なお、これら突起28dと28eとの間隔及び内側面31bと31cとの間隔はそれぞれ略同一とされている。
【0047】
したがって、レバーベース26に外力が付与されていない場合(操作レバー13が回転操作されていない場合)には、図7の(b)に示すように、中立ばね35が前記突起28d、28e及び内側面31b、31cのそれぞれに挟持された状態となり、これにより、レバーベース26とロックベース27とが前記ロック中立位置で保持されることになる。
【0048】
このロック中立位置では、前記各解除爪33によってローラ30がくさび室S2内で解除位置(カム面28cと挟持面25cとの間で遊動自在な位置)に移動され、レバーベース26とクラッチ25とが相対回転自在な状態とされている。
【0049】
そして、図8に示すように、操作レバー13が回転操作されると(図8では反時計回りの回転操作を例示している)、中立ばね35の一方の端部35aがロックベース27の内側面31bに保持されたまま他方の端部35bがレバーベース26の突起28eにより縮径方向へ押し込まれ、この動作と並行して、各ローラ30がカム面28cに沿って移動することにより当該各ローラ30がカム面28cと挟持面25cとの間で挟持され、レバーベース26とクラッチ25とが係合される。
【0050】
そして、レバーベース26とクラッチ25とが係合された状態でさらに操作レバー13を回転すると、これらレバーベース26とクラッチ25とが一体となって回転して、操作軸14が回転する。
【0051】
この状態で、さらに操作レバー13を回転操作すると、ロックベース27の舌部32がベースブラケット21のストッパ21bに当接することにより当該ロックベース27の回転位置が規制され、操作レバー13をそれ以上回せない状態となる。
【0052】
ここで、さらに前記操作レバー13に対し同方向(図8の反時計回り)へ回転させるための外力が付与された場合には、ロックベース27に対するレバーベース26の回転範囲が大きくなることに伴い、前記カム面28cに沿ったローラ30の移動量(操作軸14の径方向外側への移動量)が必要以上に大きくなり、これにより挟持面25cとカム面28cとの間で挟持されるローラ30の磨耗等を引き起こすおそれがあるが、本実施形態では前記移動量を予め設定された基準移動量未満に抑えるべく回り止め手段が設けられている。
【0053】
この回り止め手段は、図6に詳しく示すように、前記レバーベース26の格納部28上に立設された一対の凸部28fと、前記ロックベース27の被覆部31の内側面に形成された一対の凹部31dとで具現化されている。
【0054】
前記凹部31dは、図7の(b)に示すように、レバーベース26とロックベース27とが前記ロック中立位置とされている状態において、操作レバー13の回転方向について若干余裕を持った状態で凸部28fを受け入れるように寸法設定されている。
【0055】
そして、図8に示すようにレバーベース26とクラッチ25とが係合して両者が一体に回転した後、ロックベース27の回転が規制された状態において、さらにレバーベース26が回転操作された場合に、凹部31dの側面31eと凸部28fとが当接してレバーベース26とロックベース27との回転位置が規制される。
【0056】
したがって、ロックベース27がそれ以上回転できない状態において、さらに同方向へ回転させる外力が操作レバー13に付与された場合であっても、各ローラ30の移動量を、レバーベース26とクラッチ25とを係合するのに最低限必要な移動量で保持して、各ローラ30の磨耗等を防止することができる。
【0057】
一方、操作レバー13の回転操作を停止すると、前記中立ばね35の付勢力によりレバーベース26がロックベース27に対し前記ロック中立位置へ変位して各ローラ30が前記解除位置(図7の位置)へ移動することにより、レバーベース26とクラッチ25との係合状態が解除されるので、前記レバースプリング22の付勢力によりロックベース27がクラッチ25に対し回転してレバー中立位置へ復帰する。
【0058】
このロックベース27の動作過程においては、レバーベース26は、中立ばね35の付勢力により前記ロック中立位置を維持したまま(クラッチ25に対する係合が解除された状態を維持したまま)ロックベース27に従動するので、レバーベース26、ロックベース27及び各ローラ30は一体となってレバー中立位置へ移動する。その結果、操作レバー13もレバー中立位置へ復帰することになる。
【0059】
ここで、レバーベース26とクラッチ25との係合についてさらに詳述する。上述したように、レバーベース26の格納部28がクラッチ25に対し回転すると、各ローラ30が格納室S1の挟持面25cに食い付き、この状態からさらに格納部28を回転させると、レバーベース26とクラッチ25とが係合された状態で一体的に回転する。
【0060】
また、図9に示すように、各ローラ30が挟持面25cに押し付けられると、カム面28cからローラ30に荷重aが加えられ、ローラ30から挟持面25cに荷重bが加えられる。ここで、ローラ30とローラ30が当接する部材(挟持面25cを形成するクラッチ25、カム面28cを形成する格納部28、等)の形状精度(部品精度)が高ければ、荷重a及び荷重bが全てのローラ30に対して略同等となるが、形状精度が低ければ、挟持面25cに対するローラ30の食い付き位置がローラ30毎に異なり、荷重a及び荷重bがローラ30毎に異なることになり、場合によっては、いずれかのローラ30には荷重が一切作用しない事態も想定される。このような事態になると、荷重が一切作用しないローラ30以外のローラ30に過大荷重が加わり、ローラ30の寿命が低下したり、操作軸の回転送りが不能となる虞がある。
【0061】
しかしながら、本発明に係る回転送り構造の場合、平面視V字型のカム面28cに沿って同じく平面視V字型の長孔28gが形成され、カム面28cと長孔28gの外側面との間には略同一幅のローラ支持部28hが形成されているので、このローラ支持部28hがローラ30を弾性的に支持する弾性支持手段として作用し、荷重のバラツキを吸収する。
【0062】
すなわち、ローラ30に加わる荷重に応じてローラ支持部28hが弾性変形するので、各ローラ30には略均一な荷重が加わることになり、複数のローラ30に荷重が分散して過大荷重の発生が防止される。
【0063】
また、上述したローラ30の弾性支持手段として、図10に示すように、格納部28のカム面28cと同一形状のカム面38aを有する板ばね(ばね部材)38を使用することもできる。
【0064】
さらに詳述すると、格納部28の外周面28aの3箇所に略U字状の凹部28iを形成し、内側に向かって折曲された二つの脚部38bを有する板ばね38を各凹部28iに収容して、そのカム面38aで対応するローラ30を弾性支持するように構成すればよい。
【0065】
この構成は、ローラ30に加わる荷重に応じてカム面38aを有するローラ支持部38cが弾性変形するので、各ローラ30には略均一な荷重が加わることになり、複数のローラ30に荷重が分散して過大荷重の発生が防止される。
【0066】
なお、上述した実施形態においては、ボール30が当接するカム面28c,38aを三つ形成したが、本発明は三つのカム面28c,38aに限定されるわけではなく、三つ以上の複数であればよい。
【0067】
上述した実施形態によれば、レバーベース26に対してロックベース27を付勢する中立ばね35を、操作軸14の径方向におけるクラッチ25及びレバーベース26の範囲内に形成された窪み部31a内に保持するようにしているので、操作軸14の径方向について嵩の低い回転送り構造とすることができる。
【0068】
また、回り止め手段(凸部28f及び凹部31d)を設けたので、ロックベース27がそれ以上回らない位置まで回転操作された状態で、さらに同方向へ回転させるための外力が操作レバー13に付加された場合であっても、回り止め手段によってレバーベース26とロックベース27との回転範囲を所定の角度に規制することによりローラ30の移動量を基準移動量未満に抑えることができるので、挟持面25cとカム面28cとの間で挟持されるローラ30に大荷重がそのまま付加されるのを防止することができる。
【0069】
さらに、ベースブラケット21のストッパ21bに対しロックベース27の舌部32が当接した状態、すなわち、操作レバー13がそれ以上回らない位置まで回転操作された状態で、さらに同方向へ回転させるための力が操作レバー13に与えられると、ロックベース27の回転位置が規制されているにもかかわらずレバーベース26が回転するとともにこれに伴い各ローラ30が移動しようとするため、これらローラ30をそれぞれ跨いで配置された係合爪33aが破損してしまうおそれがあるが、前記回り止め手段によりレバーベース26とロックベース27との回転範囲が所定の角度に規定されているので、係合爪33aの破損を確実に防止することができる。
【0070】
そして、前記回り止め手段はレバーベース26及びロックベース27に凸部28f及び凹部31dを形成するという簡単な構成で両者の回り止めを実現することができる。
【0071】
また、ロックベース27は、単一の金属板をプレス加工することにより形成することができるので、部品コストを低減することができる。
【0072】
さらに、操作軸14を中心とする同一円周上で当該円周を3等分する位置にそれぞれ1つずつローラ30を配設することにより当該各ローラ30を操作軸14と直交する同一平面上に配置することができるので、操作軸14の軸線と操作レバー13の操作中心軸とを合致させながらこれら両者を回転操作することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る操作軸の回転送り構造は部品点数の少ない簡素な構成で、部品精度が低くても部品寿命が低下することがないので信頼性が高く、車両用シートの高さ調整装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係るリフト装置を備えた車両用シートを示す斜視図である。
【図2】図1のリフト装置を示す斜視図である。
【図3】図2のブレーキドラムを示す分解斜視図である。
【図4】図2のリフト装置における操作軸側に装着される構成を分解して示す斜視図である。
【図5】図2のリフト装置における操作レバー側に装着される構成を分解して示す斜視図である。
【図6】図5のレバーベースとロックベースとを分解して示す斜視図である。
【図7】図2のリフト装置の平面図であり、(a)はロックベースを省略した状態、(b)はロックベースを装着した状態をそれぞれ示している。
【図8】図2のリフト装置の平面図であり、操作レバーを反時計回りに回転した状態を示したものである。
【図9】ローラ及びその近傍の部材に加わる荷重を示す拡大図である。
【図10】ローラの弾性支持手段としての板ばねを示す拡大図である。
【符号の説明】
【0075】
1 車両用シート、
8 サイドフレーム(フレーム)、
13 操作レバー、
14 操作軸、
22 レバースプリング、
25 クラッチ(被ロック部材)、
25c 挟持面、
26 レバーベース(ロック部材)、
27 ロックベース、
28 格納部、
28c カム面、
28f 凸部(回り止め手段)、
28g 長孔、
28h ローラ支持部、
30 ローラ(係合部材)、
31 被覆部、
31d 凹部(回り止め手段)、
33 解除爪、
33a 爪本体、
38 板ばね、
38a カム面、
38c ローラ支持部
S1 格納室、
S2 くさび室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作軸を回転自在に軸支するフレームに対しレバー中立位置に付勢される操作レバーを一方向又は他方向に回転操作することにより、前記操作軸側の被ロック部材に対し前記操作レバー側のロック部材を係合させて前記操作軸をフレームに対し回転させる操作軸の回転送り構造であって、
前記被ロック部材とロック部材とに互いに対向する挟持面及び複数のカム面をそれぞれ形成するとともに、該挟持面及び各カム面間に係合部材を介装し、前記被ロック部材とロック部材との相対的な回転動作に伴い前記カム面に沿って移動する前記係合部材を前記挟持面との間で挟持することにより、前記被ロック部材とロック部材とを係合する係合機構と、前記ロック部材に対し回転自在に支持されたロックベースと、該ロックベースを前記ロック部材に対しロック中立位置に付勢する付勢手段と、前記操作レバーが外力から解放された場合に、前記付勢手段の付勢力により前記ロック中立位置へ復帰するロックベースによって前記係合部材をカム面に対し予め設定された解除位置へ変位させて前記被ロック部材とロック部材との係合を解除する解除部材とを備え、
前記係合部材を弾性的に支持する弾性支持手段に前記カム面を形成したことを特徴とする操作軸の回転送り構造。
【請求項2】
前記ロック部材が前記カム面に沿って形成された長孔を有し、前記弾性支持手段が、前記長孔の径方向外方に形成された弾性支持部であることを特徴とする請求項1に記載の操作軸の回転送り構造。
【請求項3】
前記ロック部材が複数の凹部を有し、前記弾性支持手段が、前記複数の凹部の各々に収容されたばね部材であることを特徴とする請求項1に記載の操作軸の回転送り構造。
【請求項4】
前記挟持面及び各カム面間に介装された前記係合部材が一つの転動体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の操作軸の回転送り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−168094(P2009−168094A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5496(P2008−5496)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000109738)デルタ工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】